(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空間部は、前記第2の面の一部を前記第1の面に向けて窪ませて凹形状に形成することによって、または、凹部を有するベースプレートを前記凹部が前記第2の面に向かい合うように前記本体に取り付けることによって形成されている、請求項1に記載のバルブ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について説明する。図面の説明において同要素には同符号を付し、重複する説明を省略する。図面における部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0015】
(実施形態)
図1〜
図4を参照して、実施形態に係る流量調節弁10(バルブに相当する)は、概説すると、弁室31と、弁室31の底面を形成する第1の面21に開口する連通口32と、連通口32に連通する第1通路33と、弁室31に連通する第2通路34とを有する本体20を有している。流量調節弁10は、連通口32に対して接近および離間が自在な弁体40と、弁体40に接続され連通口32とは反対の方向に伸びているステム50と、ステム50を軸方向に進退移動させて連通口32に対する弁体40の位置を調節する駆動部60と、弁体40に接続されて弁室31を区画し、弁体40が移動するのに伴って変位する隔膜70と、を有している。
図4にも示すように、流量調節弁10は、本体20の外側面のうち弁体40の移動方向に沿って第1の面21とは反対側に位置する第2の面22の側に設けられる空間部80を有している。そして、弁体40の移動方向に沿って連通口32が第2の面22に投影される部分S(
図4(B)を参照)が、少なくとも空間部80に含まれている。空間部80を形成することによって、高温流体を流したときに生じる連通口32周辺部の弁体40に向かう方向への変形を低減することが可能となる。実施形態にあっては、空間部80は、第2の面22の一部を第1の面21に向けて窪ませて凹形状に形成することによって形成されている。なお、実施形態の説明においては、
図4(B)を参照して、本体20の図中上面が「第1の面21」に相当し、本体20の図中下面が「第2の面22」に相当し、本体20の図中左面が「第3の面23」に相当し、本体20の図中右面が「第4の面24」に相当する。以下、詳述する。
【0016】
本体20の上方にはボンネット90が配置され、本体20の下方にはベースプレート100が配置されている。ボンネット90は中空筒形状を有し、ベースプレート100はフランジ形状を有している。ボンネット90、本体20、およびベースプレート100は、ボルトおよびナット(図示せず)によって一体的に締結されている。本体20は、ボンネット90とベースプレート100との間に挟持固定されている。
【0017】
本体20は、その上部に、本体20と隔膜70とによって形成される弁室31を有している。弁室31の底面に弁座面35が形成され、弁座面35の中心に連通口32が開口している。弁室31の上方には隔膜押さえ110の嵌合部111を受容する凹部36が設けられている。凹部36の底面には隔膜70の環状係止部71が嵌合する環状凹部37が設けられている。
【0018】
本体20は、樹脂製、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)製である。本体20の材質にPTFEを用いているが、本発明はこの場合に限定されるものではない。本体20の材質として、流体の特性に応じて他のフッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニリデンフルオライド(以下、PVDF)、その他のプラスチック、または金属でも良い。
【0019】
弁体40は、連通口32に対して接近および離間が自在である。隔膜70は、弁体40に接続されて弁室31を区画し、弁体40が移動するのに伴って変位する。実施形態においては、弁体40は、隔膜70の一部として、隔膜70と一体的に形成されている。弁体40は、連通口32に向かって先細りとなるテーパ形状の先端部を有し、連通口32に対する弁体40の位置を調節することによって流量を調節自在である。説明の便宜上、流量調節用の弁体40を「第1弁体部41」と称する。
【0020】
隔膜70はPTFE製である。隔膜70は、上記の第1弁体部41と、第1弁体部41から径方向外方へ隔離した位置に形成された第2弁体部42と、第2弁体部42から径方向外方へ連続して形成された薄膜部72と、薄膜部72の外周縁に形成された環状係止部71とを有している。隔膜70の図中下面は、流体に接触する側の接液面である。第1弁体部41は、接液面の中心から図中下方に向けて突設されている。第1弁体部41は、第2弁体部42の先端を越えて連通口32に向かって伸びている。第2弁体部42は、本体20の弁座面35に向かって突出している。第2弁体部42は、弁座面35に圧接することによって流路を全閉状態とする。第2弁体部42は、先端が断面円弧形状を有し、第1弁体部41を取り囲むように円環凸形状を有している。環状係止部71は、断面L字形状を有している。隔膜70の上部には、後述する第2ステム52に接続される接続部73が一体的に設けられている。接続部73は、第1弁体部41および第2弁体部42の位置に対応して、第1弁体部41および第2弁体部42とは反対の方向、つまり図中上方に向けて突出している。隔膜70は、本体20の環状凹部37に環状係止部71を嵌め合わせた状態において、本体20と隔膜押さえ110とによって挟持固定される。このとき、環状係止部71の上には弾性部材として圧縮バネ120が介在されている。
【0021】
流量調節弁10が全閉時には、第2弁体部42と弁座面35とが圧接されて全閉シールを行う。開度を大きくすると、隔膜70は上昇し、第1弁体部41および第2弁体部42は隔膜70の上昇に伴って全開まで上昇する。全開時においても第1弁体部41が連通口32から抜けることはなく、全閉から全開まで流量調節が行われる。
【0022】
ステム50は、第1弁体部41に接続され連通口32とは反対の方向に伸びている。実施形態においては、ステム50は、第1ステム51と、第1ステム51にネジ部を介して接続される第2ステム52とを有している。第2ステム52の下端部に、隔膜70の接続部73が接続される。
【0023】
第1ステム51はPVDF製である。第1ステム51は、下端部が開口された中空筒形状を有している。第1ステム51の内周面には、第2ステム52の雄ネジ部と噛み合う雌ネジ部が設けられ、外周面には、雄ネジ部が設けられている。第1ステム51の下端部には、径方向外方に拡がるストッパー部53が設けられている。第1ステム51の上端部には、第1ステム51を回動させるハンドル54が取り付けられている。
【0024】
第2ステム52はPVDF製である。第2ステム52の上部の外周面には第1ステム51の雌ネジ部と噛み合う雄ネジ部が設けられている。第2ステム52の下部の外周は六角形状に形成され、下端部に隔膜70の接続部73が捩じ込まれて接続されている。第2ステム52の中央部には、径方向外方に突出する鍔部55を有している。鍔部55の側面には、Oリングを装着する溝部が形成されている。鍔部55は、ボンネット90の内周面に対して摺動自在である。
【0025】
隔膜押さえ110はPVDF製である。隔膜押さえ110は、上部に位置する挿入部112と、下部に位置する嵌合部111と、挿入部112と嵌合部111との間の中央部に位置する鍔部113とを有している。挿入部112、嵌合部111、および鍔部113は、いずれも外周が六角形状を有している。隔膜押さえ110の上面には、付勢体である圧縮バネ120の下部を収納する環状凹部114が形成されている。圧縮バネ120の上部は、第2ステム52の鍔部55の下面に当接している。圧縮バネ120は隔膜押さえ110の環状凹部114と第2ステム52の鍔部55とによって挟持されている。圧縮バネ120は、隔膜70を本体20に向けて押し付ける方向の弾発力を隔膜押さえ110に付勢する。隔膜押さえ110の中央部には、内周面が六角形状を有する貫通孔115が形成されている。隔膜押さえ110の挿入部112および鍔部113は、ボンネット90の中空部に回動不能に嵌り合っている。本体20は、内周面が六角形状を有する凹部36を有している。隔膜押さえ110の嵌合部111は、本体20の凹部36に回動不能に嵌り合っている。貫通孔115に、第2ステム52の下部が挿通される。これによって、隔膜押さえ110は、第2ステム52を上下移動自在かつ回動不能に支持する。
【0026】
ボンネット90はPVDF製である。ボンネット90の上端部には、第1ステム51が挿通される通孔が形成されている。通孔の内周面には、第1ステム51の雄ネジ部と噛み合う雌ネジ部が設けられている。ボンネット90の中空部の下部内周は、隔膜押さえ110の挿入部112および鍔部113を回動不能に嵌め合う六角形状に形成されている。
【0027】
ベースプレート100はPVDF製である。ベースプレート100は、ボルト102を挿通する通孔がフランジ部101に設けられている。流量調節弁10を装置床面などの設置面に設置するため、通孔に挿通したボルト102が設置面に締結される。
【0028】
実施形態の駆動部60は、手動操作によって、ステム50を軸方向に進退移動させて連通口32に対する弁体40の位置を調節する。駆動部60は、ねじの噛み合いを利用するねじ式によってステム50を移動させている。したがって、実施形態にあっては、駆動部60は、ボンネット90の通孔の内周面の雌ネジ部、第1ステム51の外周面の雄ネジ部、第1ステム51の内周面の雌ネジ部、および第2ステム52の外周面の雄ネジ部から構成されている。
【0029】
図4(A)〜(C)を参照して、第1通路33は、連通口32から弁体40の移動方向に沿って伸びている第1縦通路33aと、第1縦通路33aの軸線に対して交差する軸線を有し本体20の外側面のうち第1の面21および第2の面22とは異なる第3の面23に第1開口部25を備える第1横通路33bとから構成されている。第2通路34は、弁室31から弁体40の移動方向に沿って伸びている第2縦通路34aと、第2縦通路34aの軸線に対して交差する軸線を有し本体20の外側面のうち第3の面23とは反対側に位置する第4の面24に第2開口部26を備える第2横通路34bとから構成されている。
【0030】
空間部80は、第1横通路33bおよび第2横通路34bが伸びている方向に拡がる横空間81と、横空間81に連通し弁室31の側に向かって伸びている縦空間82と、から構成されている。そして、横空間81の中心軸が連通口32の中心に一致している。このように構成すれば、連通口32の周辺部は、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)に変形し易くなり、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量をより低減することができる。この結果、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときにより速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0031】
横空間81の直径D(mm)と、連通口32の直径d(mm)とは、
D≧10×d
なる関係を満たしていることが好ましい。このように構成すれば、連通口32の周辺部は、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)に変形し易くなり、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量をより低減することができる。この結果、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときにより速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0032】
縦空間82の底部は、第1横通路33bおよび第2横通路34bの側方位置に少なくとも達していることが好ましい。このように構成すれば、連通口32の周辺部は、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)に変形し易くなり、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量をより低減することができる。この結果、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときにより速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0033】
弁室31の底面は、弁体40に向かう方向に突出する突出部38を有している。連通口32は、突出部38の先端面に開口している。このように構成すれば、連通口32付近の肉厚が薄くなるので、連通口32付近における熱膨張による変形を斜め上方向ではなく、弁体40に向かう方向に変形させることができる。また、連通口32付近における熱膨張による変形を速やかに収束させることができる。
【0034】
次に、実施形態の流量調節弁10の作用を説明する。
【0035】
図2を参照して、流量調節弁10が全閉状態において、第1通路33から流入してきた流体は、弁座面35に圧接された第2弁体部42によって閉止される。ハンドル54を弁が開放する方向に回動させる。ハンドル54の回動に伴って、第1ステム51が回動し上昇する。第1ステム51の回動が第2ステム52に伝わり、第2ステム52が上昇する。第2ステム52に接続された隔膜70が上昇し、第2弁体部42が弁座面35から離間する。
【0036】
図3を参照して、さらにハンドル54を回動すると、さらに隔膜70が上昇する。隔膜70の上昇に伴って、第1弁体部41が上昇し半開状態となる。このとき、第1弁体部41の一部は連通口32に挿入された状態である。連通口32から第1弁体部41を差し引いた開口面積が通路の面積となる。通路の面積を調節することによって、流量を調節する。流量を調節するときは、所望の流量になるように、ハンドル54を操作して開度を調節する。
【0037】
図1を参照して、半開状態から、さらにハンドル54を回動させる。第1ステム51の下端部のストッパー部53がボンネット90の天井面に圧接し、第1ステム51の回動が停止される。隔膜70の上昇に伴って、第1弁体部41が上昇し全開状態となる。
【0038】
次に、実施形態の流量調節弁10の評価方法(熱応力解析)を説明する。
【0039】
熱応力解析について:
連通口32の周辺部の変形を、熱応力解析によって求めた。熱応力解析には、コンピューター支援設計ソフト「Creo Parametric(Parametric Technology Corporation製)」を用いた。熱応力解析では、本体20の三次元モデル(本体モデル)を作成し、本体モデルを所定の拘束条件で拘束し、その後、本体モデルに所定の熱条件で熱をかけた。そうすることによって、本体20に熱がかかったときの本体20の変形の程度をシュミュレーションすることができる。
【0040】
熱応力解析における拘束条件について:
本体20の上端面と下端面を完全に拘束した。「拘束」とは、特定した面が移動や変形をしないように制限することをいう。本体20の上端面と下端面以外については自由に変形することができる。
【0041】
熱応力解析における熱について:
熱条件はつぎのとおりである。本体20の通路および弁室31の内部の温度条件を70℃に設定した。本体20の外部の雰囲気温度条件を25℃に設定した。本体20外表面からの放熱を考慮して熱伝達係数を設定した。なお、熱伝達係数は雰囲気温度25℃において本体20に70℃の流体を流したときの本体20外表面の実測温度から導出した。
【0042】
次に、熱応力解析の結果に基づく検証を説明する。
【0043】
[検証1、および検証2]
熱応力解析の結果の一部を表1に示す。
【0045】
図5(A)(B)は、熱応力解析におけるモデル「FINAL」、モデル「BLANK」のそれぞれの本体20の形状を示す模式図、
図6(A)(B)は、熱応力解析におけるモデル「Try1」、モデル「Try2」のそれぞれの本体20の形状を示す模式図である。モデル「TryX」の本体20の形状は、モデル「FINAL」の本体20の形状と同じである。ただし、熱応力解析における拘束条件は、モデル「TryX」とモデル「FINAL」との間では異なる。
図5、
図6において、各モデルの形状は、左側から順に、「本体20を示す斜視図」、「本体20を上下反転し下面を上側にして示す斜視図」、「第1の断面図」、および「第2の断面図」である。「第1の断面図」は、第1横通路33bおよび第2横通路34bの軸線を含む縦断面である。「第2の断面図」は、第1縦通路33aの軸線を含む縦断面である。
【0046】
図5(A)を参照して、モデル「FINAL」は、
図4に示した実施形態における本体20と同じ形状を有している。横空間81に相当する下穴は、直径φ25mm、底面からの深さ4mmである。縦空間82に相当する横穴は、底面からの深さ11mmである。
【0047】
図5(B)を参照して、モデル「BLANK」は、モデル「FINAL」の下穴および横穴を形成していない形状を有している。
【0048】
図6(A)を参照して、モデル「Try1」は、モデル「FINAL」の横穴を形成していない形状を有している。
【0049】
図6(B)を参照して、モデル「Try2」は、モデル「FINAL」の横穴を形成していない形状を有している点においてモデル「Try1」と同じであるが、下穴を矩形形状とした点においてモデル「Try1」とは異なる形状を有している。下穴は流路が伸びている方向と同じ方向に沿って伸びている。
【0050】
モデル「Try3」、「Try9」〜「Try19」は、下穴の径寸法が異なる点においてモデル「Try1」と相違している。
【0051】
図7は、熱応力解析の結果に基づいて、下穴の直径Dが連通口32周辺部の変形に及ぼす影響を示すグラフである。
【0052】
熱応力解析においてすべてのモデルについて、連通口32の直径dは2mmとした。下穴の直径D/連通口32の直径dの値を表1に示す。
【0053】
モデル「FINAL」に関する熱応力解析における拘束条件は、最適条件とし、本体20の上端面と下端面を拘束するが、下穴部分の底面を拘束せず、下穴部分の底面が自由に変形できるように設定した。一方、本体20の形状がモデル「FINAL」と同じであるモデル「TryX」に関する熱応力解析における拘束条件は、本体20の上端面、下端面、および下穴部分の底面を拘束し、下穴部分の底面が変形できないように設定した。このように、モデル「TryX」にあっては、下穴部分の底面を拘束して底面が接地しているような状況を想定し、下穴部分への変形を想定しないモデルとした。
【0054】
表1における「解析結果」は、連通口32の周辺部の変形値(mm)を示している。
【0055】
「変形低減率(%)」は、100−(各モデルにおける連通口32周辺の変形(解析値)/モデル「BLANK」における連通口32周辺の変形(解析値))×100より求めた。
【0056】
「判定」は、変形低減率の大きさによって判定した。変形低減率が80%以上の場合には、著しい効果があることを示す符号「◎」を、79〜60%の場合には、良い効果があることを示す符号「○」を、59〜40%の場合には、効果があることを示す符号「△」を付した。変形低減率が39%以下の場合には、効果が小さいことを示す符号「×」を付した。
【0057】
なお、変形低減率(%)の定義、判定の定義は、以下に説明する熱応力解析においても同様である。
【0058】
(検証1:流路下方に形成された空間が連通口32周辺部の変形に及ぼす影響について)
表1に示す熱応力解析の結果に基づいて、流路下方に形成された空間が広ければ広いほど、連通口32周辺部の変形を低減することができた。これは、流路下方に空間が形成されたことによって、連通口32周辺部が、弁室31に向かう方向(本体20上方向)だけでなく、空間に向かう方向(本体20下方向)にも変形可能になったためと思われる。連通口32周辺部が空間に向かう方向に変形することによって、弁室31に向かう方向に変形することを低減していると思われる。
【0059】
ここで、上述した実施形態では、連通口32が弁室31中央に配置されているので、「連通口32下方に中心があり、投影面積が大きい空間」がより効果的であると思われる。メカニズムとしては、両端固定梁の中央に荷重が作用する態様と同様である。
【0060】
変形は空間中心の全周から生じるため、モデル「Try2」のように「流路方向」に沿う矩形形状の空間よりも、モデル「Try1」のように「円周方向」の空間を形成した方が望ましいことがわかった。
【0061】
連通口32の直径をd(mm)とすると、「下穴の直径D≧10×d」が好適であった。
【0062】
上記の考察によって、「流路下方に空間を形成するときは、一定以上の空間面積が得られるように形成することが望ましい。」との知見を得た。
【0063】
(検証2:空間を形成する位置は「流路下方」に限られるか)
モデル「TryX」は、下穴部分の底面を拘束して底面が接地しているような状況を想定しているので、下穴部分への変形は想定していない。したがって、モデル「TryX」の熱応力解析結果を確認することによって、モデル「TryX」は横穴(流路側方)のみの効果を想定することができることになる。
【0064】
しかしながら、モデル「TryX」に関して、横穴(流路側方)を形成しても変形を低減する効果はあまりみられなかった。
【0065】
上記の考察によって、「流路下方に空間を形成するときは、連通口32の下方に配置する必要がある。」との知見を得た。
【0066】
[検証3]
熱応力解析の結果の一部を表2に示す。
【0068】
モデル「Try25」〜「Try27」は、下穴の深さが異なる点においてモデル「Try1」と相違している。
【0069】
(検証3:流路下方に形成された空間の高さ(下穴の深さ)が連通口32周辺部の変形に及ぼす影響について)
この検証3は、連通口32から下穴(空間)までの距離が連通口32周辺部の変形に及ぼす影響について考慮することと同等である。
【0070】
モデル「Try25」〜「Try27」を比較すると、空間の高さが高いほど(下穴の深さが深いほど)、連通口32周辺部の変形を軽減できることがわかった。特に、モデル「TRy25」のように、わずかな隙間(下穴の深さが1mm)であっても、下方向に変形可能になることから、連通口32周辺部の変形を軽減する効果が得られることがわかった。
【0071】
上記の考察によって、「流路下方に空間を形成するときは、空間が小さくても(空間から流路に向かう上位側の肉厚が厚くても)効果は得られるが、空間を大きくすると(上位側の肉厚を小さくすると)、より良い効果が得られる。」との知見を得た。
【0072】
[検証4]
熱応力解析の結果の一部を表3に示す。
【0074】
図8(A)〜(D)は、熱応力解析におけるモデル「Try21」〜「Try24」のそれぞれの本体20の形状を示す模式図である。
【0075】
モデル「Try21」〜「Try24」は、横穴の底面からの深さがそれぞれ5mm、6mm、6.5mm、8.5mmである点においてモデル「FINAL」と相違している。
【0076】
図8(A)を参照して、モデル「Try21」は、横穴の底面からの深さが5mmであり、横穴の底面は、流路の下側の高さよりも低い位置までしか伸びでいない。
【0077】
図8(B)を参照して、モデル「Try22」は、横穴の底面からの深さが6mmであり、横穴の底面は、モデル「Try21」よりも高い位置まで伸びているが、流路の下側の高さには達していない。
【0078】
図8(C)を参照して、モデル「Try23」は、横穴の底面からの深さが6.5mmであり、横穴の底面は、流路の下側の高さに一致する。
【0079】
図8(D)を参照して、モデル「Try24」は、横穴の底面からの深さが8.5mmであり、横穴の底面は、流路の中心に一致する。
【0080】
なお、モデル「FINAL」は、横穴の底面からの深さが11mmであり、横穴の底面は、流路の上側の高さよりも高い位置まで伸びている(
図5(A)を参照)。
【0081】
図9(A)は、熱応力解析の結果に基づいて、横穴の底面からの深さが連通口32周辺部の変形に及ぼす影響を示すグラフである。
図9(B)は、
図9(A)の結果を
図7のグラフに重ね合わせ、下穴および横穴の両者が連通口32周辺部の変形に及ぼす影響を示すグラフである。
【0082】
(検証4:流路側方に形成された空間が連通口32周辺部の変形に及ぼす影響について)
モデル「FINAL」とモデル「Try1」とを比較すると、流路側方の空間(横穴)が連通口32周辺部の変形の低減に効果を奏していることがわかった。流路側方の空間(横穴)を備えることによって、モデル「Try1」における良好な変形低減率(74%)が、モデル「FINAL」のように著しい効果(93%)まで一段と良好にしている。
【0083】
モデル「Try21」〜「Try24」を比較すると、流路側方の空間の高さが高いほど(横穴が深く、弁室31の近くにまで達するほど)効果が表れやすい傾向にあることがわかった。両端方向の肉厚が小さい方が、連通口32周辺部が下方向に変形しやすい。メカニズムとしては、両端固定梁の中央に荷重が作用する態様と同様である。
【0084】
モデル「TryX」の結果から、「横穴のみ」では効果が低いことがわかった。
【0085】
上記の考察によって、「流路側方に空間を形成するときは、側方のみでは十分な効果を得ることができず、また、その空間高さは高い方がよい。」との知見を得た。
【0086】
図9(B)に示すように、
図9(A)の結果を
図7のグラフに重ね合わせ、連通口32周辺部変化量を維持したまま
図7のグラフの右端部側にシフトさせた。
図9(B)からも明らかなように、下穴および横穴の両者が連通口32周辺部の変形の低減に相乗的効果を奏することがわかった。
【0087】
[検証5、および検証6]
熱応力解析の結果の一部を表4に示す。
【0089】
図10(A)(B)は、熱応力解析におけるモデル「Try6」、モデル「Try7」のそれぞれの本体20の形状を示す模式図、
図11は、熱応力解析におけるモデル「Try8」の本体20の形状を示す模式図である。
図10、
図11において、各モデルの形状は、
図5、
図6と同様に、左側から順に、「本体20を示す斜視図」、「本体20を上下反転し下面を上側にして示す斜視図」、「第1の断面図」、および「第2の断面図」である。
【0090】
図10(A)を参照して、モデル「Try6」は、下穴および横穴を形成した形状を有している。ただし、下穴の底面からの深さが小さく(1mm)、下穴から流路に向かう上位側の肉厚が厚い。
【0091】
図10(B)を参照して、モデル「Try7」は、下穴および横穴を形成していないが、本体の側面に穴を形成した形状を有している。
【0092】
図11を参照して、モデル「Try8」は、下穴および横穴を形成した形状を有している。ただし、底面に3個の縦穴を形成し、3個の縦穴は、延長方向の隔壁によって仕切られた形状を有している。
【0093】
(検証5:軽量化を目的とした空間形成(肉ヌスミ)との相違について)
軽量化のための空間形成は、本体20の強度を考慮しながら空間を形成する(変形しないように空間を形成する)。すなわち、モデル「Try8」のように、空間に補強のためのリブを形成することが多い。モデル「Try8」は、空間にリブが形成され、そのリブが設置面(または本体20の下位に配置される部品の上面)に当接している状態で解析されている。すなわち、リブは隔壁となり空間を3つの空間に区画している。
【0094】
モデル「Try8」は、変形低減率が小さい。なぜなら、リブ(隔壁)が連通口32周辺部の下方向(空間方向)への逃げを小さくするからであると思われる。このため、連通口32周辺部は、弁室31方向に変形しやすくなる。特に、連通口32周辺部の下方向にリブ(隔壁)が存在すると、リブ(隔壁)によって連通口32周辺部の下方向への逃げが小さくなり易く、変形低減率が小さくなると考えられる。
【0095】
したがって、変形低減率を高めるためには、空間が隔壁などによって区画されることなく、互いに連通し、ひとつの空間となっていることが必要である。
【0096】
ここで、リブが隔壁とならない場合、たとえば、設置面などに当接していない場合を検討する。この場合の検討はモデル「Try6」から推測することが可能であり、連通口32周辺部の変形を低減する効果は現れると推測される。
【0097】
ただし、連通口32周辺部の下方向の構造的な強さが弱い方が、連通口32周辺部の変形を低減することができると考えられる。したがって、変形低減率を高めるためには、リブが隔壁とならない場合であっても、このようなリブを存在させない方がよいと考えられる。
【0098】
本願の技術は、「空間を形成することによって下方向にも変形可能とし、つまり変形方向をコントロールし、それによって、連通口32周辺部に集中していた変形を低減させる。」ものである。
【0099】
上記の考察によって、「連通口32周辺部の変形を低減するという目的のために空間を形成する本願技術は、変形しないように空間を形成する軽量化を目的とした空間形成(肉ヌスミ)と相違する。」との知見を得た。
【0100】
(検証6:放熱によって連通口32周辺部の変形防止を目的とした空間形成との相違について)
連通口32周辺部の変形を防ぐ方法のひとつに、流路や連通口32の周辺部に伝わった熱を放熱し、温度を「変形しない温度」にコントロールするという方法がある。すなわち、温度制御したい部分の周辺部に空間を形成し、対象部分と空間との間において熱交換を行わせる。このとき、空間は、(1)対象部分に近く、(2)大きく、(3)外部と連通し、(4)強度を維持できる、のがよい。
【0101】
本願の技術では、モデル「Try25」のように、連通口32周辺から遠い僅かな隙間であっても、連通口32周辺部の変形を低減する効果を奏している。このような僅かな隙間は、放熱には適していない空間である。
【0102】
その一方で、モデル「Try7」のように、(1)対象部分に近く、(2)大きく、(3)外部と連通し、(4)強度を維持できる、といった「放熱による変形防止では好適と思われる形状」を本体20に形成しても、連通口32周辺部の変形を低減する効果が得られなかった。なぜなら、下方向への変形が妨げられ、「変形方向をコントロール」できなかったからである。「放熱による変形防止が期待できる形状」と、本願の技術の「変形方向をコントロールする形状」とは、まったく別物である。
【0103】
また、現実的には、放熱は空間が外部と連通していることが必須である。外部と連通していないと、空間温度が上昇し、十分な放熱効果を得ることができなくなる。本願の技術にあっては、空間が外部と連通していることは必須ではない。
【0104】
また、放熱のための空間形成は、一般的に強度の低下は望んでおらず、強度低下を考慮しながら空間を形成する。すなわち、空間に補強のためのリブを形成することが多く、本願の技術とは異なる。本願の技術にあっては、リブは変形を妨げる方向に働く。
【0105】
また、現実的な対応として、半導体分野において流量制御が必要なラインに関しては、速やかな流量制御が厳しく求められる。放熱による変形防止は、熱交換が余程効率的に行われない限り、速やかな変形防止を達成することは到底できないと考えられる。
【0106】
本願の技術は、「空間を形成することによって下方向にも変形可能とし、つまり変形方向をコントロールし、それによって、連通口32周辺部に集中していた変形を低減させる。」ものである。
【0107】
上記の考察によって、「連通口32周辺部の変形を低減するという目的のために空間を形成する本願技術は、放熱によって変形しない温度に維持することを目的とした空間形成と相違する。」との知見を得た。
【0108】
[検証7、検証8、および検証9]
熱応力解析の結果の一部を表5に示す。
【0110】
図12(A)(B)は、熱応力解析におけるモデル「Try4」、モデル「Try5」のそれぞれの本体20の形状を示す模式図、
図13(A)(B)は、熱応力解析におけるモデル「Try20」、モデル「Try28」のそれぞれの本体20の形状を示す模式図である。
図12、
図13において、各モデルの形状は、
図5、
図6、
図10、
図11と同様に、左側から順に、「本体20を示す斜視図」、「本体20を上下反転し下面を上側にして示す斜視図」、「第1の断面図」、および「第2の断面図」である。
【0111】
図12(A)を参照して、モデル「Try4」は、下穴および横穴を形成した形状を有している。流路の上位側および下位側の肉厚が同じになるように、下穴の底面からの深さを定めた。
【0112】
図12(B)を参照して、モデル「Try5」は、下穴および横穴を形成した形状を有している。ただし、下穴の底面からの深さが大きく(5mm)、下穴から流路に向かう上位側の肉厚が薄い。
【0113】
モデル「Try6」は、
図10(A)に示したように、下穴の底面からの深さが小さく、下穴から流路に向かう上位側の肉厚が厚い。
【0114】
図13(A)を参照して、モデル「Try20」は、下穴および横穴を形成していない形状を有している。底面の四隅に脚部を設け、上面から脚部までボルトを挿通する貫通孔を形成した。脚部の外側面は、長方形形状を有する隣り合う2面と、本体20の外側面に連続する隣り合う2面とを有している。脚部は、高さが1.5mm、幅が15mmである。本体20の底面には、脚部を除いた部分に空間が形成されている。空間高さは、脚部の高さの1.5mmである。
【0115】
図13(B)を参照して、モデル「Try28」は、連通口32を平坦面に形成した点において、煙突形状の先端面に連通口32を形成しているモデル「BLANK」と相違する。
【0116】
図14(A)〜(D)は、空間を形成する形態を説明する模式図であり、
図14(A)(B)は、本体20自身に空間を形成した形態を示す模式図、
図14(C)(D)は、本体20の下側に配置される部品によって本体20の下方に空間を形成した形態を示す模式図である。
【0117】
図15(A)は、連通口32周辺部を煙突形状に形成した場合の作用の説明に供する図、
図15(B)は、連通口32周辺部を平坦形状(非煙突形状)に形成した場合の作用の説明に供する図である。
【0118】
(検証7:流路上下の肉厚のバランスが連通口32周辺部の変形に及ぼす影響について)
モデル「FINAL」「Try4」「Try5」「Try6」を比較すると、連通口32周辺部の変形を低減する効果に関しては、流路を挟んで上下側の肉厚のバランスを均一にすればよいというわけではない。
【0119】
上記の考察によって、「連通口32周辺部の変形を低減するという目的のためには、流路を挟んで上下側の肉厚を均一にする必要はない。」との知見を得た。
【0120】
(検証8:本体20自身に空間を形成することが必要であるか否かついて)
モデル「Try20」は、本体20底面の四隅を除いて削ったものであり、四隅の底面を拘束して解析を行った。モデル「Try20」の結果は、モデル「Try1」の結果と同等程度であり、良好な結果が出ている。このことから、
図14(C)に示すように、本体20の底面が平坦であっても、本体20より下に配置されるベースプレート100の方を削って、結果的に空間を形成させてもよいことがわかった。また、
図14(D)に示すように、本体20が最も下位置に存在する部品の場合、長ナットなどを用いて本体20を床面から離間して設置しても、モデル「Try20」と同じ状況が得られる。
図14(A)(B)は、モデル「FINAL」のように、本体20自身に空間を形成した形態を示している。
【0121】
上記の考察によって、「空間の形成は必ずしも本体20自身に形成されなくてもよい。」との知見を得た。
【0122】
この知見によって、実施形態では、空間部80は、第2の面22の一部を第1の面21に向けて窪ませて凹形状に形成することによって形成した(
図4(B)(C)、
図14(A)(B)を参照)。この形態以外にも、空間部80は、凹部を有するベースプレート100を凹部が第2の面22に向かい合うように本体20に取り付けることによって形成できる(
図14(C)を参照)。
【0123】
(検証9:連通口32周辺部を煙突形状にした理由)
モデル「Try28」「BLANK」を比較すると、連通口32を形成する部位を煙突形状にしただけでは、連通口32周辺部の変形を低減する効果はあまり得られない。
【0124】
しかしながら、煙突形状にすることによって、他の効果が得られる。
【0125】
効果(1):連通口32が傾斜して変形するのを抑制することができる。
【0126】
図15(B)を参照して、モデル「Try28」は、図中右側に断面三日月形状かつ鉛直方向に延びる流路が形成されている。モデル「Try28」にあっては、変形は空間が形成されている上面と三日月側とに変形可能であり、図中の右斜め上方向に引っ張られるように変形する。すると、上面すなわち連通口32が斜めに傾斜する(線Lを参照)。モデル「Try28」では、連通口32の鉛直方向への変化+連通口32の傾きによる変化によって、流路面積が変化する。
【0127】
図15(A)を参照して、一方、モデル「BLANK」にあっては、連通口32の鉛直方向への変化はあるものの、煙突形状にすることによって、周囲の肉厚に引っ張られることがなく、連通口32が斜めになることを回避することができる(線Lを参照)。従って、煙突形状にすることによって、連通口32が斜めになることを回避することができる。
【0128】
効果(2):変形を短期間で完了させることができる。
【0129】
モデル「Try28」は、連通口32周辺部が肉厚であるため、温度変化に時間がかかり、温度変化による変形が完了するまでに比較的長時間を要する。
【0130】
一方、モデル「BLANK」は、連通口32周縁部が肉薄である。肉薄だと、温度変化が短時間のうちに完了するため、温度変化による変形も短時間のうちに完了する。また、肉薄だと、連通口32周辺部の樹脂のみに起因する局部的な変形量は小さくなる。
【0131】
上記の考察によって、「煙突形状にすることによって、局部的な変形量を小さくするとともに、変形方向をコントロールすることができる。」との知見を得た。
【0132】
次に、実施形態の流量調節弁10の評価方法(流量変化量の確認)を説明する。
【0133】
配管ラインは、ポンプ、定圧弁、流量計、圧力計、流量調節弁10、圧力計の順で配置した(二次側大気開放)。配管ラインに流体温度70℃の水を1次圧100kPaで流した。流量が安定的に800ml/minとなるようにバルブの開度を調節した。このとき、連通口32周辺部の熱による変形が落ち着いた状態でバルブの開度を調節している。ポンプを停止し配管ラインを25℃まで冷却した。
【0134】
次いで、冷却完了後、再度、流体温度70℃の水を流した。このときの初期流量(再通水から30秒後の流量)と、安定後流量(再通水から900秒後の流量。この流量は設定値とほぼ等しい)との差を比較した。
【0135】
(検証1)
流量変化量は、実施形態(熱解析モデルの「FINAL」と同等)にあっては25ml、従来品(熱解析モデルの「BLANK」と同等)にあっては95mlであった。実施形態の流量調節弁10にあっては、連通口32周辺部の変形量が少ないため、連通口32の開口面積の変化量が少ない。したがって、再通水時直後の25℃のときの流量と、再通水から900秒後の70℃のときの流量との差である流量変化量が小さい。
【0136】
(検証2)
流量が安定するまでの時間は、実施形態にあっては240秒、従来品にあっては900秒であった。実施形態にあっては、流量が安定するまでの時間も短い。これは変形量がそもそも小さいので、変形が速やかに完了するためであると考えられる。
【0137】
(検証3)
連通口32周辺部の変形を低減することによって、流量設定時の流量と再通水時の初期流量との流量差を小さくすることができる。再通水時の初期流量を設定流量値の許容範囲内にすることができる場合がある。この結果、薬液の無駄解消、タクトタイムの短縮化を達成することができる。
【0138】
(検証4)
再通水時の初期流量を設定流量値の許容範囲内にすることができなくても、速やかに設定流量値とすることができる。この結果、薬液の無駄解消、タクトタイムの短縮化を達成することができる。
【0139】
以上説明したように、実施形態の流量調節弁10は、本体20の外側面のうち弁体40の移動方向に沿って第1の面21とは反対側に位置する第2の面22の側に設けられる空間部80、を有し、弁体40の移動方向に沿って連通口32が第2の面22に投影される部分が少なくとも空間部80に含まれている。このように構成すれば、高温流体を流したときに生じる部品の変形において、連通口32の周辺部は、弁体40に向かう方向(弁室31に向かう方向)に変形するだけでなく、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)にも変形することができる。このため、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量を低減することができる。この結果、高温流体を流したときに生じる部品の変形に伴う諸々の問題を低減する。特に、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときに速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0140】
空間部80は、第2の面22の一部を第1の面21に向けて窪ませて凹形状に形成することによって、または、凹部を有するベースプレート100を凹部が第2の面22に向かい合うように本体20に取り付けることによって形成されている。このように構成すれば、空間部80を本体20に直接形成したり、ベースプレート100を利用して形成したりすることができ、設計の自由度が増す。
【0141】
第1通路33は、第1縦通路33aと第1横通路33bとから構成され、第2通路34は、第2縦通路34aと第2横通路34bとから構成されている。空間部80は、第1横通路33bおよび第2横通路34bが伸びている方向に拡がる横空間81と、横空間81に連通し弁室31の側に向かって伸びている縦空間82とから構成され、横空間81の中心軸が連通口32の中心に一致している。このように構成すれば、連通口32の周辺部は、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)に変形し易くなり、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量をより低減することができる。この結果、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときにより速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0142】
横空間81の直径D(mm)と、連通口32の直径d(mm)とは、D≧10×dなる関係を満たしている。このように構成すれば、連通口32の周辺部は、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)に変形し易くなり、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量をより低減することができる。この結果、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときにより速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0143】
縦空間82の底部が、第1横通路33bおよび第2横通路34bの側方位置に少なくとも達している。このように構成すれば、連通口32の周辺部は、弁体40から離れる方向(空間部80に向かう方向)に変形し易くなり、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向に変形する変化量をより低減することができる。この結果、流量調節弁10において、高温流体を流し始めたときにより速やかに所望の流量を得ることが可能となる。
【0144】
弁室31の底面は、弁体40に向かう方向に突出する突出部38を有し、連通口32は、突出部38の先端面に開口している。このように構成すれば、連通口32付近の肉厚が薄くなるので、連通口32付近における熱膨張による変形を斜め上方向ではなく、弁体40に向かう方向に変形させることができる。また、連通口32付近における熱膨張による変形を速やかに収束させることができる。
【0145】
本体20は樹脂製である。本体20が樹脂製の場合には熱膨張による形状変化が大きいことから、空間部80を形成することによって連通口32周辺部の変形を低減する大きな効果を得ることができる。
【0146】
弁体40は、連通口32に向かって先細りとなるテーパ形状の先端部を有し、連通口32に対する弁体40の位置を調節することによって流量を調節自在である。熱膨張による形状変化は流量調節に大きな影響を及ぼすので、流量調節弁10に適用することによって、空間部80を形成することによって連通口32周辺部の変形を低減する大きな効果を得ることができる。特に、微小流量(たとえば、2L/min以下)を調節する流量調節弁10にあっては、連通口32周辺部のわずかな変形によっても開口面積が変化し、流量に及ぼす影響が大きい。このため、微小流量を調節する流量調節弁10に適用することによって、連通口32周辺部の変形をより一層低減できる効果を得ることができる。
【0147】
駆動部60は、ねじの噛み合いを利用するねじ式によってステム50を移動させている。ステム50を移動させる駆動形態は、手動操作の他に、空気駆動や電気駆動がある。空気駆動や電気駆動にあっては、所望の流量を得るために弁体40位置をフィードバック制御することが多く、連通口32周辺部の変形にともなって流量が変化しても、この変化に追従して流量を調節することができる。一方、手動操作によってステム50を移動させる手動弁にあっては、弁体40位置を調節すると、その位置を固定することが多い。このため、特に、手動弁を手動操作するときに、大きな効果を発揮する。
【0148】
(改変例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜改変できる。
【0149】
バルブを流量調節弁10に適用した例を示したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。バルブを開閉弁に適用することができ、シール性や耐久性の低下を抑制するという視点から、高温流体を流したときに生じる部品の変形を低減させることができる。
【0150】
また、連通口32に向かって先細りとなるテーパ形状の先端部を有する弁体40を示したが本発明はこの場合に限定されるものではない。弁体40の先端部(弁体40下面)が平坦なときは弁体40下面と第1の面21との隙間の大きさによって、流量を調節する。
【0151】
また、バルブは、弁体40が連通口32を全閉としない状態に規制するようにしてもよい。弁体40が連通口32付近に圧接することがないことから、連通口32の周辺部の強度を気にすることなく、空間部80の大きさを設計することができるからである。また、連通口32の周辺部が弁体40に向かう方向への変形を低減し易くなる。
【0152】
弁体40が連通口32を全閉状態とならないように制限する具体的な構成は次のとおりである。
【0153】
(1)機械的手段
弁体40が全閉状態とならないように制限するためにはステム50の弁室31側への移動を機械的に防ぐことが一般的である。これは、バルブ分野における「弁体の弁座への過剰な圧接の回避」「操作ハンドルの過剰な締め付けの回避」などに対する構成と同様の構成を適用できる。
【0154】
たとえば、ステム50や操作ハンドル54の弁室31側への移動方向に係止部(単独部品でも、他部品の一部分でもよい)を設け、ステム50や操作ハンドル54を係止部に当接させることによって、移動を規制することができる。係止部の一例として、
図1に破線によって示すように、ボンネット90の上方とハンドル54との間に設けられるリング形状の係止部130を挙げることができる。係止部は、ボンネット90と一体に形成してもよいし、ボンネット90と別体に形成してもよい。図示省略するが、隔膜押さえ110の上面と第2ステム52の鍔部55との間に係止部を設けてもよい。係止部は、隔膜押さえ110と一体に形成してもよいし、隔膜押さえ110と別体に形成してもよい。
【0155】
(2)その他の手段
空気駆動、電気駆動(すなわち、自動弁)の場合は、近接センサや光センサなどによって弁体の位置を検出し、その情報を受けた制御部が駆動部を停止することによって弁体の移動を規制することができる。また、電気駆動の場合はモーター回転数などから位置情報を検出することもできる。