(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車用空調装置において、暖房用の熱交換器として、ヒートポンプサイクルの室内コンデンサを使用する場合など、熱交換器がかなりの高温になるため、熱交換器をそのまま挿入配置すると、空調ケースの熱劣化を招き、耐久性が低下するという問題があった。
また、複数箇所の温度を独立して制御可能な自動車用空調装置において、暖房用の熱交換器は、仕切部材の切欠き部に挿入されて、第1空気通路と第2空気通路とに跨がって配置されるため、この部分で第1空気通路側の空気と第2空気通路側の空気とが混ざり合ってしまい、これにより両通路の空気温度を独立に制御することが妨げられるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みて、自動車用空調装置において、暖房用の熱交換器による空調ケースの熱劣化を抑制できるようにすることを課題とする。本発明は、更に、複数箇所の温度を独立して制御可能な自動車用空調装置において、第1空気通路側の空気と第2空気通路側の空気とが混ざり合うのを抑制して温調制御の独立性を高めることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、暖房用の熱交換器は、空調ケースとの接触部を耐熱カバーで覆われる構成とする。
本発明では、更に、複数箇所の温度を独立して制御可能な自動車用空調装置の場合に、前記耐熱カバーは、少なくとも、通風方向前面側に、仕切部材の切欠き部の端縁と同方向に延在して、当該端縁と接触する枠部材を備える構成とする。
ここで、前記仕切部材の切欠き部の端縁と、前記枠部材との接触部は、いずれか一方に凹溝が形成され、他方が前記凹溝に嵌合する凸条をなして、互いに嵌合するとよい。
また、前記暖房用の熱交換器は、前記耐熱カバーに覆われた状態で、前記空調ケースの外面に形成された着脱口から、前記切欠き部に挿入され、前記凹溝と前記凸条との嵌合部は、挿入方向に延在して、挿入時のガイドを兼ねる構成とするとよい。
更に、前記枠部材は、前記耐熱カバーの、通風方向前面側の他、通風方向後面側にも備えられるとよい。
更にまた、前記耐熱カバーで覆われた前記熱交換器と直列に、別の熱交換器を備える場合、これら2つの熱交換器間の空隙を前記耐熱カバーの前記枠部材と前記仕切
部材とで仕切る構成とするとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温となる暖房用の熱交換器を耐熱カバーにより覆うことで空調ケースの熱劣化を抑制できる。更には、複数箇所の温度を独立して制御可能な自動車用空調装置の場合に、この耐熱カバーを工夫することで、第1空気通路と第2空気通路との間のシール性を向上させることができ、温調制御の独立性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る自動車用空調装置の全体構成図、
図2は同上の空調装置の要部断面図である。
空調装置(HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット)1は、自動車(エンジン駆動の自動車、電気自動車、ハイブリッド車を含む)の車室内に配設され、車室内空気(内気)又は車室外空気(外気)を取込んで温調し、それを車室内に吹き出す。
【0011】
空調装置1は、一端側に空気取込み口を有し、他端側に空気吹出し口を有して、内部に空気通路3を形成する樹脂製の空調ケース2を含んで構成される。
空気通路3の入口側には、内気取込み口4及び外気取込み口5と、これらの取込み口4、5を選択的に切換える内外気切換ドア6と、フィルタ7と、取込み口4、5から空気(内気又は外気)を取込んで送風するブロア8と、が設けられる。
空気通路3のブロア8の下流側には、冷房用熱交換器であるエバポレータ9が設けられる。
【0012】
エバポレータ9は、ヒートポンプサイクルの冷房用熱交換器であり、ヒートポンプサイクルの冷房運転時に、室外コンデンサ(図示せず)にて凝縮された冷媒が減圧手段を介して流入し、流入した冷媒は、空気との熱交換により加熱されて蒸発する。このとき、エバポレータ9を通流する空気が冷却されて、車室内の冷房に供される。尚、ヒートポンプサイクルの暖房運転時には、冷媒はエバポレータ9をバイパスする。
【0013】
空調装置1は、また、左右独立型で、空気通路3のエバポレータ9下流側を並列な第1空気通路11と第2空気通路12とに仕切る仕切部材(センタープレート)10を含んで構成される。
従って、空気通路3のエバポレータ9下流側は、垂直に配置される仕切部材10により、左右の並列な第1空気通路11と第2空気通路12とに仕切られている。
尚、空調ケース2は仕切部材10の部分で分割されていて、仕切部材10を挟み込んだ状態で一体に接合される。
【0014】
第1空気通路11はまた、仕切壁13により、加熱用通路15と、バイパス通路17とに仕切られている。尚、
図1では加熱用通路15の横にバイパス通路17を図示しているが、実際には、
図2に示すように、加熱用通路15の上側にバイパス通路17が形成される。
第2空気通路12もまた、仕切壁14により、加熱用通路16と、バイパス通路18とに仕切られている。尚、
図1では加熱用通路16の横にバイパス通路18を図示しているが、実際には、
図2に示すように、加熱用通路16の上側にバイパス通路18が形成される。
図2において、第2空気通路12は、第1空気通路11に対し、紙面の奥側にある。
【0015】
2つの加熱用通路15、16には、暖房用熱交換器として、室内コンデンサ19と、ヒータコア20とが直列に設けられる。詳しくは、ヒータコア20が上流側に設けられ、室内コンデンサ19が下流側に設けられる。尚、室内コンデンサ19及びヒータコア20は、各1つで、仕切部材10に形成された切欠き部31、32に挿入され、2つの加熱用通路15、16に跨がって配置される。
従って、バイパス通路17、18は、2つの加熱手段(室内コンデンサ19とヒータコア20)をバイパスしている。
【0016】
室内コンデンサ19は、ヒートポンプサイクルの暖房用熱交換器であり、ヒートポンプサイクルの暖房運転時に、コンプレッサ(図示せず)にて圧縮された高温高圧のガス冷媒が流入し、空気との熱交換により凝縮液化される。このとき、室内コンデンサ19を通流する空気が加熱されて、車室内の暖房に供される。尚、ヒートポンプサイクルの冷房運転時には、後述するエアミックスドア21、22の閉鎖により、空気との熱交換は行われず、冷媒はそのまま通過する。
【0017】
ヒータコア20は、エンジン駆動の自動車の場合に適した補助の加熱手段であり、エンジン冷却水(エンジンを冷却して受熱したエンジン冷却水)を熱媒体として空気を加熱する。
従って、電気自動車の場合は、補助の加熱手段として、ヒータコア20に代えて、電気ヒータ、特にPTCヒータを使用する。PTCヒータは、電気的に加熱されたヒータエレメントの中を空気を通過させることで、空気を加熱する。電気ヒータとして、特にPTCヒータを用いることで、温度制御が容易となる。
【0018】
第1空気通路11における加熱用通路15及びバイパス通路17の入口側には、エアミックスドア21が設けられる。
エアミックスドア21は、加熱用通路15及びバイパス通路17へ流れる空気の割合を制御するもので、冷房運転時には加熱用通路15への空気の流れを遮断する機能を有している。
第2空気通路12における加熱用通路16及びバイパス通路18の入口側にも、エアミックスドア22が設けられる。
エアミックスドア22は、加熱用通路16及びバイパス通路18へ流れる空気の割合を制御するもので、冷房運転時には加熱用通路16への空気の流れを遮断する機能を有している。
2つのエアミックスドア21、22が別々に開度調整可能に設けられることで、左右独立した温度調整が可能となる。
【0019】
第1空気通路11の出口側(加熱用通路15とバイパス通路17との出口側合流部)には、温調された空気を運転席側に吹き出すべく、運転席側のフェイス吹出し口23と、運転席側のフット吹出し口25とが設けられ、これらはそれぞれのドアにより開閉される。
第2空気通路12の出口側(加熱用通路16とバイパス通路18との出口側合流部)には、温調された空気を助手席側に吹き出すべく、助手席側のフェイス吹出し口24と、助手席側のフット吹出し口26とが設けられ、これらはそれぞれのドアにより開閉される。
空気吹出し口としては、この他、デフ吹出し口27が設けられる。但し、デフ吹出し口27は、運転席側と助手席側とで均一な温度の空気を吹き出すべく、左右共通に配置される。
【0020】
次に、暖房用熱交換器である室内コンデンサ19(及び
ヒータコア20)の取付けの態様について、
図3〜
図5を参照して説明する。
図3は空調装置の要部平面図、
図4は室内コンデンサ及び耐熱カバーの分解斜視図、
図5は室内コンデンサ等の配置状態を示す空調装置の斜視断面図である。
【0021】
暖房用の加熱手段を室内コンデンサ19とヒータコア(又はPTCヒータ)20との2つにすると、その分、空調装置1が大型化するので、これらはできるだけ近接させて配置する。
室内コンデンサ19とヒータコア20は、空調ケース2の外面に形成される2つの着脱口33、34のそれぞれから挿入されて取付けられる。
そして、2つの着脱口33、34は、空調ケース2の互いに異なる面に形成される。従って、室内コンデンサ19とヒータコア20は、空調ケース2に対し互いに異なる方向から挿入されて取付けられる。
【0022】
より具体的には、空調ケース2の底面に室内コンデンサ19用の着脱口33(
図2)が形成され、室内コンデンサ19は空調ケース2に対し下方から挿入されて取付けられる。
また、空調ケース2の側面にヒータコア20用の着脱口34(
図3)が形成され、ヒータコア20は空調ケース2に対し側方から挿入されて取付けられる。
このように、2つの加熱手段を空調ケース2に対し異なる方向から挿入して取付ける構成とすることにより、両者の空調ケース2外の部位が互いに干渉するのを回避できる。
【0023】
室内コンデンサ19の取付けの態様について、更に詳しく説明する。
室内コンデンサ19は、
図4に示されるように、空調ケース2との接触部をフレーム形状の耐熱カバー(耐熱樹脂製のカバー)35a、35bで覆われている。
言い換えれば、耐熱カバー35a、35bは、室内コンデンサ19を収納し、室内コンデンサ19の外面のうち、空気の通流部を除き、空調ケース2との接触部を覆う。
耐熱カバー35a、35bは、前側カバー35aと後側カバー35bとの半割構造で、前後2つのカバー35a、35b間に室内コンデンサ19を収納する。
【0024】
各カバー35a、35bは、
図4に示されるように、上枠、下枠及び左右の側枠からなる矩形のフレームであるが、後に詳述するように、前側カバー35aの場合は前面側、後側カバー35bの場合は後面側にて、上枠の幅方向中央部と下枠の幅方向中央部とを連結する枠部材(センターフレーム)36a、36bが備えられる。
耐熱カバー35a、35bの材料(耐熱樹脂)としては、PBT−GF30(ISO(JIS)材質表示)が好適である。
【0025】
耐熱カバー35a、35bは、その通風方向前面側、すなわち前側カバー35aの幅方向中央部に、上下方向に連続的に延在して、仕切部材(センタープレート)10の切欠き部31の前側の端縁31aと接触する枠部材(センターフレーム)36aを備える。従って、枠部材36aは、仕切部材10の切欠き部31の端縁31aと同方向に延在して、当該端縁31aと接触する。
耐熱カバー35a、35bは、また、その通風方向後面側、すなわち後側カバー35bの幅方向中央部に、上下方向に連続的に延在して、仕切部材(センタープレート)10の切欠き部31の後側の端縁31bと接触する枠部材(センターフレーム)36bを備える。従って、枠部材36bは、仕切部材10の切欠き部31の端縁31bと同方向に延在して、当該端縁31bと接触する。
【0026】
本実施形態(
図3)では、前記枠部材36a、36bと接触する仕切部材10の切欠き部31の端縁31a、31bに、前記枠部材36a、36bが嵌合する凹溝37a、37bが備えられる。
従って、仕切部材10の切欠き部31の端縁31a、31bと、枠部材36a、36bとの接触部は、端縁31a、31bの側に凹溝37a、37bが形成され、枠部材36a、36bの側が前記凹溝37a、37bに嵌合する凸条をなして、互いに嵌合する。
言い換えれば、切欠き部31の端縁31a、31bに断面U字状(コ字状)のガイドレール部が形成される。
従って、室内コンデンサ19は、耐熱カバー35a、35bに収納された状態で、空調ケース2の外面に形成された着脱口33から、仕切部材10の切欠き部31に挿入され、前記凹溝37a、37bと前記凸条(枠部材36a、36b)との嵌合部は、挿入方向に延在して、挿入時のガイドを兼ねる。
【0027】
図6には
図3の変形例を示す。
ここでは、仕切部材10の切欠き部31の端縁31a、31bと接触する枠部材36a、36bの側に、前記端縁31a、31bが嵌合する凹溝38a、38bが備えられる。
従って、仕切部材10の切欠き部31の端縁31a、31bと、枠部材36a、36bとの接触部は、枠部材36a、36bの側に凹溝38a、38bが形成され、端縁31a、31bの側が前記凹溝38a、38bに嵌合する凸条をなして、互いに嵌合する。
言い換えれば、枠部材36a、36bに断面U字状(コ字状)のガイドレール部が形成される。
従って、室内コンデンサ19は、耐熱カバー35a、35bに収納された状態で、空調ケース2の外面に形成された着脱口33から、仕切部材10の切欠き部31に挿入され、前記凹溝38a、38bと前記凸条(端縁31a、31b)との嵌合部は、挿入方向に延在して、挿入時のガイドを兼ねる。
【0028】
また、
図3又は
図6において、耐熱カバー35a、35bで覆われ
る室内コンデンサ19と直列に、かつ近接して、ヒータコア20が配置される。室内コンデンサ19とヒータコア20との間の空隙は、耐熱カバー35aの枠部材36aと仕切
部材10(詳しくは仕切
部材10の切欠き部32の端縁)とで仕切る構成となっている。
【0029】
上記の実施形態によれば、暖房用熱交換器である室内コンデンサ19は、空調ケース2との接触部を耐熱カバー35a、35bで覆われているので、空調ケース2の熱劣化を防止できる。但し、本効果については、左右独立型の自動車用空調装置に限らず、空気取込み口及び空気吹出し口を有する空調ケースと、この空調ケース内に配置されて、空気を加熱する熱交換器と、この熱交換器を通過する空気量を制御するエアミックスドアと、を含んで構成される、自動車用空調装置において、得ることができる。
【0030】
また、上記の実施形態によれば、耐熱カバー35a、35bは、仕切部材10の切欠き部31の端縁31a、31bと同方向に延在して、当該端縁31a、31bと接触する枠部材36a、36bを備えているので、第1空気通路11と第2空気通路12との間のシール性(止風性能)を向上させることができ、温調制御の独立性を高めることができる。
【0031】
また、上記の実施形態によれば、仕切部材10の切欠き部31の端縁31a、31bと、枠部材36a、36bとの接触部は、いずれか一方に凹溝37a、37b(又は38a、38b)が形成され、他方が前記凹溝に嵌合する凸条をなして、互いに嵌合する嵌合部となることにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、凹部と凸部との嵌合によるラビリンス効果で、第1空気通路11と第2空気通路12との間のシール性(止風性能)を向上させることができる。これにより、パッキン等を使用せずとも、シール性を向上させることができ、部品点数削減、コスト低下に寄与し得る。
【0032】
また、上記の実施形態によれば、暖房用熱交換器である室内コンデンサ19は、耐熱カバー35a、35bに覆われた状態で、空調ケース2の外面に形成された着脱口33から、仕切部材10の切欠き部31に挿入され、前記凹溝と前記凸条との嵌合部は、挿入方向に延在して、挿入時のガイドを兼ねることにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、挿入時のガイドを備えることで、室内コンデンサ19の組み付けが容易となり、また、このガイドがシール部を兼ねるので、組み付けと同時にシール性を確保することができる。
【0033】
また、上記の実施形態によれば、枠部材36a、36b(及び嵌合構造)は、耐熱カバー35a、35bの、通風方向前面側、すなわち前側カバー35aの他、通風方向後面側、すなわち後側カバー35bにも備えられることにより、第1空気通路11と第2空気通路12とのシール性を十分に向上させることができる。但し、通風方向前面側の方が通風方向後面側より通気抵抗が大きく、空気洩れの影響が顕著となるので、通風方向前面側、すなわち前側カバー35aにのみ、
枠部材36a(及び嵌合構造)を設けるようにしてもよい。
【0034】
上記の実施形態では、補助の加熱手段であるヒータコア20については、室内コンデンサ19と比較して、耐熱上の問題は生じないため、耐熱ケースは使用していない。この場合、第1空気通路11と第2空気通路12とに跨がることによるシール性は、パッキン等を使用することで、解決できる。
【0035】
しかも、上記の実施形態では、室内コンデンサ19とヒータコア20との間の空隙を、耐熱カバー35aの枠部材36aと仕切板10(詳しくは仕切板10の切欠き部32の端縁)とで仕切る構成としたことにより、この部分での仕切りを確実なものとして、温調制御の独立性を高めることができる。
【0036】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。