特許第6441561号(P6441561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6441561-サスペンションアーム 図000002
  • 特許6441561-サスペンションアーム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441561
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】サスペンションアーム
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   B60G7/00
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-211370(P2013-211370)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-74319(P2015-74319A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年12月17日
【審判番号】不服2017-12573(P2017-12573/J1)
【審判請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和彦
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 一ノ瀬 覚
【審判官】 出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−159140(JP,A)
【文献】 実開平7−17608(JP,U)
【文献】 特開2002−173046(JP,A)
【文献】 実開平2−106902(JP,U)
【文献】 実開平3−129507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側から車輪側に延在する管状のアーム本体と、
前記アーム本体の車体側端部に接合される第1連結部と、
前記アーム本体の車輪側端部に接合される第2連結部と、を備え、
前記アーム本体は、一定の径で所定の長さに形成された中央部を有しており、前記中央部から前記車体側端部及び前記車輪側端部へ向かって径が大きくなる形状を有するとともに、前記中央部の径よりも前記車体側端部及び前記車輪側端部の径が大きく、前記車輪側端部の径よりも前記車体側端部の径が大きい形状を有することを特徴とするサスペンションアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋼板によって管状に形成された本体部分が、中央に位置する大径部と、両端に位置する小径部と、大径部と両側の小径部とを連結する徐変部とで構成されるサスペンションアームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−032158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の乗り心地を改善したいという要求に対して、サスペンションアームの捻り剛性を下げることが考えられる。しかしながら、サスペンションアームの捻り剛性を下げると、サスペンションアームの強度や車両の操安性能の低下を引き起こす可能性があった。例えば、サスペンションアームの捻り剛性を下げるためにプレスアーム(板物)で設計することが考えられるが、この場合、低下を望まない曲げ剛性まで低下してしまい、その結果サスペンションアームの強度や操安性能が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サスペンションアームの曲げ剛性の低下を抑制しながら捻り剛性を低下させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のサスペンションアームは、車体側から車輪側に延在する管状のアーム本体と、アーム本体の車体側端部に接合される第1連結部と、アーム本体の車輪側端部に接合される第2連結部と、を備える。アーム本体は、一定の径で所定の長さに形成された中央部を有しており、中央部から車体側端部及び車輪側端部へ向かって径が大きくなる形状を有するとともに、中央部の径よりも車体側端部及び車輪側端部の径が大きく、車輪側端部の径よりも車体側端部の径が大きい形状を有する。この態様によれば、サスペンションアームの曲げ剛性の低下を抑制しながら捻り剛性を低下させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サスペンションアームの曲げ剛性の低下を抑制しながら捻り剛性を低下させるための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(A)は、サスペンションアームが車体側及び車輪側に連結された状態を示す斜視図である。図1(B)は、比較例に係るサスペンションアームの概略構造を示す側面図である。図1(C)は、図1(B)のA−A線に沿った断面図である。
図2】実施の形態に係るサスペンションアームの概略構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0010】
図1(A)は、サスペンションアームが車体側及び車輪側に連結された状態を示す斜視図である。図1(B)は、比較例に係るサスペンションアームの概略構造を示す側面図である。図1(C)は、図1(B)のA−A線に沿った断面図である。図1(B)に示すように、比較例に係るサスペンションアーム100は、アーム本体110と、第1連結部120と、第2連結部130とを備える。アーム本体110は、車体側から車輪側に延在する管状の部材である。アーム本体110は、例えば1枚の金属板を筒状に曲げて形成され、図1(C)に示すように中空状の形状を有する。アーム本体110の車体側端部には、第1連結部120が接合される。アーム本体110の車輪側端部には、第2連結部130が接合される。第1連結部120は車体側のサブフレームに連結され、第2連結部130は車輪側のナックルに連結される(図1(A)参照)。
【0011】
サスペンションアーム100の捻り剛性を下げるために、アーム本体110は、図1(B)に示すように設定される。チューブとの合わせ形状は、必要とされる溶接長により決定され、アーム本体110の中央部形状は、座屈性能により決定される。この場合、サスペンションがストロークする際に、ブッシュ反力からのH方向曲げ剛性が低くなり得る。H方向曲げ剛性とは、サスペンションの上下ストローク方向(図1(B)において矢印Bで示す方向)における曲げ剛性である。H方向曲げ剛性を確保するためには、アーム本体110の板厚を増大させることが考えられるが、この場合は、板厚の3乗に比例して捻り剛性も高まってしまう。また、アーム本体110の断面形状を一律に変更することも考えられるが、この場合は、断面周長の1乗に比例して捻り剛性も高まってしまう。これに対し、本実施の形態に係るサスペンションアームは、以下の構成を備えることで、H方向曲げ剛性を確保しながら、捻り剛性の低下を図ることができる。
【0012】
図2は、実施の形態に係るサスペンションアームの概略構造を示す側面図である。本実施の形態に係るサスペンションアーム1は、車体側から車輪側に延在する管状のアーム本体10と、アーム本体10の車体側端部14に接合される第1連結部20と、アーム本体10の車輪側端部16に接合される第2連結部30と、を備える。アーム本体10は、比較例に係るサスペンションアーム100と同様に、車体側から車輪側に延在する管状の部材であり、例えば1枚の金属板を筒状に曲げて形成されて中空状の形状を有する(図1(C)参照)。第1連結部20は車体側のサブフレームに連結され、第2連結部30は車輪側のナックルに連結される(図1(A)参照)。
【0013】
また、アーム本体10は、その延在方向の中央部12の径Raよりも車体側端部14及び車輪側端部16の径Rb,Rcが大きく、車輪側端部16の径Rcよりも車体側端部14の径Rbが大きい形状を有する。本実施の形態のアーム本体10は、中央部12から車体側端部14及び車輪側端部16へ向けて径が大きくなるとともに、車輪側端部16の径Rcよりも車体側端部14の径Rbが大きい形状を有する。
【0014】
サスペンションアーム1の曲げ剛性を確保するためには、EI(ヤング係数Eと断面2次モーメントIの積)を確保することが有効である。また、サスペンションアーム1の捻り剛性を低下させるためには、アーム本体10の周を短くすることが有効である。また、サスペンションからの入力は、第2連結部30側からサスペンションアーム1に伝達される。このため、サスペンションアーム1の曲げ剛性を確保し、且つ捻り剛性を低下させるためには、モーメントアーム長から、サスペンションアーム1の車体側の剛性を高めることが効果的である。
【0015】
そこで、本実施の形態に係るサスペンションアーム1は、アーム本体10の中央部12の径Raを車体側端部14及び車輪側端部16の径Rb,Rcよりも小さくし、車体側端部14の径Rbを車輪側端部16の径Rcよりも大きくしている。すなわち、中央部12の断面を車体側端部14及び車輪側端部16の断面より小さくし、車体側端部14の断面を車輪側端部16の断面より大きくしている。これにより、サスペンションアーム1の曲げ剛性を確保しつつ、捻り剛性を下げることができる。
【0016】
以上説明したように、本実施の形態に係るサスペンションアーム1は、中央部12から両端に向けて径が太くなるとともに、車輪側端部16の径Rcよりも車体側端部14の径Rbが太い形状のアーム本体10を有する。これにより、サスペンションアーム1の捻り剛性を低下させるとともに、車輪側での曲げ剛性の低下を抑制できる。また、サスペンションアーム1の軸剛性も確保することができる。この結果、サスペンションアーム1の強度を保つことができ、また操安性能の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態に変形を加えて生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0018】
1 サスペンションアーム、 10 アーム本体、 12 中央部、 14 車体側端部、 16 車輪側端部、 20 第1連結部、 30 第2連結部。
図1
図2