【文献】
Kozhevnikov, V. N. et al.,Chem. Mater.,2013年 5月16日,vol.25,p.2352-2358
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0042】
また、本明細書等に示す発光素子は、上面射出構造(トップエミッション構造)、下面射出構造(ボトムエミッション構造)、または両面射出構造(デュアルエミッション構造)の全ての構造を含む。
【0043】
また、本明細書などにおいて、有機金属イリジウム錯体中の分子構造における二面角及び結合角は、Gaussian社の量子化学計算プログラムを用いた計算値である。例えば、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体の分子構造を、上述のGaussian社の量子化学計算プログラムで計算する場合と、異なる種類の量子化学計算プログラムを用いた場合とで、異なる計算値を示す場合がある。また、量子化学計算プログラムの計算条件によっては、異なる計算値を示す場合がある。
【0044】
また、本明細書等に示す発光装置とは、画像表示デバイス、光源を含む。また、パネルにコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0045】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体について説明する。
【0046】
本発明の一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属イリジウム錯体である。
【0048】
一般式(G1)中、Arは、置換または無置換の炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、R
1〜R
6は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。また、R
1と対向するピリジン環の内角、またはR
1と対向するピリミジン環の内角は、120°±2°以内である。
【0049】
また、本発明の一態様は、一般式(G2)で表される有機金属イリジウム錯体である。
【0051】
一般式(G2)中、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0052】
本発明の一態様は、一般式(G1)または一般式(G2)中に示すように、有機金属イリジウム錯体の分子構造中における、ピリジン環またはピリミジン環と、該ピリジン環または該ピリミジン環に結合するフェニル基との二面角に技術的な特徴を有する。ピリジン環またはピリミジン環と、該ピリジン環または該ピリミジン環に結合するフェニル基との二面角を一定の範囲内とすることで、発光効率が高く、長寿命である有機金属イリジウム錯体を提供することができる。または、π共役が広がりにくく、発光効率が高い有機金属イリジウム錯体を提供することができる。または、視感度が高く、発光効率が高い有機金属イリジウム錯体を提供することができる。
【0053】
ここで、有機金属イリジウム錯体の分子構造中における、ピリジン環またはピリミジン環と、該ピリジン環または該ピリミジン環に結合するフェニル基との二面角によって、該有機金属イリジウム錯体の三重項励起準位を計算した。具体的には、下記構造式(500)で表される(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)
2(acac))中のピリミジン環と、ピリミジン環の6位のフェニル基との二面角によって、Ir(dppm)
2(acac)の三重項準位を計算した。
【0055】
計算に用いた原子配列のモデル図を
図1に示す。
図1に示すモデル図は、Ir(dppm)
2(acac)の一部分の原子配列を模式的に表しており、とくにピリミジン環(Pm)と、ピリミジン環の6位のフェニル基(Ph)の二面角を説明するためのモデル図である。
【0056】
図1の上段に示すモデル図においては、ピリミジン環(Pm)と、ピリミジン環の6位のフェニル基(Ph)の二面角(β)は0°であり、そこから
図1の下段に示すように二面角(β)を大きくしたときの有機金属イリジウム錯体の三重項準位を計算した。なお、Ir(dppm)
2(acac)中のピリミジン環(Pm)と、ピリミジン環の6位のフェニル基との二面角は0°から90°まで、10°ステップ間隔で計算を行った。また、
図1中において、各原子(イリジウム原子(Ir)、炭素原子(C)、水素原子(H)、窒素原子(N)、及び酸素原子(O))は、
図1中に示す破線内の通りである。
【0057】
計算方法に関しては、以下の通りである。なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian09を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いて行った。
【0058】
基底関数として、6−311G(d,p)[H,C,N,O]、Lanl2dz[Ir]を用いた。汎関数はB3PW91を用いた。また、TD−DFT計算として、SingletおよびTripletの励起状態を計算することで三重項準位を算出した。計算結果を
図2に示す。
【0059】
図2に示す結果より、Ir(dppm)
2(acac)中のピリミジン環と、ピリミジン環の6位のフェニル基との二面角が0°の場合には547nmの三重項励起エネルギーであるのに対し、ピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角が30°の場合には537nmの三重項励起エネルギーであった。また、ピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角が90°の場合には、517nmの三重項励起エネルギーとなった。なお、
図2に示す結果においては、0°から90°まで、10°ステップ間隔の計算結果を示しているが、構造式(500)で表されるIr(dppm)
2(acac)中のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基の二面角は、18°となることが計算結果により分かった。なお、
図2においては、三重項励起エネルギーを波長(nm)に変換して表している。
【0060】
また、
図2に示す計算結果より、有機金属イリジウム錯体中のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角が30°以上90°以下であれば、有機金属イリジウム錯体中のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角が0°の場合と比較し、5nm以上30nm以下で三重項準位を短波長化できることが示唆された。
【0061】
以上のように、有機金属イリジウム錯体中のピリミジン環と、ピリミジン環の6位のフェニル基との二面角を大きくする、別言すると、有機金属イリジウム錯体中のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基を捩じることで、π共役が広がりにくくなり、三重項準位が最大で30nm程度短波長化できる。このように、有機金属イリジウム錯体中のピリジン環またはピリミジン環に結合する置換基の二面角、ここではピリミジン環の6位のフェニル基の二面角を変えることで、有機金属イリジウム錯体の波長を変化させることができる。
【0062】
ただし、
図1に示すモデル図においては、有機金属イリジウム錯体中のピリミジン環の6位のフェニル基の二面角を変えるために、ピリミジン環または、該ピリミジン環に結合する6位のフェニル基に置換基を結合させていない。実際の有機金属イリジウム錯体においては、有機金属イリジウム錯体中のピリジン環またはピリミジン環、あるいは該ピリジン環または該ピリミジン環に結合するフェニル基に置換基を結合させることで、有機金属イリジウム錯体の分子構造中におけるピリジン環またはピリミジン環と、該ピリジン環または該ピリミジン環に結合するフェニル基との二面角を変えることができる。しかしながら、導入する置換基によっては、ピリジン環またはピリミジン環自体が歪む可能性がある。
【0063】
そこで、下記の構造式(501)、(500)、(100)、(502)、(503)及び(504)の有機金属イリジウム錯体の結合角及び二面角を計算した。
【0065】
なお、構造式(501)で表される有機金属イリジウム錯体は、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)
2(acac))である。また、構造式(500)で表される有機金属イリジウム錯体は、Ir(dppm)
2(acac)である。また、構造式(100)で表される有機金属イリジウム錯体は、ビス{2−[6−(2,6−ジメチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κO,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppm−dmp)
2(acac))である。また、構造式(502)で表される有機金属イリジウム錯体は、(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(別名:ビス{2−[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III))(略称:Ir(mpmppm)
2(acac))である。また、構造式(503)で表される有機金属イリジウム錯体は、(アセチルアセトナト)ビス(4,5,6−トリフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(別名:ビス[2−(5,6−ジフェニル−4−ピリミジニル−κN3)フェニル−κC](2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III))(略称:Ir(tppm)
2(acac))である。また、構造式(504)で表される有機金属イリジウム錯体は、ビス[2−(5−フェニル−4−ピリミジニル−κN3)フェニル−κC](2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(5dppm)
2(acac))である。
【0066】
計算方法に関しては、以下の通りである。なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian09を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いて行った。
【0067】
基底関数として、6−311G(d,p)[H,C,N,O]、Lanl2dz[Ir]を用いた。汎関数はB3PW91を用いた。
【0068】
また、構造式(501)、(500)、(100)、(502)、(503)及び(504)で表される有機金属イリジウム錯体の結合角及び二面角としては、構造式(501)、(500)、(100)、(502)、(503)及び(504)で表される有機金属イリジウム錯体の共通した分子構造である下記構造式(600)で表される結合角α
1、α
2と、内角α
3と、二面角β
2とを計算した。
【0070】
なお、構造式(600)中において、α
1は、ピリジン環の2位のフェニル基の外角の結合角を表す。α
2は、ピリジン環の2位の外角の結合角を表す。α
3は、ピリジン環の3位の内角を表す。また、β
2は、ピリジン環とピリジン環の2位のフェニル基の二面角を表す。なお、構造式(600)においては、理解の簡単のためにピリジン環を用いて、結合角α
1、α
2と、内角α
3と、二面角β
2とを説明するが、ピリミジン環に結合角α
1、α
2と、内角α
3と、二面角β
2とを適用することが可能である。ただし、ピリミジン環の場合、フェニル基が結合する置換位置が該ピリミジン環の4位となる。
【0073】
表1に示すように、構造式(501)、(500)、(100)においては、角度α
1が120°以上124°未満である。一方、構造式(502)、(503)、(504)においては、角度α
1が124°以上である。また、構造式(501)、(500)、(100)においては、角度α
2が120°以上129°未満である。一方、構造式(502)、(503)、(504)においては、角度α
2が129°以上である。また、構造式(501)、(500)、(100)においては、角度α
3が120°±2°の範囲内である。一方、構造式(502)、(503)、(504)においては、角度α
3が120°±2°の範囲外である。また、構造式(501)、(500)、(100)においては、二面角β
2が0°以上2°以下である。一方、構造式(502)、(503)、(504)においては、二面角β
2が2°以上である。
【0074】
このように、ピリジン環またはピリミジン環に結合する置換基の位置または種類によって、ピリジン環またはピリミジン環自体が変形する。別言すると、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造が歪む。表1に示すように、構造式(501)、(500)、(100)に示す有機金属イリジウム錯体においては、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みが極めて小さい。一方で、構造式(502)、(503)、(504)に示す有機金属イリジウム錯体においては、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みが大きい。ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みについては、表1に示すように、α
1〜α
3、または二面角β
2のいずれか1つの角度を計算することで、算出することができる。なお、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みが大きいと、高い量子効率が得られなくなる場合がある。
【0075】
そこで、本発明の一態様は、一般式(G1)または一般式(G2)に示すように、有機金属イリジウム錯体中における、ピリジン環またはピリミジン環に結合するフェニル基の位置を特定の位置とする。また、有機金属イリジウム錯体中における、ピリジン環またはピリミジン環に結合するフェニル基の二面角を特定の範囲とする。上記構成の有機金属イリジウム錯体とすることで、π共役の広がりが抑制され、有機金属イリジウム錯体からの発光を短波長化させることができる。さらに、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みが抑制され、高い量子効率を得ることができる。
【0076】
また、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体は、一般式(G1)または一般式(G2)に示す構造の他、以下に示す構造で表すことができる。
【0077】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表される有機金属イリジウム錯体である。
【0079】
一般式(G3)中、R
1、R
2及びR
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0080】
また、本発明の一態様は、一般式(G4)で表される有機金属イリジウム錯体である。
【0082】
一般式(G4)中、R
1、R
2及びR
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0083】
また、本発明の一態様は、一般式(G5)で表される有機金属イリジウム錯体である。
【0085】
一般式(G5)中、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、αで表される結合角は、120°以上129°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0086】
また、本発明の一態様は、一般式(G6)で表される有機金属イリジウム錯体である。
【0088】
一般式(G6)中、R
1、R
2及びR
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、αで表される結合角は、120°以上129°未満である。また、ピリジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0089】
また、本発明の一態様は、一般式(G7)で表される有機金属イリジウム錯体である。
【0091】
一般式(G7)中、R
1、R
2及びR
6〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、αで表される結合角は、120°以上129°未満である。また、ピリジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0092】
また、一般式(G1)〜(G7)中において、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方、好ましくは双方がアルキル基で置換された構造とするのが好ましい。このような構造とすることで、ピリジン環からフェニル基、またはピリミジン環からフェニル基にかけて共役結合により電子の分布が広がるのを抑制することができる。また、R
2及びR
6の双方がアルキル基で置換された構造の場合、ピリジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2及びR
6を有するフェニル基の二面角を大きくすることができる。
【0093】
また、一般式(G1)に示すように、R
1と対向するピリジン環の内角、またはR
1と対向するピリミジン環の内角が120°±2°以内の場合、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みを抑えることができる。また、一般式(G5)〜(G7)に示すように、αで表される結合角を120°以上129°未満とすることで、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みを抑えることができる。
【0094】
このように、一般式(G1)〜(G7)に示す本発明の一態様は、有機金属イリジウム錯体中における、ピリジン環またはピリミジン環と、該ピリジン環または該ピリミジン環に結合するフェニル基の二面角あるいは結合角を特定の範囲とすることで、ピリジン環またはピリミジン環の分子構造の歪みを抑制することができる、あるいは、立体障害により捩れを生じさせてピリジン環からフェニル基、またはピリミジン環からフェニル基にかけてπ共役の広がりを抑制することができる。したがって、有機金属イリジウム錯体に由来する発光スペクトルを短波長化させることが可能となる。さらに、高効率化も図ることが可能となる。
【0095】
また、一般式(G1)〜(G7)に示す本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体は、金属イリジウムと配位子が、金属−炭素結合を有していることから、金属から配位子のピリジン環または金属から配位子のピリミジン環への電荷の移動(MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移)が起こり易くなる。このように、MLCT遷移が起こりやすくなる結果、禁制遷移である燐光発光が生じやすくなる上に、三重項励起寿命も短くなり、該有機金属イリジウム錯体の発光効率を高める効果を奏する。
【0096】
なお、一般式(G2)、(G3)、(G5)または一般式(G6)において、モノアニオン性の配位子は、下記一般式(L1)〜(L7)で表すことができる。とくに、一般式(L1)で表す構造、別言するとベータジケトンを含む構造とすると、好ましい。また、一般式(G4)及び一般式(G7)に示すように、モノアニオン性の配位子は、アセチルアセトンを含む構造とすると、さらに好ましい。モノアニオン性の配位子を、ベータジケトンを含む構造またはアセチルアセトンを含む構造とすることで、発光波長を短波長化させることができる。
【0098】
一般式(L1)〜(L7)中、R
71〜R
109は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキルチオ基を表す。また、A
1〜A
3は、それぞれ独立に、窒素、水素もしくは置換基Rと結合する炭素を表し、置換基Rは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、炭素数1〜6のハロアルキル基、又はフェニル基を表す。
【0099】
次に、上述した本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体の具体的な構造式を下記構造式(100)〜(134)に示す。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されることはない。
【0106】
なお、上記構造式(100)〜(134)で表される有機金属イリジウム錯体は、燐光を発光することが可能な新規物質である。なお、これらの物質は、配位子の種類によっては幾何異性体と立体異性体が存在しうるが、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体にはこれらの異性体も全て含まれる。
【0107】
次に、上記一般式(G2)で表される有機金属イリジウム錯体の合成方法の一例について説明する。
【0108】
≪一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体の合成法≫
まず、下記一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体の合成方法の一例について説明する。
【0110】
なお、一般式(G0)において、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0111】
以下に、一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体の合成スキーム(A)を示す。
【0113】
なお、合成スキーム(A)において、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。また、Yはハロゲンを表す。合成スキーム(A)に示すように、一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体は、4−ハロゲノ−2−フェニルピリジンまたは6−ハロゲノ−4−フェニルピリミジンと、アリールボロン酸を用いて、カップリング反応させることにより合成することができる。
【0114】
なお、上述の4−ハロゲノ−2−フェニルピリジン、6−ハロゲノ−4−フェニルピリミジン、及びアリールボロン酸は市販されているか、あるいは合成可能であるため、一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体は数多くの種類を合成することができる。したがって、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体は、その配位子のバリエーションが豊富であるという特徴がある。
【0115】
≪一般式(G2)で表される本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体の合成方法≫
次に、一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体を用いて形成される、下記一般式(G2)で示される本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体の合成方法について説明する。
【0117】
なお、一般式(G2)において、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、前記炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。
【0118】
以下に、一般式(G2)で示される有機金属イリジウム錯体の合成スキーム(B)を示す。
【0120】
なお、合成スキーム(B)において、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。また、Yはハロゲンを表す。
【0121】
上記合成スキーム(B)に示すように、一般式(G0)で表されるピリジン誘導体またはピリミジン誘導体と、ハロゲンを含むイリジウム化合物(塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウムなど)とを無溶媒、またはアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなど)単独、あるいはアルコール系溶媒1種類以上と水との混合溶媒を用いて、不活性ガス雰囲気にて加熱することにより、ハロゲンで架橋された構造を有する有機金属イリジウム錯体の一種である複核錯体(P)を得ることができる。
【0122】
また、加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。
【0123】
さらに、下記合成スキーム(C)に示すように、上述の合成スキーム(B)で得られる複核錯体(P)と、配位子H−Lとを、不活性ガス雰囲気にて反応させることにより、配位子H−Lのプロトンが脱離してモノアニオンの配位子Lが中心金属イリジウムに配位し、一般式(G2)で表される本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体が得られる。
【0125】
なお、合成スキーム(C)において、R
1〜R
9は、それぞれ独立に、水素または置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R
2またはR
6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜6のアルキル基である。また、Xは、炭素原子または窒素原子を表し、該炭素原子は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を有する。また、ピリジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
7〜R
9を有するフェニル基の二面角は、0°以上2°未満である。また、ピリジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基、またはピリミジン環とR
2〜R
6を有するフェニル基の二面角は、30°以上90°以下である。また、Yはハロゲンを表す。
【0126】
また、加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。
【0127】
以上、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体の合成方法の一例について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されることはなく、他のどのような合成方法によって合成されても良い。
【0128】
なお、上述した本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体は、燐光を発光することが可能であるため、発光材料や発光素子の発光物質として利用できる。
【0129】
また、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体を用いることで、発光効率の高い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提供することができる。また、消費電力が低い発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提供することができる。
【0130】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0131】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として実施の形態1で示した有機金属イリジウム錯体を発光層に用いた発光素子について
図3を用いて説明する。
【0132】
本実施の形態に示す発光素子は、
図3に示すように一対の電極(第1の電極101と第2の電極103)間に発光層113を含むEL層102が挟まれており、EL層102は、発光層113の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115、電荷発生層116などを含んで形成される。なお、本実施の形態においては、第1の電極101を陽極として用い、第2の電極103を陰極として用いる。また、正孔注入層をホール注入層と、正孔輸送層をホール輸送層と、それぞれ言い換えてもよい。
【0133】
このような発光素子に対して電圧を印加することにより、第1の電極101側から注入された正孔と第2の電極103側から注入された電子とが、発光層113において再結合し、有機金属イリジウム錯体を励起状態にする。そして、励起状態の有機金属イリジウム錯体が基底状態に戻る際に発光する。このように、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体は、発光素子における発光物質として機能する。
【0134】
なお、EL層102における正孔注入層111は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層であり、アクセプター性物質によって正孔輸送性の高い物質から電子が引き抜かれることにより正孔(ホール)が発生する。従って、正孔注入層111から正孔輸送層112を介して発光層113に正孔が注入される。
【0135】
また、電荷発生層116は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む層である。アクセプター性物質によって正孔輸送性の高い物質から電子が引き抜かれるため、引き抜かれた電子が、電子注入性を有する電子注入層115から電子輸送層114を介して発光層113に注入される。なお、電荷発生層116については、必ずしも設ける必要はなく、電荷発生層116を設けない構成としてもよい。
【0136】
以下に本実施の形態に示す発光素子を作製する上での具体例について説明する。
【0137】
第1の電極101および第2の電極103には、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)の他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、マグネシウム(Mg)、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。なお、第1の電極101および第2の電極103は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。
【0138】
正孔注入層111、正孔輸送層112、および電荷発生層116に用いる正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0139】
さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
【0140】
また、正孔注入層111および電荷発生層116に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。
【0141】
発光層113は、発光物質として機能する、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体をゲスト材料として含み、該有機金属イリジウム錯体よりも三重項励起エネルギーの大きい物質をホスト材料として用いて形成される層である。
【0142】
また、上記有機金属イリジウム錯体を分散状態にするために用いる物質(すなわちホスト材料)としては、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、NPBのようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、CBP、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp
2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq
3)等の金属錯体が好ましい。また、PVKのような高分子化合物を用いることもできる。
【0143】
なお、発光層113において、上述した有機金属イリジウム錯体(ゲスト材料)とホスト材料とを含んで形成することにより、発光層113からは、発光効率の高い燐光発光を得ることができる。
【0144】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層114には、Alq
3、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq
3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq
2)、BAlq、Zn(BOX)
2、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)
2)などの金属錯体を用いることができる。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5−ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層114として用いてもよい。
【0145】
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0146】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF
2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF
3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層115にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いてもよい。
【0147】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0148】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115、電荷発生層116は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0149】
上述した発光素子は、第1の電極101および第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101および第2の電極103のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101および第2の電極103のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極となる。
【0150】
以上により説明した発光素子は、有機金属イリジウム錯体に基づく燐光発光が得られることから、蛍光性化合物を用いた発光素子に比べて、高効率な発光素子を実現することができる。
【0151】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0152】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体に加え、他の2種類以上の有機化合物を発光層に用いた発光素子について説明する。
【0153】
本実施の形態に示す発光素子は、
図4に示すように一対の電極(第1の電極201及び第2の電極202)間にEL層203を有する構造である。なお、EL層203には、少なくとも発光層204を有し、その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層などが含まれていても良い。なお、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層には、実施の形態2に示した物質を用いることができる。また、
図4においては、第1の電極201と発光層204との間に第1の層210を有し、第2の電極202と発光層204との間に第2の層212を有する構成を例示している。第1の層210、及び第2の層212としては、上述の正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を実施者が最適な層を選択して形成することができる。なお、本実施の形態においては、第1の電極201を陽極として用い、第2の電極202を陰極として用いる。
【0154】
本実施の形態に示す発光層204には、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を用いた燐光性化合物205、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207が含まれている。なお、燐光性化合物205は、発光層204におけるゲスト材料である。また、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207のうち発光層204に含まれる割合の多い方を発光層204におけるホスト材料である。
【0155】
発光層204において、上記ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制し、発光素子の発光効率を高くすることができる。
【0156】
なお、第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207のそれぞれの三重項励起エネルギーの準位(T1準位)は、燐光性化合物205のT1準位よりも高いことが好ましい。第1の有機化合物206または第2の有機化合物207のT1準位が燐光性化合物205のT1準位よりも低いと、発光に寄与する燐光性化合物205の三重項励起エネルギーを第1の有機化合物206または第2の有機化合物207が消光(クエンチ)してしまい、発光効率の低下を招くためである。
【0157】
ここで、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動効率を高めるため、分子間のエネルギー移動機構として知られているフェルスター機構(双極子−双極子相互作用)およびデクスター機構(電子交換相互作用)を考慮した上で、ホスト材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)とゲスト材料の吸収スペクトル(より詳細には、最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯におけるスペクトル)との重なりが大きくなることが好ましい。しかしながら通常、ホスト材料の蛍光スペクトルを、ゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ねることは困難である。なぜならば、そのようにしてしまうと、ホスト材料の燐光スペクトルは蛍光スペクトルよりも長波長(低エネルギー)側に位置するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を下回ってしまい、上述したクエンチの問題が生じてしまうからである。一方、クエンチの問題を回避するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を上回るように設計すると、今度はホスト材料の蛍光スペクトルが短波長(高エネルギー)側にシフトするため、その蛍光スペクトルはゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ならなくなる。したがって、ホスト材料の蛍光スペクトルをゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ね、ホスト材料の一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることは、通常困難である。
【0158】
そこで本実施の形態においては、第1の有機化合物206および第2の有機化合物207は、励起錯体(エキサイプレックスとも言う)を形成する組み合わせであることが好ましい。この場合、発光層204におけるキャリア(電子及びホール)の再結合の際に第1の有機化合物206と第2の有機化合物207は、励起錯体を形成する。これにより、発光層204において、第1の有機化合物206の蛍光スペクトルおよび第2の有機化合物207の蛍光スペクトルは、より長波長側に位置する励起錯体の発光スペクトルに変換される。そして、励起錯体の発光スペクトルとゲスト材料の吸収スペクトルとの重なりが大きくなるように、第1の有機化合物206と第2の有機化合物207を選択すれば、一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることができる。なお、三重項励起状態に関しても、ホスト材料ではなく励起錯体からのエネルギー移動が生じると考えられる。
【0159】
燐光性化合物205としては、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を用いる。また、第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207としては、励起錯体を生じる組み合わせであればよいが、電子を受け取りやすい化合物(電子トラップ性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正孔トラップ性化合物)とを組み合わせることが好ましい。
【0160】
電子を受け取りやすい化合物としては、例えば、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq−III)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)、及び、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq−II)が挙げられる。
【0161】
ホールを受け取りやすい化合物としては、例えば、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA)、2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N,N’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(略称:PCA2B)、N−(9,9−ジメチル−2−N’,N’−ジフェニルアミノ−9H−フルオレン−7−イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N,N’,N’’−トリフェニル−N,N’,N’’−トリス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)ベンゼン−1,3,5−トリアミン(略称:PCA3B)、2−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCASF)、2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−{9,9−ジメチル−2−[N’−フェニル−N’−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]−9H−フルオレン−7−イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)が挙げられる。
【0162】
上述した第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207としては、これらに限定されることなく、励起錯体を形成できる組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物205の吸収スペクトルと重なり、励起錯体の発光スペクトルのピークが、燐光性化合物205の吸収スペクトルのピークよりも長波長であればよい。
【0163】
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物206と第2の有機化合物207を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することができる。具体的には、第1の有機化合物:第2の有機化合物=1:9〜9:1(重量比)の範囲が好ましい。
【0164】
本実施の形態で示した発光素子は、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの重なりを利用したエネルギー移動により、エネルギー移動効率を高めることができるため、外部量子効率の高い発光素子を実現することができる。
【0165】
なお、本発明の一態様に含まれる別の構成として、燐光性化合物205(ゲスト材料)の他の2種類の有機化合物(第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207)として、正孔トラップ性のホスト分子、および電子トラップ性のホスト分子を用いて発光層204を形成し、2種類のホスト分子中に存在するゲスト分子に正孔と電子を導いて、ゲスト分子を励起状態とする現象(すなわち、Guest Coupled with Complementary Hosts:GCCH)が得られるように発光層204を形成する構成も可能である。
【0166】
この時、正孔トラップ性のホスト分子、および電子トラップ性のホスト分子としては、それぞれ、上述した正孔を受け取りやすい化合物、および電子を受け取りやすい化合物を用いることができる。
【0167】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0168】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様として、電荷発生層を挟んでEL層を複数有する構造の発光素子(以下、タンデム型発光素子という)について説明する。
【0169】
本実施の形態に示す発光素子は、
図5(A)に示すように一対の電極(第1の電極301および第2の電極304)間に、複数のEL層(第1のEL層302(1)、第2のEL層302(2))を有するタンデム型発光素子である。
【0170】
本実施の形態において、第1の電極301は、陽極として機能する電極であり、第2の電極304は陰極として機能する電極である。なお、第1の電極301および第2の電極304は、実施の形態2と同様な構成を用いることができる。また、複数のEL層(第1のEL層302(1)、第2のEL層302(2))は、実施の形態2または実施の形態3で示したEL層と同様な構成であっても良いが、いずれかが同様の構成であっても良い。すなわち、第1のEL層302(1)と第2のEL層302(2)は、同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構成は実施の形態2または実施の形態3と同様なものを適用することができる。
【0171】
また、複数のEL層(第1のEL層302(1)、第2のEL層302(2))の間には、電荷発生層305が設けられている。電荷発生層305は、第1の電極301と第2の電極304に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極301に第2の電極304よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層305から第1のEL層302(1)に電子が注入され、第2のEL層302(2)に正孔が注入される。
【0172】
なお、電荷発生層305は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する(具体的には、電荷発生層305に対する可視光の透過率が、40%以上)ことが好ましい。また、電荷発生層305は、第1の電極301や第2の電極304よりも低い導電率であっても機能する。
【0173】
電荷発生層305は、正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体(アクセプター)が添加された構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体(ドナー)が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0174】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0175】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0176】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq
3、BeBq
2、BAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他、Zn(BOX)
2、Zn(BTZ)
2などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、Bphen、BCPなども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0177】
また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0178】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層305を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0179】
図5(A)においては、EL層を2層有する発光素子について説明したが、
図5(B)に示すように、n層(ただし、nは、3以上)のEL層(302(1)〜302(n))を積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数のEL層を有する場合、EL層とEL層との間にそれぞれ電荷発生層(305(1)〜305(n−1))を配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能である。電流密度を低く保てるため、長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0180】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色の光と、発光する物質から得られた光とを混合すると、白色発光を得ることができる。
【0181】
また、3つのEL層を有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1のEL層の発光色が赤色であり、第2のEL層の発光色が緑色であり、第3のEL層の発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0182】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0183】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を用いる発光素子を適用する発光装置について説明する。
【0184】
また、上記発光装置は、パッシブマトリクス型の発光装置でもアクティブマトリクス型の発光装置でもよい。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発光素子を適用することが可能である。
【0185】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について
図6を用いて説明する。
【0186】
なお、
図6(A)は発光装置を示す上面図であり、
図6(B)は
図6(A)を一点鎖線A−Bで切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板401上に設けられた画素部402と、ソース線駆動回路としての機能を有する駆動回路部403と、ゲート線駆動回路としての機能を有する駆動回路部404a、404bと、を有する。画素部402、駆動回路部403、及び駆動回路部404a、404bは、シール材405によって、素子基板401と封止基板406との間に封止されている。
【0187】
また、素子基板401上には、駆動回路部403、及び駆動回路部404a、404bに外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線407(
図6(A)には図示しない)が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC408を設ける例を示している。なお、FPC408は、所謂フレキシブルプリントサーキットとしての機能を有する。なお、ここではFPC408しか図示されていないが、FPC408にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
【0188】
次に、
図6(A)に示す発光装置について、
図6(B)を用いて説明する。なお、
図6(B)においては、駆動回路部404a、404bの断面構造については、図示していない。駆動回路部404a、404bとしては、例えば、駆動回路部403と同様の構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。
【0189】
また、
図6(B)においては、駆動回路部403は、FET409とFET410とを組み合わせた構成について例示している。駆動回路部403が有するFET409とFET410は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されても良い。また、駆動回路部403の回路構成としては、1つのトランジスタまたは3つ以上のトランジスタを組み合わせてもよい。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成してもよい。
【0190】
また、画素部402は、スイッチング用のFET411と、電流制御用のFET412と、電流制御用のFET412の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。また、本実施の形態においては、画素部402はスイッチング用のFET411と、電流制御用のFET412との2つのFETにより画素部402を構成する例について示したが、これに限定されない。例えば、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部402としてもよい。
【0191】
FET409、410、411、412としては、例えば、スタガ型、逆スタガ型のトランジスタ、またはFin型のトランジスタを適用することができる。FET409、410、411、412に用いることのできる半導体材料としては、例えば、IV族(シリコン、ガリウム等)半導体、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体を用いることができる。また、該半導体材料の結晶性については、特に限定されず、例えば、非晶質半導体、または結晶性半導体を用いることができる。とくに、FET409、410、411、412としては、酸化物半導体を用いると好ましい。該酸化物半導体としては、例えば、In−Ga酸化物、In−M−Zn酸化物(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)等が挙げられる。FET409、410、411、412として、例えば、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV以上の酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0192】
また、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、絶縁物414として、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。また、本実施の形態においては、第1の電極413を陽極として用いる。
【0193】
また、絶縁物414の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。絶縁物414の形状を上記のように形成することで、絶縁物414の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。例えば、絶縁物414の材料として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれかを使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等を使用することができる。
【0194】
第1の電極413上には、EL層415及び第2の電極416が形成されている。EL層415は、少なくとも発光層が設けられる。また、EL層415には、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を適宜設けることができる。また、本実施の形態においては、第2の電極416を陰極として用いる。
【0195】
なお、第1の電極413、EL層415、及び第2の電極416の構造で、発光素子417が形成されている。第1の電極413、EL層415、及び第2の電極416に用いる材料としては、実施の形態2に示す材料を用いることができる。また、ここでは図示しないが、第2の電極416は外部入力端子であるFPC408に電気的に接続されている。
【0196】
また、
図6(B)に示す断面図においては、発光素子417を1つのみ図示しているが、画素部402において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部402には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子の他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)等の発光が得られる発光素子を形成してもよい。例えば、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子に上述の数種類の発光が得られる発光素子を追加することにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、白色発光が可能な発光素子と、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示が可能な発光装置としてもよい。
【0197】
さらに、シール材405で封止基板406を素子基板401と貼り合わせることにより、素子基板401、封止基板406、およびシール材405で囲まれた空間418に発光素子417が備えられた構造になっている。なお、空間418には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される構成も含むものとする。
【0198】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板406に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル系樹脂またはアクリル系樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0199】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0200】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0201】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を含む発光素子、または該発光素子を用いた発光装置を様々な電子機器に適用する一例について、
図7を用いて説明する。
【0202】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0203】
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する発光部を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0204】
また、本発明の一態様の発光素子が備える一対の電極を可視光に対する透光性を有する材料を用いて形成することで、シースルーの発光部を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0205】
また、本発明の一態様を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、ダッシュボードや、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0206】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0207】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0208】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0209】
図7(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0210】
図7(C)は、スマートウオッチであり、筐体7302、表示パネル7304、操作ボタン7311、7312、接続端子7313、バンド7321、留め金7322、等を有する。
【0211】
ベゼル部分を兼ねる筐体7302に搭載された表示パネル7304は、非矩形状の表示領域を有している。なお、表示パネル7304としては、矩形状の表示領域としてもよい。表示パネル7304は、時刻を表すアイコン7305、その他のアイコン7306等を表示することができる。
【0212】
なお、
図7(C)に示すスマートウオッチは、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。
【0213】
また、筐体7302の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。なお、スマートウオッチは、発光装置をその表示パネル7304に用いることにより作製することができる。
【0214】
図7(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に、表示部7402、マイク7406、スピーカ7405、カメラ7407、外部接続部7404、操作用のボタン7403などを備えている。また、本発明の一態様に係る発光素子を、可撓性を有する基板に形成した場合、
図7(D)に示すような曲面を有する表示部7402に適用することが可能である。
【0215】
図7(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0216】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0217】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0218】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0219】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作用のボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0220】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0221】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0222】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を含む発光装置を適用して電子機器を得ることができる。なお、適用できる電子機器は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0223】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0224】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を含む発光素子、または該発光素子を含む発光装置を適用した照明装置及び電子機器の一例について、
図8(A)、(B)、(C)を用いて説明する。
【0225】
図8(A)は、発光装置を室内の照明装置8001として用いた例である。なお、発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8002を形成することもできる。本実施の形態で示す発光装置に含まれる発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8003を備えても良い。
【0226】
また、発光装置をテーブルの表面に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8004とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光装置を用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0227】
また、
図8(B)は、携帯電話機の一方の面の斜視図を示し、
図8(C)は、携帯電話機の他方の面の斜視図を示している。携帯電話機8100は、筐体8102に表示部8104、カメラ8106、照明8108等が組み込まれている。本発明の一態様の発光装置を表示部8104、及び照明8108に用いることができる。
【0228】
照明8108は、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を含む発光素子を用いることで、面光源として機能する。したがって、LEDに代表される点光源と異なり、指向性が少ない発光が得られる。例えば、照明8108とカメラ8106を組み合わせて用いる場合、照明8108を点灯または点滅させて、カメラ8106により撮像することができる。照明8108としては、面光源としての機能を有するため、自然光の下で撮影したような写真を撮影することができる。
【0229】
以上のように、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体を含む発光素子、または該発光素子を含む発光装置を適用した様々な照明装置及び電子機器が得られる。なお、これらの照明装置及び電子機器は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0230】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0231】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体、ビス{2−[6−(2,6−ジメチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κO,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppm−dmp)
2(acac))の合成方法について説明する。なお、Ir(ppm−dmp)
2(acac)の構造を以下に示す。
【0232】
【化31】
【0233】
<ステップ1:4−クロロ−6−フェニルピリミジンの合成>
まず、4,6−ジクロロピリミジン5.0g、フェニルボロン酸4.9g、炭酸ナトリウム7.1g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl
2(PPh
3)
2)0.34g、アセトニトリル20mL、水20mLを、還流管を付けた100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射することで加熱した。得られた混合物からジクロロメタンにて有機層を抽出し、有機層を水、飽和食塩水にて洗浄し、硫酸マグネシウムを加え、自然ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、得られた残渣を、展開溶媒にジクロロメタンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製することで、目的物1.6g(収率:23%,淡い黄色の固体)を得た。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。ステップ1の合成スキームを下記(a−1)に示す。
【0234】
【化32】
【0235】
<ステップ2:4−フェニル−6−(2,6−ジメチルフェニル)ピリミジン(略称:Hppm−dmp)の合成>
次に上記ステップ1で得た4−クロロ−6−フェニルピリミジン1.6g、2,6−ジメチルフェニルボロン酸1.5g、炭酸ナトリウム1.8g、PdCl
2(PPh
3)
259mg、N,N−ジメチルホルムアミド(略称:DMF)20mL、水20mLを100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を2時間照射することで加熱した。得られた混合物からジクロロメタンにて有機層を抽出し、有機層を水、飽和食塩水にて洗浄し、硫酸マグネシウムを加え、自然ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、得られた残渣を、展開溶媒に酢酸エチル:ヘキサン=1:5を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物であるHppm−dmp(略称)を0.50g得た(収率:23%、淡い黄色の油状物)。ステップ2の合成スキームを下記(a−2)に示す。
【0236】
【化33】
【0237】
<ステップ3:ジ−μ−クロロ−テトラキス{2−[6−(2,6−ジメチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}ジイリジウム(III)(略称:[Ir(ppm−dmp)
2Cl]
2)の合成>
上記ステップ2の合成方法で得たHppm−dmp(略称)1.0g、塩化イリジウム(III)水和物0.57g、2−エトキシエタノール20mL、水20mLを100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を3時間照射することで加熱した。得られた混合物を、メタノールにて吸引ろ過し、目的物である[Ir(ppm−dmp)
2Cl]
2(略称)を1.1g得た(収率:74%、橙色の固体)。ステップ3の合成スキームを下記(a−3)に示す。
【0238】
【化34】
【0239】
<ステップ4:ビス{2−[6−(2,6−ジメチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κO,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppm−dmp)
2(acac))の合成>
上記ステップ3で得た[Ir(ppm−dmp)
2Cl]
2(略称)1.1g、炭酸ナトリウム0.77g、アセチルアセトン(略称:Hacac)0.23g、2−エトキシエタノール30mLを、還流管を付けた100mL丸底フラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換して、マイクロ波(2.45GHz 120W)を2時間照射することで加熱した。得られた混合物を、メタノールにて吸引ろ過し、ろ液の溶媒を留去した。得られた残渣を、酢酸エチル:ヘキサン=1:5を展開溶媒としたフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製し、ヘキサンにて再結晶をすることにより、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体Ir(ppm−dmp)
2(acac)を得た(収率:59%、橙色粉末固体)。得られた橙色粉末固体0.21gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、240℃で固体を加熱した。昇華精製後、目的物の橙色固体を収率48%で得た。ステップ4の合成スキームを下記(a−4)に示す。
【0240】
【化35】
【0241】
なお、上記ステップ4で得られた橙色固体の核磁気共鳴分光法(
1H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H−NMRチャートを
図9に示す。この結果から、本合成例1において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体Ir(ppm−dmp)
2(acac)が得られたことがわかった。
【0242】
1H−NMR.δ(CDCl
3):1.85(s,6H),2.26(s,12H),5.35(s,1H),6.46−6.48(dd,2H),6.83−6.90(dm,4H),7.20−7.22(d,4H),7.29−7.32(t,2H),7.63−7.65(dd,2H),7.72(ds,2H),9.24(ds,2H).
【0243】
次に、Ir(ppm−dmp)
2(acac)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.090mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.090mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を
図10に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、
図10において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。
図10に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.090mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0244】
図10に示す通り、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体Ir(ppm−dmp)
2(acac)は、553nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは黄色の発光が観測された。
【0245】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例2】
【0246】
≪合成例2≫
本合成例では、実施形態1の構造式(134)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、ビス{2−[6−(2−tert−ブチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppm−tBup)
2(acac))の合成例を具体的に例示する。なお、Ir(ppm−tBup)
2(acac)の構造を以下に示す。
【0247】
【化36】
【0248】
<ステップ1:4−(2−tert−ブチルフェニル)−6−フェニルピリミジン(略称:Hppm−tBup)の合成>
まず、4−クロロ−6−フェニルピリミジン1.0g、2−tert−ブチルフェニルボロン酸1.1g、リン酸カリウム4.0g、トルエン39mL、水3.9mLを、還流管を付けた三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この容器に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)48mg、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン190mgを加え100℃で7時間加熱した。さらに、Pd
2(dba)
324mg、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン46mgを加え、100℃で17時間加熱した。次に、酢酸パラジウム12mg、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’、6’−ジメトキシビフェニル(略称:S−Phos)44mgを入れ、100℃で15時間加熱した。さらに酢酸パラジウム5.9mg、S−Phos(略称)27mgを入れ、100℃で8時間加熱した。その後、2−tert−ブチルフェニルボロン酸0.10g、リン酸カリウム2.0g、酢酸パラジウム13mg、S−Phos(略称)12mgを入れ、100℃で21時間加熱した。得られた混合物から酢酸エチルにて有機層を抽出し、有機層を飽和食塩水にて洗浄し、硫酸マグネシウムを加えた。この混合物をろ過した。ろ液の溶媒を留去し、得られた残渣を、酢酸エチル:ヘキサン=1:4を展開溶媒にした中性シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物であるHppm−tBup(略称)を0.27g得た(収率18%、黄白色固体)。ステップ1の合成スキームを下記(b−1)に示す。
【0249】
【化37】
【0250】
<ステップ2:ジ−μ−クロロ−テトラキス{2−[6−(2−tert−ブチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}ジイリジウム(III)(略称:[Ir(ppm−tBup)
2Cl]
2)の合成>
次に、ステップ1の合成方法で得たHppm−tBup(略称)0.27g、塩化イリジウム(III)水和物0.14g、2−エトキシエタノール4.7mL、水1.6mLを、還流管を付けた丸底フラスコに入れ、アルゴンバブリングをしながらマイクロ波(2.45GHz 100W)を20分間照射することで加熱した。その後、得られた混合物をろ過し、ヘキサンで洗浄することにより、目的物である[Ir(ppm−tBup)
2Cl]
2(略称)を300mg得た(収率80%、暗橙色固体)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。ステップ2の合成スキームを下記(b−2)に示す。
【0251】
【化38】
【0252】
<ステップ3:ビス{2−[6−(2−tert−ブチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppm−tBup)
2(acac))の合成>
次に、上記ステップ2で得た[Ir(ppm−tBup)
2Cl]
2(略称)300mg、アセチルアセトン(略称:Hacac)57mg、炭酸ナトリウム200mg、2−エトキシエタノール2mLをフラスコに入れ、アルゴンバブリングをしながらマイクロ波(2.45GHz 80W)を7分間照射した。得られた混合物の溶媒を留去し、得られた残渣を、酢酸エチル:ヘキサン=1:5を展開溶媒としたフラッシュカラムクロマトグラフィーにて精製した。溶媒を留去し、得られた残渣を、さらに酢酸エチル:ヘキサン=1:5を展開溶媒としたフラッシュカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカゲル)にて精製することにより、本発明の一態様である有機金属イリジウム錯体Ir(ppm−tBup)
2(acac)を得た(収率:5%、橙色粉末固体)。ステップ3の合成スキームを下記(b−3)に示す。
【0253】
【化39】
【0254】
なお、上記ステップ3で得られた橙色粉末固体の核磁気共鳴分光法(
1H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H−NMRチャートを
図17に示す。この結果から、本合成例において、上述の構造式(134)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、Ir(ppm−tBup)
2(acac)が得られたことがわかった。なお、
1H−NMRチャートにおいて、0.88−0.89、1.25−1.29に見られるピークは、ヘキサン溶媒由来である。
【0255】
1H−NMR.δ(CDCl
3):1.38(s,18H)、1.84(s,6H)、5.32(s,1H)、6.52(d,2H)、6.82−6.85(dt,2H)、6.87−6.90(t,2H)、7.29(dd,2H)、7.34−7.37(dt,2H)、7.45−7.49(dt,2H)、7.64−7.68(dt,4H)、7.82(ds,2H)、9.16(ds,2H).
【0256】
次に、Ir(ppm−tBup)
2(acac)のジクロロメタン脱酸素溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.011mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、絶対PL量子収率測定装置((株)浜松ホトニクス製 C11347−01)を用い、グローブボックス((株)ブライト製 LABstarM13(1250/780)にて、窒素雰囲気下でジクロロメタン脱酸素溶液(0.011mmol/L)を石英セルに入れ、密栓し、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を
図18に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、
図18において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、
図18に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.011mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0257】
図18に示す通り、本発明の一態様の有機金属錯体、Ir(ppm−tBup)
2(acac)は、553nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは黄色の発光が観測された。
【0258】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例3】
【0259】
本実施例では、実施例1で合成した本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体であるIr(ppm−dmp)
2(acac)(構造式(100))を発光層に用いた発光素子1と、比較用の有機金属イリジウム錯体である(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(別名:ビス{2−[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III))(略称:Ir(mpmppm)
2(acac))(構造式(502))を発光層に用いた比較発光素子2と、比較用の有機金属イリジウム錯体である(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)
2(acac))(構造式(500))を発光層に用いた比較発光素子3と、をそれぞれ作製し素子特性について評価を行った。本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0260】
【化40】
【0261】
【化41】
【0262】
発光素子1の作製方法について、
図11を用いて説明する。
【0263】
(発光素子1)
まず、基板1100上に、シリコン、または酸化シリコンを含有した酸化インジウム−酸化スズ化合物(ITO−SiO
2、以下ITSOと略記する。)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、用いたターゲットの組成は、In
2O
3:SnO
2:SiO
2=85:10:5[重量%]とした。また、第1の電極1101の膜厚は、110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極1101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0264】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0265】
その後、10
−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0266】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、1,3,5−トリ(ジベンゾチオフェン−4−イル)ベンゼン(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデンとを、DBT3P−II:酸化モリブデン=2:1(質量比)となるように共蒸着することにより、第1の電極1101上に正孔注入層1111を形成した。正孔注入層1111の膜厚は20nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0267】
次に、正孔注入層1111上に、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように蒸着し、正孔輸送層1112を形成した。
【0268】
次に、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。発光層1113としては、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、N−(1,1’−ビフェニル−4−イル)−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(略称:PCBBiF)、Ir(ppm−dmp)
2(acac)を、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(ppm−dmp)
2(acac)=0.8:0.2:0.05(質量比)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、40nmの膜厚とした。
【0269】
なお、発光素子1の発光層1113において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料であり、PCBBiFがアシスト材料であり、Ir(ppm−dmp)
2(acac)がゲスト材料(ドーパント)である。
【0270】
次に、発光層1113上に2mDBTBPDBq−IIを15nm蒸着した後、バソフェナントロリン(略称:Bphen)を10nm蒸着することにより、電子輸送層1114を形成した。さらに電子輸送層1114上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することにより、電子注入層1115を形成した。
【0271】
最後に、電子注入層1115上にアルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着し、陰極となる第2の電極1103を形成し、発光素子1を得た。
【0272】
次に、比較用の比較発光素子2及び比較発光素子3の作製方法を示す。
【0273】
(比較発光素子2)
比較発光素子2は、発光素子1と比較し発光層1113の構成が異なる。以下、発光素子1と異なる構成のみ記載する。
【0274】
発光層1113としては、2mDBTBPDBq−II、PCBBiF、ビス{2−[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−ピリミジニル−κN3]フェニル−κC}(2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)
2(acac))を、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(mpmppm)
2(acac)=0.8:0.2:0.05(質量比)となるように共蒸着した。また、膜厚は、40nmの膜厚とした。
【0275】
なお、比較発光素子2の発光層1113において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料であり、PCBBiFがアシスト材料であり、Ir(mpmppm)
2(acac)がゲスト材料(ドーパント)である。
【0276】
(比較発光素子3)
比較発光素子3は、発光素子1と比較し発光層1113及び電子輸送層1114の構成が異なる。以下、発光素子1と異なる構成のみ記載する。
【0277】
発光層1113としては、2mDBTBPDBq−II、PCBBiF、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)
2(acac))を、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(dppm)
2(acac)=0.7:0.3:0.05(質量比)となるように共蒸着した。また、膜厚は、20nmの膜厚とした。その後さらに、2mDBTBPDBq−II、PCBBiF、Ir(dppm)
2(acac)を、2mDBTBPDBq−II:PCBBiF:Ir(dppm)
2(acac)=0.7:0.3:0.05(質量比)となるように共蒸着した。また、膜厚は、20nmの膜厚とした。
【0278】
なお、比較発光素子3の発光層1113において、2mDBTBPDBq−IIがホスト材料であり、PCBBiFがアシスト材料であり、Ir(dppm)
2(acac)がゲスト材料(ドーパント)である。
【0279】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0280】
また、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3においては、ゲスト材料(ドーパント)が異なるため、各ゲスト材料が最適な素子構成となるように、発光層1113または電子輸送層1114を最適な構成としている。以上により得られた発光素子1、比較発光素子2、比較発光素子3の素子構造を表2に示す。
【0281】
【表2】
【0282】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3が大気に曝されないように封止する作業(具体的に、シール材を素子の周囲に塗布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った。その後、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0283】
発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の電圧−輝度特性を
図12に示す。
図12において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m
2)をそれぞれ表す。また、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の輝度−電流効率特性を
図13に示す。
図13において、横軸は、輝度(cd/m
2)を、縦軸は電流効率(cd/A)をそれぞれ表す。また、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の電圧−電流特性を
図14に示す。
図14において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)をそれぞれ表す。また、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の輝度−外部量子効率特性を
図15に示す。
図15において、横軸は輝度(cd/m
2)を、縦軸は外部量子効率(%)をそれぞれ表す。
【0284】
図13及び
図15に示す結果より、本発明の一態様の発光素子1は、比較発光素子2及び比較発光素子3よりも高い電流効率及び高い外部量子効率であることがわかった。
【0285】
次に、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の各特性を表3に示す。
【0286】
【表3】
【0287】
また、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3の電流密度を、2.5mA/cm
2とした際の発光スペクトルを
図16に示す。
図16に示す通り、発光素子1の発光スペクトルは、553nmにピークを有し、比較発光素子2の発光スペクトルは、563nmにピークを有し、比較発光素子3の発光スペクトルは、579nmにピークを有している。
【0288】
表3に示すCIE色度座標(x、y)及び、
図16に示す発光スペクトルの結果より、発光素子1、比較発光素子2、及び比較発光素子3は、ドーパント由来の発光が得られていることがわかった。
【0289】
上記に示す結果から、本発明の一態様の発光素子1は、比較発光素子2及び比較発光素子3と比べると、発光スペクトルが短波長化している。発光素子1の発光スペクトルは553nmにピークを有しているため、比較発光素子2及び比較発光素子3と比較し視感度が高い。また、本発明の一態様の発光素子1は高輝度であり、良好な電流効率特性を示していることが分かる。さらに、純度の良い黄色発光を示すことが分かる。
【0290】
次に、発光素子1の発光物質として用いたIr(ppm−dmp)
2(acac)と、比較発光素子2の発光物質として用いたIr(mpmppm)
2(acac)と、比較発光素子3の発光物質として用いたIr(dppm)
2(acac)について、ピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角について計算を行った。
【0291】
計算方法としては、実施の形態1に示す計算装置及び計算方法と同様とした。
【0292】
計算結果を表4に示す。
【0293】
【表4】
【0294】
表4に示す通り、本発明の一態様の発光素子1に用いたIr(ppm−dmp)
2(acac)のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角は、比較発光素子2に用いたIr(mpmppm)
2(acac)のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角、及び比較発光素子3に用いたIr(dppm)
2(acac)のピリミジン環とピリミジン環の6位のフェニル基との二面角よりも大きい。したがって、本発明の一態様の有機金属イリジウム錯体中において、立体障害による捩れが生じるためπ共役の広がりを抑制することができる。
【0295】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。