(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のドレン穴を樹脂用金型で成形する際に、現状の金型構成では成形不具合があると穴が塞がってしまう事象が発生する場合がある。この場合、室内機のドレンパンから水があふれ、室内機から水漏れが発生する。
【0006】
そこで、ドレンパンに成形の不具合があり、ドレン穴に樹脂が入り込んでしまった際には、人の手により入り込んだ樹脂を除去して対応している。
そのため、ドレンパンに成形不具合があり、万が一、人の手による除去処理がきちんと行われなかった場合、室内機から水漏れが発生してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、ドレンパンの成形を信頼性高く行える空気調和機の製造方法および製造金型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の本発明の空気調和機の製造方法は、冷房または除湿運転により生じる凝縮水を排出するためのドレン穴を有するドレンパンを備える室内機を具備する空気調和機の製造方法であって、前記ドレンパンの前記ドレン穴を成形する第1金型と第2金型とを備え、
前記第1金型と前記第2金型との間のつき合わせ部は、段差状に形成され、前記ドレン穴の成形後に前記第1金型が移動する際に、前記第1金型と前記第2金型との
前記つき合わせ部の一部に前記第1金型が重なっている。
【0009】
第2の本発明の空気調和機の製造金型は、冷房または除湿運転により生じる凝縮水を排出するためのドレン穴を有するドレンパンを備える室内機を具備する空気調和機の製造金型であって、前記ドレンパンの前記ドレン穴を成形する第1金型と第2金型とを備え、
前記第1金型と前記第2金型との間のつき合わせ部は、段差状に形成され、前記ドレン穴の成形後に前記第1金型が移動する際に、前記第1金型と前記第2金型の
前記つき合わせ部との一部に前記第1金型が重なるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドレンパンの成形を信頼性高く行える空気調和機の製造方法および製造金型を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1に、本発明に係る実施形態の空気調和機Cの室内機Ciと室外機Coを示す。
実施形態の空気調和機Cは、室内機Ciと室外機Coとを具備している。
【0014】
室外機Coと室内機Ciの内部には、冷媒が流れる配管14で接続される冷凍サイクルが構成されている。
【0015】
室内機Ciは屋内に設置され、屋内の空気調和を行う。
室外機Coは、屋外に設置され、その内部に冷凍サイクルの主な機械要素が格納されている。
【0016】
室外機Coの内部は、図示しない仕切り板によって、送風室Co1と機械室Co2とに分割されている。
送風室Co1には、手前側に室外熱交換器2が格納され、奥側に室外ファン3が格納されている。
【0017】
室外熱交換器2は、送風室Co1の内外周部の向かって左側部および後部に、上方から見てL字状に折れ曲がった形状で設置されている。室外熱交換器2の前方には、室外機Coの後方から(
図1の矢印α10)室外熱交換器2に空気を送るための室外ファン3が配置されている。
【0018】
機械室Co2の内部には、冷凍サイクルを構成する図示しないアキュムレータ、圧縮機、膨張弁、四方弁等が配管14を介して連結されている
室外機Coの右上には、室外ファン3を駆動するファンモータや圧縮機等を制御する電気品箱4が配設されている。
【0019】
図2に、室内機Ciの概略横断面図を示す。
図3に、室内機Ciの一部を切り欠いた斜視図を示す。
室内機Ciには、外周部に室内熱交換器5が設置され、中央部に室内ファン6が設置されている。これらの他に、室内機Ciは、ドレンパン7、筐体ベース8、フィルタ9a、9b、前面パネル10、左右風向板11、および上下風向板12を備えている。
【0020】
室内熱交換器5は、複数のフィンfと、フィンfを貫通する複数の伝熱管gとを有している。室内熱交換器5は、前側室内熱交換器5aと、後側室内熱交換器5bとを有している。
室内熱交換器5は、伝熱管gを流れる冷媒と、室内ファン6により外部から送り込まれる(
図2の矢印α11)室内空気との間で、熱交換が行われる。
【0021】
室内ファン6は、ファンモータの駆動によって、室内熱交換器5に室内空気を送り込むファンであり、室内熱交換器5の近くに設置されている。室内ファン6は、例えば、円筒状のクロスフローファンである。
室内ファン6は、複数のファンブレード6aと、ファンブレード6aが設置される仕切板6bと、駆動源である室内ファンモータ(図示せず)とを備えている。
【0022】
ドレンパン7は、室内熱交換器5、配管14等の凝縮水を受けるものであり、前側室内熱交換器5aの下方に配置されている。
筐体ベース8は、室内熱交換器5や室内ファン6等の機器が設置される強度部材である。
【0023】
フィルタ9aは、室内熱交換器5の前側に設置され、前側の空気吸込口h1に向かう空気から塵埃を除去する。フィルタ9bは、室内熱交換器5の上側に設置され、上側の空気吸込口h2に向かう空気から塵埃を除去する。
【0024】
前面パネル10は、前側のフィルタ9aを覆うように設置される意匠パネルであり、下端部の軸(図示せず)周りに前側に回動可能になっている。
左右風向板11(
図2参照)は、室内ファン3の回転に伴って室内に吹き出される空気の左右方向の流れを調整する部材である。上下風向板12は、室内ファン3の回転に伴って室内に吹き出される空気の上下方向の流れを調整する部材である。
【0025】
図4に、ドレンパン7のドレン穴7h周りの横断面図を示す。
ドレンパン7には、排水孔であるドレン穴7hが形成されている。ドレンパン7のドレン穴7hには、ドレン配管13が接続されている。ドレン配管13は、例えば可撓性のあるホースやチューブで構成されているが、これに限定されない。
【0026】
ドレンパン7で受けた水分は、ドレン配管13を介して、屋外へ排出される。
ドレン水のみならず室内熱交換器5、配管14から漏洩した冷媒も、ドレンパン7の内部に誘導される構成である。ドレンパン7は、室内熱交換器5や配管14で発生したドレン水や漏れた冷媒を受ける際に、受けたドレン水等が室内機Ciの外部へ流出しないように例えば四方が壁7kで形成された上方に開口をもつ有底の皿形状を有している。
【0027】
ドレンパン7は、樹脂を用いて射出成型されている。
ドレンパン7には、ドレンパン7を室内機Ciの内部に支持するための前支持部7s1と側支持部7s2とがそれぞれ前下方と後下方に延びて形成されている。
【0028】
図5A〜
図5Cに、ドレンパン7の成形過程の断面図を示す。
【0029】
図5Aに示すように、ドレンパン7は、樹脂成形用のA金型16、B金型17、およびC金型18を用いて成形される。
A金型16は、ドレンパン7の前下部形状を成形する。A金型16は、ドレンパン7の前支持部7s1と側支持部7s2とを成形する形状に形成されている。
【0030】
B金型17は、ドレンパン7の内部形状とドレン穴7hの一部とを成形する。そこで、B金型17は、ドレンパン内部形状部17aとドレンパン内部形状部17aから後下方に突出するドレン穴一部形成凸部17bが形成されている。ドレン穴一部形成凸部17bは、成形後にB金型17を取り外す際にB金型17とC金型18の突き合わせ面7h1を通って移動する(
図6の矢印α29)。ドレン穴一部形成凸部17bは、ドレン穴7hの内部に一部突出する形状であれば、半円柱形状やその他の形状でもよい。
【0031】
C金型18は、ドレンパン7の後部形状を成形する。C金型18は、ドレンパン7の後部形状を形成する形状を有し、排出孔のドレン穴7hを成形するためのコアピン18pが固定されている。コアピン18pには、B金型17のドレン穴一部形成凸部17bと当接する形状のドレン穴一部形成凹部18p1と、B金型17と当接するB金型当接部18p2とが形成されている。コアピン18pはC金型18の一部とみなして説明する。
【0032】
B金型17の一部のドレン穴一部形成凸部17bをC金型18(コアピン18p)に食い込む形で構成する。
ドレンパン7の成形は下記のように行われる。
【0033】
まず、
図5Aに示すように、A金型16とB金型17とC金型18とを組み合わせる(
図5Aの矢印α20)。すると、A金型16とB金型17とC金型18の間に、ドレンパン7の形状のキャビティ7Cが形成される。
続いて、
図5Bに示すように、図示しない樹脂充填口から、A金型16とB金型17とC金型18の間のキャビティ7Cに樹脂を充填する。
【0034】
その後、
図5Cの矢印α21、α22、α23に示すように、A金型16とB金型17とC金型18をそれぞれ取り外す。こうして、ドレンパン7が形成される。
【0035】
ここで、成形不具合時には、B金型17とC金型18の突き合わせ面7h1の間に樹脂が入り込んでしまい、ドレン穴7hが塞がってしまうおそれがある。
【0036】
図6に、ドレンパン7の成形不具合時の射出成形後にA金型16、B金型17、およびC金型18を取り外す際のドレン穴7h付近の拡大断面図を示す。
しかし、
図6に示すように、成形後のB金型17の動き(
図6の矢印α22)により、B金型17のドレン穴一部形成凸部17bが突き合わせ面7h1に入り込んでしまった樹脂の一部j1を突き破る(
図6の矢印α29)ことができる。そのため、ドレン穴7hが全閉状態となり、水漏れに至ることが抑制される。
【0037】
上記構成によれば、ドレン穴7hの成形不具合があり、万が一、人の手による除去処理がきちんと行われなかった場合でも、ドレン穴7hが完全に塞がることはない。
従って、ドレン穴7hの詰まりによる水漏れの発生を抑制できる室内機を有する空気調和機を提供できる。
【0038】
<変形例>
図7Aに変形例のドレンパン7のドレン穴7h付近を成形する状態を示し、
図7Bに変形例のドレンパン7の成形不具合時の射出成形後にA金型26、B金型27、およびC金型28を取り外す際のドレン穴7h付近の拡大断面図を示す。
【0039】
図7Aに示すように、変形例では、B金型27とC金型28との突き合わせ部27h1をドレン穴7hの外部に形成している。その他の構成は、実施形態と同様であるので20番台の符号を付して示す。
変形例は、ドレンパン7のドレン穴7hの外部で、B金型27の一部のドレン穴一部形成凸部27bをC金型28(コアピン28p)に食い込む形で構成する。
【0040】
成形不具合時には、B金型27とC金型28の突き合わせ面27h1の間に樹脂が入り込んでしまい、ドレン穴7hが塞がってしまうおそれがある。
しかし、
図7Bに示すように、成形後にA金型26、B金型27、およびC金型28を取り外す(
図7Bの矢印α31、α32、α33)際に際して、B金型27の移動(
図7A、
図7Bの矢印α32)により、B金型27のドレン穴一部形成凸部27bが突き合わせ面27h1に入り込んでしまった樹脂の一部j2を突き破る(
図7Bの矢印α32)ことができる。
【0041】
そのため、B金型27とC金型28との突き合わせ部27h1をドレン穴7hの外部に形成した場合にも、ドレン穴7hが全閉状態となり、水漏れに至ることが抑制される。
【0042】
<<その他の実施形態>>
1.ドレンパン7のドレン穴7付近を成形する金型を3つで構成した場合を説明したが、4つ以上の金型を用いて成形するように構成してもよい。
【0043】
2.なお、前記実施形態で説明した構成は、本発明の一例を示したものであり、特許請求の範囲内において、様々な具体的形態が可能である。
本発明は、冷房または除湿運転により生じる凝縮水を排出するためのドレン穴(7h)を有するドレンパン(7)を備える室内機(Ci)を具備する空気調和機(C)の製造方法であって、ドレンパン(7)のドレン穴(7h)を成形する第1金型(17)と第2金型(18)とを備え、ドレン穴(7h)の成形後に第1金型(17)が移動する際に、前記第1金型(17)と前記第2金型(18)のつき合わせ部の一部に前記第1金型(17)が重なっている。