特許第6441629号(P6441629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441629
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20181210BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20181210BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20181210BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20181210BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61F13/511 110
   A61F13/534 110
   A61F13/535 200
   A61F13/536 100
   A61F13/536 200
   A61F13/537 220
   A61F13/537 310
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-194736(P2014-194736)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-64000(P2016-64000A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】本田 明子
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/049725(WO,A1)
【文献】 特開2012−213480(JP,A)
【文献】 特開2010−110535(JP,A)
【文献】 特開2008−161526(JP,A)
【文献】 特開2006−116036(JP,A)
【文献】 特開2002−165834(JP,A)
【文献】 特開2009−112590(JP,A)
【文献】 特開2008−173247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体は、前記透液性表面シート側の面に、吸収性物品の長手方向に沿うとともに尿排出部位を含む長手方向範囲に亘って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部を備え、
前記透液性表面シートと吸収体との間に、トウからなる繊維集合体シートが繊維方向を吸収性物品の長手方向とする状態で配置され、
前記吸収体の上面に、前記トウからなる繊維集合体シート及び透液性表面シートを積層した状態で、前記透液性表面シートの表面側から前記吸収体凹部の底面に対し前記吸収体凹部に沿ってエンボスを施すことにより、肌側に長手方向に沿って凹溝が形成され、前記凹溝内の両側面及び底面は前記透液性表面シートと前記トウからなる繊維集合体シートとによって被覆されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体の内部に高吸水性樹脂が混在しているとともに、前記吸収体とトウからなる繊維集合体シートとの間に高吸水性樹脂が散布されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体の肌面側に千鳥状、格子状又は斜め格子状のエンボスが形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記トウからなる繊維集合体シートは、前記吸収体の上面側全面に配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トウからなる繊維集合体シートは、肌側の面が繊維方向に沿った多数の畝部と多数の溝部とを含む表面を成し、前記トウからなる繊維集合体シートがトウの繊維同士が交絡することによって形成された交絡点を有する請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に失禁パッド、使い捨ておむつ等に使用される吸収性物品に係り、肌側に長手方向に沿って凹溝が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシート又はポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布又は透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、特に失禁パッドなどのように一度にドッと出る尿を小さな面積で受け止め素早く拡散させるために、一時貯留及び尿拡散手段の一つとして、肌側に長手方向に沿って凹溝を形成したものが各種提案されている。
【0004】
下記特許文献1では、透液性表面シートと不透液性裏面シートとこれら両シート間に介在する吸液性コアとを有し、前記コアが吸収拡散性シートで被覆されたものであって、該コアの前記表面シート側には前記表面シートから裏面シートへ向かう方向ヘくぼむ少なくとも1条の溝が形成され、前記溝の底部と側壁部とが前記表面シートで覆われている使い捨ておむつにおいて、前記コアが吸水性繊維と高吸水性ポリマー粒子とを含み、これら吸水性繊維と高吸水性ポリマー粒子とが前記溝の底部において前記表面シートと裏面シートとの間に介在している使い捨ておむつが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、液透過性の表面シートと、非肌当接面側に配置される裏面シートと、該両シート間に配置された液吸収性の吸収体とを有する吸収性物品であって、前記吸収体は、肌当接面側の上層吸収体と非肌当接面側の下層吸収体とを有し、該上層吸収体と該下層吸収体とがなす中高部は、肌当接面側に形成された長手方向に延びるくぼみを有し、(1)前記中高部のくぼみをなす部分は、非肌当接面側に突出した前記上層吸収体の下面の凸部と、これと接して一体である前記下層吸収体の上面の凹部とを有する、又は、(2)前記くぼみは、前記上層吸収体を貫通した開口部であり、該開口部の底面をなすよう前記上層吸収体の下面に前記下層吸収体が位置する吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−165834号公報
【特許文献2】特開2009−112590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1、2記載の吸収性物品では、肌側に長手方向に沿って表面シートと共に非肌面側に窪む凹溝が形成され、一度に大量の尿が排出されたとしても尿を凹溝によって一時貯留すると同時に、凹溝内で長手方向に拡散させることによって尿を横漏れさせないようにしている。
【0008】
しかしながら、一度にドッと出た尿を凹溝で受け止め、長手方向に沿って拡散させるためには、凹溝の断面積(深さ及び幅)をある程度大きく確保せざるを得ないという問題点があった。凹溝は吸収体が存在しない空間として構成されるものであり、剛性が極めて低い部分であるため、凹溝の断面積を大きくすると、装着時に幅方向の両側から足圧を受けた際、剛性が低いため吸収体がよれたり凹溝が変形したり問題が発生していた。
【0009】
また、収納性や持ち運び易さなどの理由から吸収体を薄くしたい場合は、前記凹溝の深さを十分に確保できないため、大量の尿を受け止めるために凹溝の幅寸法を大きくせざるを得なくなり、前述した問題がより深刻になるという問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、肌側に長手方向に沿って凹溝が形成された吸収性物品において、前記凹溝の断面積の縮小化を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体は、前記透液性表面シート側の面に、吸収性物品の長手方向に沿うとともに尿排出部位を含む長手方向範囲に亘って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部を備え、
前記透液性表面シートと吸収体との間に、トウからなる繊維集合体シートが繊維方向を吸収性物品の長手方向とする状態で配置され、
前記吸収体の上面に、前記トウからなる繊維集合体シート及び透液性表面シートを積層した状態で、前記透液性表面シートの表面側から前記吸収体凹部の底面に対し前記吸収体凹部に沿ってエンボスを施すことにより、肌側に長手方向に沿って凹溝が形成され、前記凹溝内の両側面及び底面は前記透液性表面シートと前記トウからなる繊維集合体シートとによって被覆されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、前記吸収体は、前記透液性表面シート側の面に、吸収性物品の長手方向に沿うとともに尿排出部位を含む長手方向範囲に亘って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の吸収体凹部を備え、前記吸収体凹部の底面に対し前記吸収体凹部に沿ってエンボスを施すことにより、吸収性物品の肌側に長手方向に沿って凹溝を形成してあるため、一気に排出された尿は前記凹溝に流入し、この凹溝に沿って前後に拡散しつつ、凹溝内の周面を透過して吸収体に吸収されるようになる。このため、前記凹溝を通じて拡散した尿が吸収体の広い範囲に吸収されるので、尿が素早く吸収され、横漏れが防止できるようになる。また、吸収体と一体的に圧搾することによって凹溝を形成した場合に比べ、凹溝の周囲の吸収体の密度が極端に高くなるのが防止でき、凹溝に一時貯留された尿が吸収体に移行しやすくなる。
【0013】
前記凹溝の断面積の縮小化を図るために本発明では特に、透液性表面シートと吸収体との間に、トウからなる繊維集合体シートが繊維方向を吸収性物品の長手方向とする状態で配置され、前記吸収体の上面に、前記トウからなる繊維集合体シート及び透液性表面シートを積層した状態で、前記透液性表面シートの表面側からエンボスを施すことにより、肌側に長手方向に沿って前記凹溝が形成される。前記凹溝の両側面及び底面は前記透液性表面シートと前記トウからなる繊維集合体シートとによって被覆されている。
【0014】
本発明者は、性能を落とさずに凹溝の断面積の縮小化を図るための工夫を思考錯誤を繰り返した結果、凹溝内で長手方向への尿の拡散性を更に向上できれば凹溝の断面積を縮小化しても同等の性能を保持できる点に着目した。
【0015】
トウからなる繊維集合体シートは、従来は主に吸収体を構成する積繊パルプと共に吸収体に混合されることが多かったが、トウからなる繊維集合体の特筆すべき性能の一つに液体の繊維方向への拡散性が非常に高いことが挙げられる。本発明ではトウからなる繊維集合体がもつ高い拡散性を利用することにより、凹溝に流入した尿があふれ出す前に素早く長手方向に拡散させることができれば凹溝の断面積の縮小化を図っても同等の性能を維持し得ることに着目し本発明を成すに至った。前記「トウからなる繊維集合体シート」については更に後段で詳述する。
【0016】
従って、本発明に係る吸収性物品では、肌側に長手方向に沿って形成された凹溝の断面積の縮小化が図れるため、吸収体がよれたり凹溝が変形したりするのを抑制することが可能になる。また、収納性や持運び易さを向上させるために吸収体を薄くしたいなどの要求に容易に対応できるようになる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記吸収体の内部に高吸水性樹脂が混在しているとともに、前記吸収体とトウからなる繊維集合体シートとの間に高吸水性樹脂が散布されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、前記吸収体の内部に高吸水性樹脂を混在させるとともに、前記吸収体とトウからなる繊維集合体シートとの間に高吸水性樹脂を散布するようにしたものである。凹溝に沿って拡散しつつ吸収体に吸収された尿が吸収体内部に保持しきれず、肌側に滲み出そうになった場合でも、前記吸収体とトウからなる繊維集合体シートとの間に散布された樹脂に吸収保持されるため、吸収体内に溜まった尿が透液性表面シートの表面側に逆戻りするのを確実に防止でき、吸水後の表面材のさらっと感が維持できるようになる。
【0019】
また、前記トウからなる繊維集合体シートは嵩高で繊維間の隙間が多く吸収した体液を迅速に拡散することができるが、液体を吸収した後は潰れて厚さが薄くなることにより液透過性が低下しやすい欠点がある。そこで、前記トウからなる繊維集合体シートの下面側に高吸水性樹脂を散布し、トウからなる繊維集合体シートに吸収された体液を迅速に高吸水性樹脂によって吸い取ることによってトウからなる繊維集合体シートの液透過性を保持することが可能となる。
【0020】
請求項3に係る本発明として、前記吸収体の肌面側に千鳥状、格子状又は斜め格子状のエンボスが形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項3記載の発明では、前記吸収体の肌面側に千鳥状、格子状又は斜め格子状のエンボスを形成することにより、排出された尿が横流れする際に液流れを遅くできるようになるとともに、上記請求項2に係る発明と組み合わせる場合は、吸収体とトウからなる繊維集合体シートとの間に散布された高吸水性樹脂が吸収体の肌面側に形成された千鳥状、格子状又は斜め格子状のエンボスによって前後及び左右方向に移動しづらくなる。従って、高吸水性樹脂が1箇所に寄せ集まりこれが吸水によって膨張して装着感が著しく損なわれるのを防止することができる。
【0022】
請求項4に係る本発明として、前記トウからなる繊維集合体シートは、前記吸収体の上面側全面に配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項4記載の発明では、前記トウからなる繊維集合体シートを、前記凹溝領域だけではなく吸収体の上面側全面に配置するようにしたものである。吸収体の上面全体にトウからなる繊維集合体シートを配置することによって、装着時の圧縮復元性、表面への液戻りが少なくさらっと感が得られ、更に吸収体に捻れが加えられてもトウ繊維による拘束によって吸収体に割れやヨレが生じ難くなるという利点が得られるようになる。
【0024】
請求項に係る本発明として、前記トウからなる繊維集合体シートは、肌側の面が繊維方向に沿った多数の畝部と多数の溝部とを含む表面を成し、前記トウからなる繊維集合体シートがトウの繊維同士が交絡することによって形成された交絡点を有する請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項記載の発明では、トウからなる繊維集合体シートの物性に関して、肌側の面が繊維方向に沿った多数の畝部と多数の溝部とを含む表面を成すようにしている。従って、畝部の繊維量は溝部の繊維量より多くなるため、耐圧縮性に優れ、体圧が加わっている状態でも吸収速度が低下し難くく長時間の使用しても漏れを軽減できるようになる。また、前記トウからなる繊維集合体シートはトウの繊維同士が交絡することによって形成された交絡点を有する。トウの繊維同士を水溶性接着剤によって固着するような製品も存在するが、このような製品の場合は液体を吸収した際、水溶性接着剤が溶解し交点が消失するため潰れやすくなり、液透過性が低下しやすい欠点があるが、繊維の交絡による交絡点によって繊維同士が結ばれているため、高吸水性樹脂の膨潤に追従することができ、繊維集合体シートの変形を抑制することができる。また、激しく体圧を受けた場合でも繊維集合体シートは形状を維持することができ、更に水溶性接着剤は溶解によって高吸水性樹脂を被覆し吸収性能を阻害することがあるが、この水溶性接着剤が用いられていないため高吸水性樹脂の吸収阻害が生じ難い。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、肌側に長手方向に沿って凹溝が形成された吸収性物品において、前記凹溝の断面積の縮小化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る失禁パッド1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】吸収体4の断面図である。
図5】トウからなる繊維集合体シート15の斜視図である。
図6】吸収体4の上面に形成したエンボスパターン例(A)〜(C)を示す平面図である。
図7】トウからなる繊維集合体シート15を凹溝22を含む範囲に部分的に配置した場合の平面図である。
図8】(A)、(B)は凹溝22の他の実施例を示す失禁パッド1の展開図である。
図9】(A)〜(C)は凹溝22の他の実施例を示す失禁パッド1の展開図である。
図10】(A)〜(F)は凹溝22の他の実施例を示す失禁パッド1の展開図である。
図11】吸収体凹部20の他の実施例を示す失禁パッド1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
〔失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る失禁パッド1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、必要に応じて前記吸収体を囲繞するクレープ紙や不織布等からなる被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも尿排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に、繊維方向を失禁パッド1の長手方向とした状態で配置されたトウからなる繊維集合体シート15とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。なお、必要に応じて、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に、親水性のセカンドシートを配置することができる。
【0030】
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0031】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。
【0032】
前記吸収体4は、たとえば綿状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性樹脂8とにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性樹脂8は例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入され、一部に偏在することなくほぼ均等に前記吸収性繊維と混在させてある。
【0033】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本失禁パッド1では、吸収体4を被包シート5で囲繞するため、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって尿を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。前記パルプの目付は、100g/m〜600g/m、好ましくは200g/m〜500g/mとするのがよい。
【0034】
前記高吸水性樹脂8としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
【0035】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、尿に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0036】
前記被包シート5は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシートを用いることができる。特に、資材の破壊(破れ)が生じにくい不織布を用いるのが好ましい。このような不織布としては、薄さと強度のバランスに優れたスパンボンド法やSMS法により加工された不織布、熱可塑性エラストマー樹脂などからなる弾性繊維をスパンボンド法、メルトブロー法など紡糸工程に直結してウェブを形成する方法により加工された不織布、ラテックス、ウレタン、オレフィン系の繊維など伸縮性を有する素材を主成分とする不織布が好適である。なお、被包シート5は、少なくとも吸収体4の肌当接面側(表面側)の面が撥水性でなければシートの親水度は特に問わない。
【0037】
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0038】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、尿の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0039】
前記サイド不織布7、7は、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の内側立体ギャザー10、10と、相対的に前記内側立体ギャザー10より外側に位置するとともに、前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2及びサイド不織布7によって形成された肌側に起立する左右一対の外側立体ギャザー11、11とからなる2重ギャザー構造の立体ギャザーBSを構成している。なお、前記立体ギャザーBSは、内側立体ギャザー10または外側立体ギャザー11のいずれかのみからなる1重ギャザー構造であっても良いし、サイド不織布7を配設するだけで肌側に起立した立体ギャザー状に形成されなくてもよい。
【0040】
前記内側立体ギャザー10および外側立体ギャザー11の構造についてさらに詳しく説明すると、前記サイド不織布7は、図2に示されるように、幅方向両側端をそれぞれパッド裏面側に折り返して幅方向内側及び幅方向外側にそれぞれ二重シート部分7a、7bを形成するとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7a内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では1本の糸状弾性伸縮部材12が配設されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7b内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材13、13が配設され、前記幅方向内側の二重シート部分7aの基端部が吸収体4の側部に配設される透液性表面シート3の上面にホットメルト接着剤等により接着されるとともに、幅方向外側の二重シート部分7bの基端部が前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2の側端部にホットメルト接着剤等により接着されることにより、前記幅方向内側の二重シート部分7aによって肌側に起立する内側立体ギャザー10が形成されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7bによって肌側に起立する外側立体ギャザー11が形成されている。なお、前記サイド不織布7は、パッド長手方向の両端部では、図3に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材12、13が配設されないとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7aがホットメルト接着剤等によって吸収体4側に接合されている。
【0041】
本失禁パッド1では、図1図3に示されるように、肌側に長手方向に沿って尿流入用の凹溝22が形成されている。この凹溝22は、透液性表面シート3の表面に排出された尿を受け止めて、尿を一時貯留するとともに、前後方向への尿の拡散を誘導し、且つ吸収体4への尿の吸収速度を速め、横漏れを防止するためのものである。
〔凹溝22について〕
以下、前記凹溝22について詳述する。
【0042】
前記凹溝22は、透液性表面シート3の表面側から透液性表面シート3から吸収体4にかけての構成部材を一体的に圧搾することにより形成したものでもよいが、予め前記吸収体4の凹溝22の形成予定部分に吸収体凹部20を形成しておき、この吸収体凹部20に沿って透液性表面シート3の表面側(肌面側)から吸収体4より上層の構成部材を圧搾するエンボス部21を設けることにより形成したものの方が、脚圧による凹溝22の変形が防止できるなどの理由から望ましい。
【0043】
本失禁パッド1では、前記吸収体4には、図1及び図2に示されるように、前記凹溝22の形成予定部分に、予め、肌側(透液性表面シート3側)の面に、尿排出部位Hを含む長手方向に沿って、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状の、図示例では凹溝状の吸収体凹部20が形成されている。図2に示される吸収体凹部20は、吸収体4の肌当接面側(透液性表面シート3側)の面において、周囲より非肌当接面側(不透液性裏面シート2側)に凹ませた、底面を有する非貫通型の凹溝部分である。この吸収体凹部20は、圧搾によることなく、例えば図4に示されるように、(A)積繊、又は(B)吸収体凹部20の底部の厚みで形成された下層吸収体4aと、前記吸収体凹部20に対応する部分が開口した上層吸収体4bとの積層構造などによって形成されている。
【0044】
前記吸収体凹部20は、図1に示されるように、吸収体4に対して、尿排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、失禁パッド1の幅方向に離間して複数条で形成したり、パッド長手方向に離間する不連続線状に形成するなど、種々の形態で形成することができる(図8図10参照)。前記吸収体凹部20は、1条のみ形成する場合やその他の形態で形成する場合のいずれにおいても、尿排出部位Hに対応する部位を含む位置に、パッド長手方向に長い溝状に形成されている。なお、複数の吸収体凹部20を設ける場合は、それぞれの吸収体凹部20に対してエンボス部21を設けるのが好ましい。
【0045】
前記吸収体凹部20の平面寸法は、パッド長手方向の長さが100〜180mm、溝幅(底面の溝幅)が2〜30mmとするのがよい。前記吸収体凹部20の深さは、吸収体4の厚みの50%以上、具体的には2〜8mm程度とするのがよい。
【0046】
前記吸収体4は、吸収体凹部20の底面の密度と、その周辺(吸収体凹部20以外の部分)の密度とがほぼ同一となるように設定するのが好ましい。つまり、吸収体凹部20を圧搾によることなく凹溝状に形成することにより、吸収体の密度をほぼ同一にするのが好ましい。
【0047】
前記吸収体凹部20の底部(不透液性裏面シート2側の部分、非肌側の部分)に介在する吸収体4部分は、パルプの目付が0g/m〜210g/m、好ましくは70g/m〜190g/mとするのがよい。この吸収体部分にも高吸水性樹脂8が所定の目付で分散混入されている。
【0048】
前記凹溝22を設けることにより、一気に排出された尿がこの凹溝22に流入して一時貯留されるとともに、この凹溝22に沿って前後に拡散しながら、凹溝22の内周面を透過して吸収体4に吸収されるようになる。このように、前記凹溝22を通じて前後に拡散した尿が吸収体4の広い範囲に吸収されるので、尿の素早い吸収が可能となり、横漏れが防止できるようになる。
【0049】
前記凹溝22は、前記吸収体4の上面側に、前記透液性表面シート3及び前記トウからなる繊維集合体シート15を積層した状態で、前記透液性表面シート3の表面側からエンボスを施すことにより形成されており、前記凹溝22の両側面及び底面は、前記透液性表面シート3とトウからなる繊維集合体シート15とによって被覆されている。
【0050】
以下、前記トウからなる繊維集合体シート15について詳細に説明する。
【0051】
トウとは、本来、化学繊維の紡糸された糸を多数集めた長い繊維束のことをいい、本明細書では、連続フィラメントの束(繊維集合体)であって、各フィラメントが一定方向に揃っているものを意味する。本発明では、このトウをシート状に加工したものが用いられる。
【0052】
繊維集合体を構成する繊維(以下、単にトウ構成繊維という)としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などであり、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0053】
繊維は親水性を有することが必要であるため、好ましくは本来的に親水性繊維を用いることが望ましいが、親水性を有しない素材の場合は親水化処理を施すことによって親水性を付与した繊維として用いる。
【0054】
トウからなる繊維集合体シート15としては、単に表面が平滑である平面シート状のものを用いてもよいが、好ましくは図5に示されるように、肌側の面が繊維方向に沿った多数の畝部15a、15a…と多数の溝部15b、15b…とを含む表面を成し、トウの繊維同士が交絡することによって形成された交絡点を有することが望ましい。このような物性を有するトウからなる繊維集合体シート15は、搬送方向を繊維方向としながらシート状のトウに流体を吹き付けることによって形成することができる。流体を吹き付けることによって、トウ繊維が噴出された流体の運動エネルギーを受け、繊維同士が交絡し交絡点を形成する。また、幅方向に多数の流体ノズルを備えた噴出装置を用いると、流体が衝突する部位の繊維が搬送方向と直交する方向に選り分けられるため、表面に多数の畝部と多数の溝部とを繊維方向に沿って有する畝溝面を形成することができる。前記流体としては、加熱空気、水蒸気などの空気や、水、温水などの液体を用いることができる。後の乾燥工程が不要になる点で前記流体としては加熱空気や水蒸気を用いるのが望ましい。このような物性を備えたトウからなる繊維集合体シート15は、特開2012-213480号公報において開示された、「トウからなるウェブ」として得ることができる。
【0055】
前記トウからなる繊維集合体シート15は、図2に示されるように、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配設されている。本例のように吸収体4が被包シート5で囲繞される場合は、吸収体4の肌側面を覆う被包シート5と透液性表面シート3との間に配設されるが、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に親水性のセカンドシート(図示せず)が設けられる場合は、セカンドシートと吸収体4との間に配設される。
【0056】
前記トウからなる繊維集合体シート15は、前記凹溝22内において、凹溝22の両側面及び底面が前記透液性表面シート3とトウからなる繊維集合体シート15とによって被覆されることによって、凹溝22内で長手方向への尿の拡散性を格段に向上させることにより凹溝22の断面積の縮小化を可能とする。すなわち本発明では、性能を落とさずに凹溝の断面積の縮小化を図るために、凹溝内で長手方向への尿の拡散性を更に向上できれば凹溝22の断面積を縮小化しても同等の性能を維持できるはずであるとの着眼により、トウからなる繊維集合体がもつ高い拡散性を利用することにより、凹溝22に流入した尿をあふれ出す前に素早く長手方向に拡散させることによって凹溝22の断面積の縮小化を可能としている。
【0057】
尿の拡散性の向上させる材料の選択にあたり、本発明者は繊維配向を一方向とした不織布なども検討したが液体拡散性能が足りず、連続フィラメントの束であるトウに着目した。
【0058】
前記トウは液体が吸収された場合、毛細管現象によりトウの繊維の間の空間を通って液体を迅速に拡散させる特性を有する。従って、凹溝22の両側面及び底面が前記透液性表面シート3及びトウからなる繊維集合体シート15の2層によって被覆されていると、凹溝22内に大量の尿が1箇所に排出されたとしても、トウからなる繊維集合体シート15がもつ高い拡散性を利用することにより、凹溝22に流入した尿をあふれ出す前に素早く長手方向に拡散させることによって凹溝22の断面積の縮小化を図っても同等の性能を維持することが可能となる。
【0059】
前記トウからなる繊維集合体シート15の繊維配向方向の液体拡散長は、40mm以上、好ましくは50mm以上、更に好ましくは60mm以上とする。液体拡散長が40mm以上であることにより、吸収した液体を迅速にトウの繊維の配向方向に拡散させることができる。この液体拡散長は、前記特開2012-213480号公報に記載された測定方法によって計測することができる。具体的には、(1)金網、例えば、φ:0.5mm及びピッチ:3mmを有するものに、100×100mmのサイズの試料を載せる。(2)生理食塩水40gを含む滴下漏斗の下端を、試験の中心且つ試料から10mmの高さに固定して、上記生理食塩水を、試料に、約5秒で滴下する。(3)約30秒後に、上記生理食塩水が拡散した長さである液体拡散長(繊維の配向方向、及びその直交方向)を測定する。
【0060】
前記トウからなる繊維集合体シート15の坪量は、10〜70g/m2の坪量とするのが望ましく、20〜50g/m2の坪量とすることがより好ましい。
【0061】
前記トウからなる繊維集合体シート15は、図1に示されるように、前記吸収体4の上面側の全面を覆うように配置されていることが望ましい。このような配置態様とすることにより、更に以下のような利点を得ることができる。
(1)嵩高で繊維間の隙間が多いので肌当りが柔らかくふわっとした装着感が得られる。
(2)圧縮復元性が高いので、製品をパッケージ内で高圧縮したり、折り曲げた状態で長期保管するなどしても、装着時に圧縮復元性が良いため元のふわっとした装着感が得られる。
(3)吸水しても肌と吸収体との距離を保ち、表面の液保持性が少ないため、体圧が掛かっても液戻りが少なくさらっと感が維持できる。
(4)吸収体が捻れるぐらいの力を加えても連続フィラメントの束であるトウ繊維が拘束するため吸収体の割れやヨレを抑制することができる。
【0062】
ところで、本失禁パッド1では、図2に示されるように、前記吸収体4の内部に高吸水性樹脂8が混在しているとともに、前記吸収体4とトウからなる繊維集合体シート15との間に高吸水性樹脂14が散布されている。従って、凹溝22に沿って拡散しつつ吸収体4に吸収された尿が吸収体内部に保持しきれず、肌側に滲み出そうになった場合でも、前記吸収体4とトウからなる繊維集合体シート15との間に散布された高吸水性樹脂14によって吸収保持されるため、吸収体4内に溜まった尿が透液性表面シート3の表面側に逆戻りするのが確実に防止でき、吸水後の表面材のさらっと感を維持できるようになる。また、前記トウからなる繊維集合体シート15は液体を吸収した後は潰れて厚さが薄くなることにより液透過性が低下しやすい欠点があるが、前記高吸水性樹脂14によってトウからなる繊維集合体シート15から体液を吸い取ることによってトウからなる繊維集合体シート15の液透過性を保持することが可能となる。
【0063】
前記高吸水性樹脂14は、高吸水性樹脂の単体又は高吸水性樹脂と吸水性繊維との混合物によって構成することができる。高吸水性樹脂の単体で構成した場合には尿の吸水性に優れ、吸水性樹脂との混合物で構成した場合には尿の通水性に優れるようになる。前記高吸水性樹脂14の目付は、50g/m〜500g/m、好ましくは100g/m〜400g/mである。
【0064】
前記高吸水性樹脂14に含まれる高吸水性樹脂は、前記吸収体4に含まれる高吸水性樹脂8と同様に粒状粉とされている。また、かかる高吸水性樹脂としては、前記吸収体4に含まれる高吸水性樹脂8と同様に、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
【0065】
前記高吸水性樹脂14の散布範囲は、トウからなる繊維集合体シート15の全面とすることも可能であるが、前記凹溝22の長手方向形成範囲+前後片側づつ10〜30mmの寸法を加えた範囲とすることでもよい。
【0066】
他方、前記吸収体4の肌面側には、図6(A)〜(C)に示されるように、千鳥状、格子状又は斜め格子状のエンボス4a〜4cが形成されていることが望ましい。これにより、排出された尿が横流れする際に液流れを遅くできるようになるとともに、吸収体4とトウからなる繊維集合体シート15との間に散布された高吸水性樹脂8が吸収体4の肌面側に形成された千鳥状、格子状又は斜め格子状のエンボス4a〜4cによって前後及び左右方向に移動しづらくなるため好ましい。従って、高吸水性樹脂14が1箇所に寄せ集まりこれが吸水によって膨張して装着感が著しく損なわれるのを防止できるようになる。
【0067】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記トウからなる繊維集合体シート15は、図1に示されるように、前記吸収体4の上面側の全面を覆うように配置されている態様としたが、図7に示されるように、前記吸収体4の上面全体ではなく、前記凹溝22を含む部分的範囲に配置するようにしてもよい。本発明の本来的課題は、前記凹溝の断面積の縮小化を図ることであり、前記トウからなる繊維集合体シート15が凹溝22を含む範囲に部分的に配置されたとしても、凹溝22内に流入した尿を長手方向に素早く拡散させることができ初期の目的を達成することが可能である。
【0068】
(2)前記凹溝22は、種々の形態で配置することができる。前記凹溝22は、図1に示されるように、尿排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、図8(A)に示されるように、パッド幅方向に離間して複数条形成してもよいし、同図8(B)に示されるように、パッド長手方向に離間して不連続線状に形成してもよい。複数条形成した場合には、多くの尿が一気にドッと出たときでも尿の拡散効果をより確実に高めることができるようになる。また、不連続線状に形成した場合には、凹溝22が幅方向両側から脚圧などの外力を受けたときの潰れがより確実に防止できる。パッド幅方向に離間して複数条形成する場合、同図8(A)に示すように、パッド幅方向の中央部に形成し、その両側にそれぞれ1条又は複数条形成するように配置するのが好ましい。
【0069】
(3)また、前記凹溝22の平面形状は、図1に示されるように、パッド長手方向に沿って等幅で形成してもよいし、図9に示されるように、異なる溝幅で形成してもよい。図9(A)では、凹溝22のパッド長手方向の前側端部に、溝幅を拡大した拡幅部22aを設けている。前記拡幅部22aを設けることにより、尿の一時貯留空間が拡大でき、特に切迫性失禁などのように大量の尿が一度にドッと出た場合でも確実に凹溝22で尿を受け止めることが可能となる。前記拡幅部22aは、同図9(B)に示すようにパッド後側の端部に設けてもよいし、同図9(C)に示すように前後端部にそれぞれ設けてもよい。
【0070】
(4)さらに、前記凹溝22は、図10に示されるように、1又は複数の枝分かれ部22b、22cを設けてもよい。前記枝分かれ部22b、22cを設けることにより、凹溝22に一時貯留された尿が凹溝22に沿って吸収体4の広い範囲に拡散するようになり、吸収体4のより広い範囲で尿を吸収できるようになる。図10(A)〜(C)に示される例では、前記枝分かれ部22bとして、パッド長手方向の前側、後側又は前側及び後側のそれぞれに、凹溝22の両側縁から外側に延びるとともに、パッド長手方向の端部側に傾斜する複数、図示例では左右それぞれ3本ずつ設けられている。また、図10(D)〜(F)に示される例では、前記枝分かれ部22cとして、パッド長手方向の前端、後端又は前端及び後端のそれぞれに、凹溝22が放射状に複数に、図示例では5本に枝分かれしたものが設けられている。
【0071】
なお、予め吸収体4の凹溝22の形成予定部分に前記吸収体凹部20を設ける場合、上記凹溝22の形状に沿って吸収体凹部20を設けるようにする。
【0072】
(5)上記形態例では、前記吸収体凹部20は、図2に示されるように、有底の凹溝状に形成していたが、図11に示されるように、表面側から裏面側にかけて貫通したスリット状に形成してもよい。前記吸収体凹部20をスリット状とした場合、前記エンボス部21は、図11に示されるように、吸収体凹部20の底面に配置される吸収体凹部20を貫通した不透液性裏面シート2に対して施すようにする。前記吸収体凹部20をスリット状に形成し凹溝22の底部に吸収体4が介在しない場合であっても、凹溝22の両側面及び底面に存在するトウからなる繊維集合体シート15によって尿を長手方向に沿って素早く拡散することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…失禁パッド、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、8…高吸水性樹脂、10…内側立体ギャザー、11…外側立体ギャザー、12・13…糸状弾性伸縮部材、14…高吸水性樹脂、15…トウからなる繊維集合体シート、20…吸収体凹部、21…エンボス部、22…凹溝
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11