(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る回転機構及び回転式スキャナについて添付図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る回転機構の構成を示す縦断面図、
図2は
図1に示す回転機構の位置A−Aにおける横断面図、
図3は
図1に示す回転機構の位置B−Bにおける横断面図である。
【0010】
回転機構1は、所望の回転体に信号及び電力の少なくとも一方を伝達するための機構である。そのために、回転機構1は、ステータ(固定子)2及びロータ(回転子)3を有する。ステータ2は、第1の電極4を有する。ロータ3は、第2の電極5を有する。
【0011】
ステータ2は、中心に貫通孔を有する二重円筒状のプラスチック等の絶縁体で構成することができる。外側の円筒部分と内側の円筒部分は、一端側で連結することができる。ステータ2の外周面には、必要な数の第1の電極4が設けられる。図示された例では、3つのリング状の第1の電極4が、互いに異なる軸方向の位置に、ステータ2の外周面側に露出するように設けられている。リング状の各第1の電極4の一部は、ステータ2の外側の円筒部分と内側の円筒部分との間に形成される空間に突出している。
【0012】
ステータ2の外側の円筒部分と内側の円筒部分との間に形成される空間は、第1の電極4と接続される第1の電線6を通すための空間として利用される。すなわち、外側の円筒部分と内側の円筒部分との間は、一端が閉塞されているが、他端が開放されている。このため、外側の円筒部分及び内側の円筒部分の開放された他端から第1の電極4の数と同数の第1の電線6を挿入することができる。そして、ステータ2の外側の円筒部分と内側の円筒部分との間の空間に挿入された各第1の電線6を、ステータ2の外側の円筒部分と内側の円筒部分との間に突出する各第1の電極4に、それぞれ接続することができる。
【0013】
一方、ロータ3は、ステータ2に対して回転可能な構造を有している。具体例として、図示されるように、一端が閉口する円筒状の絶縁体の中心に、回転軸3Aを設けてロータ3を構成することができる。回転軸3Aをプラスチック等の絶縁体で構成する場合には、ロータ3の円筒状の部分と回転軸3Aとを1つの部品として成形することもできる。但し、回転軸3Aに強度が要求される場合には、金属等の任意の材料で回転軸3Aを構成することができる。
【0014】
ロータ3の円筒状の部分は、ステータ2の外側の円筒部分よりも大きいサイズとなっている。そして、ロータ3の回転軸3Aは、ステータ2の中心に形成された貫通孔に挿入される。これにより、ステータ2は、ロータ3の内部に収納される。
【0015】
ロータ3の第2の電極5は、ステータ2の外側となる位置に配置される。ロータ3の第2の電極5は、ステータ2の第1の電極4と接触させるための電極である。従って、図示された例では、3つの第1の電極4と、それぞれ軸方向において略同じ位置となるように、3つの第2の電極5がロータ3に設けられている。
【0016】
第2の電極5は、両端がロータ3を構成する円筒状の部分から外部に突出する帯状の電極である。すなわち、ロータ3を構成する円筒状の部分に貫通孔が設けられ、帯状の第2の電極5の両端が円筒状の部分の貫通孔に挿入される。従って、第2の電極5の中央側は、ロータ3の内部となる。
【0017】
ロータ3の円筒状の部分から外部に突出した第2の電極5の一端には、第2の電線7が接続される。そのため、第2の電極5の端部を、2枚の板状の導体を貼合せた剛体とすることができる。
【0018】
更に、第2の電極5は、少なくともロータ3が回転している状態において第1の電極4と接触する湾曲したフィルム状の部分5Aを有する。すなわち、
図2及び
図3に示すように、第2の電極5は、ロータ3の内部においてステータ2の外形に沿って湾曲するフィルム状の部分5Aを有する。フィルム状の部分5Aは、可撓性又は弾性を有する銅箔等の薄い導体で構成することができる。
【0019】
つまり、ステータ2に設けられたリング状の第1の電極4に、可撓性又は弾性を有する帯状の第2の電極5が宛てがわれる。そして、ロータ3が回転すると、帯状の第2の電極5は、滑りながらリング状の第1の電極4に接触する。そこで、ステータ2に、ロータ3の回転中に帯状の第2の電極5の湾曲したフィルム状の部分5Aが軸方向にずれることを防止するためのガイド2Aを設けることが望ましい。
【0020】
図示された例では、ステータ2にガイド2Aとしてリング状の溝が形成され、溝の底面がリング状の第1の電極4の表面となっている。そして、ステータ2の溝及びリング状の第1の電極4の幅よりも狭い第2の電極5のフィルム状の部分5Aがステータ2の溝に宛がわれている。これにより、フィルム状の部分5Aのずれを防止することができる。
【0021】
更に、第2の電極5の両端には重り8が設けられる。従って、ロータ3が回転すると、重り8には遠心力が生じる。そうすると、ロータ3が回転している状態において、重り8の遠心力によってフィルム状の部分5Aが遠心力が作用する方向に引張られる。このため、フィルム状の部分5Aの張力によって、フィルム状の部分5Aが第1の電極4に強く接触する。これにより、ロータ3の回転時においてフィルム状の部分5Aと第1の電極4との間における接触を確保することができる。特に、ロータ3の回転速度が速くなる程、遠心力が増加するため、フィルム状の部分5Aがより強く第1の電極4に接触することになる。
【0022】
従って、第2の電極5の両端部分は、ロータ3の貫通孔内を滑ることができるように構成される。このため、第2の電極5の両端部分のサイズと、第2の電極5の両端部分を挿入するための、ロータ3の貫通孔のサイズとの間における公差は、隙間嵌めの公差にすることが適切である。
【0023】
第2の電極5のフィルム状の部分5Aに遠心力を作用させるためには、少なくとも1つの重り8が必要である。従って、帯状の第2の電極5の両端を重ねて1つの重り8を第2の電極5の端部に設けるようにしてもよい。或いは、帯状の第2の電極5の両端を重ねずに一端にのみ重り8を設け、他端をロータ3に固定するようにしてもよい。
【0024】
但し、重り8が1つであると、ロータ3の遠心力に偏りが生じ、ロータ3の中心が偏心する恐れがある。そこで、図示されるように、第2の電極5に、遠心力が互いに逆向きに発生する2つの重り8を設けることが望ましい。この場合には、図示されるように、2つの重り8の間に2枚のフィルム状の部分5Aを設け、2枚のフィルム状の部分5Aの間にステータ2を配置することができる。すなわち、2枚のフィルム状の部分5Aでリング状の第1の電極4を挟み込むことができる。
【0025】
また、3枚以上のフィルム状の部分5Aを設け、3つ以上の重り8をフィルム状の部分5Aの端部に設けることもできる。その場合には、複数のフィルム状の部分5Aの少なくとも1つがリング状の第1の電極4と接触するようにすればよい。
【0026】
但し、図示されるように2枚のフィルム状の部分5A及び2つの重り8を配置することが、フィルム状の部分5Aと第1の電極4との間における接触面積及び圧力を十分に確保する観点から好適である。
【0027】
フィルム状の部分5Aの端部を剛体の部分と接続する方法は任意である。例えば、2枚の板状の導体の間にフィルム状の部分5Aの端部を挟んでネジやはんだ付け等で固定することもできる。或いは、フィルム状の部分5Aの端部を、剛体の部分に直接はんだ付け等で接続してもよい。
【0028】
逆に、第2の電極5の両端に剛体部を設けずに、フィルム状の部分5Aのみで第2の電極5を構成するようにしてもよい。その場合には、重り8で2枚のフィルム状の部分5Aの端部を束ねて保持するようにしてもよい。すなわち、重り8が第2の電極5の保持部材を兼ねるようにしてもよい。また、第2の電極5自体の端部に重さを設けて重り8として用いてもよい。
【0029】
重り8の重さは、ロータ3の回転速度及び重り8の回転半径に基づいて決定することができる。重り8の材料は、必要な重さが得られれば任意である。従って、重り8が第2の電極5の一部でなければ、鉄や鋼等の金属に限らず、不導体で構成することもできる、
【0030】
以上のような構成を有する回転機構1を介して、第1の電線6をそれぞれ対応する第2の電線7と接続することができる。第1の電線6及び第2の電線7は、電源から電力を供給するための電力線であっても良いし、制御装置からの制御信号を送信するための信号線であってもよい。或いは、第1の電線6及び第2の電線7は、所望のセンサからの検出信号を信号処理装置に送信するための信号線であってもよい。このため、回転機構1を電力又は信号を伝達する必要がある様々な回転体の構成要素として用いることができる。
【0031】
図4は、
図1に示す回転機構1を用いた回転式スキャナの構成例を示す図である。
【0032】
回転式スキャナ10は、少なくとも回転機構1、センサ11及び動力部12を用いて構成される。回転式スキャナ10には、必要に応じて制御装置13を設けることもできる。
【0033】
センサ11は、回転機構1のロータ3側に取付けられる。そして、センサ11は第2の電線7及びロータ3側の第2の電極5を介して信号の入力及び出力の少なくとも一方を行うように構成されている。センサ11としては、走査対象となる物理量に応じて任意のセンサを用いることができる。
【0034】
例えば、回転式スキャナ10をレーザスキャナとする場合には、レーザ用のセンサを回転機構1のロータ3側に搭載することができる。レーザスキャナは、センサと計測対象物との間におけるレーザパルスの往復時間を計測することによって計測対象物までの距離を計測する装置である。また、3次元レーザスキャナでは、レーザパルスの照射角度を計測することによって計測対象点の3次元空間座標を取得することができる。
【0035】
動力部12は、ロータ3の回転軸3Aに動力を負荷するモータ等の装置である。すなわち、動力部12によってロータ3とともにセンサ11が回転する。
【0036】
制御装置13は、センサ11に制御信号を送信する一方、センサ11からの検出信号を受信して信号処理を行う装置である。従って、制御装置13は、第1の電線6によってステータ2の第1の電極4と接続される。制御装置13には、センサ11に電力を供給する電源としての機能を設けてもよい。また、動力部12を制御することによって、センサ11の回転角度を制御する機能を、制御装置13に設けてもよい。
【0037】
そして、制御装置13からセンサ11に入出力される電力及び信号を、回転機構1を介して制御装置13とセンサ11との間で送受信することができる。
【0038】
以上のように、回転機構1及び回転式スキャナ10は、重り8の遠心力を利用してステータ2側の第1の電極4とロータ3側の第2の電極5との間における接触を確保するようにしたものである。
【0039】
(効果)
このため、回転機構1によれば、回転体への電力や信号の入出力を安定的に行うことができる。しかも、回転機構1の構造は非常に単純である。すなわち、回転機構1の構造は、同心円状にパーツを重ねただけの構造である。このため、回転機構1の小型化及び軽量化が容易である。また、回転機構1の組立及び解体も容易である。
【0040】
従って、回転機構1を用いれば、導電性のブラシを導電性の回転リングに接触させることによって電力や信号を回転体に伝達する従来のスリップリングでは困難であった回転体への電力や信号の伝達が可能となる。
【0041】
例えば、ヘリコプタ、ヘリコプタのラジコン、無人航空機、自動車或いは自動車のラジコンのような移動体には、重量の重いスリップリングやサイズが大きいスリップリングを搭載することが困難である。また、振動や慣性力を伴う移動体にスリップリングを搭載すると、接触不良が生じる場合がある。
【0042】
これに対して、回転機構1は高い信頼性を有し、かつ重量及びサイズが小さいため、上述したような移動体であっても搭載することができる。このため、レーザスキャナ等を回転機構1を介して移動体に搭載することが可能となる。これにより、従来は、自由に回転させることができなかった航空機搭載用のレーザスキャナを360度方向に自由に回転させることが可能となる。また、小型のラジコンカーに回転式のレーザスキャナを搭載することも可能となる。
【0043】
もちろん、ラジコンのヘリコプタ、ラジコンでない無人のヘリコプタ或いは有人のヘリコプタの回転翼を回転機構1のロータ3側に固定し、ヘリコプタの回転翼側に取付けられた任意の装置に電力の供給又は信号の入出力を行うこともできる。その場合、回転機構1のロータ3を回転させるためのモータと、ヘリコプタの回転翼を回転させるためのモータとを共通にすることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態に係る回転機構の構成を示す横断面図である。
【0045】
図5に示された第2の実施形態における回転機構1Aでは、ロータ3側の第2の電極5の構成が第1の実施形態における回転機構1と相違する。第2の実施形態における回転機構1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における回転機構1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0046】
第2の実施形態における回転機構1Aに備えられるロータ3側の帯状の第2の電極5は、弾性力によってステータ2側の第1の電極4と接触する湾曲した板状の部分5Bを有する。従って、第2の電極5の端部には、必ずしも重り8を設ける必要がない。
【0047】
このような第2の実施形態における回転機構1Aによっても、第1の実施形態における回転機構1と同様な効果を得ることができる。
【0048】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。