(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主相となる第1有機化合物および該第1有機化合物よりも分子量の小さい第2有機化合物が複合化された有機樹脂と、平均粒径が10〜70nmである複数の無機粒子とを含み、
該複数の無機粒子の一部が凝集体を形成しており、
前記第1有機化合物が、ポリアリレートであり、
前記第2有機化合物が、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの共重合体、および前記第1有機化合物の加水分解化合物のうち少なくともいずれかであり、
前記凝集体の最大径が250nm以下であることを特徴とする誘電体フィルム。
電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備えている電動車両であって、前記インバータが請求項4または請求項5に記載のインバータであることを特徴とする電動車輌。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の誘電体フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【0018】
本実施形態の誘電体フィルム1は、有機樹脂3中に複数の無機粒子5を含む。有機樹脂3は分子量の異なる2種の有機化合物3a、3bによって構成されている。有機樹脂3のうち、分子量の大きい方が第1有機化合物3aであり、有機樹脂3の主相を構成している。
【0019】
有機樹脂3の第2有機化合物3bは、第1有機化合物3aよりも分子量の小さいものである。
【0020】
ここで、主相となる第1有機化合物3aと第2有機化合物3bとが複合化した状態とは、一部に第1有機化合物3aと第2有機化合物3bとが溶解して結合した状態を含むが、後述する赤外吸光分析などの分析層装置により官能基を区別できる状態が確認できるものを言う。
【0021】
無機粒子5は、平均粒径が10〜70nmの無機粒子5を含んでいる。また、この無機粒子5は有機樹脂3中に凝集した状態で存在する場合にも、その凝集体6の最大径は250nm以下である。
【0022】
本実施形態の誘電体フィルム1によれば、有機樹脂3中に存在している無機粒子5の粒径が小さく、また、その無機粒子5は、凝集していた場合にも、凝集体6の最大径が250nm以下であり、無機粒子5の分散が均一分散した状態に近いことから、有機樹脂3に電界が印加されたときに発生する空間電荷を効率的に無機粒子5にトラップすることができる。その結果、空間電荷の偏在による局所電界集中が抑制され、有機樹脂3の破壊電界強度を高めることができる。
【0023】
ここで、無機粒子5としては、アルミナ、酸化チタン、酸化珪素およびペロブスカイト型構造の複合酸化物などの群から選ばれる少なくとも1種が望ましい。なお、無機粒子5が凝集した状態(凝集体6の状態)とは、無機粒子5が2個以上集まった状態のことを言う。凝集体6は、平面視したときの写真から第2有機化合物3b中に複数の無機粒子5が含まれている場合の他、複数の無機粒子5が当該複数の無機粒子5の最大径より短い間隔で集合した状態となっている場合も含まれる意味である。
【0024】
この有機樹脂3が主相を形成する第1有機化合物3aとは別にそれよりも分子量が小さくかつ、第1有機化合物3aとの相溶性が高い第2有機化合物3bを含んでいるため、無機粒子5の粒径が小さくとも第2有機化合物3bとともに存在していることにより高い分散性を保つことができる。この場合、無機粒子5が凝集した凝集体6の最大径が250nmまで大きくなっても、お互いに近接している無機粒子5間には分子量の小さい第2有機化合物3bが存在するため空隙が形成されにくい。このため、有機樹脂3と無機粒子5の界面で絶縁破壊が生じにくく、破壊電界強度の低下を抑制することができる。
【0025】
また、有機樹脂3中に存在する第2有機化合物3bは無機粒子5の周囲もしくは凝集体6の一部を包含して存在しているか、無機粒子5と化学結合して存在していることが望ましい。また、無機粒子5は2個が凝集しているかまたは単独で存在していることが望ましく、凝集体6の個数割合としては 、無機粒子5が1個で存在するものと凝集体6として
存在するものとの合計を全粒子としたときの個数に対し、50%以上であることが望ましい。全粒子の個数に対する凝集体6の個数割合は、例えば、4μm
2以下の面積の所定の領域内を評価して求める。
【0026】
ここで、第1有機化合物3aと第2有機化合物3bとが複合化された状態というのは、赤外吸光分析、核磁気共鳴分析、サイズ排除クロマトグラフィおよび、熱重量分析のうちのいずれかによって、官能基や分子量などが異なる主鎖が2つ以上確認される場合とする。また、主相とは有機樹脂3中に90体積%以上 を占める場合を言う。
【0027】
これに対して、有機樹脂3中に第2有機化合物3bのような低分子量の有機化合物を含まない場合には、無機粒子5が凝集しやすくなるため、無機粒子5が凝集したときの凝集体6の最大径が250nmよりも大きくなりやすい。また、この場合には分子量の小さい有機化合物を介して無機粒子5が接触していないため、凝集体6中に空隙が出来やすく、これにより絶縁性(破壊電界強度)が低下しやすい。
【0028】
また、無機粒子5の平均粒径が70nm よりも大きい場合には、誘電体フィルム1の
破壊電界強度が低くなる。これは、粒径が大きくなるに伴いその粒子自体、あるいはわずかに形成された250nm以上の粗大粒への局所電界集中が高くなるため、第1有機化合物3aや第2有機化合物3bが絶縁破壊を起こすためである と考えられる。なお、粒径
が10nmより小さい無機粒子5については粒径の揃ったものの入手が困難である。
【0029】
本実施形態の誘電体フィルム1では、これを構成する第1有機化合物3aの具体的な高分子化合物としては、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリシクロオレフィン、シアノレジン、ポリエーテルイミドおよびポリフッ化ビニリデンの群から選ばれる1種が望ましい。
【0030】
また、このような第1有機化合物3aに対して適用する第2有機化合物3bとしては第1有機化合物3aの加水分解化合物かまたはポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの共重合体を適用させるのが良い。ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの比率はモル比で40/60〜60/40のものが良い。
【0031】
主相となる第1有機化合物3aと第2有機化合物3bとを同じ高分子化合物を用い、第2有機化合物3bに第1有機化合物3aの加水分解化合物を適用した場合には、無機粒子5の凝集体6の最大径が250nmまで大きくなっても、誘電体フィルム1の破壊電界強度を500V/μm以上にできる。
【0032】
第2有機化合物3bにポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの共重合体を適用した場合には、無機粒子5を含む凝集体6の最大径が100nmのときに、誘電体フィルム1の破壊電界強度を500V/μm以上にできる。
【0033】
第2有機化合物3bとして第1有機化合物3aの加水分解化合物を適用したときの方がポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの共重合体を適用した場合よりも無機粒子5を含む凝集体6の最大径を大きくできるのは、第1有機化合物3aと第2有機化合物3bとに同じ高分子化合物を用いているため、両者間の相溶性が高く、これにより第1有機化合物3aおよび第2有機化合物3bの無機粒子5への接触力が高くなり、空隙などの欠陥を小さくかつ少なくできるためである。
【0034】
この場合、誘電体フィルム1中に含まれる無機粒子5の含有量は0.1〜2体積% で
あることが望ましい。また、第1有機化合物3aに対する第2有機化合物3bの割合は0.01〜10質量% であることが望ましい。また、第2有機化合物3bの割合は他方で
は無機粒子5に対して5〜20質量%であることが望ましい。
【0035】
誘電体フィルム1を構成する無機粒子5の存在状態および平均粒径は電子顕微鏡観察して得られた平面視したときの写真から判定する。凝集体6の個数割合とは 、無機粒子5
が1個で存在するものと凝集体6として存在するものを全粒子としたときの個数割合である。
【0036】
また、平均粒径はインターセプト法により求める。無機粒子5の体積比率は誘電体フィルム1を平面視したときの写真に現れる無機粒子5の輪郭の総面積から求める。有機樹脂3中に第1有機化合物3aおよび第2有機化合物3bが存在していることは、上述した赤外吸光分析、核磁気共鳴分析、サイズ排除クロマトグラフィおよび、熱重量分析のうちのいずれかの方法により求める。
【0037】
図2(a)は、誘電体フィルムの表面に金属膜を有する構造を模式的に示す断面図であり、(b)は、本発明の第1実施形態のフィルムコンデンサを示す外観斜視図である。
【0038】
図2(b)に示す第1実施形態のフィルムコンデンサAは、誘電体フィルム1の両面に金属膜7を備えた本体部A1に、外部電極8が設けられた構成を基本的な構成とするものであり、必要に応じてリード線9が設置される。
【0039】
この場合、本体部A1、外部電極8およびリード線9の一部は、必要に応じて絶縁性および耐環境性の点から外装部材10に覆われていてもよい。
【0040】
本実施形態の誘電体フィルム1は、
図2(a)(b)に示した積層型に限らず、巻回型のフィルムコンデンサBにも適用することができる。
【0041】
図3は、本発明のフィルムコンデンサの第2実施形態の構成を模式的に示した展開斜視図である。
【0042】
本実施形態のフィルムコンデンサBは、巻回された金属化フィルム11a、11bにより構成される本体部13の対向する端面に外部電極15a、15bとしてメタリコン電極が設けられている。
【0043】
金属化フィルム11a、11bは、誘電体フィルム17a、17bの表面に金属膜19a、19bを有する構成である。この場合、金属膜19a、19bは誘電体フィルム17a、17bの幅方向の一端側に、この誘電体フィルム17a、17bにおいて露出部分となる金属膜19a、19bの形成されていない部分(以下、金属膜非形成部20a、20bという場合がある。)が長手方向に連続して残るように形成されている。
【0044】
金属化フィルム11a、11bは、金属膜非形成部20a、20bが誘電体フィルム17a、17bの幅方向に互いに逆方向になるように配置され、幅方向に広がるように金属膜19a、19bをずらした状態である。
【0045】
すなわち、フィルムコンデンサBは、誘電体フィルム17aと金属膜19aとによって構成される金属化フィルム11aと、誘電体フィルム17bと金属膜19bとによって構成される金属化フィルム11bとが、
図2に示すように重ねられ巻回されている。
【0046】
図4は、本発明の連結型コンデンサの一実施形態の構成を模式的に示した斜視図である。
図4においては構成を分かりやすくするために、ケースならびにモールド用の樹脂を省略して記載している。本実施形態の連結型コンデンサCは、複数個のフィルムコンデンサBが一対のバスバー21、23により並列接続された構成となっている。バスバー21、23は、外部接続用の端子部21a、23aとフィルムコンデンサBの外部電極15a、15bにそれぞれ接続される引出端子部21b、23bにより構成されている。
【0047】
フィルムコンデンサBまたは連結型コンデンサCを構成する誘電体フィルムとして、本実施形態の誘電体フィルム1を適用すると、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどによって形成されていた従来の誘電体フィルムよりも厚みを薄くできるため、フィルムコンデンサBおよび連結型コンデンサCのサイズの小型化とともに高容量化を図ることができる。
【0048】
また、主相となる第1有機化合物3aとしてポリアリレートなど特定の有機樹脂を適用した場合には、フィルムコンデンサBおよび連結型コンデンサCの耐熱性も高められるため、高温域(例えば、温度が80℃以上の雰囲気)での使用においても静電容量および絶縁抵抗の低下の小さいコンデンサ製品を得ることができる。なお、連結型コンデンサCは、
図4に示したような平面的な配置の他に、フィルムコンデンサBの平坦な面同士が重なるように積み上げた構造であっても同様の効果を得ることができる。
【0049】
図5は、本発明のインバータの一実施形態の構成を説明するための概略構成図である。
図5には、整流後の直流から交流を作り出すインバータDの例を示している。本実施形態のインバータDは、
図5に示すように、スイッチング素子(例えば、IGBT(Insulate
d gate Bipolar Transistor))により構成されるブリッジ回路31と、電圧安定化のた
めにブリッジ回路31の入力端子間に配置された容量部33とを備えた構成となっている。ここで、容量部33として上記のフィルムコンデンサBまたは連結型コンデンサCが適用される。
【0050】
なお、このインバータDは、ダイオードにより構成される整流回路35やこれに続いて電源Pに接続されることになる。一方、ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータ(モータM)に接続されることになる。
【0051】
インバータDの容量部33に上記した本実施形態のフィルムコンデンサBまたは連結型コンデンサCを適用すると、インバータDに占める容量部33の体積を小さくすることができるため、より小型化かつ静電容量の大きい容量部33を有するインバータDを得ることができる。また、高温域においても変調波の変動の小さいインバータDを得ることができる。
【0052】
図6は、本発明の電動車輌の一実施形態を示す概略構成図である。
図6には、電動車輌Eとしてハイブリッド自動車(HEV)の例を示している。
【0053】
図6における符号41は駆動用のモータ、43はエンジン、45はトランスミッション、47はインバータ、49は電源(電池)、51a、51bは前輪および後輪である。
【0054】
この電動車輌Eは、駆動源としてモータ41またはエンジン43、もしくは両方の出力がトランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される機能を主として備えており、電源49はインバータ47を介してモータ41に接続されている。
【0055】
また、
図6に示した電動車輌Eには、電動車輌E全体の統括的な制御を行う車輌ECU53が設けられている。車輌ECU53には、イグニッションキー55や図示しないアクセルペダル、ブレーキ等の電動車輌Eからの運転者等の操作に応じた駆動信号が入力される。この車輌ECU53は、その駆動信号に基づいて指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車輌Eを駆動する。
【0056】
本実施形態のフィルムコンデンサBまたは連結型コンデンサCを容量部33として適用したインバータDを、例えば、
図6に示すような電動車輌Eに搭載すると、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどによって形成されていた従来の誘電体フィルムを適用したフィルムコンデンサや連結型コンデンサを用いたインバータに比較して、車輌の重量を軽くできることから、その分、燃費を向上させることが可能になる。また、エンジンルーム内における自動車の制御装置の占める割合を低くできる。また、エンジンルーム内に耐衝撃性を高めるための機能を内装させることができることから車輌の安全性をさらに向上させることが可能になる。
【0057】
なお、本実施形態のインバータDは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)や電動自転車、発電機、太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【0058】
本実施形態のフィルムコンデンサBは、例えば、以下に示すような製造方法によって得ることができる。まず、誘電体フィルム1の母材(第1有機化合物3a)となる高分子化合物を用意する。
【0059】
高分子化合物としては、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル
、ポリシクロオレフィン、シアノレジン、ポリエーテルイミドおよびポリフッ化ビニリデンの群から選ばれる1種の高分子化合物が好適である。
【0060】
また、第2有機化合物3bとなる高分子化合物として、上記の高分子化合物の加水分解物およびポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの共重合体を用意する。
【0061】
無機粒子5としては、アルミナ、酸化チタン、酸化珪素などの他にペロブスカイト型構造の複合酸化物などを適用できる。
【0062】
誘電体フィルム1を形成する場合、例えば、基材としてPETフィルムを準備し、この表面に、上記した高分子化合物と無機粒子5と混合した複合体を調製し、これを成膜することにより誘電体フィルム1を得る。なお、成膜には、ドクターブレード法、ダイコータ法およびナイフコータ法等から選ばれる一種の成形法を用いる。
【0063】
成膜に使用する溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン又は、これらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤を用いる。
【0064】
次に、得られた誘電体フィルム1の表面にAl(アルミニウム)などの金属成分を蒸着することによって金属膜19a、19bを形成し、次いで、金属膜19a、19bを形成した誘電体フィルム1を、
図3に示すように巻回させてフィルムコンデンサBの本体部13を得る。
【0065】
次に、本体部13の金属膜19a、19bが露出した端面に外部電極15a、15bとしてメタリコン電極を形成する。外部電極15a、15bの形成には、例えば、金属の溶射、スパッタ法、メッキ法などが好適である。また、ここで、外部電極15a、15bにハンダなどの接合材を用いてリード線9を形成しても良く、次いで、外部電極15a、15b(リード線9を含む)を形成した本体部13の表面に外装部材10を形成することによって本実施形態のフィルムコンデンサBを得ることができる。
【0066】
連結型コンデンサCは、フィルムコンデンサBを複数個(本実施形態においては4個)並べた状態とし、本体部13の両端にそれぞれ形成された外部電極15a、15bに接合材を介してバスバー21、23を取り付けることによって得ることができる。
【0067】
なお、連結型コンデンサCを樹脂でモールドするタイプに形成する場合には、バスバー21、23を取り付けて連結したフィルムコンデンサBをケースに入れ、次いで、ケース内に樹脂を充填することによって作製する。
【実施例】
【0068】
具体的な材料の選択及び寸法の設定等を行って金属化フィルムを作製し、以下の評価を行った。
【0069】
まず、無機粒子として、平均粒径が10〜200nmのアルミナ粉末を準備した。第1有機化合物となる高分子化合物にはポリアリレートを準備した。
【0070】
第2有機化合物なる高分子化合物としては、ポリアリレートの加水分解物と、ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンとの共重合体を用意した。第2有機化合物の添加量は
作製した試料のいずれについても無機粒子を100質量部としたときに17質量部とした。
【0071】
次に、無機粒子をポリアリレート中に分散させてスラリーを調製した。このときトルエンを希釈剤として加えた。
【0072】
この後、上記スラリーをコーターを用いてPETフィルム上に塗布してシート状に成形して誘電体フィルムを作製した。
【0073】
次に、誘電体フィルムからPETフィルムを剥がした後、誘電体フィルムの両面に真空蒸着法により平均厚みが75nmのAlの電極層を形成して金属化フィルムを作製した。
【0074】
次に、得られた金属化フィルムについて破壊電界強度を測定した。破壊電界強度は、金属化フィルムの金属膜間に、毎秒10Vの昇圧速度で直流電圧を印加し、漏れ電流値が1.0mAを越えた瞬間の電圧値から求めた。
【0075】
誘電体フィルムを構成する無機粒子の存在状態は電子顕微鏡観察して得られた写真から判定した。観察する領域は500nm×500nmとした。まず、無機粒子の凝集体の有無を判定した。この場合、作製した試料No.1〜10には、いずれにも無機粒子の凝集体が見られた。
【0076】
無機粒子が2個である凝集体と1個で存在する個数を合計した個数割合は、無機粒子が1個で存在するものと無機粒子が2個以上で凝集体として存在するものの合計個数に対する割合として求めた。
【0077】
無機粒子5の粒径、体積比率は誘電体フィルムを平面視したときの写真に現れる無機粒子の輪郭の総面積から求めた。有機樹脂中に第1有機化合物および第2有機化合物が存在していることは核磁気共鳴分析を用いて判定した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、平均粒径が10〜70nmである無機粒子を用い、有機樹脂として第1有機化合物と第2有機化合物とを複合化して形成したものを適用した試料(試料No.1〜8)では、無機粒子の凝集体の最大径が250nm以下であった。このときの破壊電界強度が470V/μm以上であった。
【0080】
この中で、第2有機化合物として第1有機化合物を加水分解させたものを用いた試料(試料No.1、3および5)は、第2有機化合物としてポリオキシプロピレンとポリオキ
シエチレンとの共重合体を用いた試料(試料No.2、4、6、7および8)に比較して、凝集体の最大径が2倍ほど大きくても同じような破壊電界強度が得られた。
【0081】
これらの試料(試料1〜8)は、観察した範囲において、無機粒子が2個以下で凝集している個数割合がいずれも50%以上であった。
【0082】
これに対し、無機粒子として粒径(平均粒径)が200nmのアルミナ粒子を用いた試料(試料No.9)および有機樹脂中に第2有機化合物を含有させなかった試料(試料No.10)は、いずれも凝集体の最大径が400nm以上と大きく、破壊電界強度が390V/μm以下であった。なお、第1有機化合物のみによって作製した試料(試料No.11)の破壊電界強度も420V/μmと低かった。