特許第6441557号(P6441557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000002
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000003
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000004
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000005
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000006
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000007
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000008
  • 特許6441557-ダイヘッド、および塗工物の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441557
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ダイヘッド、および塗工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20181210BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   B05C5/02
   B05D1/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-119484(P2013-119484)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-237075(P2014-237075A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月25日
【審判番号】不服2017-15823(P2017-15823/J1)
【審判請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】夏目 智之
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 渕野 留香
【審判官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−44643(JP,A)
【文献】 特開2009−273997(JP,A)
【文献】 特開2005−095831(JP,A)
【文献】 特開2011−062684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00-B05C21/00
B05D1/00-B05D7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が流れる流路と、
前記流路を通って流れてくる塗布液を吐出するための塗工リップと、
前記流路内に突出することで、前記流路の塗布液の流れ方向と垂直な断面の形状を変化させ、前記流路内における塗布液の流れを調整する流路調整手段と、を備え、
前記流路調整手段は、前記流路の幅方向の両端部のみに設けられる突出機構から構成され、
前記突出機構は、前記流れ方向の下流ほど前記流路の幅方向の中央に向かうように、前記流れ方向に平行であり、かつ、鉛直な面に対して傾斜する傾斜面を有する、上面視で三角形状の突出部を備えることを特徴とするダイヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヘッドにおいて、
前記ダイヘッドは上側ダイヘッドと下側ダイヘッドとから構成され、
前記流路調整手段は、前記上側ダイヘッドおよび前記下側ダイヘッドの少なくとも一方に設けられ、前記流路内における突出位置または突出高さが調整可能な1または2以上の前記突出機構から構成されることを特徴とするダイヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイヘッドにおいて、
前記流路調整手段は、前記突出機構を複数備え、複数の前記突出機構は、流路の中心に対して、左右対称に配置されることを特徴とするダイヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のダイヘッドにおいて、
前記突出機構は、前記流路内における突出高さが調整可能な突出部を備え、
前記突出部は、ボルトにより突出高さが調整可能となっていることを特徴とするダイヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のダイヘッドにおいて、
前記突出機構は、前記流路内における突出高さが調整可能な三角柱形状の突出部を備えることを特徴とするダイヘッド。
【請求項6】
塗布液が流れる流路、および前記流路を通って流れてくる塗布液を吐出するための塗工リップを備えたダイヘッドによって、基材上に塗布液を塗布して塗工物を製造する方法であって、
前記流路の塗布液の流れ方向の下流ほど前記流路の幅方向の中央に向かうように、前記流れ方向に平行であり、かつ、鉛直な面に対して傾斜する傾斜面を有する、上面視で三角形状の突出部を備え、前記流路の幅方向の両端部のみに設けられる突出機構から構成され、前記流路内に突出可能な流路調整手段を用いて、前記流路内における塗布液の流れを調整する流路調整工程と、
前記流路調整工程の後に、前記塗布液を前記基材上に塗布して塗工物を得る塗工工程とを備えることを特徴とする塗工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヘッド、および塗工物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材に塗布液を塗布してなる塗工物を製造する方法として、ダイコーター装置によって連続して搬送される基材上に塗布液を塗布する方法が用いられている。このような技術において、塗工物の品質を向上させるために、ダイコーター装置のダイヘッド内に板状の濾過部材を設け、該濾過部材を通った塗布液をダイヘッドから吐出して塗布する手法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−212336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に記載の方法では、塗工の最中において、塗布液の粘度などの物性が変化してしまった場合には、塗工面の膜厚が不均一となってしまう。そして、この際には、ダイコーター装置のダイヘッドを、上側ダイヘッドと下側ダイヘッドとに分解し、これらの間に設けられているシム(塗布液を流すための流路の高さを調整するための部材)を別のものに交換する必要があるが、シムを交換するためには、ダイヘッドの分解、清掃、組立て、精度調整、およびダイコーター装置本体への着脱などを行わなければならず、大きな労力と時間を要するという問題があった。また、このようなシムは硬質な金属により形成されているため、交換以外の方法では、形状を変更することができないという問題もあった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、流路内の塗布液の流れを簡便に調整することができ、これにより、塗布液を基材上に均一に塗布することができるダイヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ダイヘッドに設けられた塗布液が流れる流路内において、流路内に突出可能な流路調整手段を用いて、流路の塗布液の流れ方向と垂直な断面の形状を変化させ、流路内における塗布液の流れを調整することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流路内に突出可能な流路調整手段を用いて、ダイヘッド内における塗布液の流路の断面形状を適切に調整することができるため、流路内の塗布液の流れを簡便に調整することができ、塗布液を基材上に均一に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のダイヘッドを備える塗工装置を示す構成図である。
図2図2は、本実施形態のダイヘッドを示す分解斜視図である。
図3図3は、本実施形態のダイヘッドを示す側面断面図である。
図4図4は、図3に示すダイヘッドを用いて流路内の塗布液の流れを調整する方法を説明するための図である。
図5図5は、本実施形態のダイヘッドを示す上面図である。
図6図6は、本実施形態のダイヘッドの別の例を示す上面図である。
図7図7は、本実施形態のダイヘッドのさらに別の例を示す上面図である。
図8図8は、図7(A)に示すダイヘッドを用いて流路内の塗布液の流れを調整する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態のダイヘッド500を備える塗工装置1を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態のダイヘッド500を備える塗工装置1は、基材800上に、塗布液110を塗布することにより塗工層120を形成するための装置であり、塗布液110を収容するタンク100、配管200、ポンプ300、三方弁400、ダイヘッド500、バックアップローラ610、ガイドローラ620、および乾燥炉700から構成される。
【0011】
本実施形態においては、基材800は、巻出しロール(図示省略)に巻かれた状態で塗工装置1に取付けられ、巻出しロールから連続的に送り出されることによって、図1に示すように、バックアップローラ610に沿って搬送され、乾燥炉700を通過し、次いで、ガイドローラ620に沿って搬送され、その後、ガイドローラ620を通った先に設けられた巻取りロール(図示省略)によって連続的に巻取られる。
【0012】
そして、本実施形態においては、このように基材800が搬送されている間に、塗布液110の塗布、塗工層120の形成、および塗工層120の乾燥が行われる。すなわち、まず、基材800がバックアップローラ610上を通っている間に、基材800に対してダイヘッド500により塗布液110が塗布され、これにより、基材800上に塗工層120が形成される。ここで、ダイヘッド500が塗布する塗布液110は、タンク100内の塗布液110が、配管200を通じて、ポンプ300によってダイヘッド500に供給されたものである。次いで、このような塗工層120が形成された基材800は、バックアップローラ610上を通った後に、乾燥炉700内に搬送され、乾燥炉700内において、塗工層120の乾燥が行われる。
【0013】
本実施形態においては、塗布液110および基材800としては、特に限定されず、塗工装置1によって製造する製品の種類に応じて、所望の材料を用いることができる。たとえば、塗工装置1によって電池の電極部材を製造する場合には、基材800として金属箔を用い、塗布液110として電極スラリー(電極活物質を含む液体)を用いることができる。
【0014】
乾燥炉700は、基材800上に形成した塗工層120を乾燥させるための乾燥炉であり、特に限定されず、上述した塗布液110および基材800の種類に応じて、公知の乾燥炉を用いることができる。
【0015】
タンク100は、塗布液110を収容するタンクであり、配管200を介してダイヘッド500と接続されている。なお、配管200には、ポンプ300および三方弁400が設けられており、タンク100から排出された塗布液110がポンプ300によって送り出され、三方弁400を通じてダイヘッド500に供給される。
【0016】
ここで、塗工装置1においては、配管200に設けられた三方弁400を制御することにより、基材800上への間欠塗工を行うことができる。すなわち、まず、三方弁400を制御することにより、ポンプ300から送り出された塗布液110の流れ方向を、ダイヘッド500側またはタンク100側に切り替えることができる。そして、三方弁400をダイヘッド500側に切り替えている間は、塗布液110がダイヘッド500に供給され、塗布液110を基材800上に塗布することができる。一方、三方弁400をタンク100側に切り替えている間は、塗布液110がダイヘッド500に供給されず、タンク100に戻ることとなり、基材800上への塗布液110の塗布は行われない。これにより、本実施形態においては、所望のタイミングで三方弁400における流れ方向を制御することによって、基材800上に間欠塗工を行うことができる。
【0017】
ダイヘッド500は、塗布液110を基材800上に塗布するためのダイヘッドであり、図2に示すように、下側ダイヘッド510、上側ダイヘッド520、およびシム530から構成される。ここで、図2は、本実施形態のダイヘッド500を示す分解斜視図である。本実施形態においては、下側ダイヘッド510、上側ダイヘッド520、およびシム530には、それぞれ複数のボルト穴511,521,531が設けられており、このようなボルト穴511,521,531を貫通するようにボルトを通すことで、下側ダイヘッド510と上側ダイヘッド520とが、シム530を介して一体化される。
【0018】
また、図2に示すように、ダイヘッド500の下側ダイヘッド510には、塗布液溜り512、および塗布液供給口513が設けられている。なお、塗布液供給口513は配管200と接続された開口であり、塗布液溜り512は塗布液110を貯めるための空間である。
【0019】
本実施形態においては、配管200を通じて供給された塗布液110が、塗布液供給口513を通って塗布液溜り512に収容される。そして、塗布液溜り512内の塗布液110は、下側ダイヘッド510と上側ダイヘッド520との間の隙間、すなわち、下側ダイヘッド510と上側ダイヘッド520との間に設けられたシム530の厚みに応じて形成される隙間から、図2に示すx軸正方向に向かって吐出され、基材800上に塗布される。具体的には、図2に示すダイヘッド500をy軸正方向に向かって見たときの側面断面図である図3に示すように、塗布液溜り512内の塗布液110が、下側ダイヘッド510と上側ダイヘッド520との間の隙間である塗布液流路540を通って、下側ダイヘッド510および上側ダイヘッド520の先端部分である塗工リップ550から、x軸正方向に向かって吐出され、基材800上に塗布される。
【0020】
さらに、本実施形態のダイヘッド500には、図3に示すように、下側ダイヘッド510に、塗布液流路540の塗布液110の流れを調整可能な流路調整用ボルト560が設けられている。本実施形態においては、下側ダイヘッド510に設けられた流路調整用ボルト560は、下側ダイヘッド510の表面と面一となっている状態から、塗布液流路540内における突出高さを調整可能であり、これにより、塗布液流路540の塗布液110の流れを調整することができる。
【0021】
具体的には、図4(A)に示すように、流路調整用ボルト560と下側ダイヘッド510の表面とを面一とした状態から、流路調整用ボルト560を回転させることによって、図4(B)に示すように、塗布液流路540内に流路調整用ボルト560を突出させることができる。なお、流路調整用ボルト560の回転は、手動で行ってもよいし、流路調整用ボルト560の回転を制御するための制御装置を用意しておいて自動で行ってもよい。また、塗布液流路540内に流路調整用ボルト560を突出させる高さは、流路調整用ボルト560の回転角度を適宜変化させることにより調整することができる。
【0022】
そして、本実施形態においては、この流路調整用ボルト560の設置数や設置位置は、特に限定されず、1または2以上の流路調整用ボルト560を、所望の位置に設けることができる。
【0023】
ここで、図5は、下側ダイヘッド510aをz軸負方向に向かって見たときの上面図である。本実施形態においては、たとえば、図5に示すように、下側ダイヘッド510aに複数の流路調整用ボルト560a,560b,560c,560dを設け、これらをそれぞれ突出させることにより、塗布液110が実際に流れることができる流路の形状、すなわち、塗布液溜り512から塗布液流路540を通ってx軸正方向に向かう塗布液110の流れ方向に対して、垂直な断面(yz平面)の形状を変化させることができる。これにより、図5に示す下側ダイヘッド510aにおいては、流路調整用ボルト560a,560b,560c,560dを突出させた部分において、それぞれ塗布液110の流量を減少させることができ、塗布液流路540内の塗布液110の流れを調整することができる。
【0024】
なお、上述した図2においては、この流路調整用ボルトは説明の便宜のために図示しなかったが、図2に示すダイヘッド500においても、図5に示す下側ダイヘッド510aと同様に、下側ダイヘッド510には流路調整用ボルトが設けられている。
【0025】
本実施形態においては、塗布液流路540内の塗布液110の流れを調整するために、このような塗布液流路540内に突出可能な流路調整用ボルトを用いているため、塗布液110の流れを簡便に調整することができ、これにより、塗工の最中に塗布液110の粘度などの物性が変化してしまった場合においても、ダイヘッド500のシム530を交換することなく、塗布液110の流れを適宜調整することができる。また、これにより、塗布液110を基材800上に均一に塗布することができる。
【0026】
すなわち、塗工の最中に塗布液110の粘度などの物性が変化してしまった場合においては、塗布液流路540の塗布液110の流れを調整するために、通常、ダイヘッド500を分解し、シム530を別の形状のものに交換する必要があるが、この際には、ダイヘッド500の分解、清掃、組立て、精度調整、および塗工装置1への着脱などを行わなければならず、大きな労力と時間を要する。また、ダイヘッド500に用いられるシム530は、硬質な金属により形成されているため、交換以外の方法では、形状を変更することができない。これに対し、本実施形態においては、ダイヘッド500のシム530を交換することなく、塗布液流路540の塗布液110の流れを簡便に調整することができ、これにより、塗布液110を基材800上に均一に塗布することができる。
【0027】
特に、本実施形態によれば、ダイヘッド500のシム530を交換することなく、塗布液流路540の塗布液110の流れを簡便に調整することができ、塗布液110を基材800上に均一に塗布することができるため、塗工装置1によって電池の電極部材を製造する際に、次のような効果を奏する。すなわち、基材800として金属箔を用い、塗布液110として電極スラリー(電極活物質を含む液体)を用いて、金属箔に電極スラリーを塗布してなる電極部材を製造する場合に、シム530を交換する手間を省くことで、電極部材の生産効率を向上させることができる。加えて、得られる電極部材は、電極スラリーが均一に塗布されたものとなるため、二次電池の電極として用いた際に、電極活物質が有効に作用して安定的に充放電を行うことができ、品質が優れたものとなる。
【0028】
なお、塗工の最中に塗布液110の粘度などの物性が変化してしまった場合においては、通常、ダイヘッド500から吐出される塗布液の量は、ダイヘッド500の幅方向における中央部分より両端部分の方が多くなる傾向にある。これに対し、図5に示すように、流路調整用ボルト560a,560b,560c,560dを下側ダイヘッド510aの幅方向の両端近傍に設け、これらの流路調整用ボルトをそれぞれ突出させることにより、塗布液流路540の幅方向両端近傍の塗布液110の流量を減少させることができ、これにより、塗布液110を基材800上に均一な厚みで塗布することができる。
【0029】
本実施形態においては、上述したように、流路調整用ボルトの設置数や設置位置は、特に限定されず、1または2以上の流路調整用ボルトを、所望の位置に設けることができる。たとえば、上述した図5に示す下側ダイヘッド510aでは4本の流路調整用ボルト560a〜560dを設けた例を示したが、本実施形態においては、図6(A)に示す下側ダイヘッド510bのように、さらに4本の流路調整用ボルト560e,560f,560g,560hを設けた構成としてもよい。
【0030】
本実施形態においては、流路調整用ボルトを図6(A)に示すような配置とすることにより、塗布液流路540の幅方向両端近傍の塗布液110の流量を細かく制御することができ、塗布液流路540内の塗布液110の流れをより適切に調整することができる。
【0031】
あるいは、本実施形態においては、上述した図6(A)に示す流路調整用ボルト560a〜560hに加えて、図6(B)に示す下側ダイヘッド510cのように、さらに、下側ダイヘッド510cの幅方向中央近傍に、流路調整用ボルト560i,560j,560kを設けた構成としてもよい。流路調整用ボルトを図6(B)に示すような配置とすることにより、塗布液流路540の幅方向両端近傍に加えて、幅方向中央近傍の塗布液110の流量を制御することができ、塗布液流路540内の塗布液110の流れをさらに適切に調整することができる。
【0032】
なお、上述した図5図6(A)、図6(B)に示す例においては、複数の流路調整用ボルトを、塗布液流路540の中心に対して左右対称となるように配置している。そのため、塗布液流路540の塗布液110の流れを局所的に調整するだけでなく、全体としてバランスよく調整することができ、これにより、塗布液110を基材800上により均一に塗布することができる。
【0033】
また、上述した図5図6(A)、図6(B)に示す例では、流路調整用ボルトを下側ダイヘッドに設けた例を示したが、本実施形態においては、流路調整用ボルトの設置位置は、特に限定されず、上側ダイヘッド520に設けてもよいし、下側ダイヘッドおよび上側ダイヘッド520の両方に設けてもよい。この際においては、流路調整用ボルトを、上側ダイヘッド520の表面と面一となるように配置し、流路調整用ボルトの回転に応じて塗布液流路540内に突出させるようにする。
【0034】
さらに、本実施形態においては、図7(A)に示す下側ダイヘッド510dのように、流路調整用ボルトに代えて、流路調整用部材570a、570bを設けた構成としてもよい。流路調整用部材570a、570bは、塗布液流路540内に突出可能な部分が四角柱形状となっており、このような四角柱形状の部分が、下側ダイヘッド510dの表面と面一となっている状態から、塗布液流路540内に突出することにより、塗布液流路540の塗布液110の流れ方向と垂直な断面の形状を変化させ、塗布液流路540の塗布液110の流れを調整することができる。
【0035】
なお、図7(A)においては、流路調整用部材について、塗布液流路540内に突出可能な部分の形状を四角柱形状とした例を示したが、このような塗布液流路540内に突出可能な部分の形状は、特に限定されず、たとえば、図7(B)に示す流路調整用部材580a、580bのように、三角柱形状としてもよいし、円柱形状としてもよい。
【0036】
ここで、図8(A)、図8(B)は、図7(A)に示す下側ダイヘッド510dを用いて、塗布液流路540の塗布液110の流れを調整する方法を説明するための図である。本実施形態においては、まず、下側ダイヘッド510dに設けられた流路調整用部材570aは、図8(A)に示すように、塗布液流路540内に突出する突出部571と、突出部571を押し上げるためのねじ部572とから構成される。そして、このねじ部572が回転することによって、図8(B)に示すように、ねじ部572が突出部571を押し上げて、突出部571と下側ダイヘッド510dとの間に空間590を発生させながら、突出部571を塗布液流路540内に突出させる。ここで、塗布液流路540内に突出部571を突出させる高さは、ねじ部572の回転角度に応じて調整することができる。なお、図7(B)に示す下側ダイヘッド510eの流路調整用部材580a、580bについても、同様の方法により、三角柱形状の突出部を塗布液流路540内に突出させることができる。
【0037】
本実施形態においては、塗布液流路540内に突出させる突出部を、円柱形上、三角柱形状、または四角柱形状などの形状とすることにより、塗布液流路540内において、塗布液110が突出部にぶつかった際においても、塗布液110が突出部に引っかからずに、塗布液110の流れをスムーズなものとすることができる。
【0038】
特に、塗布液流路540内に突出させる突出部を、三角柱形状や四角柱形状のように、面によって構成された形状とすることにより、次のような効果を奏することができる。すなわち、塗布液流路540内に突出させる突出部を三角柱形状や四角柱形状とすることによれば、塗布液流路540を流れる塗布液110は、突出部の平面部分にぶつかることとなり、この場合には、塗布液110が、突出部に引っかかることなく良好に液離れすることができ、これにより、塗布液流路540の塗布液110の流れが良好なものとなり、塗布液110を基材800上により均一に塗布することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0040】
たとえば、上述した例においては、流路調整用ボルトおよび流路調整用部材が、予め下側ダイヘッドや上側ダイヘッド520に設置され、突出高さのみ調整可能な構成としているが、流路調整用ボルトおよび流路調整用部材は、突出高さだけでなく、突出位置についても調整可能な構成としてもよい。具体的には、流路調整用ボルトおよび流路調整用部材について、下側ダイヘッドや上側ダイヘッド520の幅方向に移動できるような機構を設け、突出位置および突出高さの両方、またはいずれか一方を調整可能な構成としてもよい。
【0041】
これにより、流路調整用ボルトおよび流路調整用部材について、突出位置および突出高さの両方、またはいずれか一方を調整可能な構成とすることによれば、塗工の最中に塗布液110の粘度などの物性が変化してしまった場合においても、塗布液110の流れを、塗布液流路540の幅方向の位置ごとに細かく調整することができ、塗布液110を基材800上により均一に塗布することができる。
【0042】
なお、上述した実施形態において、塗布液流路540は本発明の流路に、塗工リップ550は本発明の塗工リップに、流路調整用ボルト560,560a〜560k、流路調整用部材570a,570b,580a,580bは本発明の流路調整手段、および突出機構に、突出部571は本発明の突出部に、流路調整用ボルト560,560a〜560k、ねじ部572は本発明のボルトに、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0043】
100…タンク
110…塗布液
120…塗工層
200…配管
300…ポンプ
400…三方弁
500…ダイヘッド
510…下側ダイヘッド
520…上側ダイヘッド
530…シム
540…塗布液流路
550…塗工リップ
560,560a〜560k…流路調整用ボルト
570a,570b,580a,580b…流路調整用部材
571…突出部
572…ねじ部
700…乾燥炉
800…基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8