【実施例1】
【0010】
図1は、本発明が適用された車両に備えられる手動変速機10(車両用変速機)の一部を示す断面図である。手動変速機10は、ギヤ機構11と操作機構12とを備えて構成されている。ギヤ機構11は、ケース13内において互いに並行な入力軸14、中間軸15、および出力軸16を備えて構成される平行3軸式の手動変速機である。入力軸14は、軸受19等を介して回転軸線C1まわりに回転可能に支持されている。また、中間軸15は、軸受22等を介して回転軸線C2まわりに回転可能に支持されている。出力軸16は、軸受18、20等を介して回転軸線C1まわりに回転可能に支持されている。
【0011】
入力軸14と出力軸16との間には、一対の斜歯歯車から構成される複数個のギヤ対24(
図1では、ギヤ対24aのみ表示)が軸線方向に並んで設けられており、運転者による変速操作が実行されると、これらのギヤ対24のうち何れか1つが動力伝達状態に切り替えられる。また、ギヤ対24bについては、出力軸16に連結されており、ギヤ対24bを介して出力軸16に動力が伝達される。
【0012】
また、入力軸14および出力軸16の回転軸上には、複数個の同期機構26(
図1では、入力軸14上に設けられている同期機構26aのみ表示)が設けられており、変速の際には、選択された変速段に対応する同期機構26が作動させられることで変速が実行される。
【0013】
操作機構12は、入力軸14および出力軸16に平行なシフトロッド28を含んで構成されている。シフトロッド28は、回転可能かつ軸線方向への移動可能に保持されている。運転者が変速操作を実行した際には、その操作が中間軸32等を介してシフトロッド28に伝達されることにより、シフトロッド28が回転方向および軸線方向に移動させられる。これより、シフトロッド28の移動量に応じて同期機構26のスリーブと嵌合するシフトフォーク30が適宜移動させられ、同期機構26が作動させられる。
【0014】
本実施例のケース13は、主にギヤ機構11を収容するトランスミッションケース34(以下、ミッションケース34)と、トランスミッションケースカバー36(以下、ケースカバー36)とを含んで構成されている。このミッションケース34とケースカバー36とは、互いにボルトで締結されることで一体的に形成される。また、ミッションケース34には、ケースカバー36からの潤滑油をそのミッションケース34内の潤滑要部(軸受など)に供給するための供給油路38が形成されている。なお、ミッションケース34が本発明の第2ケースに対応し、ケースカバー36が本発明の第1ケースに対応している。
【0015】
図2は、
図1においてミッションケース34を矢印A方向からみた矢視図である。
図2に示すようにミッションケース34には、周方向に4個のボルト穴42が形成されている。また、
図2の下方に示すように、ミッションケース34のシール面46に、供給油路38に潤滑油を供給するための供給口40が形成されている。なお、シール面46が本発明の第2シール面に対応している。
【0016】
図3は、
図1においてケースカバー36を矢印B方向からみた矢視図である。ケースカバー36にも同様に、周方向に4個のボルト穴44が形成されている。前記ボルト穴42とボルト穴44とは、周方向ならびに径方向において同じ位置に形成されている。ミッションケース34とケースカバー36とを組み付ける際には、ミッションケース34のシール面46とケースカバー36のシール面48とを密接させた状態で、ボルト穴42、44を通るボルト(図示せず)が締結される。このとき、互いのシール面46、48との間から潤滑油が漏れることを防止するため、ボルトの締結に先立って、ミッションケース34のシール面46とケースカバー36のシール面48との間にシール剤50が塗布される。例えばケースカバー36のシール面48の
図3の斜線で囲まれる領域にシール剤50が塗布された状態で、ミッションケース34に組み付けられる。さらに詳細には、ケースカバー36のシール面48上であって、ケースカバー36の内周壁よりも僅かに外周側を、その内周壁に沿ってシール剤50が塗布される。なお、シール面48が本発明の第1シール面に対応している。
【0017】
ここで、シール剤50の量が多くなると、ミッションケース34およびケースカバー36を組み付けた際に、互いのシール面46、48からシール剤50がはみ出る可能性がある。特に、本実施例では、ミッションケース34のシール面46に供給口40が形成されているため、はみ出したシール剤50が供給口40を塞ぐ可能性もある。
【0018】
これに対して、本実施例のケースカバー36には、組付の際にはみ出したシール剤50を溜めるシール剤溜まり溝52が形成されている。シール剤溜まり溝52は、例えばケースカバー36を鋳造する際に併せて形成される。また、このシール剤溜まり溝52は、組み付けた際に、ミッションケース34の供給口40と対向する位置、すなわち軸線C1方向からみてミッションケース34の供給口40と重なる位置およびその周辺に形成されている。従って、ミッションケース34とケースカバー36とを組み付けた際には、供給口40の周辺にシール剤溜まり溝52による空間が形成される。なお、シール剤溜まり溝52が形成される場合、
図3に示すように、シール剤50は、そのシール剤溜まり溝52に沿ってその外側に塗布される。
【0019】
上記シール剤溜まり溝52が形成されると、供給口40と対向する位置に空間が形成されるため、ミッションケース34とケースカバー36とを組み付けた際に、互いのシール面46、48の間からシール剤50がはみ出した場合であっても、供給口40の近傍からはみ出たシール剤50は、シール剤溜まり溝52によって形成される空間に溜まるため、シール剤50が供給口40に届くことが抑制され、供給口40がシール剤50によって塞がれることが防止される。なお、シール剤溜まり溝52の形状や大きさは、シール面46、48の間からはみ出したシール剤50を収容できる程度に、予め実験等に基づいて設定されている。
【0020】
上述のように、本実施例によれば、ミッションケース34のシール面48にシール溜まり溝52が形成されることで、ケースカバー36とミッションケース34とを組み付けた際に、シール剤50が互いのシール面46、48の間からはみ出した場合であっても、はみ出したシール剤50はシール剤溜まり溝52に流れ込むため、シール剤50が供給油路38の供給口40に届くことが抑制される。従って、供給口40がシール剤50によって塞がれることを防止することができる。
【0021】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0022】
図4は、本発明の他の実施例に対応するトランスミッションケース60(以下、ミッションケース60)を軸線C1方向から見た図であって、前述の実施例の
図2に対応している。本実施例では、供給口40が形成されているミッションケース60側にシール剤溜まり溝62が形成されている。なお、ミッションケース60が、本発明の第2ケースに対応している。
【0023】
ミッションケース60のシール面64には、供給口40を取り囲む位置にシール剤溜まり溝62が形成されている。シール剤溜まり溝62は、供給口40に沿って円弧状に形成されている。このシール剤溜まり溝62は、ミッションケース60とケースカバー36とを組み付けた際にはみ出したシール剤50を収容できる程度に、ミッションケース60の軸線方向において所定の深みを有して形成されている。なお、シール面64が本発明の第2シール面に対応している。
【0024】
ミッションケース60とケースカバー36とを組み付ける際には、
図4の斜線で示すように、シール剤溜まり溝62に沿ってその外側をシール剤50が塗布される。これより、ボルトを締結する際に互いのシール面48、64からはみ出したシール剤50は、シール剤溜まり溝62に流れ込み、シール剤50が供給口40に届くことが抑制される。従って、供給口40がシール剤50によって塞がれることが防止される。
【0025】
上述のように、供給口40が形成されるミッションケース60側にシール溜まり溝62が形成された場合であっても、ボルトを締結した際にはみ出したシール剤50がシール溜まり溝62に流れ込むため、供給口40がシール剤50によって塞がれることが防止される。
【0026】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0027】
例えば、前述の実施例では、ミッションケース34、60およびケースカバー36の何れか一方にのみシール剤溜まり溝52、62が形成されているが、ミッションケースおよびケースカバー36の両方にシール剤溜まり溝52、62が形成されていても構わない。すなわち、ケースカバー36にシール剤溜まり溝52が形成されるとともに、ミッションケース60にシール剤溜まり溝62が形成された状態で互いに組み付けられるものであっても構わない。
【0028】
また、前述の実施例では、トランスミッションケース34とトランスミッションケースカバー36の間にシール剤溜まり溝52が形成されるものであったが、本発明は、必ずしもトランスミッションケース34とトランスミッションケースカバー36に限定されない。本願は、複数のケース部材から構成されるケースにおいて、互いに接続されるケース部材のシール面に供給油路の供給口が形成されている構造であれば、適宜適用することができる。
【0029】
また、前述の実施例では、シール剤溜まり溝52は、鋳造の際に併せて形成されるものであったが、鋳造後に切削によって形成されても構わない。
【0030】
また、前述の実施例では、手動変速機10について本発明が適用されているが、本発明は、手動変速機に限定されるものではなく、有段式の自動変速機や無段式の自動変速機など他の形式の変速機に適用されても構わない。
【0031】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。