(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記柱状体は、他方端が解放端となっているとともに、該他方端の径が前記一方端の径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット型太陽電池。
前記量子ドット集積膜は、前記柱状体の前記他方端よりも前記電極層側に前記量子ドットを有しており、前記量子ドット集積膜の前記基体膜側に、前記電極層側よりも前記量子
ドットの充填率が低い低充填率部を有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれかに記載の量子ドット型太陽電池。
前記量子ドット集積膜は、前記柱状体の前記他方端よりも前記電極層側に前記量子ドットを有しており、前記量子ドット集積膜の前記基体膜側は、前記電極層側よりも空隙が多くなっていることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれかに記載の量子ドット型太陽電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、(a)は、本発明の量子ドット型太陽電池の一実施形態を部分的に示す断面模式図であり、(b)は、(a)の一部分を拡大した模式図である。
【0014】
図1に示す量子ドット型太陽電池は、基板1と、量子ドット集積膜3と、電極層5とが、この順に積層された構成となっている。量子ドット集積膜3は、基板1に積層された基体膜3bと、一方端が基体膜3bに接続されて、厚み方向に延伸してなる柱状体3aと、基体膜3b上に載置されている量子ドット3cと、を備えている。量子ドット3cは複数存在しており、個々の量子ドット3cはそれぞれ略球形状をなしている。ここで、基体膜3bの表面に沿うように記した
図1(a)に示す破線を境に、上側を柱状体3a、下側を基体膜3bとする。柱状体3aは、その一方端が基体膜3bと一体化した状態で接続されて、厚み方向に延びる構造となっている。
【0015】
柱状体3a、基体膜3bおよび量子ドット3cは、いずれも半導体材料を主成分とするものである。
【0016】
量子ドット3cは、量子ドット集積膜3中に複数個存在するうちの一部が柱状体3aと接触するように充填されている。
【0017】
また、柱状体3aは、基体膜3b付近の側面3aaが基体膜3bの表面付近で曲面状をなしている。本実施形態では、柱状体3aは、柱状体3aの根元部分3axが円弧状をなしている。このため、量子ドット3cの外形状が略球形状であっても、量子ドット3cと柱状体3aとの間での接触面積を大きくすることができる。
【0018】
これにより、量子ドット3cと柱状体3aとが接触している界面の抵抗を小さくすることができ、その結果、キャリアの伝導性が高まり、光電変換効率を向上させることができる。この場合、量子ドット3cの表面3ccと柱状体3aの側面3aaとの接触面積をより大きくできるという点で、柱状体3aの根元部分3axの曲率半径Rが量子ドット3cを断面視したときに相当する円の曲率半径rに近いものであることが望ましく、r/R比としては0.7〜1の範囲が好ましい。量子ドット集積膜3において、r/R比が0.7〜1の範囲というのは、例えば、所定の断面積内に見られる柱状体3a(例えば、柱状体3aが20個程度)を測定したときに、r/R比が0.7〜1であるものが6割以上存在するものを言う。
【0019】
上記した量子ドット型太陽電池の場合、電極層5側が太陽光の入射側となることから、電極層5は導電性に加えて透光性を有している。また、基板1を導電性の高い材料によって形成すると、基板1が補強部材としての役割とともに、電極としても機能させることが可能になるために、層数が少なく低コストの量子ドット型太陽電池となる。
【0020】
また、本実施形態の量子ドット型太陽電池では、柱状体3aは、基体膜3b側とは反対側に位置する他方端3apが解放端となっている。そして、他方端3apの径D
1が一方端3asの径D
2よりも小さくなっていることが望ましい。ここで、他方端3apが解放端になっているというのは、基板1や電極層5と接しておらず、
図1に示すように、柱状体3aの先端部(他方端3ap)と電極層5との間に量子ドット3cが存在し得るような空間を形成できる状態を言う。また、他方端3apの径D
1を求める位置としては、他方端3apの先端からの距離が0.03〜0.1μmの範囲とし、一方端3asの径D
2を求める位置としては、径D
2を求める柱状体3aが存在する周囲の基体膜3b上からの距離が0.03〜0.1μmの範囲とする。
【0021】
柱状体3aの一方側が解放端になっていると、柱状体3aの解放端となっている端面にまで量子ドット3cを接触させることが可能となり、量子ドット3cと柱状体3aとの接触面積が大きくなることから、柱状体3aに集めることのできるキャリア数を増やすことができる。
【0022】
このとき、本実施形態の量子ドット集積膜3においては、柱状体3aの他方端3ap側の径D
1が一方端3as側の径D
2よりも小さくなっていることから、柱状体3aの他方端3apから根元部分3axを経る基体膜3bまでの経路において、キャリアが移動するときのコンダクタンスが高くなる構造となる。これにより柱状体3a内でのキャリアの移動度を高めることができ、量子ドット集積膜3における光電変換効率をさらに高めることができる。また、柱状体3aの径が一方端3as側で大きいことから、柱状体3aが基体膜3b上において強固に接続されたものとなり、耐久性の高い量子ドット集積膜3を得ることができる。
【0023】
この場合、柱状体3aへの量子ドット3cの接触面積を増やせるという点で、
図2に示すように、柱状体3aの他方端3ap側の表面が、凸状の曲面をなしていることが望ましい。このとき、他方端3ap側の端面の全体が凸状の曲面をなしているのが良い。
【0024】
図3は、本実施形態の他の態様を示すものであり、柱状体3aの径が、一方端3as側
から他方端3ap側に向けて次第に小さくなっていることを示す断面模式図である。
【0025】
柱状体3aの他方端3apの径D
1が一方端3asの径D
2よりも小さくなるような形状において、柱状体3aの径が、一方端3as側から他方端3ap側に向けて次第に小さくなっていくような形状にしたときには、柱状体3aの他方端3apから根元部分3axを経て基体膜3bまでの経路においてコンダクタンスを次第に大きくできることからキャリアの柱状体3a側への移動度をさらに高めることができる。この場合、基体膜3b上における柱状体3aの接続強度が高くなることから、耐久性の高い量子ドット集積膜3を得ることができる。
【0026】
図4(a)は、本実施形態の量子ドット型太陽電池の他の態様を部分的に示す断面模式図であり、側面3aaに凹凸O
Tを有する柱状体を示すものである。(b)は、(a)の一部分を拡大した図である。
【0027】
本実施形態の量子ドット型太陽電池において、柱状体3aの側面3aaが凹凸O
Tを有する形状であるときには、柱状体3aの径が大きく変化する分だけ、柱状体3aにおける側面3aaの表面積を増やすことができる。これにより量子ドット3cとの接触面積をさらに大きくすることができ、量子ドット集積膜3における光電変換効率をさらに高めることができる。この場合、凹凸O
Tの部分の山折れ部Y
Aおよび谷折れ部T
Aはいずれもなだらかに変化しており、断面視したときに円弧状になっていることが望ましい。ここで、柱状体3aの側面3aaが凹凸O
Tを有していると認められるのは、柱状体3aが山折れ部Y
Aおよび谷折れ部T
Aを有し、山折れ部Y
Aと谷折れ部T
Aとの間の段差が0.005μm以上ある場合となる。
【0028】
また、柱状体3aが接続された基体膜3bの表面は、量子ドット3cの形状に沿うように凹凸O
Tを有する表面形状であることが望ましい。さらには、基体膜3bの表面も柱状体3aの側面3aaと同様、断面視したときの形状は円弧状であることが好ましい。
【0029】
図5(a)は、本実施形態の他の態様を示すものであり、量子ドットがn型の量子ドットとp型の量子ドットとから構成されており、柱状体側にn型の量子ドットが配置され、n型の量子ドットの周囲にp型の量子ドットが配置された構成を示す断面模式図である。(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【0030】
通常、量子ドット3cは、光のエネルギーを受けることによって、量子ドット3c内に存在していた電子が伝導性を有するレベルまで励起されると同時に、正孔が形成されて、これらがキャリアとなって光電変換が起きる。
【0031】
このとき、
図5(a)(b)に示すように、量子ドット集積膜3内を、柱状体3a側からn型の量子ドット3cnにより構成される層とp型の量子ドット3cpにより構成される層とを積層した構成にすると、n型の量子ドット3cnおよびp型の量子ドット3cpのそれぞれに移動できる電子および正孔が生成したときに、電子および正孔はそれぞれn型の量子ドット3cnおよびp型の量子ドット3cpの方により移動しやすくなり、これによりキャリアの集電性をさらに高めることができる。
【0032】
図5(a)(b)では、柱状体3a側にn型の量子ドット3cnを配置した構成を示しているが、この場合、柱状体3a側にp型の量子ドット3cpを配置した構成でも同様の光電変換特性を得ることができる。
【0033】
上記した量子ドット集積膜3を構成する柱状体3a、基体膜3bおよび量子ドット3cの材料としては、種々の半導体材料が適用されるが、そのエネルギーギャップ(Eg)と
しては、0.15〜2.50evを有するものが好適である。具体的な半導体材料としては、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、鉄(Fe)、硫黄(S)、鉛(Pb)、テルル(Te)およびセレン(Se)から選ばれるいずれか1種またはこれらの化合物半導体を用いることが望ましい。
【0034】
また、上記した量子ドット3cにおいては、電子の閉じ込め効果を高められるという理由から量子ドット3cの表面に障壁層(バリア層)を有していてもよい。障壁層は量子ドット3cとなる半導体材料に比較して2〜15倍のエネルギーギャップを有している材料が好ましく、エネルギーギャップ(Eg)が1.0〜10.0evを有するものが好ましい。なお、量子ドット3cが表面に障壁層を有する場合には、障壁層の材料としては、Si、C、Ti、Cu、Ga、S、InおよびSeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物(半導体、炭化物、酸化物、窒化物)が好ましい。
【0035】
上記した構成の量子ドット型太陽電池は、基板1上に量子ドット集積膜3および電極膜5を、この順に備えた構成であり、電極層5側を光の入射面側とするものである。この場合、基板1は量子ドット集積膜3から移動してくるキャリアを集電する電極としても機能するものである。このため、基板1は、少なくとも量子ドット集積膜3側の表面が導電性を有しているものであることが望ましい。基板1の表面に導電性を持たせるようにするには、例えば、基板1の表面に、これとは価数の異なる元素をドープするなどしてやればよい。
【0036】
電極層5の材料としては、光の透過性が高いという理由から、インジウム−錫の酸化物を適用するのが良い。これにより、量子ドット集積膜3を中層に置く単純構造の量子ドット型太陽電池を得ることができる。
【0037】
なお、上記した量子ドット集積膜3は、
図1〜
図5に示した基板1および電極層5の配置だけではなく、
図6に示す配置のものにも適用できる。
【0038】
図6は、本実施形態の他の態様を示すものであり、基板と量子ドット集積膜との間に層間電極層を備えていることを示す断面模式図である。(a)は、柱状体を固定している基体膜が基板側にある場合、(b)は、基板をガラス基板とし、柱状体を固定している基体膜が電極層側にある場合である。
【0039】
図6(a)に示す量子ドット型太陽電池では、柱状体3aの接続されている基体膜3b側に層間電極層7を備えた構造となっている。
図6(a)に示す構成の場合には、層間電極層7が基板1とは別に単独の導電膜として存在するものであるため、導電膜の材質や厚みの自由度が高くなり、より高い導電性を有するものにできる。
【0040】
図6(b)に示す量子ドット型太陽電池は、符号1で示す基板を透明な基板(例えば、ガラス基板)とし、量子ドット3cとの間に透明導電膜である層間電極層7を備える構造である。この量子ドット型太陽電池は、基板1の方を入射光側とするものであり、基板1側を上面側とし、つり下げ固定する量子ドット型太陽電池となる。これは太陽電池を、土台上に固定できない場合に適しており、例えば、自動車、列車、飛行機および船舶などの乗り物のフロントガラスの内側に装着するタイプとして好適なものとなる。
【0041】
図7に、本実施形態の他の態様を示す。
図7に示す量子ドット型太陽電池は、量子ドット集積膜3の基体膜3b側に、電極層5側よりも量子ドット3cの充填率が低い低充填率部3Aを有する。この場合、量子ドット集積膜3の電極層5側は、量子ドット3cの充填率が低充填率部3Aよりも高い高充填率部3Bとなっている。
【0042】
言い換えると、量子ドット集積膜3内で隣接している柱状体3aの他方端3ap同士を直線的に結んだ面(断面であれば線)から基体膜3bまでの領域における量子ドット3cの充填率が、他方端3ap同士を直線的に結んだ面(断面であれば線)から電極層5までの領域における量子ドット3cの充填率よりも低くなっている。
【0043】
図7に示す量子ドット集積膜3の高充填部3Bでは、柱状体3aの他方端3apよりも電極層5側に存在する量子ドット3cの充填率が高くなっていることから、キャリアの生成量を増加させることができる。これにより量子ドット型太陽電池の短絡電流密度(Jsc)を向上させることができる。
【0044】
一方、基体膜3b側の低充填部3Aでは、量子ドット3cの充填率が低くなっており、また、この低充填部3Aには、量子ドット3cとは異なる成分および構造をした柱状体3aが存在することから、入射した光の散乱が起こりやすい。これにより光の透過損失を小さくでき、この点からも短絡電流密度(Jsc)を向上させることができる。
【0045】
この場合、量子ドット集積膜3の低充填部3Aは、高充填部3Bよりも空隙9が多くなっていることが望ましい。
【0046】
量子ドット集積膜3の低充填部3Aにおいて、量子ドット3c、柱状体3aに加えて、これらの部材間に空隙9が存在する構造にすると、量子ドット集積膜3に入射した光がより散乱しやくなることから、光の透過損失がさらに小さくなり、短絡電流密度(Jsc)をさらに高めることができる。
【0047】
ここで、量子ドット集積膜3の低充填部3Aおよび高充填部3Bは、量子ドット集積膜3の断面写真から量子ドット3cの面積割合を求めることによって特定する。この場合、量子ドット3cの面積割合の差が10%以上である場合に、低充填部3A、高充填部3Bとする。なお、低充填部3Aにおける量子ドット3cの面積割合としては、この低充填部3Aからも量子ドット3cによる高い変換効率を得るという点で80%以上が望ましい。
【0048】
以上説明した量子ドット型太陽電池では、量子ドット集積膜3における柱状体3aの他方端3apから電極層5側(高充填部3B)の厚み(平均厚み)tが50〜1000nmであることが望ましい。量子ドット集積膜3における柱状体3aの他方端3apから上方側の厚み(平均厚み)tが50nm以上であると、量子ドット3cの集積量によるキャリアの生成量の増加から短絡電流密度(Jsc)を高めることができる。一方、高充填部3Bの厚み(平均厚み)tが1000nm以下であると、電極層5に近い位置に存在する量子ドット3cから集電部材である柱状体3aまでの距離が短いことから、高充填部3B内で生成したキャリアの消滅が抑えられ、光電変換に寄与するキャリアの収集率を高めることができる。これによって量子ドット型太陽電池の短絡電流密度および光電変換効率を向上させることができる。この場合、キャリアの生成量をより高め、一方で、キャリアの消滅割合をより低減させるという点から高充填部3Bの厚み(平均厚み)tとしては100〜500nmがより好ましい。なお、低充填部3Aの厚みは、量子ドット集積膜3の厚みの1/3〜2/3が望ましい。
【0049】
次に、本実施形態の量子ドット型太陽電池の製造方法について説明する。
図8は、本実施形態の量子ドット型太陽電池の製造方法を示す工程図である。
【0050】
図8(a)に示すように、まず、半導体基板11を準備し、この一方の主面に、基体膜3bおよび柱状体3aとなる半導体膜13をほぼ同じ厚みとなるように形成する。半導体膜13の形成は、蒸着法、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor deposition)法および
MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などの物理的成膜法の他に、半導体粒子を含む溶液を基板11の表面に塗布した後に加熱を行う方法などを用いることによって形成することができる。
【0051】
次に、
図8(b)に示すように、形成した半導体膜13の上面に柱状体3aとなる部分を覆うマスクパターン15を置き、他の部分をエッチング法により除去することによって、柱状体3aを備えた基体膜3bを形成する。半導体膜13の溶解には液体を用いるエッチング法やガス照射によるエッチング法を用いる。
【0052】
次に、
図8(c)に示すように、形成した柱状体3aの周囲に量子ドット3cとなる半導体粒子17を充填し、緻密化処理を行うことによって量子ドット集積膜3を形成する。半導体粒子を充填する方法としては、半導体粒子17を含む溶液をスピンコート法や沈降法などが好適なものとして選ばれる。緻密化処理には、柱状体3aの周囲に半導体粒子17を充填した後に、加熱もしくは加圧、あるいはこれらを同時に行う方法が採られる。
【0053】
最後に、形成した量子ドット集積膜3の表面に、蒸着法またはスパッタ法などの物理的成膜法により電極層5を形成することによって、
図1に示すような本実施形態の量子ドット型太陽電池が得られる。
【0054】
以上、
図1に示した量子ドット型太陽電池を例として述べたが、
図2〜5に示す量子ドット型太陽電池も同様の製法によって得ることができる。柱状体3aを
図2〜4に示す形状にする場合には、半導体膜13をエッチングする際の条件や柱状体3aに対応するマスクパターンのサイズを段階的に変化させる方法などを適宜組み合わせる。例えば、柱状体3aの側面3aaが基体膜3bの表面付近で曲面状を成す形状にするには、例えば、基体膜3b側に近くなる方向にエッチング速度が遅くなるように条件を設定する。
【0055】
図5に示す量子ドット集積膜3を形成する場合には、n型およびp型の半導体粒子を用意しておき、順に充填する方法を採る。
図6(a)に示す量子ドット型太陽電池を製造する場合には、基板1の表面に層間電極層7を慣用的な成膜方法により作製し、次いで、上記と同様の方法により基体膜3bおよび柱状体3aを形成した後に、量子ドット集積膜3および電極層5を形成する。
図6(b)に示す量子ドット型太陽電池を作製する場合には、部材Aとして、基板1にガラス基板を使用し、この表面に、予め、層間電極層7として透明導電膜(例えば、In−Sn膜)を形成する。一方で、電極層5の表面に、基体膜3b、柱状体3aおよび量子ドット3cを上記と同様の方法により形成したものを部材Bとして用意する。この後、部材Aの層間電極層7の表面と部材Bの量子ドット3cの表面とを合わせて接着する。
【0056】
図7に示す量子ドット型太陽電池を製造する場合には、量子ドット集積膜3内に低充填部3Aを形成する際に、例えば、半導体粒子17を含むスラリーの粘度特性をダイラタンシー性、チクソトロピー性またはニュートニアン性のいずれかに調整して量子ドット3cの柱状体3a間への充填状態を変化させる。
【0057】
以上より得られる量子ドット型太陽電池は、量子ドット集積膜3内に、その側面が基体膜3bの表面付近で曲面状を有している柱状体3aを備えているために、キャリアの伝導性が高まり、光電変換効率を高めることができる。
【実施例】
【0058】
以下、側面が基体膜の表面付近で曲面状を有している柱状体を備えた量子ドット集積膜を1層備えた量子ドット型太陽電池を作製し、短絡電量密度Jscを評価した。
【0059】
まず、シリコン基板を用意し、この一方主面上に基体膜および柱状体となる半導体膜を形成した。半導体膜の材料としては酸化亜鉛を用い、スパッタ法により成膜を行った。
【0060】
次に、形成した半導体膜の上面に、柱状体となる部分を覆うマスクパターンを置き、他の部分をエッチング法により除去することによって、柱状体を備えた基体膜を形成した。半導体膜の溶解には、メタンおよび水素を含む混合ガスを用いた。なお、柱状体の形状を
図1〜4および9に示す形状にする場合には、半導体膜をエッチングする際のガスの圧力を変化させた。
図1(試料No.1)および
図7(試料No.5)に示す柱状体を形成する場合のガスの圧力を1とした場合に、
図2(試料No.2)は1.1、
図3(試料No.3)は1.2、
図4(試料No.4)は1.4、
図9(試料No.6)は0.9の圧力となるように調整した。ここで、
図4に示す量子ドット集積膜内の柱状体を形成する際には、基体膜側に近くなる方向にエッチング速度が遅くなるようにガスの圧力を徐々に低下させるようにした。
【0061】
次に、形成した柱状体の周囲に量子ドットとなる半導体粒子(PbS)を充填し、緻密化処理を行うことによって量子ドット集積膜を形成した。半導体粒子の充填は、半導体粒子を含む溶液をスピンコート法により行った。緻密化処理には加圧処理を行ったが、
図7に示すように、量子ドット集積膜内に量子ドットの低充填部を有する試料(試料No.5)を作製する場合には、半導体粒子を含む溶液の粘度を高くしてややダイラタンシー性を持たせた状態にしてスピンコートを行った。作製した試料5では、低充填部の量子ドットの面積割合が同試料の高充填部における量子ドットの面積割合に対して14%低くなっていた。
【0062】
最後に、形成した量子ドット集積膜3の表面に、蒸着法により金(Au)の電極層を形成して量子ドット型太陽電池を完成させた。
【0063】
作製した試料のうち、試料No.1〜6について、短絡電流密度(Jsc)を測定した。試料No.1は20.5mA/cm
2、試料No.2は20.6mA/cm
2、試料No.3は20.8mA/cm
2、試料No.4は21.1mA/cm
2であった。また、試料No.5は24.4mA/cm
2であった。一方、試料No.6は18.6mA/cm
2であった。柱状体間に多くの割合で空隙を有する構造にすると、量子ドット集積膜に入射した光がより散乱しやくなり、これにより短絡電流密度(Jsc)が向上したと考えられる。