特許第6441402号(P6441402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーヒンの特許一覧

<>
  • 特許6441402-遠心式送風機 図000002
  • 特許6441402-遠心式送風機 図000003
  • 特許6441402-遠心式送風機 図000004
  • 特許6441402-遠心式送風機 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441402
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】遠心式送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/70 20060101AFI20181210BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   F04D29/70 N
   F04D29/44 V
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-67139(P2017-67139)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168766(P2018-168766A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 政篤
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−167087(JP,A)
【文献】 特開2000−033812(JP,A)
【文献】 特開2009−13924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/70
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングの内部に収納され軸方向に吸入した空気を径方向へ送風するファンと、前記ケーシングに収納され前記ファンを駆動させる駆動源とを有し、前記ケーシングに、軸方向一端側に開口した空気取入口と、前記ファンの外周側に形成される渦巻状の第1通路部と、前記第1通路部の巻き終わりから吐出口まで直線状に延在する第2通路部と、前記第1通路部における巻き始め側と前記第2通路部との接続部位に形成される舌部とを有した遠心式送風機において、
前記舌部の近傍には、前記第2通路部の内周壁に対して前記軸方向一端側へ立設し、該第2通路部の一部に沿って延在する第1の壁部と、
前記第1の壁部に対して径方向内側に離れ、且つ、前記駆動源の外周面に臨み、前記軸方向一端側へと立設すると共に前記第1通路部の一部に沿って延在する第2の壁部と、
を備えることを特徴とする遠心式送風機。
【請求項2】
請求項1記載の遠心式送風機において、
前記第1及び第2の壁部における軸方向一端側の端部が、前記ファンの軸方向他端側の端部と略同一高さとなるように形成されることを特徴とする遠心式送風機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遠心式送風機において、
前記第1及び第2の壁部における軸方向一端側の端部には、該軸方向と略直交方向に延在した天井部が接合されることを特徴とする遠心式送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心式送風機に関し、一層詳細には、車両に搭載される空調装置に使用する遠心式送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の羽根を有したファンと、該ファンを回転させるモータと、前記ファンを囲繞するケーシングとを有した遠心式送風機が知られている。このような遠心式送風機は、例えば、特許文献1に開示されるように、ケーシングの中央部に羽根車及び電動モータが設けられ、前記羽根車の回転作用下にケーシングに開口した吸入口を通じて空気を内部へと取り込み、前記羽根車の外周側を旋回するように形成された渦巻通風路へと空気が流れて端部側となる吐出通風路を通じて吐出口から送出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−214968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の遠心式送風機では、渦巻通風路に沿って旋回して吐出通風路へと向かう空気の圧力が吐出口近傍において高圧となるため、電動モータの外周側、且つ、渦巻通風路の巻き始めと吐出通風路との間に設けられた舌部近傍において、低圧である内周側へと水分を含んだ空気が流入し、それに伴って、内周側に配置された電動モータに水分が浸入してしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、空気中に含まれる水分の通路部から駆動源側への浸入を確実に防止することが可能な遠心式送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、ケーシングと、ケーシングの内部に収納され軸方向に吸入した空気を径方向へ送風するファンと、ケーシングに収納されファンを駆動させる駆動源とを有し、ケーシングに、軸方向一端側に開口した空気取入口と、ファンの外周側に形成される渦巻状の第1通路部と、第1通路部の巻き終わりから吐出口まで直線状に延在する第2通路部と、第1通路部における巻き始め側と第2通路部との接続部位に形成される舌部とを有した遠心式送風機において、
舌部の近傍には、第2通路部の内周壁に対して軸方向一端側へ立設し、第2通路部の一部に沿って延在する第1の壁部と、
第1の壁部に対して径方向内側に離れ、且つ、駆動源の外周面に臨み、軸方向一端側へと立設すると共に第1通路部の一部に沿って延在する第2の壁部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、遠心式送風機を構成するケーシングには、渦巻状の第1通路部の巻き始め側と吐出口まで延在する第2通路部との接続部位に形成される舌部の近傍に、第2通路部の内周壁に対して第1の壁部が軸方向一端側へ立設し、第1の壁部の径方向内側に離れ、且つ、駆動源の外周面に臨むように第2の壁部が軸方向一端側へと立設して第1通路部の一部に沿って形成される
【0008】
従って、第1及び第2通路部を流れる空気の一部が、高圧である第2通路部側から低圧である第1通路部の巻き始め側へと流入する場合でも、空気中に含まれる水分が第1及び第2の壁部によって径方向内側へ浸入することが防止され、第2の壁部の径方向内側に設けられた駆動源側への水分の浸入を確実に阻止することができる。
【0009】
また、第1及び第2の壁部における軸方向一端側の端部を、ファンの軸方向他端側の端部と略同一高さとなるように形成するとよい。
【0010】
さらに、第1及び第2の壁部における軸方向一端側の端部に、軸方向と略直交方向に延在した天井部を接合するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0012】
すなわち、ケーシングにおいて、渦巻状の第1通路部の巻き始め側と吐出口まで延在する第2通路部との接続部位に形成される舌部の近傍に、第2通路部の内周壁に対して第1の壁部を軸方向一端側へ立設させ、第1の壁部の径方向内側には駆動源の外周面に臨むように第1通路部の一部に沿った第2の壁部を軸方向一端側へと立設させることで、第1及び第2通路部を流れる空気の一部が、高圧である第2通路部側から低圧である第1通路部の巻き始め側へと流入する場合でも、空気中に含まれる水分が第1及び第2の壁部によって径方向内側へ浸入することが防止され、第2の壁部の径方向内側に設けられた駆動源側への水分の浸入を確実に阻止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る遠心式送風機の全体平面図である。
図2図1に示す遠心式送風機の全体縦断面図である。
図3図1に示す遠心式送風機を構成するロアケースの全体平面図である。
図4図3に示すロアケースの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る遠心式送風機について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る遠心式送風機を示す。
【0015】
この遠心式送風機10は、図1及び図2に示されるように、モータ等からなる駆動源12と、該駆動源12の駆動作用下に回転するファン14と、該ファン14を収納すると共に空気の流れる通路部16を有したケーシング18とを含む。
【0016】
駆動源12は、例えば、ケーシング18の略中央下部に設けられ、その回転軸20が前記ケーシング18内へ突出するように固定されている。そして、回転軸20は、ファン14の中心部に対して連結され、駆動源12への通電作用下に一体的に回転する。
【0017】
ファン14は、ケーシング18の略中央に収納され、周方向に沿って等間隔離間した複数のブレード22と、前記ブレード22の上端部に設けられた環状のシュラウド24と、前記ブレード22の下端部から中央に向かって上端側へと延在したボス部26とを備える。
【0018】
ブレード22は、断面湾曲状に形成され鉛直方向(矢印A、B方向)に所定長さで延在すると共に、周方向に沿って互いに等間隔離間するように複数設けられている。そして、ブレード22の上端部にはシュラウド24が結合され、下端部にはボス部26の外縁部が結合されることで略円筒状のファン14が構成される。
【0019】
そして、ファン14は、中心から外周側に向かい且つ下方(矢印A方向)へ向かって傾斜したボス部26の中心が駆動源12の回転軸20と連結されることで一体的に回転し、前記ファン14の内側に取り込まれた空気が前記ボス部26に沿って下方(矢印A方向)且つ外周側へと導かれた後、各ブレード22の間を通じて外周側へと送出される。
【0020】
ケーシング18は、例えば、略中央部に形成されファン14の収納されるケース本体28と、該ケース本体28の略中央下部に設けられ駆動源12の収納されるホルダ30とを含む。
【0021】
このケース本体28は、内部に収納されるファン14の外周側を旋回するように通路部16が形成され、軸方向に沿った上部に設けられるアッパーケース32と、該アッパーケース32の下方に接続されるロアケース34とを有し、その内部にはファン14が中央に収納されている。
【0022】
通路部16は、アッパーケース32とロアケース34とに跨るように形成され、その外周壁は巻き始めC(図1及び図3参照)から巻き終わりに向かって徐々にファン14から離間するように径方向外側へと螺旋状に形成された渦巻通路(第1通路部)36と、前記渦巻通路36の巻き終わりから接線方向に向かって直線状に延在した吐出通路(第2通路部)38とを有し、前記吐出通路38の下流側端部には吐出口40が開口している。また、通路部16は、その巻き始めCから巻き終わりに向かって下壁部が徐々に下方(矢印A方向)へと傾斜するように形成されることで、前記巻き終わり側に向かって徐々に通路断面積が大きくなると共に、その渦巻通路36の巻き始めCと吐出通路38の内周壁38aとを接合する舌部42が形成される。
【0023】
アッパーケース32は、その上端部中央に空気取入口44が開口し、該空気取入口44は、例えば、略円形状に開口しケーシング18の内部と外部とを連通させると共に、外周部には内側に向かって折り返されたベルマウス46が形成される。
【0024】
一方、ロアケース34には、その中央に開口した挿通孔48にホルダ30が挿通され保持され、この挿通孔48の外周側には、通路部16の舌部42の近傍にランド部50が形成される。
【0025】
ランド部50は、図1図4に示されるように、例えば、吐出通路38の内周壁38aからアッパーケース32側(図2中、矢印B方向)に向かって突出した断面U字状に形成され、吐出通路38の内周壁から下流側に向かって徐々に舌部42及び渦巻通路36の巻き始めC側へと拡幅するように幅広状に形成される。換言すれば、ランド部50は、通路部16の舌部42の近傍において、吐出通路38の内周壁38aとホルダ30の装着される挿通孔48との間に立設するように形成されている。
【0026】
このランド部50は、吐出通路38の内周壁38aに沿って立設した第1壁部52と、該第1壁部52に対して径方向内側で挿通孔48の外周側に沿って形成された第2壁部54と、該第2壁部54の端部から渦巻通路36の巻き始めCにおける外周壁まで延在した第3壁部56と、前記第1〜第3壁部52、54、56の上端部を覆う天井部58とから構成される。この天井部58は、例えば、ロアケース34の軸方向(図2中、矢印A、B方向)と直交した略水平方向に延在している。
【0027】
そして、図2に示されるように、ランド部50における天井部58の高さは、ファン14の下端部と略同一高さとなるように設定される。
【0028】
ホルダ30は、筒状に形成され内部に駆動源12の収納されるホルダ本体60と、該ホルダ本体60の外周面から径方向外側に延在した平坦部62とを有し、ロアケース34の挿通孔48に挿通された状態で、前記平坦部62の外縁部が前記挿通孔48に対して接続されることで、該平坦部62がブレード22の下端に臨んだ状態で前記挿通孔48が閉塞される。
【0029】
本発明の実施の形態に係る遠心式送風機10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0030】
先ず、図示しないコントローラからの制御信号に基づき駆動源12が駆動し、該駆動源12の駆動作用下に回転軸20を介してファン14が回転することで、ケーシング18の上方に開口した空気取入口44から前記ファン14の内側へと空気が吸い込まれる。
【0031】
そして、ファン14の内側へと取り込まれた空気がボス部26に沿って下方且つ外周側へと導かれた後、複数のブレード22の間を通過して外周側の通路部16へと送出される。この通路部16内へと送出された空気は、渦巻通路36に沿って巻き始めCから反時計回りに流れ巻き終わり側まで到達した後、吐出通路38を通じて吐出口40まで流れて外部へと送出される。
【0032】
また、上述した通路部16を流れる空気は、渦巻通路36の巻き始めCから吐出通路38へと旋回するように流れることで徐々に圧力が上昇し、その空気の一部が、舌部42の近傍において高圧となった前記吐出通路38から、隣接して低圧である渦巻通路36の巻き始めC側へと流入することがある。
【0033】
この場合に、空気中に含まれる水分は、吐出通路38と渦巻通路36の巻き始めC側との間に設けられ上方(矢印B方向)へと突出したランド部50によって内周側への浸入が抑制されると共に、前記ランド部50が、ファン14の下端部高さと略同一高さで形成されているため、該ファン14のボス部26に沿って流れた空気がブレード22の下部から外周側へと導出されることで前記水分が径方向外側へと押し戻され内周側への浸入がさらに確実に阻止される。
【0034】
そのため、通路部16の下流側において、吐出通路38から内周側に設けられた駆動源12側への水分の浸入が防止され、この浸入に起因した駆動源12の不具合を好適に阻止することが可能となる。
【0035】
また、上述したロアケース34のランド部50は、下方に開口し上部に天井部58を有した断面U字状に形成される場合に限定されるものではなく、例えば、図3に二点鎖線形状で図示されるように、吐出通路38側に立設した第1壁部52aと、挿通孔48の外周側に立設した第2壁部54aとから構成するようにしてもよい。この第1壁部52と第2壁部54とは、通路部16の上流側において端部同士が接合された略V字状に形成される。このような構成とした場合でも、天井部58を有したランド部50と略同等の効果が得られる。
【0036】
なお、本発明に係る遠心式送風機は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
10…遠心式送風機 12…駆動源
14…ファン 16…通路部
18…ケーシング 28…ケース本体
34…ロアケース 36…渦巻通路
38…吐出通路 40…吐出口
42…舌部 50…ランド部
52…第1壁部 54…第2壁部
56…第3壁部 58…天井部
図1
図2
図3
図4