【課題を解決するための手段】
【0030】
以上の課題を解決するために、まず、
第1発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「管部材12に対する挿入部材20の止めを行う止め構造であって、
管部材12は、挿入部材20を支持する前の平面視において、挿入部材20の外形より小さい内形の環状部12aと、この環状部12aを拡開可能にする拡開部12bと、を備え、
管部材12内に挿入部材20を挿入したとき、環状部12aの内形が拡開部12bを介して拡開するとともに、環状部12aの内面が挿入部材20の表面に圧接して、両者間の相対移動を止めるようにしたことを特徴とする止め構造」
である。
【0031】
この
第1発明に係る止め構造は、管部材12と、その内部に挿入される挿入部材20とを有する道具、工具、部材、あるいはこれらの部品であればどのような物にも適用できるものであり、具体的は、
図1及び
図2に示すような「型枠傾斜防止具」、本体側に一体的な管部材に螺進螺退されるボルトである挿入部材とを複数備えた、
図3に示すような「パイプ吊下装置」、管部材と、これに挿入されるレベル表示具(の軸部あるいは挿入部材)を備えた
図4に示すような「天端出し補助具10」等、種々なものがある。
【0032】
図1に示す「型枠傾斜防止具」は、
図2の(a)に示すような本体部材に、
図2の(b)に示すような伸長部材を継ぎ足したものであるが、本体部材も伸長部材も、その基本部分は管部材12と、その内部に挿入される挿入部材20とを有するものである。また、
図3に示す「パイプ吊下装置」も、図示上部左右等に、管部材12と、その内部に挿入される挿入部材20とを有するものである。さらに、
図4に示す「天端出し補助具10」は、鉄筋取付部11を介して鉄筋30に取り付けられる管部材12と、この管部材12の内部に挿入される挿入部材である「レベル表示具20」とを有するものである。
【0033】
これらの「型枠傾斜防止具」、「パイプ吊下装置」、及び「レベル表示具20」は、例えば
図5に示すように、いずれも管部材12と挿入部材20(
図4ではレベル表示具20)とを有するものであり、特に、管部材12については、挿入部材20を支持する前の平面視において、挿入部材20の外形より小さい内形の環状部12aと、この環状部12aを拡開可能にする拡開部12bと、を備えたものである。
【0034】
この
第1発明に係る止め構造では、その管部材12について、
図5〜
図10の各(a)、及び
図11に示すように、まず、挿入部材20を支持する前の平面視において、挿入部材20の外形より小さい内形の環状部12aとしたものである。つまり、この管部材12の環状部12aは、挿入部材20の外周の少なくとも一部を包み込むことができるように、文字通りの「環状」のものとしたものである。
【0035】
この管部材12の環状部12a内に挿入部材20を捩じ込もうとすると、この環状部12aは挿入部材20外形より小さい内形のものであるから、そのままでは入らない。ところが、この止め構造の管部材12では、上記環状部12aにこれを拡開可能にする拡開部12bを備えているから、この環状部12a内に挿入部材20を強制的に挿入すると、
図5〜
図10の各(b)に示すように、管部材12の環状部12aはこの拡開部12bが広がることによって拡開され、環状部12a内への挿入が行えることになるのである。
【0036】
管部材12内に挿入部材20を強制的に挿入すれば、拡開部12bにおける弾性力によって、管部材12の内面に対して、挿入部材20の表面が弾性的に密着することになり、両者間には摩擦力が発生することになる。そうなると、例えば
図2に示す本体部材や伸長部材において、それまで管部材12から引き抜いていた挿入部材20を、この管部材12内に押し入れれば、両者の全長を容易に短くすることができて、その位置での仮止めが簡単に行えることになる。
【0037】
つまり、この
第1発明に係る止め構造によって、
図2に示す本体部材や伸長部材を持ち運んだり保管したりするために、管部材12内に挿入部材20を強制的に挿入すれば、使用時での全体長さを短くできて、しかもその位置での両者間の仮止めが行えるのであり、本体部材や伸長部材を持ち運んだり保管したりするための養生作業がきわめて容易かつ短時間内に行えるのである。以上のことは、
図3に示す「パイプ吊下装置」でも、
図4に示す「天端出し補助具10」でも同様である。
【0038】
特に、
図4に示す「天端出し補助具10」では、鉄筋取付部11を介して鉄筋30に取り付けられる管部材12に対して、この管部材12の内部に挿入される挿入部材である「レベル表示具20」の高さ調整を、所謂「レベル」に合わせて行わなければならないが、その調整は管部材12と挿入部材であるレベル表示具20との間の摩擦力に抗して行えばよく、しかも調整作業を止めても摩擦力によって両者間の位置は不変となるから、微調整作業を容易に行えるものとなっているのである。
【0039】
ここで、管部材12における環状部12aの平面視形状については、
図5〜
図11に示すように、種々なものがあり得るが、この環状部12aの平面形状としては、
図5では「涙型」であり、
図7では「楕円」であり、
図8では「多角形状」であり、
図9から
図11では「円」である。特に、
図8に例示した「多角形状」は「六角形」であるが、「三角形」でも、「四角形」でも、さらには、他の多角形であってもよい。この場合、できるだけ「正多角形」にすると、挿入部材20による環状部12aの押し広げを行う際に、広げる力が均等になってよい。
【0040】
この環状部12aの平面形状に応じて、拡開部12bとしては、次のような部分になる。環状部12aが涙型となる場合には、拡開部12bは涙の切れ目部分(尖った部分)になり、環状部12aが楕円となる場合には、拡開部12bは、この楕円の
図7に示す軸方向の端部になるし、環状部12aが多角形の場合には、
図7に示すように各辺になる。これに対して、
図9〜
図11に示すように、拡開部12bを環状部12aに積極的に形成する場合もあり得る。
【0041】
拡開部12bを環状部12aに積極的に形成する場合については、
図1、
図5、
図9、及び
図10に示すように、単独のものとして形成すれば十分ではあるが、
図11の(a)に示すような均等ではない2箇所に形成して実施してもよい。勿論、
図11の(b)に示すように、拡開部12bを6箇所の多数の位置に形成してもよいし、
図11の(c)に示すように、内側に突出するものと外側に突出するものとの種類の異なる拡開部12bを複数形成して実施してもよいものである。
【0042】
ところで、拡開部12bの形成位置としては、
図6の(a)に示すように、環状部12aの図示上下方向の全体にしたり、
図6の(b)に示すように、環状部12aの図示上下方向の下側1/3部分にしたり、さらには、
図6の(c)に示すように、環状部12aの図示上下方向の上側1/3部分にしたりすることが可能である。勿論、
図6の(d)に示すように、環状部12aの図示上下方向の中央1/3部分にすることもできる。いずれの場合も、拡開部12bを環状部12aに対してどのような位置あるいは長さで形成するかを決定する上で適宜選択され、かつ、管部材12の製造方法を加味して選択される。
【0043】
なお、挿入部材20の先端は、例えば
図4に示すレベル表示具20のように、一般的には先細り形状に形成されているから、当該挿入部材20の環状部12a内への最初の差込は容易に行えるようになっている。
【0044】
この
第1発明に係る止め構造において、その管部材12が上記のように構成してあることから、その環状部12a内への挿入が容易に行えるものとなっているだけでなく、挿入力によって拡開した各拡開部12bの弾力性によって、
図5〜
図10の各(b)に示すように、環状部12aの内面は挿入部材20を弾発的に保持していることになる。つまり、管部材12内面と、挿入部材20との間には摩擦力が発生するから、当該止め構造における管部材12対する挿入部材20の位置はズレないことになり、所謂「仮止め」がなされるのである。
【0045】
従って、この
第1発明に係る止め構造では、管部材12に対する挿入部材20の止めを、両者間の位置決めが容易で、手作業でも簡単に行うことができて、しかも、その止め後の位置を変化しにくいものとなっているだけでなく、環状部12aと、この環状部12aを拡開可能にする拡開部12bとを備えた管部材12によって挿入部材20の取付けや位置調整、その位置での挿入部材20の固定も容易に行えるものとなっているのである。
【0046】
また、上記課題を解決するために、
第2発明の採った手段は、上記
第1発明に記載の止め構造について、
「拡開部12bは、環状部12aの外側に突出するものであること」
である。
【0047】
この
第2発明に係る止め構造では、その管部材12の拡開部12bを、
図5、
図7あるいは
図10に示すように、環状部12aの外側に突出するものとしたものである。
【0048】
この管部材12の拡開部12bについて、環状部12aの外側に突出させる方法としては、環状部12aの外側から一部を軸芯方向に摘み出すことが挙げられる。勿論、このように拡開部12bを環状部12aの外側に突出させた状態では、環状部12aの内形は、挿入部材20を支持する前の平面視において、
図5、
図7あるいは
図10の各(a)中の仮想線にて示した挿入部材20の外形より小さくなっている必要がある。
【0049】
このような環状部12aの外側に突出する拡開部12bを有する管部材12に対して、挿入部材20を挿入した場合には、拡開部12bの外側突出部分が挿入部材20の外周によって、
図5、
図7あるいは
図10の各(b)に示すような状態に拡開することになるのである。この拡開部12bの拡開によって、これに両側にて連続している環状部12aも押し広げられるから、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けは容易に行えるのである。
【0050】
勿論、拡開部12bを等分位置で複数形成すれば、その拡開は挿入部材20の外周に対して等分位置で複数行われることになり、環状部12a全体としての拡開は、挿入部材20に無理な力を与えることなく均等に行われることになって、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行えることになる。また、この拡開部12bが、
図5、
図7あるいは
図10に示すような一個の場合でも、その両側にある環状部12aが均等に拡開されるから、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行える。
【0051】
従って、この
第2発明に係る止め構造は、上記
第1発明のそれと同様な機能を発揮する他、当該管部材12に対する挿入部材20の固定を容易かつ均等に行えるものとなっている。
【0052】
さらに、上記課題を解決するために、
第3発明の採った手段は、上記
第1発明の止め構造について、
「拡開部12bは、環状部12aの内側に突出するものであること」
である。
【0053】
この
第3発明に係る止め構造では、その管部材12の拡開部12bについて、
図9に示すように、環状部12aの内側に突出するようにしたものであるが、この突出させる方法としては、環状部12aの一部を軸芯に向けて押し込むことが挙げられる。勿論、このように拡開部12bを環状部12aの内側に突出させた状態では、環状部12aの内形は、挿入部材20を支持する前の平面視において、
図9の(a)中の仮想線にて示した挿入部材20の外形より小さくなっている必要がある。
【0054】
このような環状部12aの内側に突出する拡開部12bを有する管部材12に対して、挿入部材20を挿入した場合には、拡開部12bの内側突出部分が挿入部材20の外周によって押し出されるから、この拡開部12bは、
図9の(b)に示すような状態に拡開することになるのである。この拡開部12bの拡開によって、これに両側にて連続している環状部12aも押し広げられるから、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けは容易に行えるのである。
【0055】
勿論、環状部12aの内側に突出する拡開部12bを、挿入部材20の外周に対して等分位置で複数形成すれば、その拡開は挿入部材20の外周に対して等分位置で複数行われることになり、環状部12a全体としての拡開は、挿入部材20に無理な力を与えることなく均等に行われることになって、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行えることになる。また、この拡開部12bが
図10に示すような一個の場合でも、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行える。
【0056】
従って、この
第3発明に係る止め構造は、上記
第1発明のそれと同様な機能を発揮する他、当該管部材12に対する挿入部材20の固定を容易かつ均等に行えるものとなっている。
【0057】
また、上記課題を解決するために、
第4発明の採った手段は、上記
第1〜第3発明のいずれかに記載の止め構造について、
「拡開部12bは、挿入部材20の外周に対して等分位置に配置される複数のものとしたこと」
である。
【0058】
この
第4発明に係る止め構造では、その管部材12を構成している拡開部12bが、挿入部材20の外周に対して等分位置で複数存在しているものであるが、上述したように、拡開部12bは、環状部12a内に挿入部材20を強制的に挿入すると、
図7、
図8の各(b)、あるいは
図11の(b)及び(c)に示すように、これが広がることによって拡開され、環状部12a内への挿入を可能にするものであった。
【0059】
このとき、拡開される拡開部12bが、挿入部材20の外周に対して等分位置で複数存在していれば、その拡開は挿入部材20の外周に対して等分位置で複数行われることになり、環状部12a全体としての拡開は、挿入部材20に無理な力を与えることなく均等に行われることになって、当該管部材12に対する挿入部材20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行えることになる。
【0060】
従って、この
第4発明に係る管部材12では、上記
第1〜第3発明のそれと同様な機能を発揮する他、管部材12の環状部12aにおける拡開が均等に行えるものとなっているのである。
【0061】
以上の課題を解決するために、
第5発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「生コン41の打設高さや、レべラー42の高さを示す目印21を有するレベル表示具20を、管部材12によって上下動可能に支持しながら、鉄筋取付部11を介して鉄筋30に取り付けるための天端出し補助具10であって、
管部材材12は、レベル表示具20を支持する前の平面視において、レベル表示具20の外形より小さい内形の環状部12aと、この環状部12aを拡開可能にする拡開部12bと、を備えたことを特徴とする天端出し補助具10」
である。
【0062】
この
第5発明に係る天端出し補助具10は、まず、レベル表示具20を本体部12に対して位置調整可能に取り付けたものであり、このレベル表示具20の生コンポインターもしくはレベラーポインターである目印21によって、生コンクリート41もしくはレベラー42の天端位置を示すようにしたものであって、その基本的機能の、以下に詳述する部分以外は、上記特許文献1のそれと同じである。
【0063】
この
第5発明に係る天端出し補助具10は、
図12、
図25、または
図27〜
図29に示すように、レベル表示具20を上下動可能に支持しながら鉄筋30に取り付けるためのものであり、鉄筋取付部11を備えたものである。鉄筋取付部11は、例えば
図12に示すように、鉄筋30に対して当該天端出し補助具10を取り付けるものである。
【0064】
当該天端出し補助具10は、組み付け作業者が力を入れて鉄筋取付部11に鉄筋30が入るようにしながら鉄筋30に対して押し込まれる。この押し込み作業は、鉄筋30等が組み込まれている型枠内へ、型枠間の上方開口から作業者が手を差し伸べるような姿勢で行える。このとき、取り付けようとする鉄筋30である横筋31または縦筋32の上端は、型枠間の上方開口から作業者に見えているから、当該天端出し補助具10の取付け位置も容易に発見できる。
【0065】
そして、当該天端出し補助具10を鉄筋30に向けて押し付ければ、鉄筋取付部11が、
図12等に示すように鉄筋30に当接するから、作業者は、その位置で力を緩める。そうすると、各鉄筋取付部11が鉄筋30を包み込むから、鉄筋30に対する当接とも相まって、当該天端出し補助具10は、鉄筋30に対して取り付けられることになるのである。
【0066】
換言すれば、当該天端出し補助具10は、これを型枠内に上方から持ち込んで、その鉄筋取付部を鉄筋30に押し込めば、鉄筋30に対する固定が容易に行えるだけでなく、この固定時には、鉄筋30は鉄筋取付部11によって包み込まれて位置が変化しにくくなっており、結果的に、当該天端出し補助具10の取付け作業が容易に行えるのである。
【0067】
この
第5発明に係る天端出し補助具10では、その管部材12について、
図16〜
図20の各(a)、及び
図21に示すように、まず、レベル表示具20を支持する前の平面視において、レベル表示具20のネジ部22の外形より小さい内形の環状部12aとしたものである。つまり、この管部材12の環状部12aは、レベル表示具20のネジ部22の外周の少なくとも一部を包み込むことができるように、文字通りの「環状」のものとしたものである。
【0068】
この管部材12の環状部12a内にレベル表示具20のネジ部22を捩じ込もうとすると、この環状部12aはネジ部22の外形より小さい内形のものであるから、そのままでは入らない。ところが、この天端出し補助具10の管部材12では、上記環状部12aにこれを拡開可能にする拡開部12bを備えているから、この環状部12a内にネジ部22を強制的に捩じ込むと、
図16〜
図20の各(b)に示すように、管部材12の環状部12aはこの拡開部12bが広がることによって拡開され、環状部12a内へのネジ部22の捩じ込みが行えることになるのである。
【0069】
ここで、まず、管部材12における環状部12aの平面視形状については、
図16〜
図21に示すように、種々なものがあり得るが、この環状部12aの平面形状としては、
図16では「涙型」であり、
図17では「楕円」であり、
図18では「多角形状」であり、
図19から
図21では「円」である。特に、
図18に例示した「多角形状」は「六角形」であるが、「三角形」でも、「四角形」でも、さらには、他の多角形であってもよい。この場合、できるだけ「正多角形」にすると、レベル表示具20のネジ部22による環状部12aの押し広げを行う際に、広げる力が均等になってよい。
【0070】
この環状部12aの平面形状に応じて、拡開部12bとしては、次のような部分になる。環状部12aが涙型となる場合には、拡開部12bは涙の切れ目部分(尖った部分)になり、環状部12aが楕円となる場合には、拡開部12bは、この楕円の
図17に示す軸方向の端部になるし、環状部12aが多角形の場合には、
図17に示すように各辺になる。これに対して、
図19〜
図21に示すように、拡開部12bを環状部12aに積極的に形成する場合もあり得る。
【0071】
拡開部12bを環状部12aに積極的に形成する場合については、
図12、
図16、
図19、及び
図20に示すように、単独のものとして形成すれば十分ではあるが、
図21の(a)に示すような均等ではない2箇所に形成して実施してもよい。勿論、
図21の(b)に示すように、拡開部12bを6箇所の多数の位置に形成してもよいし、
図21の(c)に示すように、内側に突出するものと外側に突出するものとの種類の異なる拡開部12bを複数形成して実施してもよいものである。
【0072】
なお、レベル表示具20のネジ部22の先端は、
図22に示すように、一般的には先細り形状に形成されているから、当該ネジ部22の環状部12a内への最初の差込は容易に行えるようになっている。また、後述する実施形態に係る天端出し補助具10では、その管部材12について、「雄ネジ」であるネジ部22が捩じ込まれる「雌ネジ」として形成してあるのではなく、「雄ネジ」の一部が係合すれば十分ネジの役目を果たす部分ネジ12cを形成したものであり、この管部材12に対するネジ部22の捩じ込みが容易に行えるようになっている。
【0073】
この
第5発明に係る天端出し補助具10において、その管部材12が上記のように構成してあることから、その環状部12a内へのネジ部22の捩じ込みが容易に行えるものとなっているだけでなく、捩じ込み力によって拡開した各拡開部12bの弾力性によって、
図16〜
図20の各(b)に示すように、環状部12aの内面はレベル表示具20のネジ部22を弾発的に保持していることになる。管部材12は、その環状部12aの内面でレベル表示具20のネジ部22を弾発的に保持するから、鉄筋30に取り付けられた当該天端出し補助具10に対するレベル表示具20の位置はズレないことになるのである。
【0074】
従って、この
第5発明に係る天端出し補助具10は、手作業でも簡単に取り付けることができて、しかも、その取付後の位置が変化しにくいものとなっているだけでなく、環状部12aと、この環状部12aを拡開可能にする拡開部12bとを備えた管部材12によってレベル表示具20の取付けや位置調整、その位置でのレベル表示具20の固定も容易に行えるものとなっているのである。
【0075】
また、上記課題を解決するために、
第6発明の採った手段は、上記
第5発明に記載の天端出し補助具10について、
「拡開部12bは、環状部12aの外側に突出するものであること」
である。
【0076】
この
第6発明に係る天端出し補助具10では、その管部材12の拡開部12bを、
図16、
図17あるいは
図20に示すように、環状部12aの外側に突出するものとしたものである。
【0077】
この管部材12の拡開部12bについて、環状部12aの外側に突出させる方法としては、環状部12aの外側から一部を軸芯方向に摘み出すことが挙げられる。勿論、このように拡開部12bを環状部12aの外側に突出させた状態では、環状部12aの内形は、レベル表示具20を支持する前の平面視において、
図16、
図17あるいは
図20の各(a)中の仮想線にて示したレベル表示具20のネジ部22の外形より小さくなっている必要がある。
【0078】
このような環状部12aの外側に突出する拡開部12bを有する管部材12に対して、レベル表示具20のネジ部22を捩じ込んだ場合には、拡開部12bの外側突出部分がネジ部22の外周によって、
図16、
図17あるいは
図20の各(b)に示すような状態に拡開することになるのである。この拡開部12bの拡開によって、これに両側にて連続している環状部12aも押し広げられるから、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けは容易に行えるのである。
【0079】
勿論、拡開部12bを等分位置で複数形成すれば、その拡開はネジ部22の外周に対して等分位置で複数行われることになり、環状部12a全体としての拡開は、ネジ部22に無理な力を与えることなく均等に行われることになって、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行えることになる。また、この拡開部12bが
図16、
図17あるいは
図20に示すような一個の場合には、当該管部材12の部分ネジ12cの対向位置に形成すれば、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行える。
【0080】
従って、この
第6発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5発明のそれと同様な機能を発揮する他、当該管部材12に対するレベル表示具20の固定を容易かつ均等に行えるものとなっている。
【0081】
さらに、上記課題を解決するために、
第7発明の採った手段は、上記
第5発明の天端出し補助具10について、
「拡開部12bは、環状部12aの内側に突出するものであること」
である。
【0082】
この
第7発明に係る天端出し補助具10では、その管部材12の拡開部12bについて、
図19に示すように、環状部12aの内側に突出するようにしたものであるが、この突出させる方法としては、環状部12aの一部を軸芯に向けて押し込むことが挙げられる。勿論、このように拡開部12bを環状部12aの内側に突出させた状態では、環状部12aの内形は、レベル表示具20を支持する前の平面視において、
図19の(a)中の仮想線にて示したレベル表示具20のネジ部22の外形より小さくなっている必要がある。
【0083】
このような環状部12aの内側に突出する拡開部12bを有する管部材12に対して、レベル表示具20のネジ部22を捩じ込んだ場合には、拡開部12bの内側突出部分がネジ部22の外周によって押し出されるから、この拡開部12bは、
図19の(b)に示すような状態に拡開することになるのである。この拡開部12bの拡開によって、これに両側にて連続している環状部12aも押し広げられるから、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けは容易に行えるのである。
【0084】
勿論、環状部12aの内側に突出する拡開部12bを、レベル表示具20のネジ部22の外周に対して等分位置で複数形成すれば、その拡開はネジ部22の外周に対して等分位置で複数行われることになり、環状部12a全体としての拡開は、ネジ部22に無理な力を与えることなく均等に行われることになって、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行えることになる。また、この拡開部12bが
図20に示すような一個の場合には、当該管部材12の部分ネジ12cの対向位置に形成すれば、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行える。
【0085】
従って、この
第7発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5発明のそれと同様な機能を発揮する他、当該管部材12に対するレベル表示具20の固定を容易かつ均等に行えるものとなっている。
【0086】
また、上記課題を解決するために、
第8発明の採った手段は、上記
第5〜第7発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「拡開部12bは、レベル表示具20のネジ部22の外周に対して等分位置に配置される複数のものとしたこと」
である。
【0087】
この
第8発明に係る天端出し補助具10では、その管部材12を構成している拡開部12bが、レベル表示具20のネジ部22の外周に対して等分位置で複数存在しているものであるが、上述したように、拡開部12bは、環状部12a内にネジ部22を強制的に捩じ込むと、
図17、
図18の各(b)、あるいは
図21の(b)及び(c)に示すように、これが広がることによって拡開され、環状部12a内へのネジ部22の捩じ込みを可能にするものであった。
【0088】
このとき、拡開される拡開部12bが、レベル表示具20のネジ部22の外周に対して等分位置で複数存在していれば、その拡開はネジ部22の外周に対して等分位置で複数行われることになり、環状部12a全体としての拡開は、ネジ部22に無理な力を与えることなく均等に行われることになって、当該管部材12に対するレベル表示具20の取付けや位置調整、その位置での固定も容易かつ均等に行えることになる。
【0089】
従って、この
第8発明に係る管部材12では、上記
第5〜8発明のそれと同様な機能を発揮する他、管部材12の環状部12aにおける拡開が均等に行えるものとなっているのである。
【0090】
上記課題を解決するために、
第9発明の採った手段は、上記
第5〜第8発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「鉄筋取付部11が対象とする鉄筋30は、少なくとも横筋31であること」
である。
【0091】
住宅等の基礎を構築する場合、一般的には、
図23の(a)に示すように、縦筋32と横筋31を組み合わせた配筋がなされるが、この種の天端出し補助具10を何処に取り付けたら効率的か、つまり、施工作業中において最もズレにくいか、を考慮しなければならない。この点、横筋31は、地面に固定される縦筋32に「結束線33」を使用して固定される場合があるため、高さが少し変化する可能性はあるが、例えば基礎の天端に近い部分に水平で存在するため、天端出し補助具10の固定箇所を随所に存在させている。
【0092】
そこで、この
第9発明に係る天端出し補助具10では、
図12、
図25、
図27及び
図28に示すように、鉄筋取付部11が取り付けられる先を、少なくとも横筋31とすることによって、この横筋31が、例えば基礎の天端に近い部分に水平で存在するため、当該天端出し補助具10の固定箇所を随所に存在させているというメリットを十分生かすようにしたものである。
【0093】
ここで、「少なくとも横筋31」としたのは、当該天端出し補助具10の取付箇所のメインを横筋31としたということであり、
図28に示すように、縦筋取付部17を同時に設ける場合も想定しているものである。
【0094】
横筋31は、コンクリート構造物を構築するための型枠内の略全域に亘って存在しているものであるから、これらの横筋31に当該天端出し補助具10の取付場所を選定するにあたっては、相当自由に行える。また、横筋31は、略水平に配筋されているから、この横筋31を鉄筋取付部11内に収納するように当該天端出し補助具10を設置すれば、本体部12に案内されているレベル表示具20は略垂直方向に自然と向くことになる。
【0095】
また、この天端出し補助具10の横筋31に対する嵌合では、横筋31が作業者の手元の下側にあることが多いから、当該天端出し補助具10の嵌合作業は、作業者が下を向いて行えること、つまり自然な体勢で行えるのである。
【0096】
従って、この
第9発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5〜第8発明のいずれかのそれと同様な機能を発揮する他、基礎の天端に近い部分に水平で存在する横筋31の随所で容易に取り付けることができて、作業性を向上させることができるものとなっているのである。
【0097】
また、上記課題を解決するために、
第10発明の採った手段は、上記
第5〜第8発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「鉄筋取付部11が対象とする鉄筋30は、少なくとも縦筋32であること」
である。
【0098】
住宅等の基礎を構築する場合、一般的には、
図23の(a)に示すように、縦筋32と横筋31を組み合わせた配筋がなされるが、この種の天端出し補助具10を何処に取り付けたら効率的か、つまり、施工作業中において最もズレにくいか、を考慮しなければならない。この点、縦筋32は、上下方向に位置するため、これに取り付けた天端出し補助具10の上端の位置はほとんど変化しないから、この種の天端出し補助具の取付け箇所としては適している。
【0099】
そこで、この
第10発明に係る天端出し補助具10では、
図29、
図31、及び
図28に示すように、鉄筋取付部11が取り付けられる先を、少なくとも縦筋32とすることによって、この縦筋32の上端位置が殆ど変化しないため、当該天端出し補助具10の固定箇所を変化させないというメリットを十分生かすようにしたものである。
【0100】
ここで、「少なくとも縦筋32」としたのは、当該天端出し補助具10の取付箇所のメインを縦筋32としたということであり、
図28に示すように、メインの鉄筋取付部11を縦筋取付部17としながら、横筋31に取り付けられる鉄筋取付部11を同時に設ける場合も想定しているものである。
【0101】
従って、この
第10発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5〜第8発明のいずれかのそれと同様な機能を発揮する他、上端位置が変化しない縦筋32に取り付けることができて、当該天端出し補助具10の固定位置の安定性が確保できるものとなっているのである。
【0102】
上記課題を解決するために、
第11発明の採った手段は、上記
第5〜第10発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「本体部12に、横筋31と縦筋32との交差部分に当接する交差鉄筋当接部13を形成したこと」
である。
【0103】
この
第11発明に係る天端出し補助具10は、
第5発明のそれと同様に、鉄筋取付部11にて、横筋31等の鉄筋30の任意の位置に取付け可能にした点は踏襲しているものではあるが、横筋31に組み付けられた縦筋32が存在する箇所で積極的に使用することで、この縦筋32を利用して、横筋31に対する回動を簡単に止められるようにするものである。この横筋31に対する天端出し補助具10の回動止めを行うのが、本体部12に形成した交差鉄筋当接部13なのである。
【0104】
交差鉄筋当接部13は、横筋31と縦筋32との交差部分に当接するものであるから、
図25及び
図26に示すように、本体部12の、鉄筋取付部11の近傍に位置する部分に一体化されるものである。この部分には、鉄筋取付部11が一体化されることはないから、この交差鉄筋当接部13を単独で使用することは勿論、この交差鉄筋当接部13と共に上記鉄筋取付部11を採用することは十分可能である。
【0105】
そして、この交差鉄筋当接部13は、
図25の(b)に示すように、当該天端出し補助具10を横筋31に取付けた後に、横筋31と縦筋32との交差部分に当接されるのであるが、これによって、当該天端出し補助具10は、鉄筋取付部11にての横筋31に対する回動が阻止されることになる。
【0106】
従って、この
第11発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5〜第6発明のいずれかのそれと同様な機能を発揮する他、横筋31と縦筋32との交差部分に交差鉄筋当接部13を当接させることによって、横筋31に対する回動を阻止し得るものとなっているのである。
【0107】
また、上記課題を解決するために、
第12発明の採った手段は、上記
第10〜第11発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「管部材12に、縦筋32に係合する当接部16を形成したこと」
である。
【0108】
この
第12発明に係る天端出し補助具10は、
第10〜第11発明のそれと同様に、鉄筋取付部11にて横筋31等の任意の位置に取付け可能にした点は踏襲しているものではあるが、横筋31に組み付けられた縦筋32が存在する箇所で積極的に使用することで、この縦筋32を利用して、横筋31に対する回動を簡単に止められるようにするものである。この横筋31に対する天端出し補助具10の回動止めを行うのが、本体部12に形成した当接部16なのである。
【0109】
当接部16は、本体部12の下端に一体的に形成したものであり、
図27に示すように、本体部12の下端から、鉄筋取付部11の延在方向に伸びたものである。また、この当接部16は、
図27に示すように、その平面視形状が二又となっているものであり、この二又の間に縦筋32を嵌め込めるようにしたものである。勿論、この当接部16は、縦筋32に係止できるのであれば種々な形状のものが採用できるものであり、必ずしも、平面視が二又となるようにする必要はない。
【0110】
この天端出し補助具10を、
図27に示すように、その当接部16にて横筋31に取付けて、かつこの横筋31に組み付けられた縦筋32の一部に当接部16を係合させれば、当該天端出し補助具10は、その当接部16によって横筋31に対する回動が阻止されることになるのである。なお、鉄筋取付部11にて横筋31に取付けた天端出し補助具10は、この横筋31に対してある程度横方向に移動できるものであるから、鉄筋取付部11にて横筋31に取付けた後に天端出し補助具10を移動させることにより、当接部16での縦筋32に対する取り付けを行うようにすると、作業が簡単に行える。
【0111】
従って、この
第12発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5〜第11発明のいずれかのそれと同様な機能を発揮する他、当接部16の縦筋32に対する係合を行うことによって、横筋31に対する回動を阻止し得るものとなっているのである。
【0112】
さらに、上記課題を解決するために、
第13発明の採った手段は、上記
第10〜第12発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「鉄筋取付部11または管部材12に、縦筋32の上端に当接する当接部16を形成したこと」
である。
【0113】
この
第13発明に係る天端出し補助具10では、
図28〜
図33に示すように、鉄筋30の上端に当接することになる当接部16を、鉄筋取付部11に設けたものである。勿論、この当接部16は、鉄筋取付部11と一体的になっている管部材12にも設けてもよいものである。
【0114】
当接部16は、当該天端出し補助具10を鉄筋30に取り付けるに当たって、その取付け位置の調整または決定を自動的に、つまり作業者が目で確認しなくても行えるようにするものである。つまり、作業者が当該天端出し補助具10を摘んで鉄筋30に向けて押し込んだときに、当該天端出し補助具10の動かしができなくなれば、当接部16が鉄筋30に当たっていることを示し、天端出し補助具10の取付け位置が決定されたことを示す。このことは、作業者が当該天端出し補助具10の位置を目で確かめなくとも、手の感触だけで確認できる。
【0115】
これに対して、作業者が当該天端出し補助具10を摘んで鉄筋30に向けて押し込んで、当該天端出し補助具10の動かしができたとしても、天端出し補助具10の位置は高過ぎるかもしれない。そこで、作業者は、当該当接部16が鉄筋30の上端に当接するまで天端出し補助具10を押下げれば、正しい位置が決定できる。このことも、作業者が当該天端出し補助具10の位置を目で確かめなくとも、手の感触だけで確認できる。
【0116】
従って、この
第13発明に係る天端出し補助具10は、上記
第10〜第12発明のいずれかのそれと同様な機能を発揮する他、当接部16によって見なくても天端出し補助具10の鉄筋30に対する位置の調整または決定ができるものとなっている。
【0117】
さらに、
第14発明の採った手段は、上記
第5〜第13発明のいずれかに記載の天端出し補助具10について、
「本体部12の中心に、レベル表示具20を位置調整可能に挿通する取付穴を形成するとともに、この取付穴内に、レベル表示具20に形成したネジ部22間に係合することになる部分ネジ12cを形成して、
レベル表示具20を回転させたとき、部分ネジ12cを基点として、レベル表示具20が螺進螺退可能となるようにしたこと」
である。
【0118】
すなわち、この
第14発明の天端出し補助具10は、本体部12の取付穴にレベル表示具20を進退可能に取付けるにあたって、取付穴をネジ穴にしなくても、つまり、単なる丸穴であっても、部分ネジ12cを形成しておくだけで、レベル表示具20の本体部12に対する螺進螺退が可能となるようにしたものである。
【0119】
取付穴内に形成した部分ネジ12cは、
図13〜
図21、
図25の(b)、
図26、及び
図33に示すように、取付穴の軸心方向に対して僅かに傾斜した状態のものである。また、この部分ネジ12cは、
図22の(a)あるいは(b)に示すレベル表示具20の各ネジ部22間に入る程度の大きさで、かつ、その傾斜角度は、ネジ部22の傾斜角度と同じにしたものである。このような部分ネジ12cは、後述する実施形態で説明するような方法で、本体部12の取付穴内に形成されるものであり、本体部12の取付穴が単なる丸穴であっても、本体部12に対するレベル表示具20の螺進螺退を可能にするのである。
【0120】
この部分ネジ12cは、レベル表示具20を取付穴内に挿入して回転させたとき、レベル表示具20のネジ部22に係合するのであり、レベル表示具20は、当該部分ネジ12cを基点として螺進螺退するのである。つまり、この部分ネジ12cが単なる丸穴である取付穴内に形成してあるだけで、レベル表示具20は管部材12に対して上下方向の位置調整が螺進螺退によってなされるのである。
【0121】
従って、この
第14発明に係る天端出し補助具10は、上記
第5〜第13発明のいずれかに係るそれと同様な機能を発揮する他、取付穴が単なる丸穴であっても、部分ネジ12cを形成しておくだけで、レベル表示具20の管部材12に対する螺進螺退を可能とするものである。