【文献】
Neil B. McKeown et al.,The Synthesis of robust, polymeric hole-transport materials from oligoarylamine substituted styrenes,Journal of Materials Chemistry,英国,The Royal Society of Chemistry,2007年 2月27日,2007/17,P. 2088-2094
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、下記式(1)で示される構成単位(A)を有する電荷輸送材料を提供する。
【0013】
ただし、R
1、R
2およびR
5の一つが、下記式(3)で示される置換基(a)であり:
【0015】
上記式(3)中、Xは、主鎖を構成する連結基を表し、Aは、単結合、またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基を表す、
かつ残りのR
1、R
2およびR
5が、水素原子、またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、1価の芳香族基もしくは複素環基を表し;
R
3、R
4、R
6〜R
8、R
10〜R
12、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基またはシリル基を表し;ならびに
R
9およびR
13は、それぞれ独立して、水素原子、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基または式(9):−N(R
20)(R
21)−のアミノ基を表し、この際、R
9およびR
13の少なくとも一方は、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基または式(9):−N(R
20)(R
21)−のアミノ基を表し、この際、上記式(9)中、R
20はアリール基であり、およびR
21はアリーレン基であり、この際、R
21はR
8またはR
10と連結して環を形成する。
【0016】
電荷輸送材料には、電荷輸送ユニットを主鎖に有する主鎖型の電荷輸送材料及び電荷輸送ユニットを側鎖に有する側鎖型の電荷輸送材料がある。側鎖型の電荷輸送材料は、一般的に、主鎖型材料に比べて、電荷移動度が低い傾向がある。本発明者らは、側鎖型の電荷輸送材料が電荷移動度が低い原因を鋭意検討を行った結果、側鎖型の材料の主鎖骨格が電荷輸送に関与しておらず、体積当たりの電荷輸送性能が低いためであると推定した。このため、電荷輸送ユニットの密度(割合)の高い電荷輸送材料の構造について鋭意検討を行った結果、特定の置換基を導入したトリフェニルアミンユニットを有する電荷輸送材料が上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明の電荷輸送材料は、構成単位(A)において、置換基「R
9」および/または「R
13」がフェニル基等の特定の基であることを特徴とする。本発明の電荷輸送材料[構成単位(A)]は、電荷輸送性に優れるトリフェニルアミン系ユニットに、電荷耐性を付与または向上するための置換基「R
9」および/または「R
13」が導入される構造を有する。このため、本発明の電荷輸送材料を有する有機電界発光素子は電荷耐性に優れ、特に正孔輸送材料として使用する場合には、電子に対しての劣化影響を小さくして、素子寿命を向上できる。また、本発明の電荷輸送材料を有する有機電界発光素子では、単位密度あたりの電荷輸送ユニットを十分な割合で有しているため、電荷輸送性能に優れる(電荷輸送性能が低下することを防ぐ)ことが可能である。
【0017】
加えて、本発明の電荷輸送材料は、下記式(2)で示される構成単位(B)、または下記式(8)で示される構成単位(B’)をさらに有することが好ましい。
【0020】
当該形態により、上記式(2)の構成単位(B)または構成単位(B’)をさらに導入することによって、電荷輸送能の低下をある程度抑制しつつ、架橋や成膜が可能である。従来、電荷輸送材料を用いて層(例えば、正孔注入層や正孔輸送層)を形成する場合には、架橋や成膜後の硬化を行う必要があるため、電荷輸送材料は架橋基を持つ必要がある。しかしながら、架橋基を有するユニットを別途導入した電荷輸送材料では、主鎖型に比べ、側鎖型の電荷輸送材料は、体積当たりの電荷輸送能の割合が更に低下し、有機電界発光素子の駆動電圧の上昇を引き起こすという問題があった。当該課題に対しては、特に電荷輸送材料が上記式(2)の構成単位(B)または式(8)の構成単位(B’)をさらに有することが好ましい。当該形態に係る電荷輸送材料は、架橋基を有するユニット及び電荷輸送ユニット(アミンユニット)双方の役割を兼務する。このため、当該形態に係る電荷輸送材料は、電荷輸送ユニットの密度(割合)が高いため、高い電荷輸送性能を維持しつつ、架橋性を付与することができる。また、当該形態の電荷輸送材料は、容易に合成でき、大量生産の観点からも好ましい。
【0021】
したがって、本発明の電荷輸送材料は電荷輸送性に優れるため、本発明の電荷輸送材料を有する有機電界発光素子では、駆動電圧の低下を有効に抑制・防止し、素子の効率を向上できる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書では、式(1)の構成単位(A)を単に「構成単位(A)」とも、式(2)の構成単位(B)を単に「構成単位(B)」とも、式(8)の構成単位(B’)を単に「構成単位(B’)」とも、それぞれ、称する。また、本明細書において、範囲を示す「x〜y」は「x以上y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
【0023】
[電荷輸送材料]
本発明に係る電荷輸送材料は、下記式(1)の構成単位(A)を有する。構成単位(A)は、電荷輸送性に優れるトリフェニルアミン系ユニットに、電荷耐性を付与するための置換基「R
9」および/または「R
13」が導入される。このため、本発明の電荷輸送材料を有する有機電界発光素子は電荷耐性に優れ、特に正孔輸送材料として使用する場合には、電子に対しての劣化影響を小さくして、素子寿命を向上できる。また、本発明の電荷輸送材料を有する有機電界発光素子では、単位密度あたりの電荷輸送ユニットの割合の低下を抑制するため、高い電荷輸送性能を発揮できる。
【0024】
上記式(1)において、R
1、R
2およびR
5の一つが、下記式(3)で示される置換基(a)である。
【0026】
なお、本明細書では、式(3)の置換基(a)を単に「置換基(a)」とも称する。
【0027】
上記置換基(a)を表す式(3)中、Xは、主鎖を構成する連結基を表す。ここで、主鎖を構成する連結基としては、構成単位(A)の主鎖を構成できる構造であれば特に制限されない。具体的には、下記構造が挙げられる。
【0029】
上記連結基のうち、Xは、下記構造を有する連結基が好ましい。
【0031】
また、上記式(3)中、Aは、単結合、またはハロゲン原子、シアノ基(−CN)、アルキル基、アリール基、アミノ基(−NH
2)、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基を表す。
【0032】
ここで、2価の芳香族基としては、炭素原子および水素原子から構成される環由来の基であれば、特に制限されない。具体的には、ベンゼン環(フェニレン基)、ビフェニル環(ビフェニレン基)、ナフタレン環(ナフタレニル基)、アントラセン環(アントラセニル基)およびフルオレン環(フルオレニル基)から導かれるものである。これらのうち、芳香族基は、ベンゼン環由来の基(フェニレン基)またはフルオレン環由来の基(フルオレニル基)であることが好ましい。
【0033】
上記2価の複素環基は、炭素原子および水素原子、並びに窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1以上のヘテロ原子から構成される環由来の基であれば、特に制限されない。具体的には、チオフェン環、ジチエノチオフェン環、シクロペンタジチオフェン環、フェニルチオフェン環、ジフェニルチオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、クマリン環(例えば、3,4−ジヒドロクマリン)、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ローダニン環、ピラゾロン環、イミダゾロン環、ピラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、フルオレン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾ(c)チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドール環、フタラジン環、シナノリン環、キナゾリン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルボリン環(カルボリンの任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったもの)、1,10−フェナントロリン環、キノン環、ローダニン環、ジローダニン環、チオヒダントイン環、ピラゾロン環、ピラゾリン環から導かれるものである。これらの複素環を複数組み合わせて用いてもよく、例えば、フェニルピリジン(例えば、4−フェニルピリジン)、スチリルチオフェン(例えば、2−スチリルチオフェン)、2−(9H−フルオレン−2−イル)チオフェン、2−フェニルベンゾ[b]チオフェン、フェニルビチオフェン環、(1,1−ジフェニル−4−フェニル)−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ジブタジエン、4−(フェニルメチレン)−2,5−シクロヘキサジエン、フェニルジチエノチオフェン環から導かれるものなどがある。これらのうち、カルバゾール環が好ましい。
【0034】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0035】
また、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルキル基は、特に制限されないが、炭素数1〜24の直鎖または分岐状のアルキル基でありうる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。
【0036】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアリール基は、特に制限されないが、炭素原子数6〜20のアリール基でありうる。具体的には、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基が好ましい。
【0037】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数1〜24の直鎖または分岐状のアルコキシ基でありうる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−エチルペンチルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましい。
【0038】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいカルバゾール基は、下記のいずれかを表す。なお、下記において、Zは、水素原子、アリール基、アルキル基またはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルキル基およびアルコキシ基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいフルオレン基は、下記のいずれかを表す。なお、下記において、ZおよびZ’は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルキル基およびアルコキシ基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい複素環基は、特に制限されず、具体的には、2価の芳香族基の価数を変化させる以外は、上記複素環基で記載されたものと同様の複素環基が例示されるため、ここでは説明を省略する。
【0043】
上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいシリル基は、式:−Si(Z
1)(Z
2)(Z
3)で示される。ここで、Z
1〜Z
3は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基を表す。ここで、Z
1〜Z
3は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基およびアルコキシ基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルキル基およびアルコキシ基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0044】
これらのうち、Aは、単結合、2価の芳香族基または複素環基で置換される2価の芳香族基であることが好ましく、単結合または2価の芳香族基であることが好ましい。
【0045】
主鎖を構成する連結基(X)に結合する置換基(a)はR
1、R
2またはR
5のいずれでもよいが、R
1が置換基(a)であることが好ましい。このような構造をとると、アミンユニットの電荷輸送において生起するキノイド構造とそれに伴う副反応が、置換基導入により減少するため、素子としての電荷耐性がより向上できる。
【0046】
また、上述したように、上記式(1)中、R
1、R
2およびR
5の一つが置換基(a)であるが、置換基(a)でない残りのR
1、R
2およびR
5は、水素原子、またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、1価の芳香族基もしくは複素環基を表す。この際、残りのR
1、R
2およびR
5は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、置換基(a)でない残りのR
1、R
2およびR
5の定義は、上記置換基(a)における定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。ただし、1価の芳香族基は、上記置換基(a)における2価の芳香族基の価数を変化させて、読み替えるものとする。同様にして、1価の複素環基は、上記置換基(a)における2価の複素環基の価数を変化させて、読み替えるものとする。
【0047】
これらのうち、残りのR
1、R
2およびR
5は、水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましく、水素原子、アリール基であることがより好ましい。
【0048】
上記式(1)において、R
3、R
4、R
6〜R
8、R
10〜R
12、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、アルキル基、アリール基、アミノ基(−NH
2)、アルコキシ基、カルバゾール基またはシリル基を表す。この際、R
3、R
4、R
6〜R
8、R
10〜R
12、R
14およびR
15は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
これらのうち、R
3、R
4、R
6〜R
8、R
10〜R
12、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基であることが好ましく、水素原子、アリール基であることがより好ましい。
【0050】
上記式(1)において、R
9およびR
13は、それぞれ独立して、水素原子、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基または式(9):−N(R
20)(R
21)−のアミノ基を表す。この際、R
9およびR
13の少なくとも一方は、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基または式(9):−N(R
20)(R
21)−のアミノ基を表す。ここで、R
9およびR
13は、少なくとも一方は、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基または式(9):−N(R
20)(R
21)−のアミノ基を表す限り、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、アリール基、カルバゾール基およびフルオレン基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、複素環基は、上記置換基(a)における定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。ただし、複素環基(1価の複素環基)は、上記置換基(a)における2価の複素環基の価数を変化させて、読み替えるものとする。
【0051】
なお、上記式(9)において、R
20は、アリール基である。ここで、アリール基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、R
20は、フェニル基、ビフェニリル基である。また、R
21は、アリーレン基であり、R
8またはR
10と連結して環を形成する。ここで、R
21の一方の結合種は式(9)の窒素原子と連結し、他方の結合種は式(1)のR
8またはR
10と連結して環を形成する。置換基「R
21」としてのアリーレン基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアリール基を2価に変更した以外は同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、R
21は、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基である。
【0052】
これらのうち、電荷耐性(耐久性)のより向上効果、溶解性などを考慮すると、R
9およびR
13の好ましい組み合わせとしては、一方が水素原子でかつ他方がアリール基である;双方がアリール基である;一方が水素原子でかつ他方がカルバゾール基である;一方が水素原子でかつ他方がフルオレン基である;一方が水素原子でかつ他方が式(9):−N(R
20)(R
21)−のアミノ基であるなどが挙げられる。R
9およびR
13のより好ましい組み合わせとしては、一方が水素原子でかつ他方がアリール基である;双方がアリール基であるがある。
【0053】
具体的には、構成単位(A)は下記いずれかの構造を有することが好ましい。構成単位(A)は下記構造A1、A8、A9であることがより好ましい。
【0056】
本発明に係る電荷輸送材料は、下記式(1)の構成単位(A)を必須に有するが、上記構成単位(A)に加えて他の構成単位を有していてもよい。好ましくは、本発明に係る電荷輸送材料は、下記式(1)の構成単位(A)に加えて、架橋基を有するトリフェニルアミン系ユニット、またはフルオレン系ユニットを有することが好ましい。当該形態によると、構成単位(B)または(B’)が架橋基を有するユニット及び電荷輸送ユニット双方の役割を兼務するため、電荷輸送材料は、全体として電荷輸送ユニットの割合が高くなり(高い電荷輸送性能を確保しつつ)、架橋性をさらに付与することができる。構成単位(B)または(B’)に架橋基が存在することにより、加熱により架橋反応が起こり、溶媒に対して不溶化してより強固な膜を形成できる。このため、構成単位(A)及び構成単位(B)または(B’)を有する本発明に係る電荷輸送材料を使用することにより、有機電界発光素子の耐久性をより向上できる。また、例えば、電荷輸送材料を含む層上に別の層を形成しても、電荷輸送材料を含む層は塗布時の溶媒に溶解することがない、または、ほとんどない。加えて、当該形態の電荷輸送材料は、容易に合成でき、大量生産の観点からも好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、電荷輸送材料は、下記式(2)で示される構成単位(B)、または下記式(8)で示される構成単位(B’)をさらに有することが好ましい。
【0059】
なお、「本発明に係る電荷輸送材料が、構成単位(A)及び構成単位(B)または(B’)を有する」とは、電荷輸送材料が構成単位(A)及び構成単位(B)を有する、電荷輸送材料が構成単位(A)及び構成単位(B’)を有する、ならびに、電荷輸送材料が構成単位(A)、構成単位(B)及び構成単位(B’)を有するを包含する。
【0060】
上記式(2)の構成単位(B)は、架橋基を有するユニット及び電荷輸送ユニット(アミンユニット)双方の役割を兼務する。このため、上記式(2)の構成単位(B)を有する電荷輸送材料は、電荷輸送ユニットの密度(割合)が高いため、高い電荷輸送性能を維持しつつ、架橋性を付与することができる。また、当該形態の電荷輸送材料は、容易に合成でき、大量生産の観点からも好ましい。
【0061】
なお、本明細書において、「架橋基」とは、加熱や活性エネルギー線照射により近傍に位置する構成単位の同一または異なる基と反応(架橋)して新たな結合を生成する基を意味する。
【0062】
上記式(2)において、Yは、主鎖を構成する連結基を表す。ここで、主鎖を構成する連結基としては、構成単位(B)の主鎖を構成できる構造であれば特に制限されない。具体的には、構成単位(A)で挙げた例が同様にして挙げられる。
【0063】
上記連結基のうち、Yは、下記構造を有する連結基が好ましい。
【0065】
また、上記式(2)中、Bは、(i)単結合、または(ii)ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、アルキル基、アリール基、アミノ基(−NH
2)、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基、または(iii)式(4):−N(R
18)−R
19−のアミノ基を表す。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、2価の芳香族基もしくは複素環基は、特に制限されず、上記置換基「A」における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
これらのうち、Bは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基または複素環基であることが好ましい。すなわち、上記式(1)中、R
1は、Aがハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の2価の芳香族基または複素環基である式(3)の置換基(a)であり、ならびに上記式(2)中、Bがハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基または複素環基であることが好ましい。このような構造をとると、アミンユニットの電荷輸送において生起するキノイド構造とそれに伴う副反応が、置換基導入により減少するため、素子としての電荷耐性がより向上できる。また、構成単位(A)において置換基Aを、および/または構成単位(B)において置換基Bを、もしくは構成単位(B’)において置換基Dを上記したように2価の芳香族基または複素環基(置換基Dの場合には、2価のカルバゾール基、フルオレン基、芳香族基または複素環基)とすることにより、このような置換基を導入しない場合と比して、構成するユニットの電気化学的な安定性を向上できるため、素子の長寿命化を達成できる。また、重合前のモノマーの自己反応性を抑制できるため、合成・製造上のハンドリング(取り扱い)が容易になる。
【0067】
上記式(4)において、R
18は、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、芳香族基もしくは複素環基である。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、芳香族基もしくは複素環基は、特に制限されず、上記置換基「A」における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。ただし、1価の芳香族基は、上記置換基(a)における2価の芳香族基の価数を変化させて、読み替えるものとする。同様にして、1価の複素環基は、上記置換基(a)における2価の複素環基の価数を変化させて、読み替えるものとする。好ましくは、R
18は、アルキル基で置換されたアリール基、複素環基である。また、R
19は、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基である。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、2価の芳香族基もしくは複素環基は、特に制限されず、上記置換基「A」における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、R
19は、2価の芳香族基、複素環基である。
【0068】
これらのうち、Bは、単結合、2価の芳香族基、複素環基で置換される2価の芳香族基または式(4):−N(R
18)−R
19−のアミノ基であることが好ましく、2価の芳香族基または式(4):−N(R
18)−R
19−のアミノ基であることがよりしい
上記式(2)において、K
aおよびK
bは、架橋基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、アルキル基、アリール基、アミノ基(−NH
2)、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基またはシリル基を表す。この際、K
aおよびK
bは、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよいが、K
aおよびK
bの少なくとも一方は架橋基を表す。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。また、架橋基は、熱や活性エネルギー線による架橋反応を誘導できる基であれば特に制限されないが、下記構造が好ましく挙げられる。なお、以下では、構成単位(B)の架橋基を有するフェニレン基として例示される。このため、例えば、上記最初の構造では、−C(−R)=CH
2が架橋基である。
【0070】
なお、上記構造において、架橋基(例えば、上記2番目の構造では、架橋基:−C(−F)=CF
2)のフェニレン基への結合位置は特に制限されず、2位、3位または4位のいずれでもよいが、好ましくは4位である。
【0071】
また、上記構造において、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表す。ここで、アルキル基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。また、上記構造において、Arは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、芳香族基もしくは複素環基である。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、芳香族基もしくは複素環基は、特に制限されず、上記置換基「A」における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。ただし、1価の芳香族基は、上記置換基(a)における2価の芳香族基の価数を変化させて、読み替えるものとする。同様にして、1価の複素環基は、上記置換基(a)における2価の複素環基の価数を変化させて、読み替えるものとする。
【0072】
これらのうち、架橋反応性、架橋構造の安定性、電解化学的安定性などを考慮すると、下記構造のベンゾシクロブテン環由来の基(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエニル基)が好ましい。また、反応性(架橋容易性)などの観点から、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基が好ましい。
【0074】
上記式(2)において、架橋基(K
a、K
b)は、トリフェニルアミン系ユニットのフェニル基に直接結合してもよいが、2価の連結基を介して結合してもよい。ここで、2価の連結基としては、特に制限されないが、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−基)、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基等の炭素原子数2〜10のアルキレン基、アリーレン基(例えば、フェニレン基)などが挙げられる。好ましくは、架橋基(K
a、K
b)は、トリフェニルアミン系ユニットのフェニル基に直接結合する、またはトリフェニルアミン系ユニットのフェニル基にフェニレン基を介して結合する。
【0075】
上記式(2)において、K
aおよびK
bは、一方が水素原子、フェニル基であり、かつ他方が架橋基である;双方とも架橋基であることが好ましい。
【0076】
本発明の好ましい形態よると、構成単位(B)は、下記式で示されることが好ましい。
【0078】
上記式中、B、およびK
aは、上記式(2)と同様の定義である。
【0079】
上記式(8)において、Y’は、主鎖を構成する連結基を表す。ここで、主鎖を構成する連結基としては、構成単位(B’)の主鎖を構成できる構造であれば特に制限されない。具体的には、構成単位(A)で挙げた例が同様にして挙げられる。
【0080】
上記連結基のうち、Y’は、下記構造を有する連結基が好ましい。
【0082】
また、上記式(8)において、Dは、(i)単結合、または(ii)ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、アルキル基、アリール基、アミノ基(−NH
2)、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価のカルバゾール基、フルオレン基、芳香族基または複素環基を表す。これらのうち、Dは、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、アルキル基、アリール基、アミノ基(−NH
2)、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価のカルバゾール基、フルオレン基、芳香族基または複素環基であることが好ましい。
【0083】
ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、2価の芳香族基もしくは複素環基は、特に制限されず、上記置換基「A」における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、上記置換基Dにおいて、同じ置換基で置換されることなない。すなわち、例えば、フルオレン基はフルオレン基で置換されることはない。
【0084】
本明細書において、2価のカルバゾール基は、下記のいずれかを表す。なお、下記において、Zは、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルキル基およびアルコキシ基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0086】
本明細書において、2価のフルオレン基は、下記のいずれかを表す。なお、下記において、ZおよびZ’は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基は、特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよいアルキル基およびアルコキシ基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
これらのうち、より高い電子耐性を付与できる点などを考慮すると、Dは、アルキル基、アルコキシ基、アルキル基で置換されたフルオレン基、が好ましく、アルキル基で置換されたフルオレン基がより好ましく、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖のアルキル基で置換されたフルオレン基が特に好ましい。
【0089】
上記式(8)において、D’は、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、カルバゾール基、フルオレン基、芳香族基または複素環基を表す。この際、置換基「D’」としてのカルバゾール基、フルオレン基、芳香族基または複素環基は、1または2個の下記式(9)で示される架橋基含有フェニレン基で置換される。
【0091】
好ましくは、置換基「D’」としてのカルバゾール基、フルオレン基、芳香族基または複素環基は、2個の上記式(9)で示される架橋基含有フェニレン基で置換される。ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基は、それぞれ特に制限されず、上記2価の芳香族基もしくは複素環基に導入されてもよい置換基における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。同様にして、2価の芳香族基もしくは複素環基は、特に制限されず、上記置換基「A」における定義とそれぞれ同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、上記置換基D’において、同じ置換基で置換されることなない。すなわち、例えば、フルオレン基はフルオレン基で置換されることはない。また、上記架橋基含有フェニレン基は、特に制限されず、上記構成単位(B)の架橋基を有するフェニレン基としての例示および好ましい例示と同様の例示が適用されうる。
【0092】
具体的には、構成単位(B)および構成単位(B’)は下記いずれかの構造を有することが好ましい。構成単位(B)は下記構造B2またはB6であることがより好ましい。なお、下記構造において、R”は、アルキル基(アルキル基の定義は、上記構成単位(A)における定義と同様である)を表す。なお、R”が2個存在する場合には、各R”は同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、下記構造において、主鎖は「−CH
2−CH=」となっているが、主鎖が「−CH
2−C(CH
3)=」であるものも好ましい。
【0094】
上述したように、本発明の電荷輸送材料は、構成単位(A)のみから構成されてもよいが、構成単位(A)ならびに構成単位(B)および/または(B’)から構成されることが好ましい。ここで、電荷輸送材料が構成単位(A)ならびに構成単位(B)および/または(B’)から構成される(共重合体である)際の、電荷輸送材料の構造は特に制限されず、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。また、共重合体である際の電荷輸送材料の組成は特に制限されないが、構成単位(A)ならびに構成単位(B)および/または(B’)(構成単位(A):構成単位(B)および/または(B’)のモル比;構成単位(B)および(B’)双方を有する場合には、構成単位(A):構成単位(B)および(B’)の合計モル比)は、電荷輸送材料において、99:1〜80:20の比(モル比)で含まれることが好ましく、95:5〜85:15であることがより好ましい。なお、上記において、構成単位(A)ならびに構成単位(B)および/または(B’)の組成(含有量)の合計は100である。このような組成であれば、架橋時に十分な溶剤に対する耐性(不溶化)が得られる。このため、例えば、電荷輸送材料を含む層上に別の層を形成しても、電荷輸送材料を含む層は塗布時の溶媒に溶解することがないまたはほとんどない。
【0095】
また、本発明に係る電荷輸送材料の重量平均分子量(Mw)は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて特に制限されるものではないが、例えば、5,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量であれば、電荷輸送材料を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な膜厚の層を形成することが可能である。なお、重量平均分子量(Mw)の測定方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、下記実施例で測定された値を採用するものとする。
【0096】
本発明に係る電荷輸送材料は電荷耐性に優れる。このため、特に本発明に係る電荷輸送材料を正孔輸送材料として使用する場合には、電子に対しての劣化影響を小さくして、素子寿命を向上できる。ゆえに、本発明に係る電荷輸送材料を用いる有機電界発光素子は耐久性に優れる。また、本発明に係る電荷輸送材料を有機電界発光素子に用いる場合には、高い電荷移動度が達成される。
【0097】
本発明の電荷輸送材料の主鎖の末端は特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
【0098】
本発明に係る電荷輸送材料の製造方法は、特に制限されず、公知の重合方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。具体的には、本発明に係る電荷輸送材料は、下記式(5)で示される1種以上の単量体(A)、および必要であれば下記式(6)で示される1種以上の単量体(B)または式:H
2−Y’−D−D’で示される1種以上の単量体(B’)を用いた(共)重合反応により製造することができる。
【0100】
ただし、R
1、R
2およびR
5の一つが、下記式(7):
【0102】
上記式(7)中、Xは、主鎖を構成する連結基を表し、Aは、単結合、またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基を表す、
で示される置換基(a)であり、かつ残りのR
1、R
2およびR
5が、水素原子、またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、1価の芳香族基もしくは複素環基を表し;
R
3、R
4、R
6〜R
8、R
10〜R
12、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基またはシリル基を表し;ならびに
R
9およびR
13は、それぞれ独立して、水素原子、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基または複素環基を表し、この際、R
9およびR
13の少なくとも一方は、アリール基、ターシャルブチル基、カルバゾール基、フルオレン基または複素環基を表す、
【0104】
ただし、Yは、主鎖を構成する連結基を表し、Bは、単結合、またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基、または式(4):−N(R
18)−R
19−のアミノ基を表し、上記式(4)中、R
18は、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、芳香族基もしくは複素環基であり;R
19は、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも一の置換基で置換されるまたは無置換の、2価の芳香族基もしくは複素環基である;ならびに
K
aおよびK
bは、架橋基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、カルバゾール基、フルオレン基、複素環基またはシリル基を表し、この際、K
aおよびK
bの少なくとも一方は、架橋基を表す、
なお、前記式(5)〜(7)において、置換基R
1〜R
15、X、A、Y、B、K
aおよびK
bは、上記式(1)〜(3)における各置換基の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、式:H
2−Y’−D−D’において、置換基Y’、DおよびD’は、上記式(8)における各置換基の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0105】
本発明に係る電荷輸送材料の重合に用いられる単量体は、公知の合成反応を適宜組み合わせて合成ことができ、その構造も、公知の方法、例えばNMRやLC−MS等を用いて確認できる。
【0106】
本発明に係る電荷輸送材料の重合方法は特に制限されない。例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法が採用でき、好ましくは製造が容易なラジカル重合を使用する。
【0107】
重合に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アニソール、ヘキサメチルリン酸トリアミド等が例示でき、好ましくはトルエン、テトラヒドロフランである。これらを1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。本発明に係る電荷輸送材料の重合に用いられる単量体は、これら有機溶媒に対する高い溶解性を有する。
【0108】
溶媒中の単量体濃度(複数の単量体を用いる場合は、その全体量)は、反応溶液全体に対して、通常5〜90重量%であり、好ましくは10〜80重量%である。
【0109】
重合温度は、分子量の制御の点から、40〜100℃とするのが好ましい。重合反応は通常30分〜24時間行われる。
【0110】
単量体を添加した溶媒は、重合開始剤の添加前に、脱気処理を行ってもよい。脱気処理としては、例えば、凍結脱気や、窒素ガス等の不活性ガスによってバブリしてもよい。
【0111】
重合開始剤は従来公知のものを用いることができ、例えばベンゾフェノン、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、およびアゾビスイソブチロニトリル等が例示できる。重合開始剤の配合量は、電荷輸送材料の製造に用いる全単量体(1モル)に対して、例えば0.0001〜1モルとなる量である。
【0112】
<有機電界発光素子用材料>
本発明に係る電荷輸送材料は、有機電界発光素子用材料として好適に用いられる。本発明に係る電荷輸送材料によれば、高い耐久性、さらには高い電荷移動度を有する有機電界発光素子用材料が提供される。したがって、本発明は、本発明の電荷輸送材料の有機電界発光素子用材料としての使用が提供される。ここでは、上記電荷輸送材料についてされた記載が適宜適用される。
【0113】
本発明に係る有機電界発光素子用材料は有機溶媒に対する溶解性に優れるため、ウェットプロセスによる素子の製造に特に好適に用いられる。
【0114】
本発明に係る有機電界発光素子用材料は、電荷移動度に優れるため、正孔注入材料、正孔輸送材料、および/または発光層材料(ホスト)等のいずれの有機膜の形成においても好適に利用され得るが、正孔の輸送性の観点から、正孔注入材料および/または正孔輸送材料として特に好適に用いられる。
【0115】
<有機電界発光素子>
本発明に係る電荷輸送材料は、有機電界発光素子用材料として有機電界発光素子に用いられる。本発明の一側面では、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される有機膜と、を備える有機電界発光素子であって、前記有機膜の少なくとも1層は、上記の電荷輸送材料を含む、有機電界発光素子が提供される。正孔の輸送性の観点から、本発明の好ましい形態によると、本発明に係る電荷輸送材料を含む有機膜が、正孔注入層または正孔輸送層である。
【0116】
図1は、本発明の一具体例に係る有機電界発光素子100の断面を示す図面である。
図1は、第1電極120/正孔注入層130/正孔輸送層140/発光層150/電子輸送層160/電子注入層170/第2電極180を示しているが、本発明がこのような構造に限定されるものではない。有機電界発光素子は、第1電極/正孔注入機能および正孔輸送機能を持つ単一膜/発光層/電子輸送層/第2電極または第1電極/正孔注入機能および正孔輸送機能を持つ単一膜/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極のような構造であっても良い。
【0117】
本発明による有機電界発光素子は、前面発光型、または背面発光型のいずれであっても良い。
【0118】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る有機発光素子について説明を行う。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子の構造の一例を示す概略図である。
【0119】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る有機発光素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180と、を備える。
【0120】
基板110は、一般的な有機発光素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0121】
第1電極120は、例えば、アノードであり、蒸着法またはスパッタリング(sputtering)法などを用いて基板110上に形成される。具体的には、第1電極120は、仕事関数が大きい金属、合金、導電性化合物等によって透過型電極として形成される。第1電極120は、例えば、透明であり、導電性にすぐれる酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)などで形成されてもよい。また、第1電極120は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを用いて反射型電極として形成されてもよい。
【0122】
正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング(spin coating)法、インクジェット(ink jet)法などを用いて第1電極120上に形成される。本発明に係る電荷輸送材料は有機溶媒溶解性に優れることから、スピンコーティング法、キャスト法、印刷法、またはLB法等のウェットプロセスによる正孔注入層の形成に特に好適に用いられる。なお、上記方法による場合には、正孔注入層形成用材料を溶媒に溶解するが、使用できる溶媒は特に制限されないが、上記重合に用いられる溶媒と同様の溶媒が使用できる。また、正孔注入層130は、具体的には、約10nm〜約500nm、より具体的には、約10nm〜約100nmの厚さ(乾燥膜厚)にて形成されてもよい。なお、正孔注入層130は、本発明に係る電荷輸送材料のほか、公知の材料を用いて形成することもでき、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(DNTPD)、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)、またはポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI/PSS)などを用いて形成することができる。
【0123】
本発明に係る電荷輸送材料をウェットプロセスに用いる場合、塗布液全体に対する本発明に係る電荷輸送材料の含有量は、例えば、0.1〜20重量%であり、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0124】
本発明に係る電荷輸送材料が正孔注入層に用いられる場合、層全体に対する含有量は、50〜100重量%(乾燥重量)であり、好ましくは80〜100重量%(乾燥重量)である。
【0125】
正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料を含む層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて正孔注入層130上に形成される。本発明に係る電荷輸送材料は有機溶媒溶解性に優れることから、スピンコーティング法、キャスト法、印刷法、またはLB法等のウェットプロセスによる正孔輸送層の形成に特に好適に用いられる。なお、上記方法による場合には、正孔輸送層形成用材料を溶媒に溶解するが、使用できる溶媒は特に制限されないが、上記重合に用いられる溶媒と同様の溶媒が使用できる。また、正孔輸送層140は、具体的には、約5nm〜約500nm、より具体的には、約10nm〜約100nmの厚さ(乾燥膜厚)にて形成されてもよい。なお、正孔輸送層140は、本発明に係る電荷輸送材料のほか、公知の正孔輸送材料を用いて形成することもできるが、例えば、N−フェニルカルバゾール(PhCz)、ポリビニルカルバゾール(PVK)などのカルバゾール誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)を用いて形成することができる。
【0126】
本発明に係る電荷輸送材料が正孔輸送層に用いられる場合、層全体に対する含有量は、50〜100重量%(乾燥重量)であり、好ましくは80〜100重量%(乾燥重量)である。
【0127】
発光層150は、りん光、蛍光等により光を発する層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて正孔輸送層140上に形成される。発光層150は、ホスト材料およびドーパント(dopant)材料を含み、本発明に係る電荷輸送材料を含んでもよい。本発明に係る電荷輸送材料は有機溶媒溶解性に優れることから、スピンコーティング法、キャスト法、印刷法、またはLB法等のウェットプロセスによる発光層の形成に特に好適に用いられる。なお、上記方法による場合には、発光層形成用材料を溶媒に溶解するが、使用できる溶媒は特に制限されないが、上記重合に用いられる溶媒と同様の溶媒が使用できる。また、発光層150は、具体的には、約10nm〜約100nm、より具体的には、約20nm〜約60nmの厚さ(乾燥膜厚)で形成されてもよい。
【0128】
また、発光層150は、他のホスト材料を含んでもよく、例えば、1,3−ビス(カルバゾール)ベンゼン(mCP)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(dmCBP)を含んでもよい。
【0129】
また、発光層150は、特定の色の光を発する発光層として形成されてもよい。例えば、発光層150は、赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層として形成されてもよい。
【0130】
発光層150が青色発光層である場合、青色ドーパントとしては公知の材料が使用可能であるが、例えば、ペリレン(perylene)およびその誘導体、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(FIrpic)などのイリジウム(Ir)錯体等を使用することができる。
【0131】
また、発光層150が赤色発光層である場合、赤色ドーパントとしては公知の材料が使用可能であるが、例えば、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(DCM)およびその誘導体、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(piq)
2(acac))などのイリジウム錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体等を使用することができる。
【0132】
また、発光層150が緑色発光層である場合、緑色ドーパントとしては公知の材料が使用可能であるが、例えば、クマリン(coumarin)およびその誘導体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(TEG)、トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)(Ir(acac)
3)などのイリジウム錯体等を使用することができる。
【0133】
本発明に係る電荷輸送材料が発光層に用いられる場合、発光層のホスト全体に対する含有量は、10〜100重量%(乾燥重量)であり、好ましくは50〜100重量%(乾燥重量)である。
【0134】
電子輸送層160は、電子を輸送する機能を有する電子輸送材料を含む層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて発光層150上に形成される。また、電子輸送層160は、具体的には、約10nm〜約100nm、より具体的には、約15nm〜約70nmの厚さにて形成されてもよい。なお、電子輸送層160は、例えば、リチウムキノレート(Liq)などのLi錯体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)などのキノリン(quinoline)誘導体、1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(p−フェニルフェノラート)−アルミニウム(BAlq)、ベリリウムビス(ベンゾキノリン−10−オラート)(BeBq2)などを用いて形成することができる。これら電子輸送層形成用材料は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。市販品の例としては、KLET−01、KLET−02、KLET−03、KLET−10、KLET−M1(以上、ケミプロ化成株式会社製)等が挙げられる。また、これら電子輸送層形成用材料は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0135】
電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層であり、真空蒸着法などを用いて電子輸送層160上に形成される。また、電子注入層170は、具体的には、約0.1nm〜約10nm、より具体的には、約0.3nm〜約9nmの厚さにて形成されてもよい。なお、電子注入層170は、公知の材料を用いて形成することができるが、例えば、フッ化リチウム(LiF)、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li
2O)、酸化バリウム(BaO)などを用いて形成することができる。
【0136】
第2電極180は、例えば、カソードであり、蒸着法またはスパッタリング法などを用いて電子注入層170上に形成される。具体的には、第2電極180は、仕事関数が小さい金属、合金、導電性化合物等で反射型電極として形成される。第2電極180は、例えば、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などで形成されてもよい。また、第2電極180は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いて透過型電極として形成されてもよい。
【0137】
以上にて、本発明の一実施形態に係る有機発光素子100の構造の一例について説明したが、本発明の一実施形態に係る有機発光素子100の構造は、上記例示に限定されない。本発明の一実施形態に係る有機発光素子100は、公知の他の様々な有機発光素子の構造を用いて形成されてもよい。例えば、有機発光素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160、および電子注入層170のうち1層以上を備えていなくともよい。また、有機発光素子100の各層は、単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0138】
さらに、有機発光素子100は、三重項励起子または正孔が電子輸送層160に拡散する現象を防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層を備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、またはフェナントロリン(phenanthroline)誘導体などによって形成することができる。
【実施例】
【0139】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0140】
以下の合成例では、以下で示す方法により各種分析を行った。
【0141】
(重量平均分子量の測定)
(共)重合体の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いてGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により下記条件で測定する。
【0142】
【化26】
【0143】
合成例1
以下反応によって、下記構造を有する単量体(A9)を合成した。
【0144】
【化27】
【0145】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、9−(4−ビフェニリル)3−ブロモカルバゾール(10.0g)、アニリン(2.46g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.690g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.66g)、ナトリウムtert−ブトキシド(4.82g)、トルエン(100mL)を入れ、110℃で3時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィーで精製し、9−(4−ビフェニリル)−N−フェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(5.84g)を得た。
【0146】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、9−(4−ビフェニリル)−N−フェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(5.80g)、4−ブロモ−4’−ビニルビフェニル(3.61g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.648g)、トリ−tert−ブチルホスニウムテトラフルオロボラート(0.430g)、ナトリウムtert−ブトキシド(2.96g)、キシレン(80mL)を入れ、140℃で3時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー、および再結晶し、単量体(A9)(0.855g)を得た。
【0147】
合成例2
以下の方法によって、下記構造を有する単量体(B7)を合成した。
【0148】
【化28】
【0149】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、9−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン−3−イル)−9−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル)−2−ブロモ−9H−フルオレン(1.00g)、2−(9,9−ジオクチル−7ビニル−9H−フルオレン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1.21g)、トリ−tert−ブチルホスニウムテトラフルオロボラート(0.129g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.10g)、炭酸カリウム(0.63g)、1,2−ジメトキシエタン(DME)(9mL)、水(4mL)を加え、85℃で5時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー、および再結晶し、単量体B2(1.20g)を得た。
【0150】
合成例3
以下の方法によって、下記構造を有する比較単量体(C1)を合成した。
【0151】
【化29】
【0152】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、N−4−ブロモフェニル−N,N−ビスフェニルアミン(5.01g)、4−メトキシアニリン(2.16g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.572g)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.384g)、ナトリウムtert−ブトキシド(2.97g)、トルエン(78mL)を入れ、110℃で6時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィーで精製し、N−(4−メトキシフェニル)−N’,N’−ジフェニル−ベンゼン1,4−ジアミン(4.57g)を得た。
【0153】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、N−(4−メトキシフェニル)−N’,N’−ジフェニル−ベンゼン−1−4ジアミン(1.11g)、4−ブロモスチレン(0.663g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.138g)、テトラブチルホスフィン・フェロセン(0.176g)、ナトリウムtert−ブトキシド(0.588g)、トルエン(15mL)を入れ、110℃で6時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィーで精製し、単量体C1(0.604g)を得た。
【0154】
合成例4
以下の方法によって、下記構造を有する比較単量体(B2)を合成した。
【0155】
【化30】
【0156】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、アニリン(2.79g)、3−ブロモビシクロ[4,2,0]オクタ−1(6)、2,4−トリエン(11.5g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.549g)、トリ−tert−ブチルホスニウムテトラフルオロボラート(0.696g)、ナトリウムtert−ブトキシド(8.55g)、トルエン(150mL)を入れ、110℃で2時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィーで精製し、N−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル)−N−フェニルビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン−3−アミン(9.16g)を得た。
【0157】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、N−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル)−N−フェニルビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン−3−アミン(6.12g)、ジメチルホルムアミド(DMF)(41.2mL)を入れ、氷水で冷却した。DMF(20.6mL)に溶解したN−ブロモスクシンイミド(3.67g)を滴下し、2時間撹拌した。トルエン(150mL)を加え、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィーで精製し、N−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル)−N−(4−ブロモフェニル)ビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン−3−アミン(7.08g)を得た。
【0158】
アルゴンで置換した四つ口フラスコに、N−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル)−N−(4−ブロモフェニル)ビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン−3−アミン(6.45 g)、4−ビニルフェニルボロン酸(3.03g)、テトラキス(トリフェニルホルフィン)パラジウム(0.40g)、炭酸カリウム(7.73g)、1,2−ジメトキシエタン(DME)(68mL)、水(17mL)を加え、85℃で5時間加熱した。室温(25℃)まで放冷し、不溶物をセライトでろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー、および再結晶し、単量体(B2)(3.67g)を得た。
【0159】
実施例1
以下の方法によって、上記合成例1で合成した単量体(A9)および合成例2で合成した単量体(B7)を用いて、下記構造を有する正孔輸送材料(1)を合成した。
【0160】
【化31】
【0161】
詳細には、シュレンク管に、合成例1で合成した単量体(A9)(795mg)、合成例2で合成した単量体(B7)(118mg)、アゾビスイソブチロニトリル(4.5mg)、トルエン(9ml)を入れ、バブリング、凍結脱気の後、60度にて6時間加熱撹拌した。室温まで冷却し、良溶媒をTHF、貧溶媒を過剰量のメタノールとし再沈を5回行い、析出物を真空乾燥し、単量体(A9)および単量体(B7)の共重合体(単量体(A9)由来の構成単位(A):単量体(B7)由来の構成単位(B)=90:10(モル比))(500mg)を得た。このようにして得られた共重合体を比較正孔輸送材料(1)と称する。
【0162】
このようにして得られた正孔輸送材料(1)の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、29,000であった。
【0163】
比較例1
以下の方法によって、上記合成例3で合成した単量体(C1)および合成例4で合成した単量体(B2)下記構造を有する比較正孔輸送材料(2)を合成した。
【0164】
【化32】
【0165】
詳細には、シュレンク管に、合成例3で合成した単量体(C1)(160mg)、合成例4で合成した単量体(B2)(1.69g)、アゾビスイソブチロニトリル(8.0mg)、トルエン(8ml)を入れ、バブリング、凍結脱気の後、60度にて6時間加熱撹拌した。室温まで放冷し、良溶媒をTHF、貧溶媒を過剰量のメタノールとし再沈を5回行い、析出物を真空乾燥し、単量体(C1)および単量体(B2)の共重合体(単量体(C1)由来の構成単位(C):単量体(B2)由来の構成単位(D)=90:10(モル比))(1.80g)を得た。このようにして得られた共重合体を比較正孔輸送材料(2)と称する。
【0166】
このようにして得られた正孔輸送材料(2)の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、25,000であった。
【0167】
実施例2
ストライプ状のITOが配置されたITO付きガラス基板上に、PEDOT−PSS(Sigma−Aldrich製)を厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔注入層を形成した。
【0168】
次に、実施例1で合成した正孔輸送材料(1)をキシレン(溶媒)に1重量%濃度で溶解して正孔輸送層形成用塗布液(1)を調製した。上記で形成した正孔注入層上に、この正孔輸送層形成用塗布液(1)を厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、230℃で1時間加熱して、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔輸送層を形成した。
【0169】
さらに、上記で形成した正孔輸送層上に、2種のホスト材料として、3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール(以下、mCP)及び4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(以下、CBP)を、mCP:CBP=7:3(重量比)の割合で、ドーパント材料としてトリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(TEG)が10%ドープされるように、真空蒸着装置にて共蒸着し、厚さ30nmの発光層を正孔注入層上に形成した。
【0170】
上記で形成した発光層上に、リチウムキノレート(以下、Liq)及びKLET−03(ケミプロ化成(株)製)を真空蒸着装置にて共蒸着させて、厚さが50nmの電子輸送層を発光層上に形成した。
【0171】
上記で形成した電子輸送層上に、フッ化リチウム(以下、LiF)を真空蒸着装置にて蒸着させて、厚さ1nmの電子注入層を電子輸送層上に形成した。
【0172】
上記で形成した電子注入層上に、アルミニウム(以下、Al)を真空蒸着装置にて蒸着させて、厚さが100nmの電極(陰極)を電子注入層上に形成した。これにより、有機電界発光素子(1)を得た。
【0173】
比較例2
上記実施例1において、正孔輸送材料(1)の代わりに、上記比較例1で合成した比較正孔輸送材料(2)を使用して正孔輸送層を形成する以外は、実施例1と同様にして、比較有機電界発光素子(2)を得た。
【0174】
上記実施例1で得られた有機電界発光素子(1)及び比較例1で得られた比較有機電界発光素子(2)について、下記方法によって耐久性を評価した。結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、実施例1の素子寿命は、比較例1の比較有機電界発光素子(2)の素子寿命を100とした場合の延長度として表す。
【0175】
[耐久性の評価]
下記方法に従って、素子寿命を測定する。
【0176】
すなわち、上記各素子に直流定電圧電源(例えば、ソースメーター KEYENCE製)を用いて電圧を加えると、ある一定電圧で電流が流れ始め、素子が発光を開始する。発光を輝度測定装置(例えば、SR−3:Topcom製)で捕え、徐々に電流を上昇させ、輝度が1000cd/m
2になったところで電流を一定とし、放置する。輝度測定装置で測定した輝度の値が変動(徐々に低下)し、初期の輝度値の80%になったところまでの時間を「素子寿命(時間)」とする。
【0177】
【表1】
【0178】
上記表1の結果から、実施例1の有機電界発光素子(1)は、比較例1の比較有機電界発光素子(2)に比して、素子寿命を有意に向上できることが分かる。これは、正孔輸送層に使用された正孔輸送材料(1)の電荷耐性が、比較正孔輸送材料(2)に比べ、高いため、素子寿命を向上できたと推測される。