(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本実施例につき図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0013】
まず、装置外観の構成について説明する。
図1はインクジェット記録装置500を示す斜視図である。インクジェット記録装置500には、外部には操作表示部3が備えられた本体1と印字ヘッド2が備えられており、本体1と印字ヘッド2は導管4で接続されている。
【0014】
次に、
図2を用いてインクジェット記録装置500の動作原理について説明する。
図2において、インク容器18内のインク7Aはポンプ25に吸引、加圧されてインク柱7Bとなってノズル8から吐出される。ノズル8には、電歪素子9が備えられており、インクに所定の周波数で振動を加えてノズル8から吐出されるインク柱7Bを粒子化するようになっている。これにより生成されるインク粒子7Cの数は,電歪素子9に印加する励振電圧の周波数により決定され、その周波数と同数となる。インク粒子7Cは、印字情報に対応した大きさの電圧を帯電電極11にて印加することで電荷を与えられるようになっている。
【0015】
帯電電極11で帯電させられたインク粒子7Cは、偏向電極12間の電界中を飛翔している間、帯電量に比例した力を受けて偏向し、印字対象物13へ向かって飛翔して着弾する。その際、インク粒子7Cは帯電量に応じて偏向方向の着弾位置は変化し、さらに偏向方向と直行する方向に生産ラインが印字対象物13を移動させることで、偏向方向と直行した方向にも粒子を着弾させることが可能となり、複数の着弾粒子によって文字を構成し印字を行う。
【0016】
印字に使用されなかったインク粒子7Cは偏向電極12間を直線的に飛翔して、ガター14により捕捉された後に経路を経由して、主インク容器18に回収される。
次に、インクジェット記録装置500の実際の使用状態の一例を
図3に示す。インクジェット記録装置500は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられ、本体1は使用者が操作できる位置に設置され、印字ヘッド2はベルトコンベア15などの生産ライン上を給送される印字対象物13に近接できる位置に設置される。
【0017】
ベルトコンベア15などの生産ライン上には給送速度に係わらず同じ幅で印字するために、給送速度に応じた信号をインクジェット記録装置500に出力するエンコーダ16や、印字対象物13を検出してインクジェット記録装置500に印字を指示する信号を出力する印字センサ17が設置されていて、それぞれは本体1内の図示しない制御部に接続されている。
【0018】
エンコーダ16や印字センサ17からの信号に応じて制御部がノズル8から吐出されるインク粒子7Cへの帯電量や帯電タイミングを制御し、印字対象物13が印字ヘッド2近傍を通過する間に帯電、偏向されたインク粒子7Cを印字対象物13へ付着させて印字を行うようになっている。
【0019】
次に、印字ヘッド2の構成について
図4を用いて説明する。
図4は印字ヘッド2に印字ヘッドカバー52が装着された状態を示している。印字ヘッド2の内部には、インク粒子を噴出するノズル8と、印字するインク粒子に帯電する帯電電極11と、インク粒子を偏向する偏向電極12と、非印字インク粒子を回収するガター14が一直線上に配置されている。また、ノズル8の横には、図示しないが、気液分離器53を設置している。52Aは印字するインク粒子が飛び出す開口部である。気液分離器については後で詳細に説明する。
【0020】
図5は、インクジェット記録装置500の全体的な経路構成を示す説明図である。まず、本実施例のインクジェット記録装置500のインク供給経路について説明する。
図5において、本体1には、循環するインク7Aを保持する主インク容器18が備えられている。主インク容器18は、経路201を介して経路の開閉を行う電磁弁22Aに接続されており、電磁弁22Aは経路202を介して合流経路291に接続されている。合流経路291は、経路203を介してインク7Aを吸引、圧送するために使用されるポンプ(供給用)24に接続されている。そして、ポンプ(供給用)24は経路204を介してインク7A中に混入している異物を除去するフィルタ(供給用)28に接続されている。
【0021】
フィルタ28は、経路205を介してポンプ(供給用)24から圧送されたインク7Aを印字するために適正な圧力に調整する減圧弁33に接続されており、減圧弁33は経路206を介してノズルに供給されるインク7Aの圧力を測定する圧力計31が備えられている。
【0022】
圧力計31は、導管4内を通る経路207を介して印字ヘッド2内に備えられ、インク7Aを吐出する吐出口を備えたノズル8に接続されている。
ノズル8吐出口の直進方向には、印字に使用されないために帯電、偏向されずに直進的に飛翔するインク粒子7Cを捕捉するためのガター14が配置されている。
次に本実施例のインクジェット記録装置500のインク回収経路について説明する。ガター14は、導管4内を通る経路211を介して本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去するフィルタ(回収用)30と接続されており、フィルタ(回収用)30は、経路212を介して経路の開閉を行う電磁弁22Bに接続されている。電磁弁22Bは経路213を介してガター14により捕捉されたインク粒子7Cを吸引するポンプ(回収用)25と接続されている。
【0023】
ポンプ(回収用)25は、経路214を介して合流経路292に接続され、合流経路292は、経路215を介して主インク容器18と接続されている。
【0024】
次に本実施例のインクジェット記録装置500のインク補給経路について説明する。本体1には、補充用のインクを保持する補助インク容器19が備えられており、補助インク容器19は、経路221を介して経路の開閉を行う電磁弁22Cに接続されている。そして、電磁弁22Cは、経路222を介して合流経路291に接続されている。
【0025】
次に本実施例のインクジェット記録装置500のインク循環経路について説明する。印字ヘッド2内に備えられたノズル8には、インク供給用の経路207の他に導管4内を通る経路225を介して本体1内に備えられ、流路の開閉を行う電磁弁22Dに接続されている。
【0026】
電磁弁22Dは、経路226を介してノズル8からのインクの吸引を行うポンプ(循環用)26に接続され、ポンプ(循環用)26は、経路227を介して合流経路292に接続された構成となっている。
【0027】
次に本実施例のインクジェット記録装置500の粘度測定経路について説明する。主インク容器18内のインク7Aの粘度を把握するために、粘度測定器21が設けられている。粘度測定器21の一次側の流路には、経路232を介してインク7A中に混入している異物を除去するフィルタ(粘度測定用)34に接続されており、フィルタ(粘度測定用)34は、経路231を介して主インク容器18に接続されている。
【0028】
粘度測定器21の二次側の流路には、経路233を介して流路の開閉を行うために電磁弁22Eに接続されており、電磁弁22Eは、経路234を介して経路226と合流する合流経路293に接続されている。
【0029】
次に本実施例のインクジェット記録装置500の溶剤補給経路について説明する。本体1には、溶剤補給用の溶剤を保持する溶剤容器20が備えられており、溶剤容器20は、経路236を介して溶剤を吸引、圧送するために使用されるポンプ(溶剤用)27に接続されている。ポンプ(溶剤用)27は、経路237を介して流路の開閉を行うために電磁弁22Fに接続されており、電磁弁22Fは、経路238を介して主インク容器18と接続されている。
【0030】
次に本実施例の排気経路、および溶剤ガス循環経路について説明する。主インク容器18は、経路246を介して流路の開閉を行うために電磁弁22Hに接続されており、電磁弁22Hは、導管4内を通る経路248を介して印字ヘッド2内に設置された気液分離器53に接続されている。
【0031】
気液分離器53の液出口管は、導管4内を通る経路250を介して本体1内に設置され、流路の開閉を行うための電磁弁22Jに接続されており、電磁弁22Jは、経路244を介して経路226と合流する合流経路294に接続されている。
【0032】
次に本実施例の主インク容器について説明する。
図6は本発明の一実施例に係る主インク容器18の断面図を示している。
図6において、主インク容器18は、インク7Aを保持する液貯留部61と、液貯留部61を密閉するための蓋の役割を有する容器蓋62とを備えている。容器蓋62は、経路201と接続され、先端が液貯留部61に保持されたインク7Aに浸漬している吸引パイプ63と、経路246と接続され先端が図示しない電極(オーバーフローセンサ用)より上部にある排気パイプ64と、インク回収経路215に接続される回収パイプ65と、溶剤補給経路238と接続された溶剤補給パイプ66とを備えている。
【0033】
また、容器蓋62は、先端が液貯留部61に保持されたインク7Aに浸漬している電極(GND)67と、先端が液面レベルBを示す77Bに配置されたレベル2電極69と、先端が液面レベルBの下方に設置されており液面レベルCを示す77Cに配置されたレベル3電極70と、先端が液面レベルBを示す77Bの上方に設置されており液面レベルAを示す77Aに配置されたレベル1電極68と、を備えている。このような構成により、電極67,68,69,70は、主インク容器18内の液体が内部に保持されるのに適正な量である基準液面レベルに達しているか否かを検知する液面センサとして働き、図示していないが例えば検流計などを用い、電極に接続された電線から2本を選択して検流計に接続し、電流の有無により導通状態をみることができる。すなわち電極間のインクの有無をチェックできる。
【0034】
次に、本実施例の制御系について説明する。
図7にインクジェット記録装置500の機能ブロック図を示す。インクジェット記録装置500には、例えばMPUを備える制御部300が備えられており、制御部300はバスライン301を介して、操作表示部3、ノズル8、帯電電極11、偏向電極12、エンコーダ16、印字センサ17、粘度測定器21、電磁弁22A〜K、ポンプ24〜27、減圧弁30、液面センサ67,68,69,70及び記録部302等の各部を制御するようになっている。
【0035】
記録部302には、インクジェット記録装置500を制御するためのプログラムが格納されており、制御部300はこのプログラムに基づいてインクジェット記録装置500を構成する各部位を制御するようになっている。
【0036】
記録部302には、印字を行うためのインクの適正なインク粘度、すなわち印字を行うにあたっての上限値(η max)及び下眼値(η min)が記録されている。
【0037】
インクジェット記録装置においては、ノズルから吐出するインクの粘度を印字が適正に行うことができる範囲内に制御する必要があり、適正な範囲から外れたインク粘度になると、ノズルから吐出したインクが粒子化する位置が変化したり、インク粒子が均一な形状に粒子化しないなどの現象が発生して、インク粒子に所望の帯電量を与えることができず、適正な印字結果を得ることができない。
【0038】
そこで、上記現象の発生を避けるため、インクジェット記録装置においては、インク粘度を調整し、所定範囲のインク粘度に維持する手段が必要となる。
【0039】
本実施例のインクジェット記録装置500においては、インクの濃度が溶剤で薄まってしまった場合、通常稼働中では溶剤消費量が少ないため、インクの濃度を正常値に戻すまで時間がかかってしまう。そこで、インクの粘度を測定した時に規定値以下の場合には、一時的に溶剤消費量を増加させ、インクの濃度を正常な値に戻す制御(インク高粘度化制御)を行う。
【0040】
また、インクジェット記録装置は本体1内部に温度センサを備えており、測定した値を元にインク高粘度化制御方法を決める。 次に、本実施例によるインクジェット記録装置500の運転動作について説明する。
【0041】
図9は、本実施例によるインクジェット記録装置500において、印字操作が行われている時、すなわちノズル8からインク噴出が行われている時(以降、運転条件Aと称する)におけるインク流れおよびエア流れを太線で示す流体経路図である。
図9において、印字動作が行われている運転動作中においては、電磁弁22Aが通電されて流路を開放し、インク供給流路401に示すように、主インク容器18に貯留されたインク7Aがポンプ(供給用)24を稼動することによりノズル8に供給される。ここで、インク供給流路401のインク流量は、例えばノズル8の穴径が65[μm]でノズル8へのインク供給圧力が0.250[MPa]の場合は、約3.5[ml/分]となる。
【0042】
また、インク回収経路においては、電磁弁22Bが通電されて流路を開放し、インク回収流路402に示すように、印字に使用されなかったインク粒子7Cが、ポンプ(回収用)25を稼動することによりガター14から主インク容器18に回収され、インクを装置内で循環させる動作を行っている。ここで、インク回収流路402では、ノズル8から吐出されたインク粒子7C(約3.5[ml/分])と、印字に使用されたインク粒子(仮に、0.5[ml/分]とする)の場合、差分の約3.0[ml/分](=3.5−0.5)のインクがガター14から回収されることになる。また、インク回収流路402では、ガター14からインクと共に吸い込んだエアが流れている。これは、印字ヘッド2内のガター14と、本体1内のポンプ(回収用)25を接続する経路211が4[m]程度あり、インクのみを吸引しようとすると負荷が大きくなり、吸引できずにインクがガター14から溢れてしまうからである。そのため、ガター14からインクを吸引する時は、エアを約150[ml/分]吸引するようにしている。つまり、インク回収流路402は、インク(例えば、約3.0[ml/分])とエア(例えば、約150[ml/分])が共に混じった気液混合の状態で流れている。
【0043】
インクジェット記録装置500に使用されるインク7Aは、印字後すぐに乾燥することが求められており、インク7Aの溶媒には、揮発性の高い溶剤(例えば、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、等)が使用される。インク7Aに揮発性の高い溶媒を用いているために、インク回収流路402を流れるエアには、飽和蒸気濃度に近い溶剤蒸気が溶け込む。さらに、本体1の温度上昇による主インク容器18の温度分、エアの中に溶剤蒸気が溶け込むことになる。
【0044】
次に
図9において、溶剤ガス循環流路403、液回収流路405、溶剤ガス供給流路404について説明する。
【0045】
液回収経路250においては、電磁弁22Jが通電されて流路を開放し、液回収流路405に示すように、気液分離器53に流入した液がポンプ(循環用)26を稼動することにより主インク容器18に回収されている。ここで、液回収流路405では、液と飽和した溶剤蒸気が気液混合した状態で流れており、液は例えば約5[ml/時](環境温度20[℃])、溶剤蒸気は約150[ml/分]の流量となっている。
【0046】
主インク容器18には、インク回収流路402を流れるインクと、液回収流路405を流れる液が、流入し保持される構成となっている。また、インク回収流路402を流れる溶剤蒸気(約150[ml/分])と、液回収流路405を流れる溶剤蒸気(約150[ml/分])とを合わせた溶剤蒸気約300[ml/分](=150+150)は、主インク容器18に流入した後、電磁弁22Hが通電されて流路を開放されることで、溶剤ガス循環流路403で示したように経路248を通り気液分離器53へ流入する。この溶剤蒸気約300[ml/分]については、主インク容器18と気液分離器53との温度差で一部が液化し(例えば約5[ml/時](環境温度20[℃])とする)、気液分離器53へ流入する構成となっている。気液分離器53では、液は液回収経路250から吸引することができるため、経路249には気体(溶剤ガス、流量約150[ml/分])を印字ヘッド2内部へ排出する。これを、溶剤ガス供給流路404として図中に示した。
【0047】
これにより、印字ヘッド2内にあるガター14からは、飽和蒸気濃度の高い溶剤ガスを吸わせることができるため、インク回収流路402でインクとエアが気液混合の状態で流れたとしても、インク内の溶剤成分の揮発を低減することができる。また、気液分離器53により、液が印字ヘッド2内に流れ出ることを防止している。
【0048】
次に、
図10は、本実施例によるインクジェット記録装置500において、粘度測定が行なわれている時、および、機外への溶剤ガス排出が行なわれている時(以降、運転条件Bと称する)におけるインク流れおよびエア流れ、溶剤流れを太線で示す流体経路図である。インク供給流路401、および、インク回収流路402については、
図9と同じため説明を省略する。
【0049】
排気経路においては、電磁弁22Kが通電されて流路を開放し、インク回収流路402から主インク容器18に流入した溶剤ガス(約150[ml/分])は、溶剤ガス排出流路406に示すように、排気ダクト50内へ排出され、さらに機外へ排出される。
【0050】
また、粘度測定時に、電磁弁22Eが通電されて流路を開放し、粘度測定時インク流路407に示すように、主インク容器18に貯留されたインク7Aがポンプ(循環用)26を稼動することにより粘度測定器21に供給される。このように動作することで、ポンプ(循環用)26を、液回収流路405と、粘度測定時インク流路407とで使い分けている。
【0051】
また、インク回収流路402にてインク中の溶剤が揮発した分、主インク容器18内のインク濃度が高くなってしまう。そのため、定期的に溶剤を主インク容器18に補給し、ノズル8へ供給するインク濃度を調整している。溶剤補給中は、電磁弁22Fが通電されて流路を開放し、溶剤容器20に貯留された溶剤がポンプ(溶剤用)27を稼動することにより主インク容器18に補給される。
【0052】
次に、
図11は、本実施例によるインクジェット記録装置500において、気液分離器53からエアを吸引して主インク容器18に供給し、機外への溶剤ガス排出が行なわれている時(以降、運転条件Cと称する)におけるインク流れおよびエア流れ、溶剤流れを太線で示す流体経路図である。インク供給流路401、および、インク回収流路402については、
図9と同じため説明を省略する。
【0053】
液回収経路においては、電磁弁22Jが通電されて流路を開放し、エア吸引流路408に示すように、ポンプ(循環用)26を稼働することで気液分離器53からエアを吸引して主インク容器18に供給する。エア吸引流路408の流量は、ポンプ(循環用)26の能力で決まる。
【0054】
主インク容器18には、インク回収流路402を流れる溶剤蒸気(約150[ml/分])と、エア吸引流路408を流れる溶剤蒸気(約150[ml/分])とを合わせた溶剤蒸気約300[ml/分](=150+150)は、主インク容器18に流入した後、電磁弁22Kが通電されて流路を開放されることで、溶剤ガス排出流路406で示したように経路257を通り排気ダクト50へ流入し、機外へ排出される。
【0055】
図12は、前述した各運転条件での溶剤消費量を比較した図である。すなわち、
図12において、運転条件Aは、
図9に示した、印字操作が行われている時、すなわちノズル8からインク噴出が行われている時の状態であり、溶剤の揮発を抑える運転条件であるので、例えば、溶剤消費量は2.5ml/hourと小さな値となる。
【0056】
また、運転条件Bは、
図10に示した、粘度測定が行なわれている時、および、機外への溶剤ガス排出が行なわれている時の状態であり、インク供給流路401、および、インク回収流路402については、
図9の運転条件Aと同じであるが、気液分離器による溶剤成分の揮発低減効果がない分、及び、機外への溶剤ガスを排出している分だけ溶剤消費量が増え、例えば、溶剤消費量は5ml/hourとなる。
【0057】
運転条件Cは、
図11に示した、気液分離器53からエアを吸引して主インク容器18に供給し、機外への溶剤ガス排出が行なわれている時の状態であり、インク供給流路401、および、インク回収流路402については、
図9の運転条件Aと同じであるが、インク回収流路402を流れる溶剤蒸気と、エア吸引流路408を流れる溶剤蒸気とを合わせた溶剤蒸気が、主インク容器18に流入した後、排気循環パイプ64から溶剤ガス排出流路409で機外へ排出される分だけ溶剤消費量が増え、例えば、溶剤消費量は10ml/hourとなる。
【0058】
また、運転条件D、Eは、運転条件Cの
図11のインク、エアの流れと同じであるが、ポンプの流量を変化させている。本実施例で採用しているポンプ24〜27はダイヤフラムポンプであり、例えば、運転条件Cではポンプ周波数2Hz、運転条件Dではポンプ周波数3Hz、運転条件Eではポンプ周波数4Hzと変更することでポンプ流量を制御することが可能となっている。したがって、エア流量が運転条件D、Eとなるに従って大きくなるので、それに伴い溶剤消費量が増え、例えば、溶剤消費量は、運転条件Dで15ml/hour、運転条件Eで20ml/hourとなる。このように、運転条件を変えることにより、溶剤消費量を制御できる。
【0059】
図13は、運転条件A及び運転条件Cでの温度別溶剤消費量を比較した図である。
図13において、運転条件Cでの溶剤消費量を左軸に示し、運転条件Aでの溶剤消費量を右軸に示している。
図13に示すように、環境温度が高温なほど溶剤消費量は大きくなり、特に、運転条件Cで制御することで、溶剤消費量を増加させてインクを早く濃縮することが可能となる。したがって、インク粘度の状況に応じて、早く粘度を上げたい場合には、運転条件Cに切替え、さらには、温度を高温とすることで、促進できる。また、溶剤の消費量を抑えてランニングコストを抑える運転条件Aと、インク粘度を高くするために溶剤の消費量を大きくする運転条件Cの高粘度化制御を切替えることが可能となる。
【0060】
次に、本実施例におけるインク粘度制御について、
図8を用いて説明する。
図8は、インク粘度測定を行い、インク粘度値が一定値より低かった場合の高粘度化制御方法と、インク粘度値が一定値より高かった場合の低粘度化制御方法とを示した制御フロー図である。
【0061】
まず、ステップS801は、運転条件Aにてノズル8から粒子化されたインク7Cが噴出されており、インク粒子7Cがガター14から回収されている状態を示している。ステップS801は、運転条件A(
図9)の状態で稼働しており、主インク容器18では液面レベルBの位置で制御している。例えば、インク粘度値は標準値η=100±7[%]の範囲になるように制御している。
【0062】
ステップS802は、インク粘度測定を実施することを示している。ステップS803は、「粘度値≧ηmin」であるかを判定する。例えば、インク粘度値ηmin=75(標準値の75[%])である。インク粘度値がηmin以上である場合は「Yes」と判定され、ステップS804へ進む。インク粘度値がηminより小さければ「No」と判定され、ステップS811へ進む。
【0063】
ステップS811では、インク粘度が低いと判断されたため、運転条件B〜Eで動作させることで、通常の運転(運転条件A)の時より早くインクを濃縮することができる。本ステップでは、主インク容器18の液面レベルBから液面レベルCまで濃縮させるようにしている。例えば、液面レベルBの時にインク粘度値75の場合に、液面レベルCまでインクを濃縮するとインク粘度値100になる。
【0064】
ステップS812は、インク粘度測定を実施することを示している。ステップS813は、「粘度値≧ηmin」であるかを判定する。インク粘度値がηmin以上である場合は「Yes」と判定され、ステップS814へ進む。インク粘度値がηminより小さければ「No」と判定され、ステップS815へ進む。
【0065】
ステップS815は、高粘度化制御を実施しても粘度が印字可能なインク粘度範囲に入らないために顧客に注意を促すために警報「粘度低い」を発生させることを示している。例えば、ステップS812でのインク粘度が50である場合など極端に低い場合は、一度のインク濃縮制御では標準粘度値100にならない。そのため、もう一度ステップS811に戻し、再度インク濃縮制御を実施する。
【0066】
ステップS814は、液面レベルCから液面レベルBまでインクを補助インク容器19から主インク容器18に補給することを示している。完了すればステップS805に進み、通常の液面レベルBでのインク噴出中の制御に戻る。
このステップS805はステップS801と同じ稼動制御である。ステップS804は、「粘度値≦ηmax」であるかを判定する。例えば、インク粘度値ηmax=125(標準値の125[%])である。インク粘度値がηmax以下である場合は「Yes」と判定され、ステップS805へ進む。インク粘度値がηmaxより大きければ「No」と判定され、ステップS821へ進む。
【0067】
ステップS821では、インク粘度が高いと判断されたため、主インク容器18の液面レベルBから液面レベルAまで溶剤容器20から主インク容器18に溶剤を補給する。例えば、液面レベルBの時にインク粘度値125の場合に、液面レベルAまで溶剤を入れて稀釈するとインク粘度値100になる。
【0068】
ステップS822は、インク粘度測定を実施することを示している。ステップS823は、「粘度値≦ηmax」であるかを判定する。インク粘度値がηmax以下である場合は「Yes」と判定され、ステップS824へ進む。インク粘度値がηmaxより大きければ「No」と判定され、ステップS825へ進む。
【0069】
ステップS824は、運転条件A(
図9)の状態で稼働しており、主インク容器18では液面レベルAの位置で制御している。
【0070】
ステップS825は、低粘度化制御を実施しても粘度が印字可能なインク粘度範囲に入らないために顧客に注意を促すために警報「粘度高い」を発生させることを示している。例えば、ステップS822でのインク粘度が150である場合など極端に高い場合は、インク稀釈制御では標準粘度値100にならない。そのような場合、メイン容器18からのインク排出及び溶剤補給を実施することで、更なるインク稀釈を行う。そのためのステップS831に進む。
【0071】
ステップS831は、メイン容器18内のインクを液面レベルAから液面レベルCまで排出することを示している。完了すれば、ステップS832に進む。
【0072】
ステップS832は、メイン容器18内の液面レベルCから液面レベルBまで溶剤を補給することを示している。例えば、インク粘度値125の場合に、液面レベルBまで溶剤を入れて稀釈するとインク粘度値100になる。完了すればステップS833に進む。
【0073】
ステップS833は通常のインク噴出を実施することを示している。完了すれば、ステップS805に進む。ステップS805は、印字可能なインク粘度範囲に入っていることを確認できたため、運転条件Aでのインク噴出を継続することを示している。
【0074】
以上のように、本実施例は、装置本体に収納されているインクを貯留する主インク容器と、インクをインク粒子として吐出して被印字物に印字を行うノズルと、インク容器からノズルにインクを供給するインク供給流路と、ノズルより吐出したインク粒子のうち、印字に使用しないインク粒子をエアと共に回収するガターと、ガターで回収したインク粒子をインク容器に回収するインク回収流路と、インク容器に接続され溶剤ガスを主インク容器から排出する溶剤ガス排出流路と、溶剤ガス排出流路内にて温度低下による溶剤ガスの凝集液を気液分離する気液分離器とを備えたインクジェット記録装置であって、気液分離器から吸引したエアを主インク容器に供給し該主インク容器内の溶剤ガスを排出することでインクを濃縮する構成とする。
【0075】
また、インクをインク粒子として吐出して被印字物に印字を行うインクジェット記録装置において用いられるインク粘度の制御方法であって、インクを貯留するための主インク容器内の溶剤ガスを排出する溶剤ガス排出流路内にて、温度低下による溶剤ガスの凝集液を気液分離するための気液分離器から吸引したエアを主インク容器に供給することで溶剤の揮発を抑える運転条件Aと、主インク容器内の溶剤ガスを排出する運転条件Bと、気液分離器から吸引したエアを主インク容器に供給し主インク容器内の溶剤ガスを排出する運転条件Cとを有し、運転条件A、B、Cを切り替えてインク粘度の制御を行うように構成した。
【0076】
本実施例によれば、洗浄停止の繰り返し等によりインクが薄まり、印字可能なインク粘度範囲を外れた場合に、気液分離器からエアを吸い込みインクを濃縮させることで従来よりも早くインクを濃縮させることができる。そのため、インク粘度変化による印字乱れなどのトラブルを防止することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0077】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。