(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のラジエータの冷却ファンを駆動するモータを制御するとともに、前記車両に搭載された上位制御装置からの指令信号に基づいて、前記モータの回転数を制御する冷却ファンの制御装置であって、
前記制御装置は、前記モータの実回転数を常に監視し、前記実回転数が前記上位制御装置からの指令Duty比に基づいて算出された目標回転数より大きい場合であって、前記上位制御装置からの指令Duty比に基づいて算出された目標回転数があらかじめ設定された高レベル目標回転数以上となったときに、前記モータに印加する電圧のDuty比を減少する通常回転モードにおける制御を実行せず、前記モータに印加する電圧のDuty比を維持するキャンセルモードにおける制御を実行する、
ことを特徴とする冷却ファンの制御装置。
車両のラジエータの冷却ファンを駆動するモータを制御するとともに、前記車両に搭載された上位制御装置からの指令信号に基づいて、前記モータの回転数を制御する冷却ファンの制御装置の制御方法であって、
前記制御装置は、前記モータの実回転数を常に監視し、前記実回転数が前記上位制御装置からの指令Duty比に基づいて算出された目標回転数より大きい場合であって、前記上位制御装置からの指令Duty比に基づいて算出された目標回転数があらかじめ設定された高レベル目標回転数以上となったときに、前記モータに印加する電圧のDuty比を減少する通常回転モードにおける制御を実行せず、前記モータに印加する電圧のDuty比を維持するキャンセルモードにおける制御を実行する、
ことを特徴とする制御装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0013】
(冷却ファンの制御装置1の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係わる冷却ファンの制御装置の構成を示すブロック図である。この図において、冷却ファンの制御装置1は、車両に搭載される上位ECU(上位制御装置)2から指令Duty比(指令デューティ比)の信号を入力し、この指令Duty比に応じた目標回転数を設定し、この目標回転数になるようにブラシレスモータ10の回転数を制御する。このブラシレスモータ10が回転することにより、冷却ファン3が回転し、この冷却ファン3の回転により発生する冷却風でラジエータ4を冷却する。
【0014】
上位ECU2は、車両のエンジンの運転状態に応じて、ブラシレスモータ10の制御信号である指令Duty比の信号を生成して、制御部20に対して出力する。
図2は、上位ECU2から出力される指令Duty比の信号の例を示す図である。この
図2に示すように、指令Duty比は、所定のパルス周期Tに対するオン時間Tonの比(Ton/T)、つまりduty比でブラシレスモータ10の駆動を規定するPWM信号である。
図2(A)は、指令Duty比示すduty比が小さい場合、
図2(B)は、指令Duty比が大きい場合を示している。
上位ECU2は、冷却水がラジエータ4で適切に冷却されるように、車速、冷却水の温度等に基づいて、必要となるduty比を算出し、その結果を指令Duty比の信号として制御部20に出力する。
なお、後述するDuty対回転数テーブル25(
図4)に示すように。指令Duty比は、多段階のduty比(例えば、10%、20%、・・・、100%など)を示す信号として出力される。
【0015】
図1に戻って、ブラシレスモータ10は、永久磁石を有する回転子(ロータ)と固定子(ステータ)とを有し、ステータには3相(U、V、W)の固定子巻線が周方向に順番に巻装されているブラシレスモータである。
ここで、
図3は、ブラシレスモータ10とインバータ12の構成例を示す図である。例えば、
図3に示すように、ブラシレスモータ10は、アウターロータ型で、円筒型のロータの内周面にN極およびS極を含む8個の永久磁石(マグネット)が取り付けられて構成された回転子11(マグネットロータ)を含む。また、ブラシレスモータ10は、回転子11の内側に固定されるとともに、スター結線されたU相、V相及びW相の固定子巻線10u、10v、及び10wを含み、それぞれの相は4つから構成された計12個の固定子巻線を有する。このブラシレスモータ10は、回転子11の回転位置を検出するセンサ(例えば、ホールIC等)を有しないセンサレスタイプのブラシレスモータである。なお、ブラシレスモータ10は、8個以外の永久磁石(マグネット)が取り付けられた回転子と、これ対応する固定子巻線とを有して構成される場合がある。なお、冷却ファン3は、回転子11と一体回転可能に取り付けられている。
【0016】
インバータ12は、スイッチング素子を電源(例えば、バッテリ)14の正負両端子間に2個ずつブリッジ接続して構成される3相ブリッジ回路である。この3相ブリッジ回路は、制御部20から入力されるPWM指令信号H1〜H6に基づき(より正確には、ドライバ回路13が出力する駆動信号G1〜G6に基づき)、電源14から供給された直流電圧を3相交流電圧に変換し、この3相交流電圧をブラシレスモータ10の各相に印加する。
【0017】
図3に示すように、インバータ12は、3相ブリッジ形式に接続された6個のトランジスタQ1〜Q6と、トランジスタQ1〜Q6の各ドレイン−ソース間に逆並列に接続されたフライホイールダイオードDxとを含んで構成される。この
図3に示す例では、トランジスタQ1〜Q6を、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成している。ブリッジ接続された6個のトランジスタQ1〜Q6の各ゲートはドライバ回路13に接続される。
【0018】
また、トランジスタQ1とトランジスタQ4の接続点aが、ブラシレスモータ10のスター結線された固定子巻線10uに接続され、トランジスタQ2とトランジスタQ4の接続点bが、固定子巻線10vに接続され、トランジスタQ3とトランジスタQ6の接続点cが、固定子巻線10wに接続される。これによって、6個のトランジスタQ1〜Q6は、ドライバ回路13から入力される駆動信号(ゲート信号)G1〜G6によってスイッチング動作を行い、インバータ12に印加される電源14の直流電源電圧を、3相(U相、V相、W相)の交流電圧Vu、Vv、Vwに変換して、固定子巻線10u、10v、及び10wへ供給する。
なお、トランジスタQ1〜Q6は、パワーMOSFETに限らず、バイポーラトランジスタやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であってもよい。
【0019】
ドライバ回路13は、制御部20から出力されるPWM指令信号H1〜H6を入力し、インバータ12内のスイッチング素子をオン/オフする駆動信号(ゲート信号)G1〜G6を生成する。
【0020】
誘起電圧I/F(インタフェース)回路15は、ブラシレスモータ10の3相の固定子巻線10u、10v、及び10wに誘起する誘起電圧を検出する回路である。例えば、固定子巻線10u、10v、及び10wに120°通電を行う場合(180°の位相期間中、120°の期間だけ通電を行う場合)、U、V、Wの各相には無通電相が生じ、この無通電相の電圧を検出することにより、固定子巻線10u、10v、及び10wに誘起する誘起電圧を検出することができる。
【0021】
図1に戻って、誘起電圧I/F回路15は、3相のそれぞれのモータ端子から固定子巻線10u、10v、及び10wの誘起電圧(アナログ信号)が入力される。そして、誘起電圧I/F(インタフェース)回路15は、コンパレータ17A〜17Cに入力可能な電圧に分圧する分圧回路(抵抗R1及び抵抗R2)とパルス幅変調信号のノイズを除去する1次のCRフィルタ(抵抗R1及びキャバシタC1)からなるローパスフィルタ回路15A,15B,15Cと、等価中性点電位を検出する回路16と、等価中性点電位と無通電相に現れる誘起電圧のアナログ信号からパルス信号を作成するコンパレータ17A、17B、及び17Cと、コンパレータ17A〜17Cの出力から高周波成分をカットするローパスフィルタ(1次のCRフィルタ)18A、18B、及び18Cとを有する。
【0022】
ここで、等価中性点電位を検出する回路16は、例えば、U相については、V相とW相のモータ端子電圧から等価中性点電位を検出するような、2相間比較方式を採用している。このようにすると、等価中性点電位として略フラットな電圧が得られる。なお、U、V、Wの3相全ての信号を用いて等価中性点電位を求める3相比較方式を採用しても良い。この場合は、等価中性点の電位は、電源電圧の1/2を中心にした略三角波になる。
【0023】
コンパレータ17A〜17Cは、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より高いときはローレベルの信号を出力し、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より低いときはハイレベルの信号を出力するパルス信号を発生させる。各コンパレータ17A〜17Cでは電気角120°の分解能のパルス信号が作成される。これら信号は、それぞれがローパスフィルタ回路18A〜18Cを経て位置検出部21に入力される。
【0024】
(制御部20の構成)
制御部20は、例えば、マイクロコンピュータやマイクロコントローラなどを用いて構成される制御部である。この制御部20は、上位ECU2から指令Duty比の信号を入力し、ブラシレスモータ10の回転数が指令Duty比に応じた目標回転数となるように制御する。
この制御部20は、
図1に示す様に、位置検出部21と、回転数算出部22と、duty制御部23と、目標回転数設定部24と、Duty対回転数テーブル25と、指令Duty入力部26と、を有して構成されている。
【0025】
指令Duty入力部26は、車両に搭載される上位ECU2から、指令Duty比の信号を入力し、この指令Duty比の値を目標回転数設定部24に対して出力する。
【0026】
(目標回転数設定部24の動作)
目標回転数設定部24は、指令Duty入力部26から入力した指令Duty比の値に基づいて、Duty対回転数テーブル25を参照し、ブラシレスモータ10の目標回転数Nrefを抽出する。目標回転数設定部24は、この目標回転数Nrefの信号をduty制御部23に対して出力する。
【0027】
ここで、
図4は、Duty対回転数テーブル25の例を示す図である。
Duty対回転数テーブル25には、
図4に示すように、指令Duty比(Duty%値)と、この指令Duty比に対応するブラシレスモータ10の目標回転数Nrefの値(rpm)とが関連付されて記録されている。例えば、指令Duty比は、10%、20%、・・・、100%などの多段階のduty%値を示す信号として入力され、目標回転数設定部24は、指令Duty比が示すduty%値に基づいてDuty対回転数テーブル25を参照し、指令Duty比が示すduty%値に対応する目標回転数Nrefを抽出する。
【0028】
例えば、目標回転数設定部24に指令Duty比の値として50%が入力された場合、目標回転数設定部24は、Duty対回転数テーブル25を参照して、50%に対応する目標回転数Nrefとして「1200rpm」を抽出する。目標回転数設定部24は、この「1200rpm」に相当する目標回転数Nrefの信号を生成してduty制御部23に対して出力する。
【0029】
図5は、目標回転数設定部24における目標回転数Nrefの設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0030】
図5のフローチャートを参照して、指令Duty入力部26は、所定の制御周期(例えば、数百msec単位の周期)ごとに、上位ECU2から指令Duty比の信号を入力する(ステップST1)。指令Duty入力部26は、指令Duty比の示す値を目標回転数設定部24に出力する(ステップST2)。
続いて、目標回転数設定部24は、指令Duty入力部26から入力した指令Duty比の値を基に、Duty対回転数テーブル25を参照し(ステップST3)、指令Duty比に対応する目標回転数Nrefを設定する(ステップST4)。
目標回転数設定部24は、ステップST4において設定した目標回転数Nrefの信号を、duty制御部23に対して出力する(ステップST5)。
このように、目標回転数設定部24は、指令Duty比が指示するduty比に応じた目標回転数Nrefを設定し、この目標回転数Nrefの信号をduty制御部23に対して出力することができる。
【0031】
(位置検出部21と回転数算出部22の動作)
制御部20内の位置検出部21は、誘起電圧I/F回路15から出力されるU相、V相、W相それぞれの位置検出信号Su、Sv、及びSwを入力し、各位置検出信号Su、Sv、及びSwの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを検出し、回転子(ロータ)11の回転位置と回転方向とを判定する。
【0032】
図6は、回転子の回転位置とモータ回転数を検出する方法について説明するための図である。この
図6では、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、回転子11の回転位置の順番を示す回転子位置パターンSn(nは1〜6の正数)と、誘起電圧I/F回路15が出力する3つの位置検出信号(U相、V相、W相それぞれの位置検出信号)Su、Sv、及びSwと、位置検出部21が出力する回転子11のロータ位置信号Posと、を並べて示している。
【0033】
例えば、
図6に示す回転子位置パターンS1において、U相位置検出信号Suが「H(ハイ信号)」、V相位置検出信号Svが「L(ロー信号)」、W相位置検出信号Swが「H」となり、続いて、回転子位置パターンS2において、U相位置検出信号Suが「H」、V相位置検出信号Svが「L」、W相位置検出信号Swが「L」となる出力パターンが、
図6に示す回転子位置パターンS1〜S6の順番で検出された場合、ブラシレスモータ10は、正回転していると判定できる。逆回転の場合も同様に、回転子位置パターンSnが所定の順番で検出された場合に、ブラシレスモータ10は、逆回転していると判定できる。
【0034】
そして、位置検出部21は、回転子位置パターンS1〜S6のそれぞれに対応してロータ位置信号Posを生成する。例えば、ブラシレスモータ10の回転子11が回転子位置パターンS1の回転位置にあるとき、位置検出信号Su、Sv、及びSwは、それぞれH信号、L信号、H信号となる。つまり、位置検出信号Su、Sv、及びSwは、H−L−H(位置検出信号Su、Sv、及びSwを並列に並べた信号で示す)となり、この回転子位置パターンS1に応じたロータ位置信号Posが生成される。この回転子位置パターンS1に対応するロータ位置信号Posを、便宜的にロータ位置信号「A」とする。また、回転子位置パターンS2のとき、ロータ位置信号Posは、H−L−Lとなり、ロータ位置信号Posは「B」となる。
【0035】
つまり、回転子位置が360°回転する場合の60°ごとの回転子位置パターン「S1」〜「S6」に対応して、位置検出部21が出力するロータ位置信号Posは「A」〜「F」となる。このように、ブラシレスモータ10の回転子11が正転方向に駆動されている場合、位置検出部21は、回転子位置パターンSnのパターンS1〜S6に対応してロータ位置信号Posの「A〜F」を回転数算出部22及びduty制御部23に対して出力する。このロータ位置信号Posの「A〜F」は、回転子11にトルクを発生させるための通電パターンの決定と、60°ごとの通電パターンの切り替えタイミングを決定するために使用される。
ブラシレスモータ10の逆方向回転の場合も同様に、位置検出部21は、回転子位置パターンSnに応じたロータ位置信号Posを生成して出力する。
【0036】
回転数算出部22は、位置検出部21からロータ位置信号Posを入力し、ロータ位置信号Posの切り替わりのタイミングT1を計測することにより、モータ回転数Nfbkを算出することができる。また、モータ回転数Nfbkは、U相位置検出信号Suが「H」である期間T2を計測することによりモータ回転数Nfbkを算出することもできる。
そして、回転数算出部22は、算出したモータ回転数Nfbkを、ブラシレスモータ10の回転数のフィードバック信号として、duty制御部23に出力する。
【0037】
(duty制御部23の動作)
duty制御部23は、目標回転数設定部24から目標回転数Nrefの信号を入力し、回転数算出部22からモータ回転数Nfbkの信号をフィードバック信号として入力する。さらに、duty制御部23は、位置検出部21からロータ位置信号Posを入力する。
【0038】
そして、duty制御部23は、目標回転数Nrefと、モータ回転数Nfbkと、ロータ位置信号Posと、に基づいて、ブラシレスモータ10を回転駆動するためのPWM指令信号H1〜H6を生成する。duty制御部23は、このPWM指令信号H1〜H6をドライバ回路13に対して出力する。
【0039】
図7は、duty制御部23から出力されるPWM指令信号H1〜H6の例を示す図である。この
図7は、120°通電方式の場合の例を示しており、例えば、ブラシレスモータ10を正回転させる場合の波形である。
この
図7(A)に示すように、duty制御部23から出力されるPWM指令信号H1〜H6は、60°ごとに切り替わる回転子11の回転子位置パターンに応じて、60°ごとにパターンが変化する信号であり、固定子巻線10u、10v、及び10wに6通りの通電パターンP1〜P6を与えるための信号となる。
【0040】
なお、この
図7(A)において、PWM指令信号H1は、3相ブリッジ回路のU相の上アーム側のトランジスタQ1をオン/オフさせるための信号であり、PWM指令信号H4は、3相ブリッジ回路のU相の下アーム側のトランジスタQ4をオン/オフさせるための信号である。
また、PWM指令信号H2は、3相ブリッジ回路のV相の上アーム側のトランジスタQ2をオン/オフさせるための信号であり、PWM指令信号H5は、3相ブリッジ回路のV相の下アーム側のトランジスタQ5をオン/オフさせるための信号である。
また、PWM指令信号H3は、3相ブリッジ回路のW相の上アーム側のトランジスタQ3をオン/オフさせるための信号であり、PWM指令信号H6は、3相ブリッジ回路のW相の下アーム側のトランジスタQ6をオン/オフさせるための信号である。
このPWM指令信号H1〜H6のそれぞれは、ドライバ回路13により、トランジスタQ1〜Q6を駆動する駆動信号G1〜G6にそれぞれ変換され、この駆動信号G1〜G6によりトランジスタQ1〜Q6のオン/オフが制御される。
【0041】
例えば、PWM指令信号H1がハイ信号(H信号)の場合に、ドライバ回路13の駆動信号G1が活性化され、PWM指令信号H1に対応するトランジスタQ1がオンになる。また、PWM指令信号H1がロー信号(L信号)の場合に、ドライバ回路13の駆動信号G1が非活性化され、トランジスタQ1がオフになる。他のPWM指令信号H4に対応するトランジスタQ4、PWM指令信号H2に対応するトランジスタQ2、PWM指令信号H5に対応するトランジスタQ5、PWM指令信号H3に対応するトランジスタQ3、及びPWM指令信号H6に対応するトランジスタQ6についても、同様である。
【0042】
また、duty制御部23は、目標回転数設定部24から入力する目標回転数Nrefと、回転数算出部22から入力するモータ回転数Nfbkとを比較し、その比較結果に応じてPWM指令信号H1〜H6におけるduty比を変化させる。
つまり、duty制御部23は、目標回転数Nrefを指令入力とし、モータ回転数Nfbkをフードバック信号として、例えば、PI(比例積分)動作を行い、このPI動作の結果に応じて、PWM指令信号H1〜H6のduty比を変化させる。すなわち、duty制御部23は、目標回転数Nrefよりもモータ回転数Nfbkが小さい場合(Nref>Nfbk)、PWM指令信号H1〜H6のduty比を増加させ、逆に、目標回転数Nrefよりもモータ回転数Nfbkが大きい場合(Nref<Nfbk)、PWM指令信号H1〜H6のduty比を減少させる。これにより、duty制御部23は、目標回転数Nrefとモータ回転数Nfbkとを一致させるように制御することができる。
【0043】
例えば、
図7(B)に示すように、duty制御部23は、duty比の低いPWM指令信号(例えば、duty比20%のPWM信号)を出力し、duty比の高いPWM指令信号(例えば、duty比80%のPWM信号)を出力する。これにより、duty制御部23は、ブラシレスモータ10のモータ回転数Nfbkを目標回転数Nrefに一致させるように制御することができる。
【0044】
なお、duty制御部23におけるduty比の制御時間(duty比変化の応答時間)は、duty制御部23におけるduty制御周期と、各制御周期ごとに変化させるduty変化量とに応じて設定することができる。例えば、各制御周期ごとに変化させるduty変化量を小さくすることにより、duty比を徐々に変化させ、ブラシレスモータ10のモータ回転数Nfbkを緩やかに目標回転数Nrefに近づけるようにすることができる。
また、duty制御部23における目標回転数Nrefとモータ回転数Nfbkとの比較は、PI動作により行うことに限定されず、P(比例)動作、I(積分)動作、或いは、PID(比例・積分・微分)動作により行うようにしてもよい。
【0045】
図8は、duty制御部23におけるデューティ制御の処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図8に示すフローチャートを参照して、duty制御の処理の流れについて説明する。
duty制御部23は、所定の制御周期(例えば、数百μsec又はmsec単位の周期)ごとに、目標回転数設定部24から目標回転数Nrefを入力し(ステップST11)、回転数算出部22からブラシレスモータ10の現在のモータ回転数Nfbkを入力する(ステップST12)。また、duty制御部23は、位置検出部21から回転子11のロータ位置信号Posを入力する(ステップST13)。
【0046】
続いて、duty制御部23は、目標回転数Nrefとブラシレスモータ10の現在のモータ回転数Nfbk(フィードバック信号)とを比較し、目標回転数Nrefとモータ回転数Nfbkが一致(又は略一致)しているか否かを判定する(ステップST14)。
【0047】
そして、ステップST14の判定処理において、目標回転数Nrefとモータ回転数Nfbkとが一致(又は略一致)していると判定された場合(ステップST14:YES)、duty制御部23は、現在設定しているDuty比をそのまま維持する(ステップST15)。そして、duty制御部23は、この維持したDuty比と、ロータ位置信号Posとに基づいてPWM指令信号H1〜H6を生成する(ステップST21)。duty制御部23は、生成したPWM指令信号H1〜H6をドライバ回路13に対して出力する。
【0048】
一方、ステップST14の判定処理において、目標回転数Nrefとモータ回転数Nfbkが一致(又は略一致)していない判定された場合(ステップST14:NO)、duty制御部23は、目標回転数Nrefがモータ回転数Nfbkよりも大きいか否かを判定する(ステップST16)。
【0049】
そして、ステップST16の判定処理において、目標回転数Nrefがモータ回転数Nfbkよりも大きいと判定された場合(ステップST16:YES)、duty制御部23は、現在設定されたDuty比を所定分だけ増加させる(ステップST17)。そして、duty制御部23は、この所定分だけ増加させたDuty比と、ロータ位置信号Posとに基づいてPWM指令信号H1〜H6を生成する(ステップST21)。duty制御部23は、生成したPWM指令信号H1〜H6をドライバ回路13に対して出力する。
【0050】
一方、ステップST16の判定処理において、目標回転数Nrefがモータ回転数Nfbkよりも小さいと判定された場合(ステップST16:N0)、duty制御部23は、目標回転数Nrefが予め設定された最大目標回転数NrefMAX以上であるか否かを判定する(ステップST18)。
そして、ステップST18の判定処理において、目標回転数Nrefが予め設定された最大目標回転数NrefMAXよりも小さいと判定された場合(ステップST18:NO)、duty制御部23は、現在設定されたDuty比を所定分だけ減少させる(ステップST19)。そして、duty制御部23は、この所定分だけ減少させたDuty比と、ロータ位置信号Posとに基づいてPWM指令信号H1〜H6を生成する(ステップST21)。duty制御部23は、生成したPWM指令信号H1〜H6をドライバ回路13に対して出力する。
一方、ステップST18の判定処理において、目標回転数Nrefが予め設定された最大目標回転数NrefMAX以上であると判定された場合(ステップST18:YES)、duty制御部23は、現在設定しているDuty比をそのまま維持する(ステップST20)。そして、duty制御部23は、この維持したDuty比と、ロータ位置信号Posとに基づいてPWM指令信号H1〜H6を生成する(ステップST21)。duty制御部23は、生成したPWM指令信号H1〜H6をドライバ回路13に対して出力する。
【0051】
これにより、duty制御部23は、目標回転数Nrefが予め設定された最大目標回転数NrefMAXより小さい場合、モータ回転数Nfbkと目標回転数Nrefとが一致(又は略一致)するように、PWM指令信号H1〜H6のDutyを制御する(本実施形態において通常回転モードという)ことができる。
一方、目標回転数Nrefが予め設定された最大目標回転数NrefMAX以上であり、かつ目標回転数Nrefがモータ回転数Nfbkより小さい場合に、モータ回転数Nfbkが目標回転数Nrefと一致するように、PWM指令信号H1〜H6のDutyを制御する(本実施形態において通常回転モードという)ことができる。
また、目標回転数Nrefが予め設定された最大目標回転数NrefMAX以上であり、かつ目標回転数Nrefがモータ回転数Nfbkより大きい場合に、モータ回転数Nfbkが目標回転数Nrefより大きな値である状態を維持するように、PWM指令信号H1〜H6のDutyを制御する(本実施形態においてキャンセルモードという)ことができる。
このように、duty制御部23は、モータ回転数Nfbk(モータの実回転数)を常に監視し、モータ回転数Nfbkが目標回転数Nrefより大きい場合に(ステップST16:NO)、上位ECU2(上位制御装置)からの指令回転数が所定値以上(最大目標回転数NrefMAX以上)となったときに(ステップST18:YES)、モータに印加する電圧のDuty比を減少する通常回転モードにおける制御(ステップST19)を実行せず、モータに印加する電圧のDuty比を維持するキャンセルモードにおける制御(ステップST20)を実行する。
【0052】
図9は、本発明における目標回転数とモータ回転数との関係を説明するための図である。
図9(A)は、通常回転モードからキャンセルモードへの切り替えを行わない場合を示し、
図9(B)は、通常回転モードからキャンセルモードへの切り替えを行う場合を示している。
図9(A)に示すように、走行風等により負荷が軽減されてもモータ回転数は、上側の直線L1が示すようには上がらない。つまり、上位ECU2からの入力指令(指令信号が示す指令Duty比)に従った回転を維持する様、モータ回転数は、下側の目標回転数=モータ回転数を示す直線L2のように制御される。
これに対し、キャンセルモードを行う場合、MAX回転指令時だけ目標回転数に回転数制御動作できない最大目標回転数NrefMAXを設定した。これにより、目標回転数がMAX回転指令時にあるときのみ、回転数が
図9(B)に示すように上側の直線L1から下側の直線L2へと下がることなく、走行風等の負荷軽減に応じて冷却性能の向上を図ることができる。ここで、最大目標回転数NrefMAX(所定値)とは、上位ECU2(上位制御装置)からの最大のDuty比に対応する値であり、
図4に示す指令Duty比の、例えば88%から100%の値である。なお、この最大目標回転数NrefMAXを取るときのモータ回転数は、走行風(車速風)を受けたとしても、無負荷回転数に到達しない値となっている。
【0053】
このように、本発明の冷却ファンの制御装置1(制御装置)では、指令Duty比の値に応じた目標回転数Nrefが最大目標回転数NrefMAX以上となるとき、通常回転モードからキャンセルモードへの切り替えを行うことにより、すなわち回転数制御を適用する範囲を制限することにより、走行風等の負荷軽減時に、軽減された負荷に応じて冷却性能の向上が見込める冷却ファンの製造装置1、及び製造装置1の製造方法を提供することができる。
なお、冷却ファンの制御装置1は、指令Duty比の値に応じた目標回転数Nrefが最大目標回転数NrefMAXより小さいとき、通常回転モードからキャンセルモードへの切り替えを行わないことにより、すなわちブラシレスモータ10の回転数を制御することにより、負荷が軽い場合などにおいて必要以上にブラシレスモータ10の回転数が上昇してしまうことを回避することができる。これにより、冷却ファンの制御装置1では、車両用のラジエータの冷却ファン3を駆動する際に、その電費を改善することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、
図1に示す制御部20内の各処理部は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、各処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
すなわち、上述の冷却ファンの制御装置1内に、CPU、ROM、及びRAM等を有するマイクロコントローラやマイクロコンピュータ等のコンピュータシステムを搭載し、CPUが、ソフトウェアプログラムを読み込み実行することにより、制御部20の処理機能を実現するようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の冷却ファンの制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、センサレスのブラシレスモータの回転を制御する例について説明したが、本発明の冷却ファンの制御装置は、回転センサ(例えば、ホールIC等)を備えるブラシレスモータの回転を制御する場合にも適用できるものである。
さらに、本発明の冷却ファンの制御装置は、3相又は単相の交流モータ、或いは、直流モータの回転を制御する場合にも適用できるものである。
【0057】
また、上述した実施形態では、ブラシレスモータ10のU相、V相及びW相の固定子巻線10u、10v、及び10wをスター結線した場合について説明したが、これに限らず、Δ結線であってもよい。