特許第6441756号(P6441756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6441756-難燃性複合磁性体 図000007
  • 特許6441756-難燃性複合磁性体 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441756
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】難燃性複合磁性体
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/26 20060101AFI20181210BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20181210BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H01F1/26
   C08L101/00
   C08K5/5399
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-138674(P2015-138674)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-22262(P2017-22262A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 利行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正和
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−073949(JP,A)
【文献】 特開2005−146199(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/086837(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/26
C08K 5/5399
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属軟磁性扁平粉を体積含有率35%以上55%以下で含む複合磁性体であって、
該複合磁性体は、ホスファゼン化合物と、バインダー樹脂と、リンを含まない難燃助剤を以下の式(1)及び式(2)を満たすようにさらに含むことを特徴とする複合磁性体。
0.17≦P/B≦0.21 ・・・(1)
0.89≦(PN+RA)/B≦2.71・・・(2)
(式中、PNは複合磁性体中のホスファゼン化合物の質量%、RAは複合磁性体中の難燃助剤の質量%、Bは複合磁性体中のバインダー樹脂の質量%、Pは複合磁性体中のリンの質量%をそれぞれ示す。)
【請求項2】
前記ホスファゼン化合物は、ポリビスフェノキシホスファゼンである請求項1に記載の複合磁性体。
【請求項3】
前記ホスファゼン化合物は、前記バインダー樹脂と共に溶媒に溶解して有機結合材として前記複合磁性体中に混合される請求項1又は2に記載の複合磁性体。
【請求項4】
前記バインダー樹脂は、アクリル酸アルキル系共重合体である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【請求項5】
前記リンを含まない難燃助剤は、金属水酸化物及び含窒素環状化合物から選択される少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【請求項6】
前記複合磁性体中に含まれる粒状物の粒度分布D90が、前記金属軟磁性扁平粉の厚みの5倍以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【請求項7】
前記複合磁性体は、さらにシラン化合物を含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【請求項8】
加熱プレスでシート状に成形した磁性シートである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器から発生する高周波ノイズを抑制する磁性シートなどとして有用な複合磁性体に関し、特に金属軟磁性粉末を樹脂中に分散混合し、難燃性を付与した複合磁性体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、携帯電話やスマートホンのような極めて小型の電子機器内部の一部での電磁波干渉が問題となってきている。このような用途の場合、電磁波吸収シート等の部材を収納するためのスペースが極めて少なく、100μm以下のような狭いスペースで、必要最低限の電磁波吸収することが要求される。
【0003】
また、データ処理量の増大に伴い、電子機器内のCPUやコンデンサ等は異常発熱を起こすことがあり、内部発火などの防止のため、電磁波吸収材料にも高い難燃性が求められている。
【0004】
従来、樹脂材料の難燃性は、チャー形成のためのリン成分と物理的又は化学的作用により難燃性を高める難燃助剤とを組み合わせることがある。環境面から、ハロゲンフリーかつアンチモンフリーの難燃剤の使用が検討されている。
【0005】
リン成分としては赤燐が一般的であるが、赤燐は粒状であるため磁性シートに配合される金属磁性粉、特に扁平な磁性粉の配向性を損なうため、透磁率などに影響を及ぼす。
【0006】
特許文献1には、有機リン系化合物により、粒状の赤燐等を用いずに難燃性を確保した電磁波吸収シートの構成が開示され、架橋剤として多官能性エポキシ樹脂を用いることで吸湿を抑制した技術が開示されている。
【0007】
特許文献2は、六方晶フェライトなどの強磁性粉末を主とするノイズ抑制シートではあるが、段落0050、0051、0056に記載あるように、副成分として金属軟磁性粉末やホスファゼンを含有させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−181679号公報
【特許文献2】特開2010−111812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で含有されるリン酸エステルは吸湿し易く、架橋剤を工夫しても、吸湿の影響を充分に抑制できていない課題がある。
【0010】
特許文献2では、金属軟磁性粉末を主成分とした場合の難燃性が確立されていない課題がある。
【0011】
したがって、本発明は、金属軟磁性粉末、特に金属難磁性扁平粉を主成分とし、透磁率等の性能を損なうことなく高い難燃性を付与した複合磁性体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態によれば、
金属軟磁性扁平粉を体積含有率35%以上55%以下で含む複合磁性体であって、
該複合磁性体は、ホスファゼン化合物と、バインダー樹脂と、リンを含まない難燃助剤を以下の式(1)及び式(2)を満たすようにさらに含むことを特徴とする複合磁性体、が提供される。
0.17≦P/B≦0.21 ・・・(1)
0.89≦(PN+RA)/B≦2.71・・・(2)
(式中、PNは複合磁性体中のホスファゼン化合物の質量%、RAは複合磁性体中の難燃助剤の質量%、Bは複合磁性体中のバインダー樹脂の質量%、Pは複合磁性体中のリンの質量%をそれぞれ示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属軟磁性粉末を主成分とする複合磁性体に透磁率等の性能を損なうことなく高い難燃性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較例1(a),実施例2(b)、実施例3(c)のシートの断面SEM像である。
図2】各難燃成分(粒状物)の粒径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの具体例のみに限定されるものではない。
【0016】
<複合磁性体>
本発明に係る複合磁性体は、金属軟磁性扁平粉を体積含有率35%以上55%以下で含む複合磁性体であって、さらにホスファゼン化合物と、バインダー樹脂と、リンを含まない難燃助剤とを含む。
【0017】
[金属軟磁性扁平粉]
金属軟磁性扁平粉としては、センダスト(Fe−Si−Al)、電磁軟鉄(Fe)、ケイ素鋼(Fe−Si、Fe−Si−Cr)、ステンレス(Fe−Cr)、鉄アルミ合金(Fe−Al、Fe−Al−Cr)、パーマロイ(Fe−Ni)、パーメンジュール(Fe−Co)、Fe基非晶質合金、Co基非晶質合金、Fe基ナノ結晶材料、等を合金材料とする金属軟磁性扁平粉が挙げられる。
【0018】
金属軟磁性扁平粉は、体積含有率35%以上55%以下で含まれる。体積含有率が35%未満では十分な透磁性を付与することが困難である。体積含有率が55%を超えると、バインダー樹脂や難燃成分の量が不足し、金属軟磁性扁平粉の脱落が起こり、難燃性の付与も困難となる。金属軟磁性扁平粉は、好ましくは体積含有率35%以上50%以下で含まれる。
【0019】
[ホスファゼン化合物]
ホスファゼン化合物とは、−P=N−結合を含むチャー形成成分であり、難燃剤として効果があるものであれば特に限定されないが、フェノキシ基で置換されたホスファゼン化合物及びその架橋物が望ましい。この中で、難燃効果の観点から、ポリビスフェノキシホスファゼン(−[P(CO)N]−)が好ましい。例えば、一般式(A)で示される環状ビスフェノキシホスファゼン化合物、あるいは一般式(B)で示される鎖状ビスフェノキシホスファゼン化合物が例示される。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、mは3〜25の整数を、Phはフェニル基を示す。)
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、Xは基−N=P(OPh)または基−N=P(O)OPhを示し、Yは基−N=P(OPh)または基−N=P(O)(OPh)を示し、nは3〜1000の整数を、Phはフェニル基を示す。)
【0024】
また、上記一般式(A)および/または(B)の化合物が、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、及び一般式(C)で表されるビスフェニレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋基により架橋されている架橋フェノキシホスファゼン化合物も好適な化合物として用いることができる。
【0025】
【化3】
【0026】
(式中Aは−C(CH−、−SO−、−S−または−O−を示し、zは0または1を示す。)
【0027】
上記架橋フェノキシホスファゼン化合物においては、環状ビスフェノキシホスファゼン化合物(A)、および/または鎖状ビスフェノキシホスファゼン化合物(B)が用いられるとともに、上記フェニレン系架橋基が、上記ビスフェノキシホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在し、かつ、当該架橋フェノキシホスファゼン化合物のフェニレン基の含有割合が、上記化合物中(A)および/または(B)のフェニル基の総数を基準として50〜99.9%の範囲内となっている、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有するフェニレン系架橋フェノキシホスファゼン化合物であることがより好ましい。
【0028】
ポリビスフェノキシホスファゼンは、疎水性のベンゼン環でリン原子が囲まれている構造のため、リン酸エステルなどのチャー成分に比較して、1/10程度の吸湿性であり、磁性シートなどの磁性複合体に使用した場合、高温高湿条件下での膨張率が小さく、透磁率特性が殆ど劣化しない。また、ポリビスフェノキシホスファゼンは、トルエンなどの有機溶剤に対する溶解性に優れ、チャー成分としての赤リンと比較して、金属軟磁性扁平粉の充填阻害や配向阻害を引き起こすことがなく、所定の面内透磁率を維持することができる。
【0029】
また、ポリビスフェノキシホスファゼンはオリゴマー乃至はポリマーであるため、バインダー樹脂と共に有機結合材として磁性シートを構成することができる。そのため、難燃剤添加による結合材不足で磁性シートの扁平粉落ちが発生することがない。また、加圧成形性にも優れ、短時間の成形でも高い透磁率を有する磁性シートが提供できる。
【0030】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂としては、金属軟磁性扁平粉を添加してシート状に成形できるものであれば、いずれの樹脂成分も使用できるが、特に柔軟で金属軟磁性扁平粉を高充填できる、ゴム、エラストマー成分が好ましい。例えば、アクリルゴム、アクリル酸アルキル共重合体等の(メタ)アクリル系ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンゴム(EPM)やエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
又、バインダー樹脂として、難燃性の高いポリフェニレンオキシド(PPO)などの熱可塑性樹脂を併用することができる。これらは難燃助剤の一部としても機能する。
これらのバインダー樹脂は1種を単独で、複数を組み合わせて使用することができる。
【0031】
ホスファゼン化合物とバインダー樹脂とは予め適当な溶媒等に溶解して有機結合材とすることが好ましい。両者を溶解する溶媒を用いて有機結合材とすることで、ホスファゼン化合物が有機結合材中に均一に分布し、難燃性の均一性がより向上する。
【0032】
溶媒としては特に限定されないが、ホスファゼン化合物の溶解性の高い、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、トルエンなどを挙げることができる。
【0033】
[リンを含まない難燃助剤]
リンを含まない難燃助剤は、吸熱作用や酸素遮断作用によりチャー形成材としてのホスファゼン化合物と共に難燃性を付与できるものであれば良く、無機系及び有機系のリンを含まない難燃剤及び難燃助剤が挙げられる。また、ハロゲンフリーの観点からハロゲン原子を含まないものが好ましい。
【0034】
無機系難燃剤及び難燃助剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、酸化亜鉛などの金属酸化物、膨張性黒鉛などが挙げられる。
有機系難燃剤及び難燃助剤としては、含窒素環状化合物が挙げられ、中でもメラミンシアヌレートが好ましく使用できる。メラミンシアヌレートは、吸熱作用と酸素遮断作用(酸素濃度希釈作用)の効果がある。
【0035】
ホスファゼン化合物とバインダー樹脂とを含む有機結合材と難燃助剤は以下の式(1)及び(2)を満足する必要がある。
0.17≦P/B≦0.21 ・・・(1)
0.89≦(PN+RA)/B≦2.71・・・(2)
(式中、PNは複合磁性体中のホスファゼン化合物の質量%、RAは複合磁性体中の難燃助剤の質量%、Bは複合磁性体中のバインダー樹脂の質量%、Pは複合磁性体中のリンの質量%をそれぞれ示す。)
【0036】
ホスファゼン化合物とバインダー樹脂とを含む有機結合材において、リン原子の含有量は上記の式(1)で表されるP/Bが0.17より小さいと、チャーを形成する面積が小さく、UL94の難燃性試験において燃焼してしまう。P/Bが0.21よりも大きいと、リンが燃焼してUL94V−0規格を満たすことができない。
また、上記の式(2)を満たすことで、バインダー樹脂に対するホスファゼン化合物と難燃助剤のバランスがよく、UL94V−0規格を満足することができる。
【0037】
(シラン化合物)
本発明に係る磁性複合体は、上記成分に加えてシラン化合物を含むことが好ましい。シラン化合物としては、チタネート系シランカップリング剤、アルミネート系シランカップリング剤などのカップリング剤や、3−アミノプロピルエトキシシランなどの樹脂成分を架橋させ、高温高湿環境耐性を向上させるアミン系架橋剤などが挙げられる。
【0038】
本発明に係る磁性複合体は、パーソナルコンピュータなどの電子機器の内部回路や携帯電話、スマートホンなどの筐体内部に配置されるノイズ抑制シート、電磁波シールド、磁気シールド、RFIDアンテナの磁気ヨークとして使用できる。特に、薄層の磁性シートとしての使用が適している。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
難燃性試験(UL94V試験)
試験片は幅13mm、長さ130mm、厚さ0.1mmのものを使用した。その他はUL94V試験に準拠して行った。
【0041】
<参考例1>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分で32.52(vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン13.93(vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤として水酸化マグネシウム6.16 (vol.%)と、架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン8.00 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.38 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100μmの膜に成膜した。得られた膜を2層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100(μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプまで燃え広がりNG判定であった。
膜は、μ’(at 3MHz)=50.79、密度1.81 (g/cm)、
シートは、μ’(at 3MHz)=138.37、密度3.32 (g/cm)、
であった。
【0042】
<参考例2>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.6 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン38.92 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.41 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.07 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を2層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =43.75、密度2.05 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =117.68、密度3.09 (g/cm)、
であった。
【0043】
<参考例3>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体18.41 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン29.94 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤として水酸化マグネシウム6.16 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.62 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉40.87 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =30.36、密度1.20 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =130.00、密度3.10 (g/cm)、
であった。
【0044】
<参考例4>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体18.62 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン27.63 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤として水酸化マグネシウム7.75 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.67 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉41.34 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =27.68、密度1.23 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =122.30、密度3.12 (g/cm)、
であった。
【0045】
<参考例5>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体21.63 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン36.90 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン5.37 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉36.10 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =27.63、密度1.18 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =121.99、密度3.01 (g/cm)、
であった。
【0046】
<参考例6>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.80 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン28.96 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート9.25 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.46 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.53 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =25.39、密度1.12 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =122.39、密度3.01 (g/cm)、
であった。
【0047】
<参考例7>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.85 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン26.50 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート11.54 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.48 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.64 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =27.44、密度1.21 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =122.64、密度3.02 (g/cm)、
であった。
【0048】
<実施例1>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.91 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン23.46 (vol.%)を結合材とし、接炎時にチャーを形成する有機結合材を製造。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート14.35 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.49 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.78 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =37.50、密度1.51 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =132.00、密度3.23 (g/cm)、
であった。
さらに、膜を積層し、加熱プレスで厚さ25 (μm)、50 (μm)のシートを作製し、UL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
【0049】
<実施例2>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体18.00 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン19.38 (vol.%)を結合材とし、接炎時にチャーを形成する有機結合材を製造。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート18.14 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.51 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.97 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =35.45、密度1.42 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =123.53、密度3.09 (g/cm)、
であった。
さらに、膜を積層し、加熱プレスで厚さ25 (μm)、50 (μm)のシートを作製し、UL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
【0050】
<実施例3>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体19.24 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン20.72 (vol.%)を結合材とし、接炎時にチャーを形成する有機結合材を製造。そこへ吸熱作用の効果がある水酸化マグネシウム12.49 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.82 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉42.72 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜はμ’at 3MHz =50.00、密度1.81 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =142.43、密度3.40 (g/cm)、
であった。
さらに、膜を積層し、加熱プレスで厚さ25 (μm)、50 (μm)のシートを作製し、UL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
<比較例1>
【0051】
アクリル酸アルキル共重合体33.20 (vol.%)を結合材とし、そこへ難燃助剤としての水酸化アルミニウム4.05(vol.%)で表面を被覆した赤燐3.19(vol.%)と、難燃助剤としてメラミンシアヌレート11.21 (vol.%)、架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン8.17 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉40.19 (vol.%)を混合、成膜した。膜を積層し、加熱プレスでシート状に成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =25.00、密度1.10 (g/cm)、
シートは、μ’at 3MHz =88.00、密度2.70 (g/cm)、
であった。
【0052】
比較例1,実施例2,3で得られたシートの切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図1のa,b,cにそれぞれ示す。図1において、1はセンダスト扁平粉、2はAl(OH)で被覆された赤燐、3〜5はそれぞれのシートの難燃助剤を含む有機結合材を示す。図1から明らかなように、比較例1では粒径の大きな赤燐2によって、センダスト扁平粉1の充填阻害、配向阻害が発生し、透磁率が低下している。実施例2,3のシートは、センダスト扁平粉1がシート面内に配向しており、空隙も低減している。
また、図2は、各難燃成分(粒状物)の粒径分布を示す図であり、それぞれのD90は磁性扁平粉(センダスト)の厚み(約1μm)に対して、6の水酸化アルミ被覆赤燐で約17倍、7の水酸化アルミ被覆赤燐で約9倍、8のメラミンシアヌレートで約5倍、9の水酸化マグネシウムで約2倍である。なお、メラミンシアヌレートは有機物であることから加圧成形により変形し、充填阻害要因、配向阻害要因とはなりにくい。
図1及び図2から、これらの難燃成分などの粒状物は、粒度分布D90が金属軟磁性扁平粉の厚みの5倍以下のものが好ましく、2倍以下のものがより好ましいことが分かる。
【0053】
また、参考例1〜7の結果を表1に、実施例1〜3の結果を表2に示す。体積含有率(Vol%)から質量含有率(wt%)への変換はそれぞれの材料の比重から計算した。リン含有率はホスファゼン化合物のリン含有率を13%として計算した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1,2における略号は以下の通り。
AACP:アクリル酸アルキル共重合体
PBPN:ポリビスフェノキシホスファゼン
MO :水酸化マグネシウム
MC :メラミンシアヌレート
APES:3−アミノプロピルエトキシシラン
SEN :センダスト扁平粉
【符号の説明】
【0057】
1 金属軟磁性扁平粉(センダスト扁平粉)
2 赤燐
3〜5 有機結合材
図1
図2