【実施例】
【0020】
実施例1−盲腸コクシジウム症を制御する際のクエルクス・インフェクトリアの有効性
[00045]実験施設および研究設計。スクリーニング試験を、インド・ガミディプンディに位置する家禽飼育場施設で行った。該研究には、性選別していない(straight run)商業的ハイブリッド・ブロイラー鶏、ニワトリ(Gallus domesticus)(変種ベンコブ(Vencobb)400)を用いた。1日齢の雄の雛を調達し、個々に体重測定し、羽をまとめ、そしてランダムに群に分けた。実験設計を表1に詳述する。
【0021】
表1.研究設計
【0022】
【表1】
【0023】
[00046]飼育場管理。試験中、適正飼育場管理規範にしたがった。研究に用いた全飼育場および装備を、雛の到着前に清浄にし、そして消毒した。コンクリートの床上に整理されたケージ中で鳥を飼育し、そしてケージの底にトレーを提供して、糞便試料の収集を容易にした。飼育場の温度および湿度を連続して監視した。
【0024】
[00047]ワクチン接種スケジュール。鳥に、ニューカッスル病ウイルス(NDV)および伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)に関してワクチン接種した。
【0025】
[00048]餌配合。トウモロコシ・ダイズに基づくすりつぶした食餌を配合した。餌成分を、Ponni feeds、インド・タミル・ナードゥより調達した。研究期間を通じて、すりつぶした餌を鳥に自由に与えた。鳥の生涯の期間に応じて、3つの餌配合物を調製した:プレスターター(第1〜10日)、スターター(第11〜20日)、およびフィニッシャー餌(第21〜42日)。抗微生物剤および栄養補助剤は、餌配合物中に用いられなかった。
【0026】
[00049]処置群の詳細。群および処置を表2に示す。処置した鳥に、第1日から、餌中に取り込まれた植物抽出物を与えた(表2)。Q.インフェクトリア没食子の未精製粉末を、Pooja herbs、インド・ムンバイより調達した。
【0027】
表2.処置群および餌の詳細
【0028】
【表2】
【0029】
*コクシスタックは、12%濃度のサリノマイシンを含有するPfizerの製品である。したがって、500g/餌トンの言及した用量でのコクシスタックの添加は、ブロイラーの推奨される予防的用量である、餌中の60ppmレベルのサリノマイシンの送達を可能にするであろう。この実験中の用量は、推奨される濃度の倍であった。
【0030】
[00050]コクシジウム症の誘導。E.テネラの胞子形成したオーシスト(Houghton株[Chapman, H.D.およびShirley, M.W. 2003. アイメリア・テネラのHoughton株: ゲノム配列決定から選択した基準株の概説。 Avian Pathol., 32:115−127]−増殖させたもの)を、1x10
5オーシスト/鳥/日の用量で、経口強制投与を通じて、第14日、第15日および第16日齢の各鳥に、経口投与した。接種日、接種前2時間および接種後2時間、給餌を停止した。
【0031】
[00051]分析したパラメータ。分析のために選択したパラメータは、発病指標、すなわち排泄物出現、死亡率、コクシジウム症に関する盲腸の病変スコアリング、および排泄物グラムあたりのオーシスト(OPG)であった。方法を以下に記載する。
【0032】
[00052]排泄物の検査。鳥の排泄物を、感染1日後から第10日まで、コンシステンシー、血液の存在、粘液、未消化の餌、および橙色に関して、毎日監視した。血液排出の重度に基づいて、排泄物のスコアリングを行った。
【0033】
[00053]死亡率。鳥の死亡を毎日記録し、そして死因を確認するために剖検を行った。
【0034】
[00054]盲腸の病変スコアリング。感染5日後および7日後、各群の2羽の鳥を頸椎脱臼によって屠殺し、そして腸を切開した。コクシジウム症病変に関して、鳥の盲腸をスコアリングした。盲腸における病変の重症度および血液の存在に基づいて、スコアリングを行った(Johnson, J.K.,およびW.M. Reid.(1970). 抗コクシジウム薬剤:ニワトリを用いたバタリーおよび床飼い実験における病変スコアリング技術。 Experimental Parasitology 28:30−36)。盲腸コクシジウム症に関するスコアは、0〜4のスケールであった。
【0035】
[00055]排泄物のOPG。鳥の排泄物の3つ組試料を、ケージの下に維持したトレーからランダムに収集し、そしてグラムあたりのオーシストを評価した。
【0036】
結果
[00056]発病指標。鳥の排泄物の観察によって、感染群における血液排出は、感染4日後までに始まり、そして重症度は第5日にピークとなることが示された。排泄物のスコアリングの結果を表3に提供する。感染7日後、排泄物は血液を含まず、正常であることが見出された。第5日の陽性対照(C3、表3)は、スコアが4である陰性対照(C2、表3)に比較して3のスコアであった。Q.インフェクトリアで処置した鳥は、2のより低いスコアを有し、そして陽性対照よりも優れていた。
【0037】
表3.感染5日後の排泄物のスコアリング
【0038】
【表3】
【0039】
+は、血液損失の重症度および排泄物中の血液量を示す。
【0040】
[00057]盲腸の病変スコアリング。感染5日後および7日後の盲腸の病変スコアリングによって、病変は第5日に重度であり、そして鳥は感染7日後に回復し始めることが示され、これは盲腸プラグの形成によって示された。これには、盲腸からのオーシストの除去を可能にする感染の通常のパターンが続いた。病変スコアの結果によって、陽性対照(サリノマイシン対照)は、説明の付かない理由から、陰性対照に比較した際、スコアにいかなる相違も示さないことが示された。Q.インフェクトリアでの処置は、陰性対照に比較した際、病変スコアを減少させた(表4)。減少した病変スコアは、排泄物スコアの減少および死亡の非存在と相関した。
【0041】
表4.感染5日後の盲腸の病変スコア
【0042】
【表4】
【0043】
[00058]感染7日後の鳥の排泄物のOPG。感染7日後の鳥の排泄物のOPGカウントを表5に示す。予期せぬことに、抗コクシジウム剤、サリノマイシンで処置した鳥(C3、表5)は、C2に比較した際、オーシスト減少のいかなる徴候も示さなかった(表5)。提示する値は、3つの複製物の平均である。
【0044】
表5.感染7日後の排泄物グラムあたりのオーシスト
【0045】
【表5】
【0046】
[00059]死亡率。死亡率は対照2(陰性感染対照)において17%であった。他の群には死亡はなかった。陽性対照の病変スコアおよびOPGデータは、陰性対照のものといかなる相違も示さなかった。
【0047】
[00060]陽性対照は、この試験ではよく働かなかったが、Q.インフェクトリアの植物抽出物で処置した鳥の病変スコアは、陰性感染対照のものより低く、これらがさらなる研究の候補でありうることを示す。しかし、これらは、OPGにいかなる減少も示さなかった。
【0048】
実施例2−盲腸コクシジウム症を制御する際のクエルクス・インフェクトリアの有効性
[00061]アイメリア・テネラに曝露したブロイラー鳥において35日間のin vivo曝露試験を行った。処置群には、1)対照、非感染正常鳥;2)陰性対照、E.テネラに感染させ、そしていかなる抗コクシジウム化合物も含まない正常食餌を与えた鳥;3)陽性対照、感染させ、そして推奨される500g/トンの用量のコクシスタック(抗コクシジウム剤、サリノマイシン)を含有する食餌を与えた鳥;および4)500g/トン用量のQ.インフェクトリア没食子を含有する食餌を投与した感染鳥を含む処置群が含まれた。陽性対照群およびクエルクス・インフェクトリア没食子の未精製粉末を補充した処置群には死亡はまったく観察されなかった。盲腸病変は、陰性対照鳥が平均スコア4で高感染しており、一方、陽性対照は0のスコアを有することを示した。クエルクス・インフェクトリアで処置した鳥は、陽性対照と同様の結果を示した(0)。Q.インフェクトリアは、OPGカウントにおいて陽性対照と匹敵する減少を示した。盲腸試料の組織病理学的分析は、Q.インフェクトリアで処置した鳥では、アイメリア属によって影響を受ける領域がより少なく、出血がなく、そして粘膜に到る単核球浸潤は最小限であることを示した。
【0049】
[00062]第二のin vivo実験は、以下の処置群を伴った。
【0050】
表6.処置群の説明
【0051】
【表6】
【0052】
*コクシスタックは、12%濃度でサリノマイシンを含有するPfizerの製品である。したがって、500g/餌トンの言及する用量でコクシスタックを添加すると、ブロイラーに関して推奨される予防用量である、餌中の60ppmレベルで、サリノマイシンを送達することが可能である。
【0053】
結果
[00063]感染5日後の盲腸病変。盲腸コクシジウム症に関する病変スコアリングを、先のようなスコアリング基準に基づいて、感染5日後に行った。スコアリングの結果によって、陽性対照が、陰性感染対照に比較した際、盲腸コクシジウム症の影響を完全に軽減したことが示された。Q.インフェクトリアで処置した鳥は、盲腸において病変をまったく示さず、そして陽性対照および非感染対照C1に匹敵した(表7、
図1)。
【0054】
表7.感染5日後の病変スコアリング。
【0055】
【表7】
【0056】
異なる上付文字のカラムは、統計的に有意であった(p<0.05)。
【0057】
[00064]排泄物中のオーシスト・カウント。排泄物のOPGを感染7日後に概算して、オーシストの脱落を評価した。研究結果によって、陽性対照、Q.インフェクトリアは、感染した陰性対照に比較した際、排泄物中に有意により低いカウントのオーシストを有することが示された(p<0.05)。Q.インフェクトリア処置は、陽性対照と同等に有効であった(
図2)。これは、病変スコアの結果と相関する。
【0058】
[00065]死亡率:実験中、死亡を記録し、そしてデータを表8に提供する。予期されるように、非感染対照群(C1)および陽性対照群(C3)では死亡はなかった。Q.インフェクトリア補充群は死亡を示さなかった。
【0059】
表8. 試験期間中の死亡率
【0060】
【表8】
【0061】
[00066]盲腸試料の組織病理学的分析。Q.インフェクトリアは、病変スコア、OPGおよび死亡率などの試験したすべてのパラメータにおいて陽性の減少を示し、そしてデータは、陽性対照、サリノマイシンに匹敵した。したがって、非感染対照(C1)、陰性対照(C2)および陽性対照(C3)に比較して、この群由来の鳥の盲腸試料の組織病理学的分析を行った。盲腸における病変の重症度および分布は、表9に提供する等級付けに基づいた。
【0062】
表9. 異なる群の盲腸における、病変の重症度および分布
【0063】
【表9】
【0064】
表10. 鳥の盲腸組織の組織病理学的所見
【0065】
【表10】
【0066】
[00067]組織病理学的結果は、Q.インフェクトリアで処置した鳥では、E.テネラに感染した盲腸領域がより少なく、そして単核球浸潤が、穏やかな浸潤を示すスコア1で、粘膜層のみに限定されていることを示した(
図3)。粘膜下層および筋層には侵入はなかった(表10)。陰性対照において、単核球浸潤は、粘膜、粘膜下層、およびさらに筋層においても観察された。陰性対照のものに比較した際、Q.インフェクトリアで処置した鳥の盲腸においては出血はなかった(2)。これは、Q.インフェクトリアで処置した鳥の盲腸が、陽性対照よりもより感染していなかったことを示す。
【0067】
[00068]植物抽出物のin vivoスクリーニングによって、クエルクス・インフェクトリアがE.テネラによって引き起こされるブロイラー鳥における盲腸コクシジウム症を調節する際の強力な候補であることが明らかになった。抽出物の有効性は、病変スコア、OPGおよび死亡率減少に関して、陽性対照のものと同等であることが見出された。
【0068】
実施例3−コクシジウム症の混合感染を制御する際のクエルクス・インフェクトリアの水抽出物の有効性
[00069]ブロイラー鳥におけるコクシジウム症の混合感染を制御する際のQ.インフェクトリア未精製粉末の有効性を評価した。鳥を、E.テネラ、E.アセルブリナおよびE.マキシマ種のオーシスト混合培養物の野外株に曝露する、35日間のin vivo試験を行った。オーシストの混合培養物は、タミル・ナードゥ獣医学研究所、寄生虫学部門、インド・ナーマッカルによって提供された。オーシスト培養物は、臨床的コクシジウム症感染を伴う鳥の糞便から単離されたE.テネラ、E.アセルブリナおよびE.マキシマの混合物であった。得られたオーシストの病原性をブロイラー鳥で評価し、そしてオーシストの投与量は、試験したすべてのオーシスト、E.テネラ、E.マキシマおよびE.アセルブリナに関して、最終的に、病変スコア3およびそれより高いスコアを生じる濃度に基づいて、5x10
5とした。
【0069】
a. インド・ガミディプンディに位置するKeminの社内R&D家禽飼育場施設で、スクリーニング試験を行った。研究には、性選別していない商業的ハイブリッド・ブロイラー鶏、ニワトリ(変種ベンコブ400)を用いた。1日齢の雄の雛を調達し、個々に体重測定し、羽をまとめ、そしてランダムに群に分けた。実験設計を表11に詳述する。実施例1に言及するように、第三のin vivo試験中、適正飼育場管理規範およびワクチン接種スケジュールにしたがった。
【0070】
表11. 研究設計
【0071】
【表11】
【0072】
[00070]鳥に、ニューカッスル病ウイルス(NDV)および伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)に関してワクチン接種した。該研究のため、トウモロコシ・ダイズに基づくすりつぶした食餌を用いた。第1日から、給餌中に取り込まれたQ.インフェクトリア没食子の抽出物を鳥に与えた。処置群を表12に提供する。
【0073】
表12.試験のための処置群の詳細
【0074】
【表12】
【0075】
[00071]蒸留水中、1:2の比で未精製粉末(100〜800ミクロン粒子サイズ)を混合し、次いで80〜90℃で1時間半、攪拌しながら抽出することによって、Q.インフェクトリア没食子の抽出物を調製した。抽出物を濾過して、そして再び、残渣を同様の方式で水中で抽出した。これをさらに約2回反復し、そして総液体抽出物を凍結乾燥した。
【0076】
[00072]結果は、感染対照、およびさらに陽性対照、サリノマイシンと比較した際、E.テネラおよびE.アセルブリナに関する病変スコアの有意な減少があったことを示した。一方、E.マキシマの場合、感染対照およびサリノマイシンに比較した際、病変スコアにおける数値の減少が観察された(
図4)。処置群のグラムあたりのオーシストは、感染対照およびサリノマイシン群よりも有意に低かった(
図5)が、感染対照を含めて、処置群のいずれにおいても、死亡は観察されなかった。これはまた、アイメリア属の他の種によって引き起こされるコクシジウム症を制御する際のQ.インフェクトリアの有効性を証明する。
【0077】
実施例4−MTTアッセイによるQ.インフェクトリアのin vitro抗スポロゾイト活性
[00073]さらに、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)還元アッセイに基づくin vitro法を発展させて、スポロゾイトの生存度の測定値として、植物抽出物の抗スポロゾイト活性を評価した。最適化された方法には、スポロゾイトの調製、滅菌および精製、その後、必要な濃度の植物抽出物とスポロゾイト懸濁物(最小限10
5細胞/ml)のインキュベーションが含まれた。未精製粉末を既知の体積の蒸留水と混合して、特定のppmを達成することによって植物試料を調製し、2分間ボルテックスし、そして0.2μシリンジフィルターを通して濾過した。植物抽出物と24時間インキュベーションした後、スポロゾイトを完全に洗浄し、そして次いで、MTTアッセイを実行した。MTT−PMS溶液(各0.2ミリモル)を41℃で2時間、スポロゾイト懸濁物とインキュベーションした(1:10の比)。インキュベーション後、内容物を800gで5分間遠心分離し、そして上清を注意深く取り除く。紫の色素、ホルマザンを200μl DMSO中に溶解し、そして630nmの参照波長に対して、530nmで、吸光度を測定する。
【0078】
[00074]陽性対照としてのコクシジオスタック(Coccidiostac)(サリノマイシン)とともに、多様な投薬量のQ.インフェクトリアの評価のため、MTTアッセイを行った(
図6)。対照と比較した際、Q.インフェクトリア処置試料においては、スポロゾイトの生存度に用量依存性の減少があった。
【0079】
実施例5−宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対するQ.インフェクトリアのin vitro効果
[00075]宿主細胞のアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対する、Q.インフェクトリアのin vitro効果を評価する実験を行った。
【0080】
[00076]胞子形成したオーシストから、ガラス・ビーズ粉砕および酵素的脱嚢後、スポロゾイトを得た。宿主細胞として、マディン−ダービー・ウシ腎臓(MDBK)細胞を選択した。スポロゾイト、ならびに50および100ppmのクエルクス・インフェクトリアをMDBK宿主細胞に4時間添加した。その後、培地を取り除き、細胞を洗浄し、そして新鮮な培地を添加した。4時間後(T4)、24時間後(T24)、48時間後(T48)および72時間後(T72)、培地およびMDBK細胞を収集し、そして−20℃で保存した。
【0081】
[00077]陰性対照(neg ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、細胞培地中でインキュベーションしたMDBK細胞であった。陽性対照(pos ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、5μg/mlのサリノマイシン溶液とインキュベーションしたMDBK細胞であった。
【0082】
[00078]異なる収集時点で、感染したMDBK細胞からDNAを抽出した。異なる時点および異なる処置に関して、試料に対して、アイメリア属DNAを検出するリアルタイムPCRを行った。PCR結果を
図7に提示する。
【0083】
リアルタイムPCR分析
[00079]1つの処置内で、T4に対する各時点のCt値の相違を計算した(ΔCt)。以下の等式を用いて、T4に対する各時点の倍変化を計算した:
倍変化=2
−ΔCt
[00080]これらの結果を
図8に提示する。
【0084】
[00081]陰性対照は、4時間での開始時点に対して、72時間で、アイメリア属DNAにおける15倍の増加があるため、明らかなアイメリア属増殖を示す。陽性対照は、増殖を完全に阻害可能であった。また、Q.インフェクトリア処置に関して、用量依存方式で、4時間での開始時点に対して、明らかな増殖阻害が観察された。
【0085】
実施例6−宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対するQ.インフェクトリアのin vitro効果
[00082]宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対する、Q.インフェクトリアのin vitro効果を評価する実験を行った。
【0086】
[00083]胞子形成したオーシストから、ガラス・ビーズ粉砕および酵素的脱嚢後、スポロゾイトを得た。宿主細胞として、マディン−ダービー・ウシ腎臓(MDBK)細胞を選択した。スポロゾイトを、50、100および250ppmのクエルクス・インフェクトリアで3時間、前処理した。その後、スポロゾイト懸濁物を洗浄し、そしてMDBK細胞培養上に20時間置いた。インキュベーション後、培地を取り除き、細胞を洗浄し、そして新鮮な培地を添加した。20時間後、72時間後、および96時間後、培地およびMDBK細胞を収集し、そして−20℃で保存した。
【0087】
[00084]陰性対照(neg ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、細胞培地中でインキュベーションしたMDBK細胞であった。陽性対照(pos ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、5μg/mlのサリノマイシン溶液とインキュベーションしたMDBK細胞であった。
【0088】
[00085]異なる収集時点で、MDBK細胞からDNAを抽出した。異なる時点および異なる処置に関して、試料に対して、アイメリア・テネラDNAを検出するリアルタイムPCRを行った。PCR結果を
図9に提示する。
【0089】
リアルタイムPCR分析
[00086]1つの処置内で、T20に対する各時点のCt値の相違を計算した(ΔCt)。以下の等式を用いて、T20に対する各時点の倍変化を計算した:
倍変化=2
−ΔCt
[00087]Q.インフェクトリアに関するこれらの結果を
図10に提示する。
【0090】
[00088]陰性対照は、20時間での開始時点に対して、96時間で、アイメリア属DNAにおける20倍の増加があるため、明らかなアイメリア属増殖を示す。陽性対照は、増殖を完全に阻害可能であった。また、Q.インフェクトリアの異なる投薬量はすべて、アイメリア属増殖を阻害した。50ppmのQ.インフェクトリアに関しては、わずかにより低い効果が見られた。しかし、これは、陰性対照における増加と比較して、無視できるものである。
【0091】
実施例7−Q.インフェクトリアの活性成分(単数または複数)の同定
[00089]これに加えて、本発明者らは、未精製抽出物が抗スポロゾイト活性を所持し、そしてこれは、コクシジウム症を制御可能である作用様式の1つでありうることを同定したため、バイオアッセイとして修飾MTT還元アッセイを用いて、Q.インフェクトリア没食子のバイオアッセイ誘導分画アッセイ(BGFA)を行った。カラムクロマトグラフィによって、異なる溶媒を用いて、Q.インフェクトリア没食子未精製粉末を分画した。抗スポロゾイト活性に関して、各分画由来の試料を評価した。Q.インフェクトリアのメタノールおよび水分画は、他の分画と比較した際、スポロゾイトの生存度のより優れた減少を示し、そしてこれは、サリノマイシン対照に匹敵した(
図11)。
【0092】
[00090]高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって、活性分画の植物化学分析を行って、抗スポロゾイト活性に関与する活性成分(単数または複数)を同定した。メタノールおよび水分画の両方のHPLCクロマトグラムにおいて、4つの主要なピークが観察され、1つのピークは、没食子酸標準の保持時間に対応した(
図12)。Q.インフェクトリア没食子は、60〜70%の加水分解可能タンニンを所持することが知られ、これは加水分解されて、存在する約7%の遊離没食子酸に加えて、没食子酸を放出しうる。
【0093】
[00091]これらの4つの化合物を、半分取HPLCによって分離し、そして同等の濃度の未精製粉末に比較して、抗スポロゾイト活性を評価した。化合物の抗スポロゾイト活性は、ピーク1の化合物が、最適な抗スポロゾイト活性を有することを示した。他の化合物は、スポロゾイトに対して最小限の活性を示した。しかし、未精製粉末は、ピーク1よりも優れた活性を示し、抽出物由来の化合物の相乗的活性があることが示された(
図13)。
【0094】
[00092]HPLCクロマトグラムの異なるピークのLC/MS/MS分析によって、ピーク1が没食子酸であり(
図14)、そして他のピークは高分子量化合物であり、加水分解可能タンニンの分解産物でありうることが確認された。これらの化合物は、さらに分解されて没食子酸を放出しうると仮定された。
【0095】
[00093]さらに、没食子酸%および抗スポロゾイト活性の間の相関に到達するため、Q.インフェクトリアを水中で5分間、2時間および12時間抽出し、そしてその抗スポロゾイト活性を評価した。該研究によって、没食子酸濃度および抗スポロゾイト活性の間に、明確な相関がある(相関係数=−0.982226)ことが示された(
図15)。これらの結果によって、没食子酸がQ.インフェクトリアの抗スポロゾイト活性に関与する活性成分であることが示される。
【0096】
実施例8−没食子酸のin vitro防御効果
[00094]アイメリア・テネラ・スポロゾイトに曝露した宿主細胞に対する、没食子酸一水和物のin vitro防御効果を評価する実験を行った。
【0097】
[00095]胞子形成したオーシストから、ガラス・ビーズ粉砕および酵素的脱嚢後、スポロゾイトを得た。宿主細胞として、マディン−ダービー・ウシ腎臓(MDBK)細胞を選択した。MDBK細胞を、10ppmの没食子酸と、7時間インキュベーションした。その後、培地を取り除き、そしてスポロゾイト懸濁物をMDBK細胞に20時間添加した。インキュベーション後、培地を取り除き、細胞を洗浄し、そして新鮮な培地を添加した。20時間後、72時間後、および96時間後、培地およびMDBK細胞を収集し、そして−20℃で保存した。
【0098】
[00096]陰性対照(neg ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、細胞培地中でインキュベーションしたMDBK細胞であった。陽性対照(pos ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、5μg/mlのサリノマイシン溶液とインキュベーションしたMDBK細胞であった。
【0099】
[00097]異なる収集時点で、MDBK細胞からDNAを抽出した。異なる時点および異なる処置に関して、試料に対して、アイメリア属DNAを検出するリアルタイムPCRを行った。PCR結果を
図16に提示する。
【0100】
リアルタイムPCR分析
[00098]1つの処置内で、T20に対する各時点のCt値の相違を計算した(ΔCt)。以下の等式を用いて、T20に対する各時点の倍変化を計算した:
倍変化=2
−ΔCt
[00099]これらの結果を
図17に提示する。
【0101】
[000100]陰性対照は、20時間の開始時点に対して、96時間で、アイメリア属DNAにおける60倍の増加があるため、明らかなアイメリア属増殖を示す。陽性対照は、増殖をほぼ完全に阻害可能であった。また、10ppm没食子酸処置に関しても、用量依存方式で、増殖の明らかな阻害が観察された。これによって、没食子酸は、10ppmの低用量で、アイメリア属増殖に対して、ある程度まで宿主細胞を防御可能であることを示す。
【0102】
実施例9−宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対する没食子酸のin vitro効果
[00101]宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対する、没食子酸一水和物のin vitro効果を評価する実験を行った。
【0103】
[00102]胞子形成したオーシストから、ガラス・ビーズ粉砕および酵素的脱嚢後、スポロゾイトを得た。宿主細胞として、マディン−ダービー・ウシ腎臓(MDBK)細胞を選択した。スポロゾイトを、10、25および50ppmの没食子酸一水和物で3時間、前処理した。その後、スポロゾイト懸濁物を洗浄し、そしてMDBK細胞培養上に20時間置いた。インキュベーション後、培地を取り除き、細胞を洗浄し、そして新鮮な培地を添加した。20時間後、72時間後、および96時間後、培地およびMDBK細胞を収集し、そして−20℃で保存した。
【0104】
[000103]陰性対照(neg ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、細胞培地中でインキュベーションしたMDBK細胞であった。陽性対照(pos ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、5μg/mlのサリノマイシン溶液とインキュベーションしたMDBK細胞であった。
【0105】
[000104]異なる収集時点で、MDBK細胞からDNAを抽出した。異なる時点および異なる処置に関して、試料に対して、アイメリア属DNAを検出するリアルタイムPCRを行った。PCR結果を
図18に提示する。
【0106】
リアルタイムPCR分析
[000105]1つの処置内で、T20に対する各時点のCt値の相違を計算した(ΔCt)。以下の等式を用いて、T20に対する各時点の倍変化を計算した:
倍変化=2
−ΔCt
[000106]これらの結果を
図19に提示する。
【0107】
[000107]陰性対照は、20時間での開始時点に対して、96時間で、アイメリア属DNAにおける20倍の増加があるため、明らかなアイメリア属増殖を示す。陽性対照、ならびに異なる投薬量の没食子酸は、アイメリア属増殖を阻害した。10ppm没食子酸に関しては、わずかにより低い効果が見られた。しかし、これは、陰性対照における増加と比較して、無視できるものである。
【0108】
実施例10−コクシジウム症を制御する際の没食子酸の有効性
[000108]ブロイラー鳥において、コクシジウム症を制御する際の11、22および33ppmの3つの異なる投薬量での没食子酸の有効性を、in vivo曝露試験によって評価した。E.テネラ、E.マキシマおよびE.アセルブリナのオーシストを用いて、鳥に、アイメリア属の混合感染を誘導した。これらのオーシストは、臨床的コクシジウム症と確認された鳥から単離された。試験設計、オーシスト投与量、ワクチン接種スケジュール、飼育場維持は、実施例3のものと同様であった。病変スコアリングは、感染対照およびさらに陽性対照、サリノマイシンに比較した際、アイメリア属の3つの試験した種すべてに関して、スコアの有意な減少があることを示した(
図20)。グラムあたりのオーシストによって、同様の傾向が示された(
図21)が、感染対照を含めて処置群のいずれにおいても死亡は観察されなかった。用量依存性反応を観察し、22および55ppmの没食子酸の間には有意な相違がなかった。これによって、没食子酸が、ブロイラー鳥において、コクシジウム症の混合感染を制御可能であることが示される。没食子酸が、Q.インフェクトリアの抗コクシジウム活性に関与する活性成分であることもまた明らかである。
【0109】
実施例11−没食子酸を含有する植物の抗スポロゾイト活性
[000109]さらに、ブロイラー鳥における抗スポロゾイト活性および抗コクシジウム活性に関して、没食子酸を含有する他の植物もまた評価した。選択した植物は、ヌルデ(Rhus chinensis)(中国産没食子)およびミロバラン(Terminalia chebula)(インド産没食子)であった。ヌルデは、約70%の加水分解可能タンニンを含有し、そしてミロバランはほぼ0.28%の遊離没食子酸を含有する。しかし、ミロバランは、25〜40%の加水分解可能タンニンを含有し、これが分解されて没食子酸を遊離させうる。これらの植物は、その酸化防止、抗炎症、抗細菌、抗真菌、抗突然変異および抗癌活性に関して報告されてきている。
【0110】
[000110]ミロバランの果実およびヌルデの没食子の未精製粉末を、それぞれ、Natural Remedies、インド・バンガロール、および中国・新疆より得た。MTTアッセイによる抗スポロゾイト・アッセイによって、試験した植物はどちらも、対照に比較してスポロゾイトの生存度を減少させることが可能であり、そして陽性対照、サリノマイシンよりも優れていることが示された(
図22)。
【0111】
実施例12−宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対する没食子酸含有植物のin vitro効果
[000111]宿主細胞におけるアイメリア・テネラ・スポロゾイト侵入および増殖に対する、他の供給源の没食子酸のin vitro効果を評価する実験を行った。
【0112】
[000112]胞子形成したオーシストから、ガラス・ビーズ粉砕および酵素的脱嚢後、スポロゾイトを得た。宿主細胞として、マディン−ダービー・ウシ腎臓(MDBK)細胞を選択した。スポロゾイトを、50、100および250ppmのミロバランで3時間、前処置した。その後、スポロゾイト懸濁物を洗浄し、そしてMDBK細胞培養上に20時間置いた。インキュベーション後、培地を取り除き、細胞を洗浄し、そして新鮮な培地を添加した。20時間後、72時間後、および96時間後、培地およびMDBK細胞を収集し、そして−20℃で保存した。
【0113】
[000113]陰性対照(neg ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、細胞培地中でインキュベーションしたMDBK細胞であった。陽性対照(pos ctrl)は、アイメリア属スポロゾイトに感染させ、5μg/mlのサリノマイシン溶液とインキュベーションしたMDBK細胞であった。
【0114】
[000114]異なる収集時点で、MDBK細胞からDNAを抽出した。異なる時点および異なる処置に関して、試料に対して、アイメリア・テネラDNAを検出するリアルタイムPCRを行った。PCR結果を
図23に提示する。
【0115】
リアルタイムPCR分析
[000115]1つの処置内で、T20に対する各時点のCt値の相違を計算した(ΔCt)。以下の等式を用いて、T20に対する各時点の倍変化を計算した:
倍変化=2
−ΔCt
[000116]ミロバランに関するこれらの結果を
図24に提示する。
【0116】
[000117]陰性対照は、20時間での開始時点に対して、96時間で、アイメリア属DNAにおける20倍の増加があるため、明らかなアイメリア属増殖を示す。陽性対照ならびに250ppmのミロバランは、アイメリア属増殖を完全に阻害可能であった。用量反応効果が見られたが、100ppmのミロバランに関する、より低い効果は、陰性対照における増加と比較して、無視できるものである。
【0117】
実施例13−コクシジウム症を制御する際の没食子酸含有植物の有効性
[000118]没食子酸含有植物、すなわちミロバランおよびヌルデが、ブロイラー鳥において、コクシジウム症を制御する際の有効性を、in vivo曝露試験によって評価した。臨床的コクシジウム症と確認された鳥から単離されたE.テネラ、E.マキシマおよびE.アセルブリナのオーシストを用いて、鳥に、アイメリア属の混合感染を誘導した。試験設計、オーシスト投与量、ワクチン接種スケジュール、飼育場維持は、実施例3のものと同様であった。病変スコアリングは、感染対照およびさらに陽性対照、サリノマイシンに比較した際、アイメリア属の3つの試験した種すべてに関して、200および500ppmのヌルデ、ならびに1000ppmのミロバランが、スコアを減少させうることを示した(
図25)。グラムあたりのオーシストによって、同様の傾向が示された(
図26)が、感染対照を含めて処置群のいずれにおいても死亡は観察されなかった。用量依存性反応は、ヌルデで観察された。
【0118】
[000119]前述の説明および図は、本発明の例示的な態様を含む。本明細書に記載する前述の態様および方法は、当業者の能力、経験および好みに基づいて、多様であることも可能である。特定の順序の方法工程の単なる列挙は、方法工程の順序にいかなる限定も構成しない。前述の説明および図は、本発明を単に説明し、そして例示し、そして本発明は、請求項がそのように限定する場合を除いて、それに限定されない。当業者は、本開示を前にして、本発明の範囲から逸脱することなく、これに修飾および変形を行うことが可能であろう。