(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441567
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】小胞内のポリヌクレオチドを含む乳がん診断用組成物及びキット、並びにそれを利用した乳がん診断方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20181210BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20181210BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20181210BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20181210BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
C12N15/113 ZZNA
C07K14/78
C12Q1/04
C12Q1/6886 Z
G01N33/574 Z
G01N33/574 A
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-261775(P2013-261775)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-117282(P2014-117282A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0148873
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0041965
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0082465
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 卿 希
(72)【発明者】
【氏名】龍 ▲いえ▼ ▲れい▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 賢 珠
(72)【発明者】
【氏名】金 嘉 姫
(72)【発明者】
【氏名】朴 東 賢
(72)【発明者】
【氏名】李 妙 龍
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/024543(WO,A1)
【文献】
特表2010−538653(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/151133(WO,A1)
【文献】
特表2008−500837(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/170711(WO,A1)
【文献】
特開2012−242394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)小胞内のhsa−miR−126、hsa−miR−24およびhsa−miR−15aからなる群から選択されるマイクロRNA(miRNA)と、同一または相補的な配列を有する一つ以上のポリヌクレオチド、ならびに(ii)前記小胞に特異的に結合する物質、この際前記小胞に特異的に結合する物質が表面タンパク質に結合できる物質であり、前記表面タンパク質がCD83である;
(b)(i)小胞内のhsa−miR−126と、同一または相補的な配列からなるポリヌクレオチド、小胞内のhsa−miR−19bと、同一または相補的な配列からなるポリヌクレオチド、小胞内のhsa−miR−23aと、同一または相補的な配列からなるポリヌクレオチド、および小胞内のhsa−miR−24と、同一または相補的な配列からなるポリヌクレオチド、ならびに(ii)前記小胞に特異的に結合する物質、この際前記小胞に特異的に結合する物質が表面タンパク質に結合できる物質であり、前記表面タンパク質がCD83である;または
(c)(i)小胞内のhsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、およびhsa−miR−93からなる群から選択されるマイクロRNAと、同一または相補的な配列からなる少なくとも1つのポリヌクレオチド、(ii)前記小胞に特異的に結合する物質、この際前記小胞に特異的に結合する物質が表面タンパク質に結合できる物質であり、前記表面タンパク質がCD83である、ならびに(iii)インテグリンβタンパク質に特異的に結合できる物質、を含む乳がん診断用組成物。
【請求項2】
前記小胞は、マイクロベシクルまたはエキソソームである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、
(i)前記(a)(i)のマイクロRNAに加えて、小胞内のhsa−miR−23a、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−185、hsa−miR−93、およびhsa−miR−30cからなる群から選択されるマイクロRNAと、同一または相補的な配列からなる少なくとも1つのポリヌクレオチド;または
(ii)前記(b)(i)のマイクロRNAに加えて、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93、およびhsa−miR−30cからなる群から選択されるマイクロRNAと、同一または相補的な配列からなる少なくとも1つのポリヌクレオチド;または
(iii)前記(c)(i)のマイクロRNAに加えて、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、およびhsa−miR−30cからなる群から選択されるマイクロRNAと、同一または相補的な配列からなる少なくとも1つのポリヌクレオチド;および
(iv)前記小胞に特異的に結合する物質、この際前記小胞に特異的に結合する物質が表面タンパク質に結合できる物質であり、前記表面タンパク質がFasL、ERBB2、またはこれらの組み合わせである、
を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記インテグリンβタンパク質は、インテグリンβサブユニットを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記インテグリンβタンパク質は、インテグリンβ5(ITGB5)、インテグリンβ6(ITGB6)、インテグリンβ7(ITGB7)及びインテグリンβ8(ITGB8)からなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
hsa−miR−126は、配列番号:1のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−23aは、配列番号:2のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−24は、配列番号:3のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−19bは、配列番号:4のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−103は、配列番号:5のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−142−3pは、配列番号:6のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−144は、配列番号:7のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−15aは、配列番号:8のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−185は、配列番号:9のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−93は、配列番号:10のヌクレオチド配列を含み、及び
hsa−miR−30cは、配列番号:11のヌクレオチド配列を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
下記段階を含む乳がん検出方法:
被験体から得られた生物学的試料から小胞を分離して、生物学的試料として小胞を提供する段階であり、前記生物学的試料からの小胞の分離は、前記小胞に特異的に結合する物質と共に前記生物学的試料をインキュベートすることを含み、この際前記小胞に特異的に結合する物質が表面タンパク質に結合できる物質であり、前記表面タンパク質がCD83である段階;ならびに
(a)前記生物学的試料に含有されたマイクロRNA(miRNA)の量を測定する段階であり、該マイクロRNAは、hsa−miR−126、hsa−miR−24、およびhsa−miR−15aからなる群から選択されるいずれか一つ以上である段階、もしくは前記生物学的試料中のhsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24およびhsa−miR−19bの量を測定する段階;測定されたマイクロRNAの量を対照群と比較する段階;および前記生物学的試料由来のマイクロRNAの量の、対照群との比較に基づいて、乳がんを検出する段階であり、前記乳がんを検出する段階は、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの測定量が、対照群由来のマイクロRNAの測定量より多いか、または少ないかを決定し、
(i)対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの増加した量は、前記被験体が乳がんである指標であり、該対照群が乳がんではないか若しくは良性の乳腺腫瘍を有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNAの量であり、もしくは、
(ii)対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの減少した量は、前記被験体が乳がんではないという指標であり、該対照群が乳がんを有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNAの量である、または
(b)前記生物学的試料中のマイクロRNAの量およびインテグリンβタンパク質の量を測定する段階であり、前記マイクロRNAは、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、およびhsa−miR−93からなる群から選択される少なくとも1つである段階;測定されたマイクロRNAの量を対照群と比較する段階およびインテグリンβタンパク質の量を対照群の測定されたインテグリンβタンパク質の量と比較する段階;および前記生物学的試料由来のマイクロRNAおよびインテグリンβタンパク質の量の、対照群との比較に基づいて、乳がんを検出する段階であり、前記乳がん診断を提供検出する段階は、前記生物学的試料由来のマイクロRNAおよびインテグリンβタンパク質の測定量が、対照群由来のマイクロRNAおよびインテグリンβタンパク質の測定量より多いか、または少ないかを決定し、
(i)対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAおよびインテグリンβタンパク質の増加した量は、前記被験体が乳がんである指標であり、該対照群が乳がんではないか若しくは良性の乳腺腫瘍を有する被験体からの生物学的試料由来のインテグリンβおよびマイクロRNAの量であり、もしくは、
(ii)対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAおよびインテグリンβタンパク質の減少した量は、前記被験体が乳がんではないという指標であり、該対照群が乳がんを有する被験体からの生物学的試料由来のインテグリンβおよびマイクロRNAの量である、方法。
【請求項8】
対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの増加または減少した量は、0.5Cp値以上の増加または減少である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的試料は、尿、粘液、唾液、涙、血液、血漿、血清、痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引物、リンパ液、気道液、腸液、泌尿生殖管液、母乳、精液、脳脊髄液、気管系内体液、腹水、嚢胞性腫瘍体液、羊水液、またはこれらの組み合わせである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記小胞は、マイクロベシクルまたはエキソソームである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記インテグリンβタンパク質は、インテグリンβサブユニットを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記インテグリンタンパク質は、インテグリンβ5(ITGB5)、インテグリンβ6(ITGB6)、インテグリンβ7(ITGB7)及びインテグリンβ8(ITGB8)からなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
hsa−miR−126は、配列番号:1のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−23aは、配列番号:2のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−24は、配列番号:3のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−19bは、配列番号:4のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−103は、配列番号:5のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−142−3pは、配列番号:6のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−144は、配列番号:7のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−15aは、配列番号:8のヌクレオチド配列を含み、
hsa−miR−185は、配列番号:9のヌクレオチド配列を含み、および
hsa−miR−93は、配列番号:10のヌクレオチド配列を含む、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小胞内のポリヌクレオチドを含む乳がん診断用組成物及びキット、並びにそれを利用した乳がん診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロベシクルは、さまざまな種類の細胞に存在し、または細胞から分泌される、膜構造の微小な小胞である。細胞外に分泌されるマイクロベシクルは、(I)エキソソーム(exosome):直径30〜100nmの膜性小胞、(II)エクトソーム(ectosome)(シェディング・マイクロベシクル(SMVs:shedding microvesicles)ともいう):原形質膜(plasma membrane)から直接放出される、直径50〜1,000nmの大きい膜性小胞、(III)アポトーシス性水疱(apoptotic blebs):死んで行く細胞から放出される直径50〜5,000nmの小胞、を含む。
【0003】
そのうち、エキソソームは、さまざまな種類の細胞から分泌される膜構造の微小小胞である。エキソソームの直径は、およそ30〜100nmである。エキソソームは、電子顕微鏡を用いた研究により、原形質膜から直接放出されるのではなく、多嚢体(MVBs:multivesicular bodies)と呼ばれる細胞内特定区画に由来することが確認されており、その後、エキソソームとして細胞外に放出される。すなわち、多嚢体と原形質膜との融合が起これば、かような小胞は、細胞外環境に放出されるが、それをエキソソームと呼ぶ。かようなエキソソームが、いかなる分子的メカニズムによって作られるか明確に明らかにされていないが、赤血球だけではなく、Bリンパ球、Tリンパ球、樹枝状細胞、血小板、及びマクロファージなどを含む多様な種類の免疫細胞、または腫瘍細胞でさえも、生きている状態でエキソソームを生産して分泌することが知られている。エキソソームは、細胞の状態が正常(normal state)、病的(pathological state)または非正常(abnormal state)であるのかに応じて、多数の他の細胞類型から分離されて放出されると知られている。
【0004】
また、マイクロベシクルは、マイクロRNA(miRNA:microRNA)を含むこともある。miRNAは、それを含む細胞または被験体の状態を確認するのに使用されうる。前記状態は、疾病、例えば、がん、遺伝病、心臓病、または精神分裂のような神経性疾患でもある。
【0005】
既存組織検査を介した乳がん診断は、侵襲的(invasive)方法であるので、被験体の苦痛を伴い、頻繁に検診し難く、費用が高くなるという問題がある。また、既存の血液検査を介した乳がん診断は、正確性が高い血液タンパク質マーカーが今のところなく、循環腫瘍細胞(CTC:circulating tumor cell)は、転移性乳がんにのみ適用が可能であり、初期がんの診断には、適用することができないという問題がある。
【0006】
従って、乳がんを、できる限り侵襲的でない手段で(using a less invasive manner)、早期に診断するために、乳がん特異性血液内マーカーを選別することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8021847号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ダグラス ディー. テイラー(Douglas D. Taylor)とシセック ジャーセル−テイラー(Cicek Gercel−Taylor),ガイナコロジック オンコロジー(Gynecologic Oncology),110(2008)13−21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、乳がん診断用組成物及びキットを提供することである。本発明が解決しようとする課題はまた、乳がん診断方法及び乳がん診断に必要な情報を得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、(a)小胞内のhsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるマイクロRNA(miRNA)または該マイクロRNAの断片(fragment)と、同一または相補的な一つ以上のポリヌクレオチド;及び(b)下記(i)〜(iii)のいずれか1つ以上とを含む乳がん診断用の組成物及びキットを提供する;(i)前記小胞に特異的に結合する物質、(ii)前記小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質、(iii)インテグリンタンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができる物質;。
【0011】
前記課題を解決するために、本発明はまた、被験体から得られた小胞を含む生物学的試料を提供する段階と、前記生物学的試料に含有されたマイクロRNA(miRNA)の量を測定する段階であり、該マイクロRNAは、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるいずれか一つ以上である段階と、測定されたマイクロRNAの量を対照群と比較する段階と、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの量の、対照群との比較に基づいて、乳がん診断を提供する段階と、を含む乳がん診断方法及び乳がん診断に必要な情報を得る方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】良性腫瘍患者群と乳房がん患者群とで、抗CD83抗体が接合された免疫ビーズを使用して分離されたマイクロベシクル量のグラフである。分離されたマイクロベシクル中のCD9タンパク質の量は、抗CD9抗体によって決定された。任意の単位であるマイクロベシクルの相対強度を、良性腫瘍及び乳房がん患者群それぞれについて、y軸に示した。
【
図1B】良性腫瘍患者群と乳房がん患者群とで、抗FSAL抗体が接合された免疫ビーズを使用して分離されたマイクロベシクル量のグラフである。分離されたマイクロベシクル中のCD9タンパク質の量は、抗CD9抗体によって決定された。任意の単位であるマイクロベシクルの相対強度を、良性腫瘍及び乳房がん患者群それぞれについて、y軸に示した。
【
図1C】良性腫瘍患者群と乳房がん患者群とで、抗ERBB2抗体が接合された免疫ビーズを使用して分離されたマイクロベシクル量のグラフである。分離されたマイクロベシクル中のCD9タンパク質の量は、抗CD9抗体によって決定された。任意の単位であるマイクロベシクルの相対強度を、良性腫瘍及び乳房がん患者群それぞれについて、y軸に示した。
【
図2A】良性腫瘍患者群と乳房がん患者群とで、マイクロRNA量を比較したグラフである。x軸に表示されたマイクロRNAの試料についての、Cp(crossing−point)値、すなわち、サイクル数がy軸に表示される。
【
図2B】良性腫瘍患者群と乳房がん患者群とで、マイクロRNA量を比較したグラフである。x軸に表示されたマイクロRNAの試料についての、Cp(crossing−point)値、すなわち、サイクル数がy軸に表示される。
【
図3A】抗CD83抗体が接合された免疫ビーズを使用した免疫ブロッティングで得られた、良性腫瘍患者群と乳房がん患者群から分離されたマイクロベシクルの、インテグリンβタンパク質バンドの相対的強度を示すグラフである。
【
図3B】抗FSAL抗体が接合された免疫ビーズを使用した免疫ブロッティングで得られた、良性腫瘍患者群と乳房がん患者群から分離されたマイクロベシクルの、インテグリンβタンパク質バンドの相対的強度を示すグラフである。
【
図3C】抗ERBB2抗体が接合された免疫ビーズを使用した免疫ブロッティングで得られた、良性腫瘍患者群と乳房がん患者群から分離されたマイクロベシクルの、インテグリンβタンパク質バンドの相対的強度を示すグラフである。
【
図4】良性腫瘍患者群と乳房がん患者群から分離されたマイクロベシクル中の、インテグリンβ及びマイクロRNAのAUC(area under the curves)、並びにインテグリンβとマイクロRNAとが組み合わされたAUCのグラフである。点線は、インテグリンβのAUCを示し、黒色バーは、マイクロRNAのAUCを示し、白色バーは、インテグリンβ及びマイクロRNAが組み合わされたAUCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
本発明は、乳がん診断用組成物及びキット、並びに乳がん診断方法及び乳がん診断に必要な情報を得る方法を提供するものである。
【0015】
本発明の一側面によれば、組成物またはキットは、小胞(vesicle)に含有されるhsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるいずれか1つのマイクロRNA(miRNA:microRNA)または該マイクロRNAの断片(fragment)と、同一または相補的な一つ以上のポリヌクレオチドを含む。hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるいずれか1つのマイクロRNA(miRNA)またはその断片と、同一または相補的な配列を有する別々のポリヌクレオチドを、各々が含有する小胞を、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上または11個、前記組成物は含んでもよい。前記組成物は、異なる核酸または他の物質を含有した他の小胞のような、他の追加的な要素を含んでもよい。
【0016】
“小胞”または“小嚢”は、脂質二重層で覆い包まれた膜構造をいう。例えば、小胞は、マイクロベシクル(microvesicle)またはエキソソーム(exosome)でもある。“マイクロベシクル”は、細胞に由来する膜構造を備えた、小型の小胞をいう。本明細書においては、“マイクロベシクル”は、“循環マイクロベシクル(circulating microvesicle)”または“マイクロ粒子(microparticles)”と交換自在に使用される。マイクロベシクルは、細胞に存在し、または細胞から分泌されもする。細胞外に分泌されるマイクロベシクルは、エキソソーム、エクトソーム(シェディング・マイクロベシクル(SMVs)ともいう)またはアポトーシス性水疱(apoptotic blebs)でもある。エキソソームは、食細胞(phagocytes)由来の直径30〜100nmの膜性小胞でもある。エクトソームは、原形質膜から直接放出されて、直径50〜1,000nmの大きい膜性小胞でもある。アポトーシス性水疱は、死んで行く細胞によって流出する直径50〜5,000nmの小胞でもある。生体内マイクロベシクルは、マイクロRNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)を含んでもよい。小胞の表面タンパク質は、病気特異的なマーカーでもある。
【0017】
前記マイクロRNAは、真核細胞で発見される短いリボ核酸をいう。マイクロRNAは、生体内で遺伝子発現を調節する役目を行い、長さが約17〜約25ヌクレオチド(以下、「nt」という)であり、それらは、DNAによってコードされる。それらは、ゲノムから転写され、断片化された後に、特定タンパク質の発現を増減させる役割を行う。現在まで、哺乳類で知られたマイクロRNAの機能は、インシュリン分泌調節、リンパ球分化調節、細胞分裂調節、細胞死滅調節、ウイルス複製調節などである。
【0018】
前記乳がん診断用組成物のうちマイクロRNAは、例えば、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93、hsa−miR−30c、またはこれらの組み合わせでもある。hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cは、それぞれヒト(hsa:ホモサピエンス(home sapiens))由来のものである。
【0019】
hsa−miR−126は、配列番号1のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−23aは、配列番号2のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−24は、配列番号3のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−19bは、配列番号4のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−103は、配列番号5のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−142−3pは、配列番号6のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−144は、配列番号7のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−15aは、配列番号8のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−185は、配列番号9のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−93は、配列番号10のヌクレオチド配列に相応し、hsa−miR−30cは、配列番号11のヌクレオチド配列に相応する。
【0020】
前記マイクロRNAの断片は、連続した塩基配列を有するマイクロRNAのポリヌクレオチドをいう。前記断片の長さは、例えば、2nt〜25nt、3nt〜24nt、4nt〜23nt、5nt〜22nt、6nt〜21nt、7nt〜20nt、8nt〜19nt、9nt〜18nt、10nt〜17nt、11nt〜16nt、12nt〜15nt、または13nt〜14ntでもある。
【0021】
前記ポリヌクレオチドは、例えば、前記マイクロRNAまたはその断片と同一の塩基配列を有するものでもある。前記ポリヌクレオチドは、例えば、前記マイクロRNAまたはその断片に相補的な塩基配列を有するものでもある。前記ポリヌクレオチドは、プライマーまたはプローブでもある。前記ポリヌクレオチドの長さは、例えば、2nt〜25nt、3nt〜24nt、4nt〜23nt、5nt〜22nt、6nt〜21nt、7nt〜20nt、8nt〜19nt、9nt〜18nt、10nt〜17nt、11nt〜16nt、12nt〜15nt、または13nt〜14ntでもある。
【0022】
前記組成物またはキットは、小胞に特異的に結合することができる物質、小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質、インテグリンタンパク質若しくはその断片に対して特異的に結合することができる物質、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。すなわち、本発明の乳がん診断用組成物は、下記(i)〜(iii)のいずれか1つ以上を含む;(i)前記小胞に特異的に結合する物質、(ii)前記小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質、(iii)インテグリンタンパク質またはその断片に対して特異的に結合することができる物質。
【0023】
小胞に特異的に結合することができる物質は、例えば、小胞の表面タンパク質、脂質または糖に結合することができる物質でもある。表面タンパク質は、例えば、CD83、CD9、EpCAM、カベオリン、FasL(FASL)、HLA−DRA、CD36、CD63、CD81、MUC1、ERBB4、GPER、ERBB2、MLANA、AMHR2、またはこれらの組み合わせでもある。小胞に特異的に結合することができる物質は、例えば、タンパク質に対して結合親和性を有する物質、酵素の基質、補酵素、調節因子、受容体と特異的に結合する物質、レクチン、糖、糖蛋白質、抗原、抗体若しくはその抗原結合断片、ホルモン、神経伝達物質、リン脂質結合タンパク質、プレクストリン相同(PH:pleckstrin homology、PH)ドメインを含むタンパク質、コレステロール結合タンパク質、またはこれらの組み合わせでもある。抗原結合断片は、抗原結合部位を含むものであり、例えば、単一ドメイン抗体(single−domain antibody)、Fab、Fab’またはscFvでもある。小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質は、例えば、親油性モイエティ(moiety)、両親媒性(amphipathic)モイエティ、両性イオンモイエティ、またはこれらの組み合わせを含む物質でもある。親油性モイエティは、例えば、脂肪酸、ステロールまたはグリセリドでもある。両親媒性モイエティは、例えば、リン脂質またはスフィンゴ脂質(sphingolipid)でもある。両性(イオン)モイエティは、例えば、スルホベタイン、カルボキシベタインまたはホスホリルコリンでもある。小胞に特異的に結合することができる物質、または小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質は、固体支持体と結合したものでもある。前記固体支持体は、例えば、ポリスチレンプレート、ポリスチレンビーズまたはマグネチックビーズでもある。小胞に特異的に結合する物質は、乳がんではないかまたは良性の乳腺腫瘍を有する被験体のような正常対照群よりも、乳がん患者に由来するマイクロベシクルのような小胞により特異的に結合する物質でもある。小胞に特異的に結合する物質は、CD83、ERBB2、FASL、またはこれらの組み合わせのような乳がん特異性マイクロベシクルマーカーでもある。
【0024】
前記インテグリンタンパク質は、細胞膜を貫通する受容体タンパク質であり、細胞信号伝達、並びに細胞周期、細胞形状及び細胞移動性の調節に関連する。前記インテグリンタンパク質は、αサブユニットとβサブユニットとのヘテロ二量体である。前記インテグリンタンパク質は、インテグリンαサブユニット、インテグリンβサブユニット、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、前記インテグリンタンパク質は、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、インテグリンα8(ITGA8)、インテグリンα9(ITGA9)、インテグリンα10(ITGA10)、インテグリンα11(ITGA11)、CD11D、CD103、CD11a、CD11b、CD51、CD41、CD11c、CD29、CD18、CD61、CD104、インテグリンβ5(ITGB5)、インテグリンβ6(ITGB6)、インテグリンβ7(ITGB7)及びインテグリンβ8(ITGB8)からなる群から選択されるポリペプチドを含んでもよい。前記インテグリンタンパク質の断片は、インテグリンタンパク質の連続アミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。
【0025】
前記インテグリンタンパク質またはその断片に対して特異的に結合する物質は、インテグリンに特異的に結合する抗体でもある。前記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でもある。前記抗体は、全長抗体または抗原結合断片でもある。抗原結合断片は、抗原結合部位を含むものであり、例えば、単一ドメイン抗体(single−domain antibody)、Fab、Fab’またはscFvでもある。前記抗体は、抗インテグリンαサブユニット抗体または抗インテグリンβサブユニット抗体でもある。
【0026】
他の具体例によれば、被験体から得られた小胞を含む生物学的試料を提供する段階と、前記生物学的試料に含有されたマイクロRNAの量を測定する段階であり、該マイクロRNAは、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるいずれか一つ以上である段階と、測定されたマイクロRNAの量を対照群と比較する段階(例えば、陽性若しくは陰性対照群試料から分離された小胞中のマイクロRNAの測定量、または、陽性若しくは陰性対照群試料中のマイクロRNAの量を表すデータ)と、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの量の、対照群との比較に基づいて、乳がん診断を提供する段階と、を含む、乳がん診断方法が提供される。
【0027】
前記方法は、被験体から得られた小胞を含む生物学的試料を提供する段階と、前記生物学的試料に含有されたマイクロRNAの量を測定する段階において、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるマイクロRNAのうち、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上または11個全てのマイクロRNAの量を測定する段階であってもよい。
【0028】
前記乳がん診断方法は、被験体から得られた生物学的試料を提供する段階を含む。
【0029】
前記被験体は、マウス、ラット、ギニアピッグ、ハムスター、猫、犬、豚、牛、馬または類人猿(例えば、ヒト)を含む哺乳動物でもある。
【0030】
前記生物学的試料は、例えば、尿、粘液、唾液、涙、血液、血漿、血清、痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引物、リンパ液、気道液、腸液、泌尿生殖管液、母乳、リンパ系体液、精液、脳脊髄液、気管系内体液、腹水、嚢胞性(cystic)腫瘍体液、羊水液、またはこれらの組み合わせでもある。前記生物学的試料は、小胞を含むか、または小胞自体を生物学的資料としてもよい。
【0031】
生物学的試料を提供する段階は、被験体から試料を採血し、サンプリングし、生検または分離する段階を含んでもよい。前記生物学的試料から小胞を分離する段階は、例えば、固体支持体または遠心力を利用した分離、密度勾配法、超遠心分離、濾過、透析、抗体を利用した免疫親和性クロマトグラフィ、自由流動電気泳動法、またはそれらを混合した方法で行うことができる。前記生物学的試料から小胞を分離する段階は、例えば、小胞に特異的に結合することができる物質、または小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質を小胞とをインキュベーションする段階を含んでもよい。インキュベーションは、インビトロ(in vitro)で行われることもある。ある実施形態では、生物学的試料からの小胞の分離は、洗浄を含む。
【0032】
マイクロRNAの量は、小胞内のhsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択される少なくとも一つのマイクロRNAまたは該マイクロRNAの断片と、同一または相補的なポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブを使って測定され得る。前記ポリヌクレオチドの長さは、例えば、2nt〜25nt、3nt〜24nt、4nt〜23nt、5nt〜22nt、6nt〜21nt、7nt〜20nt、8nt〜19nt、9nt〜18nt、10nt〜17nt、11nt〜16nt、12nt〜15nt、または13nt〜14ntでもある。前記マイクロRNAの量は、例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT−PCR、qRT−PCR)法で測定することができる。
【0033】
前記乳がん診断方法、または乳がん診断のために情報を得る方法は、生物学的試料中のマイクロRNAの測定量を、対照群(例えば、リファレンス(対照群)試料の小胞中の、マイクロRNAの測定量)と比較する段階を含む。
【0034】
前記対照群試料は、正常または良性腫瘍患者から由来した試料でもある(陰性対照群)。代案として、前記対照群試料は、乳がん患者から得られた試料でもある(陽性対照群)。前記対照群はまた、正常及び/若しくは良性患者、または、乳がん陽性患者のプール(pool)中のmiRNAの量を示す、データによって提供される。
【0035】
前記方法は、前記試料由来のマイクロRNAの量の、対照群との比較に基づいて、乳がん診断を提供する段階を含む。乳がん診断を提供する段階は、前記試料由来のマイクロRNAの測定量が、対照群由来のマイクロRNAの測定量より多いか、または少ないかを決定する段階を含んでもよい。例えば、陰性対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの増加した量は、前記被験体が乳がんである指標である。前記陰性対照群は、乳がんではないかまたは良性の乳腺腫瘍を有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNAの量でもある。陰性対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの増加した量は、約0.2,0.4,0.5,0.6,0.8,1.0,1.2,1.4,1.6,1.8、2.0,2.2,2.4,2.6または2.8Cpユニット以上の増加でもある。陽性対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの減少した量は、前記被験体が乳がんではないという指標である。前記陽性対照群は、乳がんを有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNAの量でもある。陽性対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの減少した量は、約0.2,0.4,0.5,0.6,0.8,1.0,1.2,1.4,1.6,1.8,2.0,2.2,2.4,2.6または2.8Cpユニット以上の減少でもある。
【0036】
すなわち、本発明の一実施形態は、被験体から得られた小胞を含む生物学的試料を提供する段階と、前記生物学的試料に含有されたマイクロRNAの量を測定する段階であり、該マイクロRNAは、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cからなる群から選択されるいずれか一つ以上である段階と、測定されたマイクロRNAの量を対照群と比較する段階と、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの量の、対照群との比較に基づいて、乳がん診断を提供する段階であり、前記乳がん診断を提供する段階は、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの測定量が、対照群由来のマイクロRNAの測定量より多いか、または少ないかを決定し、対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの増加した量は、前記被験体が乳がんである指標であり、該対照群が乳がんではないか若しくは良性の乳腺腫瘍を有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNAの量であり、または、対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNAの減少した量は、前記被験体が乳がんではないという指標であり、該対照群が乳がんを有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNAの量である、乳がん診断方法が提供される。 生物学的試料から小胞を分離する段階が含まれる場合において、小胞に特異的に結合することができる物質は、例えば、小胞の表面タンパク質、脂質または糖に結合することができる物質でもある。表面タンパク質は、例えば、CD83、CD9、EpCAM、カベオリン、FasL、HLA−DRA、CD36、CD63、CD81、MUC1、ERBB4、GPER、ERBB2、MLANA、AMHR2、またはこれらの組み合わせでもある。小胞に特異的に結合することができる物質は、例えば、タンパク質に対して結合親和性を有する物質、酵素の基質、補酵素、調節因子、受容体と特異的に結合する物質、レクチン、糖、糖蛋白質、抗原、抗体若しくはその抗原結合断片、ホルモン、神経伝達物質、リン脂質結合タンパク質、プレクストリン相同ドメインを含むタンパク質、コレステロール結合タンパク質、またはこれらの組み合わせでもある。抗原結合断片は、抗原結合部位を含むものであり、例えば、単一ドメイン抗体、Fab、Fab’またはscFvでもある。小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質は、例えば、親油性モイエティ、両親媒性モイエティ、両性イオンモイエティ、またはこれらの組み合わせを含む物質でもある。親油性モイエティは、例えば、脂肪酸、ステロールまたはグリセリドでもある。両親媒性モイエティは、例えば、リン脂質またはスフィンゴ脂質でもある。両性(イオン)モイエティは、例えば、スルホベタイン、カルボキシベタインまたはホスホリルコリンでもある。小胞に特異的に結合することができる物質、または小胞の脂質二重層に入り込むことができる物質は、固体支持体と結合したものでもある。前記固体支持体は、例えば、ポリスチレンプレート、ポリスチレンビーズまたはマグネチックビーズでもある。小胞に特異的に結合する物質は、乳がんではないかまたは良性の乳腺腫瘍を有する被験体のような正常対照群よりも、乳がん患者に由来するマイクロベシクルのような小胞により特異的に結合する物質でもある。小胞に特異的に結合する物質は、CD83、ERBB2、FASL、またはこれらの組み合わせのような乳がん特異性マイクロベシクルマーカーでもある。
【0037】
乳がん診断方法、または乳がん診断のために情報を得る方法は、生物学的試料(例えば、小胞)中のインテグリンタンパク質の量を測定する段階;前記インテグリンタンパク質の量を対照群と比較する段階(例えば、陽性または陰性対照群から分離された小胞中のインテグリンタンパク質の測定量、または、陽性若しくは陰性の対照群患者試料、若しくはそのような試料のプール中に存在するインテグリンのレベルを反映するデータ);をさらに含んでもよい。前記方法は、生物学的試料由来の小胞中のインテグリンタンパク質の量が、陰性対照群より多いか、または陽性対照群より少ない場合に、前記被験体が、乳がん患者であるか、または乳がんを有する確率が高いと、決定する段階をさらに含んでもよい。前記インテグリンタンパク質は、αサブユニットとβサブユニットとのヘテロ二量体である。前記インテグリンタンパク質は、インテグリンαサブユニット、インテグリンβサブユニット、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、前記インテグリンタンパク質は、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、インテグリンα8(ITGA8)、インテグリンα9(ITGA9)、インテグリンα10(ITGA10)、インテグリンα11(ITGA11)、CD11D、CD103、CD11a、CD11b、CD51、CD41、CD11c、CD29、CD18、CD61、CD104、インテグリンβ5(ITGB5)、インテグリンβ6(ITGB6)、インテグリンβ7(ITGB7)及びインテグリンβ8(ITGB8)からなる群から選択されるポリペプチドを含んでもよい。前記インテグリンタンパク質の断片は、インテグリンタンパク質の連続アミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。
【0038】
すなわち一実施形態では、本発明に係る方法は、前記生物学的試料中のインテグリンタンパク質の量を測定する段階と、前記インテグリンタンパク質の量と、対照群のインテグリンタンパク質の測定量とを比較する段階と、をさらに含み、対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNA及びインテグリンタンパク質の増加した量は、前記被験体が乳がんである指標であり、該対照群が乳がんではないか若しくは良性の乳腺腫瘍を有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNA及びインテグリンの量であり、または、対照群に比べ、前記生物学的試料由来のマイクロRNA及びインテグリンタンパク質の減少した量は、前記被験体が乳がんではないという指標であり、該対照群は、乳がんを有する被験体からの生物学的試料由来のマイクロRNA及びインテグリンの量である方法、が提供される。
【0039】
前記インテグリンタンパク質の量は、電気泳動、ウェスタンブロッティング、酵素結合免疫吸着法(ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay)、タンパク質チップ、質量分析器、またはこれらの組み合わせを介して測定することができる。
【0040】
乳がん診断方法、または乳がん診断のために情報を得る方法は、インビトロ方法でもある。乳がん診断方法は、乳がんを治療するために、乳がんを治療するための乳がん診断方法によって、乳がんにかかるか、あるいは乳がんにかかる可能性が高い確率を有すると診断された被験体に、1個以上の薬物を投与する段階をさらに含んでもよい。薬物は、乳がんに特異的な抗がん薬、または他の抗がん剤との組み合わせでもある。
【0041】
乳がん診断方法、または乳がん診断のために情報を得る方法は、例えば、カオトロピック塩(chaotropic salt)、有機溶媒または界面活性剤を含む溶媒で、生物学的試料(例えば、小胞)を溶解させる段階をさらに含んでもよい。生物学的試料の溶解は、例えば、加熱、撹拌、回転、ボルテキシング(vortexing)、またはこれらの組み合わせでも行われる。
【実施例】
【0042】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0043】
実施例1.乳がん特異的タンパク質及びmiRNAマーカー
(1)乳がん関連マイクロベシクルの表面タンパク質マーカーのスクリーニング
乳がんではない良性腫瘍患者(非乳がん患者)20人と、乳がん患者(乳がん、第2ステージ内腔(luminal)B型)22人から、8ml〜10mlの血液をBDバキュテイナ(Vacutainer(登録商標))プラスプラスチック全血チューブへ採取した。それぞれの血液試料を、4℃で1,300xgで10分間遠心分離して血漿を得て、その後に使用する前まで−80℃で保管した。使用前、血漿を溶かし、約4℃で約3,000xgで5分間遠心分離し、血漿内脂質及び細胞残余物を除去し、上澄み液を下記実験に使用した。
【0044】
得られた血漿を良性腫瘍患者群と乳がん患者群とで別々にプールし(pooling)、血漿試料体積の3倍体積のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して希釈した。希釈された血漿は、4℃で2,000xgで30分、及び4℃で12,000xgで30分間順に遠心分離した。遠心分離された結果物からペレットを除去し、上澄み液を0.22μmフィルタを使用して濾過した。濾過された溶液を、300kDaカットオフ・メンブレン・カラム(ビバプロダクツ(Vivaproducts))を使用し、4℃で110,000xgで2時間超高速遠心分離して濃縮した。
【0045】
マイクロベシクル中で、CD83、ERBB2及びFASLタンパク質の量が、正常人と比べ、乳がん患者で増加したか、あるいは減少したかを確認するために、内部標準として、マイクロベシクルマーカーであるCD9の量を測定した。前記で得られた沈殿物、すなわち、マイクロベシクルをPBSに懸濁し、溶解バッファー、及びドデシル硫酸リチウムを含むpH8.4のNuPAGE LDSサンプルバッファー(ライフテクノロジーズ)をチューブに添加し、95℃で10分間ヒートブロックで反応物を熱処理し、マイクロベシクルを溶解させた。溶解物を電気泳動し、免疫ブロッティングを行った。一次抗体として、ウサギ抗CD83抗体(BDファーミンゲン(Pharmingen))、ウサギ抗ERBB2抗体(R&Dシステムズ)、ウサギ抗FASL抗体(BDファーミンゲン(Pharmingen))及びウサギ抗CD9抗体(ノバスバイオロジカルズ(Novus Biologicals))、及び二次抗体として、HRP接合された抗ウサギ抗体を使用し、免疫ブロッティングの検出を行い、発光画像をLas min 4000を使用して分析した。免疫ブロッティングの結果では、CD83、ERBB2及びFASLタンパク質が、良性腫瘍患者群と乳がん患者群において、量に有意な差があることを確認した。
【0046】
従って、乳がん特異的マイクロベシクルは、抗CD83抗体(BDファーミンゲン(Pharmingen))、抗ERBB2抗体(R&Dシステムズ)または抗FASL抗体(BDファーミンゲン(Pharmingen))を使用して血液から分離することができる。
【0047】
(2)表面タンパク質マーカーの確認
それぞれの良性腫瘍保有者及び乳がん患者から得られたされたCD83、ERBB2またはFASLタンパク質発現マイクロベシクルの量を確認するために、抗CD83抗体、抗ERBB2抗体または抗FASL抗体が接合された免疫ビーズを使用して、実施例1(1)の血漿からマイクロベシクルを分離し、分離したマイクロベシクルの量を、CD9タンパク質(マイクロベシクルマーカー)に特異的に結合する抗CD9抗体(ノバスバイオロジカルズ(Novus Biologicals))を使用して免疫ブロッティングで確認した。
【0048】
100mLのダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)M−270アミン溶液(ライフテクノロジーズ)をエッペンドルフチューブに入れ、NaCl(pH6.0)を含むMESバッファーで洗浄した。MESバッファー中でポリアクリルアミド(アルドリッチ(Aldrich))溶液を準備し、カップリング剤として、EDC(エチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)及びNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を溶液に添加した。ビーズを常温で反応させ、MESバッファー(pH6.0)で洗浄した後、EDC及びNHSを含むMESバッファーに再懸濁した。その後、ビーズをMESバッファーで洗浄し、MESバッファー中で、タンパク質G溶液と反応させた。反応後、1.2mgのスルホベタイン(アルドリッチ(Aldrich))を溶液に加えてインキュベーションした。インキュベーション後、ビーズを、PBSTとPBSとで洗浄した。PBS溶液(pH7.4)中で抗CD83ストック溶液を準備し、NaOAc(pH5.0)で希釈した。タンパク質Gが結合されたビーズを、80mgの抗CD83溶液とインキュベーションした。ビーズをホウ酸ナトリウムバッファー(pH9.3)で洗浄し、抗体をピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩(dimethyl pimelimidate dihydrochloride)を使用して、タンパク質Gに架橋結合させた。洗浄し、エタノールアミンで免疫ビーズをインキュベーションすることで、反応を終了した。インキュベーション後、免疫ビーズを、PBSTとPBSとで洗浄した。準備した免疫ビーズは、PBSで洗浄し、使用するまでPBS中に保管した。
【0049】
実施例1(1)に記載されているように、良性腫瘍患者(乳がん患者ではない)30人と、乳がん患者30人(乳がん、第2ステージ内腔(luminal)B型)とから血液を採取し、血液から血漿を収得した。得られた血漿は、プーリングせずにそれぞれ実験した。
【0050】
300μlのそれぞれ得られた血漿を、試験管(アキシジェン)で、それぞれ30μl(抗体0.8μg/ビーズ1μl))の前記免疫ビーズと混合し、グラントバイオローテーター(Grant Bio Rotator)で回転させながら、常温で4時間インキュベーションした。反応混合物から上澄み液を除去した後、ビーズをPBSで洗浄した。その後、ビーズをPBSに再懸濁し、30rpmで常温で、さらに3時間インキュベーションした。上澄み液を除去した後、ビーズをLDSローディングバッファー(インビロジェン)に再懸濁し、100℃で10分間煮沸した。CD9タンパク質の量は、実施例1(1)に記載されているように、免疫ブロッティング方法で確認した。
【0051】
抗体を使用して分離された2群間のマイクロベシクルで発現するCD9タンパク質量の差は、ノンパラメトリック方法であるウィルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank sum test)を行って決定した。ウィルコクソン順位和検定の結果、p値が0.05より小さいとき、統計的に有意であるとみなされる。
【0052】
図1A〜
図1Cから分かるように、マイクロベシクルを、抗CD83抗体(BD Pharmingen)、抗ERBB2抗体(R&Dシステムズ)または抗FASL抗体(BDファーミンゲン)で分離し、分離されたマイクロベシクル内のCD9タンパク質量を、抗CD9抗体(R&Dシステムズ)で確認した結果、良性腫瘍患者群と乳がん患者群とで、マイクロベシクルの量が、統計的に有意的な差があった。かような結果を基に、CD83,ERBB2及びFASLタンパク質が、(i)マイクロベシクルの表面に発現しているか、あるいは現れており、(ii)良性腫瘍患者群より、乳がん関連マイクロベシクルにさらに濃縮されているということを確認した。
【0053】
(3)乳がん関連マイクロベシクルのマイクロRNAマーカー選別
実施例1(2)に記載されているように、抗CD83抗体が接合された免疫ビーズを使用して、血漿からマイクロベシクルを分離し、マイクロベシクルから、miRNeasyミニキット(キアゲン(Qiagen))を使用して、メーカーのプロトコルに従ってマイクロRNAを分離した。
【0054】
分離したRNAは、ユニバーサルcDNA合成キット(エキシコン(Exiqon))を使用して、cDNAに逆転写させた。全ての逆転写産物を、最終体積4mLで、SYBR Greenマスターミックスと混合した。混合物を、マイクロRNAレディートゥーユーズ(Ready−to−Use)PCRヒトパネル(human panel)I V2.Rの384ウェルプレートにローディングした。マーキュリー(mercury)LNAユニバーサルRTマイクロRNA PCR(エキシコン(Exiqon))を使用して、定量的RT−PCR(qRT−PCR)を行った。リアルタイムPCRは、LightCycler 480リアルタイムPCRシステム(ロシュ(Roche))を使用して、メーカーの説明書に従って行った:95℃で10分、その後、95℃で10秒及び60℃で1分の総45サイクル。各患者での交差点(Cp:crossing point)で示されるマイクロRNAの測定量は、比較のために、qRT−PCRに基づいて補正された。定量的RT−PCRを行った結果を、
図2A及び
図2Bに示し、それを分析した結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
図2A、
図2B及び表1において、Cp値が小さいほど、miRNAが多く発現されるということを意味する。マイクロRNAの量の差は、ウィルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank sum test)で分析し、ウィルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank sum test)の結果、p値が、0.05より小さければ、統計的に有意であるとみなされる。
【0057】
図2A、
図2B及び表1に示すように、hsa−miR−126、hsa−miR−23a、hsa−miR−24、hsa−miR−19b、hsa−miR−103、hsa−miR−142−3p、hsa−miR−144、hsa−miR−15a、hsa−miR−185、hsa−miR−93及びhsa−miR−30cが、乳がん関連マイクロベシクルのマーカーであるということを確認した。
【0058】
【化1】
【0059】
(4)乳がん関連マイクロベシクル内の表面タンパク質、及びマイクロRNAの診断正確性(正確度)評価
実施例1(2)及び実施例(3)に記載されているように、マイクロベシクルの表面タンパク質CD83及びマイクロRNAの量を利用して、乳がんを診断する場合、予測正確性、AUC(area under the curve;曲線下面積)及びp値計算し、それを表2に示した。良性患者群20人と、乳がん患者群22人から収得した試料を使用した。予測正確性(予測正確度)は、乳がんまたは良性腫瘍を有する患者であるとの推定と、乳がんまたは良性腫瘍を有する患者であるとの事実とがどの程度一致するかということを意味する。また、AUCが0.8以上である場合、特に優秀な効果を提供するとみなされる。
【0060】
【表2】
【0061】
表2から、臨床情報(年齢)を変数として用いた場合に比べて、マイクロベシクルの表面タンパク質やマイクロベシクルのマイクロRNAを変数として用いた場合、予測正確性が高いことが分かる。予測正確性はhsa−miR−126、hsa−miR−24、またはhsa−miR−15aで特に高かった。hsa−miR−126やhsa−miR−24を変数とし、さらに他のマイクロRNAを変数として加えることで、予測正確性がより向上することが示された。
【0062】
表2から分かるように、血漿からCD83をターゲットとして分離されたマイクロベシクルに含まれたhsa−miR−126の量が、良性腫瘍と乳がんとを正確性(正確度)86%で区分することができ、hsa−miR−126による予測正確性は、臨床情報(年齢)より24%向上し、表面タンパク質CD9の量より10%向上した。
【0063】
実施例2.乳がん特異的タンパク質インテグリン−βタンパク質及びマイクロRNAマーカー
(1)得られたマイクロベシクル中のインテグリンβタンパク質の定量及び受信者操作特性(receiver operating characteristics;ROC)分析
実施例1(2)に記載されているように、血漿から分離されたマイクロベシクルをLDSローディングバッファー(インビロジェン)に再懸濁し、100℃で10分間加熱し、免疫ビーズに結合されたマイクロベシクルを溶解させた。マイクロベシクルの溶解物を電気泳動し、抗CD83抗体、抗ERBB2抗体または抗FASL抗体と接合された免疫ビーズに結合したマイクロベシクルのタンパク質を分析した。
【0064】
電気泳動されたゲルを、PVDF膜に転写した。転写した膜を、1μlの抗インテグリンβ抗体(R&Dシステムズ)を含むTBST(1%脱脂粉乳を含む)10ml、及び1μlの抗CD9抗体(R&Dシステムズ)を含むTBST(1%脱脂粉乳を含む)10mlに浸漬し、常温で1時間インキュベーションさせた。その後、膜を、20mlのTBSTで5分ずつ3回洗浄した。洗浄された膜は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)が結合された二次抗体を使用して、前述の方法と同一の方法でインキュベーションさせた後、20mlのTBSTで、5分ずつ3回洗浄した。
【0065】
洗浄された膜に、2mlのスーパーシグナルウェストフェムト最大感度基質(SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity substrate)(ピアース(Pierce))で、常温で5分間インキュベーションさせた。その後、LAS画像システム(富士フィルム)を利用して、インテグリンβ及びCD9のバンドを検出し、Image J(NCI)プログラムを利用して、イメージの背景、インテグリンβ及びCD9のバンド強度をそれぞれ定量した。
【0066】
抗CD83抗体、抗ERBB2抗体または抗FASL抗体が接合された免疫ビーズによって分離されたマイクロベシクルを免疫ブロッティングして得たインテグリンβのバンド強度を、
図3A〜
図3Cに示した(良性腫瘍保有者30人、乳がん患者30人)。
図3A〜
図3Cから分かるように、良性腫瘍保有者に比べて乳がん患者で、マイクロベシクルにおいて、インテグリンβタンパク質の量が有意的に増加するということを確認した。
【0067】
また、インテグリンβのバンド強度を利用して、受信者操作特性(ROC;receiver operating characteristic)カーブ分析を行った(y軸:感度、x軸:1−特異性)。分析結果から得られたAUC値を、表3に示した。
【0068】
【表3】
【0069】
(2)インテグリンβとマイクロRNAとの組み合わせAUC
定量的RT−PCRを用いて実施例1(3)で得られたCp値と、抗CD83抗体が接合された免疫ビーズを使用して分離されたマイクロベシクルを免疫ブロッティングにより実施例2(1)で得たインテグリンβ測定バンド強度とを変数として、ロジスティック回帰分析を行い、インテグリンβのAUCと、マイクロRNAのAUCとの組み合わせを得た。
【0070】
組み合わせを介して得られた結果を、
図4及び表4に示した。
【0071】
【表4】
【0072】
図4で点線は、インテグリンβのAUCを示し、黒棒は、マイクロRNAのAUCを示し、白棒は、インテグリンβとマイクロRNAとを組み合わせたAUCを示す。
【0073】
図4及び表4から分かるように、インテグリンβとマイクロRNAとを組み合わせたAUCは、インテグリンβのAUCに比べ、約0.189増加し、マイクロRNAのAUCに比べ、約0.172増加した。従って、マイクロベシクルにおいて、インテグリンβと、マイクロRNAとの組み合わせによって、乳がん診断の正確性が向上したということを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の小胞内のポリヌクレオチドを含む乳がん診断用組成物及びキット、並びにそれを利用した乳がん診断方法は、例えば、乳がん早期診断関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]