特許第6441475号(P6441475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441475
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】家具部品の引き戻し装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/40 20170101AFI20181210BHJP
【FI】
   A47B88/04 E
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-519903(P2017-519903)
(86)(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公表番号】特表2017-530821(P2017-530821A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】AT2015000123
(87)【国際公開番号】WO2016065378
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】A797/2014
(32)【優先日】2014年10月30日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】391013232
【氏名又は名称】ユリウス・ブルム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】JULIUS BLUM GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・ガッサー
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−526984(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/150432(WO,A1)
【文献】 特開平08−038281(JP,A)
【文献】 特開2006−320495(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/111424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に支持された可動家具部品(3)を家具カーカス(2)に対して閉塞端部位置へと引き戻す引き戻し装置(14)であって、
前記可動家具部品(3)に取り外し可能に連結され、少なくとも直線移動経路(19)に沿った領域上を移動可能に支持された引っ張り部材(18)と、
前記引っ張り部材(18)とは別のバネホルダ(21)を介して張力を付与され、前記引っ張り部材(18)に力を加える少なくとも1つのバネ装置(16)と、
前記引っ張り部材(18)と前記バネホルダ(21)との間を運動可能に連結し、前記引っ張り部材(18)が開放方向に引き出されたとき、前記バネホルダ(21)上の前記バネ装置(16)の締結部(22)を制御曲線(33)に沿って前記引っ張り部材(18)の位置に対して後退させる連結装置(30)と、
を備え、
前記連結装置(30)は、2つのレバー端部を有する少なくとも1つのツーアームレバー(23)を有し、
前記ツーアームレバー(23)は、前記バネホルダ(21)の回動軸(25)の周りに回動可能に取り付けられ、
前記ツーアームレバー(23)の第1のレバー端部は、少なくとも1つのトランスミッションレバー(26)を介して前記引っ張り部材(18)に運動可能に連結され、
前記ツーアームレバー(23)の第2のレバー端部は、前記引っ張り部材(18)が引き出される際に、少なくとも制御曲線(33)に沿った領域上を移動するようにガイドされる少なくとも1つのガイド部(24)を有し、
前記少なくとも1つのトランスミッションレバー(26)は、ヒンジ軸(36)を介して前記ツーアームレバー(23)の前記第1のレバー端部に連結されるとともに、回動軸受(29)を介して前記引っ張り部材(18)に運動可能に連結され、
前記少なくとも1つのトランスミッションレバー(26)は、前記引っ張り部材(18)の前記開放方向への移動時に、前記ヒンジ軸(36)を中心に回転する、
引き戻し装置。
【請求項2】
前記ツーアームレバー(23)の前記第1のレバー端部と前記第2のレバー端部とは、異なる長さを有する、請求項1に記載の引き戻し装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのガイド部(24)は、前記ツーアームレバー(23)の2つのレバー端部のうちの長い方に配置されている、請求項2に記載の引き戻し装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのトランスミッションレバー(26)は、湾曲形状であ
前記湾曲形状のトランスミッションレバー(26)は、前記引っ張り部材(18)の引き込み位置において、前記ツーアームレバー(23)を囲む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の引き戻し装置。
【請求項5】
前記制御曲線(33)は、前記引っ張り部材(18)の前記直線移動経路(19)とは別に形成されている、請求項1〜のいずれか1つに記載の引き戻し装置。
【請求項6】
前記制御曲線(33)は、前記バネ装置(16)の最後の張力付与経路に対応する少なくとも1つの端部領域上に湾曲部分を有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の引き戻し装置。
【請求項7】
前記制御曲線(33)の全長に対する前記湾曲部分の長さは、前記制御曲線(33)の全長の少なくとも3分の1である、請求項に記載の引き戻し装置。
【請求項8】
前記直線移動経路(19)及び前記制御曲線(33)の少なくとも一方が配置又は形成されたハウジング(17)を有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の引き戻し装置。
【請求項9】
前記引っ張り部材(18)は、前記バネ装置(16)が張力を付与されるセルフロック準備位置と、前記バネ装置(16)が少なくとも部分的に圧力から開放される端部位置との間で前記直線移動経路(19)に沿って移動可能に設けられている、請求項1〜のいずれか1つに記載の引き戻し装置。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1つに記載の引き戻し装置を備える引出し延伸ガイド。
【請求項11】
前記引出し延伸ガイドは、家具カーカス(2)に固定されるカーカスレール(11)と、前記カーカスレール(11)に移動可能に設けられる少なくとも1つの延長レール(12)とを備え、
前記延長レール(12)は、閉塞動作の終了時に、前記引き戻し装置(14)を介して前記閉塞端部位置に引かれる、請求項10に記載の引出し延伸ガイド。
【請求項12】
引出し(4)と請求項1〜のいずれか1つに記載の引き戻し装置(14)とを備える装置、又は、請求項10又は11に記載の引出し延伸ガイド(10)を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動家具部品を家具カーカスに対して閉塞位置へと引き戻す引き戻し装置であって、可動家具部品に取り外し可能に連結され、少なくとも直線移動経路に沿った領域にわたって移動可能に支持されている引っ張り部材と、引っ張り部材とは別のバネホルダを介して張力を付与され、引っ張り部材に力を加える少なくとも1つのバネ装置と、引っ張り部材とバネホルダとの間を運動可能に連結し、引っ張り部材が開放方向に引き出されたとき、バネホルダ上のバネ装置の締結部を制御曲線に沿って引っ張り部材の位置に対して後退させる連結装置と、を備える引き戻し装置に関する。
【0002】
また、本発明は、後述するタイプの引き戻し装置を備える引出し延伸ガイド、及び、引出しと引き戻し装置とを備える装置に関する。
【背景技術】
【0003】
引き戻し装置は、特に、その延在経路の広い領域にわたって自由に移動可能であり、閉塞移動の終了時に引き戻し装置の引っ張り部材に係合され、その後、バネ力によって閉塞位置に引かれ、所定のばね力でその位置で保持される引出し又は引き戸に使用される。可動家具部品が開放されているとき、操作者は、まず、引っ張り部材が、所定の距離の後に可動家具部品から分離され、次の閉塞工程において可動家具部品を再度引き込めるようにバネが張力付与準備位置に留まる予圧待機位置に移動されるまで、引き戻し装置のバネ抵抗に抗して引っ張り力を加えなければならない。操作者にとって、引出しの開放動作における引っ張り部材の連結解除は、ぎくしゃくした動きやクリック音を顕著にもたらし、突然のバネの分離のため、引出しが自由に移動可能となって予め加えられた引っ張り力により開放方向へ加速される。
【0004】
本出願人による国際公開第2011/150432号は、引っ張り部材から分離され、制御曲線に沿って移動可能にガイドされるバネホルダによってこの問題を解決する。引っ張り部材とバネホルダとは、互いに係合する歯の形態の連結装置によって互いに動的に連結される。バネ装置に張力を付与するとき(すなわち、可動家具部品が開放されるとき)、バネホルダ上のバネ装置の締結部は、開放方向に向かって移動する引っ張り部材の位置に対して後退し、バネ装置の締結部の移動は、引っ張り部材の移動よりも遅くなる。これにより、バネ装置をチャージする労力が軽減され、可動家具部品が引っ張り部材から分離されたときに、望ましくないバネの分離とそれに関連する可動家具部品の過度の加速とを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/150432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、摩擦力を低減するとともに、コンパクトな構造を有する引き戻し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このことは、請求項1の特徴によって達成される。本発明の更なる有利な構成は、従属請求項に示される。
【0008】
本発明によれば、連結装置は、2つのレバー端部を有する少なくとも1つのツーアームレバーを有し、ツーアームレバーは、バネホルダの回動軸の周りに回動可能に取り付けられ、ツーアームレバーの第1のレバー端部は、引っ張り部材に運動可能に連結され、ツーアームレバーの第2のレバー端部は、引っ張り部材が引き出される際に、少なくとも制御曲線に沿った領域上を移動するようにガイドする少なくとも1つのガイド部を有する。
【0009】
ツーアームレバーを有する連結装置によって、ギヤトランスミッションに比べて摩擦力及び騒音の放出を減少させる力低減機構を備えるレバートランスミッションを提供することができる。簡単な製造部品に加えて、提案される構成は、特に引っ張り部材の引き戻し位置で、連結装置のレバーを互いに入れ子にする可能性も提供し、それにより、引っ張り装置の非常にコンパクトな構造を実現する。ツーアームレバー及び制御曲線の各形態及びサイズによって、バネ装置に張力を付与するのに要求される力及び張力付与経路の有効長さを種々の構造に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の更なる詳細及び利点は、図面に示される実施形態から得られる。
図1】家具カーカスと当該家具カーカスへ移動可能な引出しとを有する家具の斜視図である。
図2】引き戻し装置を備える引出し延伸ガイドを示す斜視図である。
図3】引き戻し装置を上方から見た分解図である。
図4】引き戻し装置を下方から見た分解図である。
図5a】バネ装置の引っ張り工程を時系列的で示す図である。
図5b】バネ装置の引っ張り工程を時系列的で示す図である。
図5c】バネ装置の引っ張り工程を時系列的で示す図である。
図5d】バネ装置の引っ張り工程を時系列的で示す図である。
図6a】引き戻し装置の斜視図である。
図6b】引き戻し装置の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、戸棚状の家具カーカス2と、家具カーカス2に対して引出し4の形態で移動可能に取り付けられた家具部品3とを備える家具1を示す図である。各引出し4は、前面パネル5と、引出しベース6と、側壁7と、後壁8とを備えている。側壁7の上方には、前面パネル5と後壁8との間に延在し、引出し4の収容能力を拡大する支柱9が設けられている。家具カーカス2に対して引出し4を移動可能に支持するために、家具カーカス2に固定されるカーカスレール11と、引出し4に接続される少なくとも1本の延長レール12をそれぞれ有する引出し延伸ガイド10が設けられている。延長レール12は、固定的なカーカスレール11に対して移動可能に取り付けられている。カーカスレール11と延長レール12との間には、引出し4の完全な伸長が得られるように付加的な中央レールが配置されてもよい。そのような完全な伸長は、引出し4が完全に伸長した位置において後壁8が家具カーカス2の前面と実質的に同一平面にあるときに提供される。
【0012】
図2は、引き戻し装置14を備える引出し延伸ガイド10の斜視図である。移動可能に取り付けられた延長レール12は、閉塞動作の終了時に、引き戻し装置14を介してバネ装置16の力によって完全な閉塞位置に引き込まれる。通常、延長レール12は、連結部(図示せず)を備え、具体的には延長レール12から突出するペグを備える。前記連結部は、引き戻し装置14の引っ張り部材18に連結される。引っ張り部材18は、ハウジング17に対して移動可能に取り付けられ、バネ装置16の力によって実質的に完全な閉塞位置に引き込まれる。引き戻し装置14のハウジング17は、好ましくはカーカスレール11に固定され、延長レール12とカーカスレール11の締結部分13との間に形成された中間空間に配置されている。
【0013】
図3は、引き戻し装置14を上方から見た分解斜視図である。引っ張り部材18の滑動を支持するために、ハウジング17には直線移動通路19が設けられている。直線移動経路19は、曲部又はエッジ部20に続いている。引っ張り部材18は、延長レール12に固定された連結部(具体的にはペグ)に取り外し可能に連結される切欠き27を有している。引出し4の完全な閉塞位置において、連結部は切欠き27と係合する。引出し4を手動で開くと、引っ張り部材18も連結部を介して直線移動経路19に沿って開放方向35(図5a〜図5d)に引っ張られ、それによりバネ装置16が張力を付与される。所定の距離の後に、引っ張り部材18が曲部20に達し、引っ張り部材18が回動して、延長レール12の連結部が解放され、引出し4が非連結状態でさらに開放方向に移動される。一方、引っ張り部材18は、バネ装置16が張力を付与された状態である偏向位置、すなわち予め圧力が付与されたセルフロック準備位置に位置する。引出し4を閉じると、延長レール12上に配置された連結部が、予圧準備位置から切欠き27に入ることによって引っ張り部材18を再び解放する。その際、引っ張り部材18(及び延長レール12)は、バネ装置16によって完全な閉塞位置に引き込まれる。
【0014】
レバートランスミッションの形態の連結装置30が、バネ装置16に張力を付与するために必要な力を低減し、突然で望ましくないバネの力の分離(すなわち、引っ張り部材18が曲部20に入ることによって引出し4を開放すること)及び引出し4の開放方向への過度の加速を避けることができる。バネ装置16は、引っ張り部材18とは別のバネホルダ21によって張力を付与されることができる。バネ装置16の締結部22は、バネホルダ21に接続されている。バネホルダ21は、ツーアームレバー23が回動軸25の周りに回動可能に設けられた軸受28を有している。ツーアームレバー23の一方のレバー端部には、ハウジング17の制御曲線33(図4)に沿って移動するようにガイドする少なくとも1つのガイド部24が配置されている。ツーアームレバー23の他方のレバー端部は、ヒンジ軸36を介して、好ましくは湾曲形状であるトランスミッションレバー26に接続されている。トランスミッションレバー26の他端部は、回動軸受29を介して引っ張り部材18に運動可能に連結されている。トランスミッションレバー26の回動軸受29は、引っ張り部材18の開口部31に係合している。ツーアームレバー23の第1のレバー端部と第2のレバー端部とは、異なる長さを有し、力の観点からは、ガイド部24がツーアームレバー23のより長いレバー端部に配置されることが有利である。
【0015】
図4は、引き戻し装置14を下方から見た分解図である。バネ装置16の締結部22は、バネホルダ21の凹部32に嵌合され、バネホルダ21の軸受28は、ツーアームレバー23を回動軸25の周りを回動可能に支持するように機能する。ツーアームレバー23の他方のレバー端部は、湾曲したトランスミッションレバー26を介して引っ張り部材18にヒンジ接続されている。引っ張り部材18をガイドするために、直線移動経路19とそれに隣接する曲部20とは、引き戻し装置14のハウジング17に配置又は形成されている。引っ張り部材18は、突出部の形態のガイド装置34を備え、直線移動経路19及び曲部20に沿ってガイドされる。また、直線移動経路19とは別の制御曲線33は、ガイド部24を移動可能にガイドするためにハウジング17に形成されている。制御曲線33は、バネ装置16の最後の張力付与経路に対応する湾曲部分に続く直線延在部を備えている。ツーアームレバー23と制御曲線33の湾曲部分との協働によって、バネ装置16の張力付与経路の最後の部分において、張力付与経路の終点まで達することができる。バネホルダ21上のバネ装置16の締結部22は、移動する引っ張り部材18の位置に対して後退し、バネ装置16の最後の張力付与経路において、締結部22の動きは、引っ張り部材18の動きよりも遅くなる。一実施形態によれば、制御曲線33の湾曲部分の長さは、制御曲線33の全長の少なくとも3分の1である。制御曲線33の長さ及び形状によって、張力付与経路及び張力付与工程の進行が、例えば、直線移動経路19と比較してより長い制御曲線33の提供などの様々な方法によって変更され、張力付与のために必要な力を低減することができる。
【0016】
図5a〜図5dは、バネ装置16の張力付与工程を時間順に示す図である。バネ装置16が実質的に緩められている図5aの完全な閉塞位置からスタートし、可動家具部品に対して手で引っ張り力を付与することによって、引っ張り部材18が直線移動経路19に沿って開放方向へ引っ張られる。バネ装置16は、固定バネ基部15(図2)に対して張力を付与される。第1の張力付与区間ΔX1において、引っ張り部材18とバネ装置16の締結部22との間の移動割合は、実質的に同じである。すなわち、締結部22は、引っ張り部材18が開放方向に向かうのと同じ速度で移動する。バネホルダ21に回動可能に配置されたツーアームレバー23は、ガイド部24によって制御曲線33に沿ってガイドされ、第2の張力付与区間ΔX2において、第1の張力付与区間ΔX1と比較して、締結部22の遅い移動を提供する(図5b)。ガイド部24と制御曲線33の湾曲部分との協働によって、ツーアームレバー23は時計回りの方向に回動され、第3の張力付与区間ΔX3において、第2の張力付与区間ΔX2に比べて、開放方向35に向かってさらに移動する引っ張り部材18に対する締結部22の動きが更に遅くなる。図5dにおいて、引っ張り部材18は、可動家具部品3が非連結状態で更に開放方向35に向かって移動できるように可動家具部品3と引っ張り部材18との間の連結が解放される、偏向されたセルフロック準備位置にある。
【0017】
張力付与区間ΔX1,ΔX2,ΔX3によって、開放方向35に向かって移動される引っ張り部材18に対する締結部22の連続的な減速動作が提供され、バネ装置16は、最大バネ撓み量まで張力を付与されない。従って、バネ装置16に張力を付与することは、少ない労力しか必要とせず、引っ張り部材18の連結状態と非連結状態との間の遷移区間及び荷重変化が非常に調和される。すなわち、引出し4から引っ張り部材18が分離される際に、望ましくないバネの分離及び可動家具部品3の過剰な加速を回避することができる。連結装置30によって達成される減速比によって、高いバネ力を有するバネ装置16も、より少ない労力で張力を付与することができる。
【0018】
図6aは、引き戻し装置14の斜視図である。バネ装置16は、固定バネ基部15に対して引っ張られる。図6bは、図6aの囲まれた領域の拡大図である。引っ張り部材18は、引き込み端部位置に配置されている。バネ装置16は、締結部22を介してバネホルダ21に接続され、バネホルダ21には、ツーアームレバー23が回動軸25の周りに回動可能に取り付けられている。ツーアームレバー23の第1のレバー端部は、ヒンジ軸36を介してトランスミッションレバー26の第1の端部に連結され、トランスミッションレバー26の第2の端部は、回動軸受29を介して引っ張り部材18にヒンジ結合されている。ツーアームレバー23の第2のレバー端部は、引っ張り部材18の移動時に制御曲線33に沿って移動するようにガイドするガイド部24を備えている。引っ張り部材18の引き込み位置において、締結部22、ヒンジ軸36、回動軸25、及び回動軸受29が、上方から見て、バネ装置16の作動方向37に対応する共通線に沿って整列するように見える。これらの構成部品の整列配置によって、引き戻し装置14の摩擦力を大幅に低減することができる。
【0019】
引き戻し装置14のコンパクトな構成は、引っ張り部材18が引き込まれた状態で、長手方向に沿って湾曲しているトランスミッションレバー26がツーアームレバー23を囲んでいることからも見ることができる。更に、バネホルダ21、ツーアームレバー23、トランスミッションレバー26、及び引っ張り部材18は、それぞれ回動軸25に対して高さ方向に互いに離れる又は重複するように設けられている。 これらの構成部品の入れ子状の配置によって、引っ張り部材18の一部をヒンジ軸36に向かって拡大することができ、全体として、引っ張り部材18の拡大部分が直線移動経路19に係合する。それにより、直線移動経路19に沿った移動時に、引っ張り部材18の改善された偏向安全誘導を提供することができる。
【0020】
バネ装置16として、好ましくは張力ばねの形態である少なくとも1つのコイルバネを備えてもよい。より高いバネ力を提供するために、平行に分岐された2つ以上のコイルバネを有し、張力が付与されたとき同程度に等しく引っ張られるバネ組立体も使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a-5d】
図6a
図6b