【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係る撮像装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施例は、本発明に係る撮像装置を、車両周囲の監視を行って、撮像された画像または撮像された画像の認識結果に基づく警報や警告灯を、車両の乗員に提示する周囲監視装置に適用した例である。
【0017】
(撮像装置の概略構成の説明)
まず、図面を用いて装置の構成を説明する。本実施例に係る撮像装置10は、
図1に示すように車両(図示省略)に設置されて、被写体を観測する光学系101と、撮像素子102と、信号分離部103と、出力信号線形変換部104と、色信号生成部105aと、輝度信号生成部107と、輝度信号補正部108と、色輝度合成部109と、画像出力部110を備えている。
【0018】
光学系101は、レンズやミラー等の光学素子から構成されて、被写体から出射した光または被写体で反射した光を、後述する撮像素子102上に導く光学系である。光学系101は、車載監視用途の撮像装置の場合には、一般に狭角、広角、魚眼等のパンフォーカスレンズを用いる。さらに、ズーム機構やオートフォーカス機構を備えたレンズ系を用いてもよいし、絞りやシャッターを備えたレンズ系を用いてもよい。また、画質や色再現性の向上のために光学ローパスフィルタや帯域分離フィルタや偏光フィルタ等の各種フィルタ類を備えたレンズ系を用いてもよい。
【0019】
撮像素子102は複数の画素から構成されており、光学系101を通して観測された被写体の像が結像して、入力した光を、その輝度に応じた出力電圧信号eに光電変換する。光電変換された出力電圧信号eは、撮像素子102の内部に備えられたアンプ(図示省略)、更に同じく撮像素子102の内部に備えたADコンバータ(図示省略)を通してデジタル化されて、出力信号RAW0が生成される。出力信号RAW0として、例えば、12ビット(0〜4095)にデジタル化された信号が出力される。撮像素子102としては、最大120dB程度の入力輝度のダイナミックレンジを有する、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の光電変換素子が用いられる。なお、撮像素子102を構成する各画素の上には、後述するように、透過する波長帯域が異なる4種類のフィルタ(赤色フィルタR,緑色フィルタG,青色フィルタB,透明フィルタC)が、それぞれ規則的に配列された光学フィルタを形成している。
【0020】
信号分離部103は、撮像素子102に対して撮像を行うタイミングを指示するとともに、撮像素子102で撮像された出力信号RAW0を受けて、同一の2つの出力信号RAW0、RAW0に分離する。
【0021】
出力信号線形変換部104は、信号分離部103で分離された信号のうち一方の出力信号RAW0に対して階調変換(線形化)処理を行い、線形性を有する線形化出力信号RAW1に変換する。ここで行われる変換処理の内容は後述する。
【0022】
色信号生成部105aは、出力信号線形変換部104で変換された線形化出力信号RAW1を、R,G,B,Cの各色フィルタを透過した光にそれぞれ対応する4つの信号に分離する。このとき、撮像素子102のうち、例えば赤色フィルタRが配置された画素Eからは赤色成分のみしか得られないため、画素Eの近傍の画素の出力を用いて線形補間を行い、画素Eにおける線形色信号(R0,G0,B0,C0)を予測する。そして、線形色信号(R0,G0,B0,C0)の中に含まれる近赤外光成分の比率Rrを求めて、求められた近赤外光成分の比率Rrに応じた量の近赤外光成分を分離して、線形性を有する赤外分離色信号を生成する。さらに、赤外分離色信号の色補正を行って線形補正色信号(R1,G1,B1)を生成する。
【0023】
また、色信号生成部105aは、飽和画素に対してクリッピング処理を行うとともに、色飽和を起こしている飽和領域の検出を行う。そして、飽和領域を構成する画素であるか否かに応じて、適切な線形補正色信号(R1,G1,B1)を出力する。なお、色信号生成部105aは、
図8に示す詳細構成を有しているが、その内容と、色信号生成部105aで行われる具体的な処理内容については後述する。
【0024】
輝度信号生成部107は、信号分離部103で分離された信号のうち他方の出力信号RAW0から輝度信号Y1を生成する。ここで行われる処理の内容は後述する。
【0025】
輝度信号補正部108は、輝度信号生成部107で生成された輝度信号Y1を必要に応じて補正して、輝度補正信号Y2を生成する。ここで行われる処理の内容は後述する。
【0026】
色輝度合成部109は、線形補正色信号(R1,G1,B1)と輝度補正信号Y2を合成して映像信号(R2,G2,B2)を生成する。ここで行われる処理の内容は後述する。
【0027】
画像出力部110は、例えば表示用モニタからなり、色輝度合成部109で合成された映像信号(R2,G2,B2)を視認可能な形で出力する。
【0028】
以下、撮像装置10の作用について、図面を用いて順に説明する。まず、
図2に基づいて、撮像装置10の具体的な利用シーンについて説明する。
図2は、撮像装置10を用いて夜間の道路を撮影したときに得られる画像の一例を表したものである。すなわち、道路上に存在する先行車201や対向車203・道路標識等による反射装置205,206・信号機207・歩行者208・レーンマーカ209などが撮像されて画像化された様子を示している。
【0029】
図3は、線形の入出力特性を持つ一般的な撮像素子を用いて、
図2に示す道路を撮像して画像化したときの入力輝度Iと出力電圧信号eの関係を表している。
【0030】
すなわち、撮像素子102に対して、異なる2つの露光時間を与えたときの入出力特性として、露光時間が長いときの入出力特性301と、露光時間が短いときの入出力特性302、および道路上の被写体を撮像して、全ての被写体を画像化したときに、白飛びや黒潰れが発生せずに適切なカラー画像を生成することができると考えられる入出力特性303を示している。
【0031】
図2に示したような夜間のシーンは、被写体の明暗の差が非常に大きいため、線形の入出力特性を持つ撮像素子で撮像したのでは、ダイナミックレンジの限界を超えてしまうため、白飛びや黒潰れと呼ばれる現象が発生してしまう課題があった。
【0032】
すなわち、
図3に示した入力輝度帯域304のように、自車両のヘッドライトや道路照明が当たっていない領域、および自車両のヘッドライトや道路照明を反射し難い、レーンマーカ209や歩行者208の領域が見やすい明るさで映るように露光時間を決定して撮影すると、入出力特性301を設定するのが望ましい。しかし、入出力特性301を設定すると、ヘッドライト204に照らされた高輝度領域が多い入力輝度帯域307やテールライト202の分布頻度が多い入力輝度帯域305における出力電圧信号eが飽和してしまうため、所謂「白飛び」と呼ばれる現象が生じてしまう(
図3に示した領域X1が白飛びを起こす領域を表す)。
【0033】
逆に、最も明るいヘッドライト204に照らされた高輝度領域が多い入力輝度帯域307が見やすい明るさで映るように露光時間を決定して撮影すると、入出力特性302を設定するのが望ましい。しかし、入出力特性302を設定すると、レーンマーカ209や歩行者208の分布頻度が多い入力輝度帯域304やテールライト202の分布頻度が多い入力輝度帯域305における出力電圧信号eが黒潰れのラインを下回ってしまうため、所謂「黒潰れ」と呼ばれる現象が生じてしまう(
図3に示した領域X2が黒潰れを起こす領域を表す)。
【0034】
これに対して、
図3に示した入出力特性303を設定して撮影すると、出力電圧信号eは、最も暗いレーンマーカ209から最も明るいヘッドライト204まで、一つの入出力特性303の白飛びも黒潰れもしない範囲に収めることができる。本実施例で用いる撮像素子102の入出力特性は、このような入出力特性303を有しているものとする。
【0035】
(撮像素子の入出力特性の説明)
次に、撮像装置10の作用について、順を追って説明する。撮像素子102は、
図4Aに示すように複数の入出力特性を備えており、入射光を受光した撮像素子102の各画素に蓄積される電荷のリセットタイミングやリセット電圧を変更することによって、入出力特性を変更することができる。
【0036】
そして、この入出力特性は
図4Aに示すように、入力輝度Iに対して出力電圧信号eが非線形に変化する特性を有している。これは、対数変換型の光電変換素子の代表的な入出力特性としてよく知られたものである。
【0037】
なお、
図4Bは、
図4Aのグラフの横軸を対数目盛りに変換したグラフであり、入出力特性の違いによって、白飛びや黒潰れせずに出力できる入力輝度Iのダイナミックレンジが変化することを示している。
【0038】
すなわち、
図4A,
図4Bにあっては、各入出力特性に付与した番号が大きいほど、入力輝度Iのダイナミックレンジが広い特性を有している。
【0039】
なお、
図4Aに示した複数の入出力特性は、撮像シーンに応じて、撮像素子102に内蔵された露光制御部(非図示)によって1つ選択される。例えば、撮像シーンの明るさに基づいて、白飛びや黒潰れが発生せずに、できるだけコントラストが高い画像が撮像される入出力特性が選択されて、撮像が行われる。
【0040】
具体的には、撮像素子102に内蔵された露光制御部において、1フレーム毎に画像の出力統計情報が算出されて、白飛びや黒潰れの画素数が計測される。そして、白飛びが検出された場合には、よりダイナミックレンジが広い入出力特性が選択されて、白飛びが検出されない場合には、よりダイナミックレンジが狭い入出力特性が選択される。
【0041】
一方、黒潰れが検出された場合には、よりダイナミックレンジが狭い入出力特性が選択されて、黒潰れが検出されない場合には、よりダイナミックレンジが広い入出力特性が選択される。
【0042】
(撮像素子のフィルタ構成の説明)
撮像素子102は、
図4Aまたは
図4Bに示す出力電圧信号eを出力する複数の画素を二次元的に備えている。各画素の受光面の上には、
図5Aに示すように、可視光を波長毎に選択的に透過し、かつ近赤外光に対しては互いに等しい透過率をもつ3種類のフィルタX,Y,Zと可視光の波長毎の透過率を3種類のフィルタの透過率の線形和で表すことができ、かつ近赤外光に対しては3種類のフィルタと等しい透過率をもつ第4のフィルタTが規則的に配列された光学フィルタが形成されている。
【0043】
図7Aは、このような特性を有する光学フィルタの例として、多くの撮像素子に用いられているRGBフィルタを配列した撮像素子102の波長毎の出力値である分光感度Sを示している。すなわち、
図5Bのように、前述した3種類のフィルタX,Y,Zが、それぞれ、赤色フィルタR,緑色フィルタG,青色フィルタBに対応し、第4のフィルタTに対応するフィルタとして、近赤外光を含む可視光全体を透過する透明フィルタCを適用した例である。
【0044】
図7Aにおいて、可視光と近赤外光の境目は曖昧であるが、一般的に約700nm〜約850nmの波長領域と考えてよく、この波長領域よりも高波長領域では、4種類のフィルタの分光透過率に差がないため、4種類のフィルタを透過した光がそれぞれ入射した画素の出力値は互いに漸近する。
【0045】
本発明は、このような4種類のフィルタの特性を活用したものであり、撮像素子102の特性に基づき4種類の色フィルタの出力値が十分に漸近して一致するとみなした点(
図7Aの例では、波長840nm付近)を可視光領域と近赤外光領域の境界とみなして、撮像素子102の出力信号の中から、可視光領域に占める成分(可視光成分)を保持して、近赤外光領域に占める成分(近赤外光成分)のみを分離、除去することを特徴としている。
【0046】
次に、この4種類のフィルタの特性に関して説明する。4種類のフィルタX,Y,Z,Tの可視光領域の任意の波長における透過率を、それぞれXT,YT,ZT,TTとすると、それらの関係は式6のように表せる。
[式6] TT=αXT+βYT+γZT
【0047】
このように、第4のフィルタTの透過率TTは3種類のフィルタX,Y,Zの各透過率XT,YT,ZTの線形和で表すことができ、正負を問わない係数α,係数β,係数γが一意に定まるものとする。すなわち、撮像装置10は式1の条件を満たす4色のフィルタを使用する必要があるが、これは、前述したように、多くの撮像素子に利用されているRGBフィルタを用いることによって実現できる。そして、さらに、第4のフィルタTとして、近赤外光を含む可視光領域全体を透過する透明(Clear)フィルタCを用いればよい。
【0048】
これら4種類のフィルタの波長λに対する分光特性から、
図7Aに示すような、撮像素子102の分光感度Sが得られる。そして、後述する階調変換処理によって、撮像素子102に対する入力輝度Iと撮像素子102から出力される出力電圧信号eとの関係を線形関係に変換することによって、
図7Bに示す分光感度Sが得られる。そして、
図7Bに示す分光感度Sから、式1に示した係数α,β,γの値を算出することができる。
【0049】
係数α,β,γの値は、複数の異なる波長λの光に対して計測された分光感度Sから、最小二乗法を用いて、真値に対して許容範囲内に収まるような値を設定することができる。そして、本実施例は、RGBCフィルタ配列に限らず、式1の関係式で表すことができる任意の4種類のフィルタ配列に適用することができる。
【0050】
前記RGBCフィルタを通して撮像素子102から出力された出力信号RAW0(12ビット)は、まず、信号分離部103において色信号処理と輝度信号処理に用いるための2つの信号に分離される分離処理が行われる。分離後の2つの信号は、分離前の出力信号RAW0と全く同一のものである。
【0051】
(線形変換処理の説明)
次に、信号分離部103によって分離された2つの出力信号RAW0,RAW0のうち、色信号処理に用いられる出力信号RAW0に対して、出力信号線形変換部104において線形変換処理(線形化)を行う。すなわち、
図6に示すように、入力輝度Iに対して、撮像素子102の出力電圧信号eが線形に変化する予測線形特性612を有するものと仮定して、入力輝度Iと出力電圧信号eとが非線形関係にある領域を、線形関係を有する信号になるように変換する。
【0052】
撮像素子102は、
図6の入出力特性600に示すように、入力輝度Iが小さい領域では線形特性601を有し、この領域では、入力輝度Iに対して線形に変化する出力信号を出力する。
【0053】
また、入力輝度Iが大きい領域では非線形特性602を有し、この領域では、入力輝度Iに対して非線形に変化する出力信号を出力する。
【0054】
そして、線形特性601を有する領域と非線形特性602を有する領域とは、接続点605において連続している。なお、撮像素子102が出力する非線形特性602を有する出力電圧信号eを第1の出力信号S1とする。
【0055】
ここで、撮像素子102の全入力輝度範囲に亘って、入出力特性の線形性が成り立つと仮定する。すなわち、
図6の点線で示すように、入出力特性が予測線形特性612を呈すると仮定する。そして、撮像素子102から、この予測線形特性612に基づいて出力されると予測される出力電圧信号eを第2の出力信号S2とする。
【0056】
出力信号線形変換部104では、撮像素子102が出力した第1の出力信号S1を、入出力特性が予測線形特性612をなすと仮定したときに、撮像素子102が出力すると予測される第2の出力信号S2に変換する処理を行う。
【0057】
すなわち、
図6の場合、入力輝度I1に対して入出力特性600によって得られた出力電圧信号がe1であり、入出力特性が予測線形特性612をなすと仮定したときに、入力輝度I1に対して予測される出力電圧信号がe2であるとすると、出力電圧信号e1をe2/e1倍する処理が行われる。
【0058】
線形化を行う方法には様々なものが考えられるが、例えば、LUT(Look Up Table)を用いて変換すればよい。すなわち、あらかじめ撮像素子102の入出力特性を、
図4Aに示したような全ての入出力特性の数だけ測定しておき、ある入力輝度Iのときに得られた出力電圧信号e1と、入出力特性が線形特性をなすと仮定したときに予想される出力電圧信号e2の対応関係をLUTに記憶しておく。階調変換処理時には、現在の入出力特性の番号と実際に計測された出力電圧信号e1の値から、そこに対応するLUTに記憶された出力電圧信号e2の値を参照して階調変換を行えばよい。
【0059】
なお、撮像装置10における出力信号RAW0および階調変換を行うために用いるLUTに記憶される情報は、いずれもデジタル情報として取り扱う。実施例1において、これらの情報を漏れなく記憶しておくために必要なビット数は、例えば
図4Aの入出力特性を有する撮像素子102を用いる場合、入出力特性の総数は10通りであるので、入出力特性の形態を漏れなく表現するのに必要なビット数は4ビット、撮像素子102の出力信号RAW0は12ビット、そして、LUTに必要なビット数(線形変換後の出力電圧値)は、入力輝度のダイナミックレンジが最大120dB(1:10
6)程度であることを考慮して、20ビット(>120dB)となる。
【0060】
そして、出力信号線形変換部104において行われる線形変換によって、12ビットの出力信号RAW0から、20ビットの線形化出力信号RAW1が得られる。
【0061】
なお、この他の線形変換の方法として、撮像素子102の入出力特性における屈曲点であるニーポイントの位置を予測して区分線形変換を行う方法や、対数特性に近似して式による変換を行う方法など様々な方法が考えられ、そのいずれの方法を用いても構わない。
【0062】
(色信号の線形補間処理の説明)
次に、色信号生成部105aで行わる色再現処理の内容について、
図8を用いて説明する。
図8は、色信号生成部105aの詳細な構成を示す図である。すなわち、色信号生成部105aは、第1色分離部1051と、第1線形補間処理部1052と、赤外分離部1053(近赤外光成分分離部)と、赤外分離色信号補正部1054と、近赤外光比率算出部1060と、近赤外光成分除去率テーブル1062と、第2色分離部1055(飽和抑制部)と、第2線形補間処理部1056と、赤外含有色信号補正部1057と、飽和領域判定部1058a(色飽和検出部)と、色信号選択部1059を備えている。
【0063】
出力信号線形変換部104(
図1参照)によって変換された線形化出力信号RAW1(20ビット)は3つの信号に分離されて、第1色分離部1051と、第2色分離部1055(飽和抑制部)、および飽和領域判定部1058a(色飽和検出部)に入力される。このとき、分離後の3つの信号は、分離前の線形化出力信号RAW1と全く同一のものである。
【0064】
第1色分離部1051は、線形化出力信号RAW1を、線形化出力信号RAW1を構成する各色に対応する4つの線形色信号(R0,G0,B0,C0)に分離する。このとき、信号がない画素は出力を0(空白)とする。
【0065】
第1線形補間処理部1052は、第1色分離部1051において信号を分離する際に発生した空白の画素において観測されると予想される画素値を、近傍の画素値を用いて線形補間する。そして、全ての画素において、それぞれ4つの線形色信号(R0,G0,B0,C0)を生成する。
【0066】
この線形補間の方法について、
図5Cを用いて具体的に説明する。
図5Cのように配列されたフィルタにおいて、例えば、B22で示される画素には、青色光を透過するフィルタが配列されている。したがって、B22で示される画素からは、青色に対応する出力電圧信号eのみが得られる。
【0067】
したがって、B22で示される画素から出力されると予想される赤色光,緑色光,白色光に対応する信号は、B22で示される画素の周囲の出力電圧信号eを補間して予測する必要がある。
【0068】
例えば、B22で示される画素から出力されると予想される赤色光成分は、B22で示される画素に隣接する画素のうち、赤色フィルタRが配列された画素であるR11,R13,R31,R33で示されるそれぞれの画素の出力電圧信号eの平均値を当てはめることによって予測する。
【0069】
また、B22で示される画素から出力されると予想される緑色光成分は、B22で示される画素に隣接する画素のうち、緑色フィルタGが配列された画素であるG12,G32で示されるそれぞれの画素の出力電圧信号eの平均値を当てはめることによって予測する。
【0070】
そして、B22で示される画素から出力されると予想される白色光成分は、B22で示される画素に隣接する画素のうち、透明フィルタCが配列された画素であるC21,C23で示されるそれぞれの画素の出力電圧信号eの平均値を当てはめることによって予測する。
【0071】
なお、このとき、単に補間するだけではなく、ローパスフィルタや、バンドパスフィルタなどのディジタルフィルタを用いて周波数選択のためのディジタルフィルタリングを実施してもよい。
【0072】
(赤外光分離処理の説明)
続いて、赤外光分離処理の内容について、
図8を用いて説明する。まず、近赤外光比率算出部1060は、以下に示す式7によって、線形色信号(R0,G0,B0,C0)の中に含まれる近赤外光成分の比率Rrを算出する。
[式7] Rr=(R0+G0+B0−C0)/2C0
【0073】
近赤外光成分除去率テーブル1062には、近赤外光成分の比率Rrに対する近赤外光成分の除去率E(Rr)が記憶されている。具体的なテーブルの例は後述する。
【0074】
赤外分離部1053は、第1線形補間処理部1052において得られた4つの線形色信号(R0,G0,B0,C0)の中から、線形色信号(R0,G0,B0,C0)の中に含まれる近赤外光成分の比率Rrに基づいて、近赤外光成分除去率テーブル1062に定められた除去率(割合)E(Rr)の近赤外光成分を除去する。
【0075】
すなわち、赤外分離部1053において、赤外分離色信号(Ra,Ga,Ba)(赤外分離信号)を得る。具体的には、赤外分離色信号(Ra,Ga,Ba)は近赤外光成分の比率Rrを用いて、式8,式9,式10によって算出することができる。なお、Iは近赤外光成分量を表す。
[式8] Ra=R0−I*E(Rr)
[式9] Ga=G0−I*E(Rr)
[式10] Ba=B0−I*E(Rr)
【0076】
図9A,
図9Bは、それぞれ、近赤外光の除去率E(Rr)が記憶された近赤外光成分除去率テーブル1062の一例である。
図9Aは、近赤外光成分の比率Rrが、所定の比率、例えば10%から90%の間にあるときは近赤外光成分の除去率E(Rr)を100%、すなわち全ての近赤外光成分を除去して、近赤外光成分の比率Rrが10%未満または90%を超えるときには近赤外光成分の除去率E(Rr)を0%、すなわち全ての近赤外光成分を除去しないように設定した例を示している。
【0077】
一方、
図9Bは、
図9Aにおいて、近赤外光成分の比率Rrが10%および90%の前後にあるとき、近赤外光成分の除去率E(Rr)を連続的で滑らかに変化するように設定した例を示している。
図9Aに示すような近赤外光の除去率E(Rr)を設定すると、除去率E(Rr)が大きく切り替わる部分において、大きな色の差が発生する虞があるため、
図9Bに示すような除去率E(Rr)を設定するのが望ましい。
【0078】
図10に、代表的な光源における近赤外光成分の比率Rrと、本実施例において、各光源に対して設定される近赤外光成分の除去率E(Rr)の一例を示す。
図10において、赤外LED(近赤外光成分の比率Rr=90〜100%)にあっては、近赤外光成分の除去率E(Rr)=0%、すなわち、近赤外光成分を除去しない設定とすることによって、発明が解決しようとする課題の欄で述べた、ノイズ成分の影響を抑制することができる。
【0079】
また、白熱灯(Rr=70〜89%),太陽光(Rr=60〜69%),放電灯(Rr=10〜59%)にあっては、E(Rr)=100%、すなわち、近赤外光成分を全て除去する設定とすることによって、正しい色再現を行うことができる。
【0080】
さらに、LED(Rr=0〜9%)にあっては、E(Rr)=0%、すなわち、近赤外光成分を除去しない設定とすることによって、発明が解決しようとする課題の欄で述べた、SN比の低下を防止することができる。
【0081】
赤外分離色信号補正部1054は、一般的な線形特性を持つ撮像素子を用いた撮像装置10で実施されている技術(ターゲットカラーに基づくリニアマトリクス演算)により、撮像装置10によって再現される色がターゲットカラーとなるように色信号補正処理を行う。
【0082】
具体的には、赤外分離色信号補正部1054において、赤外分離部1053から出力された赤外分離色信号(Ra,Ga,Ba)に対して、式11を用いてリニアマトリクス演算を行い、出力が飽和していない非飽和画素(通常画素)で再現される色がターゲットカラーとなるように補正して、補正された3つの線形補正色信号(Xc,Yc,Zc)を出力する。
[式11]
【0083】
特に、前述したRGBCフィルタを備えた撮像素子102から得られた線形補正色信号を(R1,G1,B1)と呼ぶことにする。線形補正色信号(R1,G1,B1)は、式6において、X=R,Y=G,Z=Bと置き換えることによって算出することができる。
【0084】
(クリッピング処理の説明)
第2色分離部1055(飽和抑制部)は、第1色分離部1051と同様に、線形化出力信号RAW1が入力されて、4つの色信号に分離(信号がない部分は空白0を挿入)されるが、分離前に、飽和信号レベル(12ビットの場合は4095)に対して色信号毎に予め定められたクリップレベルを用いてクリッピングを行う。
【0085】
クリッピング処理とは、線形化出力信号RAW1が、予め決めておいた所定の値を超えていたときに、その画素値を予め決めておいた所定の値に設定する処理のことである。
【0086】
クリッピング処理の1例を
図11Aに示す。例えば、緑色フィルタGが配列された画素から出力された信号が、予め決めた所定値Thrよりも大きいときは、その画素に強制的に所定値Thrを与える。
【0087】
そして、このとき、同じ輝度の白色光が、赤色フィルタRが配列された画素に入射したときに、その画素から出力される信号も飽和するように、赤色フィルタが配列された画素に対する所定値R_Thrが設定される
。ここで、R_Thrの値は、式12によって算出する。
[式12]
ここで、G_Gain,R_Gainはそれぞれ、色温度を調整するパラメータであり、緑色の強さを表わすGゲインと、赤色の強さを表わすRゲインである。
【0088】
同様にして、青色フィルタが配列された画素に対する所定値B_Thrが設定される。ここで、B_Thrの値は、式13によって算出する。
[式13]
ここで、B_Gainは、色温度を調整するパラメータであり、青色の強さを表わすBゲインである。
【0089】
その後、第2線形補間処理部1056で第1線形補間処理部1052と同様の線形補間処理を行う。また、赤外含有色信号補正部1057は、第2線形補間処理部1056から出力される近赤外光を含む4つの色信号に対して、式14を用いてリニアマトリクス演算を行い、飽和領域で再現される色がターゲットカラーとなるように補正して、補正された4つの線形補正色信号(Xs,Ys,Zs,Ts)のうち、(Xs,Ys,Zs)の3信号を出力する。
[式14]
【0090】
なお、前述したRGBCフィルタを備えた撮像素子102の場合、式6において、X=R,Y=G,Z=B,T=Cと置き換えることによって、線形補正色信号(R1,G1,B1)が算出される。こうして算出される線形補正色信号(R1,G1,B1)は、近赤外光が分離されていない赤外未分離色信号である。
【0091】
(飽和領域判定処理の説明)
色信号選択部1059は、画素単位で並行して生成される前記2種類の線形補正色信号(赤外分離色信号、赤外未分離色信号)のうち、どちらの線形補正色信号を使用するかを選択するための判定を行う。そのため、まず、飽和領域判定部1058a(色飽和検出部)において、線形化出力信号RAW1に対して、飽和画素、または飽和画素の周辺画素(線形補間で飽和画素の影響を受けている画素)のみを表わす二値信号を生成する。
【0092】
具体的には、飽和信号レベル以上で飽和と判定された画素を1とし、それ以外を0とする二値画像に対して、線形補間処理を行った際のカーネルサイズに合わせたダイレーション(膨張)処理を行って、このダイレーション処理の結果得られた二値画像信号を、飽和画素を表わす飽和画素信号として色信号選択部1059へ入力する。このとき、領域の膨張処理を行うため、飽和画素とともに、飽和画素の影響を受けていると考えられる周辺画素も合わせて抽出される。
【0093】
色信号選択部1059は、着目した画素が、飽和画素、またはその周辺画素として抽出されているか否かに従って、2種類の色信号のうち、どちらの色信号を出力するかの選択を行う。すなわち、前述した二値画像信号が0のときは、飽和画素ではなく、かつ飽和画素の周辺画素でもないと判断されて、赤外分離された線形補正色信号(R1,G1,B1)が選択される。
【0094】
一方、二値画像信号が1のときは、飽和画素または、飽和画素の周辺画素と判断されて、クリッピング処理された赤外未分離の線形補正色信号(R1,G1,B1)が選択される。
【0095】
以上により、線形化出力信号RAW1(20ビット)から、人間の色覚特性に一致するように、近赤外光成分が分離されて、彩度や色相などが調整された3つの線形補正色信号(R1,G1,B1)(符号付き21ビット)が選択されて出力される。
【0096】
この色信号の選択処理について
図11B,
図11Cを用いて説明する。
図11B,
図11Cに示すように、非飽和画素、またはクリッピング処理を行った飽和画素であれば、色補正後の信号は無彩色となる。これに対してクリッピング処理を行わない飽和画素では、色補正を行った際にRGBのバランスが崩れて、
図11Cに示すように色ずれが発生する。したがって、前述したように、飽和画素信号であるときには、クリッピング処理を行った色信号を選択することによって、色ずれの発生を防止することができる。
【0097】
(色輝度合成による色再現処理の説明)
信号分離部103によって分離された2つの出力信号RAW0のうち、色信号処理に用いない出力信号RAW0は、輝度信号処理に利用される。
【0098】
輝度信号生成部107は、出力信号RAW0から輝度信号Y1(12ビット)を生成する。処理の内容は、出力信号線形変換部104で行う処理と、色分離をしない点以外は同様であり、ローパスフィルタや、バンドパスフィルタなどのディジタルフィルタを用いて周波数選択のためのディジタルフィルタリングを実施することも可能である。
【0099】
輝度信号補正部108は、輝度信号Y1に対してガンマ補正やヒストグラム補正等のコントラスト調整を実施して、輝度補正信号Y2(12ビット)を生成する。
【0100】
そして、線形補正色信号と輝度補正信号を用いて、色輝度合成部109おいて、画像出力部110に出力する映像信号を生成する。
【0101】
(色輝度合成処理の説明)
以下、RGBCフィルタを備えた撮像素子102から得られた線形補正色信号(R1,G1,B1)と輝度補正信号Y2を用いて、映像信号(R2,G2,B2)を生成する方法について、順を追って説明する。
【0102】
図12に色輝度合成部109の内部構成図を示す。まず、線形補正色信号(R1,G1,B1)を2つに分離し、処理ブロック1091において、分離した一方の線形補正色信号(R1,G1,B1)から、それらの輝度成分Ycを式15を用いて求める。
[式15] Yc=0.299R1+0.587G1+0.114B1
【0103】
式10において、線形補正色信号(R1,G1,B1)の各成分に積算される係数は、それぞれ、RGB色度を輝度に変換する際の変換係数として求められた値の一例である。
【0104】
式10の演算は、入力される線形補正色信号(R1,G1,B1)(符号付き21ビット)の値の範囲が広いため、線形補正色信号(R1,G1,B1)を浮動小数点に変換して、浮動小数点演算として行う。
【0105】
次に、処理ブロック1092において、式16,式17,式18で示すように、式10で導出された輝度成分Ycの値によって、線形補正色信号(R1,G1,B1)の各成分をそれぞれ除算して、線形補正色信号(R1,G1,B1)の正規化を行い、正規化色信号(Rc,Gc,Bc)を生成する。この演算も浮動小数点演算として行われる。
[式16] Rc=R1/Yc
[式17] Gc=G1/Yc
[式18] Bc=B1/Yc
【0106】
そして、処理ブロック1093において、式19,式20,式21で示すように、正規化色信号(Rc,Gc,Bc)に対して、輝度信号補正部108によって生成された輝度補正信号Y2を乗算して、色輝度合成部109の出力信号である映像信号(R2,G2,B2)が生成される。なお、このとき同時に演算結果の整数化が行われる。
[式19] R2=Xc*Y2
[式20] G2=Yc*Y2
[式21] B2=Zc*Y2
【0107】
ここで、留意すべきは、正規化色信号(Rc,Gc,Bc)は線形特性を持つ信号であり、輝度補正信号Y2は非線形特性を持つ信号であるため、それらが合成された映像信号(R2,G2,B2)は非線形特性を持つ信号となることである。
【0108】
このとき、線形補正色信号(R1,G1,B1)と輝度補正信号Y2と映像信号(R2,G2,B2)の間には、式22,式23の関係式が成り立つ。但し、線形補正色信号(R1,G1,B1)と映像信号(R2,G2,B2)はともに飽和しておらず、なおかつ演算時のビット幅縮小に伴う誤差による影響は、十分小さいものとしている。
[式22] Y2=0.299R2+0.587G2+0.114B2
[式23] R1:G1:B1=R2:G2:B2
【0109】
式22は、映像信号(R2,G2,B2)と輝度補正信号Y2が3原色ベクトルとそれからなる輝度ベクトルの関係であることを表しており、映像信号(R2,G2,B2)が輝度補正信号Y2の持つ広ダイナミックレンジの輝度情報を保持していることを示している。
【0110】
また、式23は、線形補正色信号(R1,G1,B1)と映像信号(R2,G2,B2)の色の組成比(色相)が同一であることを表していて、さらに、式22と合わせて、輝度信号に対する信号強度(彩度)が同一であることを表している。すなわち、線形特性から非線形特性への変換の際に、線形色信号(R0,G0,B0)が有していた色再現性が保持されていることを示している。
【0111】
こうして生成された映像信号(R2,G2,B2)は、画像出力部110に表示されて、車両の乗員に提示される。
【0112】
(処理の流れの説明)
【0113】
次に、
図13のフローチャートを用いて、実施例1の一連の処理の流れを説明する。
【0114】
(ステップS10)信号分離部103から撮像素子102に対して、撮像タイミングが指示されて、撮像が行われる。
【0115】
(ステップS12)撮像素子102は、光学系101を透過した光を受光して、光電変換を行い、出力信号RAW0を出力する。
【0116】
(ステップS14)信号分離部103において、出力信号RAW0を同一の2つの出力信号RAW0,RAW0に分離する。
【0117】
(ステップS16)出力信号線形変換部104において、一方の出力信号RAW0を、線形性を有する線形化出力信号RAW1に変換する。
【0118】
(ステップS18)第1色分離部1051において、線形化出力信号RAW1をRGBC各色に対応する4つの信号に分離する。さらに、第1線形補間処理部1052において、分離の際に発生する空白の画素に対して、近傍の画素の値を用いて線形補間を行い、線形色信号(R0,G0,B0)を生成する。
【0119】
(ステップS20)近赤外光比率算出部1060において、線形色信号(R0,G0,B0,C0)の中に含まれる近赤外光成分の比率Rrを算出する。
【0120】
(ステップS22)近赤外光成分除去率テーブル1062を参照して、近赤外光成分の比率Rrに対応する近赤外光成分の除去率E(Rr)を算出する。
【0121】
(ステップS24)赤外分離部1053において、線形色信号(R0,G0,B0)から赤外光成分を分離して、赤外分離色信号を生成する。さらに、赤外分離色信号補正部1054で色補正を行って線形補正色信号(R1,G1,B1)を生成する。
【0122】
(ステップS26)第2色分離部1055(飽和抑制部)において、クリッピング処理を行い、さらに、第2線形補間処理部1056において、線形色信号(R0,G0,B0,C0)を生成する。
【0123】
(ステップS28)赤外含有色信号補正部1057において、第2線形補間処理部1056から出力される4つの色信号に対してリニアマトリクス演算を行い、色補正された4つの線形補正色信号を生成する。
【0124】
(ステップS30)飽和領域判定部1058a(色飽和検出部)において、線形化出力信号RAW1に対して飽和判定を行い、飽和画素、または飽和画素の周辺画素のみを表わす二値画像を生成する。
【0125】
(ステップS32)輝度信号生成部107において、出力信号RAW0から輝度信号Y1を生成する。
【0126】
(ステップS34)輝度信号補正部108において、輝度信号Y1に対してガンマ補正やヒストグラム補正等のコントラスト調整を実施して、輝度補正信号Y2を生成する。
【0127】
(ステップS36)色輝度合成部109において、線形補正色信号(R1,G1,B1)と輝度補正信号Y2を合成して映像信号(R2,G2,B2)を生成する。
【0128】
(ステップS38)生成された映像信号(R2,G2,B2)を、画像出力部110に出力する。
【0129】
以上、説明したように、実施例1に係る撮像装置10によれば、互いに異なる波長の光を選択的に通すフィルタを透過して、複数の画素からなる撮像素子102によって変換された出力信号RAW0の中から、近赤外光比率算出部1060によって、画素毎に算出された近赤外光成分の比率Rrに応じた除去率(割合)E(Rr)で、赤外分離部(近赤外光成分分離部)1053が、画素毎に近赤外光成分を除去して赤外分離信号(Ra,Ga,Ba)を生成するため、撮像素子102が受光した光の中の近赤外光成分の量に応じた近赤外光成分を除去することができる。これによって、受光した光の中に含まれる近赤外光成分の比率Rrによらずに、色ノイズの増大を抑制することができるとともに、色信号のSN比の低下を抑えることができる。これによって、広いダイナミックレンジと高い色再現性を両立した出力信号を得ることができる。
【0130】
さらに、可視光成分と近赤外光成分がともに含まれるハロゲン光源の信号機を観測するような場面にあっては、信号機の光軸正面に近い位置ほど入射光量が増加するため、接近中に色が変わってしまう虞があるが、実施例1に係る撮像装置10によれば、近赤外光成分が含まれる比率Rrに基づいて、近赤外光成分の除去率E(Rr)を設定するため、入射光量が変化したときであっても、同じ色で観測することができる。なお、このような場合、観測される可視光成分の量に応じて、色信号を補正(正規化)することも考えられるが、可視光成分の量が極端に少ない場合には、補正値が無限大になる等の計算上の弊害が発生する虞があるため、近赤外光成分の比率Rrを用いて処理するのが望ましい。
【0131】
また、実施例1に係る撮像装置10によれば、赤外分離部(近赤外光成分分離部)1053は、出力信号の中の近赤外光成分の比率Rrに対する近赤外光成分の除去率E(Rr)が記憶された近赤外光成分除去率テーブル1062に基づいて決定された除去率E(Rr)で、近赤外光成分を除去するため、少ない計算コストで簡便に除去率E(Rr)を決定することができる。
【0132】
また、実施例1に係る撮像装置10によれば、赤外分離部(近赤外光成分分離部)1053は、近赤外光成分の除去率E(Rr)を変化させる際には、除去率E(Rr)を近赤外光成分の比率Rrに応じて連続的に変化させるため、近赤外光成分の除去率E(Rr)が大きく切り替わる部分において大きな色の差が発生して、空や路面のようにほぼ均一な輝度分布を有する領域の中に境目が生じるのを防止することができる。
【0133】
なお、実施例1は、撮像素子102が、4種類のフィルタ(赤色フィルタR,緑色フィルタG,青色フィルタB,透明フィルタC)からなる光学フィルタを有するものとして説明したが、この光学フィルタは、例えば、近赤外光を含む可視光全体を透過する透明フィルタCの代わりに、近赤外光のみを透過する近赤外フィルタIrを有する構成としても同様の効果を奏する。
【0134】
さらに、実施例1は撮像素子102が原色系の色フィルタを有するものとして説明したが、これは、補色系の色フィルタを用いても実現可能である。
【0135】
また、実施例1は赤外分離色信号補正部1054、赤外含有色信号補正部1057において色補正処理を行い、輝度信号補正部108において輝度補正処理を行う構成としたが、この色補正と輝度補正は、必要に応じて適宜実施すればよい。
【0136】
さらに、実施例1は全く同一の画像データである出力信号RAW0を色信号と輝度信号に分離し、合成する例を示したが、色信号と輝度信号は全く同一の画像データから生成されなくてもよい。例えば、撮像素子側で色信号用と輝度信号用に入出力特性を連続的に切り替えて撮像を行い、撮像された異なる2枚の画像を用いて合成を行ってもよいし、また、撮像範囲がほぼ等しい2つの撮像素子を用いて、色信号用と輝度信号用に2つの異なる入出力特性の画像を撮像して、合成を行うことも可能である。
【0137】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。