(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441758
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構
(51)【国際特許分類】
E03C 1/044 20060101AFI20181210BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20181210BHJP
F16L 37/14 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
E03C1/044
E03C1/042 Z
F16L37/14
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-145637(P2015-145637)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-25596(P2017-25596A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】西岡 利明
(72)【発明者】
【氏名】木村 訓和
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−214876(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0773378(KR,B1)
【文献】
特開平10−159138(JP,A)
【文献】
特開2003−269425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/04− 1/06
F16L 37/00−39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口と前記抜け止め部材の先端部分がささる嵌合用開口部とが形成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構。
【請求項2】
湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口が形成されているとともに、
前記抜け止め部材は、開口部分を形成する一対の部分を有するよう中心線に対して対称な形状に形成されている一方、
前記胴には、前記抜け止め部材挿入用開口を介して前記開口部分の側から胴内に挿入された前記抜け止め部材の前記一対の部分の先端部分がささる嵌合用開口部が形成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構。
【請求項3】
湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口が形成されているとともに、上端側に前記抜け止め部材の前記係合部が係合可能な円環状のボルト側係合溝を有するボルトを設け、前記抜け止め部材を前記ボルト側係合溝および両管継手の前記上端部に形成された前記係合溝に係入させることで前記ボルトと両管継手を連結保持できるように構成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構。
【請求項4】
湯水混合栓本体の胴に湯水混合水を流出させる流出管を挿入するための流出管挿入孔が開設され、前記流出管は、上端側に前記抜け止め部材の前記係合部が係合可能な円環状の流出管側係合溝を有し、前記抜け止め部材を前記流出管側係合溝および両管継手の前記上端部に形成された前記係合溝に係入させることで前記流出管と両管継手を連結保持できるように構成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構。
【請求項5】
前記抜け止め部材は、前記抜け止め部材挿入用開口が形成されている胴の下端周面を覆う台座、または、胴の周面を覆う吐水管付きカバー体によって胴内に保持されるよう構成されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の組付け機構として、キッチンの流し台や洗面ボール、バスタブ等のカウンターに設けられる湯水混合栓をボルトを用いて固定するものがある(特許文献1,2参照)。前記湯水混合栓には、湯水混合栓本体の胴の下面側に水流入孔および湯流入孔が開設されており、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ雌ねじ部を設けるとともに、前記各雌ねじ部に接着剤を用いて螺着する雄ねじ部が上端部に形成された管継手をそれぞれ設け、この両管継手がカウンターに開設された貫通孔に挿通され、これら管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される一方、胴の下面側に馬蹄金具取付け用ボルトを螺着する雌ねじ部を設け、前記貫通孔に挿通される前記ボルトとこのボルトの外周面に螺着されるナットとの締結操作で馬蹄金具によってカウンターの下面が押圧される状態で湯水混合栓本体がカウンターの上面へ固定されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3249903号公報
【特許文献2】特許第3317474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、湯水混合栓本体の胴に対して、給水ホースおよび給湯ホースにそれぞれ接続される管継手、ならびに、馬蹄金具取付け用ボルトを共にねじ締結している。そのため、製作時は双方部品にねじ加工が必要となり、手間がかかるという課題がある。また、各管継手を胴へ接続して給水ホースおよび給湯ホースを組付ける部品組付時も、ねじ緩み防止のための接着剤塗布の作業に手間がかかる上に、ねじ締結自体の作業にも手間がかかるといった課題がある。
【0005】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、湯水混合栓本体の胴に対して、給水ホースおよび給湯ホースにそれぞれ接続される管継手、ならびに、馬蹄金具取付け用ボルトを簡易な部品製作工程および組立工程にて締結できる湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口
と前記抜け止め部材の先端部分がささる嵌合用開口部とが形成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構を提供する。
【0007】
尚、湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手がカウンターに開設された貫通孔に挿通され、カウンターの上面または下面が押圧される状態で湯水混合栓本体がカウンターの上面へ固定されるとともに、管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状で金属板製の抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記上端部における下流側にOリングが嵌着可能に形成された円環状のOリング溝を有し、前記上端部における上流側に前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口が形成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構としてもよい。本発明において、湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設されているとは、例えば、
図1(A)、
図6において、胴の上下(高さ)方向(矢印Yで示す方向)に胴の下面から上面までそれぞれ貫通するよう形成された貫通孔を意味する。また、本発明において、管継手の上端部が水流入孔に取付けられたとは、例えば、
図6において湯水混合栓本体の胴との接続のため管継手の上端部が、例えば水流入孔(貫通孔)の下流側入口に形成されている上端部挿入孔にOリングを介してシール可能に挿入された状態を意味し、これにより、カウンターの上面に固定された湯水混合栓本体の胴と、給水ホースに連結された管継手の上端部との接続部分からの水の漏れを防止できる。
また、本願の請求項2に係る発明は、別の観点から、湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口が形成されているとともに、
前記抜け止め部材は、開口部分を形成する一対の部分を有するよう中心線に対して対称な形状に形成されている一方、
前記胴には、前記抜け止め部材挿入用開口を介して前記開口部分の側から胴内に挿入された前記抜け止め部材の前記一対の部分の先端部分がささる嵌合用開口部が形成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構を提供する。
【0008】
また、
更に別の観点から、本願の請求項
3に係る発明は、
湯水混合栓本体の胴に水流入孔および湯流入孔が開設され、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられた管継手を介して給水ホースおよび給湯ホースが湯水混合栓本体にそれぞれ連結される湯水混合栓において、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手は、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有し、さらに、前記胴には、前記取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口が形成されているとともに、上端側に前記抜け止め部材の前記係合部が係合可能な円環状のボルト側係合溝を有するボルトを設け、前記抜け止め部材を前記ボルト側係合溝および両管継手の前記上端部に形成された前記係合溝に係入させることで前記ボルトと両管継手を連結保持できるように構成されている湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構を提供する。この場合、水流入孔および湯流入孔と同様に、胴の下面側にボルト挿入用のボルト孔を設け、このボルト孔に挿通されるボルトとこのボルトの外周面に螺着されるナットとの締結操作で取付金具によってカウンターの下面が押圧される状態で湯水混合栓本体がカウンターの上面へ固定されるよう構成されるのが好ましい。
【0009】
また、本願の請求項
4に係る発明は、湯水混合栓本体の胴に湯水混合水を流出させる流出管を挿入するための流出管挿入孔が開設され、前記流出管は、上端側に前記抜け止め部材の前記係合部が係合可能な円環状の流出管側係合溝を有し、前記抜け止め部材を前記流出管側係合溝および両管継手の前記上端部に形成された前記係合溝に係入させることで前記流出管と両管継手を連結保持できるように構成されている請求項1
〜請求項3のいずれか1項に記載の湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構を提供する。この場合、水流入孔および湯流入孔ならびにボルト孔と同様に、胴の下面側に前記流出管挿入孔を設け、前記流出管を介して吐水ヘッドに接続されたホースが湯水混合栓本体に連結され、さらに、水流入孔および湯流入孔ならびに前記流出管挿入孔と同様に、胴の下面側にボルト挿入用のボルト孔を設け、このボルト孔に挿通されるボルトとこのボルトの外周面に螺着されるナットとの締結操作で取付金具によってカウンターの下面が押圧される状態で湯水混合栓本体がカウンターの上面へ固定されるよう構成されるのが好ましい。
【0010】
また、本願の請求項
5に係る発明では、前記抜け止め部材は、前記抜け止め部材挿入用開口が形成されている胴の下端周面を覆う台座、または、胴の周面を覆う吐水管付きカバー体によって胴内に保持されるよう構成されている請求項1〜請求項
4のいずれか1項に記載の湯水混合栓への給水および給湯ホース組付け機構を提供する。この場合、前記抜け止め部材は、前記抜け止め部材挿入用開口との嵌合と、前記台座、または、前記吐水管付きカバー体の嵌合により、前記抜け止め部材挿入用開口から抜け出る(胴から外に抜け出る)のが防止された状態で胴内に保持され得る。例えば、前記抜け止め部材と前記抜け止め部材挿入用開口との嵌合について言えば、前記抜け止め部材が前記抜け止め部材挿入用開口にささっていること(例えば後述する抜け止め部材挿入用開口30の一対の外側開口部32および32にそれぞれ抜け止め部材20の一対のストレート部20aおよび20aがささっていること)により、前記抜け止め部材の変形を防止し、係止物の給水ホース(例えばフレキシブルホース)および給湯ホース(例えばフレキシブルホース)、また、係止物の前記ボルトや前記流出管が胴から脱落するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
湯水混合栓本体の胴に対して、給水ホースおよび給湯ホースにそれぞれ接続される管継手をねじ締結する従来のねじ締結構造に比べて、本願の請求項1に係る発明では、抜け止め部材の係合部と管継手の係合溝との係止構造を採用することにより、部品製作工程および組立工程を簡略化できる。すなわち、本願の請求項1に係る発明では、給水ホースおよび給湯ホースの抜け止めを行うため折曲形状の一本の線材又は板材からなる抜け止め部材を設ける一方、各管継手に、前記抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を形成するとともに、前記胴には、水流入孔および湯流入孔に取付けられた各管継手の前記係合溝が位置する抜け止め部材挿入用開口を形成し、前記係合溝が位置した状態で前記抜け止め部材挿入用開口に抜け止め部材を挿入して、水流入孔および湯流入孔にそれぞれ上端部が取付けられている両管継手に形成された前記係合溝に、前記抜け止め部材の係合部を係合させる係止構造を採用することによって、前記係合溝に前記抜け止め部材を係入でき、湯水混合栓本体の胴に対して両管継手を連結保持でき、それによって、給水ホースおよび給湯ホースを湯水混合栓本体の胴に接続するための部品製作工程および組立工程を、ねじ締結構造を採用している従来技術に比べて簡略化できる。
【0012】
また、ねじ締結構造を採用している従来品の構造は、湯水混合栓本体の胴が真鍮製の場合であり、胴を樹脂化しようとした場合には、成型時にピッチの小さいねじ成型が困難であることや、それができたとしてもねじ締結による応力により経年劣化後の破損などによる漏水の懸念が残る。また、従来品では、ねじ緩み防止のための接着剤塗布により、分解リサイクル性が容易でない状態になっている。これに対し、本願の請求項1に係る発明では、ねじ締結構造を上記係止構造にすることにより、以下に示す利点を有する。すなわち、湯水混合栓本体の胴の樹脂化が容易になり、コストダウンに繋がる。もちろん、本願の請求項1に係る発明の湯水混合栓本体の胴は真鍮などの金属製でも可能である。さらに、本願の請求項1に係る発明では、接着の必要性がなくなるために分解性が向上し、リサイクル性が上がる。
【0013】
また、各管継手の上端部における上流側に抜け止め部材の係合部が係合可能な係合溝を有するとともに、前記上端部における下流側にOリングが嵌着可能に形成された円環状のOリング溝を有する場合は、前記Oリングによって各管継手取付部分、すなわち、カウンターの上面に固定された湯水混合栓本体の胴と管継手の上端部との接続部分(挿入部分)からの漏水を防止できるとともに、ねじ締結構造を用いずに係止構造にしているので、前記胴を樹脂化した場合であっても、ねじ締結構造による上述した不都合(漏水の懸念が残る)が生じるおそれはなくなる。
【0014】
また、湯水混合栓本体の胴に対して、給水ホースおよび給湯ホースにそれぞれ接続される管継手と、例えば馬蹄金具取付け用ボルトとをねじ締結する従来のねじ締結構造に比べて、本願の請求項2に係る発明では、抜け止め部材の係合部と、両管継手の上端部に形成された係合溝およびボルトの上端側の円環状のボルト側係合溝との係止構造を採用することにより、部品製作工程および組立工程を大幅に簡略化できる。
【0015】
また、本願の請求項
4に係る発明でも、ねじ締結構造を用いずに係止構造にしている。すなわち、湯水混合水を流出させる流出管の上端側に、抜け止め部材の係合部が係合可能な円環状の流出管側係合溝を有するので、本願の請求項
4に係る発明は、抜け止め部材の係合部と、両管継手の上端部に形成された係合溝および前記流出管側係合溝との係止構造を採用することにより、湯水混合栓本体の胴に対して、給水ホースおよび給湯ホースにそれぞれ接続される管継手、ならびに、流出管を共にねじ締結する場合に比べて、部品製作工程および組立工程を大幅に簡略化できる。
【0016】
さらに、本発明は、抜け止め部材の係合部と、両管継手の上端部に形成された係合溝およびボルトの上端側の円環状のボルト側係合溝ならびに流出管の上端側の円環状の流出管側係合溝との係止構造を採用して、部品製作工程および組立工程を大幅に簡略化できることにも適用できる。
【0017】
本願の請求項
5に係る発明では、前記抜け止め部材は、前記抜け止め部材挿入用開口との嵌合と、さらには前記台座、または、前記吐水管付きカバー体との嵌合により、前記抜け止め部材挿入用開口から抜け出る(胴から外に抜け出る)のが防止された状態で胴内に保持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は、本発明の一実施形態における湯水混合栓本体の胴を斜め上方からみた状態を示す斜視図である。(B)は、上記実施形態における胴を示す正面図である。(C)は、上記実施形態における胴を示す側面図である。(D)は、上記実施形態における胴を示す背面図である。(E)は、上記実施形態における胴を示す底面図である。(F)は、上記実施形態における胴を斜め下方からみた状態を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態における金属板製の抜け止め部材を示す平面図である。
【
図3】上記実施形態における部品組付け状態を示す分解斜視図である。
【
図4】上記実施形態における部品組付け後の状態を示す斜視図である。
【
図5】上記実施形態における部品組付け後の状態を示す構成説明図である。
【
図7】上記実施形態において、抜け止め部材挿入用開口から胴の中に挿入された部品の金属板製の抜け止め部材が両管継手とボルトを係止している状態を胴の底面側からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1〜
図7は、例えば、キッチンまたは洗面用の湯水混合栓の水栓本体(湯水混合栓本体)の胴に対して、給水ホースおよび給湯ホースにそれぞれ連結された管継手、馬蹄金具取付け用ボルトを締結してなる本発明の一実施形態を示す。
【0020】
図1〜
図6において、湯水混合栓本体は、混合流路、水流路j、湯流路kが形成された略円柱状のブロック体よりなる胴1の上面1aに、弁部材を内蔵した湯水混合用のカートリッジ(図示せず)を有している。カートリッジは、胴1の上端周面2に形成された雄ねじ(ねじの図示は省略)に螺着する雌ねじを内壁下端周面に有するカートリッジカバー(図示せず)に内蔵されている。また、胴1の下端周面5には、その下端周面5を覆う台座4(
図5参照)の内壁面に形成された雌ねじ4aに螺着する雄ねじ(ねじの図示は省略)が形成されている。そして、周面に吐水管(図示せず)が取り付けられた筒状の吐水管付きカバー体G(
図5参照)によって胴1が覆われた状態で、湯水混合栓本体がカウンター6(
図5参照)の上面6aへ固定されている。また、カートリッジの弁棒には、湯水の混合比の調整ならびに止水を含む吐水量の調節を行うシングルレバー(図示せず)が設けられており、シングルレバーを吐水方向に操作すると、カートリッジ内の湯水混合室から例えば混合水が、胴1に形成された混合水流出孔I〔
図1(A)、
図4参照〕を通り、胴1の略中間部分〔
図1(A)においてRで示す環状空間部分〕において前記流出孔Iに連通する環状流路、すなわち、胴をカバーするカバー体Gと胴外周面とで形成される環状流路を通り、最後にこの環状流路に連通する吐水管から吐出するよう構成されている。水流路jを形成する水流入孔Wは、胴1の上下(高さ)方向(Y軸で示す方向)に胴の下面1bから上面1aまで貫通するよう形成された貫通孔(
図6参照)よりなる。湯流路kを形成する湯流入孔HもY方向に胴の下面1bから上面1aまで貫通するよう形成された貫通孔よりなる。7は、下端部7a(
図3参照)がソケット8を介してそれぞれフレキシブルホースよりなる給水ホース15および給湯ホース16に接続されている管継手である。管継手7は、
図3、
図6に示すように、胴1との接続のため管継手7の上端部7bが、それぞれ水流入孔(貫通孔)Wおよび湯流入孔(貫通孔)Hの下流側入口(胴1の下面1b側入口)に形成されている管継手上端部取付用の挿入孔部分10,11に複数のOリング12を介してシール可能に挿入されている。
【0021】
また、胴1の下面1b側には、上端部挿入孔部分10,11の他に、例えば馬蹄金具取付け用ボルト14の下方側外向きフランジf付き六角柱形状の先端部22(
図3、
図5参照)が挿入保持される平面視六角形状のボルト孔13(
図7,5参照)が設けられている。このボルト孔13は有底である。そして、先端部22を介して胴1に挿入された(取付られた)馬蹄金具取付け用ボルト14は、同じく上端部7bを介して胴1に挿入された(取付られた)両管継手7と共に、後述する抜け止め部材(板材)20で抜け止め保持された状態(
図4、
図6参照)でカウンター6に開設された貫通孔hに挿通される。そして、貫通孔hに挿通された前記ボルト14とこのボルト14の外周面に螺着されるナット(図示せず)との締結操作で例えば公知の馬蹄金具などの取付金具(図示せず)によってカウンター6の下面6bが押圧される状態で、かつ、管継手7を介して給水ホース15および給湯ホース16が胴1にそれぞれ連結された状態で、湯水混合栓本体がカウンター6の上面6aへ固定される(
図5参照)。なお、
図5に記載されている互いに直交するX−Y−Z軸における、X軸が示す方向が後述する抜け止め部材20の挿入方向、Y軸が示す方向が胴1の高さ方向、Z軸が示す方向が水流入孔Wと湯流入孔Hの配列方向である。
【0022】
20は、折曲形状の一本の板材からなる抜け止め部材である。これは一本の板材を折曲して構成してあり、この実施形態では、一本の金属製の板材を折曲して構成している。抜け止め部材20は、湯水混合栓本体がカウンター6の上面6aへ固定されている状態で、給水ホース
15および給湯ホース
16の胴1からの抜け止め(胴1からの脱落防止)、ならびに、平面視六角形状のボルト孔13に六角柱形状の先端部22が挿入されている前記ボルト14の抜け止め(胴1からの脱落防止)を行うために設けられている。抜け止め部材20は、使用する給水ホース
15および給湯ホース
16ならびにボルト14を保持しうるよう必要強度が設定されている。抜け止め部材20(
図2参照)には、ボルト14、給水ホース15および給湯ホース16の三つの組立部品に対応して三箇所の係合部M,N,Pが適宜箇所に形成されている。なお、抜け止め部材20として、一本の金属製の板材に代えて、一本の金属製の線材(棒状のものも含む)を折曲して構成してもよい。また、抜け止め部材20の材料として、必要強度が出せれば金属製の一本の板材又は線材以外に、合成樹脂製の一本の板材又は線材を用いてもよい。
【0023】
一方、各管継手7は、上端部7bにおける下流側に前記Oリング12が嵌着可能に形成された円環状の複数のOリング溝21を有する。また、上端部7bにおける上流側に、抜け止め部材20の前記係合部N,Pがそれぞれ係合可能な係合溝n,pを有している。すなわち、(水用)管継手7には、前記係合部N(
図2、
図7参照)が係合可能な係合溝n(
図3参照)がOリング溝21の下方(上流側)に形成され、(湯用)管継手7には、前記係合部P(
図2、
図7参照)が係合可能な係合溝p(
図3参照)がOリング溝21の下方(上流側)に形成されている。
【0024】
また、馬蹄金具取付け用ボルト14は、上端側から順に、下方側外向きフランジf付き回り止め用六角柱形状の端部22と、前記抜け止め部材20の前記一対の係合部M,Mが係合可能な円環状のボルト側係合溝mを有し、前記抜け止め部材20の係合部Mおよび係合部N,Pをそれぞれ前記ボルト側係合溝mおよび両管継手7の前記上端部7bに形成された前記係合溝n,pに係入させることで前記ボルト14と両管継手7を連結保持できるように構成されている。
【0025】
さらに、抜け止め部材20は、全体が細長いテープ状の板体からなり、
図2に示すように、中心線Lに対して対称な形状に形成されている。抜け止め部材20は、開口部分aを形成する一対のストレート部20a,20aと、このストレート部20a,20aのそれぞれの端部分から弓型弧状に湾曲する一対の円弧部20b,20bと、一対のL字型部20c,20cと、L字型部20c,20cと円弧部20b,20bを繋ぐ一対の繋ぎ部20d,20dと、L字型部20c,20c同士を繋ぐ単一のU字型部20eを有している。
【0026】
また、胴1には、上端部7bが取付けられた各管継手7の前記係合溝n,pおよび六角柱形状の端部22が取付けられた前記ボルト14のボルト側係合溝mが位置する抜け止め部材挿入用開口30が形成されている。この開口30は、胴1の前記下端周面5を形成する周面肉部50を切欠いて形成された二種類の外側開口部31,32と、抜け止め部材20の係入空間である空洞(内側開口部)を有する。例えば、外側開口部31は、一対の繋ぎ部20d,20d間の間隔(寸法)よりも大きな周長(開口長さ)に形成されている。すなわち、外側開口部31は、
図1(D)に示すように、周面肉部50の周方向で、180°以上で360°よりも小さな円周角を有する開口長さになるよう、また、抜け止め部材20の厚みよりも大きな厚みを有するよう、周面肉部50を切欠いて形成されている。また、二つの外側開口部32および32は、一対のストレート部20aおよび20aの先端部分がそれぞれ嵌挿可能な大きさに形成されている。外側開口部31は、抜け止め部材20をストレート部20a,20a側(開口部分a側)からU字型部20eまで空洞内に挿入するための挿入用開口部である。一方、二つの外側開口部32,32は、周面肉部50内(空洞内)に挿入された抜け止め部材20の一対のストレート部20a,20aの先端部分がささるところの一対の嵌合用開口部である。この場合、抜け止め部材20の係合部M,Mおよび係合部N,Pはそれぞれボルト側係合溝mおよび係合溝n,pに係入された状態にある。また、係合部M,M間の間隔(寸法)を適宜設定することにより、係合部M,Mをボルト側係合溝mに強固に係入させることができる。すなわち、この実施形態では、前記係合溝mに対して係合部M,Mは抜け止め部材20の内周面側から嵌挿している。一方、前記係合溝nおよびpに対して係合部NおよびPはそれぞれ抜け止め部材20の外周面側から嵌挿している。なお、抜け止め部材20の形状は適宜変更可能であり、例えば、前記係合溝nおよびpに対して係合部NおよびPをそれぞれ抜け止め部材20の外周面側から嵌挿させる構成を採用してもよい。また、抜け止め部材20のせん断強度、接触面積等を適宜設定することにより、給水ホース
15および給湯ホース
16ならびにボルト14に対する保持力を維持できる。その結果、抜け止め部材20は、ストレート部20a,20aと二つの外側開口部32との嵌合、ならびに、台座4との嵌合(抜け止め部材20のU字型部20eが台座4の内壁面に当接した状態)により、前記抜け止め部材挿入用開口30(外側開口部31)から抜け出る(胴1から外に抜け出る)のが確実に防止された状態で胴1内に保持され得る。
【0027】
なお、この実施形態では、胴1の下端周面5を覆う台座4によって抜け止め部材挿入用開口30(外側開口部31)を覆う構成を採用したが、本発明は、胴1の周面全体を覆う吐水管付きカバー体(図示せず)によって抜け止め部材挿入用開口30(外側開口部31)を覆う構成を採用してもよい。また、外側開口部31の開口長さ・厚み、ならびに、抜け止め部材20の係入空間である前記空洞の大きさは、用いる抜け止め部材20の大きさによって適宜設定できるものである。また、抜け止め部材20の素材としては金属製のものが好ましい。また、胴1の素材には、真鍮等の金属に限らず、合成樹脂も適用できる。また、管継手7、ソケット6は金属性の素材が好ましい。
【0028】
而して、工場などの製作場所において予め、前記抜け止め部材20の係合部Mおよび係合部N,Pをそれぞれ胴1の抜け止め部材係入空間内のボルト側係合溝mおよび両管継手7の前記上端部7bに形成された前記係合溝n,pに係入させることで前記ボルト14と両管継手7を連結保持できる。そして、上述したように、抜け止め部材挿入用開口30が形成されている胴1の下端周面5を台座4(
図5参照)が覆うことから、胴1の周面肉部50内に形成された係入空間に挿入された抜け止め部材20は、一対のストレート部20a,20aの先端部分と外側開口部32,32との嵌合と、下端周面5(外側開口部31)を覆う台座4によって胴1内に保持され、抜け止め部材20が前記外側開口部31から外側へ抜け出すといった懸念はない。すなわち、板材の抜け止め部材20の係入状態は、抜け止め部材20のストレート部20a,20aの先端部分が外側開口部32,32にささっている状態であることから、抜け止め部材20の変形を防止しながら、前記ボルト14、ならびに、給水ホース15および給湯ホース16が胴1から脱落するのを防ぐことができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態で示したような、抜け止め部材の係合部と、両管継手の上端部に形成された係合溝およびボルトの上端側の円環状のボルト側係合溝との係止構造だけではなく、胴に水流入孔、湯流入孔、ボルト孔、および、湯水混合水を流出させる流出管(例えば、吐水ヘッドに接続されたホースに連結可能な流出管)を挿入するための流出管挿入孔が開設された湯水混合栓本体にも適用でき、この場合、抜け止め部材の係合部と、両管継手の上端部に形成された係合溝および流出管の上端側に形成された円環状の流出管側係合溝ならびにボルト側係合溝との係止構造を採用して、部品製作工程および組立工程を大幅に簡略化できる。
【符号の説明】
【0030】
1 胴
6 カウンター
6a カウンター上面
6b カウンター下面
7 管継手
7b 管継手の上端部
12 Oリング
13 ボルト挿入用のボルト孔
14 ボルト
20 抜け止め部材
21 Oリング溝
30 抜け止め部材挿入用開口
W 水流入孔
H 湯流入孔
h 貫通孔
M,N,P 係合部
n,p 係合溝
m ボルト側係合溝