(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441446
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ナノファイバ含有複合構造体
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20181210BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20181210BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20181210BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20181210BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20181210BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20181210BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/24 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/60 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/62 20060101ALI20181210BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
B01D39/16 E
D04H1/728
D04H1/4382
B01D39/16 C
B01D71/56
B01D69/12
B01D69/10
B01D69/02
B01D71/16
B01D71/26
B01D71/30
B01D71/42
B01D71/38
B01D71/48
B01D71/34
B01D71/54
B01D71/68
B01D71/52
B01D71/24
B01D71/60
B01D39/16 A
B01D71/28
B01D71/62
B01D71/64
【請求項の数】29
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-236639(P2017-236639)
(22)【出願日】2017年12月11日
(62)【分割の表示】特願2016-124207(P2016-124207)の分割
【原出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2018-79465(P2018-79465A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/510,290
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヌアー・ワイ・カス
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・コズロフ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・タシツク
(72)【発明者】
【氏名】デイビツド・ニエム
(72)【発明者】
【氏名】フイリツプ・ゴダード
(72)【発明者】
【氏名】シエリー・アシユビー・レオン
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−520761(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/107503(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/017086(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/068100(WO,A1)
【文献】
特開2000−325764(JP,A)
【文献】
特開2007−301436(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073958(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0114554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00−39/20
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する多孔性の支持体上に製造された、厚さが70μm未満である多孔性ポリマーナノファイバ層を含む多孔性ナノファイバ含有媒体であって、
少なくとも、多孔性ポリマーナノファイバ層に対向する前記支持体の表面上で、前記表面の二乗平均平方根高さが70μm未満であり、
前記媒体が8を超える微生物対数減少値(Log Reduction Value(LRV))を99.9%保証で有する、媒体。
【請求項2】
少なくとも、前記多孔性ポリマーナノファイバ層に対向している前記支持体の表面上で、前記表面の二乗平均平方根高さが47μm未満である、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項3】
前記多孔性ポリマーナノファイバ層の厚さが55μm未満である、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項4】
前記支持体が不織布、織布およびフィルムから成る群より選択される、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項5】
前記支持体が多孔性不織布である、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項6】
前記多孔性ポリマーナノファイバ層が静電紡糸マットである、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項7】
前記多孔性ポリマーナノファイバ層がポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(ウレアウレタン)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、これのコポリマー、誘導体化合物またはブレンドから成る群より選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項8】
前記多孔性ポリマーナノファイバ層が脂肪族ポリアミドを含む、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項9】
前記多孔性ナノファイバ含有媒体が1μmから500μmの厚さを有する、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項10】
前記多孔性ナノファイバ含有媒体が5μmから100μmの厚さを有する、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項11】
前記多孔性ポリマーナノファイバ層が静電紡糸およびエレクトロブローから成る群より選択される工程によって形成される、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項12】
前記支持体が10μmから1000μmの厚さを有する、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項13】
前記支持体がメルトブロー、湿式積層、スパンボンド、カレンダー加工およびこれの組合せによって製造される1つ以上の層を含む、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項14】
前記支持体が熱可塑性ポリマー、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、これのコポリマー、ポリマーブレンドおよび組合せを含む、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項15】
前記媒体が前記ナノファイバ層に隣接して多孔性材料をさらに含み、および前記ナノファイバ層の最も密な孔径が前記多孔性材料の最も密な孔径よりも小さい、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項16】
多孔性支持体材料がスパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、湿式積層不織布、樹脂接合不織布、織布、編布、紙およびこれの組合せから成る群より選択される1つ以上の層を含む、請求項15に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項17】
前記媒体が1200LMH/psiを超える液体透過率を有する、請求項1に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項18】
前記液体透過率が5,000LMH/psiを超える、請求項17に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項19】
表面を有する多孔性の支持体上に製造された、厚さが70μm未満である多孔性ポリマー静電紡糸ナノファイバマットを含む多孔性ナノファイバ含有媒体であって、
少なくとも、前記多孔性ポリマー静電紡糸ナノファイバマットに対向する前記支持体の表面上で、前記表面の二乗平均平方根高さが70μm未満であり、前記媒体が8を超える微生物対数減少値(LRV)を99.9%保証および1200LMH/psiを超える液体透過率と共に有する、媒体。
【請求項20】
少なくとも、前記多孔性ポリマー静電紡糸ナノファイバマットに対向している前記支持体の表面上で、前記表面の二乗平均平方根高さが47μm未満である、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項21】
前記液体透過率が5,000LMH/psiを超える、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項22】
前記多孔性ポリマー静電紡糸ナノファイバマットが脂肪族ポリアミドを含む、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項23】
前記多孔性媒体が1μmから500μmの厚さを有する、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項24】
前記支持体が不織布、織布およびフィルムから成る群より選択される、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項25】
前記支持体が多孔性不織布である、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項26】
前記支持体が熱可塑性ポリマー、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、これのコポリマー、ポリマーブレンドおよび組合せを含む、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項27】
前記支持体が10μmから1000μmの厚さを有する、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項28】
前記多孔性媒体が前記多孔性ポリマー静電紡糸ナノファイバマットに隣接して多孔性材料をさらに含み、および前記ナノファイバマットの最も密な孔径が前記多孔性材料の最も密な孔径よりも小さい、請求項19に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【請求項29】
多孔性材料がスパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、湿式積層不織布、樹脂接合不織布、織布、編布、紙およびこれの組合せから成る群より選択される1つ以上の層を含む、請求項28に記載の多孔性ナノファイバ含有媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年7月21日に出願された米国仮特許出願第61/510,290号の利益を主張し、この全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、液体濾過媒体に関する。ある実施形態において、本発明は、液体濾過媒体ならびに濾過液体からの微生物捕捉のための液体濾過媒体の使用および作製方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
合成ポリマーは、多様な工程、例えばメルトブロー、電界紡糸およびエレクトロブローを用いて、非常に小径の繊維(即ち2、3ミクロン(μm)以下程度の直径)のウェブに形成されてきた。このようなウェブは、液体バリア材料およびフィルタとして有用であることが示されてきた。これらはより強靭な基材としばしば組み合わされて、複合材を形成する。
【0004】
生物製剤の製造では、操作を合理化する方法、工程を集約・除去する方法、医薬品物質の各バッチの処理に要する時間を短縮する方法が常に求められている。同時に、市場や規制の圧力によって、生物製剤メーカーはコスト低減を迫られている。細菌、マイコプラズマおよびウイルスの除去は、医薬品物質の精製の総コストのかなりのパーセンテージを占め、多孔性メンブレンによる濾過のスループットを向上させて、精製処理時間を短縮する手法が強く求められている。
【0005】
プレフィルトレーション媒体の導入ならびに対応する細菌、マイコプラズマおよびウイルス捕捉フィルタのスループットの上昇により、供給流の濾過は流束に制限されるようになってきている。このため、細菌、マイコプラズマおよびウイルス捕捉フィルタの透過率の劇的な改善が行われば、細菌、マイコプラズマおよびウイルス濾過ステップのコストに直接有益な影響を及ぼす。
【0006】
液体濾過で使用するフィルタは概して、繊維状不織媒体フィルタまたは多孔性フィルム・メンブレン・フィルタのどちらかとして分類することができる。
【0007】
多孔性フィルムメンブレン液体フィルタまたは他の種類の濾過媒体は、支持体なしで、または多孔性基材もしくは支持体と併せてのどちらかで使用できる。多孔性繊維状不織媒体より通例小さい孔径を有する、多孔性フィルム液体濾過メンブレンは、
(a)液体から濾過される微粒子が通例約0.1ミクロン(μm)から約10μmの範囲である、精密ろ過(MF)、
(b)液体から濾過される微粒子が通例、約2ナノメートル(nm)から約0.1μmの範囲である、限外濾過(UF)、および
(c)粒子状物体が通例、約1Åから約1nmの範囲である、逆浸透(RO)で使用することができる。
【0008】
レトロウイルス捕捉メンブレンは通常、限外濾過メンブレンの開放端上にあると見なされる。
【0009】
高透過率および高信頼性の捕捉力は、液体濾過メンブレンで要求される2つのパラメータである。しかし、これらの2つのパラメータの間にはトレードオフがあり、同じ種類の液体濾過メンブレンでは、透過率を犠牲にすることによって、より大きい捕捉力を得ることができる。液体濾過メンブレンを作製する従来の方法の固有の制限により、メンブレンが多孔性のある閾値を超えることが妨げられ、このため所与の孔径にて得られる透過率の大きさが制限される。
【0010】
繊維状不織液体濾過媒体としては、これに限定されるわけではないが、スパンボンド、メルトブローまたはスパンレース連続繊維から形成された不織媒体、カード式短繊維などから形成された水流交絡不織媒体およびまたはこれの組合せが挙げられる。通例、液体濾過で使用する繊維状不織は、概して、約1μmを超える孔径を有する。
【0011】
不織材料は、濾過製品の製造に広く使用されている。プリーツ・メンブレン・カートリッジとしては通常、ドレーン層としての不織材料が挙げられる(例えば、それぞれポールコーポレーションに譲渡された、米国特許第6,074,869号、第5,846,438号および第5,652,050号明細書、ならびにキュノInc、現在3MピュリフィケーションInc.に譲渡された米国特許第6,598,749号明細書を参照のこと。)
【0012】
不織微孔性材料は、マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポアコーポレーションによるバイオマックス(登録商標)限外濾過メンブレンなどの、上に位置する隣接多孔性メンブレン層用の支持スクリーンとして使用することもできる。
【0013】
不織微孔性材料は、EMDミリポアコーポレーションからまた入手可能なミリガード(商標)などの、不織微孔性構造体上に位置する多孔性メンブレンの強度を向上させるための支持骨格としても使用することができる。
【0014】
不織微孔性材料は、概して約1μmを超える直径を有する懸濁粒子を除去することによって、不織微孔性材料の下流に配置された多孔性メンブレンの能力を向上させるための「粗プリフィルトレーション」にも使用できる。多孔性メンブレンは通常、明確な孔径または分子量カットオフを有するクリティカル・バイオセイフティ・バリアまたは構造体を提供する。クリティカル濾過は、微生物およびウイルス粒子を、期待通りにおよび検証可能に確実に、高度除去(規定の試験によって定義されるように、通例99.99%超)を行うことを特徴とする。クリティカル濾過は、複数の製造段階ならびに使用時点での液体薬品および液体生物製剤の滅菌性を確保するために、日常的に依拠されている。
【0015】
メルトブローおよびスパンボンド繊維状媒体は、「伝統的な」または「従来の」不織布と呼ばれることが多い。これらの伝統的な不織布における繊維は、通常、直径が少なくとも約1,000nmであり、従って伝統的な不織布の有効孔径は、約1ミクロンより大きい。伝統的な不織布の製造方法によって、通例、高度に不均質な繊維マットが得られる。
【0016】
歴史的に、メルトブローおよびスパンボンドなどによる従来の不織マット形成のランダムな特性のために、不織マットは液体流のいずれのクリティカル濾過にも不適切であるという一般的な仮説につながり、従って、従来の不織布マットを包含する濾過デバイスによって、通例、従来の不織布マットの下流に配置された多孔性クリティカル濾過メンブレンの能力を向上させるために、これらのマットはプレフィルトレーション目的のみに使用される。
【0017】
別の種類の不織布としては、電界紡糸ナノファイバ不織マットが挙げられ、これは「伝統的な」または「従来の」不織布と同様に、液体流のクリティカル濾過には概して不適切であると想定されてきた(例えばBjorge et al.,Performance assessment of electrospun nanofibers for filter applications,Desalination,249,(2009),942−948を参照のこと)。
【0018】
電界紡糸ポリマー・ナノファイバ・マットは多孔性が高く、ここで「孔」径は繊維径にほぼ直線的に比例し、多孔性は繊維径とは比較的無関係である。電界紡糸ナノファイバマットの多孔性は、通常、約85%から90%の範囲に含まれ、同様の厚さおよび孔径等級を有する湿式相転換(immersion cast)メンブレンと比較した場合に、劇的に改善された透過率を示すナノファイバマットを生じる。多孔性メンブレンに勝る電界紡糸ポリマー・ナノファイバ・マットの多孔性の利点は、上で論じたUFメンブレンの孔径が縮小しているため、ウイルス濾過に通例必要とされるより小さい孔径範囲で増大する。
【0019】
電界紡糸ナノファイバ不織マットは、従来のまたは伝統的な不織布の作製で使用されるメルトブロー、湿式積層または押出製造工程ではなく、電位を使用してポリマー溶液または溶融物を紡糸することによって製造される。電界紡糸によって通例得られる繊維径は、10nmから1,000nmの範囲にあり、従来のまたは伝統的な不織布よりも1から3桁小さい。
【0020】
電界紡糸ナノファイバマットは、溶解または溶融ポリマー材料を第1の電極に隣接して置き、溶解または溶融ポリマー材料を第1の電極から第2の電極に向かって繊維として引き出されるように電位を印加することによって形成される。電界紡糸ナノファイバマットの製造方法においては、孔径分布が非常に大きくなるため、繊維は、熱風ブローまたは他の機械的手段によって強制的にはマットに配置されない。むしろ、電界紡糸ナノファイバ間の相互の電気的反発により、電界紡糸ナノファイバは、高度に均一なマットを形成する。
【0021】
EMDミリポアコーポレーションに譲渡されたWO2010/107503は、特定の厚さおよび繊維径を有するナノファイバマットが、液体透過率と微生物捕捉との組合せを改善することを教示している。教示されている最も薄い試料は厚さ55μmで透過率が4,960lmh/psiであるが、捕捉保証を決定する方法も、達成された保証のレベルも記載されていない。概して、ナノファイバマットは、匹敵する捕捉力を有する、これに対応する多孔性メンブレンマットよりも2から10倍良好な透過率を提供し、このことはナノファイバマットが高い多孔性(代表的な湿式流延多孔性メンブレンの70から80%に対して約90%)を有する結果であると考えられる。
【0022】
電界紡糸ナノファイバマットは、従来のスパンボンド不織布に繊維を被着させることによって製造できる(不織層およびナノファイバ層の対面インタフェース(face to face interface)の例は、これの全体が参照により本明細書にそれぞれ組み込まれる、エルマルコs.r.oに譲渡されたWO2009/010020、およびクラーコアInc.に譲渡された米国特許出願公開第2009/0199717号明細書に教示されている。)。これらの各手法において、支持不織布の表面粗さはナノファイバ層中に伝わって、ナノファイバ構造体が潜在的に不均一となり、これにより捕捉特徴を損なう可能性がある。
【0023】
Jirsakらに付与された米国特許第7,585,437号明細書は、電界紡糸を使用してポリマー溶液からナノファイバを製造するノズルフリー法および該方法を行うためのデバイスを教示している。
【0024】
参照によりこれの全体が本明細書に組み込まれる、ナノテクニクスCo.LTD.に譲渡されたWO2003/080905は、エレクトロブロー方法を教示し、該方法では、ポリマーおよび溶媒を含むポリマー溶液流が貯蔵タンクから紡糸口金内の一連の紡糸ノズルまで給送され、紡糸口金には高電圧が印加され、紡糸口金を通じてポリマー溶液が放出される。場合により加熱されてもよい圧縮空気が、紡糸ノズルの側部または周囲に配置された空気ノズルから放出される。圧縮空気は概して、ブローガス流エンベロープ(envelopes)として下方に方向付けられて、新たに流出したポリマー溶液を送り出し、これによりナノファイバ状ウェブの形成が補助され、ナノファイバ状ウェブは真空チャンバ上の接地多孔性収集ベルト上で収集される。
【0025】
Schaeferらに対する米国特許出願公開第2004/0038014号明細書は、汚染物質を濾過するための、電界紡糸によって形成された微細ポリマーマイクロファイバおよびナノファイバの1層以上の厚手の集合体を含む不織濾過マットについて教示している。
【0026】
Greenに対する米国特許出願公開第2009/0199717号明細書は、相当量の電界紡糸繊維が100ナノメートル(nm)未満の直径を有する電界紡糸繊維層を基材層の上に形成する方法について教示している。
【0027】
Bjorgeらは、Bjorge et al.,Desalination 249(2009)942−948において、約50nmから100nmのナノファイバ径および約120μmの厚さを有する、電界紡糸ナイロン製ナノファイバマットについて教示している。非表面処理繊維について測定した細菌LRVは1.6から2.2である。Bjorgeらは、ナノファイバ電界紡糸マットの細菌除去効率が不十分であると結論付けているといわれる。
【0028】
Gopalらは、Gopal et al.,Journal of Membrane Science 289(2007)210−219は、ナノファイバが約470nmの直径を有する、電界紡糸ポリエーテルスルホン製ナノファイバマットについて教示している。液体濾過の間、ナノファイバマットは、1ミクロン(μm)を超える粒子を濾過する篩として、および1ミクロン未満より小さい粒子用のデプスフィルタ(例えばプレフィルタ)として作用する。
【0029】
Aussawasathienらは、Aussawasathien et al.,Journal of Membrane Science,315(2008)11−19において、約0.5μmから10μm直径を有するポリスチレン粒子の除去に使用される、約30nmから110nmの直径を有する電界紡糸ナノファイバについて教示している。
【0030】
研究者が収集電極特性を調査する1つの理由は、この電極で収集されたナノファイバの配向を制御するためである。Liらは、Li et al.,Nano Letters,vol.5,no.5(2005)913−916において、収集電極に絶縁ギャップを導入することならびに導入された絶縁ギャップの範囲および幾何形状の効果について記載している。Liらは、ナノファイバの組立ておよび配列が収集電極パターンを変更することによって制御できることを示した。
【0031】
しかし、上で論じられたナノファイバマットの教示のいずれも、ナノファイバの性能と基材表面特性との関係について教示していない。
【0032】
粗さなどの幾何表面特性に焦点を当てた幾つかの方法が公開されている。例えば米国特許出願公開第2011/0305872号明細書、表題「非汚染性、抗菌性、抗血栓性グラフトフロム組成物(NON−FOULING,ANTI−MICROBIAL,ANTI−THROMBOGENIC GRAFT−FROM COMPOSITONS)」は、ポリマー層をグラフトすることによって基材の表面粗さを変更して、この基材への生物製剤の結合特性を変化させることについて記載している。オリンパスLEXT OLS4000レーザー共焦点顕微鏡を使用して基材の表面粗さを決定するための、光学的形状計測法が記載されている。
【0033】
EMDミリポアコーポレーションに譲渡された米国仮特許出願第61/470,705号明細書は、平滑精密濾過メンブレン基材によって支持された微生物捕捉電界紡糸ナノファイバマットを製造することについて教示している。ナノファイバのマットを収集するために、粗不織基材に対して平滑メンブレン基材を使用することにより、伝統的に使用されている粗不織基材上に収集されたファイバマットと比べて薄いナノファイバマットを用いて、同じレベルの微生物除去を達成することができる。収集支持体の表面粗さが、収集支持体の上に被着されている電界紡糸マットの品質に直接影響を及ぼすことが仮定されている。
【0034】
粗不織収集支持体を平滑精密濾過メンブレン収集支持体に代えることによって、幾つかの性能上の利点が提供されることがあるが、このことにより非常に限定された商業上の利益または成功が達成され得るのみであるのは、精密濾過メンブレン支持体が、はるかに安価な不織支持体と比べて相当コストがかかるためである。
【0035】
クリティカル濾過用途では、高い微生物捕捉を達成すること自体は十分ではないが、信頼性の高い方法により高い保証で微生物捕捉を達成することが要求されている。捕捉保証を予測するために、信頼性について寿命データを解析し、寿命が打ち切られる、打ち切りデータ回帰などの統計的方法がよく使用される。(Blanchard,(2007),Quantifying Sterilizing Membrane Assurance,BioProcess International,v.5,No.5,pp.44−51)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第6,074,869号明細書
【特許文献2】米国特許第5,846,438号明細書
【特許文献3】米国特許第5,652,050号明細書
【特許文献4】米国特許第6,598,749号明細書
【特許文献5】国際公開第2010/107503号
【特許文献6】国際公開第2009/010020号
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0199717号明細書
【特許文献8】米国特許第7,585,437号明細書
【特許文献9】国際公開第2003/080905号
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0038014号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2009/0199717号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2011/0305872号明細書
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】Bjorge et al.,Performance assessment of electrospun nanofibers for filter applications,Desalination,249,(2009),942−948)
【非特許文献2】Gopal et al.,Journal of Membrane Science 289(2007)210−219
【非特許文献3】Aussawasathien et al.,Journal of Membrane Science,315(2008)11−19
【非特許文献4】Li et al.,Nano Letters,vol.5,no.5(2005)913−916
【非特許文献5】Blanchard,(2007),Quantifying Sterilizing Membrane Assurance,BioProcess International,v.5,No.5,pp.44−51)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
必要とされているのは、電界紡糸ナノファイバ層が捕捉保証およびクリティカル濾過特性を提供するように、ならびに上にナノファイバ層が形成される多孔性支持体が欠陥のない平滑で均一な表面を提供するように、ただちに拡大縮小可能であり、経済的に製造され、ミリリットルから数千リットルの範囲に及ぶ試料流体の処理流に適応可能であり、多種多様の濾過工程およびデバイスで使用可能である、多孔性電界紡糸ナノファイバ濾過媒体である。本発明は、これらのならびに他の目的および実施形態に関する。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、特に、液体濾過構造体を作製するための基材として使用される粗不織布にしばしば関連する不均一性に対処する。本明細書で教示する新規液体濾過媒体は、平滑不織支持体上に収集されたポリマーナノファイバ層を有する多孔性ナノファイバ濾過構造体を含む。ナノファイバ濾過媒体を使用して液体または液体流を濾過する場合、平滑不織支持体は、ポリマーナノファイバ層の上流または下流の両方に位置することができるか、またはこれを使用前にナノファイバから取り外すことができる。
【0040】
本明細書で教示する液体濾過プラットフォームは、支持体としての複合濾過構造体の不織平滑側、および捕捉バイオセイフティ保証層として使用される薄い均一な小孔径ナノファイバ層を有し、従来の多孔性メンブレンまたは粗不織布上に紡糸されたナノファイバマットを超える、透過率上の利点を示している。粗不織基材上にナノファイバマットを製造することを超える、平滑不織基材上にナノファイバマットを製造することの別の利点は、平滑基材によってより高い信頼性の工程を提供することであり、この工程では、統計解析を使用して、必要な捕捉保証のために予測されるナノファイバ層厚によって、なお高い透過率上の利点をもたらすことができる。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、平滑不織支持体および平滑不織支持体上に収集されたクリティカル濾過多孔性ナノファイバ捕捉層を有するナノファイバ液体濾過媒体を提供する。多孔性ナノファイバ層の厚さは、約1μmから約500μmの範囲に及ぶ。多孔性ナノファイバ層の有効孔径は、概して繊維径によって定義され、繊維径は、所望の捕捉される微生物または粒子に基づいて選ばれる。多孔性ナノファイバ層の有効孔径は、後述のバブルポイント試験によって測定されるように、レトロウイルス除去の約0.05μmから細菌除去の約0.5μmの範囲に及ぶ。ナノファイバマットが上に作製される基材の表面粗さは概して、基材表面の二乗平均平方根高さとして定義される。表面粗さは、捕捉される所望の微生物または粒子に基づいて選ばれる。例えば高レベルの高信頼性細菌捕捉を達成するためには、約70μmの基材RMS表面粗さが望ましい。より小型の粒子または微生物、即ちマイコプラズマおよびウイルスの捕捉も同様に、約70μmの基材RMS表面粗さが同様に作用することが予測される。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、約10μmから約500μmの範囲に及ぶ厚さを有する電界紡糸多孔性ナノファイバ層を含む複合液体濾過プラットフォームを提供する。
【0043】
さらなる実施形態において、本発明は、約20μmから約300μmの範囲に及ぶ厚さを有する多孔性電界紡糸ナノファイバ層を含む複合液体濾過プラットフォームを提供する。
【0044】
なお他の実施形態において、本発明は、約50μmから200μmの範囲に及ぶ厚さを有する多孔性電界紡糸ナノファイバ層を含む複合液体濾過プラットフォームを提供する。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、実質的に均一な厚さを有する平滑不織支持体を有する複合液体濾過媒体構造体を提供する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、電界紡糸装置を使用してポリマー溶液から形成される1つ以上の多孔性電界紡糸ポリマーナノファイバから多孔性複合液体濾過プラットフォームを形成して、該溶液に約10kVを超える電位を受けさせて、電界紡糸ポリマー繊維を平滑表面を有する多孔性支持基材上に収集する方法に関する。支持体不織布の平滑表面構造体によって、(従来の不織収集支持体上に形成されたナノファイバマットが粗支持体表面を有するのとは異なり)平滑および均一な多孔性ナノファイバマットが生じる。平滑および均一多孔性ナノファイバマットは通例、より大きい捕捉性を有し、即ち同じ厚さおよび透過率を有する多孔性ナノファイバマットは、粗不織布よりも平滑な不織表面上に製造した場合、より大きい粒子除去特性を有する。または、捕捉性が同様の多孔性ナノファイバマットは、平滑不織支持体上に製造された場合、より薄く、より高い透過性となる。
【0047】
別の実施形態において、本発明は、電界紡糸装置を使用してポリマー溶液から形成される1つ以上の多孔性電界紡糸ポリマーナノファイバから多孔性複合液体濾過プラットフォームを形成して、該溶液に約10kVを超える電位を受けさせて、電界紡糸ポリマー繊維を平滑表面を有する多孔性支持メンブレン上に収集する方法に関する。
【0048】
精密濾過メンブレンではなく、平滑不織布上にナノファイバを収集することによって、生産性がより高い電界紡糸方法がもたらされ、即ち同じ厚さのナノファイバマットをメンブレン上よりも平滑不織布上に、より短時間で収集することができる。より高い生産性は、より低コストの最終製品に直接つながる。
【0049】
ある他の実施形態において、本発明は、平滑不織支持体上に配置された電界紡糸ポリマー多孔性ナノファイバ捕捉バイオセイフティ保証層を特徴とする液体濾過複合媒体を有する多孔性複合液体濾過プラットフォームを含む、多孔性複合液体濾過デバイスを提供する。
【0050】
本発明のさらなる特徴および利点は、続いての詳細な説明および特許請求の範囲で述べる。本発明の多くの変形形態および変更形態は、当業者に明らかとなるように、精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。上記の概要説明および以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付図面は例示および説明のためのみであり、本教示の多様な実施形態の説明を与えるものであることが理解されるべきである。本明細書に記載する本明細書に記載する具体的な実施形態は、一例としてのみ与えられ、決して限定するものではない。
【0051】
添付図面は、明細書に組み込まれ、これの一部を形成するものであり、本発明で現在検討される実施形態を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】粗基材(PBN−II)上に紡糸されたナノファイバのマット厚対細菌捕捉データおよび回帰予測のグラフである。
【
図2】平滑基材(セレックス)上に紡糸されたナノファイバのマット厚対細菌捕捉データおよび回帰予測のグラフである。
【
図3】平滑基材(廣瀬)上に紡糸されたナノファイバのマット厚対細菌捕捉データおよび回帰予測のグラフである。
【
図4】99.9%捕捉保証に対応するマット厚に基準線を引いた、粗および平滑基材上に紡糸されたナノファイバの厚さ対細菌捕捉データならびに回帰予測のグラフである。
【
図5A】LEXT OLS4000レーザー共焦点顕微鏡によって得た、ナノファイバを上に収集するために使用した3種類のうちの1つの基材の3D(三次元)画像である。
【
図5B】LEXT OLS4000レーザー共焦点顕微鏡によって得た、ナノファイバを上に収集するために使用した3種類のうちの1つの基材の3D(三次元)画像である。
【
図5C】LEXT OLS4000レーザー共焦点顕微鏡によって得た、ナノファイバを上に収集するために使用した3種類のうちの1つの基材の3D(三次元)画像である。
【
図6】基材およびアッセイ限度によってグループ化した、マット厚対透過率データのグラフである。10,000lmh/psiを超える完全捕捉データ点が表示されている。y値の基準線は、99.9%捕捉保証について予測ナノファイバマット厚から予想された内挿透過率に相当する。
【
図7】基材RMS表面粗さ対99.9%保証の完全捕捉に必要な最小厚のグラフである(ラインは見やすくするためである。)。
【
図8】精密濾過メンブレン上と平滑不織上に紡糸された120nmナノファイバマットの生産性の差のグラフである(多様なライン速度にて収集されたナノファイバマットの厚さ)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
上述または後述にかかわらず、これに限定されるわけではないが特許および特許出願を含む、本明細書で引用されたすべての刊行物は、個々の刊行物、特許または特許出願それぞれが参照により組み込まれることが個別および具体的に表記されているのと同じ程度まで、これの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明をより詳細に説明する前に、幾つかの用語を定義する。これらの用語の使用は、本発明の範囲を限定するものでなく、本発明の説明を容易にする役割を果たすのみである。
【0055】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明らかに規定しない限り、複数の指示対象を含む。
【0056】
本明細書および添付された特許請求の範囲の目的のために、明細書および特許請求の範囲における成分の量、材料のパーセンテージおよび割合、反応条件を表すすべての数値ならびに他の数値は、「約」という用語によって明示的に示されているか否かにかかわらず、すべての例において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。
【0057】
従って、反対に指摘されていない限り、以下の明細書および添付された特許請求の範囲で述べる数値パラメータは、近似値である。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例で示されている数値は、可能な限り正確に報告されている。さらに、本明細書で開示するすべての範囲は、本明細書に包含されるすべての下位範囲を含む。例えば「1から10」の範囲は、最小値の1と最大値の10の間の(および1と10を含む。)ありとあらゆる下位範囲、即ち1以上の最小値と10以下の最大値を有するありとあらゆる下位範囲、例えば5.5から10を含む。
【0058】
「カレンダー加工」という用語は、2個のロールの間のニップにウェブを通過させる工程を示す。ロールは互いに接触してよく、またはロール表面の間に固定もしくは可変ギャップがあってよい。
【0059】
「フィルタ媒体」、「(複数の)フィルタ媒体」、「(複数の)濾過媒体」または「濾過媒体」という用語は、微生物汚染物質を含む流体が通過する材料または材料の集合であって、微生物が内部または表面に被着する材料または材料の集合を示す。
【0060】
「流束」および「流速」という用語は、互換的に使用されて、ある体積の流体が所与の面積の濾過媒体を通過する速度を示す。
【0061】
「ナノファイバ」という用語は、概して、約1μm未満の、通例約20nmから約800nmまで変化する直径または断面積を有する繊維を示す。
【0062】
「場合による」または「場合により」という用語は、続いて説明される事象または状況が起こってもまたは起こらなくてもよいこと、ならびに該説明が、事象が起こる例および事象が起こらない例を含むことを意味する。
【0063】
具体的な狭義の表面を有する不織布を選択し、ナノファイバマット用の収集基材として使用する場合、最終特性およびこれらの特性を達成する信頼性は、従来使用されている不織基材を使用するのに比べて、劇的に改善することができる。このことによって、潜在的により高価なメンブレンを平滑ナノファイバ収集基材として使用する必要がなくなる。
【0064】
本発明の複合液体濾過プラットフォームは、例えば平滑不織基材上に被着された多孔性電界紡糸ナノファイバ液体濾過層を特徴とする複合液体濾過媒体を含む。電界紡糸ナノファイバは、好ましくは、約10nmから約150nmの平均繊維径、約0.05μmから約1μmの範囲に及ぶ平均孔径、約80%から約95%の範囲に及ぶ多孔率、約1μmから約100μmの、好ましくは約1μmから約50μm、より好ましくは1μmと20μmの間の範囲に及ぶ厚さを有する。本明細書で教示する複合液体濾過プラットフォームは、約100LMH/psiを超える透水率を有する。
【0065】
加えて、本明細書で教示する複合液体濾過プラットフォームは、少なくとも6LRVの細菌を、好ましくは少なくとも8LRVの細菌を与える、高い微生物捕捉性を有する。
【0066】
電界紡糸ナノファイバは、熱可塑性および熱硬化性ポリマーを含む、広い範囲のポリマーおよびポリマー化合物から調製される。好適なポリマーとしては、これに限定されるわけではないが、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(ウレアウレタン)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、これのコポリマー、誘導体化合物およびブレンドならびに/または組合せが挙げられる。
【0067】
本明細書で教示する一実施形態において、電界紡糸繊維状マットは、ナイロン溶液から電紡糸ナノファイバを被着させることによって形成する。得られるナノファイバマットは、好ましくは、乾燥量基準で(即ち残留溶媒を蒸発または除去した後に)測定されるように、約1g/m
2から約20g/m
2の間の坪量を有する。
【0068】
本明細書で教示する他の実施形態において、複合液体濾過プラットフォームは、様々な多孔性平滑不織基材または支持体であって、移動収集ベルト上に配置されて、これの上に電界紡糸ナノファイバマットを形成する電界紡糸ナノファイバを収集および結合することができる、様々な多孔性平滑不織基材または支持体を含む。
【0069】
単層および多層多孔性基材または支持体の非制限的な例としては、平滑不織布が挙げられる。他の非制限的な例において、平滑不織支持体は実質的に均一な厚さを有する。平滑不織布は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどを含む、様々な熱可塑性ポリマーから製造される。
【0070】
電界紡糸ナノファイバを取り込むまたは収集する複合濾過媒体の不織基材の均質性は、最終複合濾過構造体の得られるナノファイバ層の特性の少なくとも一部を決定することが認められた。例えば本発明者らは、基材のより平滑な表面を使用して電界紡糸ナノファイバを収集すると、得られるナノファイバ層構造体がより均一であることを認めている。
【0071】
支持不織布の平滑性は、幾何平滑性、即ち不織布の繊維1本の直径を超える寸法を有する粗表面特徴がないこと、ならびに低ヘアリネス(hairiness)、即ち表面を超えて突出する繊維および/またはループの数が少ないことに関係している。
【0072】
幾何平滑性は、幾つかの一般的な技法、例えば機械的および光学的形状計測、可視光反射率(光沢測定)および当業者に公知の他の技法によって容易に測定できる。
【0073】
本明細書で教示する複合液体濾過プラットフォームのある実施形態において、電界紡糸ナノファイバ層は平滑不織支持体に接合されている。接合は、これに限定されるわけではないが、加熱平滑ニップロール間での熱カレンダー加工、超音波接合および通気接合を含む、当分野で周知の方法によって実現され得る。電界紡糸ナノファイバ層を不織支持体に接合することによって、得られる複合濾過媒体が複合濾過プラットフォームを有用なフィルタ形状およびサイズに形成すること関連する力に、または複合濾過プラットフォームを濾過デバイス中に取り付けるときの力に耐えることができるように、複合材の強度および複合材の圧縮抵抗が上昇する。
【0074】
本明細書で教示する複合液体濾過プラットフォームの他の実施形態において、多孔性電界紡糸ナノファイバ層の物性、例えば厚さ、密度ならびに孔のサイズおよび形状は、ナノファイバ層と平滑不織支持体との間に使用する接合方法に応じて影響を受けることがある。例として、熱カレンダー加工を使用して、厚さを低減させ、密度を上昇させて、電界紡糸ナノファイバ層の多孔性を低減させ、孔のサイズを縮小することができる。このことにより、次に、複合濾過媒体を通過する流速が所与の印加差圧にて低下する。
【0075】
超音波接合は概して、電界紡糸ナノファイバ層に接合する面積が熱カレンダー加工よりも小さいため、電界紡糸ナノファイバ層の厚さ、密度および孔径に与える影響がより小さい。
【0076】
熱ガスまたは熱風接合は概して、電界紡糸ナノファイバ層の厚さ、密度および孔径に最小限の影響を有するため、この接合法は、より高い流速を維持することが望ましい用途で好ましいことがある。
【0077】
熱カレンダー加工を使用する場合、ナノファイバが溶融して、個々の繊維としてのナノファイバの構造をもはや保持できないので、電界紡糸ナノファイバ層を過剰接合しないように注意する必要がある。極端な場合には、過剰接合によって、フィルムが形成されるほどの完全なナノファイバ溶融が生じる。使用するニップロールの一方または両方を、ほぼ周囲温度、例えば約25℃から約300℃の間の温度まで加熱する。多孔性ナノファイバ媒体および/または多孔性支持体もしくは基材は、ニップロールの間で約0lb/inから約1000lb/in(178kg/cm)の範囲に及ぶ圧力にて圧縮することができる。
【0078】
カレンダー加工条件、例えばロール温度、ニップ圧およびライン速度を調整して、所望の中実性を達成することができる。概して、より高い温度、圧力および/または滞留時間を高温および/高圧の下で加えることによって、中実性が上昇する。
【0079】
他の機械的ステップ、例えば伸張、冷却、加熱、焼結、アニーリング、巻取り、巻戻しなどは、複合濾過媒体を形成、成形および作製する方法全体に、要望に応じて、場合により含めてよい。
【0080】
本明細書で教示する複合濾過媒体の多孔率は、カレンダー加工の結果として変更することが可能であり、ここで多孔率は約5%から約90%の範囲に及ぶ。
【0081】
加えて、本明細書で教示するナノファイバ液体濾過媒体の恩恵は、ナノファイバマットがより薄いと、従って紡糸時間がより短いと、より顕著となることが認められた。これらの恩恵は移動ウェブにも利用可能であり、このことは製造ライン速度のさらなる高速化に直接つながる。ナノファイバ層をより平滑な基材表面に紡糸することによって、同じ捕捉力が達成されるが、ナノファイバ層がより薄いことが認められた。これらの利点によって、より高速の製造速度による経済上の恩恵、およびより薄いナノファイバ層のより高い透過率の両方が得られる。厚さの低減によるさらなる恩恵は、このサイズのデバイスにより多くの濾過材料を充填できる能力であり、同じ占有面積で濾過面積がより大きくなり、エンドユーザに利便性と経済上の恩恵をもたらす。
【0082】
電界紡糸ナノファイバを製造するための例示的方法
電界紡糸ナノファイバ層を製造する方法は、例えば、それぞれ参照によりこれの全体が本明細書に組み込まれ、それぞれチェコ共和国リベレツのエルマルコs.r.oに譲渡された、WO2005/024101、WO2006/131081およびWO2008/106903に教示されている。
【0083】
「A Method Of Nanofibres Production From Polymer Solution Using a Electrostatic Spinning And A Device For Carrying Out The Method」という表題のWO2005/024101は、回転している帯電電極と異なる電位を有する対電極との間に生成された電場における電界紡糸を使用して、真空チャンバ内のポリマー溶液からナノファイバを製造することを教示している。
【0084】
ポリマー溶液は、少なくとも1つのポリマー溶液入口および出口を有する容器中に保持されている。入口および出口は、ポリマー溶液を循環させて、ポリマー溶液を容器中の一定の高さレベルに維持する役割を果たす。
【0085】
補助乾燥空気源は、必要ならば加熱可能であり、帯電電極と対電極との間に位置する。回転帯電電極の片側は、溶液の一部が回転帯電電極の外面によって取り込まれて、回転帯電電極と対電極との間の、電場が形成されている真空チャンバの領域中に紡糸されるように、ポリマー溶液に浸漬される。ここでポリマー溶液は、回転帯電電極の表面上で高い安定性を有するテイラーコーンを形成し、テイラーコーンはナノファイバの主要な形成位置を与える。
【0086】
対電極は、真空源に連結された真空チャンバの一端を形成する穿孔導電性材料で作られた円筒状表面を有する。回転帯電電極付近に位置する対電極の表面の一部は、電界紡糸ナノファイバが上に被着されたときにこれを支持する裏打ち布材料のためのコンベヤ表面として作用する。裏打ち布支持材料は、真空チャンバの片側に配置された巻戻しデバイス上および真空チャンバの反対側に配置された巻取りデバイス上に位置決めされている。
【0087】
試験方法
坪量は、参照によりこれの全体が本明細書に組み込まれる、ASTM procedure D−3776、「Standard Test Methods for Mass Per Unit Area(Weight)of Fabric」に従って決定し、g/m
2で報告した。
【0088】
多孔率は、試料の坪量(g/m
2)をポリマー密度(g/cm
3)と試料厚さ(マイクロメートル)で割り、100を掛けて、得られた数値を100から引くこと、即ち多孔率=100−[坪量/(密度×厚さ)×100]によって計算した。
【0089】
繊維径は次のように決定した:ナノファイバマット試料の各側面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を20,000または40,000倍の倍率で撮影した。少なくとも10本の明瞭に識別可能なナノファイバの直径を各SEM画像から測定して記録した。異常値は除外した(即ちナノファイバ塊、ポリマー滴、ナノファイバの交差など)。各試料の両側の平均繊維径を計算し、平均して、各試料について単一の平均繊維径値を得る。
【0090】
厚さは、参照によりこれの全体が本明細書に組み込まれる、ASTM procedure D1777−96,「Standard Test Method for Thickness of Textile Materials」に従って決定し、マイクロメートル(
μm)で報告する。
【0091】
平均フロー・バブル・ポイントは、ASTM procedure Designation E 1294−89,「Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter」に従って、原則としてポーラスマテリアルズ、Inc.(PMI)、イサカ、ニューヨーク州の市販装置と同様である、特注のキャピラリー・フロー・ポロシメータを用いて、ASTM Designation F 316による自動バブルポイント法を使用することによって測定した。直径25mmの個々の試料をイソプロピルアルコールで濡らした。各試料をホルダーに入れ、空気の差圧を印加して、流体を試料から除去した。湿潤フローが乾燥フロー(湿潤溶媒を含まないフロー)の2分の1に等しくなる場合の差圧を使用して、PMIが供給するソフトウェアを用いて平均フロー孔径を計算する。
【0092】
流束は、所与の面積の試料を通過する速度であり、47(9.6cm
2濾過面積)mmの直径を有するフィルタ媒体試料に脱イオン水を通過させることによって測定した。濾液に対する約25インチHgの真空を使用して、枝付きフラスコを介して、試料に水を強制的に通過させた。
【0093】
電界紡糸マットの有効孔径は、従来のメンブレン技法、例えばバブルポイント、液体−液体ポロメトリーおよびあるサイズの粒子を用いたチャレンジ試験を使用して測定した。繊維状マットの有効孔径は、概して繊維径と共に大きくなり、多孔率と共に小さくなることが、概して公知である。
【0094】
バブルポイント試験は、有効孔径を測定するための便利な方法を提供する。バブルポイントは、以下の等式から計算する:
【0095】
【数1】
式中、Pはバブルポイント圧であり、γはプローブ流体の表面張力であり、rは孔半径であり、θは液体−固体接触角である。
【0096】
ブレブンジモナス・ジミヌタ(Brevundimonas diminuta)(B.ジミヌタ(B.diminuta))の捕捉力は、ASTM procedure F838−83,「Standard Test Method for Determining Bacterial Retention of Membrane Filters Utilized for Liquid Filtration」に従って測定した。試験を行う多孔性ナノファイバ媒体を、これらを上に紡糸する該当する基材を含めて25mm円板に切断して、EMDミリポアコーポレーションから市販されているOptiScale25ディスポーザブル・カプセル・フィルタデバイスと同じ種類の、オーバーモールドされたポリプロピレンデバイス内に密封した。デバイスは、エアロックを防止するための空気抜きを含み、3.5cm
2の有効濾過面積を有する。
【0097】
試料は、長さ50cmの電極を後付けしたNS 3W1000U(エルマルコs.r.o、リベレツ、チェコ共和国)で製造した。この装置では、試料はロール・ツー・ロール方式で連続的に製造され、この方式では基材は1個の紡糸電極の上を一定速度で移動する。
【0098】
捕捉保証解析:クリティカル濾過用途には、高レベルの微生物捕捉力が要求される。ASTM procedure F838−83,「Standard Test Method for Determining Bacterial Retention of Membrane Filters Utilized for Liquid Filtration」に従って、各試料の細菌捕捉力を決定し、アッセイ限界より大きい値は細菌の完全捕捉力と見なす。捕捉力データの回帰解析を行うことによって、このフィルタの物性の関数として、フィルタの性能を予測することができる。[Blanchard,(2007),Quantifying Sterilizing Membrane Retention Assurance,BioProcess International,v.5,No.5,pp.44−51]。試験のアッセイ限界より上にあるという事実のために不確定/打ち切りデータ点が存在する場合、これらのデータ点を考慮に入れるために使用される一般的な技法の1つは、寿命データ解析によって打ち切り回帰を行うことである。寿命データ解析による回帰は、ナノファイバフィルタの細菌捕捉保証を決定するために、各種の基材上に製造されたナノファイバから収集した細菌捕捉力データに対して行う。Minitab16の寿命データ関数による回帰を使用して、細菌捕捉保証を決定し、生じた回帰表を得る。表は、予測変数列および係数列を示している。第1の予測変数は、回帰直線のy軸交点が該当する係数列に見出される交点である。第2の予測変数は、予測された傾きとしてのx軸モデル化パラメータタイトル(本発明者らの実施例において、マット厚さ)であり、値が該当する係数列の下に表になっている。正規分布を前提とし、捕捉[−log(cfu)]を変数として、マット厚さをモデル化パラメータとして、回帰解析を各基材によるデータに対して個別に行った。すべてのデータは、データがアッセイ限界にあるか否かにかかわらず、打ち切った。少なくとも15個のデータ点の(打ち切り+非打ち切り)の合計を回帰解析に使用した。回帰解析によって決定した予測交点および傾き値を使用して、線形解析直線をプロットした。
【0099】
基材の表面粗さを光学的表面形状測定装置、好ましくはオリンパスによるLEXT OLS40003Dレーザー測定顕微鏡によって測定した。LEXT OLS4000顕微鏡は、3D画像を共焦点モードで取り込むための405nm波長レーザーを利用する。得られた3D画像は次に、粗さ測定および解析にされたに使用することができる。レーザースポットが微小サイズであるため、レーザー顕微鏡は、表面粗さを微小スケールで従来のスタイラスシステムよりもはるかに高い解像度にて測定することができる。この技法の別の利点は、これの高い解像度に加えて、表面に一切接触せずに測定が行われることである。この特徴は、他の特性の中でも、不織布などの圧縮性基材を扱う場合に重要である。好ましくは、3D画像をMPIanFL N 5倍対物レンズを使用して取り込み、ファイン設定で10um z軸方向ステップ高を得た。基材試料は電動顕微鏡ステージに対して先細となるようにして、撮像前に興味のある表面を対物レンズに向けた。カラーおよびレーザー画像は、各表面において焦点の合った最後のファイバを登録して、試料の上部および底部を決定することにより取り込んだ。スティッチング機能を使用して、4.5mm
2を超える代表面積を取り込んだ。該面積は、どの形状でも、基材上のどこでも、縦方向に対してどの角度でもよい。3D画像取り込み完了時に、フラット・ノイズ・フィルタ(ガウシアンフィルタ)を250umのλ
cカットオフと共に適用した。ISO 25178に従って、S
q(二乗平均平方根高さ;高さ分布の標準偏差、即ちRMS表面粗さ)およびS
z(最大高さ;最高ピークと最深谷との間の高さ)およびS
p(最高ピーク高さ)およびS
v(最大ピット深さまたは最大谷高さ)およびS
a(算術平均高さ)の値を、フィルリング済みのデータセットについて計算した。
【0100】
または、少なくとも3つの異なる代表的な4.5mm
2を超える面積領域を測定して、これらの面積に対してS
qを平均することができる。
【0101】
以下、複合液体濾過プラットフォームを以下の実施例でより詳細に説明する。本発明の実施例によって、複合電界紡糸ナノファイバマットが薄い厚さ、従って高い透過率と、高い細菌捕捉力の両方を同時に所有できることを説明する。
【実施例】
【0102】
[実施例1]
電界紡糸ナノファイバマットを伝統的な粗不織布上に製造した。粗不織基材は、米国フロリダ州カントンメントのセレックス・アドバンスト・ファブリックスInc.より購入し、製造者コードPBN−IIであった。紡糸溶液は、13%ナイロン6(米国ニュージャージー州フローラムパークのBASF Corp.によるウルトラミッド(登録商標)グレードB27)に酢酸およびギ酸のブレンド(2:1の重量比)を、80℃にて5時間混合することによって調製した。溶液は、公称80kV電場の下で、6ワイヤ紡糸電極を使用してただちに紡糸した。可変ナノファイバマット厚の一連の試料を、PBI−II不織布上に製造した。基材の表面粗さパラメータは、LEXT OLS4000 3Dレーザー測定顕微鏡によって取り込んだ3D画像を使用してキャラクタリゼーションした。25mm円板試料をデバイス中にオーバーモールドして、細菌捕捉試験を行った。打ち切り回帰を寿命データと共に使用して、捕捉保証解析を行った。マット厚、細菌捕捉データおよび回帰予測を
図1にプロットした。反復結果を区別するために、プロットする間に、xおよびyデータにジッターを加えた。
【0103】
回帰表を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
[実施例2]
電界紡糸ナノファイバマットを特別に選択した平滑不織布上に製造した。平滑不織基材は、米国フロリダ州カントンメントのセレックス・アドバンスト・ファブリックスInc.より購入し、製造者コードはセレックスであった。紡糸溶液は、13%ナイロン6(米国ニュージャージー州フローラムパークのBASF Corp.によるウルトラミッド(登録商標)グレードB27)に酢酸およびギ酸のブレンド(2:1の重量比)を、80℃にて5時間混合することによって調製した。溶液は、公称80kV電場の下で、6ワイヤ紡糸電極を使用してただちに紡糸した。可変ナノファイバマット厚の一連の試料を、セレックス不織布上に製造した。基材の表面粗さパラメータは、LEXT OLS4000 3Dレーザー測定顕微鏡を使用してキャラクタリゼーションした。25mm円板試料をデバイス中にオーバーモールドして、細菌捕捉試験を行った。打ち切り回帰を寿命データと共に使用して、捕捉保証解析を行った。マット厚、細菌捕捉データおよび回帰予測を
図2にプロットした。反復結果を区別するために、プロットする間に、xおよびyデータにジッターを加えた。
【0106】
回帰表を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
[実施例3]
電界紡糸ナノファイバマットを特別に選択した平滑不織布上に製造した。平滑不織基材は、日本高知県土佐市の廣瀬製紙株式会社より購入し、品番#HOP−60HCFであった。紡糸溶液は、13%ナイロン6(米国ニュージャージー州フローラムパークのBASF Corp.によるウルトラミッド(登録商標)グレードB27)に酢酸およびギ酸のブレンド(2:1の重量比)を、80℃にて5時間混合することによって調製した。溶液は、公称80kV電場の下で、6ワイヤ紡糸電極を使用してただちに紡糸した。可変ナノファイバマット厚の一連の試料を、廣瀬不織布上に製造した。基材の表面粗さパラメータは、LEXT OLS4000 3Dレーザー測定顕微鏡を使用してキャラクタリゼーションした。25mm円板試料をデバイス中にオーバーモールドして、細菌捕捉試験を行った。打ち切り回帰を寿命データと共に使用して、捕捉保証解析を行った。マット厚、細菌捕捉データおよび回帰予測を
図3にプロットした。反復結果を区別するために、プロットする間に、xおよびyデータにジッターを加えた。
【0109】
回帰表を表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
寿命データ解析を用いた回帰も、正規分布を前提とし、捕捉力を変数として、マット厚をモデル化パラメータとして、点がアッセイ限界にあるか否かについて打ち切りして、データセット全体に対して行った。
【0112】
回帰表を表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
本解析において、使用したデータセットが異なる母集団を表すか否かを判定するために、統計では基材の種類を要因として使用した。セレックス基準基材と比較して、廣瀬データセットは、2つのデータセットが同様に挙動していることを示す回帰直線について、交点予測および傾き予測の両方で高いp値を生じた。しかし、セレックス基準基材と比較して、PBN−IIデータセットは、2つのデータセットが異なって挙動していることを示す回帰直線について、交点予測および傾き予測の両方で低いp値を生じた。これらの結果は、PBN−IIデータが、セレックスおよび廣瀬のデータセットと比較して、統計的に異なる挙動をしていることを示している。すべてのデータを、基材ごとおよびデータ点がアッセイ限界にあるか否かについてグループ分けして、計算した回帰直線と共に
図4にプロットした。反復結果を区別するために、プロットする間に、xおよびyデータにジッターを加えた。回帰直線による99.9%保証のために予測された厚さ(y軸上+3logs)を、PBN−IIでは70um、セレックスでは19umおよび廣瀬では15umに基準直線として記した。
【0115】
図5A、5Bおよび5Cに示す3D画像を使用して、
図5Dに示す計算値と共に表面粗さパラメータを計算した。マット厚対透過率を
図6にプロットし、
図6ではデータを使用した基材について、またデータ点がアッセイ限界にあるか否か、即ち:アッセイ=Y(あり)またはN(なし)によってグループ化した。10,000lmh/psiを超える完全捕捉データ点が表示されている。y値の基準線は、99.9%捕捉保証(y軸上+3logs)について、回帰直線によって予測されたナノファイバマット厚から予想された内挿透過率に相当する。透過率は、予測厚さを超えるデータ点と予測厚さ未満のデータ点との間の線形関係を前提として内挿した。
【0116】
図7は、基材表面粗さと99.9%保証の完全捕捉に必要な最小厚の関係を示す(ラインは見やすくするためである。)。例えば70um未満の、基材の低いRMS表面粗さは、高い捕捉保証を、マサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポアコーポレーションによるミリポアエクスプレス(登録商標)SHFフィルタのような、市販の滅菌グレードメンブレンと少なくとも同じくらい高い、例えば1200lmh/psiを超える透過率と共に有する、例えば100um未満のより薄いナノファイバマットを実現するために必要である。
【0117】
[実施例4]
紡糸溶液は、12%ナイロン6(米国ニュージャージー州フローラムパークのBASF Corp.によるウルトラミッド(登録商標)グレードB24 N 02)に酢酸およびギ酸のブレンド(2:1の重量比)を、80℃にて5時間混合することによって調製した。溶液は、82kV電場の下で6ワイヤ紡糸電極を使用して、平滑不織布(廣瀬より供給)またはマサチューセッツ州ビレリカのEMDミリポアコーポレーションのミリポアエクスプレス(登録商標)SHCフィルタのプレフィルタ層として入手可能な0.5ミクロン−定格精密濾過メンブレンのどちらかの上にただちに紡糸した。ナノファイバ収集速度の差が認められるように、ライン速度(紡糸時間)を変更した(
図8を参照のこと)。
【0118】
使用方法
本発明によるポリマーナノファイバ濾過媒体は、食品、飲料、医薬品、バイオテクノロジー、マイクロエレクトロニクス、化学加工、水処理および他の液体処理産業に有用である。
【0119】
本明細書で教示するポリマーナノファイバ濾過媒体は、液体試料または液体流から微生物を濾過、分離、同定および/または検出するために、ならびにウイルスまたは微粒子を除去するために非常に有効である。
【0120】
本明細書で教示する本明細書で教示するポリマーナノファイバ濾過媒体は、ヒトもしくは動物に投与することを目的とする医薬品もしくは生物製剤化合物と接触し得る、または医薬品もしくは生物製剤化合物を含有し得る溶液および気体のクリティカル濾過において特に有用である。
【0121】
本明細書で教示するポリマーナノファイバ濾過媒体は、これに限定されるわけではないが、クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動、ゲル濾過、試料遠心分離、オンライン試料調製、診断キット検査、診断検査、高スループットスクリーニング、親和性結合アッセイ、液体試料の精製、流体試料の成分のサイズに基づく分離、流体試料の成分の物性に基づく分離、流体試料の化学的特性のサイズに基づく分離、流体試料の生物学的特性のサイズに基づく分離、流体試料の成分の静電特性に基づく分離、およびこれの組合せを含む、いずれの液体試料調製方法によっても使用され得る。
【0122】
本明細書で教示するポリマーナノファイバ濾過媒体は、より大型の濾過デバイスまたはシステムの構成要素または部品であることが可能である。
【0123】
キット
本明細書で教示するポリマーナノファイバ濾過媒体は、液体試料または液体流から微生物および微粒子を除去するために使用され得るキットとして提供することができる。キットは、例えば本明細書で教示する平滑不織支持体上の電界紡糸ナノファイバ液体濾過層を含む1つ以上の複合濾過媒体を、複合濾過媒体を組み入れて使用するための1つ以上の液体濾過デバイスまたは支持体と共に備えている。
【0124】
キットは対照溶液を含有し得て、本発明を実施する方法で有用な多様な緩衝剤、例えば試薬を排除するためのまたは非特異的に保持もしくは結合された材料を排除するための洗浄緩衝剤を場合により含み得る。
【0125】
他の場合によるキット試薬としては溶離緩衝剤が挙げられる。緩衝剤はそれぞれ溶液として別の容器で提供されることがある。または、緩衝剤は乾燥形または粉末として提供されることがあり、使用者の所望の用途に応じて溶液を作製することができる。この場合、緩衝剤はパケットで提供されることがある。
【0126】
キットは、デバイスが自動化されている場合の電源、ならびに真空ポンプなどの外力を提供する手段を提供することがある。キットは、電界紡糸ナノファイバ含有液体濾過媒体、デバイス、支持体もしくは基材を使用するための、および/または本発明での使用に好適な試薬を作製するための説明、ならびに本発明を実施する方法も含むことがある。本発明を実施する間に、または本発明のデバイスを使用する間に得たデータを記録および解析するための場合によるソフトウェアが含まれていることもある。
【0127】
「キット」という用語は、例えば1つのパッケージに組み合わされた各構成要素、個別にパッケージされて、共に販売される構成要素、またはカタログで共に(例えばカタログ同じページまたは見開きページに)掲載されている構成要素を含む。
【0128】
上記の説明は、本発明を、これの好ましい実施形態を含めて十分に開示している。さらなる詳述なしに、当業者は上述の説明を使用して、本発明を最大限利用することができる。従って、本明細書の実施例は、単に例証として解釈されるべきであり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0129】
上述の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を含み得る。これらの発明はそれぞれこれの好ましい形で開示されているが、本明細書で開示および例証されているようなこれの具体的な実施形態は、多くの変更が可能であるため、限定的な意味で見なされるべきではない。本発明の主題は、本明細書で開示する多様な要素、特徴、機能および/または特性の新規および非自明性の組合せおよび下位組合せすべてを含む。以下の特許請求の範囲は、新規および非自明性として見なされるある組合せおよび下位組合せを特に指摘している。
【0130】
特徴、機能、要素および/または特性の他の組合せおよび下位組合せで実現される発明は、本出願または関連出願からの優先権を主張する出願にて請求されることがある。このような特許請求の範囲も、異なる発明または同じ発明のどちらに関するものであるかにかかわらず、元の特許請求の範囲に対して範囲がより広い、より狭い、等しいまたは異なるかどうかにかかわらず、本開示の発明の主題に含まれていると見なされる。排他的所有権または特権が主張される本発明の実施形態を、以下のように定義する。