(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、海水中の溶存金属であるウランの需要増大予測のもと、価格の高騰が予想される鉱山由来のウラン資源の他に海水中などから安価にウランを回収する技術が望まれている。しかしながら、従来の海水中の溶存金属の捕集材では、製造コスト及びウラン回収率が必ずしも十分ではなく、鉱山由来のウラン資源を用いる場合と比較して回収コストが高くなる実情がある。このため、製造コストが安く、溶存金属の回収効率が高く、溶存金属を安価に回収できる捕集材が望まれている。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、製造コストが安く、溶存金属の回収効率が高く、溶存金属を安価に回収できる溶存金属捕集材、溶存金属捕集材の製造方法、溶存金属の捕集方法及び水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶存金属捕集材は、支持体と、前記支持体上に設けられ、タンニンを担持させたナイロンからなる担体と、を具備することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、分子内に極性が低いアルキル鎖などの疎水部と極性が高いアミド基などの極性部とを有するナイロンを担体に用いるので、タンニンの疎水部とナイロンの疎水部との疎水結合及びナイロンの極性部とタンニンの水酸基との水素結合などにより、担体にタンニンを効率良く担持できるものと推察される。したがって、製造コストが安く、溶存金属の回収効率が高く、溶存金属を安価に回収できる溶存金属捕集材を実現できる。
【0008】
本発明の溶存金属捕集材においては、前記担体と前記支持体とが交互に積層された積層体であることが好ましい。この構成により、担体の間に介在する支持体によって担体に被処理水を効率良く含浸させることができるので、溶存金属の回収効率が向上する。
【0009】
本発明の溶存金属捕集材においては、ロール状に巻回された積層体であることが好ましい。この構成により、担体の間に介在する支持体によって担体に被処理水を効率良く含浸させることができるので、溶存金属の回収効率が向上する。
【0010】
本発明の溶存金属捕集材においては、前記支持体が、テフロン(登録商標)、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタレートの疎水性高分子からなることが好ましい。この構成により、ナイロン担体の物理的強度が増すこと、ナイロン担体へのタンニン担持量が向上すること、ナイロン担体への被処理水接触機会が均質化されることにより、溶存金属の低コスト回収と回収効率向上が可能となる。
【0011】
本発明の溶存金属捕集材においては、前記担体の質量に対する前記タンニンの質量であるタンニン担持率が35質量%以上であることが好ましい。この構成により、溶存金属を捕集するタンニンが担体に十分担持されるので、溶存金属の回収効率が向上する。
【0012】
本発明の溶存金属捕集材の製造方法は、支持体上に配置したナイロンからなる担体に、タンニン溶液を含浸させることを特徴とする。支持体を介して担体にタンニン溶液を効率良く含浸させることができるので、溶存金属の回収効率が向上する。
【0013】
本発明の溶存金属の捕集方法は、上記溶存金属捕集材を用いて溶存金属を捕集することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、分子内に極性が低いアルキル鎖などの疎水部と極性が高いアミド基などの極性部とを有するナイロンを担体に用いるので、タンニンの疎水部とナイロンの疎水部との疎水結合及びナイロンの極性部とタンニンの水酸基との水素結合などにより、担体にタンニンを効率良く担持できるものと推察される。したがって、製造コストが安く、溶存金属の回収効率が高く、溶存金属を安価に回収できる溶存金属の捕集方法を実現できる。
【0015】
本発明の水処理装置は、上記溶存金属捕集材を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、分子内に極性が低いアルキル鎖などの疎水部と極性が高いアミド基などの極性部とを有するナイロンを担体に用いるので、タンニンの疎水部とナイロンの疎水部との疎水結合及びナイロンの極性部とタンニンの水酸基との水素結合などにより、担体にタンニンを効率良く担持できるものと推察される。したがって、製造コストが安く、溶存金属の回収効率が高く、溶存金属を安価に回収できる水処理装置を実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造コストが安く、溶存金属の回収効率が高く、溶存金属を安価に回収できる溶存金属捕集材、溶存金属捕集材の製造方法、溶存金属の捕集方法及び水処理装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、以下の各実施の形態は適宜組み合わせて実施可能である。また、各実施の形態において共通する構成要素には同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る溶存金属捕集材の模式図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1は、支持体11と、この支持体11上に設けられ、タンニンを担持させたナイロンからなる担体12とを備える。本実施の形態に係る溶存金属捕集材1は、ウランなどの溶存金属を含有する海水などの被処理水に含浸させることにより、被処理水中の溶存金属とタンニンとの相互作用により被処理水中の溶存金属を担体12に捕集して回収するものである。被処理水としては、溶存金属を含有するものであれば特に制限はなく、例えば、海水、井戸水、温泉、鹹水、地表水、地熱発電所の復水、温水、工業排水、鉱山廃水及び油ガス随伴水などが挙げられる。
【0021】
支持体11としては、例えば、テフロン(登録商標)、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートなどのタンニンを担持しない疎水性高分子などの材質のものが用いられる。支持体11としては、これらの中でも、タンニンや後述のタンニン担持ナイロン担体からの金属回収時に用いる硝酸等薬品に対する安定性の観点から、テフロン(登録商標)が好ましい。担体12は、ナイロンに溶存金属との相互作用により担体に溶存金属を捕集するタンニンを担持している。タンニンによる溶存金属の捕集は、タンニンに含まれるカテコール基(ベンゼンの1,2位の水素がヒドロキシル基に置換した有機化合物)、ピロガロール基(ベンゼンの1,2,3位の水素がヒドロキシル基に置換した有機化合物)が、溶存金属と錯体を作成することに起因すると考えられている。従い、タンニンとしては、溶存金属を捕集できるものであれば特に制限はなく、例えば、五培子タンニン、ワットルタンニン、渋柿、チェストナット、ミモザ、ケブラチョなどから抽出したタンニンなどを用いることができる。
【0022】
図2A及び
図2Bは、溶存金属捕集材1を用いた積層体(溶存金属捕集材モジュール)の模式図である。
図2Aに示すように、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1は、支持体11と担体12との積層体をロール状に巻回した積層体1Aの状態で被処理水を通水させて用いられる。この積層体1Aは、被処理水を導入する被処理水導入流路13a及び溶存金属捕集材1によって処理された処理水を排出する処理水排出流路13bが設けられたケース13内に配置される。また、
図2Bに示すように、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1は、複数の支持体11と複数の担体12とが交互に積層された積層体1Bの状態で被処理水を通水させて用いられる。この積層体1Bは、被処理水を導入する被処理水導入流路13a及び溶存金属捕集材1によって処理された処理水を排出する処理水排出流路13bが設けられ、支持部材14aを有するケース14内に配置される。このように、溶存金属捕集材1を積層体1A,1Bとして用いることにより、支持体11が担体12間のスペーサーとして機能するので、溶存金属捕集材1の担体12間に均一に被処理水が浸入して担体12に溶存金属を効率良く捕集させることが可能となる。また、溶存金属捕集材1を積層体1A,1Bとして用いることにより、溶存金属捕集材1に捕集されたウランなどの溶存金属を硝酸などによって速やかに溶解させて回収することも可能となる。
【0023】
図3Aは、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1のモジュールを用いた溶存金属捕集装置2Aの一例を示す図であり、
図3Bは、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1のモジュールを用いた溶存金属捕集装置2Bの一例を示す図である。
図3Aに示す溶存金属捕集装置2Aは、溶存金属捕集材1のモジュールである積層体1aが複数並設されて構成される。また、
図3Bに示す溶存金属捕集装置2Bは、溶存金属捕集材1のモジュールである積層体1bが複数並設されて構成される。
【0024】
以下に、支持体を用いることの利点を記載する。タンニンは植物のセルロース繊維を接着する能力があることから、高濃度タンニンを繊維に担持させる際の溶液に用いることは困難であった。そのため、これまでのタンニンを使った繊維染色などでは、数質量%程度の低濃度タンニンを使っており、頻繁にタンニン担持対象物(繊維)を振とうするなどの行為を行って、繊維同士の接着や染色ムラを発生させない工夫をおこなってきた。一方、本実施の形態で必要とするタンニン担持溶液濃度は、従来のタンニン染色時の濃度より高い3質量%以上としている。繊維同士が接着しないようにする、担持ムラを発生させないような工夫が支持体の採用である。
【0025】
また、本実施の形態においては、溶存金属捕集材1をモジュール化することにより、タンニン担体の作製及び再生(例えば、担体から剥離したタンニンを再びナイロンに担持させること、及び劣化したタンニンを新しいタンニンで上塗りすることなど)の際に、支持体を担体の間に挟めることで、均質なタンニン担体を少ないタンニン液量、及び高濃度のタンニン溶液で効率良く作製することが可能となる。更に、支持体を用いることにより、担体をタンニン溶液に浸漬させる際の気泡のかみ込みが減少して、担持量の低減ならびに担持ムラを防ぐことが可能となる。大量のタンニン担持ナイロン担体を作成する場合は、支持体を用いることにより、タンニン溶液内で担体をコンパクトかつ垂直状態で設置することが可能となるので、気泡のかみ込みをより一層低減することが可能となる。
【0026】
さらに、支持体を用いることにより担体の物理的強度が向上する利点もある。通常は、タンニン担持ナイロン担体は繰り返し利用を狙って作成するが、酸性物質であるタンニンそのものや、後段の金属回収用の酸処理によるナイロン担体の劣化が発生し、ナイロン担体の崩壊とそれによる金属回収効率の低下が懸念される。支持体はこのナイロン担体の劣化を防ぐ効果があり、ナイロン担体の繰り返し利用回数増に寄与できる。
【0027】
次に、本実施の形態に係る担体12の構成について詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る担体12の模式図である。
図4に示すように、本実施の形態に係る担体12は、ナイロン12aの繊維上にタンニン12bが物理的に担持されている。ここで、本実施の形態では、分子内に極性が低いアルキル鎖などの疎水部と極性が高いアミド基などの極性部とを有するナイロン12aを担体12に用いるので、タンニン12bの疎水部とナイロン12aの疎水部との疎水結合及びナイロン12aの極性部とタンニン12bの水酸基との水素結合などにより、担体12にタンニンを効率良く担持できるものと推察される。
【0028】
図5は、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1における溶存金属の捕集原理の説明図である。
図5に示すように、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1では、担体12のナイロン12aに担持されたタンニン12bは、複数のピロガロール基を有する。この複数のピロガロール基とウラニルイオン(UO
22+)などの溶存金属との相互作用によって溶存金属がタンニン12bに担持されて捕集されると言われている。
【0029】
次に、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1による溶存金属としてのウランの捕集効率について説明する。
図6は、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1によるウランの捕集効率の説明図である。なお、
図6においては、横軸に溶存金属捕集材1の海水中における浸漬時間を示し、縦軸にウラン量を示している。また、
図6においては、ナイロンを担体として用いた本実施の形態に係る溶存金属捕集材1におけるウラン量の変化(L1参照)、及び海水中のウラン量の変化(L2参照)をそれぞれ示している。この結果は、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1は海水中のウランを効率捕集できている担体であることを示している。
【0030】
図6に示すように、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1によれば、海水中に溶存金属捕集材1を含浸させた後に速やかに溶存金属捕集材1のウラン量が増大すると共に、海水中のウラン量が減少している。そして、溶存金属捕集材1では、溶存金属捕集材1を含浸させた後、5時間で90%以上のウランを捕集することができる。これに対して、従来例ではウラン捕集量が本実施の形態に係る溶存金属捕集材1の半分程度であった。これらの結果から、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1によれば、溶存金属としてのウランを速やかに高い効率で捕集できることが分かる。
【0031】
次に、溶存金属捕集材1の製造方法について説明する。
図7は、本実施の形態に係る溶存金属捕集材の製造方法のフロー図である。まず、担体としてのナイロンを蒸留水によって洗浄した後、洗浄した担体を風乾にて乾燥させる(ステップST11)。蒸留水によるナイロンの洗浄は、例えば、3回程度繰り返す。また、風乾の条件は、例えば、10℃にて10時間以内である。次に、乾燥後の担体を3質量%以上のタンニン水溶液に浸漬させる(ステップST12)。ここでは、タンニンの質量は、ナイロンの質量の10倍から1000倍の範囲とする。タンニン水溶液の温度は25℃以上であり、担体の浸漬時間は10分以上、好ましくは20分以上である。次に、タンニン水溶液への浸漬後の担体を蒸留水によって洗浄した後、洗浄した担体を風乾にて乾燥させる(ステップST13)。蒸留水によるナイロンの洗浄は、例えば、3回程度繰り返す。また、風乾の条件は、例えば、10℃にて10時間以内である。次に、タンニン溶液への浸漬前後の担体の質量に基づいてタンニンの担持量を測定する(ステップST14)。担持量が所定値未満である場合(ステップST15:No)には、再び担体をタンニン水溶液に含浸させる(ステップST12)。担持量が所定値以上である場合(ステップST14:Yes)には、溶存金属捕集材1の製造を終了する。
【0032】
次に、作製した溶存金属捕集材1を用いた溶存金属の捕集方法について説明する。まず、25℃、1000cc(1L)の海水中に作製した溶存金属捕集材を入れて所定時間振とうする。所定時間経過した後、海水から溶存金属捕集材を取り出して硝酸を用いて溶存金属の溶離を行う。そして、溶存金属捕集材及び塩酸水溶液を原子発光分析(ICP)などで分析することにより、海水中の溶存金属を捕集できたかを確認できる。また、溶存金属捕集材は、ウラン以外の希土類(レアアース)などのレアメタルを選択的に捕集することも可能である。
【0033】
ここで、担体へのタンニンの担持の条件について詳細に説明する。
図8は、タンニン水溶液の温度とタンニン担持量との関係を示す図である。なお、
図8においては、25℃のタンニン水溶液に担体12を含浸させた場合を基準としたタンニン担持量の相対値を示している。
図8に示すように、タンニン水溶液の温度が25℃及び50℃の場合には、略同等のタンニン担持量であるのに対し、タンニン水溶液の温度が75℃の場合には、大幅にタンニン担持量が増大することが分かる。この結果から、担体へタンニンを担持させる際のタンニン水溶液の温度としては、タンニン担持量を向上する観点から、25℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、75℃以上が更に好ましく、また担体の安定性の観点から、140℃以下が好ましいことが分かる。
【0034】
図9は、タンニン水溶液の濃度とタンニン担持率との関係を示す図である。なお、
図9においては、75℃のタンニン水溶液の濃度を3質量%、6質量%、9質量%とした場合のタンニン担持率の変化を示している。また、ここでのタンニン担持率とは、担体の質量に対するタンニン担持量(タンニン質量/担体質量)である。タンニン担持量は、具体的には以下の手法で計測する。担体としてのナイロンは、ナイロンを洗浄後、40℃で2時間風乾した後、8時間以上、乾燥用デシケーター内で保存したものを微量天秤で秤量した(秤量結果A)。この秤量したナイロンを上述のタンニン水溶液に所定温度でタンニン担持処理し、得られたタンニン担持ナイロンからナイロンに担持されていない余剰タンニンを洗浄除去した後に、40℃で2時間風乾した後、8時間以上、乾燥用デシケーター内で保存したものを微量天秤で秤量した(秤量結果B)。この秤量結果Aと秤量結果Bとを使い、タンニン担持率は以下の計算式(1)で算出する。
担持率%=(秤量結果B−秤量結果A)/秤量結果A×100 ・・・式(1)
【0035】
図9に示すように、タンニン水溶液の濃度が3質量%でのタンニン担持率は、35質量%以上に達する。また、タンニン水溶液の濃度の増大と共にタンニン担持率は増大してタンニン水溶液の濃度が9質量%の場合には、タンニン担持率が45質量%以上となることが分かる。これらの結果から、担体へタンニンを担持させる際のタンニン水溶液の濃度としては、タンニン担持量を向上する観点から、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましく、またタンニン水溶液の調製を容易にする観点から、20質量%以下が好ましいことが分かる。このように、本実施の形態においては、支持体を用いることにより、高濃度のタンニン溶液を用いた場合であっても、担体をタンニン溶液に浸漬させる際の気泡のかみ込みが減少して、タンニンとナイロンとの接触面積の減少を防ぐことが可能となり、タンニンの担持に要する水の消費量を削減した効率がよい溶存金属捕集材の作製方法が可能となる。これに対して、支持体を用いない場合には、上述したタンニン溶液を浸漬させる際の担体への気泡のかみ込みにより十分な担持量が得られない。
【0036】
なお、本実施の形態に係る溶存金属捕集材1の製造方法においては、溶存金属捕集材1の製造後にアルデヒドを用いた架橋処理を実施してもよい。
図10は、ホルムアルデヒドを用いた溶存金属捕集材1の架橋処理の概念図である。
図10に示すように、タンニン12bをホルムアルデヒドで架橋処理するとタンニン12bのピロガロール基間に架橋結合12cが形成される。この架橋処理により、タンニン12bは、より強固に担体12に固定することが可能となる。架橋処理によるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドなどの各種アルデヒドを用いることが可能である。また、アルデヒド処理は、例えば、50mlの蒸留水に2mlの2N塩酸水溶液と共に5mlのホルムアルデヒド水溶液を添加した水溶液に、室温にて4時間以上溶存金属捕集材1を浸漬することにより架橋結合12cを形成することができる。
【0037】
図11は、架橋処理前後の溶存金属捕集材1のタンニン剥離率を示す図である。なお、
図11においては、無処理のタンニンを捕集した溶存金属捕集材1(L4参照)と架橋処理したタンニンを捕集した溶存金属捕集材1(L5参照)をそれぞれリン酸緩衝生理食塩水中で振とうした際の振とう時間とタンニン剥離率との関係を示している。
図11に示すように、無処理のタンニンを捕集した溶存金属捕集材1に対して、架橋処理を施すことにより、大幅にタンニン剥離率を低減することが可能となる。この結果から、架橋処理により、溶存金属捕集材1は、より一層安定して溶存金属を捕集できることが分かる。
【0038】
次に、
図12及び
図13を参照して本実施の形態に係る水処理装置について説明する。
図12及び
図13は、本実施の形態に係る水処理装置100の概略図である。
図12に示すように、本実施の形態に係る水処理装置100は、被処理水ラインL
10が接続された濾過装置101と、濾過装置101の後段に設けられた逆浸透膜濾過部102とを備える。濾過装置101と逆浸透膜濾過部102との間には、濾過水ラインL
11が設けられている。また、濾過装置101の前段には被処理水W
1中の溶存金属を回収する上記実施の形態に係る溶存金属捕集材1が複数配置された溶存金属回収部200が設けられている。また、
図13に示すように、溶存金属回収部200は、逆浸透膜濾過部102の後段の濃縮水排出ラインL
13に設けてもよい。
【0039】
被処理水ラインL
10は、海水などの原水である被処理水W
1を濾過装置101に供給する。濾過装置101は、被処理水ラインL
10から供給される被処理水W
1を濾過して濾過水W
2とする。また、濾過装置101は、濾過水ラインL
11を介して濾過水W
2を逆浸透膜濾過部102に供給する。逆浸透膜濾過部102は、濾過水W
2を分離膜102aに透過させて濾過水W
2中の塩分を除去した透過水W
3を得ると共に、濾過水W
2中の塩分が濃縮された濃縮水W
4を得る。また、逆浸透膜濾過部102は、透過水ラインL
12を介して透過水W
3を後段の各種装置(不図示)に供給すると共に、濃縮水排出ラインL
13を介して濃縮水W
4を排出する。分離膜102aとしては、濾過水W
2から透過水W
3及び濃縮水W
4が得られるものであれば特に制限はない。また、
図12及び
図13に示す例では、水処理装置100が逆浸透膜濾過部102を備えた例について説明するが、水処理装置100は、濾過水W
2を濾過して透過水W
3及び濃縮水W
4が得られる濾過部を有するものであれば必ずしも逆浸透膜濾過部102を備える必要はない。
【0040】
濾過装置101は、濾過装置本体101a内に積層された第1濾過層101b及び第2濾過層101cを備える。第1濾過層101bは、濾過装置本体101aの頂部101d側に設けられる。第2濾過層101cは、濾過装置本体101aの底部101e側に設けられ、珪砂などの粒状濾過材を含んで構成される。この第1濾過層101b及び第2濾過層101cによって被処理水W
1中の無機系不純物が除去されるので、後述する水質評価部103によって有機物系不純物に基づく被処理水W
1中の濁質濃度を測定して把握することができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る水処理装置100は、濾過水ラインL
11を流れる濾過水W
2の水質を評価する水質評価部103と、凝集剤供給ラインL
21を介して被処理水ラインL
10に凝集剤104aを供給する凝集剤供給部104と、水質評価装置103での濾過水W
2の水質の評価結果に基づいて凝集剤供給部104から供給される凝集剤104aの量を制御する制御部105とを備える。
【0042】
水質評価部103は、被処理水W
1中の有機物などの濁質濃度を測定して監視する。制御部105は、水質評価部103で測定された被処理水W
1中の濁質濃度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして、制御部105は、被処理水W
1中の濁質濃度が所定の閾値以上である場合には、凝集剤供給ラインL
21に設けられた薬剤供給ポンプ106を運転して凝集剤供給部104から被処理水ラインL
10に凝集剤104aを供給する。また、制御部105は、被処理水W
1中の濁質濃度が所定の閾値未満である場合には、薬剤供給ポンプ106を停止して凝集剤供給部104から被処理水ラインL
10への凝集剤104aの供給を停止する。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係る水処理装置100によれば、上記実施の形態に係る溶存金属捕集材1が複数配置された溶存金属回収部200が濾過装置101の前段に設けられているので、被処理水W
1から淡水が得られるだけでなく、被処理水W
1中に含まれたウランなどの溶存金属を効率良く回収することが可能となる。また、この水処理装置100における溶存金属回収部200は、水中だけでなく、陸上に設置することもできるので、溶存金属の回収に伴う溶存金属回収部200のメンテナンス性が向上する。
【0044】
なお、上述した実施の形態においては、担体にタンニンを担持させる例について説明したが、担体にリグニンを担持させてもウランなどの溶存金属を回収することができる。