(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施形態に係るジェットエンジン及びジェットエンジンの動作方法に関して、添付図面を参照して説明する。ここでは、ジェットエンジンを飛しょう体に適用した例について説明する。
【0036】
(方向の定義)
インレットからジェットエンジンに取り込まれる空気の流れに対して上流側、すなわち、ジェットエンジンのインレット側を「上流側」又は「前方側」と定義する。また、インレットからジェットエンジンに取り込まれる空気の流れに対して下流側、すなわち、ジェットエンジンのノズル側を「下流側」又は「後方側」と定義する。
また、ジェットエンジンが水平状態にあると仮定した時、燃焼器の長手方向に直交するとともに、鉛直方向に直交する方向を、「スパン方向」と定義する。
【0037】
(用語の定義)
簡略化のため、単位時間あたりの燃料噴射量を「燃料噴射量」という。また、複数の燃料噴射器から噴射される単位時間当たりの燃料噴射量の合計値を「総燃料噴射量」という。
【0038】
(保炎器による保炎メカニズム)
ジェットエンジンを備えた飛しょう体が飛しょうする時、ジェットエンジンの燃焼器の内部空間には、高速の空気流あるいは混合気体流(空気と燃料との混合気体の気流)が形成される。保炎器は、燃焼器の内部空間に、低速の混合気体流を形成するために設けられる。保炎器は、例えば、燃焼器の壁部に設けられた浅い凹部である。保炎器は、当該浅い凹部によって、混合気体が低速に流れる領域を形成し、当該低速の領域を用いて浅い凹部に形成される炎を保炎する。なお、保炎器は、燃焼器の壁部に設けられた段差部であってもよい。
【0039】
(飛しょう体の構成概要)
実施形態に係る飛しょう体1の構成について説明する。
図4は、実施形態に係る飛しょう体1の構成の一例を示す斜視図である。飛しょう体1は、ジェットエンジン2と、ロケットモータ3とを具備している。ロケットモータ3は、飛しょう体1を発射装置から飛行させるとき、飛しょう体1を飛しょう開始時の速度から所望の速度まで加速する。ただし、飛しょう開始時の速度は、飛しょう体1が静止している発射装置から発射されるときは、速度ゼロであり、飛しょう体が移動中/飛行中の移動体/飛行体の発射装置から発射されるときは、その移動体/飛行体の移動速度/飛行速度である。ジェットエンジン2は、飛しょう体1がロケットモータ3を分離した後、飛しょう体1を更に加速して、目標へ向かって飛しょうさせる。ジェットエンジン2は、機体10とカウル40とを備えている。機体10とカウル40とは、後述されるように、ジェットエンジン2のインレット、燃焼器及びノズルを構成している。ジェットエンジン2は、インレットにて前方から空気を取り入れ、燃焼器にてその空気と燃料とを混合し、燃焼させ、ノズルにてその燃焼ガスを膨張させ、後方へ送出する。それにより、ジェットエンジン2は推進力を得る。飛しょう体1は、センサ60、飛行制御装置80、および、燃料噴射制御器90を備える(詳細は、後述される。)。なお、燃料噴射制御器90は、飛行制御装置80の一部であってもよいし、飛行制御装置80とは別に設けられる制御器であってもよい。
【0040】
(ジェットエンジンの構成概要)
次に、実施形態に係るジェットエンジンについて説明する。
図5Aは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図である。
図5Bは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図5Cは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図であり、第2燃料噴射器を作動させた場合を示している。
図5Dは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図であり、第1燃料噴射器を作動させた場合を示している。
【0041】
ジェットエンジン2は、機体10と、機体10の下方に気体の流通可能な空間50を形成するように設けられたカウル40とを備えている。機体10の前方の下方部分とカウル40の前方部分とは、空間50へ空気を導入するインレット11を構成している。機体10の中間の下方部分とカウル40の中間部分とは、燃料と空気とを混合し燃焼させる燃焼器12を構成している。機体10の後方の下方部分とカウル40の後方部分とは、燃焼気体を膨張させて放出するノズル13を構成している。
【0042】
代替的に、例えば、筒状部材によってジェットエンジン2を構成し、当該筒状部材(ジェットエンジン2)が機体10の下部に取り付けられてもよい。この場合、筒状部材の前方部分がインレット11を構成し、筒状部材の中間部分が燃焼器12を構成し、筒状部材の後方部分がノズル13を構成する。
【0043】
(燃焼器の構成概要)
燃焼器12は、第1燃料噴射器20と、第2燃料噴射器30と、第1保炎器22と、第2保炎器32を備えている。第1燃料噴射器20は、複数の燃料噴射器のうちで最上流に配置される燃料噴射器である。第1燃料噴射器20は、第1保炎器22の上流側に配置される。代替的に、第1燃料噴射器20は、第1保炎器22の壁部内に配置されてもよい。第2燃料噴射器30は、第1燃料噴射器20よりも下流側に配置される燃料噴射器である。第2燃料噴射器30は、第2保炎器32の上流側に配置される。代替的に、第2燃料噴射器30は、第2保炎器32の壁部内に配置されてもよい。第1保炎器22は、複数の保炎器のうちで最上流に配置される保炎器である。第1保炎器22は、第1燃料噴射器20から噴射される燃料の燃焼に用いる炎を維持可能に構成される。第1保炎器22は、例えば、燃焼器12の壁部に固定的に設けられた浅い凹部である。第2保炎器32は、第1保炎器22の下流側に配置される。第2保炎器32は、第2燃料噴射器30から噴射される燃料の燃焼に用いる炎を維持可能に構成される。第2保炎器32は、例えば、燃焼器12の壁部に固定的に設けられた浅い凹部である。
【0044】
(ジェットエンジンの動作概要)
第1燃料噴射器20からの燃料噴射量および第2燃料噴射器30からの燃料噴射量は、後述の燃料噴射制御器90によって制御される。燃料噴射制御器90は、少なくとも第2燃料噴射器30を作動状態とする第1動作モードと、少なくとも第1燃料噴射器20を作動状態とする第2動作モードとを選択的に実行可能である。総燃料噴射量(
図5A〜
図5Dの例では、第1燃料噴射器20から噴射される単位時間当たりの燃料噴射量と第2燃料噴射器30から噴射される単位時間当たりの燃料噴射量の合計)に対する第1燃料噴射器から噴射される燃料噴射量(第1燃料噴射器から噴射される単位時間当たりの燃料噴射量)の割合は、第2動作モードの方が第1動作モードよりも大きくなるように設定される。第1動作モードは、例えば、主として、第2燃料噴射器30と第2保炎器32を用いる動作モードであり、飛しょう体1の低速飛しょう時(例えば、加速時)に実行される。第2動作モードは、例えば、主として、第1燃料噴射器20と第1保炎器22を用いる動作モードであり、飛しょう体1の高速しょう時(例えば、巡航時)に実行される。なお、第1動作モードにおいては、第1燃料噴射器20は、非作動状態とされてもよい。また、第2動作モードにおいては、第2燃料噴射器30は、非作動状態とされてもよい。第1動作モードは、第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量(単位時間当たりの燃料噴射量)が相対的に少ないモードであるということもできる。第2動作モードは、第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量(単位時間当たりの燃料噴射量)が相対的に多いモードであるということもできる。
第1動作モードでは、主として、下流側に配置される第2保炎器32を用いて保炎が行われるため、例えば、低速飛しょう時であっても、第2保炎器32の上流側に形成される高圧領域HPが、インレット11と燃焼器12との境界14(以下、単に「境界14」という。)に達することが抑制される(必要であれば、
図5Cを参照。)。
第2動作モードでは、主として、上流側に配置される第1保炎器22を用いて保炎が行われる。例えば、高速飛しょう時では、インレット11から取り入れられる空気の動圧が高いため、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPの広がりが小さくなる。このため、主として、上流側に配置される第1保炎器22を用いて保炎が行われる場合であっても、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPが、境界14に達することが抑制される(必要であれば、
図5Dを参照)。
【0045】
図5A〜
図5Dの例では、燃焼器12の長手方向(基軸方向)に沿って、複数の燃料噴射器および保炎器を設け、保炎器の上流側の高圧領域の広さ(燃焼器12の長手方向に沿った長さ)に応じて、燃料噴射位置を切り替えている。そして、燃料噴射位置の切り替えにより、保炎位置の変更を実現している。保炎器の位置を変更する可変機構を用いることなく、保炎位置の切り替えを行っているため、ジェットエンジンの軽量化および耐熱化が実現可能である。
【0046】
(燃焼器の詳細構成)
図5Aおよび
図5Bを参照して、燃焼器の詳細構成について説明する。燃焼器12は、第1燃料噴射器20と、第2燃料噴射器30と、第1保炎器22と、第2保炎器32を備える。
【0047】
(第1燃料噴射器)
第1燃料噴射器20は、複数の燃料噴射器のうちで最上流に配置される燃料噴射器である。第1燃料噴射器20は、例えば、第1保炎器22の上流側に配置される。換言すれば、第1燃料噴射器20は、例えば、境界14と第1保炎器22との間に配置される。代替的に、第1燃料噴射器20は、第1保炎器22の壁部内に配置されてもよい。第1燃料噴射器20は、例えば、複数の燃料噴射孔20aを備える。複数の燃料噴射孔20aは、例えば、燃焼器12の長手方向に直交する方向(
図5A〜
図5Bの例では、スパン方向。断面円形の燃焼器を採用する場合には円の周方向。)に沿って、1列または複数列で配置される。
【0048】
(第2燃料噴射器)
第2燃料噴射器30は、第1燃料噴射器20の下流側に配置される。第2燃料噴射器30は、例えば、第2保炎器32の上流側、且つ、第1保炎器22の下流側に配置される。代替的に、第2燃料噴射器30は、第2保炎器32の壁部内に配置されてもよい。第2燃料噴射器30は、例えば、複数の燃料噴射孔30aを備える。複数の燃料噴射孔30aは、例えば、燃焼器12の長手方向に直交する方向(
図5A〜
図5Bの例では、スパン方向。断面円形の燃焼器を採用する場合には円の周方向。)に沿って、1列または複数列で配置される。
【0049】
(第1保炎器)
第1保炎器22は、複数の保炎部のうちで最上流に配置される保炎部である。第1保炎器22は、例えば、第1燃料噴射器20の下流側に配置される。また、第1保炎器22は、例えば、第2燃料噴射器30の上流側に配置される。第1保炎器22には、主流空気MAと第1燃料噴射器20から噴射される燃料との混合気体が供給される。混合気体は、第1保炎器22内においては、低速で移動する。第1保炎器22は、第1燃料噴射器20から噴射される燃料の燃焼に用いる炎を維持する。第1保炎器22は、例えば、燃焼器12の壁部に設けられた浅い凹部である。凹部は、燃焼器12のスパン方向全体にわたって形成されてもよい。代替的に、凹部は、燃焼器12のスパン方向の一部のみにわたって形成されてもよい。
図5A、
図5Bの例では、凹部の断面形状(スパン方向に垂直な面における断面形状)は、矩形形状である。代替的に、凹部の断面形状は、矩形形状以外の形状であってもよい。
【0050】
(第2保炎器)
第2保炎器32は、第1保炎器22の下流側に配置される保炎部である。第2保炎器32は、例えば、第2燃料噴射器30の下流側に配置される。第2保炎器32には、主流空気MAと第2燃料噴射器30から噴射される燃料との混合気体が供給される。混合気体は、第2保炎器32内においては、低速で移動する。第2保炎器32は、第2燃料噴射器30から噴射される燃料の燃焼に用いる炎を維持する。第2保炎器32は、例えば、燃焼器12の壁部に設けられた浅い凹部である。凹部は、燃焼器12のスパン方向全体にわたって形成されてもよい。代替的に、凹部は、燃焼器12のスパン方向の一部のみにわたって形成されてもよい。
図5A、
図5Bの例では、凹部の断面形状(スパン方向に垂直な面における断面形状)は、矩形形状である。代替的に、凹部の断面形状は、矩形形状以外の形状であってもよい。
【0051】
(第2燃料噴射器の作動状態)
図5Cは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図であり、第2燃料噴射器30を作動させた場合を示している。第2燃料噴射器30からは、燃料Gが噴射される。第2燃料噴射器30から噴射される燃料Gと主流空気MAとは混合され混合気体となる。混合気体は、主流空気MAの流れにのって下流側に移動し、第2保炎器32に供給される。第2保炎器32には、混合気体が低速で流れる領域が形成されるため、第2保炎器32によって炎F2は良好に保炎される。第2保炎器32の上流側には、主流空気MAの動圧と燃料Gの燃焼圧との相互作用によって、高圧領域HPが形成される。飛しょう体1の速度(又は、マッハ数)が小さいほど、高圧領域HPの燃焼器12の長手方向に沿った長さL
HP2は、長くなる。しかし、長さL
HP2は、境界14と第2保炎器32の上流端との間の距離L
2よりも小さい。このため、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制されている。その結果、インレット11から燃焼器12への空気の供給が阻害されることはない。
【0052】
(第1燃料噴射器の作動状態)
図5Dは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図であり、第1燃料噴射器20を作動させた場合を示している。第1燃料噴射器20からは、燃料Gが噴射される。第1燃料噴射器20から噴射される燃料Gと主流空気MAとは混合され混合気体となる。混合気体は、主流空気MAの流れにのって下流側に移動し、第1保炎器22に供給される。第1保炎器22には、混合気体が低速で流れる領域が形成されるため、第1保炎器22の炎F1は良好に保炎される。第1保炎器22の上流側には、主流空気MAの動圧と燃料Gの燃焼圧との相互作用によって、高圧領域HPが形成される。飛しょう体1の速度(又は、マッハ数)が大きいほど、高圧領域HPの燃焼器の長手方向に沿った長さL
HP1は、短くなる。したがって、ジェットエンジン2を備えた飛しょう体1の速度(又は、マッハ数)が大きい場合、長さL
HP1は、境界14と第1保炎器22の上流端との間の距離L
1よりも小さくなる。この場合、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される。その結果、インレット11から燃焼器12への空気の供給が阻害されることはない。
【0053】
なお、第1燃料噴射器20からノズル13までの距離は、第2燃料噴射器30からノズル13までの距離よりも長い。このため、第1燃料噴射器20から噴射される燃料Gの燃焼時間は、第2燃料噴射器30から噴射される燃料Gの燃焼時間よりも長い。燃料の燃焼時間が長い結果、燃焼効率が向上する。その結果、第1燃料噴射器20を用いた場合の比推力は、第2燃料噴射器30を用いた場合の比推力よりも大きい。
【0054】
(燃料供給系)
図6に、燃料供給系の一例を示す。燃料供給系は、燃料供給部33と、配管35と、流量調整器36とを含む。燃料供給部33は、例えば、燃料タンク34と定量ポンプPuとを備える。燃料供給部33と第1燃料噴射器20とは、第1配管によって接続されている。第1配管は、配管35Cと配管35Aによって構成される。燃料供給部33と第2燃料噴射器30とは、第2配管によって接続されている。第2配管は、配管35Cと配管35Bによって構成される。配管35Cは、定量ポンプPuと流体接続されている。配管35Cは、分岐点37において、配管35Aと配管35Bに分岐される。配管35Aの途中には、第1流量調整器36A(例えば、第1バルブ)が設けられ、配管35Bの途中には、第2流量調整器36B(例えば、第2バルブ)が配置されている。燃料供給系と燃料噴射制御器90とは、制御線95によって情報伝達可能に接続されている。より詳細には、第1流量調整器36Aは、制御線95Aを介して燃料噴射制御器90に接続され、第2流量調整器36Bは、制御線95Bを介して燃料噴射制御器90に接続され、定量ポンプPuは、制御線95Cを介して燃料噴射制御器90に接続されている。
【0055】
総燃料噴射量TAの燃料を、全て、第2燃料噴射器30から噴射する場合を想定する。燃料噴射制御器90は、総燃料噴射量TAの燃料を送り出すよう、制御線95Cを介して定量ポンプPuに指示する。また、燃料噴射制御器90は、第1流量調整器36Aに対して配管35Aの流路を閉鎖するよう(バルブを閉じるよう)、制御線95Aを介して第1流量調整器36Aに指示する。燃料噴射制御器90は、第2流量調整器36Bに対して配管35Bの流路を開放するよう(バルブを開けるよう)、制御線95Bを介して第2流量調整器36Bに指示する。以上の結果、総燃料噴射量TAの燃料が第2燃料噴射器30から噴射される。
【0056】
総燃料噴射量TAの燃料を、全て、第1燃料噴射器20から噴射する場合を想定する。燃料噴射制御器90は、総燃料噴射量TAの燃料を送り出すよう、制御線95Cを介して定量ポンプPuに指示する。また、燃料噴射制御器90は、第1流量調整器36Aに対して配管35Aの流路を開放するよう(バルブを開けるよう)、制御線95Aを介して第1流量調整器36Aに指示する。燃料噴射制御器90は、第2流量調整器36Bに対して配管35Bの流路を閉鎖するよう(バルブを閉じるよう)、制御線95Bを介して第2流量調整器36Bに指示する。以上の結果、総燃料噴射量TAの燃料が第1燃料噴射器20から噴射される。
【0057】
総燃料噴射量TAの燃料のうち、半分を第1燃料噴射器20から噴射し、半分を第2燃料噴射器30から噴射する場合を想定する。燃料噴射制御器90は、総燃料噴射量TAの燃料を送り出すよう、制御線95Cを介して定量ポンプPuに指示する。また、燃料噴射制御器90は、第1流量調整器36Aに対して配管35Aの流路を半開するよう(バルブを半開するよう)、制御線95Aを介して第1流量調整器36Aに指示する。燃料噴射制御器90は、第2流量調整器36Bに対して配管35Bの流路を半開するよう(バルブを半開する)、制御線95Bを介して第2流量調整器36Bに指示する。以上の結果、総燃料噴射量TAの燃料のうち、半分が第1燃料噴射器20から噴射され、半分が第2燃料噴射器30から噴射される。
【0058】
(燃焼噴射制御器による制御例)
第1燃料噴射器20からの燃料噴射量および第2燃料噴射器30からの燃料噴射量は、燃料噴射制御器90によって制御される。燃料噴射制御器90は、少なくとも第2燃料噴射器30を作動状態とする第1動作モードと、少なくとも第1燃料噴射器20を作動状態とする第2動作モードとを選択的に実行可能である。総燃料噴射量に対する第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量の割合は、第2動作モードの方が第1動作モードよりも大きくなるように設定される。
【0059】
(第1例)
図7Aに燃料噴射制御器90による制御の第1例を示す。燃料噴射制御器90は、センサ60から、ジェットエンジン2を備えた飛しょう体1のマッハ数Mについての情報を取得する。燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1未満の時、第1燃料噴射器20を非作動状態(
図7Aの「×」を参照。)に制御し、第2燃料噴射器30を作動状態(
図7Aの「○」を参照。)に制御する(以下、「制御動作A」という)。制御動作Aでは、最上流側の第1燃料噴射器20が非作動とされるため、マッハ数がM
1未満であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される(必要であれば、
図5Cを参照。)。
燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1以上の時、第1燃料噴射器20を作動状態に制御し、第2燃料噴射器30を非作動状態に制御する(以下、「制御動作B」という)。制御動作Bでは、主流空気MAの動圧が高く高圧領域HPの長さL
HP1が短い。このため、最上流側の第1燃料噴射器20が作動状態であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される(必要であれば、
図5Dを参照。)。
制御動作A、制御動作Bは、それぞれ、第1動作モード、第2動作モードに対応する制御動作である。第1動作モード(制御動作A)では、総燃料噴射量に対する第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量の割合は、「ゼロ(0%)」である。第2動作モード(制御動作B)では、総燃料噴射量に対する第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量の割合は、「1(100%)」である。
なお、第1閾値M
1の値は、数値計算または実験等に基づいて予め決定される。そして、当該第1閾値M
1の値は、後述の記憶部902に記憶されている。
【0060】
第1例では、飛しょう体1(又は、ジェットエンジン2)は、飛しょう体1の飛しょうマッハ数Mを測定するセンサ60を備えている。そして、燃料噴射制御器90は、センサ60によって測定される飛しょうマッハ数Mの上昇に応答して、第1動作モードから第2動作モードに切り替えている。
【0061】
第1例では、ジェットエンジン2は、第1閾値M
1を記憶する記憶部902を備える。燃料噴射制御器90は、飛しょうマッハ数Mが、第1閾値M
1未満である場合に第1動作モードを実行し、前記飛しょうマッハ数Mが、前記第1閾値M
1以上である場合に第2動作モードを実行する。
【0062】
マッハ数Mの上昇により、高圧領域HPは縮小する。したがって、第1例では、燃料噴射制御器90は、センサ60によって測定される測定値(マッハ数M)から推定される第2保炎器上流側の高圧領域の縮小(高圧領域HPの長さの縮小)に応答して、前記第1動作モードから前記第2動作モードに切り替えているということができる。
【0063】
(第2例)
図7Bに燃料噴射制御器90による制御の第2例を示す。燃料噴射制御器90は、センサ60から、飛しょう体1のマッハ数Mの測定値を取得する。燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1未満の時、第1燃料噴射器20を非作動状態(
図7Bの「×」を参照。)に制御し、第2燃料噴射器30を作動状態(
図7Bの「○」を参照。)に制御する(以下、「制御動作C」という)。制御動作Cでは、最上流側の第1燃料噴射器20が非作動とされるため、マッハ数MがM
1未満であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される。
燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1以上、かつ、第2閾値M
2未満の時、第1燃料噴射器20を作動状態に制御し、第2燃料噴射器30を作動状態に制御する(以下、「制御動作D」という)。制御動作Dでは、燃料噴射のZ%が第1燃料噴射器20によって行われ、燃料噴射の(100−Z)%が第2燃料噴射器30によって行われる。制御動作Dでは、最上流側の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量が総燃料噴射量のZ%に抑制されるため、マッハ数MがM
2未満であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することが抑制される。
燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第2閾値M
2以上の時、第1燃料噴射器20を作動状態に制御し、第2燃料噴射器30を非作動状態に制御する(以下、「制御動作E」という)。制御動作Eでは、主流空気MAの動圧が高く高圧領域HPの長さL
HP1が短い。このため、最上流側の第1燃料噴射器20が作動状態であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される。
図7Bの(a)に示されるように、制御動作C、制御動作Dは、それぞれ、第1動作モード、第2動作モードに対応する制御動作であるといえる。別の見方をすれば、
図7Bの(b)に示されるように、制御動作D、制御動作Eは、それぞれ、第1動作モード、第2動作モードに対応する制御動作であるといえる。更に別の見方をすれば、
図7Bの(c)に示されるように、制御動作C、制御動作Eは、それぞれ、第1動作モード、第2動作モードに対応する制御動作であるといえる。この場合、制御動作Dは、第1動作モードと第2動作モードとの間の中間的動作モード、すなわち、遷移動作モードであるといえる。なお、遷移動作モードでは、総燃料噴射量に対する第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量の割合は、「Z/100(Z%)」である。換言すれば、遷移動作モードは、総燃料噴射量に対する第1燃料噴射器から噴射される燃料噴射量の割合が、第2動作モードよりも小さく、第1動作モードよりも大きい。
なお、第1閾値M
1、第2閾値M
2の値は、数値計算または実験等に基づいて、予め決定される。また、Zの値は、0〜100の範囲内で、予め決定される。決定された第1閾値M
1、第2閾値M
2、Zの値は、後述の記憶部902に記憶されている。
【0064】
第2例では、遷移動作モードを備える。このため、第1動作モードから第2動作モードへの切り替え、あるいは、第2動作モードから第1動作モードへの切り替えがスムーズである。
【0065】
(第3例)
図7Cに燃料噴射制御器90による制御の第3例を示す。第3例は、マッハ数Mおよび高度Hに基づいて、第1燃料噴射器20からの燃料噴射量および第2燃料噴射器30からの燃料噴射量の制御を行う例である。燃料噴射制御器90は、センサ60から、飛しょう体1のマッハ数Mの測定値および飛しょう高度Hの測定値についての情報を取得する。
燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1未満、かつ、高度Hが第3閾値H
1未満の時、第1燃料噴射器20を非作動状態(
図7Cの「×」を参照。)に制御し、第2燃料噴射器30を作動状態(
図7Cの「○」を参照。)に制御する(以下、「制御動作F」という)。燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1未満、かつ、高度Hが第3閾値H
1以上の時、第1燃料噴射器20を非作動状態に制御し、第2燃料噴射器30を作動状態に制御する(以下、「制御動作G」という)。制御動作Fおよび制御動作Gでは、最上流側の第1燃料噴射器20が非作動とされるため、マッハ数MがM
1未満であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される。
燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1以上、かつ、高度Hが第3閾値H
1以上の時、第1燃料噴射器20を作動状態に制御し、第2燃料噴射器30を非作動状態に制御する(以下、「制御動作H」という)。制御動作Hでは、主流空気MAの動圧が高く高圧領域HPの長さL
HP1が短い。このため、最上流側の第1燃料噴射器20が作動状態であるにも関わらず、高圧領域HPが境界14を超えてインレット11側に達することは抑制される。
燃料噴射制御器90は、飛しょう体1のマッハ数Mが第1閾値M
1以上、かつ、高度Hが第3閾値H
1未満の時、第1燃料噴射器20を作動状態に制御し、第2燃料噴射器30を作動状態に制御する(以下、「制御動作I」という)。制御動作Iにおける第1燃料噴射器20からの燃料噴射量(単位時間当たりの燃料噴射量)は、例えば、制御動作Hにおける第1燃料噴射器20からの燃料噴射量(単位時間当たりの燃料噴射量)と等しい。制御動作Hでは、高出力を実現するため、第1燃料噴射器20に加えて、第2燃料噴射器30も作動させる。このことにより、空気抵抗の大きな低高度を高マッハ数で飛しょうする際に要する大出力を実現可能なジェットエンジン2が提供される。
制御動作Fおよび制御動作Gは、第1動作モードに対応する制御動作であるといえる。また、制御動作Hは、第2動作モードに対応する制御動作であるといえる。さらに、制御動作Iは、高出力動作モードということができる。なお、高出力動作モードにおける燃料噴射量(単位時間当たりの総燃料噴射量)は、第2動作モードにおける燃料噴射量(単位時間当たりの総燃料噴射量)よりも大きい。例えば、高出力動作モードにおける総燃料噴射量(単位時間当たりの総燃料噴射量)は、その直前の第2動作モードにおける総燃料噴射量(単位時間当たりの総燃料噴射量)の1.1倍〜2倍である。
なお、第1閾値M
1、第3閾値H
1の値は、数値計算または実験等に基づいて、予め設定される。決定された第1閾値M
1、第3閾値H
1は、後述の記憶部902に記憶されている。
【0066】
(第4例)
図7Dに燃料噴射制御器90による制御の第4例を示す。第4例は、マッハ数Mおよび当量比φに基づいて、第1燃料噴射器20からの燃料噴射量および第2燃料噴射器30からの燃料噴射量の制御を行う例である。
なお、
図7Dにおいて、「第1」は、第1燃料噴射器20を意味し、「第2」は、第2燃料噴射器30を意味する。また、
図7Dにおける「AA」、・・・、「ED」は、それぞれ、「制御動作AA」、・・・、「制御動作ED」を意味する。
当量比φは、燃料と空気との混合比を表す無次元パラメータである。燃料の空気に対する割合が増加するにつれて、当量比は増加する。当量比が1より大きい時は、燃料リッチの状態であり、燃焼において空気を完全に消費しても燃料が余る状態である。当量比が1より小さい時は、空気リッチの状態であり、燃焼において燃料を完全に消費しても空気が余る状態である。より詳細には、当量比φは、下記(1)式によって定義される。
【0068】
上記式(1)において、stは、過不足なく燃料と空気とが反応する時の燃料質量流量の空気質量流量に対する割合である。
【0069】
燃料噴射制御器90は、センサ60から、飛しょう体1のマッハ数Mの測定値を取得する。また、燃料噴射制御器90は、後述の推力制御器84から伝達される総燃料噴射量TAについての情報とマッハ数Mについての情報と高度Hについての情報に基づいて、当量比φを算出する。
【0070】
マッハ数Mが3未満では、主流空気MAの動圧が低いため、燃焼に伴う高圧領域HPの長さ(燃焼器12の長手方向に沿った長さ)が長い。また、当量比φが0.7以上(燃料の割合が比較的高い。)の場合の燃焼圧は、当量比φが0.7未満(燃料の割合が比較的低い。)の場合の燃焼圧よりも高い。このため、当量比φが0.7以上である場合、燃焼に伴う高圧領域HPの長さが長い。以上のことから、マッハ数Mが3未満、かつ、当量比φが0.7以上では、高圧領域HPが、境界14を超えてインレット11側に達するおそれがあるため、第1燃料噴射器20と第2燃料噴射器30の両者を非作動状態(
図7Dの「×」を参照。)とする(制御動作AA、制御動作AB)。この場合、例えば、燃料噴射制御器90は、後述のオートパイロット82に対して推力指令値の修正を要求する。あるいは、この場合は、ジェットエンジンを作動させず、ロケットモータ3によって、飛しょう体1を飛しょうさせる。
【0071】
当量比φが0.7未満では、燃料の割合が比較的低く、燃焼圧が比較的低い。このため、燃焼に伴う高圧領域HPの長さが短い。以上のことから、マッハ数Mが3未満、かつ、当量比φが0.7以上では、第1燃料噴射器20を非作動状態とし、第2燃料噴射器30を作動状態(
図7Dの「○」を参照。)とする(制御動作AC、制御動作AD)。
【0072】
マッハ数Mが3以上4未満では、主流空気MAの動圧が、マッハ数Mが3未満の場合における主流空気の動圧と比較して、高い。このため、燃焼に伴う高圧領域HPの長さが、マッハ数が3未満の場合における高圧領域HPの長さと比較して、短い。よって、当量比φが0.7以上0.9未満である時については、下流側の第2燃料噴射器30を使用することが可能となる。すなわち、当量比φが0.7以上0.9未満である時については、第1燃料噴射器20を非作動状態とし、第2燃料噴射器30を作動状態とする(制御動作BB)。なお、制御動作BA、制御動作BC、制御動作BDについては、それぞれ、上記の制御動作AA、制御動作AC、制御動作ADと同一である。
【0073】
マッハ数Mが4以上5未満では、燃焼に伴う高圧領域HPの長さが、マッハ数Mが3以上4未満の場合における高圧領域HPの長さと比較して、短い。このため、当量比φが0.9以上の時については、下流側の第2燃料噴射器30を使用することが可能となる。また、当量比φが0.7未満の時については、最上流側の第1燃料噴射器20を使用することが可能となる。すなわち、当量比φが0.9以上の時については、第1燃料噴射器20を非作動状態とし、第2燃料噴射器30を作動状態とする(制御動作CA)。また、当量比φが0.7未満の時については、第1燃料噴射器20を作動状態とし、第2燃料噴射器30を非作動状態とする(制御動作CC、制御動作CD)。なお、制御動作CBについては、上記の制御動作BBと同一である。
【0074】
マッハ数Mが5以上6未満では、燃焼に伴う高圧領域HPの長さが、マッハ数Mが4以上5未満の場合における高圧領域HPの長さと比較して、短い。このため、当量比φが0.7以上の時については、最上流側の第1燃料噴射器20を使用することが可能となる。また、マッハ数Mが5以上6未満では、インレット11から取り込まれる主流空気MAの流量が非常に大きい。このため、0.7以上の当量比φを実現するためには、燃料の流量が、第1燃料噴射器20による燃料噴射だけでは足りなくなる。よって、0.7以上の当量比φを実現するために、下流側の第2燃料噴射器30についても作動状態とする。すなわち、当量比φ0.7以上の時については、第1燃料噴射器20を作動状態とし、第2燃料噴射器30を作動状態とする(制御動作DA、制御動作DB)。なお、制御動作DC、制御動作DDについては、それぞれ、上記の制御動作CC、制御動作CDと同一である。
【0075】
マッハ数Mが6以上では、インレット11から取り込まれる主流空気MAの流量が、マッハ数Mが5以上6未満の場合における主流空気の流量と比較して、大きい。このため、0.5以上0.7未満の当量比φを実現するためには、燃料の流量が、第1燃料噴射器20による燃料噴射だけでは足りなくなる。よって、0.5以上0.7未満の当量比φを実現するために、下流側の第2燃料噴射器30についても作動状態とする。すなわち、当量比φが0.5以上0.7未満の時については、第1燃料噴射器20を作動状態とし、第2燃料噴射器30を作動状態とする(制御動作EC)。なお、制御動作EA、制御動作EB、制御動作EDについては、それぞれ、上記の制御動作DA、制御動作DB、制御動作DDと同一である。
【0076】
第4例では、制御動作AC、制御動作AD、制御動作BB、制御動作BC、制御動作BD、制御動作CA、制御動作CBは、第1動作モードに対応する動作であるといえる。また、制御動作CC、制御動作CD、制御動作DC、制御動作DD、制御動作EDは、第2動作モードに対応する動作であるといえる。さらに、制御動作DA、制御動作DB、制御動作EA、制御動作EB、制御動作ECは、高出力動作モードということができる。
【0077】
第4例では、マッハ数の情報に加えて当量比の情報も用いて動作モード(制御動作)の決定を行う。このため、燃焼器内の状態により厳密に適応した動作モードの決定が可能となる。
【0078】
(第5例)
なお、上記第1例、乃至、第4例では、動作モードを段階的に変更する例を説明した。代替的に、動作モードを連続的に変更させてもよい。例えば、飛しょう体1の飛しょうマッハ数をMとする時、下記式(2)に基づいて、第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1(単位時間当たりの燃料噴射量)を変化させてもよい。ただし、k
1、k
2は、数値計算または実験等に基づいて、予め設定される係数である。
【0080】
任意のマッハ数M
3、M
4(ただし、M
3<M
4)について、マッハ数がM
3の時の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1は、マッハ数がM
4の時の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1よりも小さくなる。このため、マッハ数がM
3の時の燃料噴射制御器90の制御動作を第1動作モード、マッハ数がM
4の時の燃料噴射制御器90の制御動作を第2動作モードということができる。
【0081】
なお、第2燃料噴射器30から噴射される燃料噴射量A
2(単位時間当たりの燃料噴射量)は、総燃料噴射量TAから燃料噴射量A
1を減算することで算出される。なお、総燃料噴射量TAから燃料噴射量A
1を減算して算出される値が負の値となる場合には、例えば、第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量A
1=TAとし、第2燃料噴射器30から噴射される燃料噴射量A
2=0(ゼロ)とすればよい。
【0082】
(第6例)
第6例は、動作モードを連続的に変更させる他の例である。第6例は、第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1(単位時間当たりの燃料噴射量)をマッハ数Mおよび当量比φに基づいて連続的に変化させる例である。第6例では、下記式(3)に基づいて、第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1を変化させる。ただし、k
3、k
4、k
5は、数値計算または実験等に基づいて、予め設定される係数である。
【0084】
例えば、φは一定との条件の下、任意のマッハ数M
3、M
4(ただし、M
3<M
4)について、マッハ数がM
3の時の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1は、マッハ数がM
4の時の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1よりも小さくなる。このため、マッハ数がM
3の時の燃料噴射制御器90の制御動作を第1動作モード、マッハ数がM
4の時の燃料噴射制御器90の制御動作を第2動作モードということができる。
【0085】
例えば、Mは一定との条件の下、任意の当量比φ
1、φ
2(ただし、φ
1<φ
2)について、当量比がφ
2の時の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1は、当量比がφ
1の時の第1燃料噴射器20からの燃料噴射量A
1よりも小さくなる。このため、当量比がφ
2の時の燃料噴射制御器90の制御動作を第1動作モード、当量比がφ
1の時の燃料噴射制御器90の制御動作を第2動作モードということができる。
【0086】
なお、第2燃料噴射器30から噴射される燃料噴射量A
2(単位時間当たりの燃料噴射量)は、総燃料噴射量TAから燃料噴射量A
1を減算することで算出される。なお、総燃料噴射量TAから燃料噴射量A
1を減算して算出される値が負の値となる場合には、例えば、第1燃料噴射器20から噴射される燃料噴射量A
1=TAとし、第2燃料噴射器30から噴射される燃料噴射量A
2=0(ゼロ)とすればよい。
【0087】
第5例〜第6例の制御例では、動作モードを連続的に変化させることが可能となる。よって、制御をより精密に行うことが可能となる。なお、用いる数式は、上記式(2)または式(3)に限定されず、任意である。
【0088】
上記第1例〜第6例の制御例によれば、保炎器前方の高圧領域HPが広い時(高圧領域HPの燃焼器12の長手方向に沿った長さが長い時)は、最上流側に配置した第1燃料噴射器20を主要な燃料噴射器としては用いず、下流側に配置した第2燃料噴射器30を主要な燃料噴射器として用いている。このため、保炎器前方の高圧領域HPが広い時であっても、保炎位置を燃焼器12の下流側とすることで、推力低下を回避することが可能となる。
【0089】
また、上記第1例〜第6例の制御例によれば、保炎器前方の高圧領域HPが狭い時(高圧領域HPの燃焼器12の長手方向に沿った長さが短い時)は、最上流側に配置した第1燃料噴射器20を主要な燃料噴射器として用いている。換言すれば、保炎(又は、燃料の燃焼に伴って、主流空気の流路が仮想的に狭くなってしまう熱閉塞現象)の問題がクリティカルでない場合には、最上流側に配置した第1燃料噴射器20を主要な燃料噴射器として用いている。このため、高い比推力を実現することが可能である。
【0090】
更に、上記第1例〜第6例の制御例によれば、第1動作モードと第2動作モードとが選択可能であることにより、広い速度域(マッハ数領域)で運用可能な燃焼器を実現することができる。このため、ジェットエンジンの運用可能な速度域(マッハ数領域)が増大する。更に、ジェットエンジン2を作動する前にロケットモータ3を用いる機体に対して、ジェットエンジンの運用可能な速度域を増大させる上記第1例〜第6例の制御例を適用した場合、必要なロケットモータの量が減る。その結果、機体全体を小型軽量化できる。
【0091】
(飛行制御装置)
図4に示されるように、飛しょう体1は、飛行制御装置80を備える。
図4の例では、飛行制御装置80は、ジェットエンジン2に設けられ、かつ、燃料噴射制御器90を含む。代替的に、飛行制御装置80は、ジェットエンジン2以外の飛しょう体1の部分に設けられ、燃料噴射制御器90とは、信号線等を介して情報伝達可能に構成されてもよい。
【0092】
図8Aは、飛行制御装置および燃料噴射制御器の機能ブロック図の一例を示す。飛行制御装置80は、オートパイロット82と、推力制御器84と、燃料噴射制御器90を備える。オートパイロット82は、センサ60からマッハ数M又は高度H等の飛行パラメータに関する情報を受け取る。なお、センサ60は、ジェットエンジン2またはジェットエンジン2以外の飛しょう体1の部分に設けられ、マッハ数M又は高度H等を測定する。オートパイロット82は、飛行指令値(目標地点情報等)およびセンサ60から取得された情報に基づいて、速度維持又は目標加速度等の推力指令値を決定又は計算し、当該推力指令値を推力制御器84に伝達する。推力制御器84は、推力指令値に基づいて、総燃料噴射量TA等を決定又は計算し、総燃料噴射量TA等を燃料噴射制御器90に伝達する。
【0093】
(燃料噴射制御器)
燃料噴射制御器90は、情報取得部901と、記憶部902と、動作モード決定部903と、燃料送出指示部905と、流量調整指示部906とを備える。燃料噴射制御器90は、総燃料噴射量補正部904を備えていてもよい。また、燃料噴射制御器90は、当量比算出部907を備えていてもよい。
【0094】
燃料噴射制御器90は、例えば、ハードウェアプロセッサを含む演算装置と、記憶装置とを備える。ハードウェアプロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、演算装置を、情報取得部901と、モード決定部903と、燃料送出指示部905と、流量調整指示部906、総燃料噴射量補正部904、当量比算出部907として機能させる。ハードウェアプロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、記憶装置を記憶部902として機能させる。また、ハードウェアプロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、第1動作モード、第2動作モード等の動作モード、あるいは、制御動作A乃至制御動作I等の制御動作を実行する。
【0095】
情報取得部901は、推力制御器84から、総燃料噴射量TA等の情報を取得する。また、情報取得部901は、センサ60から、マッハ数M、高度H等の情報(測定値)を取得する。取得された情報は、記憶部902に記憶される。
【0096】
記憶部902は、動作モードを決定するためのテーブルまたは関数を記憶している。テーブルは、例えば、
図7A又は
図7Bに例示されたマッハ数と各燃料制御器の制御動作(又は、動作モード)とを対応付けるテーブル、
図7Cに例示されたマッハ数と高度と各燃料制御器の制御動作(又は、動作モード)とを対応付けるテーブル、7D図に例示されたマッハ数と当量比と各燃料制御器の制御動作(又は、動作モード)とを対応付けるテーブルである。関数は、例えば、式(2)に例示されたマッハ数と各燃料噴射器からの燃料噴射量(又は、動作モード)とを対応付ける関数、式(3)に例示されたマッハ数と当量比と各燃料噴射器からの燃料噴射量(又は、動作モード)とを対応付ける関数である。
【0097】
動作モード決定部は、情報取得部901が取得するマッハ数M、高度H、総燃料噴射量TA、又は、後述の当量比算出部907が算出する当量比φについての情報、および、記憶部902に記憶されたテーブルまたは関数に基づいて、各燃料噴射器の動作モード(例えば、第1動作モード、第2動作モード、遷移動作モード、高出力モード等)又は制御動作(例えば、制御動作A、B、C、D、E、F、G、H、I、AA、AB、AC、AD、BA、BB、BC、BD、CA、CB、CC、CD、DA、DB、DC、DD、EA、EB、EC、ED等)を決定する。
【0098】
総燃料噴射量補正部904は、情報取得部901が取得した総燃料噴射量TAについての情報および動作モード決定部903によって決定された動作モード又は制御動作に基づいて、総燃料噴射量TAを補正する。第1燃料噴射器20から噴射される燃料Gの燃焼時間は、第2燃料噴射器30から噴射される燃料Gの燃焼時間よりも長いため、第1燃料噴射器20を用いた場合の比推力は、第2燃料噴射器30を用いた場合の比推力よりも大きい。このため、第1燃料噴射器20を用いる場合には、必要に応じて、総燃料噴射量TAを減少させるように補正する。
【0099】
燃料送出指示部905は、総燃料噴射量TA(又は、補正された総燃料噴射量)に対応する燃料を送出するよう、燃料供給系(具体的には、定量ポンプPu)に指示を送る。
【0100】
流量調整指示部906は、総燃料噴射量TA(又は、補正された総燃料噴射量)および決定された動作モード又は制御動作に基づいて、各燃料噴射器から噴射される燃料の量を調整するために、燃料供給系(具体的には、流量調整器36)に指示を送る。
【0101】
当量比算出部907は、情報取得部901が取得したマッハ数M、高度H、総燃料噴射量TA等の情報に基づいて、当量比φを算出する。
【0102】
図8Bは、飛行制御装置および燃料噴射制御器の機能ブロック図の他の例(高圧領域推定器を含む例)を示す。また、
図9は、高圧領域推定器によって高圧であるか否かが推定される位置Pを示す。
【0103】
飛行制御装置80Aは、
図8Aの例と比較して、高圧領域推定器908を備える点、および、当量比算出部907が削除されている点で異なる。なお、
図8Bの例では、高圧領域推定器908が、燃料噴射制御器90Aに設けられているが、高圧領域推定器908は、燃料噴射制御器90Aの外部に設けられていてもよい。
図8Bにおけるオートパイロット82、推力制御器84、情報取得部901、総燃料噴射量補正部904、燃料送出指示部905、流量調整指示部906の機能は、それぞれ、
図8Aにおけるオートパイロット82、推力制御器84、情報取得部901、総燃料噴射量補正部904、燃料送出指示部905、流量調整指示部906の機能と同一である。
【0104】
記憶部902は、例えば、燃焼器12内の予め設定された位置Pにおける圧力とマッハ数との関係(あるいは、圧力とマッハ数と高度との関係)を記憶している。例えば、位置Pが第1保炎器22の上流側に設定される時には、第1燃料噴射器20が動作状態にあり、炎が第1保炎器22で保炎されているとの条件下における、位置Pにおける圧力とマッハ数との関係を記憶している(位置Pについては、
図9を参照。)。
【0105】
位置Pにおける圧力とマッハ数との関係は、数値計算あるいは実験等に基づいて予め求められる。高圧領域推定器908は、位置Pにおける圧力とマッハ数との関係と、センサ60により測定されるマッハ数M等の情報に基づいて、位置Pにおける圧力推定値を決定または計算する。また、高圧領域推定器908は、決定または計算された圧力推定値に基づいて、第1燃料噴射器20を作動させた場合に、位置Pが第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPに含まれるか否かを判定する。そして、判定結果を動作モード決定部903に伝達する。
【0106】
位置Pが高圧領域HPに含まれると判定された場合、動作モード決定部903は、第1動作モードを選択し、例えば、第1燃料噴射器20を非作動状態にするとともに第2燃料噴射器30を作動状態とする。他方、位置Pが高圧領域HPに含まれないと判定された場合、動作モード決定部903は、第2動作モードを選択し、例えば、第1燃料噴射器20を作動状態にするとともに第2燃料噴射器30を非作動状態とする。
【0107】
図8A〜
図8Bの例では、ジェットエンジン2は、センサ60と、動作モード決定部903とを備えている。動作モード決定部903は、センサ60によって測定される測定値(マッハ数M、高度H等)に基づいて、第1動作モードと第2動作モードを含む複数の動作モードの中から採用すべき動作モードを決定している。センサ60は、飛しょう体が一般的に備える構成である。よって、
図8A〜
図8Bの例では、制御装置に改良を加えるだけで、第1動作モードまたは第2動作モードの選択および実行が可能である。
【0108】
また、
図8Bの例では、ジェットエンジンは、高圧領域推定器を備える。よって、
図7A〜
図7Dで例示されたテーブル、又は、式(2)〜式(3)で例示された関数を用意することなく、第1動作モードまたは第2動作モードの選択および実行が可能である。
【0109】
(変形例1)
図10A〜
図10Cを参照して、実施形態の変形例について説明する。
図10Aは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図である。
図10Bは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図であり、第2燃料噴射器を作動させた場合を示している。
図10Cは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図であり、第1燃料噴射器を作動させた場合を示している。なお、
図10A〜
図10Cに記載の実施形態(変形例)において、
図4〜
図9に記載の実施形態と同じ構成要素については、同じ図番を用いている。
【0110】
図10A〜
図10Cから把握されるように、変形例のジェットエンジン2Aでは、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aの位置が、
図4〜
図9に記載の実施形態のジェットエンジン2における第2燃料噴射器30および第2保炎器32の位置と異なっている。
【0111】
図10A〜
図10Cに記載の実施形態では、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aが、第1燃料噴射器20および第1保炎器22が設けられた壁部(燃焼器12の壁部)と対向する壁部に設けられている。換言すれば、第1燃料噴射器20および第1保炎器22が燃焼器12の上壁に設けられているのに対し、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aは燃焼器12の下壁に設けられている。更に、別の言い方をすれば、第2保炎器32Aは、主流空気MAの流れの方向にみて、第1保炎器22とオーバーラップしない位置に配置されている。また、第2燃料噴射器30Aは、主流空気MAの流れの方向にみて、第1燃料噴射器20とオーバーラップしない位置に配置されている。
【0112】
図5Cに記載された実施形態では、第2燃料噴射器30から噴射された燃料Gおよび燃料Gの燃焼により形成される炎が、燃焼器12の壁面近傍に形成される境界層(流体の境界層)を通って上流側に伝播する可能性がある。そして、伝播した炎は、第1保炎器22で保炎され、第1保炎器22の上流側に高圧領域HPが形成される可能性がある。このような事態を避けるため、第1保炎器22と、第2燃料噴射器30(又は、第2保炎器32)との間隔を長くする方策が考えられる。しかし、当該方策では、燃焼器が大型化することとなる。代替的に、
図10A〜
図10Cに記載の実施形態を採用する方策が考えられる。当該方策では、燃焼器を大型化する必要がない。
図10Bにおいて、第2燃料噴射器30Aから噴射された燃料Gおよび燃料Gの燃焼により形成される炎が、燃焼器12の壁面近傍に形成される境界層(流体の境界層)を通って上流側に伝播する場合を想定する。
図10A〜
図10Cに記載の実施形態では、第1保炎器22は、主流空気MAの流れの方向にみて、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aとオーバーラップする位置に設けられていない。換言すれば、第1保炎器22は、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aと流体的に十分に隔離されている。このため、第2燃料噴射器30Aまたは第2保炎器32Aから上流側に伝播する燃料または炎が、第1保炎器22に到達することが抑制される。
【0113】
なお、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aを設ける位置は、
図10A〜
図10Cの例に限定されない。例えば、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aを燃焼器12の側壁に設けてもよい。代替的に、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aを燃焼器12の上壁に設けるとともに、第1燃料噴射器20および第1保炎器22を燃焼器12の下壁に設けてもよい。あるいは、燃焼器12内の空間50の断面形状(主流空気MAの流れに垂直な面における断面形状)が円形状である場合、第2燃料噴射器30Aおよび第2保炎器32Aを設ける位置を、第1燃料噴射器20および第1保炎器22を設ける位置に対して、燃焼器の中心軸まわりに所定角度(例えば、120度あるいは180度等)ずらしてもよい。
【0114】
(変形例2)
図11A〜
図11Dを参照して、実施形態の変形例について説明する。
図11Aは、実施形態に係るジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図である。また、
図11Bは、
図11Aにおける燃焼器の部分を拡大した図であり、高圧領域がセンサの位置まで達している状態を示す図である。
図11Cは、
図11Aにおける燃焼器の部分を拡大した図であり、高圧領域がセンサの位置まで達していない状態を示す図である。
図11Dは、飛行制御装置および燃料噴射制御器の機能ブロック図の一例を示す。なお、
図11A〜
図11Dに記載の実施形態(変形例)において、
図4〜
図10Cに記載の実施形態と同じ構成要素については、同じ図番を用いている。
【0115】
図11A〜
図11Bから把握されるように、変形例のジェットエンジン2Bでは、燃焼器12の壁部にセンサ60Aが配置されている点で、
図4〜
図9に記載の実施形態のジェットエンジン2、および、
図10A〜
図10Cに記載の実施形態のジェットエンジン2Aと異なる。センサ60Aは、第2保炎器32Aの上流側に配置される。センサ60Aは、第2保炎器32Aの上流端よりも予め設定された距離L
3だけ上流側に配置される。センサ60Aは、状態計測センサ(例えば、圧力センサまたは温度センサ等)である。
【0116】
第1燃料噴射器20が非作動状態であり、第2燃料噴射器30Aが作動状態である場合(第1動作モードの1例)を想定する。第2燃料噴射器30Aからは燃料Gが噴射される。噴射された燃料Gの燃焼により炎が形成され、炎が第2保炎器32Aで保炎される。
【0117】
図11Bでは、飛しょうマッハ数が比較的低いため、高圧領域HPが、センサ60Aの設けられた位置を超えて存在する。
図11Bの状態では、燃料噴射制御器は、第2動作モードへの切り替えは行わない。なぜなら、
図11Bの状態において、第2動作モードへの切り替えを行った場合、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPが、境界14を超えてインレット11側に達する可能性が高いからである。
【0118】
図11Cでは、飛しょうマッハ数が比較的高いため、高圧領域HPが、センサ60Aの設けられた位置まで達していない。
図11Bの状態から
図11Cの状態に至るまでの過程において、センサ60Aは、大きな状態変化(予め設定された第4閾値TH
4以上の状態変化)を検出する。例えば、センサ60Aが圧力センサである場合には、大きな圧力降下を検出する。例えば、センサ60Aが温度センサである場合には、大きな温度降下を検出する。センサ60Aによる状態変化(例えば、圧力降下、または、温度降下)の検出は、後述の燃料噴射制御器90Bに伝達される。燃料噴射制御器90Bは、センサ60Aによる第4閾値TH
4以上の状態変化の検出に応答して、第2動作モードへの切り替えを実行する。
図11Cの状態において、第2動作モードへの切り替えを行った場合、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPが、境界14を超えてインレット11側に達する可能性は低い。
【0119】
第2保炎器32Aの上流端からセンサ60Aまでの距離L
3と、第1保炎器22の上流端から境界14までの距離L
4との関係について説明する。ある飛しょう状態において、第1燃料噴射器20から燃料流量GF1で燃料を噴射する場合、第1保炎器22で保炎される炎によって第1保炎器22の上流側に高圧領域HPが分布する(以下、「分布A」という。)。ある飛しょう状態と同一の飛しょう状態において、第2燃料噴射器30Aから同一の燃料流量GF1で燃料を噴射する場合、第2保炎器32Aで保炎される炎によって第2保炎器32Aの上流側に高圧領域HPが分布する(以下、「分布B」という。)。この場合、分布Aの形状と、分布Bの形状とは、概ね一致する。よって、理論的には、L
3がL
4よりも短い場合、センサ60Aが第4閾値TH
4以上の状態変化を検出した時点で、燃料噴射制御器が、第2動作モードへの切り替えを行ったとしても、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPは、境界14を超えてインレット11側には達しない。このことから、第2保炎器32Aの上流端からセンサ60Aまでの距離L
3が、第1保炎器22の上流端から境界14までの距離L
4よりも短くなるように、センサ60Aを配置することが好ましいといえる。
【0120】
また、燃焼器12内での主流空気MAの流れの変動や燃焼状態の変動を考慮すると、L
3/L
4の範囲は、0.5以上0.7以下の範囲であることが、より好ましい。あるいは、第1保炎器22の上流端から第1燃料噴射器20までの距離をL
5と定義した場合、L
3の長さが、(2×L
4+L
5)/3よりも小さな値となるように、センサ60Aの位置を設定するとよい。その理由は、次のとおりである。第1燃料噴射器20と境界14との距離は、(L
4−L
5)である。安全率を考慮すると、高圧領域HPは、第1燃料噴射器20の位置から上流側に、2×(L
4−L
5)/3の長さをとった位置を超えて形成されないことが好ましい。換言すれば、高圧領域は、第1保炎器22の上流端から上流側に、2×(L
4−L
5)/3+L
5の長さをとった位置を超えて形成されないことが好ましい。当該長さ2×(L
4−L
5)/3+L
5が、(2×L
4+L
5)/3である。
【0121】
図11Dは、飛行制御装置および燃料噴射制御器の機能ブロック図の一例を示す。また、
図11Dに記載の機能ブロック図は、
図8Aに記載の機能ブロック図と比較して、センサ60Aからの情報が、飛行制御装置80Bの燃料噴射制御器90Bに伝達される点で異なる。また、
図11Dの例では、燃料噴射制御器90Bが、比較部909を備える。なお、
図11Dにおけるオートパイロット82、推力制御器84、総燃料噴射量補正部904、燃料送出指示部905、流量調整指示部906、当量比算出部907の機能は、それぞれ、
図8Aにおけるオートパイロット82、推力制御器84、総燃料噴射量補正部904、燃料送出指示部905、流量調整指示部906、当量比算出部907の機能と同一である。
【0122】
情報取得部901は、推力制御器84から、総燃料噴射量TA等の情報を取得する。また、情報取得部901は、センサ60Aから、圧力、温度等の状態量(測定値)に関する情報を取得する。取得された情報は、記憶部902に記憶される。
【0123】
記憶部902は、情報取得部901によって取得された圧力、温度等の状態量(測定値)が、大きく変化したか否かを決定するための第4閾値TH
4に関する情報を記憶している。第4閾値TH
4に関する情報は閾値自体であってもよい。代替的に、閾値に関する情報は、マッハ数M(または、マッハ数Mおよび高度H)と第4閾値TH
4の関係を示す関数であってもよい。代替的に、第4閾値TH
4に関する情報は、マッハ数M(又はマッハ数Mおよび高度H)と第4閾値TH
4の関係を示すテーブルであってもよい。
【0124】
比較部909は、情報取得部901によって取得された圧力、温度等の状態量(測定値)の変化が、第4閾値TH
4以上であるか否かを判定する。なお、第4閾値TH
4は、記憶部902に記憶された閾値に関する情報(又は、閾値に関する情報、および、マッハ数M、高度H等の情報)に基づいて決定される。
【0125】
圧力、温度等の状態量の変化が、第4閾値TH
4未満であると判定された場合、動作モード決定部903は、第1動作モードを維持し、例えば、第1燃料噴射器20を非作動状態にするとともに第2燃料噴射器30を作動状態とする。他方、圧力、温度等の状態量(測定値)の変化が、第4閾値TH
4以上であると判定された場合、動作モード決定部903は、第2動作モードを選択し、例えば、第1燃料噴射器20を作動状態にするとともに第2燃料噴射器30を非作動状態とする。
【0126】
図11A〜
図11Dの実施形態では、ジェットエンジンは、第2保炎器32Aの上流側に配置されるセンサ60A(状態計測センサ)と、第4閾値TH
4(閾値)を記憶する記憶部902と、動作モード決定部903を備えている。動作モード決定部903は、センサ60Aによって測定される測定値と第4閾値TH
4(閾値)との比較に基づいて、第1動作モードと第2動作モードを含む複数の動作モードの中から採用すべき動作モードを決定している。
【0127】
図11A〜
図11Dの実施形態では、状態量(測定値)の変化と第4閾値TH
4とを比較することにより、高圧領域HPが、センサ60Aの位置まで達しているか否かを判定している。代替的に、状態量(測定値)自体と閾値とを比較することにより、高圧領域HPが、センサ60Aの位置まで達しているか否かを判定してもよい。
【0128】
なお、
図11A〜
図11Dの実施形態では、第2保炎器32Aの上流側にセンサ60Aを設けている。そして、第1動作モードの実行時に、高圧領域が、センサ60Aの位置まで達しているか否かを判定している。高圧領域が、センサ60Aの位置まで達していないと判定(推定)された時、第1動作モードから第2動作モードへの切り替えを実施する。しかし、付加的に、
図11Eに示されるように、第1保炎器22の上流側にセンサ60Bを設け、高圧領域HPが、センサ60Bの位置まで達しているか否かを判定してもよい。この場合、第2動作モードの実行時に、高圧領域HPが、センサ60Bの位置まで達しているか否かを判定する。高圧領域HPが、センサ60Bの位置まで達していると判定(推定)された時、第2動作モードから第1動作モードへの切り替えを実施する。センサ60Bを設けることで、第2動作モードの実行時に、外乱等により、高圧領域HPがセンサ60Bの位置まで拡大した際に、第1動作モードに切り替えることが可能となる。その結果、推力の低下を防止することができる。
【0129】
すなわち、センサ60Aおよびセンサ60Bを設けた場合、燃料噴射制御器90Bは、前記センサ60Aによって測定される測定値から推定される第2保炎器32Aの上流側の高圧領域HPの縮小に応答して、前記第1動作モードから前記第2動作モードに切り替え、燃料噴射制御器90Bは、センサ60Bによって測定される測定値から推定される第1保炎器22の上流側の高圧領域HPの拡大に応答して、第2動作モードから第1動作モードに切り替えることが可能となる。
【0130】
図11A〜
図11Eに記載の実施形態では、
図7A〜
図7Dで例示されたテーブル、または、式(2)〜式(3)で例示される関数を準備する必要がない。よって、制御装置のコストの低減が可能である。また、
図11A〜
図11Eに記載の実施形態では、高圧領域HPの変化をセンサによる直接計測に基づいて判定するため、高圧領域HPの変化の判定がより正確となる。その結果、エンジン作動の確実性が向上する。
【0131】
(変形例3)
図12A〜
図12Dを参照して、実施形態の変形例について説明する。
図12Aは、燃焼器の部分を拡大した図であり、高圧領域がセンサの位置まで達している状態を示す図である。
図12Bは、燃焼器の部分を拡大した図であり、高圧領域がセンサの位置まで達していない状態を示す図である。
図12Cは、飛行制御装置および燃料噴射制御器の機能ブロック図の一例を示す。なお、
図12A〜
図12Cに記載の実施形態(変形例)において、
図11A〜
図11Dに記載の実施形態と同じ構成要素については、同じ図番を用いている。
【0132】
図12A〜
図12Bから把握されるように、変形例のジェットエンジンでは、燃焼器12の壁部にセンサ60Bが配置されている点で、
図11A〜11Dに記載の実施形態のジェットエンジン2Bと異なる。センサ60Bは、第1保炎器22の上流側に配置される。センサ60Bは、第1保炎器22の上流端よりも予め設定された距離L
6だけ上流側に配置される。センサ60Bは、状態計測センサ(例えば、圧力センサまたは温度センサ等)である。
【0133】
センサ60Aの設けられる位置は、
図11A〜11Dに記載の実施形態におけるセンサ60Aの位置と同じである。
【0134】
図12A〜
図12Cの実施形態において、センサ60Bは、第2保炎器32Aの上流端からセンサ60Aまでの距離L
3と、第1保炎器22の上流端からセンサ60Bまでの距離L
6が等しくなるように配置される。なお、L
3とL
6とが等しいことには、L
3とL
6とが実質的に等しいこと、すなわち、L
6/L
3が、0.8以上1.2以下であることが包含される。
【0135】
第1燃料噴射器20が非作動状態であり、第2燃料噴射器30Aが作動状態である場合(第1動作モードの1例)を想定する。第2燃料噴射器30Aからは燃料Gが噴射される。噴射された燃料Gの燃焼により炎が形成され、炎が第2保炎器32Aで保炎される。
【0136】
図12Aでは、飛しょうマッハ数が比較的低いため、高圧領域HPが、センサ60Aの設けられた位置を超えて存在する。
図12Aの状態では、センサ60Aによって測定される測定値VA(圧力値、温度値等)は、センサ60Bによって測定される測定値VB(圧力値、温度値等)と大きく異なる。なぜなら、センサ60Aが、高圧領域HPの内部にあるのに対し、センサ60Bは、高圧領域HPの内部にないからである。
図12Aの状態では、燃料噴射制御器は、第2制御動作への切り替えは行わない。なぜなら、
図12Aの状態において、第2制御動作への切り替えを行った場合、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPが、境界14を超えてインレット11側に達する可能性が高いからである。
【0137】
図12Bは、飛しょうマッハ数が比較的高いため、高圧領域HPが、センサ60Aの設けられた位置まで達していない。
図12Bの状態では、センサ60Aによって測定される測定値VA(圧力値、温度値等)は、センサ60Bによって測定される測定値VB(圧力値、温度値等)と概ね等しい。なぜなら、センサ60Aとセンサ60Bの両者が、高圧領域HPの内部にないからである。VA/VB(すなわち、センサ60Aが測定する値VAを、センサ60Bが測定する値VBで除した値)が、第5閾値TH
5より小さくなった時、第2動作モードへの切り替えを実行する。
図12Bの状態において、第2動作モードへの切り替えを行った場合、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPが、境界14を超えてインレット11側に達する可能性は低い。
【0138】
図12Cは、飛行制御装置および燃料噴射制御器の機能ブロック図の一例を示す。
図12Cに記載の機能ブロック図は、
図11Dに記載の機能ブロック図と比較して、センサ60Bからの情報が、飛行制御装置80Cの燃料噴射制御器90Cに伝達される点で異なる。また、
図12Cに記載の例では、マッハ数M、高度H等の情報が、センサ60から燃料噴射制御器90Cに伝達されていない。しかし、マッハ数M、高度H等の情報が、センサ60から燃料噴射制御器90Cに伝達されるようにしてもよい。なお、
図12Cにおけるオートパイロット82、推力制御器84、総燃料噴射量補正部904、燃料送出指示部905、流量調整指示部906、当量比算出部907の機能は、それぞれ、
図11Dにおけるオートパイロット82、推力制御器84、総燃料噴射量補正部904、燃料送出指示部905、流量調整指示部906、当量比算出部907の機能と同一である。
【0139】
情報取得部901は、推力制御器84から、総燃料噴射量TA等の情報を取得する。また、情報取得部901は、センサ60Aから、圧力、温度等の状態量に関する情報(測定値VA)を取得する。さらに、情報取得部901は、センサ60Bから、圧力、温度等の状態量に関する情報(測定値VB)を取得する。取得された情報は、記憶部902に記憶される。
【0140】
記憶部902は、センサ60Aによって測定された圧力、温度等の状態量(測定値VA)に関する情報が、センサ60Bによって測定された圧力、温度等の状態量(測定値VB)に関する情報と概ね等しくなったか否かを決定するための第5閾値TH
5を記憶している。
【0141】
比較部909は、センサ60Aによって測定された圧力、温度等の状態量(測定値VA)に関する情報が、センサ60Bによって測定された圧力、温度等の状態量(測定値VB)に関する情報と概ね等しくなったか否かを判定する。より具体的には、VA/VB(すなわち、センサ60Aが測定する値VAを、センサ60Bが測定する値VBで除した値)が、第5閾値TH
5より小さくなったか否かを判定する。
【0142】
VA/VBが、第5閾値TH
5以上であると判定された場合、動作モード決定部903は、第1動作モードを維持し、例えば、第1燃料噴射器20を非作動状態にするとともに第2燃料噴射器30を作動状態とする。他方、VA/VBが、第5閾値TH
5未満であると判定された場合、動作モード決定部903は、第2動作モードを選択し、例えば、第1燃料噴射器20を作動状態にするとともに第2燃料噴射器30を非作動状態とする。
【0143】
次に、第2動作モードから第1動作モードに切り替える場合について説明する。
図12Dは、第2動作モードを実行中の状態を示す。
図12Dにおいて、第1燃料噴射器20は作動状態であり、第2燃料噴射器30Aは非作動状態である。第1燃料噴射器20からは燃料Gが噴射される。噴射された燃料Gの燃焼により炎が形成され、炎が第1保炎器22で保炎される。第1保炎器22で保炎される火炎による圧力上昇は燃焼器12の範囲において維持され(ノズルにて膨張する際においては圧力上昇は低下する),センサ60Aは圧力上昇を測定する。なお、第1保炎器22の上流側に形成される高圧領域HPは、センサ60Bまでは到達していない。
図12Dの状態では、VA/VB(すなわち、センサ60Aによって測定される測定値VAを、センサ60Bによって測定される測定値VBで除した値)は、1より大きくなる。
【0144】
図12Dに示される状態から、何らかの外乱により、高圧領域HPがセンサ60Bの位置を超えて上流側に広がった場合を想定する。この場合、高圧領域HPが、境界14を超えて上流側に広がり、その結果、ジェットエンジンの推力の低下が発生するリスクがある。したがって、本変形例では、高圧領域HPがセンサ60Bの位置を超えて上流側に広がった場合、第2動作モードから第1動作モードに切り替える。より具体的には、VA/VBが、予め設定された第6閾値TH
6以下となった場合(すなわち、センサ60Bが測定する値VBが大きく上昇した場合)、第2動作モードから第1動作モードに切り替える。
【0145】
図12A〜12Dに記載の実施形態では、ジェットエンジンは、第1保炎器22の上流側に配置されるセンサ60B(状態計測センサ)と、第2保炎器32Aの上流側に配置されるセンサ60A(状態計測センサ)と、動作モード決定部903とを備えている。動作モード決定部903は、センサ60Bによって測定される測定値(VB)とセンサ60Aによって測定される測定値(VA)との比較(VA/VB)に基づいて、第1動作モードと第2動作モードを含む複数の動作モードの中から採用すべき動作モードを決定している。
【0146】
なお、
図12A〜12Dに記載の実施形態では、VA/VB(すなわち、センサ60Aによって測定される測定値VAを、センサ60Bによって測定される測定値VBで除した値)と第5閾値TH
5(又は第6閾値TH
6)とを比較することにより、高圧領域HPが、センサ60A(又はセンサ60B)の位置まで達しているか否かを判定する例を説明した。しかし、代替的に、VA−VB(すなわち、センサ60Aによって測定される測定値VAから、センサ60Bによって測定される測定値VBを減算して得られる値)と閾値とを比較することにより、高圧領域HPが、センサ60A(又はセンサ60B)の位置まで達しているか否かを判定してもよい。
【0147】
図12A〜12Dに記載の実施形態では、センサ60Aによって測定される測定値VAとセンサ60Bによって測定される測定値VBとの比較を行っている。代替的に、
図11A〜
図11Dに記載の実施形態と同様に、センサ60Aによって測定される測定値の変化(又は、測定値自体)と第4閾値TH
4とを比較することにより、高圧領域HPが、センサ60Aの位置まで達しているか否かを判定するようにしてもよい。同様に、センサ60Bによって測定される測定値の変化(又は、測定値自体)と第7閾値TH
7とを比較することにより、高圧領域HPが、センサ60Bの位置まで達しているか否かを判定するようにしてもよい。この場合、燃料噴射制御器90Cは、センサ60Aによって測定される測定値の変化が第4閾値TH
4以上となった時に、第1動作モードから第2動作モードに切り替え、センサ60Bによって測定される測定値の変化が第7閾値TH
7以上となった時に、第2動作モードから第1動作モードに切り替えることとなる。換言すれば、燃料噴射制御器90Cは、センサ60Aによって測定される測定値(VA)から推定される第2保炎器32Aの上流側の高圧領域HPの縮小に応答して、第1動作モードから前記第2動作モードに切り替え、センサ60Bによって測定される測定値(VB)から推定される第1保炎器22の上流側の高圧領域HPの拡大に応答して、前記第2動作モードから前記第1動作モードに切り替えるようにしてもよい。
【0148】
図12A〜12Dに記載の実施形態では、
図7A〜
図7Dに例示されるテーブル、または、式(2)〜式(3)で例示される関数を準備する必要がない。よって、制御装置のコストの低減が可能である。また、
図12A〜12Dの実施形態では、高圧領域HPの変化を、1方のセンサが計測する値と他方のセンサが計測する値との比較に基づいて行うため、高圧領域HPの変化の判定が更に正確となる。さらに、
図12A〜12Dの実施形態では、第2動作モード実行中に、外乱の影響で高圧領域HPが広がった場合、第1動作モードに切り替えることが可能である。その結果、エンジン作動の確実性が向上する。
【0149】
(変形例4)
図13を参照して、実施形態の変形例について説明する。
図13は、燃焼器の部分を拡大した図であり、高圧領域がセンサの位置まで達している状態を示す図である。なお、
図13に記載の実施形態(変形例)において、
図12A〜
図12Dに記載の実施形態と同じ構成要素については、同じ図番を用いている。
【0150】
図13から把握されるように、変形例のジェットエンジンでは、燃焼器12の壁部にセンサ60C、および、センサ60Dが配置されている点で、
図12A〜12Dに記載の実施形態のジェットエンジンと異なる。センサ60Cは、第2保炎器32Aの上流側、かつ、センサ60Aの上流側に配置される。センサ60Cは、第2保炎器32Aの上流端よりも予め設定された距離L
7だけ上流側に配置される。センサ60Cは、状態計測センサ(例えば、圧力センサまたは温度センサ等)である。センサ60Dは、第2保炎器32Aの上流側、かつ、センサ60Cの上流側に配置される。センサ60Dは、第2保炎器32Aの上流端よりも予め設定された距離L
8だけ上流側に配置される。センサ60Dは、状態計測センサ(例えば、圧力センサまたは温度センサ等)である。
【0151】
センサ60A、および、センサ60Bの設けられる位置は、それぞれ、
図12A〜12Dに記載の実施形態におけるセンサ60A、および、センサ60Bの位置と同じである。
【0152】
次に、センサ60C、センサ60Dの配置について説明する。第2保炎器32Aの上流端から境界14までの距離をL
9と定義すると、L
8/L
9の範囲が、0.5以上0.7以下の範囲となる位置にセンサ60Dが配置されるのが好ましい。あるいは、第2保炎器32Aの上流端から第2燃料噴射器30までの距離を距離L
10と定義した場合、L
8の長さが、(2×L
9+L
10)/3よりも小さな値となるように、センサ60Dの位置を設定するとよい。その理由は、次のとおりである。第2燃料噴射器30と境界14との距離は、(L
9−L
10)である。安全率を考慮すると、高圧領域HPは、第2燃料噴射器30の位置から上流側に、2×(L
9−L
10)/3の長さをとった位置を超えて形成されないことが好ましい。換言すれば、高圧領域は、第2保炎器32Aの上流端から上流側に、2×(L
9−L
10)/3+L
10の長さをとった位置を超えて形成されないことが好ましい。当該長さ2×(L
9−L
10)/3+L
10=(2×L
9+L
10)/3である。センサ60Cは、センサ60Dとセンサ60Aの間に配置される。
【0153】
第1動作モードにおいて、高圧領域HPが、センサ60Dを超えて上流側に広がった場合、高圧領域HPの更なる広がりによって、ジェットエンジンの推力が低下をするおそれがある。このため、本変形例では、第1動作モードにおいて、高圧領域HPが、センサ60Dを超えて上流側に広がった場合、すなわち、センサ60Dが、閾値を超える状態変化を検出した場合、例えば、第2燃料噴射器30Aから噴射される燃料噴射量を一時的に低減する。
【0154】
本実施形態では、上述の実施形態に加え、第2保炎器32Aの上流側の高圧領域HPの変化をより精密に検出することができる。また、第2保炎器32Aの上流側の高圧領域HPが境界14まで達する事態を未然に防ぐことが可能となる。
【0155】
図4〜
図13に記載の実施形態では、第1燃料噴射器20と第2燃料噴射器30(又は第2燃料噴射器30A)の2つの燃料噴射器を備えた例について説明した。しかし、燃料噴射器の数は、2つに限らず、任意である。燃焼器12の長手方向に沿って、更に、他の燃料噴射器を配置してもよい。代替的に、あるいは、付加的に、燃焼器12のスパン方向に沿って、更に、他の燃料噴射器を配置してもよい。また、
図4〜
図10Cに記載の実施形態では、第1保炎器22と第2保炎器32(又は第2保炎器32A)の2つの保炎器を備えた例について説明した。しかし、保炎器の数は、2つに限らず、任意である。燃焼器12の長手方向に沿って、更に、他の保炎器を配置してもよい。代替的に、あるいは、付加的に、燃焼器12のスパン方向に沿って、更に、他の保炎器を配置してもよい。燃料噴射器を3つ以上設ける場合、最上流側の燃料噴射器が、実施形態の第1燃料噴射器に該当し、下流側の燃料噴射器のうちの任意のいずれか1つが、実施形態の第2燃料噴射器に該当することとなる。また、第1燃料噴射器から噴射される燃料の燃焼に用いる炎を保炎する保炎器が、第1保炎器に該当し、第2燃料噴射器から噴射される燃料の燃料に用いる炎を保炎する保炎器が、第2保炎器に該当することとなる。なお、燃料噴射器の総数と保炎器の総数とは一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0156】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態にも適用可能である。