【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
難燃性試験(UL94V試験)
試験片は幅13mm、長さ130mm、厚さ0.1mmのものを使用した。その他はUL94V試験に準拠して行った。
【0041】
<参考例1>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分で32.52(vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン13.93(vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤として水酸化マグネシウム6.16 (vol.%)と、架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン8.00 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.38 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100μmの膜に成膜した。得られた膜を2層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100(μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプまで燃え広がりNG判定であった。
膜は、μ’(at 3MHz)=50.79、密度1.81 (g/cm
3)、
シートは、μ’(at 3MHz)=138.37、密度3.32 (g/cm
3)、
であった。
【0042】
<参考例2>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.6 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン38.92 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.41 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.07 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を2層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =43.75、密度2.05 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =117.68、密度3.09 (g/cm
3)、
であった。
【0043】
<参考例3>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体18.41 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン29.94 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤として水酸化マグネシウム6.16 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.62 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉40.87 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =30.36、密度1.20 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =130.00、密度3.10 (g/cm
3)、
であった。
【0044】
<参考例4>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体18.62 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン27.63 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤として水酸化マグネシウム7.75 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.67 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉41.34 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =27.68、密度1.23 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =122.30、密度3.12 (g/cm
3)、
であった。
【0045】
<参考例5>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体21.63 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン36.90 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン5.37 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉36.10 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =27.63、密度1.18 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =121.99、密度3.01 (g/cm
3)、
であった。
【0046】
<参考例6>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.80 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン28.96 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート9.25 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.46 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.53 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =25.39、密度1.12 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =122.39、密度3.01 (g/cm
3)、
であった。
【0047】
<参考例7>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.85 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン26.50 (vol.%)を混合し、有機結合材を製造した。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート11.54 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.48 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.64 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともクランプに炎が到達しNG判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =27.44、密度1.21 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =122.64、密度3.02 (g/cm
3)、
であった。
【0048】
<実施例1>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体17.91 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン23.46 (vol.%)を結合材とし、接炎時にチャーを形成する有機結合材を製造。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート14.35 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.49 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.78 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =37.50、密度1.51 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =132.00、密度3.23 (g/cm
3)、
であった。
さらに、膜を積層し、加熱プレスで厚さ25 (μm)、50 (μm)のシートを作製し、UL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
【0049】
<実施例2>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体18.00 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン19.38 (vol.%)を結合材とし、接炎時にチャーを形成する有機結合材を製造。そこへ難燃助剤としてメラミンシアヌレート18.14 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.51 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉39.97 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、150℃で3分間の加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =35.45、密度1.42 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =123.53、密度3.09 (g/cm
3)、
であった。
さらに、膜を積層し、加熱プレスで厚さ25 (μm)、50 (μm)のシートを作製し、UL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
【0050】
<実施例3>
トルエンに溶解したアクリル酸アルキル共重合体を固形分でアクリル酸アルキル共重合体19.24 (vol.%)、ポリビスフェノキシホスファゼン20.72 (vol.%)を結合材とし、接炎時にチャーを形成する有機結合材を製造。そこへ吸熱作用の効果がある水酸化マグネシウム12.49 (vol.%)と架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン4.82 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉42.72 (vol.%)を混合し、ドクターブレードで厚さ100 (μm)の膜に成膜した。膜を3層積層し、加熱プレスで厚さ100 (μm)のシートに成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜はμ’at 3MHz =50.00、密度1.81 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =142.43、密度3.40 (g/cm
3)、
であった。
さらに、膜を積層し、加熱プレスで厚さ25 (μm)、50 (μm)のシートを作製し、UL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
<比較例1>
【0051】
アクリル酸アルキル共重合体33.20 (vol.%)を結合材とし、そこへ難燃助剤としての水酸化アルミニウム4.05(vol.%)で表面を被覆した赤燐3.19(vol.%)と、難燃助剤としてメラミンシアヌレート11.21 (vol.%)、架橋剤として3−アミノプロピルエトキシシラン8.17 (vol.%)、金属軟磁性扁平粉としてセンダスト扁平粉40.19 (vol.%)を混合、成膜した。膜を積層し、加熱プレスでシート状に成形した。膜とシートについてUL94Vの難燃試験に準拠した結果、両者ともV−0判定であった。
膜は、μ’at 3MHz =25.00、密度1.10 (g/cm
3)、
シートは、μ’at 3MHz =88.00、密度2.70 (g/cm
3)、
であった。
【0052】
比較例1,実施例2,3で得られたシートの切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を
図1のa,b,cにそれぞれ示す。
図1において、1はセンダスト扁平粉、2はAl(OH)
3で被覆された赤燐、3〜5はそれぞれのシートの難燃助剤を含む有機結合材を示す。
図1から明らかなように、比較例1では粒径の大きな赤燐2によって、センダスト扁平粉1の充填阻害、配向阻害が発生し、透磁率が低下している。実施例2,3のシートは、センダスト扁平粉1がシート面内に配向しており、空隙も低減している。
また、
図2は、各難燃成分(粒状物)の粒径分布を示す図であり、それぞれのD90は磁性扁平粉(センダスト)の厚み(約1μm)に対して、6の水酸化アルミ被覆赤燐で約17倍、7の水酸化アルミ被覆赤燐で約9倍、8のメラミンシアヌレートで約5倍、9の水酸化マグネシウムで約2倍である。なお、メラミンシアヌレートは有機物であることから加圧成形により変形し、充填阻害要因、配向阻害要因とはなりにくい。
図1及び
図2から、これらの難燃成分などの粒状物は、粒度分布D
90が金属軟磁性扁平粉の厚みの5倍以下のものが好ましく、2倍以下のものがより好ましいことが分かる。
【0053】
また、参考例1〜7の結果を表1に、実施例1〜3の結果を表2に示す。体積含有率(Vol%)から質量含有率(wt%)への変換はそれぞれの材料の比重から計算した。リン含有率はホスファゼン化合物のリン含有率を13%として計算した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1,2における略号は以下の通り。
AACP:アクリル酸アルキル共重合体
PBPN:ポリビスフェノキシホスファゼン
MO :水酸化マグネシウム
MC :メラミンシアヌレート
APES:3−アミノプロピルエトキシシラン
SEN :センダスト扁平粉