【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カートリッジのピストンと動作可能に係合して、用量投薬行為中にカートリッジのピストンを遠位方向に変位させるためのピストン・ロッドを少なくとも有する薬物送達デバイスのための駆動機構に関する。一般的には、バイアル、カルプル、またはアンプルを備えるカートリッジは、駆動機構によって投薬されるべき薬剤で少なくとも部分的に充填される。駆動機構は、一般的には、駆動機構の作動の時、それぞれの推力をピストンに及ぼすために摺動モーションまたはらせん状モーションのどちらかによって、ピストン・ロッドが遠位方向に変位されるなどのような方法で、薬物送達デバイスのハウジング内に収容される。このようにして、薬剤の明確な用量を、カートリッジから遠位出口を介して排出することができ、この遠位出口は、一般的には、用量を患者の生体組織に置くことができる両頭(double−tipped)注射針のようなニードル・アセンブリと連結される。
【0009】
駆動機構は、ピストン・ロッドと機械的に連結して、作動部材が作動される、たとえば使用者によって押し下げられると、ピストン・ロッドの遠位方向に向けられた変位を誘発する、少なくとも1つの作動部材をさらに備える。
【0010】
駆動機構は、たとえば駆動機構および/または薬物送達デバイスの少なくとも1つの所定の使用条件を確認するための制御ユニットまたは制御モジュールの形態をとった、制御部をさらに備える。この制御部は、特に、デバイスの定期的な作動を監視するように適合される。この制御部は、さらに、薬物送達デバイスの種々のパラメータを分析および/または評価し、収集したパラメータまたはデータを所定の処方スケジュールと比較するように適合される。
【0011】
このようにして、制御部は、用量設定および用量投薬が実際に満期であるかどうか、ならびに/または用量注射がデバイスの所定の使用条件に適合するかどうか判断するように適合される。さらに、駆動機構は、制御部と連結され、使用条件が満たされない場合にピストン・ロッドの変位を直接的または間接的に機械的に妨害する、少なくとも1つのインターロック部材を備える。
【0012】
本出願によれば、「使用条件」という用語は、限定するものではないが、
− デバイスが、たとえば所定の処方スケジュールに従った、薬剤投薬のために使用されること;
− 駆動機構が作動されること;
− 既知のサイズの用量が投薬されること
− 皮膚接触が確立されること;
− 使用者は、デバイスの使用が許可されている;
− 薬剤が使用可能であり、損傷または廃棄されていない;
− デバイスが、たとえば投薬チャネルを薬剤で充填することによって投薬チャネルから空気を除去するために、プライミングを必要とすること;;
− タイマ回路が、以後の用量投薬行為と用量投薬行為の間の最小期間を強制することなどの条件を含む。
【0013】
第1の手法では、インターロック部材は、全般的に、用量投薬が達成された直後のピストン・ロッドの変位を妨害および阻害する。このようにして、用量がいったん投薬される
と、薬物送達デバイス、特にその駆動機構は、少なくとも所定の期間にわたって停止状態にされる。前記期間が経過した後、制御部は駆動機構をリセットする働きをし、したがって、使用条件は繰り返し満たされる。制御部は、次に、少なくとも1つのインターロック部材を解放構成に移送するように適合され、解放構成では、駆動機構およびそのピストン・ロッドは、以後の用量設定手順および/または用量投薬手順のために作動させることができる。
【0014】
制御部および少なくとも1つのインターロック部材は、駆動機構および/または薬物送達デバイスの一体部材として設計される。このようにして、制御部およびインターロック部材は、駆動機構の動作を停止状態にするおよび/または妨害するように有効にされる。したがって、デバイスおよびその駆動機構の意図的な不適切な取り扱いまたは不適切な動作および使用のリスクをも効果的に低下させることができる。
【0015】
駆動機構は、すべて機械的な方法で実施することができる。したがって、カートリッジ内に含まれる薬剤の投薬につながるピストン・ロッドの変位は、使用者自身によって完全に実行され、及ぼされ、または提供される、作動部材の作動によってもたらされる。駆動機構は、たとえば、ばねエネルギー・アキュムレータによる機械的エネルギーを格納するための格納モジュールを備えることができる。しかし、すべて機械的にまたは電気機械的に実施されうる駆動機構の具体的な実施形態とは無関係に、少なくとも1つのインターロック部材は、駆動機構の動作を機械的に妨害するように、および/またはピストン・ロッドの変位を阻害するように適合される。したがって、薬物送達デバイスの電気機械的に駆動されたピストン・ロッドまたは駆動機構を用いてさえ、本発明は、デバイスの意図されていない不適切な取り扱いを阻害するためのオン・デバイスの(on−device)機械的なインターロックを提供することができる。
【0016】
好ましい一実施形態によれば、インターロック部材は、ピストン・ロッド、駆動部材、作動部材のいずれか1つと、またはそれと直接的もしくは間接的に機械的に係合する駆動機構の他の任意の部材と、解放可能に係合するように適合される。原理上は、インターロック部材は、作動力を受けるように適合された作動部材とカートリッジのピストンに投薬力を及ぼすように適合されたピストン・ロッドとの間でのトルクまたは力の移送システム内にある駆動機構のいずれの部材とも解放可能に係合することができる。少なくとも1つのインターロック部材と駆動機構の少なくとも1つの部材の相互係合は、たとえば掛止機構またはクランピング機構の形態で、すべて機械的に実施することができる。
【0017】
さらに、インターロック部材の電気機械的実装形態または電磁的実装形態も一般に考えられる。インターロック部材によって提供される駆動機構の部材の遮断または妨害は、確動嵌め(positive−fitting)インターロックまたは圧力嵌めインターロックとして実施することができる。インターロック部材は、ピストン・ロッドの実装形態に応じて、遠位方向および/または近位方向のピストン・ロッドの回転モーションおよび/または摺動モーションを阻害および/または妨害するように適合されてよい。
【0018】
他の実施形態によれば、制御部は、駆動機構の使用者主導型の作動を監視および/または検証するように適合される。駆動機構の作動は、用量設定ならびに用量投薬を含むことができ、たとえば通常は薬物送達デバイスの近位端にある作動部材を近位方向または遠位方向のどちらかの方向に変位させることによって達成することができる。
【0019】
別の好ましい態様によれば、制御部は、駆動機構の作動が少なくとも1つの所定の使用条件に適合するかどうか検証するように適合される。一般的には電子的制御モジュールとして実施される制御部は、好ましくは、駆動機構のその後の作動手順または作動時点(instant)を記憶および記録するように適合される。このようにして、制御部は、駆
動機構の作動および/または既知のサイズの用量の投薬が行われた時刻を示すデータを繰り返し取得することができる。記録されたデータを、制御部に構成可能に記憶された所定の処方スケジュールと比較することによって、所定の使用条件との合致および遵守を判断することができる。
【0020】
別の好ましい態様によれば、駆動機構は、薬物送達デバイスの実状態を示す状態情報を収集するために、多数のセンサまたは種々のモジュールおよびユニットを備える。そのような状態情報に基づいて、少なくとも1つの使用条件の遵守を判断することができる。この目的のために、駆動機構は、ピストン・ロッドおよび/またはカートリッジのピストンと機械的に連結された圧力センサをさらに備えることができる。駆動機構は、許可および/または通信モジュール、化学分析モジュール、患者の皮膚との接触を登録するための皮膚タッチ・センサ、タイマ回路、電気機械振動モジュール、ならびに/または少なくとも1つの視覚的インジケータ、可聴式インジケータ、および/もしくは触覚的インジケータも備えることができる。
【0021】
前述のすべての部材は、駆動機構に属してもよいし、駆動機構に統合されてもよい。これらの部材は、特に、インターロック部材を解放し、駆動機構の動作および作動を開放するために少なくとも1つの所定の使用条件が満たされているか判断する目的で、駆動機構の制御部と通信するように適合される。あるいは、前記部材は、薬物送達デバイス内またはその上の別の場所に製造および/または位置してよく、駆動機構から独立して設計されてよい。
【0022】
たとえば、圧力センサを用いて、ピストン・ロッドとカートリッジのピストンの間の相互当接を判断することができる。したがって、ピストン・ロッドからピストンに及ぼされる圧力が所与の閾値以下である場合、カートリッジからの用量の投薬の前に、駆動機構のプライミングおよびピストン・ロッドとカートリッジのピストンとの緊密な相互当接の確立が必要になることがある。
【0023】
また、許可および/または通信モジュールは、デバイスを実際に扱うまたは作動する人間が、取り扱いまたは作動を許可されているかどうか検知することができる。その人間は、トランスポンダおよび/またはたとえばRFID技術に基づく識別タグを装備することができる。許可および/または通信モジュールは、次に、薬物送達デバイスの用量設定および/または用量投薬の作動へのアクセスを提供するために、使用者のRFIDタグまたはトランスポンダと通信するように適合される。
【0024】
さらに、化学分析モジュールを用いて、カートリッジ内に含まれる薬剤の使用性を頻繁に監視および制御することができる。たとえば、化学分析モジュールは、薬剤の使用性を得ることが可能な、pHパラメータなどのような薬剤の物理的性質または化学的性質を調べるように適合されてよい。
【0025】
さらに、駆動機構は、薬物送達デバイスの遠位投薬端の近くに設置されうる皮膚タッチ・センサを装備することができる。皮膚タッチ・センサを用いて、薬剤の用量を受ける生体組織との薬物送達デバイスの接触を正確に検知することができる。このようにして、制御部は、皮膚接触が判断された場合のみ、用量投薬の作動を解除することができる。
【0026】
さらに、駆動機構はタイマ回路を装備することができ、このタイマ回路は、制御部モジュールに埋め込まれてもよいし、駆動機構および/または薬物送達デバイス内またはその上のどこかに組み付けられてもよい。タイマ回路を用いて、以後の用量投薬行為と用量投薬行為の間の最小期間を強制することができる。したがって、制御部は、前回の用量投薬の達成後の所定の期間にわたって、駆動機構を自動的に停止状態にするおよび/または妨
害することができる。制御部およびインターロック部材は、好ましくは、駆動機構の一体部材として設計されるので、この安全機能の意図的な操作および無効化をほぼ除外することができる。
【0027】
駆動機構は、電気機械振動モジュールを用いて、用量設定手順および/または用量投薬手順の前またはその間に、使用者と相互作用することができる。セルフメディケーションを行う使用者は、一般的には、少なくとも片手に薬物送達デバイスを保持するので、視覚的または聴覚的に障害を持つ場合でさえ、駆動機構の振動は使用者によって十分に知覚される。
【0028】
さらに、またはあるいは、駆動機構は、少なくとも、視覚的インジケータ、可聴式インジケータ、および/または触覚的インジケータを装備することができる。このようにして、駆動機構および薬物送達デバイスは、所定の使用条件が実際に満たされているかどうか、およびデバイスの使用準備が整っていることを、視覚的および/または聴覚的および/または触覚的に使用者に示すことができる。
【0029】
制御部は、所定の使用条件が満たされているかどうか自動的に判断するために、上述の部材、センサ、およびモジュールの少なくとも1つ、好ましくはいくつかと通信することができる。
【0030】
さらなる好ましい一実施形態によれば、制御部は、少なくとも1つの使用条件が満たされる時にのみ、解放モードのインターロック部材を移送するように特に構成される。このようにして、駆動機構および/または少なくともそのピストン・ロッドは、デバイスの意図されていないまたは許可されていない取り扱いまたは適用を効果的に打ち消すために、デフォルトでは、妨害された構成またはインターロックされた構成のままである。
【0031】
さらに、別の好ましい実施形態によれば、インターロック部材は、使用条件が満たされない場合に、使用者が開始した用量設定および/または用量投薬の作動を解放可能に妨害するように特に適合される。特に、ペン型注射器などのような機械的に実施される駆動機構では、使用条件が満たされていないことは、自動的に、駆動機構の完全な妨害および遮断につながることがある。この場合、用量投薬の前に実行される用量設定でさえ、効果的に防止されることがある。
【0032】
別の態様によれば、制御部は、デバイスの作動が満期であるという、使用者への視覚的指示、可聴式指示、および/または触覚的指示をトリガすることがさらに可能である。このようにして、駆動機構は、用量設定手順および/または用量投薬手順を実行することを患者に思い出させる働きをする統合されたウェイクアップ機能またはリマインダ機能を提供することができる。したがって、駆動機構は、薬剤の用量を服用することを使用者に能動的に思い出させる。
【0033】
さらに、別の実施形態によれば、制御部は、駆動機構を正しく動作させるように、および駆動機構および/または薬物送達デバイスを適切に扱うように、視覚的に、可聴的に、および/または触覚的に使用者に示すことがさらに可能である。したがって、用量設定、ニードル・アセンブリの最終的な通気(ventilating)、用量投薬、および生体組織からニードル・アセンブリを抽出する前の所定の滞留時間の待機という種々の工程は、制御部を伴うことができる。種々のセンサおよび検知モジュールは、駆動機構および/または薬物送達デバイスを動作させて扱う種々の工程を識別するために、制御部にそれぞれの情報を提供することができるように適合され得る。したがって、種々の取り扱い工程を検出することに対して、制御モジュールは、デバイスおよび/または駆動機構が実際に適切に扱われ動作させられていても、そうでなくても、それぞれの視覚的指示、可聴式
指示、および/または触覚的指示を使用者に提供することができる。
【0034】
さらなる好ましい一態様では、本発明はまた、薬物送達デバイス、好ましくは薬剤用量を設定および/または投薬するように適合されたペン型注射器にも関する。薬物送達デバイスは、投薬されるべき薬剤で充填されたカートリッジを受けるためのカートリッジ・ホルダを備える。デバイスは、駆動機構を収容するためのハウジングまたはハウジング部材をさらに備える。このハウジングは、さらに、カートリッジ・ホルダと動作可能に連結されることになる。ハウジングは、好ましくは、近位ハウジング部材として設計されるが、カートリッジ・ホルダは、この近位ハウジング部材と解放可能にまたは解放不可能に相互接続された遠位ハウジング部材として働くことができる。
【0035】
一般に、薬物送達デバイスが、カートリッジ・ホルダならびにカートリッジと相互作用する駆動機構用のケーシングの両方を提供する、単一部材からなる(single−pieced)ハウジングを備えることも考えられる。薬物送達デバイスは、上述の機能を提供するために、上記で説明した駆動機構をさらに備える。
【0036】
好ましい一実施形態では、薬物送達デバイスは、薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダおよび/またはハウジング内に設置されたカートリッジも備え、カートリッジは、薬物送達デバイスによって投薬されるべき薬剤で少なくとも部分的に充填される。
【0037】
さらなる好ましい一実施形態では、薬物送達デバイスのハウジングおよび/またはそのカートリッジ・ホルダは、使用条件が実際に満たされているかどうか、ならびに用量設定および/または用量投薬を実行することができるかどうかをそれぞれ使用者に示すための視覚的インジケータ、可聴式インジケータ、および/または触覚的インジケータを備える。
【0038】
さらなる好ましい一態様では、本発明は、薬剤で充填されたカートリッジを備え、上記で説明した駆動機構をさらに備える薬物送達デバイスを動作させる方法にも関する。薬物送達デバイスを動作させる方法は、制御部による駆動機構の用量設定および/または用量投薬の作動を監視する工程を含む。さらに、薬物送達デバイスの少なくとも1つの実状態パラメータが判断され、さらに、薬物送達デバイスの少なくとも1つの所定の使用条件と比較される。
【0039】
実状態パラメータが所定の使用条件に適合しない場合、駆動機構は、駆動機構の任意であるが力またはトルクを伝達する部材と解放可能に係合するように適合された薬物送達デバイスのインターロック部材によって、機械的に妨害される。しかし、判断された状態パラメータが少なくとも1つの所定の使用条件に適合する場合、たとえば用量設定および/または用量投薬を目的とした駆動機構の作動が解放され、デバイスは、かなり従来的な方法で使用することができる。
【0040】
さらなる一態様では、本発明は、薬剤で充填されたカートリッジを備え、上記で説明した駆動機構をさらに備える薬物送達デバイスの動作方法にも関する。この動作方法は、制御部による駆動機構の用量設定および/または用量投薬の作動を監視する工程を含む。さらに、薬物送達デバイスの少なくとも1つの実状態パラメータが判断され、さらに、薬物送達デバイスの少なくとも1つの所定の使用条件と比較される。
【0041】
実状態パラメータが所定の使用条件に適合しない場合、駆動機構は、駆動機構の任意であるが力またはトルクを伝達する部材と解放可能に係合するように適合された薬物送達デバイスのインターロック部材によって、機械的に妨害される。しかし、判断された状態パラメータが少なくとも1つの所定の使用条件に適合する場合、たとえば用量設定および/
または用量投薬を目的とした駆動機構の作動が解放され、デバイスは、かなり従来的な方法で使用することができる。
【0042】
さらなる好ましい一実施形態では、薬物送達デバイスのハウジングおよび/またはそのカートリッジ・ホルダは、使用条件が実際に満たされているかどうか、ならびに用量設定および/または用量投薬を実行することができるかどうかをそれぞれ使用者に示すための視覚的インジケータ、可聴式インジケータ、および/または触覚的インジケータを備える。上記で述べた薬物送達デバイスの動作方法は、使用条件が実際に満たされているかかどうか使用者に示す工程と、用量設定および/または用量投薬を実行することができるかどうか使用者に示す工程とをさらに含む。
【0043】
さらに別の態様では、本発明は、少なくとも1つの状態パラメータを判断するように、ならびに/または薬物送達デバイスおよび/もしくはその駆動機構の少なくとも1つの所定の使用条件を判断するように動作可能なコンピュータ実行可能命令を備えるコンピュータ・プログラムにも関する。命令は、さらに、上述の方法を実行するために状態パラメータを使用条件と比較するように動作可能である。
【0044】
本明細書において説明するすべての特徴および実施形態は、駆動機構、薬物送達デバイス、ならびに薬物送達デバイスおよびその駆動機構を動作させる方法、ならびにそれらに関連するコンピュータ・プログラムに等しく適用されることを理解されるべきであることに留意されたい。具体的には、特定の動作を実行するように構成または配置された部材はそれぞれの方法またはプログラム工程を開示し、その逆も同様であることを理解されたい。
【0045】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0046】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B2
7)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0047】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0048】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0049】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジ
ン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0050】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)
14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0051】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0052】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0053】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0054】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な
免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0055】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0056】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0057】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0058】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0059】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0060】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。
薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0061】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0062】
さらに、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の修正および変形を本発明に加えることができることも、当業者には明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲において使用される参照符号は本発明の範囲を限定的するものとして解釈すべきではないことに留意されたい。
【0063】
以下では、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する: