(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の放電電極の、厚み方向の前記突出部側とは反対側に存在する金属粒子群の平均粒径は、厚み方向の前記突出部側に存在する金属粒子群の平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の放電器用パッケージ。
先端同士が互いに対向するように、前記一対の放電電極上にそれぞれ設けられた、金属から成る棒状の一対の放電補助電極を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の放電器用パッケージ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る放電器用パッケージおよび放電器について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放電器10を有する撮像装置1の外観図である。放電器10は、たとえばスマートフォンなどの携帯端末やデジタルカメラなどの撮像装置1に内蔵するものである。放電器10は、たとえば、希ガスなどの不活性ガスの放電作用を利用して、LEDと比較して、瞬間的に大光量の閃光を発することができる。放電器10を発光させる回路構成は、従来公知の、ガラス管内にキセノンなどの不活性ガスが充填された構造のキセノン放電管を用いた閃光発光器と同様である。
図1に示す撮像装置1は、スマートフォンであって、表示面の裏面側に撮像可能なレンズを有する光学装置2や放電器10を内蔵した発光装置3が設けられている。
【0016】
図2は
図1の放電器10の斜視図であり、
図3は
図2の放電器10の分解斜視図であり、
図4は
図2の切断面線A−Aで切断したときの放電器10の断面図である。また、
図5は放電器10を構成する放電器用パッケージ11の平面図であり、
図6は放電器用パッケージ11を下方から見た底面図である。さらにまた、
図7は放電器用パッケージ11において、一対の放電電極112b,113bの近傍を拡大して示す図である。
【0017】
放電器10は、本実施形態に係る放電器用パッケージ11と、放電器用パッケージ11における基体111の凹部111Bbを覆う蓋体12と、凹部111Bbと蓋体12とで囲まれた放電空間P内に充填された不活性ガスと、を含んで構成される。なお、不活性ガスは、たとえば、希ガスであるキセノン(Xe)を主成分とするガスである。
【0018】
蓋体12は、透光性を有する平板状の部材であり、放電器用パッケージ11における基体111の凹部111Bbが形成された一主面111Bc上に接合され、凹部111Bbで規定される放電空間Pを塞いでいる。ここで、蓋体12の「透光性」とは、放電空間P内における発光によって放射された光の少なくとも一部の波長の光が透過できることをいう。蓋体12は、たとえばガラス、サファイア、透光性セラミックスなどの絶縁材料から成る。
【0019】
蓋体12がガラスから成る場合、蓋体12は、ガラス接合によって放電器用パッケージ11における基体111の一主面111Bcに固定されている。蓋体12がサファイアまたは透光性セラミックスから成る場合、蓋体12は、ガラス接合または焼結接合によって放電器用パッケージ11における基体111の一主面111Bcに固定されている。「焼結接合」とは、基体111の一主面111Bcと蓋体12とを、接合用治具を使用して被接合面を接触させた状態にて高温処理することにより、基体111に含まれるガラス質を接合材として機能させて接合させることをいう。
【0020】
放電器用パッケージ11は、基体111と、一対の突出部である一対の電極支持部112a,113aと、一対の放電電極112b,113bと、トリガ電極116とを含んで構成される。
【0021】
基体111は、アルミナ、チタニア系酸化物、ジルコン酸系酸化物などのセラミックスから成る。基体111は、矩形板状に形成され、一主面111Bcに凹部111Bbを有する。具体的には、基体111は、凹部111Bbを構成する、矩形板状の底部111Aと、矩形枠状の側壁部111Bと、矩形板状の一対の突部111Baとを有する。基体111において、底部111A、側壁部111B、および一対の突部111Baは、一体的に形成されている。なお、基体111は、矩形板状に限らず、円形板状や多角形板状であってもよい。
【0022】
基体111において、側壁部111Bは、底部111Aの主面に設けられ、底部111Aの外周縁に沿った枠状を成し、底部111Aの主面に垂直な内周面を有する。換言すると、側壁部111Bは、下面が底部111Aの主面における外周縁に連なり、上方に開放した上端開口を有し、底部111Aの主面に垂直な内周面によって放電空間Pが規定される。
【0023】
一対の突部111Baは、それぞれ、底部111Aの主面の側壁部111Bで囲まれた領域から突出するか、または、側壁部111Bの内周面から突出し、底部111Aと平行である。本実施形態では、一対の突部111Baは、それぞれ、側壁部111Bの内周面において、矩形枠状の互いに対向する2つの短辺に対応した部分から、放電空間P内に突出している。これら一対の突部111Baは、下面が底部111Aの主面に連なっており、上面が底部111Aの主面に平行である。
【0024】
底部111A、側壁部111Bおよび一対の突部111Baによって構成される凹部111Bbを有する基体111において、底部111Aの主面、側壁部111Bの内周面、および一対の突部111Baの上面が、凹部111Bbの内面となる。
【0025】
基体111において、底部111Aは、長辺の長さが5mm〜20mmであり、短辺の長さが2mm〜5mmであり、厚みが0.2mm〜0.5mmである。また、側壁部111Bは、厚み(底部111Aの主面からの高さ)が0.2mm〜1mmであり、外周縁において、長辺の長さが5mm〜20mmであり、短辺の長さが2mm〜5mmであり、内周縁において、長辺の長さが3mm〜18mmであり、短辺の長さが1mm〜4mmである。さらにまた、一対の突部111Baは、それぞれ、厚み(底部111Aの主面からの高さ)が0.2mm〜1mmであり、短辺の長さ(放電空間P内への突出長さ)が0.5mm〜3mmであり、長辺の長さが1mm〜3mmである。
【0026】
また、基体111には、底部111Aにおける2つの短辺に対応した側面中央部、および、底部111Aにおける1つの長辺に対応した側面中央部に、内方へ曲面状に窪んだキャスタレーション111Cが設けられている。なお、各キャスタレーション111Cには、後述の外部端子117,118,119にそれぞれ対応した導通路が形成されている。
【0027】
一対の電極支持部112a,113aは、基体111の凹部111Bbの内面上に設けられる。本実施形態では、一対の電極支持部112a,113aは、凹部111Bbの内面の一領域部分である一対の突部111Baのそれぞれの上面に設けられる。そして、
図7に示すように、一対の電極支持部112a,113aは、それぞれ、各電極支持部112a,113aの、突部111Baの上面に垂直な断面視で、互いに間隙をあけて突部111Baの上面から突出した複数の支持片112aa,113aaを有する。各電極支持部112a,113aの複数の支持片112aa,113aaは、それぞれ、突部111Baの上面からの突出長さが等しい。
【0028】
一対の電極支持部112a,113aを構成する複数の支持片112aa,113aaは、セラミックスから成る。具体的には、複数の支持片112aa,113aaは、セラミックスから成る基体111に含まれるガラス質によって形成される。
【0029】
一対の放電電極112b,113bは、複数の金属粒子群から成り、電位差によって不活性ガスに絶縁破壊を生じさせて、不活性ガスに電流を流すために用いられる電極であり、一方が陽極であり、他方が陰極である。一対の放電電極112b,113bは、一対の電極支持部112a,113aの形状に対応して、矩形板状に形成される。一対の放電電極112b,113bは、一対の電極支持部112a,113aが設けられる、基体111の一対の突部111Baの上面に間隙をあけて対向するように、一対の電極支持部112a,113aの複数の支持片112aa,113aaによって、それぞれ支持されている。なお、金属粒子群は、多数の金属粒子から成っている。なお、放電電極112b,113bは、矩形板状に限らず、円形板状や多角形板状であってもよい。
【0030】
トリガ電極116は、矩形板状に形成され、一対の放電電極112b,113bと電気的に絶縁されるように、基体111の底部111Aの内部に埋設されている。トリガ電極116は、外部のトリガ回路からの信号に応じて、一対の放電電極112b,113bのうちの陰極となる放電電極との間で予備放電し、一対の放電電極112b,113b間での安定した主放電を開始させる。
【0031】
トリガ電極116は、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの高融点金属から成る。また、トリガ電極116は、長辺の長さが3mm〜18mmであり、短辺の長さが1mm〜4mmであり、厚みが1μm〜10μmである。
【0032】
さらに、本実施形態の放電器用パッケージ11は、基体111の外面に、一対の放電電極112b,113bのそれぞれに対応した外部端子117,118と、トリガ電極116に対応した外部端子119とが設けられている。
【0033】
放電電極112bと外部端子117とはキャスタレーション111Cに形成された導通路117aを介して電気的に接続され、放電電極113bと外部端子118とはキャスタレーション111Cに形成された導通路118aを介して電気的に接続され、トリガ電極116と外部端子119とはキャスタレーション111Cに形成された不図示の導通路を介して電気的に接続されている。外部端子117,118,119および導通路117a,118aは、それぞれ、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの高融点金属から成る。
【0034】
以上のような構成の本実施形態の放電器10によれば、放電器用パッケージ11において、放電空間P内に不活性ガスが充填される構造として、従来のキセノン放電管で用いられるガラス管を構成する石英ガラスよりも熱伝導率が高いセラミックスから成る基体111を用いているので、一対の放電電極112b,113b間の放電により発生する熱が、基体111に蓄積されることを抑制して、基体111から放熱される。
【0035】
さらに、本実施形態の放電器用パッケージ11において、一対の放電電極112b,113bは、一対の電極支持部112a,113aが設けられる、基体111の一対の突部111Baの上面に間隙をあけて対向するように、一対の電極支持部112a,113aの複数の支持片112aa,113aaによって、それぞれ支持されている。これによって、一対の放電電極112b,113bと、基体111の一対の突部111Baの上面との間に、各支持片112aa,113aa間の間隙に存在する空気層が介在されることになるので、この空気層の断熱作用によって、一対の放電電極112b,113b間の放電により発生する熱が基体111に伝達されることを抑制することができる。そのため、放電電極112b,113b間の放電により発生する熱に起因した、放電器10の耐久性の低下を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態の放電器用パッケージ11では、
図7に示すように、一対の放電電極112b,113bを構成する金属粒子群の平均粒径については、各放電電極112b,113bの厚み方向の突出部側としての電極支持部112a,113a側に存在する金属粒子群112bb,113bbの平均粒径よりも、厚み方向の突出部側としての電極支持部112a,113a側とは厚み方向の反対側である表面側に存在する金属粒子群112ba,113baの平均粒径が大きい。具体的には、各放電電極112b,113bの厚み方向の電極支持部112a,113a側に存在する金属粒子群112bb,113bbの平均粒径は5〜20μmであり、電極支持部112a,113a側とは厚み方向の反対側である表面側に存在する金属粒子群112ba,113baの平均粒径は15〜30μmである。ここで、一対の放電電極112b,113bを構成する金属粒子群の平均粒径は、たとえば、以下のようにして測定した粒径である。まず、各放電電極112b,113bの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて所定倍率(たとえば1000倍)で観察し、SEM画像を得る。このSEM画像を用いて従来公知のインターセプト法により例えば50個程度の金属粒子の粒径を測定し、その平均値を金属粒子群112ba,113baの平均粒径とする。
【0037】
複数の金属粒子群によって構成される一対の放電電極112b,113bでは、金属粒子の結晶粒界で熱の拡散が起こり、その結晶粒界で熱伝導性が低下する。換言すれば、一対の放電電極112b,113bにおいて、金属粒子の結晶粒界が少ない領域部分では、熱伝導性の低下が抑制されることになる。この点を考慮して、一対の放電電極112b,113bにおいて、厚み方向の電極支持部112a,113a側とは反対側の表面側に存在する金属粒子群112ba,113baの平均粒径が大きいことにより、この表面側で金属粒子の結晶粒界が少なくなる。それ故、一対の放電電極112b,113bは、厚み方向の前記表面側で熱伝導性の低下が抑制された構造を有することになる。したがって、
一対の放電電極112b,113b間の放電により発生する熱は、各放電電極112b,113bの表面側から放熱され、一対の放電電極112b,113bに熱が蓄積されることを抑制することができる。よって、一対の放電電極112b,113bの耐久性が向上し、ひいては放電器10の耐久性が向上する。
【0038】
また、本実施形態の放電器用パッケージ11では、一対の放電電極112b,113bの金属粒子群を構成する金属粒子は、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの高融点金属と、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、鉄クロムニッケル合金(Fe−Cr−Ni)などの金属とを含む。本実施形態では、一対の放電電極112b,113bの金属粒子群を構成する金属粒子は、タングステン(W)およびニッケル(Ni)を含む。なお、一対の放電電極112b,113bのうち、陰極となる放電電極は、電子放出特性に優れた酸化ランタン、酸化イットリウムまたは酸化セリウムを含んでいてもよい。
【0039】
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、鉄クロムニッケル合金(Fe−Cr−Ni)などの金属を含む金属粒子は、一対の放電電極112b,113bの形成時に、結晶化速度が速いものである。したがって、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、鉄クロムニッケル合金(Fe−Cr−Ni)などの金属を含む金属粒子によって構成される一対の放電電極112b,113bは、上記のような、厚み方向の表面側に存在する金属粒子群112ba,113baの平均粒径が大きい、という構造を有する電極となる。
【0040】
次に、本実施形態に係る放電器10の製造方法について、
図8を用いて説明する。
図8は、放電器用パッケージ11を製造するための積層体を示す分解斜視図である。放電器10の製造方法は、成形工程と、印刷工程と、焼成工程と、封入工程とを含んで構成される。
図8に示すように、放電器10を構成する放電器用パッケージ11は、矩形板状の第1のセラミックグリーンシート21と、矩形板状の第2のセラミックグリーンシート22と、矩形板状の第3のセラミックグリーンシート23と、矩形板状の第4のセラミックグリーンシート24とを積層させた積層体を用いて、製造される。
【0041】
成形工程では、加工前の第1のセラミックグリーンシート21、第2のセラミックグリーンシート22、第3のセラミックグリーンシート23、および第4のセラミックグリーンシート24を、予め定められた形状に成形する。たとえば、第1のセラミックグリーンシート21は、基体111の凹部111Bbの開口に対応した、厚み方向に貫通する第1シート孔部211が形成されるように、成形される。第2のセラミックグリーンシート22は、基体111の凹部111Bbの開口および一対の突部111Baに対応した、厚み方向に貫通する第2シート孔部221が形成されるとともに、矩形板状のシートにおいて互いに対向する2つの短辺の縁端中央部に、キャスタレーション111Cに対応して内方へ曲面状に窪んだ第2シート切欠き222が形成されるように、成形される。第3のセラミックグリーンシート23は、矩形板状のシートにおいて互いに対向する2つの短辺の縁端中央部に、キャスタレーション111Cに対応して内方へ曲面状に窪んだ第3シート切欠き231が形成され、1つの長辺の縁端中央部に、キャスタレーション111Cに対応して内方へ曲面状に窪んだ第3シート切欠き231が形成されるように、成形される。第4のセラミックグリーンシート24は、矩形板状のシートにおいて互いに対向する2つの短辺の縁端中央部に、キャスタレーション111Cに対応して内方へ曲面状に窪んだ第4シート切欠き241が形成され、1つの長辺の縁端中央部に、キャスタレーション111Cに対応して内方へ曲面状に窪んだ第4シート切欠き241が形成されるように、成形される。
【0042】
ここで、加工前のセラミックグリーンシートは、従来公知の方法で形成される。たとえ
ば、加工前のセラミックグリーンシートの原料の主成分には、アルミナ、チタニア系酸化物、およびジルコン酸系酸化物等が用いられる。チタン酸バリウムを主成分とする焼結体を用いる場合には、たとえば、チタン酸バリウム粉末に対して、所定量の酸化マグネシウム粉末、希土類元素の酸化物粉末および酸化マンガン粉末を配合し、さらに、必要に応じて焼結助剤としてガラス粉末を添加して素原量粉末を得る。次に、素原量粉末に有機ビヒクルを加えてセラミックスラリを調製し、次いで、ドクターブレード法またはダイコーダ法などの従来公知のシート成形法を用いて、加工前のセラミックグリーンシートが形成される。
【0043】
成形工程の後工程である印刷工程では、第2のセラミックグリーンシート22の一主面上に、一対の放電電極112b,113bを印刷する。さらに、第4のセラミックグリーンシート24の一主面上に、トリガ電極116を印刷する。
図8においては、第4のセラミックグリーンシート24の一主面上にトリガ電極116を印刷しているが、第3のセラミックグリーンシート23の、第4のセラミックグリーンシート24と対向する面上に、トリガ電極116を印刷してもよい。
【0044】
また、第4のセラミックグリーンシート24の、第3のセラミックグリーンシート23と対向する面とは反対側の面上に、外部端子117,118,119を印刷する。また、第2のセラミックグリーンシート22の第2シート切欠き222、第3のセラミックグリーンシート23の第3シート切欠き231、ならびに第4のセラミックグリーンシート24の第4シート切欠き241に、導通路117a,118aを印刷する。
【0045】
印刷工程における、一対の放電電極112b,113b、トリガ電極116、外部端子117,118,119、および導通路117a,118aは、高融点金属であるタングステン(W)などの金属粒子およびニッケル(Ni)などの金属粒子に、予め定める有機バインダおよび溶剤を添加混合して得た金属ペーストを、従来公知のスクリーン印刷法を用いて印刷することによって、形成される。
【0046】
印刷工程の後工程である焼成工程では、第1のセラミックグリーンシート21、第2のセラミックグリーンシート22、第3のセラミックグリーンシート23、および第4のセラミックグリーンシート24を、一対の放電電極112b,113bが第1のセラミックグリーンシート21の第1シート孔部211内に含まれ、トリガ電極116が第3のセラミックグリーンシート23および第4のセラミックグリーンシート24に挟持されるように、積層して積層体を形成する。次に、積層させた積層体を焼成する。
【0047】
焼成工程における積層体の焼成は、昇温速度を5℃/h〜300℃/hとして、脱脂を500℃までの温度範囲で行い、次いで、昇温速度を25℃/h〜1000℃/hとして、水素および窒素の混合ガスの還元雰囲気中にて1400℃〜1600℃の温度範囲で0.5時間から4時間焼成する。このような積層体の焼成により、セラミックスから成る基体111における、一対の放電電極112b,113bが印刷された領域部分に含まれるガラス質によって、複数の支持片112aa,113aaを有する一対の電極支持部112a,113aが形成される。
【0048】
このようにして、一対の放電電極112b,113bが、一対の電極支持部112a,113aが設けられる、基体111の一対の突部111Baの上面に間隙をあけて対向するように、一対の電極支持部112a,113aの複数の支持片112aa,113aaによって、それぞれ支持された構造の、放電器用パッケージ11を製造することができる。
【0049】
次に、封入工程では、たとえばキセノン(Xe)を主成分とする不活性ガス雰囲気下に
おいて、放電器用パッケージ11の基体111における側壁部111Bの上面を、蓋体12と密着させ、基体111の底部111Aおよび側壁部111Bと、蓋体12とで囲まれる密閉空間(放電空間P)内に、不活性ガスを封入する。側壁部111Bの上面と蓋体12との密着には、蓋体12に用いるガラスより融点の低いガラスが用いられる。
【0050】
上記成形工程、印刷工程、焼成工程、および封入工程を経ることにより、本実施形態に係る放電器10を製造することができる。
【0051】
図9は本発明の第2の実施形態に係る放電器10Aの斜視図であり、
図10は
図9の放電器10Aの分解斜視図であり、
図11は
図9の切断面線A−Aで切断したときの放電器10Aの断面図である。
【0052】
放電器10Aは、放電器用パッケージ11Aに係る構成が前述した放電器用パッケージ11と異なること以外は、放電器10と同様に構成される。放電器10Aの放電器用パッケージ11Aは、一対の放電補助電極114,115をさらに含んで構成されること以外は、前述した放電器用パッケージ11と同様に構成される。このように、本実施形態の放電器10Aおよび放電器用パッケージ11Aは、前述した第1の実施形態に係る放電器10および放電器用パッケージ11と同様の部分を有する。したがって、以下説明および図において、対応する同様の部分については同一の参照符号を付すとともに、説明を省略する。
【0053】
放電器10Aの放電器用パッケージ11Aは、前述した放電器用パッケージ11の構成以外に、一対の放電補助電極114,115をさらに含む。
【0054】
一対の放電補助電極114,115は、放電空間P内における放電効率を高くするための補助電極であり、放電器10Aにおいては、一対の放電電極112b,113b間での放電に加えて、一対の放電補助電極114,115間でも放電する。
【0055】
一対の放電補助電極114,115は、それぞれ、金属から成り、長さが1mm〜5mmであり、外径が0.3mm〜0.8mmの棒状に形成される。このような、棒状の一対の放電補助電極114,115を用いることによって、放電空間P内における放電効率を高くすることができるので、瞬間的に大光量の光を放射可能となり、放電器10Aにおいて十分な光量を確保することができる。
【0056】
一対の放電補助電極114,115は、各放電補助電極114,115の先端同士が互いに対向するように、一対の放電電極112b,113b上のそれぞれに、導電性を有する接合材114a,115aによって接合されている。
【0057】
一対の放電補助電極114,115は、互いに軸線が一致し、各軸線が、矩形枠状の側壁部111Bの2つの短辺の中心を通る仮想直線と平行であり、先端が各突部111Baの上面から内方側に延出するように、各突部111Baの上面に設けられた一対の電極支持部112a,113aに支持された一対の放電電極112b,113b上に接合されている。また、好ましくは、一対の放電補助電極114,115は、互いに軸線が一致し、かつ、各軸線が、矩形枠状の側壁部111Bの2つの短辺の中心を通る仮想直線と一致している。
【0058】
一対の放電補助電極114,115を構成する金属としては、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの高融点金属を挙げることができる。
【0059】
また、一対の放電補助電極114,115において、一対の放電電極112b,113
bのうち陰極となる放電電極上に設けられた放電補助電極は、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)などの高融点金属の他に、電子放出特性に優れた酸化ランタン、酸化イットリウムまたは酸化セリウムを含んでいてもよい。
【0060】
また、一対の放電補助電極114,115の先端の形状は特に限定されるものではないが、半球状、円錐台形状、四角錐台形状などの、先細状であることが好ましい。一対の放電補助電極114,115の先端が先細状である、特に、陰極となる放電電極上に設けられた放電補助電極の先端が先細状であることによって、電子放出特性を向上させることができ、一対の放電補助電極114,115間の放電効率をより高くすることができるので、放電器10Aにおいて十分な光量を確保することができる。
【0061】
一対の放電補助電極114,115を一対の放電電極112b,113bに接合するための接合材114a,115aは、タングステン(W)を主成分とする金属ろう材であり、一対の放電電極112b,113bを構成する金属粒子群の主金属(高融点金属)、および、一対の放電補助電極114,115を構成する金属と、合金を形成可能な金属を1%以上50%以下含有している。
【0062】
接合材114a,115aに含有される金属は、一対の放電電極112b,113bを構成する金属粒子群の主金属、および、一対の放電補助電極114,115を構成する金属が、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)であることに対応して、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)またはコバルト(Co)である。一対の放電電極112b,113bを構成する金属粒子群の主金属、および、一対の放電補助電極114,115を構成する金属と合金を形成可能な金属を含有する接合材114a,115aを用いることによって、一対の放電補助電極114,115と一対の放電電極112b,113bとの間の接合強度を向上させることができる。
【0063】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。