(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色を低減させるプロセスであって、前記フッ素化ポリマー樹脂は、水性分散媒体中炭化水素系界面活性剤の存在下のフルオロモノマーを重合して水性フッ素化ポリマー分散体を形成するステップ、前記水性分散媒体から湿潤形態のフッ素化ポリマー樹脂を分離することにより前記水性分散媒体から前記フッ素化ポリマー樹脂を単離するステップ、および、乾燥させて乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂を生成するステップにより生成され、
前記プロセスは、
湿潤形態の前記フッ素化ポリマー樹脂をオゾン富化ガスで前処理するステップ、ならびに
乾燥形態の前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップ
を含み、
前記水性フッ素化ポリマー分散体が、前記熱誘起変色を引き起こす炭化水素系界面活性剤を含有し、
前記炭化水素系界面活性剤は式R−L−M(式中、Rは6〜17個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であり、Lは、−ArSO3-、−SO3-、−SO4-、−PO3-、−PO4-および−COO-からなる群から選択され、ならびに、Mは、H+、Na+、K+およびNH4+であることが好ましい一価カチオンであり、Arはアリール基である)により表されるアニオン性界面活性剤であり、
前記フッ素化ポリマー樹脂が、CIELABカラースケールで、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された同等の商業的品質のフッ素化ポリマー樹脂のL*値よりも少なくとも約4Lユニット低い初期熱誘起変色値(L*i)を有するプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
フルオロモノマー/フッ素化ポリマー
フッ素化ポリマー樹脂は、フルオロモノマーを水性媒体中で重合して水性フッ素化ポリマー分散体を形成することにより生成される。フッ素化ポリマーは、少なくとも1種のフッ素化モノマー(フルオロモノマー)(すなわち、モノマーの少なくとも1種がフッ素を含有し、少なくとも1個のフッ素またはフルオロアルキル基が二重結合炭素に結合しているオレフィンモノマーであることが好ましい)から形成される。フッ素化モノマーおよびこれらから得られるフッ素化ポリマーは各々、少なくとも35重量%のF、好ましくは少なくとも50重量%のFを含有していることが好ましく、フッ素化モノマーは、好ましくは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)およびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)、ならびに、これらの混合物からなる群から独立して選択される。好ましいパーフルオロアルキルエチレンモノマーはパーフルオロブチルエチレン(PFBE)である。好ましいフルオロビニルエーテルとしては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー(PAVE)が挙げられる。エチレンおよびプロピレンなどの非フッ素化オレフィンコモノマーをフッ素化モノマーと共重合させることが可能である。
【0010】
フルオロビニルエーテルはまた、フッ素化ポリマーへの官能基の導入に有用なものを含む。これらとしては、CF
2=CF−(O−CF
2CFR
f)
a−O−CF
2CFR’
fSO
2Fが挙げられ、式中、R
fおよびR’
fは、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から独立して選択され、a=0、1または2である。この種のポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書(CF
2=CF−O−CF
2CF(CF
3)−O−CF
2CF
2SO
2F、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンフッ化スルホニル))、および、米国特許第4,358,545号明細書および同4,940,525号明細書(CF
2=CF−O−CF
2CF
2SO
2F)に開示されている。他の例は、米国特許第4,552,631号明細書に開示されている、CF
2=CF−O−CF
2−CF(CF
3)−O−CF
2CF
2CO
2CH
3、パーフルオロ(4,7−ジオキサ−5−メチル−8−ノネンカルボン酸)のメチルエステルである。ニトリル、シアネート、カルバメートおよびホスホン酸の官能基を有する同様のフルオロビニルエーテルが、米国特許第5,637,748号明細書;同6,300,445号明細書;および、同6,177,196号明細書に開示されている。
【0011】
熱誘起変色の低減に有用な好ましいクラスのフッ素化ポリマーは、コモノマー、末端基または側基構造が可能性のある例外であるが、ポリマーの鎖または主鎖を形成する炭素原子上の一価置換基のすべてがフッ素原子である過フッ素化ポリマーである。好ましくは、コモノマー、末端基または側基構造は、過フッ素化ポリマーの総重量と比して、最大で2重量%C−H部分、より好ましくは最大で1重量%C−H部分を構成することとなる。好ましくは、存在する場合、過フッ素化ポリマーの水素含有量は、過フッ素化ポリマーの総重量に基づいて0.2重量%以下である。
【0012】
本発明は、変性PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフッ素化ポリマーの熱誘起変色の低減に有用である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、(a)顕著なコモノマーが有意な量で伴うことなく単独で重合されたテトラフルオロエチレン、すなわちホモポリマー、および、(b)得られるポリマーの融点がPTFEの融点よりも実質的に低くなることがないほどに低濃度でコモノマーを含むTFEのコポリマーである変性PTFEを指す。変性PTFEは、結晶性を低減させて焼成(融解)中におけるフィルム形成能を向上させる少量のコモノマー変性剤を含有する。このようなモノマーの例としては、パーフルオロオレフィン、特に、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(ここで、アルキル基は1〜5個の炭素原子を含有する)が挙げられ、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましく、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、または、ポリマー分子にかさ高い側基を導入する他のモノマーが好ましい。このようなコモノマーの濃度は、PTFE中に存在するTFEおよびコモノマーの総重量に基づいて、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。顕著な効果を実現するためには、最低で少なくとも約0.05重量%の量を用いることが好ましい。PTFE(および変性PTFE)は、典型的には、少なくとも約1×10
6Pa・s、好ましくは少なくとも1×10
8Pa・sの溶融クリープ粘度を有し、このような高い溶融粘度では、ポリマーは溶融状態でも流動性を有さず、従って、溶融加工性ポリマーではない。溶融クリープ粘度の測定は、米国特許第7,763,680号明細書の第4欄に開示されている。PTFEの高い溶融粘度は、例えば少なくとも10
6といったきわめて高い分子量(Mn)に起因する。PTFEはまた、最初の加熱時における少なくとも330℃というその高い溶融温度によって特徴付けられることが可能である。そのきわめて高い溶融粘度に起因するPTFEの非溶融流動性のため、ASTM D1238に従い372℃で5kgの重りを用いてメルトフローレート(MFR)を計測した場合には不溶融流動性状態となり、すなわち、MFRは0である。PTFEの高分子量は、その標準比重(SSG)を計測することにより特徴付けられる。SSG計測法(ASTM D4894、米国特許第4,036,802号明細書にも記載されている)は、自立(格納されていない)するSSGサンプルを、SSGサンプルにおける寸法変化を伴わないその溶融温度より高い温度で焼結するステップを含む。SSGサンプルは焼結ステップ中に流動することはない。
【0013】
本発明のプロセスはまた、通例PTFEミクロ粉末として公知であり、上記のPTFEとは区別される低分子量PTFEの熱誘起変色の低減に有用である。PTFEミクロ粉末の分子量はPTFEと比較して低く、すなわち、分子量(Mn)は一般に10
4〜10
5の範囲内である。PTFEミクロ粉末は分子量が低いことにより、結果として、非溶融流動性ではないPTFEとは対照的に、溶融状態において流動度を有する。PTFEミクロ粉末は溶融流動性を有し、これは、溶融ポリマーに対する、372℃で5kgの重りを用いるASTM D1238に従う計測による、少なくとも0.01g/10分、好ましくは少なくとも0.1g/10分、より好ましくは少なくとも5g/10分、および、さらにより好ましくは少なくとも10g/10分のメルトフローレート(MFR)によって特徴付けられることが可能である。
【0014】
本発明は、溶融二次加工可能でもある溶融加工性フッ素化ポリマーの熱誘起変色の低減に特に有用である。溶融加工性とは、フッ素化ポリマーが、溶融状態で加工可能であること、すなわち、押出し機および射出成形機などの従来の加工器具を用いて、溶融物からフィルム、繊維およびチューブなどの付形物品に二次加工されることが可能であることを意味する。溶融二次加工可能とは、得られる二次加工物品が、その意図される用途について有用である十分な強度および靭性を示すことを意味する。この十分な強度は、米国特許第5,703,185号明細書に開示されている計測で少なくとも1000サイクル、好ましくは少なくとも2000サイクルのMIT Flex Lifeを単独で示すフッ素化ポリマーによって特徴付けられ得る。これにより、フッ素化ポリマーの強度は脆性ではないことが示されている。
【0015】
このような溶融加工性フッ素化ポリマーの例としては、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのホモポリマー、または、テトラフルオロエチレン(TFE)と、通常は、コポリマーの融点を実質的にPTFEよりも下げる(例えば、315℃以下の溶融温度)のに十分な量でポリマー中に存在する少なくとも1種のフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。
【0016】
溶融加工性TFEコポリマーにおいては、典型的には、溶融ポリマーに対するASTM D−1238に従う5kgの重りを用いる計測で0.1〜200g/10分のメルトフローレート(MFR)、および、特定のコポリマーについて標準的である溶融温度を有するコポリマーがもたらされるよう、一定量のコモノマーがコポリマーに組み込まれている。MFRは、好ましくは1〜100g/10分、最も好ましくは約1〜約50g/10分の範囲であろう。追加の溶融加工性フッ素化ポリマーは、エチレン(E)またはプロピレン(P)と、TFEまたはCTFEとのコポリマー、特にETFEおよびECTFEである。
【0017】
本発明の実施における使用に好ましい溶融加工性コポリマーは、少なくとも40〜99mol%のテトラフルオロエチレンユニットおよび1〜60mol%の少なくとも1種の他のモノマーを含む。追加の溶融加工性コポリマーは、60〜99mol%のPTFEユニットおよび1〜40mol%の少なくとも1種の他のモノマーを含むものである。過フッ素化ポリマーを形成するためにTFEを伴う好ましいコモノマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの好ましくは3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、および/または、直鎖または分岐鎖アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)といった過フッ素化モノマーである。好ましいPAVEモノマーはアルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは、数種のPAVEモノマーを用いて形成可能である。好ましいTFEコポリマーとしては、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVEが挙げられ、ここで、PAVEは、PEVEおよび/またはPPVE、MFA(PAVEのアルキル基が少なくとも2個の炭素原子を有するTFE/PMVE/PAVE)およびTHV(TFE/HFP/VF
2)である。
【0018】
これらの溶融加工性フッ素化ポリマーはすべて、溶融加工性TFEコポリマーについて上記に言及されているMFRによって特徴付けられることが可能であり、すなわち、PFAおよびFEPのMFR測定用の可塑度計中の溶融ポリマーに対する5kgの重しを含む特定のポリマーに係る標準状態を用いるASTM1238法によって特徴付けられることが可能である。
【0019】
さらに有用なポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のフィルム形成性ポリマー、および、フッ化ビニリデンのコポリマー、ならびに、ポリフッ化ビニル(PVF)およびフッ化ビニルのコポリマーである。
【0020】
本発明はまた、フルオロカーボンエラストマー(フルオロエラストマー)の熱誘起変色を低減する場合に有用である。これらのエラストマーは、典型的には、25℃未満のガラス転移温度を有し、室温で結晶性をほとんどまたはまったく示さず、また、溶融温度をほとんどまたはまったく示さない。本発明のプロセスにより形成されるフルオロエラストマーは、典型的には、フルオロエラストマーの総重量に基づいて、フッ化ビニリデン(VF
2)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であり得る第1のフッ素化モノマーの共重合された単位を25〜75重量%含有するコポリマーである。フルオロエラストマー中の残りのユニットは、フッ素化モノマー、炭化水素系オレフィンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、第1のモノマーとは異なる1種以上の追加の共重合されたモノマーを含む。フルオロエラストマーはまた、任意選択により、1種以上の硬化部位モノマーのユニットを含み得る。存在する場合、共重合された硬化部位モノマーは、典型的には、フルオロカーボンエラストマーの総重量に基づいて、0.05〜7重量%のレベルで存在する。好適な硬化部位モノマーの例としては:i)臭素−、ヨウ素−または塩素−含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;ii)ニトリル基−含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;iii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニルエーテル);および、iv)非共役ジエンが挙げられる。
【0021】
好ましいTFE系フルオロエラストマーコポリマーとしては、TFE/PMVE、TFE/PMVE/E、TFE/PおよびTFE/P/VF
2が挙げられる。好ましいVF
2系フルオロカーボンエラストマーコポリマーとしては、VF
2/HFP、VF
2/HFP/TFEおよびVF
2/PMVE/TFEが挙げられる。これらのエラストマーコポリマーはいずれも、硬化部位モノマーのユニットをさらに含んでいてもよい。
【0022】
炭化水素系界面活性剤
本発明の一実施形態において、フッ素化ポリマー樹脂の形成に用いられる水性フッ素化ポリマー分散媒体は、フッ素化ポリマー樹脂が単離および加熱される際に樹脂において熱誘起変色を引き起こす炭化水素系界面活性剤を含有する。炭化水素系界面活性剤は、疎水性フッ素化ポリマー粒子を水性媒体中に分散および安定化させる疎水性部分および親水性部分を有する化合物である。炭化水素系界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であることが好ましい。アニオン性界面活性剤は、カルボキシレート、スルホネートまたは硫酸塩などの負荷電親水性部分と、疎水性部分としてアルキルなどの長鎖炭化水素部分とを有する。炭化水素系界面活性剤は、度々、界面活性剤の疎水性部分が粒子に向かい、界面活性剤の親水性部分が水相中にあるよう配向されるよう粒子をコーティングすることにより、ポリマー粒子を安定化させる役割を果たす。アニオン性界面活性剤によれば、荷電されており、ポリマー粒子間に電荷の反発力がもたらすことによって、この安定化が増強される。界面活性剤は、典型的には、界面活性剤を含有する水性媒体の表面張力を顕著に低減させる。
【0023】
アニオン性炭化水素系界面活性剤の一例は、Resolution Performance ProductsによってVersatic(登録商標)10として提供されている高分岐C10第3級カルボン酸である。
【0025】
他の有用なアニオン性炭化水素系界面活性剤は、Avanel(登録商標)SシリーズとしてBASFにより提供されている直鎖アルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウムである。エチレンオキシド鎖が界面活性剤にノニオン性特徴をもたらし、スルホネート基が一定のアニオン性特徴をもたらす。
【0027】
炭化水素系界面活性剤の他の群は、式R−L−M(式中、Rは6〜17個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であることが好ましく、Lは、−ArSO
3−、−SO
3−、−SO
4−、−PO
3−、−PO
4−および−COO
−からなる群から選択され、ならびに、Mは、H
+、Na
+、K
+およびNH
4+であることが好ましい一価カチオンである)により表されるアニオン性界面活性剤である。−ArSO
3−は、アリールスルホネートである。これらの界面活性剤のうち、式CH
3−(CH
2)
n−L−M(式中、nは6〜17の整数であり、および、Lは、−SO
4M、−PO
3M、−PO
4Mまたは−COOMから選択され、LおよびMは上記のとおり同一の意味を有する)により表されるものが好ましい。R−L−M界面活性剤(式中、R基は12〜16個の炭素原子を有するアルキル基であり、および、式中、Lは硫酸塩である)およびこれらの混合物が特に好ましい。特に好ましいR−L−M界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。商業用途のためには、SDS(時にラウリル硫酸ナトリウムまたはSLSとも称される)は、典型的には、ココナッツ油またはパーム核油供給材料から得られ、主にドデシル硫酸ナトリウムを含有するが、R基が異なる他のR−L−M界面活性剤を微量で含有していてもよい。本明細書において用いられるところ、「SDS」とは、主にドセシル硫酸ナトリウム(sodium docecyl sulphate)であって、R基が異なる他のR−L−M界面活性剤を微量で含有するドデシル硫酸ナトリウムまたは界面活性剤混合物を意味する。
【0028】
本発明において有用なアニオン性炭化水素系界面活性剤の他の例は、Akzo Nobel Surface Chemistry LLCから入手可能であるスルホコハク酸塩界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300である。この界面活性剤は以下であると報告されている:
ブタンニ酸、スルホ−、4−(1−メチル−2−((1−オキソ−9−オクタデセニル)アミノ)エチル)エステル、ジナトリウム塩;CAS No.:67815−88−7。
【0029】
本発明において有用である追加のスルホコハク酸塩炭化水素系界面活性剤は、ClariantからEmulsogen(登録商標)SB10として入手可能であるジイソデシルスルホコハク酸塩、Na塩、および、Cesapinia ChemicalsからPolirol(登録商標)TR/LNAとして入手可能であるジイソトリデシルスルホコハク酸塩、Na塩である。
【0030】
他の好ましいクラスの炭化水素系界面活性剤はノニオン性界面活性剤である。ノニオン性界面活性剤は荷電基を含有しないが、典型的には長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。ノニオン性界面活性剤の親水性部分は、典型的には、エチレンオキシドとの重合により誘導されるエチレンエーテル鎖などの水溶性官能基を含有する。安定化という文脈において、界面活性剤は、界面活性剤の疎水性部分が粒子に向かい、界面活性剤の親水性部分が水相中にあるよう配向されるよう粒子をコーティングすることにより、ポリマー粒子を安定化させる。
【0031】
ノニオン性炭化水素系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、これらの誘導体等が挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等であり;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等であり;ポリオキシエチレンアルキルエステルの例は、ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等であり;ソルビタンアルキルエステルの例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等であり;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等であり;および、グリセロールエステルの例は、グリセロールモノミリステート、モノステアリン酸グリセロール、グリセロールモノオレエート等である。また、これらの誘導体の例は、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル−ホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルエステルが特に好ましい。このようなエーテルおよびエステルの例は、10〜18のHLB値を有するものである。より具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:5〜20。EOはエチレンオキシドユニットを指す。)、ポリエチレングリコールモノステアレート(EO:10〜55)およびポリエチレングリコールモノオレエート(EO:6〜10)が好ましい。
【0032】
好適なノニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Dow Chemical Companyにより供給されるTriton(登録商標)Xシリーズなどのオクチルフェノールエトキシレートが挙げられる。
【0034】
好ましいノニオン性炭化水素系界面活性剤は、Dow Chemical Companyにより供給されるTergitol(登録商標)15−Sシリーズなどの分岐アルコールエトキシレート、および、同じくDow Chemical Companyにより供給されるTergitol(登録商標)TMNシリーズなどの分岐第2級アルコールエトキシレートである。
【0036】
Dow Chemical Companyにより供給されるTergitol(登録商標)Lシリーズ界面活性剤などのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーもまた本発明におけるノニオン性界面活性剤として有用である。
【0037】
好適なノニオン性炭化水素系界面活性剤のさらに他の有用な群は、
【0039】
などのBASFからPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能性ブロックコポリマーである。
【0040】
好適なノニオン性炭化水素系界面活性剤の他の群は、BASF CorporationからIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレートである。
【0042】
好ましい実施形態において、炭化水素系界面活性剤の炭素原子上のすべての一価置換基は水素である。炭化水素系界面活性剤は、フッ素または塩素などのハロゲン置換基を基本的に含んでいないことが好ましい。従って、周期律表からの元素として、界面活性剤の炭素原子上の一価置換基は、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、および、より好ましくは少なくとも95%が水素である。最も好ましくは、周期律表の元素として、炭素原子上の一価置換基の100%が水素である。しかしながら、一実施形態においては、多数の炭素原子がハロゲン原子を微量で含有していることが可能である。
【0043】
炭素原子上の一価置換基のうちごく少数のみが水素ではなくフッ素である、本発明において有用な炭化水素含有界面活性剤の例は、以下に記載の、Omnova Solutions,Inc.から入手可能であるPolyFox(登録商標)界面活性剤である。
【0046】
重合プロセス
本発明の実施に関して、フッ素化ポリマー樹脂は、フルオロモノマーを重合することにより生成される。重合は、水性フッ素化ポリマー分散体を生成する加圧重合反応器中において好適に実施され得る。バッチまたは連続プロセスが用いられ得るが、商業的生産にはバッチプロセスがより一般的である。反応器は、水性媒体用撹拌機と、制御された温度熱交換媒体が循環されることにより反応温度が簡便に制御され得るよう、反応器を囲うジャケットとを備えていることが好ましい。水性媒体は脱イオンおよび脱気水であることが好ましい。反応器の温度、それ故水性媒体の温度は約25〜約120℃であることが好ましいであろう。
【0047】
重合を実施するために、反応器は、典型的には、フルオロモノマーで加圧されて、反応器の内部圧力が、一般に、約30〜約1000psig(0.3〜7.0MPa)の範囲内である操作圧力に高められる。次いで、ラジカル重合開始剤の水溶液が、重合反応のキックオフをもたらす、すなわち重合反応を生起させるのに十分な量で反応器中に圧送されることが可能である。利用される重合開始剤は、水溶性ラジカル重合開始剤であることが好ましい。TFEのPTFEへの重合に関しては、好ましい開始剤は、微量の過硫酸アンモニウムなどの無機過硫酸塩などの高度に活性な開始剤を伴って、例えば少なくとも約200ppmとキックオフをもたらすために多くの量が必要とされるジコハク酸パーオキシド(DSP)などの有機過酸である。FEPおよびPFAなどのTFEコポリマーについては、過硫酸アンモニウムなどの無機過硫酸塩が一般に用いられる。キックオフを生じさせるために添加される開始剤は、重合反応の進行に伴って反応器に追加の開始剤溶液を圧送することによって補助されることが可能である。
【0048】
変性PTFEおよびTFEコポリマーの生成に関して、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの比較的不活性のフルオロモノマーは、より活性なTFEフルオロモノマーによって加圧される前に、反応器中に既に存在していることが可能である。キックオフの後、典型的には、TFEは、反応器の内部圧力を操作圧力で維持するために反応器に供給される。所望の場合には、HFPまたはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などの追加のコモノマーが、反応器に圧送されることが可能である。水性媒体は、典型的には、所望の重合反応速度が達成され、また、存在する場合には、コモノマーの均一な組込みが達成されるよう撹拌される。分子量の制御が所望される場合には、連鎖移動剤が反応器に導入可能である。
【0049】
本発明の一実施形態において、水性フッ素化ポリマー分散体は、炭化水素系界面活性剤の存在下に重合される。炭化水素系界面活性剤は、水性フッ素化ポリマー分散体は炭化水素系界面活性剤の存在下で重合されるため、すなわち、炭化水素系界面活性剤は重合中に安定化界面活性剤として用いられるため、フッ素化ポリマー分散体中に存在していることが好ましい。所望の場合には、フルオロアルカンカルボン酸もしくは塩、または、フルオロエーテルカルボン酸もしくは塩などのフッ素系界面活性剤が、安定化界面活性剤として炭化水素系界面活性剤と一緒に利用され得、従って、生成される水性フッ素化ポリマー分散体中に存在していてもよい。本発明の実施に関して好ましくは、フッ素化ポリマー分散体は、フッ素系界面活性剤などのハロゲン含有界面活性剤を含有していないことが好ましく、すなわち、約300ppm未満、より好ましくは約100ppm未満、および、最も好ましくは50ppm未満のハロゲン含有界面活性剤を含有していることが好ましい。
【0050】
炭化水素系界面活性剤を安定化界面活性剤として利用する重合プロセスにおいて、安定化界面活性剤の添加は、キックオフが生じた後まで遅らされることが好ましい。遅らされる程度は、用いられる界面活性剤および重合されるフルオロモノマーに応じることとなる。加えて、炭化水素系界面活性剤は、重合が進行するに伴って反応器に供給、すなわち、計量されることが好ましい。生成される水性フッ素化ポリマー分散体中に存在する炭化水素系界面活性剤の量は、フッ素化ポリマー固形分に基づいて、好ましくは10ppm〜約50,000ppm、より好ましくは約50ppm〜約10,000ppm、最も好ましくは約100ppm〜約5000ppmである。
【0051】
所望の場合には、炭化水素系界面活性剤は、重合反応器への添加の前後もしくはその最中に不活化されることが可能である。不活化とは、炭化水素含有界面活性剤のテロゲン性挙動を低減させることを意味する。不活化は、前記炭化水素含有界面活性剤と過酸化水素または重合開始剤といった酸化剤とを反応させることによって実施され得る。好ましくは、炭化水素含有界面活性剤の不活化は、不活化補助剤、好ましくは金属イオンの形態の金属、最も好ましくは、第一鉄イオンまたは第一銅イオンの存在下で実施される。
【0052】
所望の量の分散フッ素化ポリマーまたは固形分含有量が達成された重合の完了後(典型的には、バッチプロセスで数時間)、供給が停止され、反応器がベントされ、反応器中のフッ素化ポリマー粒子の粗分散体が冷却または保持容器に移される。
【0053】
重合生成された水性フッ素化ポリマー分散体の固形分含有量は、約10重量%〜約65重量%以下であるが、典型的には、約20重量%〜45重量%の範囲であることが可能である。水性フッ素化ポリマー分散体中のフッ素化ポリマー粒子の粒径(Dv(50))は、10nm〜400nm範囲であることが可能であり、好ましくはDv(50)は約100〜約400nmである。
【0054】
フッ素化ポリマーの単離は、水性フッ素化ポリマー分散体からの湿潤フッ素化ポリマー樹脂の分離を含む。水性フッ素化ポリマー分散体からの湿潤フッ素化ポリマー樹脂の分離は、特にこれらに限定されないがゲル化、凝析、凍結および解凍、ならびに、溶剤補助ペレット化(SAP)を含む多様な技術によって達成可能である。湿潤フッ素化ポリマー樹脂の分離が凝析によって実施される場合、重合されたままの分散体が、先ず、重合された濃度から希釈され得る。次いで、撹拌を利用することにより十分なせん断ひずみが好適に分散体に与えられて凝析が引き起こされ、これにより、不分散フッ素化ポリマーが生成される。所望の場合には、炭酸アンモニウムなどの塩が、凝析を補助するために分散体に添加されることが可能である。ろ過を用いて水性媒体の少なくとも一部を湿潤フッ素化ポリマー樹脂から除去することが可能である。分離は、フッ素化ポリマーの顆粒化粒子をもたらす米国特許第4,675,380号明細書に記載の溶剤補助ペレット化によって行われることが可能である。
【0055】
フッ素化ポリマーの単離ステップは、典型的には、フッ素化ポリマー樹脂中に保持されている水性媒体を除去するための乾燥ステップを含む。湿潤フッ素化ポリマー樹脂が分散体から分離された後、湿潤形態のフッ素化ポリマー樹脂は、水性媒体を、例えば60重量%以下といった顕著な量で含んでいることが可能である。乾燥ステップにより、基本的にすべての水性媒体が除去されて乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂がもたらされる。所望の場合には、湿潤フッ素化ポリマー樹脂はすすがれ、また、プレスにかけられて、水性媒体含有量を低減させ、乾燥ステップにおいて必要とされるエネルギーおよび時間が削減されてもよい。
【0056】
溶融加工性フッ素化ポリマーに関し、湿潤フッ素化ポリマー樹脂は乾燥され、溶融加工作業において直接用いられるか、または、その後の溶融加工作業における使用のためにチップもしくはペレットなどの簡便な形態に加工される。一定のグレードのPTFE分散体が微粉末の生成のために形成される。この用途のために、分散体が凝析され、水性媒体が除去され、PTFEが乾燥されて微粉末が生成される。微粉末に関しては、最終的な使用における加工のためのPTFEの特性に悪影響を及ぼさない条件が、単離中において好適に利用される。撹拌中の分散体におけるせん断ひずみは適切に制御され、PTFEの焼結温度よりもかなり低い200℃未満の温度が、乾燥ステップに利用される。
【0057】
熱誘起変色の低減
本発明に従って熱誘起変色を低減させるために、湿潤もしくは乾燥形態であり得る水性フッ素化ポリマー分散体および/またはフッ素化ポリマー樹脂は前処理され、および、乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂がフッ素に曝露される。本明細書において用いられるところ、「および/または」という用語は、2つ以上の事項の列挙において用いられる場合、列挙されている事項のいずれかの1つが単独で採用可能であるか、または、列挙されている事項の2つ以上のいずれかの組み合わせが採用可能であることを意味する。それ故、本発明に関して、水性フッ素化ポリマー分散体、フッ素化ポリマー樹脂の一方または水性フッ素化ポリマー分散体およびフッ素化ポリマー樹脂の両方が前処理可能である。好ましくは、本発明のプロセスは、CIELABカラースケールにおけるL
*の変化%による計測で、熱誘起変色を少なくとも約10%低減させる。以下の試験法において詳述されているとおり、フッ素化ポリマー樹脂サンプルのL
*の変化%は、International Commission on Illumination(CIE)によって規定されているCIELABカラースケールを用いて判定される。より好ましくは、本プロセスは、L
*の変化%による計測で、少なくとも約20%、さらにより好ましくは少なくとも約30%、および、最も好ましくは少なくとも約50%熱誘起変色を低減させる。
【0058】
本発明によれば、水性フッ素化ポリマー分散体および/またはフッ素化ポリマー樹脂は、好ましくは、水性フッ素化ポリマー分散体および/またはフッ素化ポリマー樹脂を酸化剤に曝露させることにより前処理される。本発明の実施において、前処理は、その後の乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップを伴わずに単独で利用される場合には、L
*の変化%による計測で熱誘起変色の低減がもたらされるものであってもなくてもよい。しかも、その後の乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップが伴わない前処理単独では、フッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色が増大し得る、すなわち、変色が悪化することが可能である。しかしながら、前処理と本発明に係る乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップとの組み合わせの相加的効果は、乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップのみによってもたらされた熱誘起変色の低減に対して向上をもたらすことが可能である。前処理ステップと、乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップとの組み合わせによってもたらされるCIELABカラースケールにおけるL
*の変化%により計測される熱誘起変色の低減は、乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂を同量のフッ素に曝露させることのみによってもたらされるCIELABカラースケールにおけるL
*の変化%よりも好ましくは少なくとも約10%大きく、より好ましくは少なくとも約20%大きく、さらにより好ましくは少なくとも約30%大きく、最も好ましくは少なくとも約50%大きい。好ましくは、前処理は、熱誘起変色を所望のレベルに低減させるために必要とされるフッ素の量を低減させる。好ましくは、熱誘起変色の所与のレベルの低減のために、前処理ステップと、乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップとの組み合わせは、乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップのみと比してフッ素の必要量を約10%低減させる。より好ましくは、前処理は、フッ素の必要量を約25%低減させる。最も好ましくは、前処理は、フッ素の必要量を約50%低減させる。
【0059】
水性フッ素化ポリマー分散体の前処理は多様な技術によって達成可能である。好ましい前処理の1種は、酸素源の存在下で水性フッ素化ポリマー分散体を紫外光に露光させるステップを含む。用いられる器具に応じ、変色の低減に関して、紫外光の露光は希釈された分散体に対してより効果的であることが可能であるために、この前処理を実施するために、水性フッ素化ポリマー分散体は、先ず、重合された水性フッ素化ポリマー分散体の濃度未満の濃度に水で希釈されることが好ましい。好ましい濃度は、約2重量パーセント〜約30重量パーセント、より好ましくは約2重量パーセント〜約20重量パーセントである。
【0060】
紫外光は、波長範囲または約10nm〜約400nmを有し、また、UVA(315nm〜400nm)、UVB(280nm〜315nm)およびUVC(100nm〜280nm)を含むバンドを有すると記載されている。好ましくは、利用される紫外光は、UVCバンド中の波長を有する。
【0061】
種々のタイプの紫外ランプのいずれも、紫外光源として使用可能である。例えば、池における藻類および細菌の増殖を防除する目的のために販売されている水中UVクラリファイア/滅菌器ユニットが市販されており、この前処理の実施のために使用され得る。これらのユニットとしては、水循環用の筐体中の低圧水銀UVCランプが挙げられる。このランプは、紫外光を露光するために筐体中を水が循環可能であるよう石英管によって保護されている。この種の水中UVクラリファイア/滅菌器ユニットは、例えば、Pondmasterのブランド名でIslandia NYのDanner Manufacturing,Inc.によって販売されている。連続処理プロセスのために、分散体をこの種のユニット中で循環させて、紫外光を分散体に露光させることが可能である。単一パスまたはマルチパス処理を利用することが可能である。
【0062】
分散体はまた、酸素源の存在下での紫外光に対する露光に好適な容器中においてバッチ操作で処理可能である。この前処理においては、好適に保護された紫外ランプが分散体中に浸漬されることが望ましい。例えば、フッ素化ポリマー樹脂を生成するための水性フッ素化ポリマー分散体の凝析に通常用いられる容器を、紫外ランプをこの容器中に保持された分散体の中に浸漬することにより、この前処理のプロセスの実施に用いることが可能である。所望の場合には、分散体は、紫外光に対する露光を促進するために循環または撹拌されることが可能である。酸素源が以下に考察されているガスである場合、循環は、酸素源を分散体中に射出することにより達成または増進され得る。水中UVクラリファイア/滅菌器ユニットにおいて利用されるタイプの保護用石英管を備える紫外ランプは、筐体から取り出された後に分散体中に浸漬するために利用可能である。中圧水銀ランプなどの他の紫外ランプもまた、石英製フォトウェル(photowell)中にランプを封入することなどにより、ランプを分散体中への浸漬用に好適に保護して用いられることが可能である。ホウケイ酸ガラス製フォトウェルを用いることも可能であるが、これは、UVCおよびUVBバンドにおける紫外光のフィルタとなって効果を低減させてしまう場合がある。好適な中圧水銀ランプは、Fairfield,New JerseyのHanoviaにより販売されている。
【0063】
この前処理について用いられるところ、「酸素源」とは、利用可能な酸素のいずれかの化学的供給源を意味する。「利用可能な酸素」とは、酸化剤として反応可能な酸素を意味する。この前処理に係る利用される酸素源は、空気、富酸素ガス、オゾン含有ガスおよび過酸化水素からなる群から選択されることが好ましい。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。
【0064】
この前処理の実施に関して、好ましい酸素源の1つはオゾン含有ガスである。この前処理の実施に係る他の好ましい酸素源は過酸化水素である。紫外光に対する露光の最中に分散体中に酸素源を存在させるために、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスを、分散体中に連続または間欠的に(好ましくは化学量論的過剰量で)射出することで、紫外光に対する露光の最中に酸素源を提供することが可能である。過酸化水素溶液を添加することにより、過酸化水素を、同様に好ましくは化学量論的過剰量で、分散体に添加することが可能である。過酸化水素の濃度は、分散体中のフッ素化ポリマー固形分に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%であることが好ましい。
【0065】
酸素源を伴う紫外光は周囲温度または温和な温度で効果的であり、それ故、典型的には、この前処理の実施に高温は必要とされない。この前処理の好ましい形態において、酸素源の存在下で水性フッ素化ポリマー分散体を紫外光に露光させるステップは、約5℃〜約70℃、好ましくは約15℃〜約70℃の温度で実施される。
【0066】
この前処理を実施する時間は、用いられる紫外光の出力、酸素源の種類、処理条件等を含む要因によって様々であろう。この前処理に係る好ましい時間は約15分間〜約10時間である。
【0067】
他の好ましい前処理は、酸素源および光触媒の存在下で、水性フッ素化ポリマー分散体を10nm〜760nmの波長を有する光に露光させるステップを含む。用いられる器具に応じ、変色の低減に関して、光の露光は希釈された分散体に対してより効果的であることが可能であるために、この前処理の実施に関して、水性フッ素化ポリマー分散体は、先ず、重合された水性フッ素化ポリマー分散体の濃度より低い濃度に水で希釈されることが好ましい。好ましい濃度は、約2重量パーセント〜約30重量%、より好ましくは約2重量パーセント〜約20重量パーセントである。
【0068】
この前処理に従って利用される光は、波長範囲または約10nm〜約760nmを有する。この波長範囲は、約10nm〜約400nmの波長範囲を有する紫外光を含む。紫外光は、波長範囲または約10nm〜約400nmを有し、また、UVA(315nm〜400nm)、UVB(280nm〜315nm)およびUVC(100nm〜280nm)を含むバンドを有すると記載されている。この前処理従って利用される光はまた、約400nm〜約760nmの波長範囲を有する可視光を含む。
【0069】
種々のタイプのランプのいずれも光源として用いられることが可能である。例えば、池における藻類および細菌の増殖を防除する目的のために販売されている水中UVクラリファイア/滅菌器ユニットが市販されており、この前処理の実施のために使用され得る。これらのユニットとしては、水循環用の筐体中の低圧水銀UVCランプが挙げられる。このランプは、紫外光を露光するために筐体中を水が循環可能であるよう石英管によって保護されている。この種の水中UVクラリファイア/滅菌器ユニットは、例えば、Pondmasterのブランド名でIslandia NYのDanner Manufacturing,Inc.によって販売されている。連続処理プロセスのために、分散体をこの種のユニット中で循環させて、光を分散体に露光させることが可能である。単一パスまたはマルチパス処理を利用することが可能である。
【0070】
分散体はまた、酸素源および光触媒の存在下での光に対する露光に好適な容器中においてバッチ操作で処理可能である。この前処理においては、好適に保護されたランプが分散体中に浸漬されることが望ましい。例えば、フッ素化ポリマー樹脂を生成するための水性フッ素化ポリマー分散体の凝析に通常用いられる容器を、ランプをこの容器中に保持された分散体の中に浸漬することにより、この前処理のプロセスの実施に用いることが可能である。所望の場合には、分散体は、光に対する露光を促進するために循環または撹拌されることが可能である。酸素源が以下に考察されているガスである場合、循環は、酸素源を分散体中に射出することにより達成または増進され得る。水中UVクラリファイア/滅菌器ユニットにおいて利用されるタイプの保護用石英管を備える紫外ランプは、筐体から取り出された後に分散体中に浸漬するために利用可能である。中圧水銀ランプなどの他の紫外ランプもまた、石英製フォトウェル中にランプを封入することなどにより、ランプを分散体中への浸漬用に好適に保護して用いられることが可能である。ホウケイ酸ガラス製フォトウェルを用いることも可能であるが、これは、UVCおよびUVBバンドにおける紫外光のフィルタとなって効果を低減させてしまう場合がある。好適な中圧水銀ランプは、Fairfield,New JerseyのHanoviaにより販売されている。
【0071】
この前処理において用いられるところ、「酸素源」とは、利用可能な酸素の化学的供給源のいずれかを意味する。「利用可能な酸素」とは、酸化剤として反応可能な酸素を意味する。本前処理に係る利用される酸素源は、空気、富酸素ガス、オゾン含有ガスおよび過酸化水素からなる群から選択されることが好ましい。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。
【0072】
この前処理の実施に関して、好ましい酸素源の1つはオゾン含有ガスである。この前処理の実施に係る他の好ましい酸素源は過酸化水素である。紫外光に対する露光の最中に分散体中に酸素源を存在させるために、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスを、分散体中に連続または間欠的に(好ましくは化学量論的過剰量で)射出することで、光に対する露光の最中に酸素源を提供することが可能である。過酸化水素溶液を添加することにより、過酸化水素を、同様に好ましくは化学量論的過剰量で、分散体に添加することが可能である。過酸化水素の濃度は、分散体中のフッ素化ポリマー固形分に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%であることが好ましい。
【0073】
多様な光触媒のいずれもこの前処理の実施において用いられ得る。好ましくは、光触媒は不均一系光触媒である。最も好ましくは、不均一系光触媒は、二酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群から選択される。例えば、21nmの一次粒径を有し、70%アナターゼおよび30%ルチル二酸化チタンの混合物である商品名Degussa P25で販売される二酸化チタンが、効果的な不均一系光触媒であることが見出された。不均一系光触媒は、光への露光に先立って、分散体中に分散させることにより用いられることが可能である。不均一系光触媒の好ましいレベルは、分散体中のフッ素化ポリマー固形分に基づいて約1ppm〜約100ppmである。
【0074】
酸素源および光触媒を伴う光は周囲温度または温和な温度で効果的であり、それ故、典型的には、この前処理の実施に高温は必要とされない。この前処理に係る好ましいプロセスにおいて、酸素源の存在下で水性フッ素化ポリマー分散体を紫外光に露光させるステップは、約5℃〜約70℃、好ましくは約15℃〜約70℃の温度で実施される。
【0075】
この前処理を実施する時間は、用いられる紫外光の出力、酸素源の種類、処理条件等を含む要因によって様々であろう。この前処理に係る好ましい時間は約15分間〜約10時間である。
【0076】
他の好ましい前処理は、水性フッ素化ポリマー分散体を過酸化水素に曝露させるステップを含む。この前処理の実施に関して、水性フッ素化ポリマー分散体は、先ず、重合された水性フッ素化ポリマー分散体の濃度より低い濃度に水で希釈されることが好ましい。好ましい濃度は、約2重量パーセント〜約30重量パーセント、より好ましくは約2重量パーセント〜約20重量パーセントである。
【0077】
水性フッ素化ポリマー分散体を過酸化水素に曝露させるステップは、過酸化水素を前記水性フッ素化ポリマー分散体に、好ましくはフッ素化ポリマー固形分の重量に基づいて約0.1重量%〜約10重量パーセントの量で添加することにより実施されることが好ましい。好ましくは、水性フッ素化ポリマー分散体を過酸化水素に曝露させるステップは、約10℃〜約70℃、好ましくは約25℃〜約60℃の温度で実施される。水性フッ素化ポリマー分散体の曝露に利用される時間は約1時間〜約48時間であることが好ましい。
【0078】
水性フッ素化ポリマー分散体を過酸化水素に曝露させるステップの最中に、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスを前記フッ素化ポリマー分散体中に射出することもこの前処理の実施について好ましい。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。このようなガスの導入は、ガスを水性フッ素化ポリマー分散体中に射出することによって達成可能である。
【0079】
好ましくは、水性フッ素化ポリマー分散体を過酸化水素に曝露させるステップは、Fe
+2、Cu
+1またはMn
+2イオンの存在下で実施される。好ましくは、Fe
+2、Cu
+1またはMn
+2イオンの量は、分散体中のフッ素化ポリマー固形分に基づいて約0.1ppm〜約100ppmである。
【0080】
このプロセスは連続プロセスでも実施可能であるが、バッチプロセスにおいては、水性フッ素化ポリマー分散体と過酸化水素との曝露に係る時間を制御して、所望される熱誘起変色の低減を達成することが容易であるため、バッチプロセスが好ましい。バッチプロセスは、適切な構成材料よりなり、所望の場合には、処理中に分散体を加熱するために加熱が可能である任意の好適なタンクまたは容器で実施可能である。例えば、バッチプロセスは、処理中に分散体を撹拌するために用いられることが可能であるインペラを典型的に備える、水性フッ素化ポリマー分散体の凝析に通常用いられる容器で実施可能である。空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスの注入を利用して分散体を撹拌することも可能である。
【0081】
他の好ましい前処理は、次亜塩素酸塩および亜硝酸塩からなる群から選択される酸化剤に水性フッ素化ポリマー分散体を曝露させるステップを含む。この前処理の実施に関して、水性フッ素化ポリマー分散体は、先ず、重合された水性フッ素化ポリマー分散体の濃度より低い濃度に水で希釈されることが好ましい。好ましい濃度は、約2重量パーセント〜約30重量パーセント、より好ましくは約2重量パーセント〜約20重量パーセントである。
【0082】
次亜塩素酸塩および亜硝酸塩からなる群から選択される酸化剤に水性フッ素化ポリマー分散体を曝露するステップは、酸化剤を、フッ素化ポリマー固形分の重量に基づいて、好ましくは約0.05重量%〜約5重量パーセントの量で水性フッ素化ポリマー分散体に添加することにより実施されることが好ましい。分散体への添加に好ましい次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カリウムである。次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カリウムは、フッ素化ポリマー固形分の重量に基づいて約0.05重量%〜約5重量パーセントの量で用いられることが好ましい。ただし、水酸化ナトリウムを含有することなどにより分散体の水性媒体が十分にアルカリ性である場合、次亜塩素酸塩はまた、塩素ガスを分散体に注入することによりインサイチュで生成可能である。分散体への添加に好ましい亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムおよび亜硝酸アンモニウムである。亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムおよび亜硝酸アンモニウムは、フッ素化ポリマー固形分の重量に基づいて約0.5重量%〜約5重量パーセントの量で用いられることが好ましい。
【0083】
好ましくは、水性フッ素化ポリマー分散体を酸化剤に曝露させるステップは、約10℃〜約70℃の温度で実施される。水性フッ素化ポリマー分散体との曝露時間は約5分間〜約3時間であることが好ましい。
【0084】
水性フッ素化ポリマー分散体を酸化剤に曝露させるステップの最中に、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスを前記フッ素化ポリマー分散体中に導入することもこの前処理の実施について好ましい。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。このようなガスの導入は、このようなガスを水性フッ素化ポリマー分散体中に射出することによって達成可能である。
【0085】
この前処理は連続プロセスでも実施可能であるが、バッチプロセスにおいては、次亜塩素酸塩または亜硝酸塩と水性フッ素化ポリマー分散体との曝露に係る時間を制御して、所望される熱誘起変色の低減を達成することが容易であるため、バッチプロセスが好ましい。バッチプロセスは、適切な構成材料よりなり、所望の場合には、処理中に分散体を加熱するために加熱が可能である任意の好適なタンクまたは容器で実施可能である。例えば、バッチプロセスは、処理中に分散体を撹拌するために用いられることが可能であるインペラを典型的に備える、水性フッ素化ポリマー分散体の凝析に通常用いられる容器で実施可能である。空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスの注入を利用して分散体を撹拌することも可能である。
【0086】
他の好ましい前処理は、水性フッ素化ポリマー分散体の水性媒体のpHを約8.5超に調節するステップ、および、水性フッ素化ポリマー分散体を酸素源に曝露するステップを含む。この前処理の実施に関して、水性フッ素化ポリマー分散体は、先ず、重合された水性フッ素化ポリマー分散体の濃度より低い濃度に水で希釈されることが好ましい。好ましい濃度は、約2重量パーセント〜約30重量パーセント、より好ましくは約2重量パーセント〜約20重量パーセントである。
【0087】
水性フッ素化ポリマー分散体のpHは約8.5〜約11に調節されることが好ましい。より好ましくは、水性フッ素化ポリマー分散体の水性媒体のpHは約9.5〜約10に調節される。
【0088】
この前処理の実施に関して、pHは、水性フッ素化ポリマー分散体のpHを所望のレベルに調節するのに十分強塩基性であると共に、分散体の処理および生成されるフッ素化ポリマー樹脂の最終的な使用特性に他の点で適合する塩基を添加することにより調節可能である。好ましい塩基は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物である。水酸化アンモニウムもまた使用可能である。
【0089】
この前処理について用いられるところ、「酸素源」とは、利用可能な酸素のいずれかの化学的供給源を意味する。「利用可能な酸素」とは、酸化剤として反応可能な酸素を意味する。この前処理に係る利用される酸素源は、空気、富酸素ガス、オゾン含有ガスおよび過酸化水素からなる群から選択されることが好ましい。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。
【0090】
この前処理の実施に関して、好ましい酸素源の1つはオゾン含有ガスである。この前処理の実施に係る他の好ましい酸素源は、過酸化水素である。分散体を酸素源に曝露させるために、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスを、分散体中に連続または間欠的に(好ましくは化学量論的過剰量で)射出することが可能である。過酸化水素溶液を添加することにより、過酸化水素を、同様に好ましくは化学量論的過剰量で、分散体に添加することが可能である。過酸化水素の濃度は、分散体中のフッ素化ポリマー固形分に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%であることが好ましい。
【0091】
好ましくは、水性フッ素化ポリマー分散体を酸素源に曝露させるステップは、約10℃〜約95℃、より好ましくは約20℃〜約80℃、最も好ましくは約25℃〜約70℃の温度で実施される。水性フッ素化ポリマー分散体の酸素源への曝露に利用される時間は、約5分間〜約24時間であることが好ましい。
【0092】
このプロセスは連続プロセスでも実施可能であるが、バッチプロセスにおいては、水性フッ素化ポリマー分散体と過酸化水素との曝露に係る時間を制御して、所望される熱誘起変色の低減を達成することが容易であるため、バッチプロセスが好ましい。バッチプロセスは、適切な構成材料よりなり、所望の場合には、処理中に分散体を加熱するために加熱が可能である任意の好適なタンクまたは容器で実施可能である。例えば、バッチプロセスは、処理中に分散体を撹拌するために用いられることが可能であるインペラを典型的に備える、水性フッ素化ポリマー分散体の凝析に通常用いられる容器で実施可能である。空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスの注入を利用して分散体を撹拌することも可能である。
【0093】
他の好ましい前処理は、フッ素化ポリマーを約160℃〜約400℃の温度に加熱するステップ、および、加熱されたフッ素化ポリマー樹脂を酸素源に曝露するステップを含む。この前処理の一実施形態において、フッ素化ポリマーを加熱するステップは、オーブンなどにおいて対流加熱により実施される。好ましくは、オーブンにおいて利用される伝熱ガスは、以下に考察されるとおり、酸素源であるか、または、酸素源を含む。所望の場合には、伝熱ガスは、伝熱を向上するために循環されてもよく、また、伝熱ガスは湿度を高めるために水蒸気を含んでいてもよい。
【0094】
この前処理は、溶融加工性であるフッ素化ポリマー樹脂に有利に利用される。このプロセスは、フッ素化ポリマー樹脂の融点より低いまたは高い温度に加熱された溶融加工性フッ素化ポリマー樹脂で実施されることが可能である。好ましくは、溶融加工性樹脂に係るプロセスは、その融点より高い温度に加熱されたフッ素化ポリマー樹脂で実施される。
【0095】
この前処理はまた、溶融加工性ではないPTFEフッ素化ポリマー樹脂(変性PTFE樹脂を含む)に有利に利用される。PTFE樹脂は、その融点より低い温度で処理することが好ましい。最も好ましくは、PTFE樹脂は200℃未満の温度に加熱される。
【0096】
フッ素化ポリマーは、この前処理に係る処理のために種々の物理的形態であることが可能である。フッ素化ポリマー樹脂の融点より低い温度での処理に関して、フッ素化ポリマーの物理的形態は、所望される熱誘起変色の低減を達成するために必要な時間に大きい影響を有することとなる。融点より低い温度での処理に関して好ましくは、フッ素化ポリマー樹脂は、チップまたはペレットへの溶融加工前にフッ素化ポリマーの単離で回収されるフレークとも呼ばれる粉末を利用することなどにより、微細形態で処理されて酸素源への曝露が促進される。融点を超える温度での処理に関して、加熱に際してフッ素化ポリマー樹脂は溶融して融解することとなるため、フッ素化ポリマー樹脂の物理的形態は、通常はあまり重要ではない。融点を超える温度での処理にチップまたはペレットを用いることも可能であるが、チップまたはペレットへの溶融加工前にフッ素化ポリマーの単離で回収される粉末が好適に用いられる。フッ素化ポリマー樹脂は湿潤状態もしくは乾燥形態であることが可能である。湿潤フッ素化ポリマー樹脂が用いられる場合、加熱されるに伴って湿潤フッ素化ポリマー樹脂が結果的に乾燥される。
【0097】
この前処理に関して、フッ素化ポリマー樹脂は、商品名Monel(登録商標)で販売されているものなどの、アルミニウム、ステンレス鋼または高ニッケル合金などの好適な材料製の開放容器中に入れられることが可能である。好ましくは、酸素源からの酸素のフッ素化ポリマー樹脂への曝露および移動が促進される深さが浅いパンまたはトレイが利用される。
【0098】
前処理は、フッ素化ポリマー樹脂が静的条件下または動的条件にあるよう実施されることが可能である。このプロセスは、フッ素化ポリマーが融点より高い温度で処理される場合には静的条件下のフッ素化ポリマー樹脂で実施されることが好ましく、また、融点より低い温度で処理される場合には動的条件下のフッ素化ポリマー樹脂で実施されることが好ましい。「静的条件」とは、上記のとおり対流加熱に係る伝熱ガスは循環されていてもよいが、フッ素化ポリマーは撹拌または振盪などによりかき混ぜられていないことを意味する。静的条件下では、樹脂のいくらかの沈降が生じ得、または、融点より高い温度で実施される場合には、容器内における溶融した樹脂のいくらかの流れが生じ得る。「動的条件」とは、撹拌もしくは振盪などによりフッ素化ポリマー樹脂を動かしながら、または、フッ素化ポリマー樹脂に追加的な動きが生じ得るよう、伝熱ガスを積極的にフッ素化ポリマー樹脂に通気させながら、プロセスが実施されることを意味する。伝熱および物質移動は、例えば、流動床反応器により、または、そうでなければポリマー床中にガスを流すことにより達成可能である動的条件を用いることにより促進可能である。
【0099】
この前処理について用いられるところ、「酸素源」とは、利用可能な酸素のいずれかの化学的供給源を意味する。「利用可能な酸素」とは、酸化剤として反応可能な酸素を意味する。酸素源は、伝熱ガスであるか、または、伝熱ガスの成分であることが好ましい。好ましくは、酸素源は、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスである。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。例えば、酸素源が空気である場合、空気炉を用いてプロセスを実施することが可能である。酸素またはオゾンを、空気炉に供給することで、それぞれ、富酸素ガス、すなわち酸素富化空気、または、オゾン含有ガス、すなわちオゾン富化空気を提供することが可能である。
【0100】
この前処理を実施するために必要な時間は、利用される温度、利用される酸素源、伝熱ガスの循環速度、および、フッ素化ポリマー樹脂の物理的形態を含む要因によって様々であろう。普通、フッ素化ポリマーの融点より低い温度で実施されるプロセスに係る処理時間は、融点より高い温度で実施されるプロセスに係る時間よりも顕著に長い。例えば、酸素源として空気を用いて融点より低い温度で処理されるフッ素化ポリマー樹脂は、所望される色の低減を達成するために約1〜25日間の処理を必要とし得る。酸素源として空気を用いて融点より高い温度で実施されるプロセスに係る時間は、一般に、約15分間〜約10時間で様々であり得る。
【0101】
樹脂を融点より高い温度で処理した場合、典型的には、その後の加工のために溶融押出し機に供給するために好適な大きさの欠片に細断され得るフッ素化ポリマー樹脂の固体のスラブが形成される。
【0102】
他の好ましい前処理は、フッ素化ポリマー樹脂を溶融押出しして溶融フッ素化ポリマー樹脂を生成するステップ、および、溶融押出し中に溶融フッ素化ポリマー樹脂を酸素源に曝露するステップを含む。この前処理について用いられる「溶融押出しステップ」とは、フッ素化ポリマー樹脂を溶融し、溶融フッ素化ポリマー樹脂をフッ素化ポリマー樹脂の混合に供することを意味する。好ましくは、溶融押出しステップは、溶融フッ素化ポリマー樹脂に対する効果的な酸素源の曝露をもたらすのに十分なせん断ひずみをもたらす。この前処理に係る溶融押出し成形を実施するために、種々の器具を用いることが可能である。好ましくは、溶融フッ素化ポリマー樹脂は溶融押出し機で加工される。度々、単離後のフッ素化ポリマーフレークが溶融押出し成形によってチップまたはペレットに加工され、これが、この前処理のプロセスを実施する製造プロセスにおける簡便な時点である。単軸スクリューまたは多軸スクリュー押出し機のような種々のタイプの押出し機が使用可能である。押出し機の組み合わせもまた好適に用いられる。好ましくは、溶融押出し機には、溶融フッ素化ポリマー樹脂に高せん断を付与する混練ブロックセクションまたは混合部材を含むことなどによる高せん断セクションが設けられている。1つの押出し機で得ることが可能であるものよりも長い滞留時間が所望される場合には、Hiragaら、米国特許第6,664,337号明細書に開示されている表面更新型混練機などの混練機を用いて、この前処理を実施することが可能である。
【0103】
この前処理のプロセスの実施に関して、押出し機または混練機には、フッ素化ポリマーとの曝露のために酸素源を射出するポートが好適に設けられている。揮発物を除去するための吸引ポートも設けられていることが好ましい。例えば、Chapmanら、米国特許第6,838,545号明細書に開示されているものといった、溶融加工性フッ素化ポリマーの安定化に有用な器具および方法を、この前処理のプロセスを実施するために用いることが可能である。
【0104】
この前処理について用いられるところ、「酸素源」とは、利用可能な酸素のいずれかの化学的供給源を意味する。「利用可能な酸素」とは、酸化剤として反応可能な酸素を意味する。好ましくは、酸素源は、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスである。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。
【0105】
この前処理の実施において、酸素源は、溶融押出し器具における適切なポートに射出可能であり、これにより、溶融フッ素化ポリマー樹脂が酸素源に曝露される。溶融ポリマーが酸素源に曝露される箇所は、反応ゾーンと称され得る。この前処理の実施のための、混練ブロックまたは混合部材が設けられた少なくとも1つの高せん断セクションを有する好ましい溶融押出し機においては、溶融フッ素化ポリマー樹脂が高せん断セクションにおいて酸素源に曝露され、すなわち、反応ゾーンは高せん断セクションにある。好ましくは、この前処理のプロセスは複数のステージで実施され、すなわち、押出し機は、溶融フッ素化ポリマーを酸素源に曝露させるための2つ以上の反応ゾーンを有する。必要とされる酸素源の量は、フッ素化ポリマー樹脂によって示される熱誘起変色の程度により様々であろう。通常は、化学量論的過剰量の酸素源を利用することが望ましい。
【0106】
他の好ましい前処理は、乾燥ステップの最中に湿潤フッ素化ポリマー樹脂を酸素源に曝露させるステップを含む。この前処理において用いられる湿潤フッ素化ポリマー樹脂は、分散体から分離されたままの不分散フッ素化ポリマーであることが好ましい。フッ素化ポリマー樹脂の乾燥ステップにおいて用いられる公知の種々の器具のいずれも、この前処理に用いられることが可能である。このような器具においては、加熱された乾燥ガス(典型的には空気)が、フッ素化ポリマー樹脂を加熱し、ならびに、乾燥ステップの最中にフッ素化ポリマー樹脂から除去された水蒸気および化学物質を搬出する伝熱媒体として用いられる。好ましくは、この前処理によれば、利用される乾燥ガスは、以下に考察されるとおり、酸素源であるか、または、酸素源を含む。
【0107】
この前処理のプロセスは、フッ素化ポリマー樹脂が静的条件下または動的条件下で乾燥されるよう実施されることが可能である。「静的条件」とは、オーブンにおけるトレイ乾燥などの器具中での乾燥ステップで対流による乾燥ガスが循環することはあるが、乾燥ステップの最中に、フッ素化ポリマーが撹拌または振盪などによりかき混ぜられていないことを意味する。「動的条件」とは、撹拌もしくは振盪などによりフッ素化ポリマー樹脂を動かしながら、または、フッ素化ポリマー樹脂に追加的な動きが生じ得るよう、乾燥ガスを積極的にフッ素化ポリマー樹脂に通気させながら、プロセスが実施されることを意味する。伝熱および物質移動は、例えば、ポリマー床中に乾燥ガスを流すといった動的条件を用いることにより促進可能である。好ましくは、この前処理のプロセスは、動的条件下で実施される。動的条件下での乾燥ステップについて好ましい器具およびプロセス条件は、湿潤フッ素化ポリマー樹脂が布上のシャローベッドとして堆積され、ベッドに好ましくは上方から下方に向かって加熱された空気を通すことにより乾燥される、Egres,Jr.ら、米国特許第5,391,709号明細書によって開示されている。
【0108】
この前処理について用いられるところ、「酸素源」とは、利用可能な酸素のいずれかの化学的供給源を意味する。「利用可能な酸素」とは、酸化剤として反応可能な酸素を意味する。好ましくは、酸素源は、空気、富酸素ガスまたはオゾン含有ガスである。「富酸素ガス」とは、酸素富化空気であることが好ましい、体積基準で約21%超の酸素を含有するガス混合物および純粋な酸素を意味する。好ましくは、富酸素ガスは体積基準で少なくとも約22%の酸素を含有する。「オゾン含有ガス」とは、オゾン富化空気であることが好ましい、オゾンを含有するガス混合物および純粋なオゾンを意味する。好ましくは、ガス混合物中のオゾンの含有量は、体積基準で少なくとも約10ppmのオゾンである。
【0109】
この前処理の実施に係る好ましい酸素源の1つは、オゾン含有ガス、好ましくはオゾン富化空気である。乾燥ガスとしてのオゾン富化空気は、用いられる乾燥装置に乾燥空気が供給されるに伴って乾燥空気にオゾンを供給するオゾン発生器を利用することにより提供されることが可能である。他の好ましい酸素源は富酸素ガス、好ましくは酸素富化空気である。乾燥ガスとしての酸素富化空気は、用いられる乾燥装置に乾燥空気が供給されるに伴って乾燥空気に酸素を供給することにより提供されることが可能である。酸素富化空気はまた、半透性高分子膜分離システムにより提供されることが可能である。
【0110】
乾燥ステップ中における乾燥ガスの温度は、約100℃〜約300℃の範囲内であることが可能である。乾燥ガスの温度を高くすることで、乾燥時間が短縮され、熱誘起変色の低減が促進される。しかしながら、乾燥ガスの温度によって、フッ素化ポリマー樹脂の温度が、フッ素化ポリマーの融解をもたらすこととなるその融点に達するか、または、それ以上となるべきではない。溶融加工性フッ素化ポリマーについて、好ましい乾燥ガス温度は、フッ素化ポリマーの融点よりも160℃〜約10℃低い。PTFE樹脂の最終的な使用特性は、その融点よりかなり低い温度によっても悪影響を受ける可能性がある。好ましくは、PTFE樹脂は、約100℃〜約200℃、より好ましくは、約150℃〜約180℃の温度の乾燥ガスを用いて乾燥される。
【0111】
この前処理プロセスを実施するために必要な時間は、乾燥される湿潤フッ素化ポリマー樹脂の厚さ、利用される温度、利用される酸素源、および、乾燥ガスの循環流量を含む要因によって様々であろう。酸素源としてオゾン含有ガスが用いられる場合、熱誘起変色の低減は、好ましくは約15分間〜10時間の範囲内の通常の乾燥時間中に達成可能である。所望の場合には、前処理は、熱誘起変色を低減する目的のために、フッ素化ポリマー樹脂が乾燥した後も継続することが可能である。
【0112】
所望の場合には2つ以上の前処理を利用することが可能であり、このような前処理は、水性フッ素化ポリマー分散体、フッ素化ポリマー樹脂、または、この両方に対して行うことが可能である。
【0113】
フッ素に対する曝露は多様なフッ素ラジカル生成化合物を伴って実施され得るが、フッ素化ポリマー樹脂の曝露は、フッ素化ポリマー樹脂をフッ素ガスと接触させることにより実施されることが好ましい。フッ素との反応はきわめて発熱性であるため、フッ素を窒素などの不活性ガスで希釈することが好ましい。フッ素/不活性ガス混合物中のフッ素のレベルは1〜100体積%であり得るが、純粋なフッ素を伴う作業は危険性が高いために約5〜約25体積%であることが好ましい。熱誘起変色が激しいフッ素化ポリマー樹脂については、フッ素化ポリマーの過熱、および、これに付随する火災の危険性を予防するために、フッ素/不活性ガス混合物は十分に希釈されるべきである。
【0114】
フッ素に対する曝露の最中にフッ素化ポリマー樹脂を加熱することにより反応速度が高められる。熱誘起変色を低減させるフッ素の反応はきわめて発熱性であるため、所望される加熱のいくらかまたはすべてがフッ素を伴う反応により提供されてもよい。本発明のプロセスは、フッ素化ポリマー樹脂の融点を超える温度に加熱されるか、または、フッ素化ポリマー樹脂の融点より低い温度で加熱されたフッ素化ポリマー樹脂で実施可能である。
【0115】
融点より低い温度で実施されるプロセスに関して、フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップは、約20℃〜約250℃の温度に加熱されたフッ素化ポリマー樹脂で実施されることが好ましい。一実施形態において、利用される温度は約150℃〜約250℃である。他の一実施形態において、温度は約20℃〜約100℃である。溶融加工性ではないPTFEフッ素化ポリマー樹脂(変性PTFE樹脂を含む)、すなわち、PTFE微粉末に関して、樹脂の焼結および融解を予防するために、PTFE樹脂の融点より低い温度でプロセスを実施することが好ましい。好ましくは、PTFE微粉末樹脂は、PTFE樹脂の最終的な使用特徴に対する悪影響を予防するために約200℃未満の温度で加熱される。好ましい一実施形態において、温度は約20℃〜約100℃である。
【0116】
溶融加工性であるフッ素化ポリマーに関して、プロセスは、フッ素化ポリマー樹脂の融点より低い温度またはそれより高い温度に加熱されたフッ素化ポリマーで実施可能である。好ましくは、溶融加工性樹脂に係るプロセスは、その融点より高い温度に加熱されたフッ素化ポリマー樹脂で実施される。好ましくは、フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップは、その溶融温度を超える温度〜約400℃以下に加熱されたフッ素化ポリマー樹脂で実施される。
【0117】
融点より低い温度に加熱したフッ素化ポリマー樹脂を伴う加工に関して、フッ素化ポリマー樹脂は、粉末、フレーク、ペレットまたはビーズなどの望ましい反応速度がもたらされる粒状形態に加工されることが好ましい。融点より低い温度での加工に好適な装置は、フッ素化ポリマー樹脂を含有して、樹脂をフッ素に均一に曝露するためにフッ素化ポリマー樹脂を撹拌、混転または流動化させながらフッ素もしくはフッ素/不活性ガス混合物に曝露させるタンクまたは容器である。例えば、ダブルコーンブレンダーがこの目的に用いられることが可能である。例えば、Morganら、米国特許第4,626,587号明細書およびImbalzanoら、米国特許第4,743,658号明細書に開示されているものといった溶融加工性フッ素化ポリマーにおける不安定な末端基の除去に有用な器具および方法を用いて、その融点より低い温度でフッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させることが可能である。普通、不安定な末端基を除去するために典型的に必要とされるよりも多くのフッ素が誘起変色を所望されるレベルに低減させるために必要とされ、例えば、不安定な末端基を除去するために必要とされる量の少なくとも2倍といった量が必要とされる可能性がある。必要とされるフッ素の量は変色レベルに応じることとなるが、通常は化学量論的過剰量のフッ素を利用することが望ましい。
【0118】
融点より高い温度に加熱されたフッ素化ポリマー樹脂を加工するために、フッ素への曝露は多様な方法によって達成可能であるが、本発明の実施に対しては反応性押出し成形が好ましい方法である。反応性押出し成形において、フッ素に対する曝露は、溶融ポリマーが溶融押出し機において加工される間に行われる。溶融押出し成形によってフッ素化ポリマーフレークがチップまたはペレットに加工される時が、本発明のプロセスを実施する製造プロセスにおける簡便な時点である。単軸スクリューまたは多軸スクリュー押出し機のような種々のタイプの押出し機が使用可能である。押出し機の組み合わせもまた好適に用いられる。好ましくは、押出し機は、ガスと溶融フッ素化ポリマー樹脂との間の物質移動を向上させる混合部材を備える。本発明のプロセスの実施に関して、押出し機には、フッ素化ポリマーと接触させるためにフッ素またはフッ素/不活性ガス混合物を供給するポートが好適に設けられている。揮発物を除去するための吸引ポートも設けられていることが好ましい。例えば、Chapmanら、米国特許第6,838,545号明細書、実施例2に開示されているものといった、溶融加工性フッ素化ポリマーの安定化に有用な器具および方法を用いて、その融点を超える温度でフッ素化ポリマーにフッ素を曝露させることが可能である。融点より低い温度で実施されるプロセスと同様に、不安定な末端基を除去するために典型的に必要とされるよりも多くのフッ素が誘起変色を所望されるレベルに低減させるために一般的に必要とされ、例えば、不安定な末端基を除去するために必要とされる量の少なくとも2倍といった量が必要とされる可能性がある。必要とされるフッ素の量は変色レベルに応じることとなるが、通常は化学量論的過剰量のフッ素を利用することが望ましい。フッ素に対する曝露のために1つの押出し機で得られるものよりも長い滞留時間が所望される場合には、Hiragaら、米国特許第6,664,337号明細書に開示されている表面更新型混練機などの混練機を用いて、本発明のプロセスを実施することが可能である。
【0119】
本発明のプロセスは、中度〜重度の範囲であり得る熱誘起変色を示すフッ素化ポリマー樹脂に有用である。このプロセスは、熱誘起変色を引き起こす炭化水素系界面活性剤を含有する水性フッ素化ポリマー分散体に特に有用であり、好ましくは、炭化水素系界面活性剤の存在下で重合される水性フッ素化ポリマー分散体に特に有用である。
【0120】
本発明のプロセスは、処理前のフッ素化ポリマー樹脂が同等の市販されているフッ素化ポリマーと比して顕著な熱誘起変色を示す場合において特に有用である。本発明は、フッ素化ポリマー樹脂が、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された同等の商業的品質のフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも少なくとも約4Lユニット低い初期熱誘起変色値(L
*i)を有する場合に有利に利用される。本発明は、L
*i値がこのような同等のフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも少なくとも約5ユニット低い場合により有利に利用され、L
*i値がこのような同等のフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも少なくとも8ユニット低い場合にさらにより有利に利用され、L
*i値がこのような同等のフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも少なくとも12ユニット低い場合にさらにより有利に利用され、および、L
*i値がこのような同等のフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも少なくとも20ユニット低い場合に最も有利に利用される。
【0121】
本発明のプロセスに従ってフッ素化ポリマー樹脂を処理した後、得られるフッ素化ポリマー樹脂は、特定のタイプのフッ素化ポリマー樹脂に適切な最終使用用途に好適である。本発明の利用により生成されるフッ素化ポリマー樹脂では、最終的な使用特性に対する悪影響を伴うことなく熱誘起変色の低減が示される。
【0122】
試験法
ポリマー粒子の粗分散体粒径(RDPS)は、Malvern Instruments,Malvern,Worcestershire,United Kingdomにより製造されたZetasizer Nano−Sシリーズ動的光散乱システムを用いて計測される。分析用サンプルは、サブミクロンフィルタに通すことにより粒子が実質的に除去された脱イオン水を用いて、10×10×45mmのポリスチレン製の使い捨てキュベット中において、製造業者により推奨されるレベルに希釈される。サンプルをZetasizerに置いて、Dv(50)が測定される。Dv(50)は、粒径体積分布に基づく中央粒径であり、すなわち、その値以下に集団の体積の50%が存在する粒径である。
【0123】
溶融加工性フッ素化ポリマーの融点(T
m)は、ASTM D4591−07の手法に従って示差走査熱量計(DSC)により計測され、溶融温度は、2回目の溶融に係る吸熱のピーク温度として報告される。PTFEホモポリマーについて、融点は同様にDSCによって測定される。未溶融のPTFEホモポリマーが先ず10℃の加熱速度で室温から380℃に加熱され、報告される溶融温度は1回目の溶融に係る吸熱のピーク温度である。
【0124】
コモノマー含有量は、以下の変更を伴う米国特許第4,743,658号明細書、第5欄、第9〜23行に開示されている方法に従って、フーリエ変換赤外(FTIR)分光計を用いて計測される。フィルムは周囲条件に維持された油圧プレス中で急冷される。コモノマー含有量は、実際のコモノマー含有量を確立するためにフッ素19NMRにより分析された樹脂製の他のフィルムを最低で3種類用いて較正した2428cm
−1での適切なピーク対フッ素化ポリマーの厚さバンドの比から算出される。例えば、%HFP含有量は、982cm
−1でのHFPバンドの吸光度から測定され、および、PEVE含有量は、1090cm
−1でのPEVEピークの吸光度により測定される。
【0125】
溶融加工性フッ素化ポリマーのメルトフローレート(MFR)は、以下のとおり改変したASTM D1238−10に従って計測される。シリンダ、オリフィスおよびピストンの先端は、耐食性合金であるHaynes Stellite Co.製のHaynes Stellite 19製である。5.0gのサンプルが、FEPに関してASTM D2116−07に、また、PFAに関してASTM D3307−10に開示されているものなど、372℃±1℃に維持される内径9.53mm(0.375インチ)のシリンダに仕込まれる。サンプルがシリンダに仕込まれた5分間の後に、直径2.10mm(0.0825インチ)、長さ8.00mm(0.315インチ)の角エッジ型オリフィスから5000グラムの荷重(ピストン+重り)下でサンプルが押出される。他のフッ素化ポリマーは、特定のポリマーについて標準とされる条件下でASTM D1238−10に従って計測される。
【0126】
熱誘起変色の計測
1)色の測定
フッ素化ポリマー樹脂サンプルのL
*値はCIELABカラースケールを用いて測定され、その詳細は、CIE Publication 15.2(1986)において発行されている。CIE L
*a
*b
*(CIELAB)は、International Commission on Illumination(French Commission internationale de l’eclairage)によって規定される色空間である。ヒトの眼によって視認可能であるすべての色が記載されている。CIELABの3つの座標は、色の明度(L
*)、赤/マゼンタと緑との間の位置(a
*)、および、黄色と青との間の位置(b
*)を表す。
【0127】
2)PTFEサンプル調製および計測
以下の手法を用いて、変性PTFEポリマーを含むPTFEポリマーの熱誘起変色が特徴付けされる。PTFE圧縮粉末の4.0グラムのチップが、共にWabash,IndianaのCarver,Inc.により製造されたCarverステンレス鋼ペレットモールド(部品番号2090−0)およびCarver手動油圧プレス(モデル4350)を用いて形成される。モールドアセンブリの底に、0.1mm厚のMylarフィルムの直径29mmのディスクが置かれる。4グラムの乾燥されたPTFE粉末がモールド開口に均一に広げられてモールド中に注入され、均一に広げられる。第2の29mmのディスクがPTFEの上に置かれ、トッププランジャーがアセンブリ中に配置される。モールドアセンブリはプレス中に置かれ、8.27MPa(1200psi)に達するまで徐々に圧力が加えられる。圧力は30秒間保持され、次いで、解除される。チップモールドがプレスから取り出され、チップがモールドから外される。その後の焼結の前に、Mylarフィルムはチップから剥がされる。典型的には、各ポリマーサンプルについて、2つのチップが成形される。
【0128】
電気炉が385℃に加熱される。焼結されるチップは、深さが2インチ(5.1cm)である4インチ×5インチ(10.2cm×12.7cm)の矩形アルミニウムトレイに置かれる。トレイは炉に10分間置かれ、その後、周囲温度への冷却のために取り出される。
【0129】
上記のとおり加工された4gmのチップの色が、Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,Virginia製のHunterLab ColorQuest XEを用いて評価される。ColorQuest XEセンサは、以下の設定で標準化される、Mode:RSIN、Area View:Large、および、Port Size:2.54cm。この機器を用いて、CIELABカラースケールを用いるフッ素化ポリマー樹脂サンプルのL
*値が測定される。
【0130】
テストのために、機器は、D65光源および10°観測者を伴うCIELABスケールを用いて構成される。この色彩計によって報告されるL
*値が発現された色を表すのに用いられ、100のL
*が完全拡散反射面(白色)を示し、0のL
*が黒色を表す。
【0131】
パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された同等の商業的品質のフッ素化ポリマー樹脂が、色計測に係る標準として用いられる。PTFEフッ素化ポリマーに係る本発明を例示するこの用途における実施例に関して、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を分散重合界面活性剤として用いて形成される同等の商業品質のPTFE生成物はTEFLON(登録商標)601Aである。上記の計測プロセスを用いると、TEFLON(登録商標)601Aに係る得られる色計測値は、L
*Std−PTFE=87.3
である。
【0132】
3)溶融加工性フッ素化ポリマーサンプル調製および計測
以下の手法が用いられて、加熱によるFEPおよびPFAなどの溶融加工性フッ素化ポリマーの変色が特徴付けられる。10.16cm(4.00インチ)×10.16cm(4.00インチ)の開口が20.32cm(8.00インチ)×20.32cm(8.00インチ)×0.254mm(0.010インチ)厚の金属シートの中央に開けられてチェースが形成される。このチェースが20.32cm(8.00インチ)×20.32cm(8.00インチ)×1.59mm(1/16インチ)厚の成形プレート上に置かれ、チェースよりもわずかに大きいKapton(登録商標)フィルムで覆われる。厚さが1mm未満となるよう必要に応じて小さくされ、乾燥させることによりポリマーサンプルが調製される。6.00グラムのポリマーサンプルがモールド開口中に均一に広げられる。チェースよりもわずかに大きい2枚目のKapton(登録商標)フィルムがサンプルの上に置かれ、最初のものと同一の寸法を有する第2の成形プレートがKapton(登録商標)フィルムの上に置かれてモールドアセンブリが形成される。モールドアセンブリが、350℃に設定されたPasadena Hydraulics Incorporated,El Monte,Californiaにより製造されたP−H−I20トンホットプレスモデル番号SP−210C−X4A−21に置かれる。ホットプレスが閉じられてプレートが丁度モールドアセンブリと接触させられ、5分間保持される。次いで、ホットプレスの圧力が34.5MPa(5,000psi)に高められ、さらに1分間保持される。次いで、ホットプレスの圧力が10秒間の間に34.5MPa(5,000psi)から137.9MPa(20,000psi)に高められ、137.9MPa(20,000psi)に達した後にさらに50秒間保持される。モールドアセンブリはホットプレスから取り出され、周囲温度に維持されたPasadena Hydraulics Incorporatedにより製造されたP−H−I20トンホットプレスモデル番号P−210Hのブロックの間に置かれ、圧力が137.9MPa(20,000psi)に高められ、モールドアセンブリはそのままで5分間放置されて冷却される。次いで、モールドアセンブリは周囲温度プレスから取り出され、サンプルフィルムがモールドアセンブリから除去される。サンプルフィルムの気泡を含まない領域を選択し、New JerseyのC.S.Osborne and Companyにより製造された1−1/8インチアーチパンチを用いて2.86cm(1−1/8インチ)の円が抜き出される。各々が0.254mm(0.010インチ)の公称厚および0.37グラムの公称重量を有する6つのフィルムの円を相互に上下に組み合わせて、2.2+/−0.1グラムの総重量を有するスタックが形成される。
【0133】
フィルムスタックがHunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,Virginia製のHunterLab ColorFlex分光測光計に置かれ、L
*が、2.54cm(1.00インチ)アパーチャ、および、D65光源および10°観測者を伴うCIELABスケールを用いて計測される。
【0134】
パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された同等の商業的品質のフッ素化ポリマー樹脂が、色計測に係る標準として用いられる。FEPフッ素化ポリマー樹脂に係る本発明を例示するこの用途における実施例に関して、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を分散重合界面活性剤として用いて形成される同等の商業的品質のFEP樹脂は、DuPont TEFLON(登録商標)6100FEPである。上記の計測プロセスを用いると、DuPont TEFLON(登録商標)6100FEPに係る得られる色計測値は、L
*Std−FEP=79.7
である。
【0135】
4)以下の式により定義されているとおり、標準に対するL
*の変化%を用いて、処理後のフッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色の変化が特徴付けられる。
L
*の変化%=(L
*t−L
*i)/(L
*Std−L
*i)×100
L
*i=初期熱誘起変色値であって、このタイプのフッ素化ポリマーのための開示の試験法を用いて計測される熱誘起変色を低減する処理前のフッ素化ポリマー樹脂に係るCIELABスケールにおけるLの計測値。
L
*t=処理済熱誘起変色値であって、このタイプのフッ素化ポリマーのための開示の試験法を用いて計測される熱誘起変色を低減する処理後のフッ素化ポリマー樹脂に係るCIELABスケールにおけるLの計測値。
PTFEに対する標準:計測したL
*Std−PTFE=87.3
FEPに対する標準:計測したL
*Std−FEP=79.7
【0136】
[実施例]
フッ素化ポリマーの調製
FEP−1:炭化水素安定化TFE/HFP/PEVE分散体の調製
約1.5の全長対直径比および10ガロン(37.9L)の水容量を有する、円筒形で、水平型の水ジャケットを備える、パドル撹拌式ステンレス鋼反応器に、60ポンド(27.2kg)の脱イオン水を仕込む。次いで、46rpmで撹拌しながら反応器の温度を103℃に高める。撹拌機の速度を20rpmに落とし、反応器を60秒間ベントする。反応器の圧力を窒素で15psig(205kPa)に高める。80℃に冷却しながら、撹拌機の速度を46rpmに上げる。撹拌機の速度を20rpmに落とし、12.7psi(87.6kPa)に減圧する。500mlの脱気脱イオン水、0.5グラムのPluronic(登録商標)31R1溶液および0.3gmの亜硫酸ナトリウムを含有する溶液を反応器に引き入れる。20rpmでパドル撹拌される反応器において、反応器を80℃に加熱し、3回排気およびTFEでパージする。撹拌機の速度を46rpmに上げ、次いで、反応器の温度を103℃に高める。温度が103℃で安定したら、圧力が470psig(3.34MPa)になるまでHFPを反応器にゆっくりと添加する。112mlの液体PEVEを反応器に射出する。次いで、TFEを反応器に添加して630psig(4.45MPa)の最終圧力を達成する。次いで、2.20重量%の過硫酸アンモニウム(APS)を含有する80mlの新たに調製した水性開始剤溶液を反応器に仕込む。次いで、反応器圧力における10psi(69kPa)の低下によって示される重合の開始後、すなわちキックオフ後の残りの重合のために、23:1のTFE対開始剤溶液質量比でこの同一の開始剤溶液を反応器に圧送する。また、追加のTFEを、キックオフ時に開始して、0.06lb/分(0.03kg/分)の目標流量で、反応器における650psig(4.58MPa)の所望される上限の超過を防止する制限を条件として、合計で12.0lb(5.44kg)のTFEがキックオフ後に反応器に添加されるまで反応器に添加する。さらに、液体PEVEを、キックオフ時に開始し、反応の最中にかけて0.2ml/分の流量で反応器に添加する。
【0137】
キックオフから4.0lb(1.8kg)のTFEを供給した後、45,182ppmのSDS炭化水素安定化界面活性剤および60,755ppmの30%水酸化アンモニウム溶液を含有する水性界面活性剤溶液をオートクレーブに0.2ml/分の流量で圧送する。水性界面活性剤溶液の圧送流量をキックオフから8.0lb(3.6kg)のTFEを供給した後に0.3ml/分に増加し、最終的に、キックオフから11.0lb(5.0kg)のTFEを供給し、結果として、反応の最中に合計で28mlの界面活性剤溶液を添加した後に0.4ml/分に増加する。反応の最中、反応器中の圧力は650psig(4.58MPa)の所望される上限に達し、圧力を制御するためにTFE供給流量を目標流量から低減する。重合開始後の合計反応時間は266分間であり、その間に、12.0lb(5.44kg)のTFEおよび52mlのPEVEを添加する。反応時間の終了時に、TFEの供給、PEVEの供給、開始剤の供給、および、界面活性剤溶液の供給を停止し;追加で100mlの界面活性剤溶液を反応器に添加し、撹拌を維持しながら反応器を冷却する。反応器内容物の温度が90℃に達したら、反応器をゆっくりとベントする。大気圧近くまでベントし後、反応器を窒素でパージして残存するモノマーを除去する。さらに冷却してから、分散体を70℃未満で反応器から排出する。
【0138】
分散体の固形分含有量は20.30重量%であり、Dv(50)粗分散体粒径(RDPS)は146.8nmである。オートクレーブの清掃で542グラムの湿潤凝析物が回収される。TFE/HFP/PEVEターポリマー(FEP)は、16.4gm/10分のメルトフローレート(MFR)、11.11重量%のHFP含有量、1.27重量%のPEVE含有量、および、247.5℃の融点を有する。
【0139】
FEP−2:炭化水素安定化TFE/HFP/PEVE分散体の調製
約1.5の全長対直径比および10ガロン(37.9L)の水容量を有する、円筒形で、水平型の水ジャケットを備える、パドル撹拌式ステンレス鋼反応器に、60ポンド(27.2kg)の脱イオン水を仕込む。次いで、46rpmで撹拌しながら反応器の温度を103℃に高める。撹拌機の速度を20rpmに落とし、反応器を60秒間ベントする。反応器の圧力を窒素で15psig(205kPa)に高める。80℃に冷却しながら、撹拌機の速度を46rpmに上げる。撹拌機の速度を20rpmに落とし、12.7psi(87.6kPa)に減圧する。500mlの脱気脱イオン水、0.5グラムのPluronic(登録商標)31R1溶液および0.3gmの亜硫酸ナトリウムを含有する溶液を反応器に引き入れる。20rpmでパドル撹拌される反応器において、反応器を80℃に加熱し、3回排気およびTFEでパージする。撹拌機の速度を46rpmに上げ、次いで、反応器の温度を103℃に高める。温度が103℃で安定したら、圧力が430psig(3.07MPa)になるまでHFPを反応器にゆっくりと添加する。112mlの液体PEVEを反応器に射出する。次いで、TFEを反応器に添加して630psig(4.45MPa)の最終圧力を達成する。次いで、2.20重量%の過硫酸アンモニウム(APS)を含有する80mlの新たに調製した水性開始剤溶液を反応器に仕込む。次いで、反応器圧力における10psi(69kPa)の低下によって示される重合の開始後、すなわちキックオフ後の残りの重合のために、20:1のTFE対開始剤溶液質量比でこの同一の開始剤溶液を反応器に圧送する。また、追加のTFEを、キックオフ時に開始して、0.06lb/分(0.03kg/分)の流量で、反応器における650psig(4.58MPa)の所望される上限の超過を防止する制限を条件として、合計で12.0lb(5.44kg)のTFEがキックオフ後に反応器に添加されるまで反応器に添加する。さらに、液体PEVEを、キックオフ時に開始し、反応の最中にかけて0.3ml/分の流量で反応器に添加する。
【0140】
キックオフから4.0lb(1.8kg)のTFEを供給した後、45,176ppmのSDS炭化水素安定化界面活性剤および60,834ppmの30%水酸化アンモニウム溶液を含有する水性界面活性剤溶液をオートクレーブに0.2ml/分の流量で圧送する。水性界面活性剤溶液の圧送流量をキックオフから6.0lb(2.7kg)のTFEを供給した後に0.3ml/分に増加し、次いで、キックオフから8.0lb(3.6kg)のTFEを供給した後に0.4ml/分に増加し、キックオフから10.0lb(4.5kg)のTFEを供給した後に0.6ml/分に増加し、最終的に、キックオフから11.0lb(5.0kg)のTFEを供給し、結果として、反応の最中に合計で47mlの界面活性剤溶液を添加した後に0.8ml/分に増加する。重合開始後の合計反応時間は201分間であり、その間に、12.0lb(5.44kg)のTFEおよび60mlのPEVEを添加する。反応時間の終了時に、TFEの供給、PEVEの供給、開始剤の供給、および、界面活性剤溶液の供給を停止し;追加で25mlの界面活性剤溶液を反応器に添加し、撹拌を維持しながら反応器を冷却する。反応器内容物の温度が90℃に達したら、反応器をゆっくりとベントする。大気圧近くまでベントし後、反応器を窒素でパージして残存するモノマーを除去する。さらに冷却してから、分散体を70℃未満で反応器から排出する。
【0141】
分散体の固形分含有量は20.07重量%であり、Dv(50)粗分散体粒径(RDPS)は143.2nmである。オートクレーブの清掃で703グラムの湿潤凝析物が回収される。TFE/HFP/PEVEターポリマー(FEP)は、29.6gm/10分のメルトフローレート(MFR)、9.83重量%のHFP含有量、1.18重量%のPEVE含有量、および、256.1℃の融点を有する。
【0142】
熱誘起変色
乾燥したポリマーは、以下の実施例において用いられるポリマーのタイプに適用可能である熱誘起変色の計測として上記の試験法セクションにおいて記載されているとおり特徴付けられる。
【0143】
実施例1:酸素に対する曝露、これに続くフッ素に対する曝露によるフッ素化ポリマー樹脂の前処理
上記のとおり重合される水性FEP−1分散体を加熱したガラス反応器中で凝析する。1250mlの分散体を水浴中で85℃に加熱し、次いで、ジャケット中に85℃の水を循環させることにより温度が維持されるLab Glass,Vineland,NJ製の4枚の内部阻流板を有する2,000mlのジャケット付ガラス反応器に移す。2つの高せん断ひずみインペラを2,470rpmで3600秒間回転させて、分散体をポリマー相と水相とに分離させる。150ミクロンメッシュフィルタバッグであるThe Strainrite Companies,Auburn,Maineにより製造されたモデルNMO150P1SHSを通してろ過することにより、固形分から水を分離する。ポリマー相を、150℃に設定した循環空気炉中で40時間乾燥させて乾燥粉末を得る。
【0144】
溶融加工性フッ素化ポリマーに係る熱誘起変色の計測として上記の試験法セクションにおいて記載されているとおり乾燥粉末のサンプルを成形してカラーフィルム得て、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された商業的品質のFEPフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも49Lユニットを超えて低い値である未処理の色に対するL
*(L
*i=30.5)の基本値を確立し、ここで、この実施例について用いられる標準は79.7である。計測された色は、「開始粉末」として表1に示されている。
【0145】
すべての実験は、反応ゾーンにおいて押出し機バレルの表面と同一面に縦孔開口を有するロッドである注入プローブと、フッ素/フッ化水素酸スクラビングシステムに接続された吸引ポートとを備える25mm二軸押出し機で実施する。二軸押出し機は、ダイを備える3.81cm(1.5インチ)一軸押出し機に供給する。二軸押出し機は、樹脂溶融装置、ならびに、所望される末端基の安定化、および、FEPの場合には主鎖の安定化が実施される末端基反応器として機能する。一軸押出し機は、樹脂を任意選択のスクリーンパックおよびダイに通過させるのに必要な圧力を生成する溶融ポンプとして機能する。
【0146】
上記の押出し成形器具は、Coperion Corporation製の「Kombiplast」押出し機である。ポリマー溶融物およびフッ素化試薬と接触される部品については耐食性材料が用いられる。二軸押出し機は、並列に配置された2本の共回転するスクリューを有する。スクリュー構成は、かみ合いプロファイルおよび緊密なクリアランスで設計され、自己清掃型とされる。スクリュー構成は、混練ブロック、混合部材および搬送スクリューブッシュを備える。押出し機の最初の19.4長さ/直径(L/D、Dはブッシュの直径である)は溶融ゾーンである。これは、供給セクション、固形分搬送セクション、および、混練ブロックセクションを含む。混練ブロックセクションでは、高せん断がもたらされ、ポリマーの適切な溶融が確保される。溶融セクションは、溶融シールを形成し、および、最終混練ブロックの完全な充填を確保する左回りのブッシュ(後方への圧送)で終了する。試薬をこのセクションの直後に射出する。次の20.7L/Dには、複数の混合部材を備え、押出し機の反応ゾーンを構成する注入セクション、混合セクションおよび反応セクションが含まれる。用いる混合部材およびこれらの装置は、TME部材を伴う4つのワークセクションと、これに続く、単一のZME部材を伴うワークセクションから構成される。次の5.4L/Dは、実施される反応に応じてF
2、HFおよび他の反応生成物を無効化するよう設計されたスクラビングシステムに接続された吸引採集セクション(揮発物除去ゾーン)を含む。吸引採集セクションは、空隙をもたらし、これにより、溶融ポリマーが亜大気圧に曝露されて、反応性で腐食性のガスの大気中への漏出を防止する溶融物先送り部材を含む従来の設計に従うものである。吸引は、55〜90kPa(絶対圧)(8および13psia)で操作する。アンダーカットブッシュ(SK)は、押出し機の吸引採集セクションにおいて先送り部材を提供する効果的な方法である。最後の3.3L/Dは、減圧シールを提供し、溶融ポリマーを一軸押出し機に圧送するために用いる。化学反応は、混合セクションを含む注入ノズルと吸引ポートとの間のセクションにおいて主に生じる。FEPの場合における主鎖安定化は、混練ブロックセクションおよび混合セクションの両方において生じる。二軸押出し機は、ろ過およびペレット形成のために低せん断速度で圧力を生成するよう設計されている単軸スクリュー溶融ポンプに向かって空になる。溶融ポリマーは、0.95cm(3/8インチ)ダイホールを通過する。次いで、溶融ストランドを水浴中で急冷して固体ストランドを生成する。次いで、ストランドを切断してペレットを生成する。
【0147】
二軸押出し機は、350℃のバレル温度および200rpmのスクリュー速度で操作する。一軸押出し機は、350℃のバレル温度および20rpmのスクリュー速度で操作する。ポリマーを18kg/hrで押出し機に供給する。
【0148】
乾燥圧縮空気を、ノズルを通して注入ゾーンに0.10重量%の酸素対ポリマー比で射出する。ペレットを、150℃に設定した循環空気炉中で40時間乾燥させて残存する水分をすべて除去する。
【0149】
空気注入による酸素と反応させることにより生成したペレットを、空気を10体積パーセントフッ素および90体積パーセント窒素のガスで置き換える以外は同一条件下で押出し機に再度通して加工する。ガスを、0.08重量%のフッ素対ポリマー比で射出する。
【0150】
溶融加工性フッ素化ポリマーにかかる熱誘起変色の計測として上記の試験法セクションにおいて記載されているとおり空気注入で形成されたペレットおよび空気注入とこれに続くフッ素注入で形成されたペレットを成形してカラーフィルムを得、これらを、表1に示す。空気注入を伴う前処理後に得られるL
*(L
*t)は71.2であって、82.7%のL
*の変化%を伴っており、開始粉末に対して向上した色を示す。その後のフッ素に対する曝露後に得られるL
*(L
*t)は79.5であって、99.6%のL
*の変化%を伴っており、前処理とフッ素化とを組み合わせた場合におけるさらに優れた向上を示す。
【0152】
実施例2:フッ素化ポリマー分散体の前処理+フッ素化ポリマー樹脂の前処理、その後のフッ素化ポリマー樹脂のフッ素への曝露
上記のとおり重合した水性FEP−2分散体を脱イオン水で5重量パーセント固形分に希釈する。分散体を−30℃で16時間凍結することにより分散体を凝析する。分散体を融解し、150ミクロンメッシュフィルタバッグであるThe Strainrite Companies,Auburn,Maineにより製造されたモデルNMO150P1SHSを通してろ過することにより、固形分から水を分離する。固形分を150℃に設定した循環空気炉中で16時間乾燥して乾燥粉末を生成する。
【0153】
溶融加工性フッ素化ポリマーに係る熱誘起変色の計測として上記の試験法セクションにおいて記載されているとおり乾燥粉末のサンプルを成形してカラーフィルム得て、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された商業的品質のFEPフッ素化ポリマー樹脂のL
*値よりも53Lユニットを超えて低い値である未処理の色に対するL
*(L
*i=25.9)の基本値を確立し、ここで、この実施例について用いられる標準は79.7である。計測された色は、「開始粉末」として表2に示されている。
【0154】
分散体前処理:上記の1200mlの5重量パーセント固形分FEP分散体を水浴中で50℃に予熱する。分散体および2mlの30重量%H
2O
2を、内径が13.3cm(5−1/4インチ)であり、50℃の水が循環する反応器ジャケットを有する2000mlのジャケット付ガラス反応器に添加する。45°の角度に設定された長さ3.18cm(1.25インチ)の平坦なブレードを4枚備えるインペラ、および、LabGlassにより部品番号8680−130として製造される、各々が、直径12mm×全長24mmを有し、微細な気泡を形成する、フリット部を有するガラスシリンダである2本の注入チューブを反応器に設置する。Drieriteガス精製カラムであるW.A.Hammond Drierite Company,Xenia,Ohio製のモデル27068を通る空気供給部に注入チューブを接続し、空気供給部を1.42標準L/分(3.0標準ft
3/hr)の送量となるよう調節する。撹拌機は60rpmに設定する。5分間混合した後、分散体の温度は48.5℃であり、反応タイマーを開始する。7時間反応させた後、42mlの脱イオン水および2mlの30重量%H
2O
2を添加して、蒸発による損失を補う。撹拌機を停止することにより16時間後に反応を停止し、空気流を止め、温水の循環を止め、次いで、反応器から分散体を取り出す。上記に記載のとおり、分散体を凝析し、ろ過し、乾燥し、および、成形する。計測された色を表2において「H
2O
2処理後の粉末」として示す。
【0155】
樹脂前処理:固形分を、Louisville,KentuckyのA2Z Ozoneにより製造されたAQUA−6可搬式オゾン発生器を3台用いてポリマー床上に均等な間隔で設けられた3本のノズルを介してオゾンを放出させることにより、「FEPポリマーの乾燥ステップ用装置」に記載の器具で180℃のオゾン富化空気で2時間乾燥させる。オゾンによるフルオロポリマー樹脂の乾燥ステップは、フッ素化ポリマーをフッ素に対して曝露させる前の樹脂のさらに他の前処理である。乾燥粉末を成形してカラーフィルムを得、溶融加工性フッ素化ポリマーに係る熱誘起変色の計測として上記の試験法において記載されているとおり計測する。計測された色を表2において「オゾン乾燥後の粉末」として示す。乾燥ステップを繰り返して10kgの乾燥粉末を得る。
【0156】
ダイを備える3.81cm(1.5インチ)一軸押出し機に供給する28mm二軸押出し機を通して押出すことにより乾燥粉末をペレット化する。二軸押出し機は樹脂溶融装置として機能し、FEPの場合には、主鎖安定化が実施される。一軸押出し機は、樹脂を任意のスクリーンパックおよびダイに通過させるのに必要な圧力を生成する溶融ポンプとして機能する。上記の押出し成形器具は、Coperion Corporation製の「Kombiplast」押出し機である。ポリマー溶融物と接触される部品については耐食性材料が用いられる。二軸押出し機は、並列に配置された2本の共回転するスクリューを有する。スクリュー構成は、かみ合いプロファイルおよび緊密なクリアランスで設計され、自己清掃型とされる。スクリュー構成は、混練ブロックおよび搬送スクリューブッシュを含む。二軸押出し機は、ろ過およびペレット形成のために低せん断速度で圧力を生成するよう設計されている単軸スクリュー溶融ポンプに向かって空になる。溶融ポリマーは、0.95cm(3/8インチ)ダイホールを通過する。次いで、溶融ストランドを水浴中で急冷して固体ストランドを生成する。次いで、ストランドを切断してペレットを生成する。
【0157】
押出し機を、350℃に設定したバレル温度、ならびに、二軸押出し機については200rpmおよび一軸押出し機については20rpmのスクリュー速度で操作する。ポリマー粉末を9.07kg/hr(20lb/hr)で供給する。
【0158】
フッ素への曝露:フッ素化反応器を用いてペレットをさらに処理する。フッ素化反応器は、米国特許第4,626,587号明細書に記載のガスインレット、ベント接続部および電気加熱マントルを備える改変ダブルコーンブレンダーである。反応器は定常モードで操作する。フッ素化は、190℃で、4/96体積パーセントのフッ素/窒素比で30分間の操作で、7/93体積パーセントのフッ素/窒素比で30分間の操作で、次いで、10/90体積パーセントのフッ素/窒素比で360分間の操作で行う。サイクルの終了時に、フッ素流を止め、電気マントルを電源を落とし、および、反応器を排気する。残存するフッ素を窒素で反応器からパージする。
【0159】
溶融加工性フッ素化ポリマーに係る熱誘起変色の計測として上記の試験法セクションにおいて記載されているとおり、前処理前の粉末、H
2O
2(分散体前処理)後の粉末、オゾン乾燥(樹脂前処理)後の粉末、押出しペレットおよびフッ素化ペレットを成形して、カラーフィルムを生成する。計測した色を表2に示す。分散体の前処理およびフッ素化ポリマー樹脂の単離後に得られるL
*は37.4であって、21.4%のL
*の変化%を伴っており、H
2O
2による分散体前処理後にかなり向上した色を示す。オゾンによるその後の乾燥ステップ後に得られるL
*は67.6であって、77.5%のL
*の変化%を伴っており、この第2の前処理を用いた場合におけるかなり顕著に向上した色を示す。その後のフッ素に対する曝露後に得られるL
*は75.9であって、92.9%のL
*の変化%を伴っており、前処理とフッ素化とを組み合わせた場合におけるさらに優れた向上を示す。押出し機における条件はフィルムテストチップを得る成形操作における条件よりも厳しく、温度が高く、せん断速度が高く、および、滞留時間が長いことにも注目すべきである。押出し機における条件をさらに厳しくすることにより、ポリマー樹脂をフッ素に対して曝露する前の成形された粉末サンプルと比較して、初期のL
*が低い押出しペレットのテストチップが得られる。
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1. フッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色を低減させるプロセスであって、前記フッ素化ポリマー樹脂は、水性分散媒体中のフルオロモノマーを重合して水性フッ素化ポリマー分散体を形成するステップ、前記水性媒体から湿潤形態のフッ素化ポリマー樹脂を分離することにより前記水性媒体から前記フッ素化ポリマーを単離するステップ、および、乾燥させて乾燥形態のフッ素化ポリマー樹脂を生成するステップにより生成され、
湿潤もしくは乾燥形態の前記水性フッ素化ポリマー分散体および/または前記フッ素化ポリマー樹脂を前処理するステップ、ならびに
乾燥形態の前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップ
を含むプロセス。
2.前記プロセスが、CIELABカラースケールにおけるL*の変化%による計測で、熱誘起変色を少なくとも約10%低減させる、前記1.に記載のプロセス。
3.前記水性フッ素化ポリマー分散体が、前記熱誘起変色を引き起こす炭化水素系界面活性剤を含有する前記1.または2.に記載のプロセス。
4.前記フッ素化ポリマー分散体が炭化水素系界面活性剤の存在下で重合される、前記3.に記載のプロセス。
5.前記フッ素化ポリマー樹脂が溶融加工性である、前記1.〜4.のいずれかに記載のプロセス。
6.前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させる前記ステップが、前記フッ素化ポリマー樹脂の融点より高い温度で実施される、前記5.に記載のプロセス。
7.前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させる前記ステップが、その融点を超える温度〜約400℃に加熱された前記フッ素化ポリマー樹脂で実施される、前記6.に記載のプロセス。
8.前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させる前記ステップが、前記フッ素化ポリマー樹脂の融点より低い温度で実施される、前記1.に記載のプロセス。
9.フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させる前記ステップが、約20℃〜約250℃の温度に加熱された前記フッ素化ポリマー樹脂で実施される、前記8.に記載のプロセス。
10.前記フッ素化ポリマー樹脂が、前記CIELABカラースケールで、パーフルオロオクタン酸アンモニウムフッ素系界面活性剤を用いて製造された同等の商業的品質のフッ素化ポリマー樹脂のL*値よりも少なくとも約4Lユニット低い初期熱誘起変色値(L*i)を有する、前記1.〜9.のいずれかに記載のプロセス。
11.前記水性フッ素化ポリマー分散体および/または前記フッ素化ポリマー樹脂の前記前処理ステップが、前記水性フッ素化ポリマー分散体および/または前記フッ素化ポリマー樹脂を酸化剤に曝露させるステップを含む、前記1.〜10.のいずれかに記載のプロセス。
12.前記酸化剤が酸素源を含む、前記11.に記載のプロセス。
13.前記前処理ステップと、乾燥形態の前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップとの組み合わせによってもたらされる前記CIELABカラースケールにおけるL*の変化%により計測される前記熱誘起変色の低減が、乾燥形態の前記フッ素化ポリマー樹脂を同量のフッ素に曝露させることのみによってもたらされる前記CIELABカラースケールにおける前記L*の変化%よりも少なくとも約10%大きい、前記1.〜12.のいずれかに記載のプロセス。
14.熱誘起変色の所与のレベルの低減のために、前記前処理ステップと、乾燥形態の前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップとの組み合わせが、乾燥形態の前記フッ素化ポリマー樹脂をフッ素に曝露させるステップのみと比してフッ素の必要量を約10%低減させる、前記1.〜13.のいずれかに記載のプロセス。