特許第6441807号(P6441807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6441807トリテルペン誘導体とその抗インフルエンザへの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441807
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】トリテルペン誘導体とその抗インフルエンザへの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20181210BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20181210BHJP
   C07J 63/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61K31/704
   A61P31/16
   C07J63/00CSP
【請求項の数】25
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-537108(P2015-537108)
(86)(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公表番号】特表2015-535222(P2015-535222A)
(43)【公表日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】CN2013001266
(87)【国際公開番号】WO2014063441
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年9月21日
(31)【優先権主張番号】201210402726.9
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508369940
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】Peking University
(73)【特許権者】
【識別番号】515108934
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・マカオ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,デミン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,マオロン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,スーロン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペン,イユン
(72)【発明者】
【氏名】チゥ,ユンヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リヘ
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101941996(CN,A)
【文献】 特表2012−515773(JP,A)
【文献】 特開平09−328426(JP,A)
【文献】 特開平07−188032(JP,A)
【文献】 特開平11−193242(JP,A)
【文献】 特開平05−255373(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102408466(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1542016(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1438237(CN,A)
【文献】 Planta medica, 1986, No.2, p.80-83
【文献】 Phytochemistry, 1990, Vol.29, No.2, p.595-599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/704
A61P 31/16
C07J 63/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】
[式中、
点線は、単結合又は二重結合のいずれでもよい結合を表し;
R1は、XR1’であり、ここでXは、O又はNHであり、R1’は、XがOである場合、β−D−ガラクトシル、β−D−グルコシル、テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシル、トリ−O−アセチル−β−D−キシロシル、β−D−ラクトシル、又はヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシルであり、XがNHである場合、β−D−ガラクトシル、テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシル、テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシル、又はβ−D−マンノシルであり;
R2とR7は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基、アミノ基、NR11’R12’(ここでR11’とR12’は、それぞれ独立して、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基より選択される)からなる群より選択され;
R3、R4、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立して、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R9は、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、カルボニル基、オキシム基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、OH、NHR9’(ここでR9’は、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基である)、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基からなる群より選択される;
但し、R7がヒドロキシル基である場合、R2とR1’は、水素でない]の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和
含んでなる、インフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療の必要な患者におけるそのような治療における使用のための医薬組成物。
【請求項2】
R10、R11、R12、R13、及びR14が、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ基、アミノ基、未置換C1−C3アルキル基、又は(ヒドロキシ基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
R11とR12が、それぞれ独立して、H又はメチル基より選択され、R10がHであり、及び/又はR13とR14が、それぞれ独立して、H、OH又はNHより選択される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬物が、経口、直腸、経鼻、エアロゾル又は微粒子吸入によって投与されるか又は、頬内及び舌下、経皮、膣内、膀胱内、病巣内、及び非経口経路によって局所的に投与され;スプレー剤は、経口又は経鼻のスプレー投与、又は室内又は局所環境の滅菌及び消毒に好ましい、請求項1〜請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
R2が、H、OH、カルボニル基、SH、又はNHらなる群より独立して選択される、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
R2が、H、OH、又はカルボニル基からなる群より独立して選択される、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
R3、R4、R5、R6、及びR8が、それぞれ独立してメチル基である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
R7が、H、OH、カルボニル基、NH、又はSHからなる群より選択される、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
R7が、OH又はカルボニル基からなる群より選択される、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ(olean)−12−エン(en)−28−酸(oic acid)−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−キシロシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ(urs)−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、及び
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−マンノシド)からなる群より選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物を含んでなる、インフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療の必要な患者におけるそのような治療における使用のための医薬組成物。
【請求項11】
R5が、H、(未置換であるか又はアミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択される、請求項1〜請求項6、請求項8、及び請求項9のいずれか1項に定義される化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物
[但し、以下の化合物
β,29−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−β−D−グルコピラノシルエステル
除外される]。
【請求項12】
請求項10に定義される化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項13】
R3、R4、R5、R6、及びR8が、それぞれ独立してメチル基である、請求項11に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物
【請求項14】
インフルエンザウイルス、特にインフルエンザウイルスの宿主細胞への侵入を阻害する阻害剤、ここで前記阻害剤は、請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物を含む。
【請求項15】
インフルエンザの予防又は治療のための、請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物を含有する医薬品。
【請求項16】
請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の化合物を製造するための方法であって、トリテルペン天然植物抽出物のトリテルペノイドアグリコン又はその群の一部の誘導体のヒドロキシル基を保護基で保護する工程、カルボキシル基を活性化する工程(塩化物、エステル、又は無水物を生成する工程のように)、糖又はアミノ糖とカップリングする工程、及び脱保護化してトリテルペノイドサポニン類を生成する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項17】
以下の構造式:
【化2】
[式中、
点線は、単結合又は二重結合のいずれでもよい結合を表し;
R1は、XR1’であり、ここでXは、O又はNHであり、R1’は、XがOである場合、β−D−ガラクトシル、β−D−グルコシル、テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシル、トリ−O−アセチル−β−D−キシロシル、β−D−ラクトシル、又はヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシルであり、XがNHである場合、β−D−ガラクトシル、テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシル、テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシル、又はβ−D−マンノシルであり;
R2とR7は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基、アミノ基、NR11’R12’(ここでR11’とR12’は、それぞれ独立して、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基より選択される)からなる群より選択され;
R3、R4、R6、及びR8は、それぞれ独立して、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R5は、H、(未置換であるか又はアミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R9は、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、カルボニル基、オキシム基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、OH、NHR9’(ここでR9’は、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基である)、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基からなる群より選択される;
但し、R7がヒドロキシル基である場合、R2とR1’は、水素でない]の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物
[但し、以下の化合物:
3β,29−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−β−D−グルコピラノシルエステル
除外される]。
【請求項18】
R10、R11、R12、R13、及びR14が、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ基、アミノ基、未置換C1−C3アルキル基、又は(ヒドロキシ基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基からなる群より選択される、請求項17に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項19】
R11とR12が、それぞれ独立して、H又はメチル基より選択され、R10がHであり、及び/又はR13とR14が、それぞれ独立して、H、OH又はNHより選択される、請求項17又は請求項18に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項20】
R2が、H、OH、カルボニル基、SH、又はNHらなる群より独立して選択される、請求項17〜請求項19のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項21】
R2が、H、OH、又はカルボニル基からなる群より独立して選択される、請求項17〜請求項20のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項22】
R3、R4、R5、R6、及びR8が、それぞれ独立してメチル基である、請求項17〜請求項21のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項23】
R7が、H、OH、カルボニル基、NH、又はSHからなる群より選択される、請求項17〜請求項22のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項24】
R7が、OH又はカルボニル基からなる群より選択される、請求項17〜請求項23のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【請求項25】
前記化合物が
β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ(olean)−12−エン(en)−28−酸(oic acid)−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−キシロシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ(urs)−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、及び
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−マンノシド)からなる群より選択される、請求項17〜請求項24のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリテルペン誘導体の新しい使用、即ち、インフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療へのトリテルペン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性、感染性の呼吸器系疾患である。内部の核タンパク質(NP)と基質タンパク質(matrix protein, M)の抗原における差異に従って、インフルエンザウイルスは、インフルエンザA型、B型、及びC型のウイルスへ分類することができる。インフルエンザA型ウイルスの世界的流行は、高い罹病率及び死亡率と、人間の健康にとって重大な脅威を引き起こす可能性がある(W. H. O. 2003; Coleman 2007)。20世紀において、インフルエンザA型ウイルスは、主に3回の重大な流感(即ち、1918年のH1N1、1957年のH2N2、及び1968年のH3N2)を引き起こして、約5千万の人々を殺した(Kilbourne 2006; Taubenberger, Hultin et al. 2007)。2009年のインフルエンザA型もH1N1インフルエンザウイルスによって引き起こされて(Dawood, Jain et al. 2009; Zimmer and Burke 2009)、それは急速に広がって、世界の注意を惹きつけた。統計によれば、全世界で約30〜50万の人々が毎年インフルエンザで亡くなった(Fiore, Shay et al. 2007)。
【0003】
これまでにFDAにより承認された抗インフルエンザ薬には、主に2つのカテゴリーが含まれる。第一のカテゴリーには、タミフル(オセルタミビル)とリレンザ(ザナミビル)が含まれ、これらは、主にインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)を阻害し、インフルエンザウイルスの感染細胞からの放出を妨げる(Palese 2004; De Clercq 2006)。第二のカテゴリーには、アマンタジンとリマンタジンが含まれ、これらは主にインフルエンザウイルスのM2タンパク質イオンチャネル活性を破壊して、インフルエンザウイルスの脱殻(uncoating)プロセスを阻害する(Jing, Ma et al.2008)。しかしながら、米国疾病管理予防センターは、サンプル調査において、2008/2009年のH3N2株と2009年に大流行したH1N1ウイルス株では、その株の100%がアダマンタン薬へ抵抗して;季節性H1N1インフルエンザウイルスの99.6%がタミフルへ抵抗することを見出した(http://www.cdc.gov/flu/weekly/weeklyarchives2008-2009/weekly35.htm)。
【0004】
トリテルペノイド類は、天然に広く見出される一群の天然化合物であって、その構造には、A、B、C、D、Eの5つの環と30個の炭素原子が含まれる(Hostettmann, K et al.1995; Waller, G.R. et al. 1996)。トリテルペノイドは、様々な生理活性及び薬理活性の故にますます注目されてきた。例えば、ベツリン酸とその誘導体は、抗腫瘍薬及び抗HIV薬として臨床試験に使用されてきており(米国特許第5,679,828号;6,689,767号;6,369,109号;米国特許出願公開公報番号2004/0204389)、オレアノール酸は、化学傷害に抗して肝臓を保護するための、及びHIV感染を制御するための有効成分であり(Liu, J.et al.2005)、さらに、欧州の研究者は、ホーソン酸(hawthorn acid)がHIVの体内での拡散を阻害することができ、阻害率が80%にまで達すると最近報告した。現時点では開示されていない、本特許出願人が出願した先行特許出願201110373224.3は、一群のトリテルペン誘導体とウイルス性肝炎の予防及び治療へのそれらの使用を開示するが、インフルエンザの予防及び治療へのそれらの使用は、開示していない。インフルエンザウイルスに対するトリテルペノイド類の阻害については、これまで報告されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、インフルエンザウイルス、特にインフルエンザA型ウイルスの感染を阻害することができる、トリテルペノイド類、その立体異性体、そのエピマー、その立体配置異性体、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、トリテルペンとその誘導体又はその医薬的に許容される塩又は水和物を製造するための方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、トリテルペン誘導体又はその医薬的に許容される塩又は水和物の、インフルエンザ、好ましくはインフルエンザA型の予防又は治療への使用を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、以下の態様によって達成される。
【0009】
本発明は、1つの側面において、以下の構造式:
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、
点線は、単結合又は二重結合のいずれでもよい結合を表し;
R1は、XR1’であり、ここでXは、O又はNHであり、R1’は、水素、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、又はそれらの誘導体、又はビタミンC、シアル酸、アミノ糖(1、2、3個の糖)、タミフルとそのプロドラッグであり{「単糖、オリゴ糖、多糖の誘導体」は、その2、3又は4個のような1個以上のヒドロキシ基が、C1−C6アルカノイルオキシ基、C1−C6アルコキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び/又はベンジルオキシ基、等のような置換基によって置換される可能性があり(例えば、ベンゼン環の水素原子は、1以上のハロゲン、ニトロ基、アミノ基、及び/又はC1−C6アルキル基で置換され得る);このヒドロキシル基の1つは、水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換される可能性があることに言及する};
R2とR7は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基、アミノ基、NR11’R12’(ここでR11’とR12’は、それぞれ独立して、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基より選択される)からなる群より選択され;
R3、R4、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立して、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R9は、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、カルボニル基、オキシム基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、OH、NHR9’(ここでR9’は、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基である)、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキルからなる群より選択される;
但し、R7がヒドロキシル基である場合、R2とR1’は、水素でない]のような一連の化合物、その立体異性体、そのエピマー、その立体配置異性体、又はその医薬的に許容される塩又はその水和物と、インフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療の必要な患者(ヒトと動物が含まれる)におけるそのような治療のための医薬品の製造へのそれらの使用を提供する。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ基、アミノ基、(未置換であるか又はヒドロキシ基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基、好ましくはメチル基からなる群より選択される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ基、アミノ基、又はメチル基からなる群より選択され;好ましくは、R11とR12は、それぞれ独立して、H又はメチル基より選択され、R10はHであり、及び/又はR13とR14は、それぞれ独立して、H、OH又はNHより選択される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、薬物は、経口、直腸、経鼻、エアロゾル又は微粒子吸入によって投与されるか又は、頬内及び舌下、経皮、膣内、膀胱内、病巣内、及び非経口経路によって局所的に投与され;スプレー剤は、経口又は経鼻のスプレー投与、又は室内又は局所環境の滅菌及び消毒に好ましい。
【0015】
本発明の別の態様によれば、単糖は、グルコース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、リボース、又はデオキシリボースからなる群より独立して選択され、オリゴ糖は、マルトース、スクロース、又はラクトースであり、又はここで誘導体は、「単糖類、オリゴ糖類、多糖類」の1、2、3又は4個のヒドロキシ基がC1−C4アルカノイルオキシ基、C1−C4アルコキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び/又はベンジルオキシ基によって置換される;又はその1つのヒドロキシ基が、水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換される;好ましくは、「単糖類、オリゴ糖類、多糖類」の1つのヒドロキシ基、又は2、3又は4個のヒドロキシ基が、アセトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシ基、及び/又はベンゾイルオキシ基によって置換される;又は、「単糖類、オリゴ糖類、多糖類」の1つのヒドロキシ基が、水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換されることを意味する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、単糖は、アミノ糖、例えば、ネアミン、ネオマイシン、カナマイシン、又はゲンタマイシンである。
【0017】
本発明の別の態様によれば、Xは、O又はNHであり、前記糖は、単糖又は二糖、又は単糖又は二糖のヒドロキシ基がアセトキシ基によって置換されたアセチル化誘導体である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、R2は、H、OH、カルボニル基、SH、又はNH、好ましくは、H、OH、又はカルボニル基からなる群より独立して選択される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、R3、R4、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立してメチル基より選択される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、R7は、H、OH、カルボニル基、NH、又はSH、好ましくは、OH又はカルボニル基からなる群より独立して選択される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、前記化合物は:
エキノシスト酸、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ(olean)−12−エン(en)−28−酸(oic acid)−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−キシロシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、又は
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)である。
【0022】
キラル原子を含有する場合、上記化合物には、R及びS配置とそれらの混合物が含まれる。
【0023】
上記誘導体の糖部分には、その糖のエピマーも含まれる。
【0024】
本発明はまた、上記に記載されるトリテルペン誘導体を提供するが、それには、当該技術分野において既知の化合物(例、エキノシスト酸)が含まれない。
【0025】
さらに本発明は、本発明による化合物の以下の製造法に記載されるような、トリテルペン誘導体を製造するための方法を提供する。
【0026】
一方、本発明は、本発明によるトリテルペン誘導体の、インフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療への使用を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、インフルエンザウイルス感染を阻害するための、特にインフルエンザウイルスの宿主細胞への侵入を阻害するための阻害剤を提供し、ここで該阻害剤には、上記に記載されるトリテルペン誘導体が含まれる。
【0028】
さらに、本発明は、上記に記載されるトリテルペン誘導体を含有する、インフルエンザを予防するか又は治療するための医薬品を提供する。
【0029】
さらに、本発明は、トリテルペン誘導体をヒト又は他の哺乳動物へ投与することを含んでなる、インフルエンザ、特にインフルエンザA型を予防するか又は治療するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1:プラーク形成阻害アッセイによって証明された、インフルエンザウイルスに対するQ9の阻害効果のチャート。縦座標は、形成プラーク数を示し;横座標は、前記化合物の濃度を示す。
図2図2:ウイルス複製のどの段階にQ9が標的指向するのかを確定するための添加時期(time-of-addition)の実験。(A)添加時期の実験の略図。MDCK細胞をWSNウイルス(MOI=1.5)に感染させて、50μMのQ9を感染後0〜10、0〜2、2〜5、5〜8、又は8〜10時間に添加した。感染後10時間で細胞溶解産物を回収して、複製分析のためにウェスタンブロッティングへ適用した。(B)添加時期の実験のウェスタンブロッティング結果。GAPDHを細胞の内部標準として使用し、NPをインフルエンザウイルスの検出用マーカーとして使用した。
図3図3:インフルエンザウイルスの細胞受容体への結合にQ9が影響を及ぼすかどうかを証明するための血球凝集阻害アッセイ。赤血球細胞がインフルエンザウイルス(WSN株)の血球凝集素タンパク質(HA)によって凝集すると、赤い点が観察されない。HAは、インフルエンザウイルスの細胞中への侵入を媒介する。本実験では、抗HA抗体を陽性対照として使用した。陰性対照としてDMSOを使用した。各ウェルに一定量のウイルス(2倍希釈)と50μlの1%ニワトリ赤血球を加えた。
図4図4:H1N1偽型ウイルスとH5N1偽型ウイルスに対するQ9の阻害効果を検出するための偽型ウイルス実験。偽型ウイルスは、HIVのコアタンパク質とインフルエンザウイルスのエンベロープタンパク質、HA/NAからなる。インフルエンザウイルスの2つのサブタイプ、即ち、H1N1偽型ウイルスとH5N1偽型ウイルスは、Q9によって阻害され;Q9の濃度は、50μMであった。陰性対照としてのDMSOの阻害率を0へ設定した。
図5図5:50μMの濃度での化合物のMDCK細胞に対する細胞毒性。DMSOを陰性対照とした。イヌの腎臓上皮細胞(MDCK)を継代培養して24時間インキュベートし、薬物をDMEM培地へ加え、よく混合してMDCK細胞へ加え、Celltiter-Glo 検査キットを使用して、48時間後に細胞生存度をアッセイした。
図6図6:50μMでの化合物の、インフルエンザウイルスに抗する抗ウイルス活性。DMSOを陰性対照とした。イヌの腎臓上皮細胞(MDCK)を継代培養して24時間インキュベートした後で、WSNウイルス(MOI=1)と試験すべき化合物をDMEMへ加え、よく混合してから、MDCK細胞へ加え、Celltiter-Glo 検査キットを使用して、48時間後に細胞生存度をアッセイした。感染率=100%−細胞変性効果に抗する化合物の保護率。細胞変性効果に抗する化合物の保護率=100%×(1−(「試験化合物」−「メジアンウイルス1」)/(「メジアン細胞」−「メジアンウイルス2」))。ここで「試験化合物」は、試験される化合物だけを加えて、ウイルスを含まない群の細胞生存度を表し;「メジアンウイルス1」は、試験される化合物とウイルスを加えた群の細胞生存度を表し;「メジアン細胞」は、1% DMSOだけを加えた群の細胞生存度を表し;「メジアンウイルス2」は、1% DMSOとウイルスを加えた群の細胞生存度を表す。
図7図7:50μMの濃度での化合物のMDCK細胞に対する細胞毒性試験。この方法は、図5に記載の通りであった。
図8図8:インフルエンザウイルスに抗する化合物の50μMでの抗ウイルス活性。この方法は、図6に記載の通りであった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
「C1−C4アルキル基」という用語は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基のような、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。
【0032】
「C1−C6アルキル基」という用語は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基等のような、1〜6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。
【0033】
「単糖」という用語は、より単純なポリヒドロキシアルデヒド類へもポリヒドロキシケトン類へも加水分解され得ない糖類を意味する。単糖は、C2nの一般式を有する。この分子中に含まれる炭素原子の数に従って、単糖は、トリオース、テトロース、ペントース、及びヘキソース等へ分類される。ポリヒドロキシアルデヒドの構造を有する単糖は、アルドースと呼ばれ(例えば、リボースは、アルドペントースであり;グルコースとガラクトースは、アルドヘキソースである)、ポリヒドロキシケトンの構造を有する単糖は、ケトースと呼ばれる(例えば、フルクトースとソルボースは、ヘキシルケトースである)。最も重要な単糖は、グルコースとフルクトースである。単糖類は、主に、環状のヘミケタール糖構造(酸素環状構造)の形態で存在する(例、リボース、アラビノース、キシロース、リブロース、グルコース、フルクトース、及びガラクトース)。
【0034】
「オリゴ糖」という用語は、マルトース、スクロース、又はラクトースのように、2〜9個の同じか又は異なる単糖分子の縮合及び脱水によって形成される糖を意味する。
【0035】
「多糖」という用語は、デンプン、シクロデキストリン等のように、10個以上の同じか又は異なる単糖分子の縮合及び脱水によって形成される糖類を意味する。
【0036】
「単糖、オリゴ糖、多糖の誘導体」という用語は、その2、3、又は4個のような1個以上のヒドロキシ基がC1−C6アルカノイルオキシ基、C1−C6アルコキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び/又はベンジルオキシ基、等のような置換基によって置換され得て(例えば、ベンゼン環は、1以上のハロゲン、ニトロ基、アミノ基、及び/又はC1−C6アルキル基で置換され得る);そのヒドロキシ基の1つが水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換され得ることに言及する。
【0037】
「アミノ糖類」という用語は、その糖類の1以上のヒドロキシ基がアミノ基によって置換されている、単糖類、オリゴ糖類、又は多糖類を意味する(例、ネアミン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、又はゲンタマイシン)。
【0038】
「トリテルペノイド類」という用語は、ヒドロキシ基が除去されたイソプレン類を端と端で連結することによって生成され、その大多数が30個の炭素原子を含有するテルペノイド類であって、その一部が27個の炭素原子を含有するテルペノイド類である物質(例、オレアノール酸、エキノシスト酸、等)を意味する。
【0039】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。
【0040】
「C1−C6チオアルキル基」という用語は、1個の水素原子がイオウ原子で置換されたC1−C6アルキル基を意味する。
【0041】
「C1−C6アルコキシ基」という用語は、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基のように、C1−C6アルキル基を酸素原子と連結することによって生成される基を意味する。
【0042】
「C1−C6アルカノイルオキシ基」という用語は、アセトキシ基のように、C1−C6アルキル基をアシルオキシ基と連結することによって生成される基を意味する。
【0043】
本発明による化合物の製造法
別の側面において、本発明は、上記の化合物を製造するための方法を提供する。
【0044】
本発明によるトリテルペン化合物及び誘導体は、天然の植物より抽出する、及び/又は化学合成又は半合成又は化学構造修飾によって製造することができる。本発明の1つの態様では、トリテルペノイド類の一部は植物より抽出されるか又は市販されており、他のトリテルペノイド類は上記トリテルペノイド類の構造修飾又は化学合成又は半合成によって製造することができる。
【0045】
抽出法は、トリテルペノイドが豊富な植物を極性溶媒に還流で浸漬する工程、濾過して不溶物を除去する工程、濃縮する工程、酸処理へ処する工程、及びシリカゲルのクロマトグラフィーカラム(例、ジクロロメタン/メタノール勾配溶出)で精製してトリテルペンアグリコンを分離する工程を含む。
【0046】
一連の天然に存在するトリテルペノイドのサポゲニン類(例えば、現在市販されている、オレアノール酸、ベツリン酸、エキノシスト酸(EA)、等)が当業者によって慣用法により抽出されて、本発明の誘導体の合成の出発材料として使用することができる。
【0047】
いくつかの誘導体の半合成法は、トリテルペノイドアグリコンのヒドロキシル基を保護基で保護する工程、カルボキシル基を活性化する工程(アシル塩化物、エステル、又は無水物を生成する工程のように)、糖又はアミノ糖とカップリングする工程、及び脱保護してトリテルペノイドサポニン類を生成する工程を含む。
【0048】
トリテルペノイド類の医薬的に許容される塩又は水和物は、当該技術分野における慣用技術によって製造することができる。
【0049】
本発明による化合物は、その出願の内容全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる、中国特許出願番号:201110373224.3の明細書に記載される方法によって製造することができる。例えば、本発明による化合物は、一般的な合成方法と実施例、並びに下記に記載の類似の方法によって製造することができる。
【0050】
一般的な合成方法
本発明による多様なトリテルペノイド類は、異なる反応によって製造することができる。
【0051】
【化2】
【0052】
EAの糖との連結
α−D−グルコピラノースを例にとると、合成経路は、以下のように記載される:
【0053】
【化3】
【0054】
エキノシスト酸−グルコースコンジュゲートの合成経路
類似の方法によって、一連のエキノシスト酸−糖コンジュゲートとオレアノール酸−糖コンジュゲートを合成する。
【0055】
具体的な反応工程は、下記に記載される通りである:
(1)糖上のヒドロキシ基の過アセチル化保護反応
ピリジン/無水酢酸(1.2当量)=2/1の典型的な反応比を使用して、出発材料としての2gの単糖又は二糖と適正量の触媒、DMAPを加えた。この反応は、室温で撹拌し、12時間後にTLCによって検出した。溶出液比:石油エーテル:酢酸エチル=2:1。
【0056】
後処理:生成物をロータリーエバポレーションへ処してピリジンを除去し、ジクロロメタンで溶かし、1N HCl溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒をエバポレーションによって除去し、収率95〜98%で得て、取っておいた。
【0057】
この粗生成物を精製せずに次の反応へ直接導入したが、薄層上で単一生成物の点を確認することが必要であった。生成物の点が単一でない場合、生成物は、カラムクロマトグラフィーによる精製へ必ず処した。
【0058】
(2)ブロモ糖ドナーの製造
1ミリモルの過アセチル化保護化糖をジクロロメタンに溶かし、氷浴中で2当量のHBr−HOAc溶液を滴下すると、温度は1時間後に室温まで上昇して、この反応をそのまま13時間続けた。
【0059】
後処理:生成物を適正量の水で洗浄してから、飽和NaHCO溶液で洗浄し、続いて乾燥させずに次の反応へ処した。
【0060】
(3)エキノシスト酸のグリコシル化
この反応では、相転移触媒反応を利用した。上記の反応工程で入手したグリコシルドナーを、乾燥や単離へ処すことなく、20mLのジクロロメタンで溶かし、188.8mgのエキノシスト酸(EA)、138mgのKCO、51.52mgの臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、2mLの水を加えた。この反応は、N保護下で還流しながら50℃で行った。12時間後、この反応を停止させた。
【0061】
後処理:この反応溶液を10mLの水で1回洗浄し、MgSOで乾燥させてから、クロマトグラフィーカラムで精製した。
【0062】
この反応は、反応条件が穏やかで、後処理が簡単であって、収率が高かった。
【0063】
この反応において、グリコシルドナーが異なっていても、この反応は、EAより極性が低い副生成物を生成し、これは、慣用の分離法によって除去することができる。
【0064】
(4)中間生成物の高選択的な脱アセチル化
反応体を適正量のMeOHに溶かし、適正量のMeONaを加えて、そのまま室温で反応させた。この反応過程は、TLCによって検出した。一般に、この反応は、1時間で完了した。
【0065】
後処理:陽イオン交換樹脂を加えた。pHは、中性へ調整した。樹脂を濾過して除去した。濾液をロータリーエバポレーションへ処して溶媒を除去してから、クロマトグラフィーカラムで精製した。
【0066】
12−ケトン/ヒドロキシ基の誘導体の合成
【0067】
【化4】
【0068】
328mgのエキノシスト酸メチルエステルを10mLのジクロロメタンに溶かし、92mgのm−CPBA(m−クロロペルオキシ安息香酸)を加えた。この反応は、室温で一晩行い、カラム分離へ処して、260mgの白色の固形物を収率77%で得た。
【0069】
12−ヒドロキシ−エキノシスト酸の合成
【0070】
【化5】
【0071】
上記化合物の150mgを氷浴中で5mLのメタノールに溶かし、36mgの水素化ホウ素ナトリウムを加え、そのまま一晩反応させた。
【0072】
処理法:ほとんどの溶媒を蒸発させて除去し、水で抽出し、3mLの1M HClを加え、酢酸エチルで3回抽出し、回収し、蒸発させ、クロマトグラフィーカラムにて石油エーテル/酢酸エチル=2:1で精製して、122mgの白色の固形物を収率75%で得た。
【0073】
3−ヒドロキシ基の修飾
3,16−ジオンの合成
【0074】
【化6】
【0075】
25mLの丸底フラスコへ120mgのEAメチルエステル、200mgの無水重炭酸ナトリウム、及び410mgのデス・マーチン(Dess-martin)酸化剤を加えて、ジクロロメタン溶媒においてそのまま室温で48時間反応させた。この反応系は、乳白色の懸濁液であった。生成物を濾過し、溶媒を減圧蒸発によって除去した。生じる固形物を単離して、溶出液:石油エーテル:酢酸エチル=3:1でのクロマトグラフィーカラムで精製して、62mgの白色の固形のEAメチルエステル−ジオンを収率52%で得た。
【0076】
3−アミノ基の合成
【0077】
【化7】
【0078】
エキノシスト酸メチルエステルを3−ケトエキノシスト酸メチルエステルへ合成した。240mgのエキノシスト酸を3mLのジクロロメタンに溶かし、4mLのメタノールを加え、60℃の油浴中で150mgの酢酸アンモニウムを加え、そのまま1時間反応させ、冷やし、20mgのNaBHCN(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)を加え、そのまま24時間反応させた。後処理:ほとんどの溶媒を蒸発除去し、10mLの水と10mLの酢酸エチルで3回抽出した。このエステル層を回収して、クロマトグラフィーカラムで精製した。このカラムを石油エーテル/酢酸エチル=1:1で洗浄してからジクロロメタン/メタノール=8.5:1で溶出させて、168mgの白色の固形物を収率70%で得た。
【0079】
当業者は、他のトリテルペノイド誘導体を製造することができる。
【0080】
本発明による化合物の活性
本発明の化合物は、インフルエンザウイルスに抗する活性を有し、ヒト又は動物のインフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療に使用することができる。
【0081】
本発明の化合物は、インフルエンザウイルスの細胞中への侵入を防ぐことができるが、この機序に限定されるわけではない。
【0082】
本発明の化合物は、純粋な化合物又は化合物の混合物の形態で投与し得る、又は好ましくは、医薬品賦形剤、希釈剤、又は担体において投与し得る。
【0083】
活性薬剤は、障害の治療に適したどの経路によっても投与してよい。
【0084】
好適な投与経路には、経口、直腸、経鼻、エアロゾル又は微粒子吸入、局所(頬内と舌下が含まれる)、経皮、膣内、膀胱内、病巣内、及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、胸骨内、髄腔内、硬膜外、及び皮内が含まれる)が含まれる。本発明の化合物は、スプレー剤として、頬内又は鼻腔スプレー投与に、又は室内又は局所環境の滅菌及び消毒に特に適している。
【0085】
本発明はまた、本発明の化合物を1以上の医薬的に許容される添加剤と、有っても無くてもよい他の薬物と一緒に含んでなる組成物に関する。医薬的に許容される添加剤は、担体、希釈剤、アジュバント、及び/又は賦形剤であってよく、すべての慣用の溶媒、分散剤、充填剤、固体担体、コーティング剤、抗真菌剤又は抗菌剤、経皮透過剤、界面活性剤、等張剤、及び吸収剤、並びに遅延又は制御放出マトリックス剤が含まれる。活性薬剤は、活性薬剤の成分の同時、分離、又は継続投与に適したキットの形態であってよい。組成物の他の成分と適合可能であって、患者が生理学的に忍容可能であるという意味で、それぞれの担体、希釈剤、アジュバント、及び/又は賦形剤は、「医薬的に許容され」なければならない。組成物は、簡便には、単位剤形で提示されてよくて、医薬製造の分野で公知の方法によって製造することができる。そのような方法は、有効成分を担体と混合する工程を含み、ここで担体は、1以上の補助剤からなる。一般に、組成物の製造は、有効成分を液体の担体、希釈剤、アジュバント、及び/又は賦形剤、又は微細に単離した固体担体、又はその両方と均質的かつ直接的に混合する工程、そして必要であれば、その産物を成型する工程を含む。
【0086】
本発明によれば、経口投与に適した組成物は、カプセル剤、サシェ剤、又は錠剤のように;散剤又は顆粒剤として;水相又は非水性液体中の溶液剤又は懸濁液剤として;又は水中油型の液体乳剤又は油中水型の乳剤として、そのそれぞれが所定量の有効成分を含有する別々の単位の形態で存在してよい。有効成分は、ボーラス剤、舐剤、又はペースト剤の形態でも存在してよい。
【0087】
錠剤は、1以上の補助剤と一緒に任意に打錠するか又は成形することによって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋結合ポリポビドン、架橋結合カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、又は分散剤と混合してもよい、粉末又は顆粒のような流動性の有効成分を好適な機械において圧縮することによって製造することができる。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械において成型することによって製造し得る。錠剤は、被覆してもよく、割線を入れてもよく、有効成分の遅延又は制御放出をもたらすように有効成分を製剤化してもよく、例えば、所望される放出特性をもたらすために、様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する。錠剤は、胃の中でなく腸の中で有効成分を放出するために、腸溶性コーティング剤を有してもよい。
【0088】
非経口投与に適した組成物には、水性及び非水性の等張無菌注射溶液剤(これは、抗酸化剤、緩衝剤、抗微生物剤、及び該組成物が予測される患者の血液と等張であるようする溶質を含有してよい);並びに、水性及び非水性の無菌懸濁液剤(これには、懸濁剤と濃化剤が含まれてよい)が含まれる。該組成物は、アンプル又はチューブのような、単用量又は多用量の密封容器中に存在してよく、冷凍−乾燥(凍結乾燥)条件で保存して、注射用水のような無菌の液体担体だけを使用前に加えればよい。即時注射(extemporaneous injection)の溶液剤及び懸濁液剤は、上記の種類の無菌の散剤、顆粒剤、及び錠剤を用いて調製し得る。
【0089】
皮膚への局所適用に適した組成物、即ち、経皮投与による組成物は、どの好適な担体又はマトリックス剤に溶解又は懸濁した活性薬剤を含有してよく、これは、ロ−ション剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、軟膏剤、等の形態であり得る。好適な担体には、流動パラフィン、プロピレングリコール、ワックス類、ポリオキシエチレン、及び長鎖アルコール類を含めることができる。パッチのような経皮性デバイスも使用してよく、これは、硝酸/酢酸セルロース、プロピレン、及びポリカーボネートのような好適な材料で製造される微細孔膜を含み得る。パッチ剤は、好適な皮膚接着剤及び基質材料も含有してよい。
【0090】
本発明による活性化合物はまた、インプラントの形態で存在してよく、これは薬物の重合性デバイスを含み得て、ここでポリマーは、生体適合性で非毒性である。好適なポリマーには、ヒドロゲル類、シリコーン類、ポリエチレン類、及び生分解性ポリマーが含まれ得る。
【0091】
本発明の化合物は、持続放出(即ち、制御放出)又は遅延放出の形態で投与してよい。持続放出製剤とは、有効成分が投与後患者の体内でゆっくりと放出されて、所望される薬物濃度が最小限の時間で維持される製剤である。持続放出製剤の製法は、当業者に公知である。この剤形には、経口型、インプラント、及び経皮型が含まれ得る。持続放出投与では、例えば、リポソーム中の持続放出粒子懸濁液剤として有効成分を使用してよい。
【0092】
本発明による化合物の好適な投与量範囲は、選択される化合物の比活性、患者の状態、及び治療される病状に従って選択される。当業者は、当該技術分野でのその一般的な知識及び経験に従って、好適な投与量範囲を選択することができる。例えば、インフルエンザに関しては、ヒトの好適な投与量は、1人あたり1日1〜500mg、例えば、10〜300mg、通常は30〜150mgの範囲に及ぶ可能性がある。
【0093】
インフルエンザウイルスの細胞中への侵入を阻害することにおける、本発明の化合物の生物活性の評価法
1.細胞変性効果(CPE)阻害アッセイ
インフルエンザウイルスの感染は細胞変性をもたらして、そのために細胞生存度が減少する。薬物がインフルエンザウイルスの複製を阻害することができれば、その細胞変性の影響は減少して、細胞生存度が改善することになる。具体的には:
1)イヌ腎臓上皮細胞(MDCK)を1:3比で白色96ウェルプレートへ播種し、10% FBS含有DMEM培地で細胞インキュベーターにおいて37℃で24時間培養した。
【0094】
2)インフルエンザウイルス[A/WSN/33(H1N1)、感染多重度(MOI)=1]とある濃度の試験化合物を、2μg/mL TPCKと1% FBSで処理したトリプシンを含有する100μlのDMEMへ加えて、十分に混合した。陰性対照化合物は、1% DMSO(化合物を希釈するのに使用する溶媒)であった。それと同時に、ウイルス無しで化合物だけを加える実験群も用意して、細胞生存度に対する該化合物の効果を判定した。
【0095】
3)96ウェルプレート中のMDCK細胞の培地を吸引し、その培地をウイルスと混合して化合物をMDCK細胞へ加え、細胞インキュベーターにおいて37℃で48時間培養した。各試料につき3回反復した。
【0096】
4)細胞生存度は、CellTiter-Glo 蛍光細胞生存度アッセイキット(カタログ番号:G7571、プロメガ)を使用して検出した。細胞と CellTiter-Glo 試薬を室温環境に置いて、その温度を室温と平衡にした。100μl/ウェルの CellTiter-Glo 試薬を細胞の培養上清へ加え、2分間振り混ぜ、暗所に10分間静置した。Tecan Infinite M2000 PROTM機器を使用して、細胞生存度を検出した。
【0097】
5)EC50の計算法:化合物を濃度系列に希釈してから、上記の方法を使用して、細胞生存度を検出した。細胞変性に抗する化合物の保護率=100×(1−(「試験化合物」−「メジアンウイルス1」)/(「メジアン細胞」−「メジアンウイルス2」))であり、ここで「試験化合物」は、試験される化合物だけを加えて、ウイルスを含まない群の細胞生存度を表し;「メジアンウイルス1」は、試験される化合物とウイルスを加えた群の細胞生存度を表し;「メジアン細胞」は、1% DMSOだけを加えた群の細胞生存度を表し;「メジアンウイルス2」は、1% DMSOとウイルスを加えた群の細胞生存度を表す。化合物の濃度と対応する保護率をソフトウェアのPrismへフィードしてから、EC50を計算した。この方法は、抗ウイルス薬スクリーニングの分野で広く使用されてきた(Noah, Severson, et al. 2007)。
【0098】
6)CC50の計算法:化合物の細胞毒性も CellTiter-Glo によって検出した。化合物を系列濃度に希釈してから、その細胞へ加えた。この方法は、ウイルスを添加しないこと以外は、2)〜4)に記載の通りであった。48時間のインキュベーション後、細胞生存度を測定した。次いで、対照群(1% DMSO)の細胞生存度を100%と定義して、対照群中の1% DMSOの細胞生存度によって割ることによって、他の化合物群のそれぞれの細胞生存度を標準化してから、100%を掛けた。化合物の濃度と対応する標準化された細胞生存度をソフトウェアのPrismへ入力して、それによってCC50を計算した。
【0099】
2.プラーク阻害アッセイ
プラーク阻害実験を使用して、化合物の抗ウイルス効果をさらに証明した。
【0100】
具体的な方法を以下のように記載した:
1)MDCK細胞を12ウェルプレートへ継代培養し、細胞密度が0.4×10個の細胞/ウェルに達するように、10% FBS含有DMEM培地で37℃で24時間培養した。この細胞をPBSで1回洗浄した。
【0101】
2)A/WSN/33(H1N1)ウイルス(100PFU/ウェル)と段階的に希釈した化合物を混合した。希釈液は、2μg/mLのTPCK処理トリプシンを含有するDMEMであった。この混合物をMDCK細胞へ加え、そのまま37℃で1時間付着させた。
【0102】
3)このウイルス溶液を吸引し、その細胞をPBSで3回洗浄して、非結合ウイルスを除去した。
【0103】
4)この細胞を、1.5%低融点アガロース、試験される化合物、2μg/mLのTPCK処理トリプシン(フェノールレッドを含まない)を含有する1mL DMEMで覆った。留意点:温度は、細胞が熱により死ぬことを回避すべく、あまりに高くしてはならない。
【0104】
5)アガロースが4℃(10〜15分)で固化した後で、これを逆さにして37℃のインキュベーターに入れた。3〜4日のうちにプラークを計数して、ウイルス力価を計算した。化合物がウイルスを阻害した場合、プラークの数は減少した。
【0105】
3.添加時期の実験:
この実験を探究して、インフルエンザウイルスの生活環のどの段階を該化合物が標的として指向するのかを分析した。詳細は、以下の通りであった:
1)MDCK細胞を6ウェルプレートへ継代培養して、細胞インキュベーターにおいて10% FBS含有DMEM培地で、37℃で24時間培養した。
【0106】
2)A/WSN/33(H1N1)ウイルス(MOI=1)を無血清DMEM培地で希釈して、MDCK細胞に感染させた。
【0107】
3)吸着から子孫ビリオン(virions)の放出までのインフルエンザウイルスの複製サイクルは、約6〜8時間であった。故に、薬物は、細胞培地へ以下の時間帯で加えた:0〜10、0〜2、2〜5、5〜8、又は8〜10時間。
【0108】
4)感染後10時間で、この細胞を氷冷PBSで1回洗浄して、200μl/ウェルのPIPA溶解液で溶解させた。この細胞をセルスクレーパー(cell scraper)で掻きとって、1.5mL EPチューブへ吸い上げて、氷上に15分間置いた。このEPチューブを4℃、12000rpmで10分間遠心分離させて、上清を別の1.5mL EPチューブへ移した。
【0109】
5)この試料の30μlを等量の2×タンパク質ローディング緩衝液と混合して、100℃で10分間煮沸させた。
【0110】
6)この煮沸した試料の20μlを12%タンパク質ゲルローディングチャネル(loading channel)へ加えて、SDS−PAGE電気泳動を実施した。
【0111】
7)インフルエンザウイルスのNPタンパク質の発現レベルを免疫ブロット法(ウェスタンブロッティング)によって検出し(これによって細胞中のウイルスの複製を検出した);同時に、細胞タンパク質のGAPDHを内部対照として使用した(これはまた、薬物の細胞毒性を証明するために使用することができる)。
【0112】
4.偽型ウイルス実験
化合物がインフルエンザウイルス生活環の侵入段階に作用するのかどうか、そして該化合物が他の高病原性インフルエンザ株を阻害し得るのかどうかを証明するために、高い安全性と操作性を備えたインフルエンザウイルスの偽型ウイルス実験を使用した。偽型インフルエンザウイルスは、組換えウイルス粒子であって、そのコアはレトロウイルスゲノム(HIVゲノムパッケージング遺伝子を除く)に由来して、外層は、インフルエンザウイルスのエンベロープタンパク質のヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)を含んでなる。この組換えウイルスは、インフルエンザウイルスとして細胞に感染することはできるが、1回しか複製し得ず、子孫ウイルスを包装する(package)ことはできない。
【0113】
偽型ウイルスの調製と、化合物が偽型ウイルス感染を阻害する実験の具体的な方法
1)インフルエンザウイルスのHA遺伝子とNA遺伝子を真核細胞発現ベクターのpcDNA4/TOへクローン化して、シークエンシングの検出を行った。
【0114】
2)次工程のトランスフェクションのために、プラスミドMIDIキット(プロメガ)を使用してこのプラスミドを抽出し、プラスミドの濃度と純度を分光光度法によって測定した。
【0115】
3)293T細胞を10cmの細胞培養皿へ継代培養し、37℃で24時間培養した。この細胞培地は、トランスフェクションの1〜2時間前に交換した。
【0116】
4)pcDNA4/TO−HA、pcDNA4/TO−NA、及びpNL4−3.Luc.Eの担体のそれぞれ6gを、トランスフェクション試薬のリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、293T細胞へ同時トランスフェクトした。このトランスフェクションの4〜6時間後に、培地を交換した。トランスフェクションの具体的な工程は、リポフェクタミン2000(Invitrogen)の製品仕様書に記載の通りであった。トランスフェクトされた細胞を37℃で72時間培養した。
【0117】
5)培養上清中へ偽型インフルエンザウイルス粒子が分泌された。偽型ウイルスを含有する細胞培養上清を0.45μm孔径フィルターに通して濾過して、培地中の細胞と細胞残滓を除いた。
【0118】
6)この偽型ウイルスは、−80℃で保存した。VSV偽型ウイルスを上記と同じ方法で調製したが、ここではインフルエンザウイルスのpcDNA4/TO−HAとpcDNA4/TO−NAを、VSVGを発現するプラスミドに置き換えた。
【0119】
7)MDCK細胞を黒色のクリアーボトム96ウェルプレートへ播種し、37℃で24時間培養した。
【0120】
8)2μg/mLのTPCK処理トリプシンと1% FBSを含有するDMEM中で、試験される化合物と希釈された偽型ウイルスを徹底的に混合した。
【0121】
9)96ウェルプレート中の細胞培地を吸引してから、その細胞へ100μl/ウェルの混合物を加え、37℃で48時間培養した。それぞれの化合物が3つのウェルで、それぞれの化合物が1組のVSV偽型ウイルス実験群を含んでおり、該化合物のインフルエンザ偽型ウイルスに対する特異性を検出した。
【0122】
10)被感染細胞中のルシフェラーゼの活性は、Bright-glo ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ)によって検出した。初めに、細胞培養プレートと検出試薬を室温環境に置いて、その温度が室温と平衡になるようにしてから、96ウェルプレートへ100μl/ウェルの検出試薬を加え、10秒間振とうし、暗所に2分間静置してから、ルシフェラーゼの活性を分光光度計によって測定した。
【0123】
調製した偽型ウイルスゲノムには、ウイルス複製に必要な遺伝子が欠損しているので、この偽型ウイルスは複製能力を失っており、高い安全性を備えていた。A/WSN/33(H1N1)株に加えて、選択すべきインフルエンザウイルス株にA/VietNam/1203/2004(H5N1)を含めたのは、この株が高病原性のインフルエンザウイルス株であるからである。これらの株のHA遺伝子とNA遺伝子は、生きたウイルスの操作無しに、北京義翹神州生物技術有限公司(Beijing Sino Biological Technology Co., Ltd.)より購入することができる。それ故に、実験は、安全であった。この偽型ウイルス粒子は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有した。細胞に侵入すると、それは、ルシフェラーゼ遺伝子を発現することができる。細胞を溶解させた後で、酵素基質を加えた。酵素標識メーター(enzyme-labelled meter)で読み取った。
【0124】
5.血球凝集阻害(HI)アッセイ
この方法を使用して、細胞受容体へのウイルスの結合に薬物が影響を及ぼすかどうかを検出する。具体的な方法は、以下の通りであった:
1)1%(v/v)ニワトリ赤血球懸濁液の調製
1〜2羽の健康なニワトリを選んだ。それらの血液を同量の抗凝固剤溶液へ採取して均質に混合し、4℃の冷蔵庫に保存した。この混合物を800〜1000rpmで5分間遠心分離させた。ピペットを使用して、上清と赤血球の上層にある白血球の薄い層を捨てた。沈殿した赤血球を生理食塩水と均一に穏やかに混合して、遠心分離機において800rpmで5分間遠心分離させ、上清を除去して、生理食塩水と均一に混合し、遠心分離させた。この工程を4〜5回繰り返した。この赤血球の最後の遠心分離の後で、上清を除去した。この赤血球は、4℃の冷蔵庫において2〜3日間保存することができた。使用時に、1mLピペットによって0.1mLの赤血球を吸い上げて、9.9mLの生理食塩水へ加えて、即ち、1%赤血球懸濁液とした。
【0125】
2)ウイルスの血球凝集力価の決定
WSNインフルエンザウイルスを2倍で段階希釈し、希釈液は、PBSであった。
【0126】
3)このウイルス培地と1%赤血球懸濁液を等量(それぞれ50μl)で混合し、V底96ウェルプレートへ加え、マイクロ発振器(micro oscillator)上で1分間振り混ぜて、室温で30分間インキュベートした。
【0127】
4)この反応プレートを45°傾けるときに、ウェルの底に沈殿した赤血球が傾斜した平面に沿って線形状態で(in linear state)下方へ流れるとすれば、赤血球がウイルスによって凝集されなかったか又は完全には凝集されなかったことを示し;ウェルの底にある赤血球がウェル底を覆って、均一な薄層へ凝集したならば、赤血球がウイルスによって凝集されたことを示す。インフルエンザウイルスの血球凝集力価を決定した後で、使用するウイルスの好適な量を決定した。
【0128】
5)薬物、DMSO(陰性対照)、又は抗HA特異的モノクローナル抗体(陽性対照)を別々にウイルス培地と混合して、細胞懸濁液へ加えた。血球凝集に対する化合物の阻害効果を観察した。
【0129】
下記に示す態様を使用して、本発明について詳しく記載した。この態様は、例解としてのみ使用するので、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0130】
オレアノール酸とエキノシスト酸の抽出と分離
オレアノール酸とエキノシスト酸は、植物に広く存在するトリテルペノイド類の天然産物である。それらは、以下の方法によって植物より分離される:オレアノール酸とエキノシスト酸が豊富な、アカシア等のような植物を還流しながらエタノールに浸漬し、高極性の部分を抽出して濃塩酸で処理して、その中に含まれる糖類を除去した。塩化メチレン/メタノールでの勾配溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を実施して、多量の純粋なオレアノール酸及びエキノシスト酸を単離した(「天然有機化合物の抽出及び分離(Extraction and Separation of Natural Organic Compounds)」(1994),Science and Technology Press)。オレアノール酸とエキノシスト酸は、市販品でも入手可能である。
【実施例】
【0131】
実施例1
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)と3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)の合成
【0132】
【化8】
【0133】
50mL反応フラスコに3gのD−グルコースを加え、24mLのピリジンに溶かし、12mLの無水酢酸と触媒量のDMAPを連続して加えた。この反応は室温で一晩行い、反応を止めた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=1:1。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した後で、生成物を20mLの溶出液(PE:AcOEt=1:1)で溶かし、フラッシュカラムで分離し、スタンバイさせた。
【0134】
上記生成物の390mgを25mL反応フラスコに加え、3mLのDCMで溶かし、0.21mLのHBr−AcOH溶液を氷浴中でゆっくり滴下した。この反応は氷浴中で1時間撹拌し、そして室温で撹拌した。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=2:1。この反応は12時間撹拌した後、止めた。反応混合物を20mLのDCMで希釈し、20mLの蒸留水、20mLの飽和NaHCO溶液で連続して洗浄した。有機層を合わせ、MgSOで乾燥させ、PE:EA=1:1の溶出条件下にクロマトグラフィーカラムで精製して、194mgの黄色の粘稠物質を得た。
【0135】
DCM中20mLのブロモ糖(194mg,0.47ミリモル)を含有する50mL反応フラスコへ189mg(0.4ミリモル)のEA、138mgのKCO、52mgの臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、2mLの水を加えた。この反応はN雰囲気中で還流しながら50℃で撹拌した。12時間後に反応を止めた。TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=1:1。反応混合物をPE:AcOEt=2:1の溶出条件下にクロマトグラフィーカラムで精製して、252mg(収率80%)の白色の固形化合物、3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.54 (d, 1H, J = 8.2Hz, Glc-1-H), 5.39 (t, 1H, J = 3.2Hz, H12), 5.08-5.24 (m, 3H), 4.39 (br t, 1H, H16), 4.25 (dd, 1H, J = 4.4, 12.4Hz), 4.02 (dd, 1H, J = 2.1, 12.4Hz), 3.74-3.78 (m, 1H), 3.19 (dd, 1H, J = 4.2, 10.6Hz, H3), 2.97 (dd, 1H, J = 4.0, 14.3Hz, H18), 2.05, 2.00, 2.00, 1.99 (s, それぞれ 3H, CH3CO), 1.32, 0.96, 0.92, 0.89, 0.88, 0.75, 0.70 (s, それぞれ 3H, H27, H23, H30, H25, H29, H26, H24)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 174.72 (C=O, C28), 170.53, 170.03, 169.38, 169.07, 141.88 (C13), 123.22 (C12), 91.56 (Glc-1-C), 78.84, 74.22, 72.68, 72.41, 69.91, 67.90, 61.44, 55.19, 48.79, 46.61, 46.03, 41.31, 40.40, 39.49, 38.68, 38.48, 36.93, 35.46, 35.14, 33.02, 32.62, 30.23, 30.17, 28.01, 27.12, 26.76, 24.45, 23.24, 20.62 (CH3CO), 20.50 (3C, 3 x CH3CO), 18.22, 17.01, 15.55, 15.43。ESI-HRMS (m/z) C44H66O13Na (M+Na+) の計算値:825.4396。実測値:825.4387; C44H70O13N (M+NH4+): 820.4842。実測値:820.48400。この化合物は、以下のQ1によって表された。
【0136】
この化合物の50mgを25mL反応フラスコにおいて5mLメタノールで溶かし、適正量のMeONaを加えて、撹拌しながらそのまま室温で1時間反応させた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 DCM:MeOH=7:1。反応の完了時に陽イオン交換樹脂を加えて、pHを中性へ調整した。反応混合物をDCM:MeOH=5:1の溶出液でのクロマトグラフィーカラムで精製して、12.4mg(収率31%)の白色の固形物、3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)を得た。1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 5.35 (d, 1H, J = 8.1Hz, Glc-1-H), 5.32 (t, 1H, J = 3.4Hz, H12), 4.53 (br t, 1H, H16), 3.82 (d, 1H, J = 11.1Hz), 3.67 (dd, 1H, J = 4.3, 12.0Hz), 3.27-3.34 (m, 4H), 3.15 (dd, 1H, J = 5.0, 11.4Hz), 2.99 (dd, 1H, J = 4.0, 14.2Hz), 2.29 (t, 1H, J = 13.3Hz), 1.37, 0.97, 0.96, 0.89, 0.79, 0.77 (s, 7 x CH3)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 177.21 (C=O, C28), 144.63 (C13), 123.63 (C12), 95.72 (Glc-1-C), 79.72, 78.73, 78.33, 74.93, 74.01, 71.08, 62.42, 56.88, 50.03, 48.20, 47.78, 42.65, 42.12, 40.82, 39.97, 39.84, 38.16, 36.44, 36.27, 31.70, 31.28, 28.74, 27.27, 25.01, 24.49, 19.50, 17.78, 16.33, 16.10。ESI-HRMS (m/z) C36H58O9Na (M+Na+)の計算値:657.3973。
【0137】
実施例2
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシド)と3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)の合成
【0138】
【化9】
【0139】
2gのD−ガラクトースを50mL反応フラスコに入れ、16mLのピリジンに溶かし、8mLの無水酢酸と触媒量のDMAPを連続して加え、そのまま室温で10時間反応させた後、この反応を止めた。反応の完了は、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=1:1。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した後、反応混合物を20mLのDCMで溶かし、20mLの水で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去して、過アセチル化ガラクトースの固形生成物を得た。
【0140】
上記生成物の390mgを25mL反応フラスコに入れ、3mLのDCMで溶かし、0.35mLのHBr−AcOH溶液を氷浴中でゆっくり滴下し、そのまま1時間反応させてから、室温で反応させた。この反応は、12時間後に止めた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=2:1。反応混合物を20mLのDCMで希釈し、20mLの蒸留水、20mLの飽和NaHCO溶液で連続して洗浄した。有機層を合わせ、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去して、20mLとした。
【0141】
ブロモ糖(上記工程の反応における非分離混合物)の20mL DCM溶液を含有する50mL反応フラスコへ188.8mg(0.4ミリモル)のEA、138mgのKCO、51.52mgの臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、及び2mLの水を加え、N雰囲気中で還流しながら50℃でそのまま反応させた。この反応は、12時間後に止めた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=1:1。反応混合物をPE:AcOEt=1:1の溶出条件下にクロマトグラフィーカラムで精製して、98.5mg(収率31%)の白色の固形物、3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシド)を得た。
【0142】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.54(d, 1H, J =8.4Hz, Gal-1-H), 5.40-5.44(m, 2H), 5.31(t, 1H, J =10.3Hz), 5.07(dd, 1H, J =3.4, 10.4Hz), 4.39(br t, 1H, H16), 4.10-4.15(m, 2H), 4.00(t, 1H, J =6.7Hz), 3.22(dd, 1H, J =4.1, 10.4Hz, H3), 3.00(d, 1H, J =10.6Hz, H18), 2.17, 2.04, 2.02, 1.99(s, それぞれ 3H, CH3CO), 1.34, 0.99, 0.95, 0.92, 0.91, 0.78, 0.75 (s, それぞれ 3H, CH3, H27, H23, H30, H25, H29, H26, H24)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 174.64(C=O, C28), 170.22, 170.07, 169.84, 169.25, 141.87(C13), 123.13(C12), 92.03 (Gal-1-C), 78.82, 74.06, 71.39, 70.70, 67.56, 66.69, 60.65, 55.22, 48.97, 46.64, 46.07, 41.36, 40.48, 39.53, 38.69, 38.49, 36.95, 35.50, 35.06, 33.04, 32.58, 30.19, 29.82, 28.01, 27.13, 26.76, 24.65, 23.26, 20.64, 20.55, 20.44, 18.22, 17.07, 15.55, 15.47。ESI-HRMS (m/z) C44H66O13Na (M+Na+) の計算値:825.4396。実測値:825.4387; C44H70O13N (M+NH4+): 820.4842。実測値: 820.4839。
【0143】
上記化合物の50mgを25mL反応フラスコ中に5mLのメタノールで溶かし、適正量のMeONaを加えて、そのまま室温で1時間反応させた。TLCによってモニターした。溶出液 DCM:MeOH=7:1。陽イオン交換樹脂を加えた。pHを中性へ調整した。濾過し、濾液をロータリーエバポレーションによって除去した。反応混合物をDCM:MeOH=5:1の溶出液でのクロマトグラフィーカラムで精製して、35.6mg(収率90%)の白色の固形物、3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)を得た。
【0144】
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 5.31-5.33(m, 2H, Gal-1-H, H12), 4.55(br t, 1H, H16), 3.88(d, 1H, J =3.0Hz), 3.69-3.71(m, 2H), 3.58-3.65(m, 2H), 3.50(dd, 1H, J =3.2, 9.7Hz), 3.15(dd, 1H, J =4.9, 11.4Hz, H3), 3.00(dd, 1H, J =3.8, 14.2Hz, H18), 2.29(t, 1H, J =13.3Hz), 1.37, 0.97, 0.96, 0.89, 0.78, 0.77(s, 7 x CH3)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 177.29(C=O, C28), 144.64(C13), 123.63(C12), 96.22 (Gal-1-C), 79.72, 77.38, 75.17, 74.94, 71.30, 70.00, 62.02, 56.88, 49.98, 42.63, 42.08, 40.81, 39.96, 39.83, 38.16, 36.44, 36.26, 34.23, 33.36, 31.80, 31.29, 28.74, 27.90, 27.28, 24.99, 24.48, 19.50, 17.79, 16.33, 16.09。ESI-HRMS (m/z) C36H62O9N (M+NH4+)の計算値:652.4419。実測値:652.4415。
【0145】
他の誘導体、例えば以下の化合物は、実施例において上記に記載した方法に類似した方法によって合成した。
【0146】
【表1】
【0147】
Q1:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)
Q2:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)
Q3:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−キシロシド)
Q4:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−キシロシド)
Q5:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−アラビノシド)
Q6:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−アラビノシド)
Q8:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)
Q9:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)
Q10:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−ラクトシド)
Q11:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ラクトシド)
Q12:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシド)
Q13:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−マルトシド)
Q14:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−セロビオシド)
実施例3
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)と3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)の合成
【0148】
【化10】
【0149】
1,2,3,4,6−ペンタ−O−アセチル−β−D−ガラクトースの製造
3gのD−ガラクトースを50mL反応フラスコに入れ、24mLのピリジンに溶かし、12mLの無水酢酸と触媒量のDMAPを連続して加えた。この反応は室温で一晩撹拌した。次いで、この反応を、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。反応混合物を50mL AcOEtと混合して懸濁液を得て、50mLの蒸留水で3回と50mLの飽和食塩水で連続的に洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させてシリカゲルカラムで精製して、生成物を得た。
【0150】
1α−ブロモ−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトースの製造
上記生成物の2.0gを25mL反応フラスコに入れ、15mLのDCMで溶かし、1.2mLのHBr−AcOH溶液を氷浴中でゆっくり滴下し、そのまま1時間反応させてから、室温で一晩反応させた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=2:1。反応混合物を20mLのDCMで希釈し、40mLの蒸留水で3回と40mLの飽和NaHCO溶液で連続的に洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。この反応混合物を、さらなる分離も精製もせずに、この反応の次工程へ直接進めた。
【0151】
1β−アジド−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトースの製造
上記生成物を10mLのDMFで溶かし、撹拌しながらNaNを加え、そのまま室温で一晩反応させた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=2:1。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。反応混合物を50mLのAcOEtと混合して懸濁液を得て、50mLの蒸留水で3回と50mLの飽和食塩水で連続的に洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させてシリカゲルカラムで精製して、約0.97g(2工程で全収率50%)の白色の固形物を得た。
【0152】
上記生成物の100mgを5mLのTHFで溶かし、Pd/C触媒の存在下に触媒作用的に水素化し、そのまま室温で一晩反応させた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=1:1。Pd/Cを濾過して除いた後で、濾液をロータリーエバポレーションによって除去した。この生成物を、さらなる精製処理をせずに、この反応の次工程へ直接進めた。
【0153】
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)の製造
150mgのEAを5mL THFで溶かし、65mgのEDCを加え、撹拌しながらそのまま室温で0.5時間反応させ、上記の生成物を加え、そのまま室温で1日間反応させた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 PE:AcOEt=1:1。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。反応混合物を30mL AcOEtと混合して懸濁液を得て、これを30mLの蒸留水で3回と30mLの飽和食塩水で連続して洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させてシリカゲルカラムで精製して、約114.3mg(2工程で全収率53%)の白色の固形物を得た。
【0154】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.79, 0.80, 0.90, 0.91, 0.92, 0.99, 1.16, 2.00, 2.02, 2.05, 2.14 (11 x CH3), 0.72-2.17 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.55 (brd, 1H, J = 9.9 Hz), 3.21 (dd,1H, J = 3.6, 10.4 Hz), 3.97-4.13 (m, 3H), 5.03-5.18 (m, 3H), 5.41-5.43 (m, 1H), 5.50 (brs, 1H), 6.68 (d, 1H, J = 9.0 Hz)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 15.3, 15.5, 17.0, 18.2, 20.4, 20.5, 20.5, 20.7, 23.1, 23.4, 23.9, 25.4, 27.0, 27.1, 28.0, 30.5, 32.4 (2C), 32.8, 34.0, 36.8, 38.4, 38.6, 39.2, 41.2, 41.9, 46.3, 46.5, 47.4, 55.0, 60.6, 67.0, 68.2, 70.7, 71.6, 78.5, 78.7, 123.4, 143.6, 169.7, 169.9, 170.2, 171.0, 178.9。
【0155】
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)の製造
上記生成物の50mgを3mL CHOHに溶かし、適正量のCHONaを撹拌しながら加え、撹拌しながらそのまま室温で1時間反応させた。この反応は、その反応が完了するまで、TLCによってモニターした。溶出液 DCM:MeOH=7:1。反応の完了時に陽イオン交換樹脂を加えた。pHを中性へ調整した。反応混合物をDCM:MeOH=10:1の溶出液でのクロマトグラフィーカラムで精製して、35.1mg(収率89%)の白色の固形物を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 0.75, 0.80, 0.90, 0.91, 0.92, 0.96, 1.15 (s, 7 x CH3), 0.71-2.10 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.83 (brd, 1H, J = 12.9 Hz), 3.14 (dd, 1H, J = 5.0, 11.3 Hz), 3.48-3.55 (m, 3H), 3.62-3.71 (m, 2H), 3.89 (brd, 1H), 4.80 (d, 1H, 8.0 Hz), 5.31 (brs, 1H)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 15.8, 16.1, 17.7, 19.2, 23.9 (2C), 24.0, 24.3, 26.3, 27.5, 28.1, 28.6, 31.3, 33.4, 33.6 (2C), 34.9, 37.8, 39.5, 40.3, 42.0, 42.7, 47.3, 47.3, 48.7, 56.3, 62.2, 70.0, 71.0, 75.4, 77.7, 79.4, 81.5, 123.6, 144.9, 181.1。
【0156】
他の誘導体、例えば以下の化合物は、上記の実施例においてに記載した方法に類似した方法によって合成した。
【0157】
【表2】
【0158】
入手した他の化合物のNMRデータは、以下の通りであった:
Y1:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.74, 0.79, 0.84, 0.91,0.93, 1.00, 1.34, 1.99, 2.02, 2.03, 2.13 (s, 11 x CH3), 0.74-2.37 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.97 (brd, 1H, J = 10.7 Hz), 3.19 (dd, 1H, J = 4.2, 10.6 Hz), 3.74-3.78 (m, 1H), 4.02 (dd, 1H, J = 2.1, 12.4 Hz), 4.25 (dd, 1H, J = 4.4, 12.4 Hz), 4.39 (brs, 1H), 5.08-5.24 (m, 3H), 5.39 (t, 1H, J = 3.2 Hz, H12), 5.54 (d, 1H, J = 8.2 Hz)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 15.4, 15.6, 17.0, 18.2, 20.5 (3C), 20.6, 23.2, 24.5, 26.8, 27.1, 28.0, 30.2, 30.2, 32.6, 33.0, 35.1, 35.5, 36.9, 38.5, 38.7, 39.5, 40.4, 41.3, 46.0, 46.6, 48.8, 55.2, 61.4, 67.9, 69.9, 72.4, 72.7, 74.2, 78.8, 91.6, 123.2, 141.9, 169.1, 169.4, 170.0, 170.5, 174.7。
【0159】
Y2:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 0.78, 0.86, 0.90,0.95, 0.96, 0.98, 1.33 (s, 7 x CH3), 0.74-1.94 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.20 (t, 1H, J = 13.4 Hz), 3.04 (dd, 1H, J = 3.6, 14.0 Hz), 3.15 (dd, 1H, J = 4.9,11.2 Hz), 3.49-3.56 (m, 3H), 3.65-3.67 (m, 2H), 3.88 (brd, 1H, J = 1.4 Hz), 4.26 (dd, 1H,J = 3.6, 5.5 Hz), 4.79 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 5.45 (brs, 1H)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 16.3, 16.3, 18.2, 19.5, 24.5, 26.3, 27.5, 27.9, 28.7, 29.6, 30.9, 33.1, 34.0, 35.8, 36.3, 38.1, 39.8, 40.0, 41.0, 42.2, 43.0, 47.8, 48.4, 50.8, 56.9, 62.4, 70.4, 71.6, 75.0, 75.8, 78.1, 79.7, 81.9, 123.9, 144.6, 181.1。
【0160】
Y3:3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.82, 0.90, 0.93, 1.05, 1.06, 1.09, 1.22, 2.00, 2.03, 2.04, 2.16 (11 x CH3), 1.25-2.65 (m, 他の脂肪族環プロトン), 3.22 (dd, 1H, J = 3.8, 13.7 Hz), 3.97-4.00 (m, 1H), 4.06-4.08 (m, 2H), 5.09-5.10 (m, 3H), 5.42 (brs, 1H), 5.68 (brt, 1H), 6.76 (d, 1H, J = 7.8 Hz)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 14.9, 17.0, 19.3, 20.4, 20.5 (2C), 20.7, 21.3, 23.0, 23.4, 26.3, 27.1, 28.6, 30.3, 31.9, 32.6, 33.9, 34.9, 36.6, 38.9, 39.6, 44.4, 45.6, 45.9, 46.0, 46.5, 47.3, 55.2, 59.9, 60.7, 67.0, 67.9, 70.7, 71.9, 78.7, 124.5, 140.1, 169.6, 169.9, 170.2, 170.7, 172.3, 210.3, 216.9。
【0161】
Y4:3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 0.87, 0.95, 0.97, 1.05, 1.08, 1.09, 1.20 (s, 7 x CH3), 1.15-2.27 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.36-2.42 (m, 1H), 2.54-2.63 (m, 1H), 2.98 (d, 1H, J = 14.7 Hz), 3.43 (dd, 1H, J = 3.9, 14.1 Hz), 3.47-3.58 (m, 3H), 3.66-3.67 (d, 2H, J = 6.2 Hz), 3.89 (brd, 1H, J = 2.7 Hz), 4.82 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 5.56 (t, 1H, J = 3.5 Hz)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 15.5, 17.8, 20.6, 21.9, 23.7, 24.6, 27.0, 27.7, 28.6, 31.4, 33.2, 33.3, 35.0, 36.1, 37.9, 40.1, 41.1, 46.7 (2C), 47.1, 48.0, 48.5, 48.9, 56.4, 61.1, 62.2, 70.3, 71.1, 75.9, 78.2, 81.8, 125.2, 142.0, 175.1, 212.7, 220.2。
【0162】
Y7:3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.78, 0.79, 0.87, 0.90, 0.92, 0.99, 1.16, 1.98, 2.04, 2.07, 2.23 (11 x CH3), 0.71-2.13 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.45 (dd, 1H, J = 3.7, 13.2 Hz), 3.21 (dd, 1H, J = 4.1, 10.4 Hz), 3.71-3.75 (m, 1H), 4.05 (dd, 1H, J = 2.4, 12.2 Hz), 4.22 (dd, 1H, J = 4.9, 12.3 Hz), 5.10 (dd, 1H, J = 3.3, 10.1 Hz), 5.19-5.24 (m, 1H), 5.31-5.34 (m, 2H), 5.51 (d, 1H, J = 9.3 Hz), 6.54 (d, 1H, J = 9.3 Hz)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 15.3, 15.5, 16.9, 18.2, 20.4, 20.6 (3C), 23.2, 23.5, 24.0, 25.4, 27.0 (2C), 28.0, 30.5, 32.3, 32.3, 32.8, 33.9, 36.8, 38.4, 38.6, 39.2, 41.9, 42.1, 46.5, 46.6, 47.4, 55.0, 62.4, 65.5, 70.1, 71.4, 73.6, 76.0, 78.7, 122.8, 144.6, 169.7, 169.7, 169.9, 170.5, 178.0。
【0163】
Y8:3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 0.78, 0.85, 0.92, 0.94, 0.95, 0.98, 1.19 (s, 7 x CH3), 0.74-2.17 (m, 他の脂肪族環プロトン), 2.83 (dd, 1H, J = 3.6, 13.4 Hz), 3.15 (dd, 1H, J = 5.0, 11.4 Hz), 3.25-3.28 (m, 1H), 3.50-3.57 (m, 2H), 3.64 (dd, 1H, J = 5.6, 11.7 Hz), 3.74 (brd, 1H, J = 1.4 Hz), 3.81 (dd, 1H, J = 2.2, 11.7 Hz), 5.11-5.13 (m, 1H), 5.39 (brs, 1H), 7.40 (d, 1H, J = 8.8 Hz)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ 16.0, 16.3, 18.1, 19.5, 23.9, 24.6 (2C), 26.3, 27.9, 28.5, 28.8, 31.6, 33.5, 33.9, 34.0, 35.1, 38.1, 39.8, 39.9, 40.8, 43.0, 43.1, 47.6, 47.9, 49.1, 56.7, 63.1, 68.1, 72.3, 75.6, 79.2, 79.7, 79.7, 124.7, 144.7, 180.7。
【0164】
上記化合物、Y9〜Y16の化学名は、以下の通りであった:
Y9:3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
Y10:3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
Y11:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
Y12:3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−マンノシド)、
Y13:3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
Y14:3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
Y15:3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
Y16:3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−マンノシド)。
【0165】
該化合物の一部の同定データは、以下の通りであった:
Y13:3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.78, 0.80, 0.88, 0.93, 0.95, 0.99, 1.09, 2.00, 2.02, 2.05, 2.14 (11 x CH3), 0.71-2.16 (m, 他の脂肪族環プロトン), 3.21 (dd, 1H, J = 5.0, 10.6 Hz), 3.97-4.09 (m, 3H), 5.02-5.16 (m, 3H), 5.41-5.42 (m, 2H), 6.61 (d, 1H, J = 8.8 Hz)。13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 15.4, 15.5, 17.0, 17.0, 18.1, 20.4, 20.5, 20.5, 20.7, 21.0, 23.0, 23.3, 24.8, 27.0, 27.7, 28.0, 30.7, 32.9, 36.8, 37.0, 38.6 (2C), 38.9, 39.4, 39.5, 42.2, 47.4, 47.8, 53.1, 55.1, 60.7, 67.0, 68.3, 70.7, 71.7, 78.6, 78.8, 126.2, 138.3, 169.7, 170.0, 170.2, 171.0, 178.6。
【0166】
Y14:3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
1H NMR (400 MHz, MeOD): δ0.78, 0.85, 0.91, 0.96, 0.97, 1.12 (7 x CH3), 0.73-2.23 (m, 他の脂肪族環プロトン), 3.15 (dd, 1H, J = 4.8, 11.0 Hz), 3.49-3.66 (m, 5H), 3.89-3.90 (m, 1H), 4.77-4.82 (m, 1H), 5.31 (t, 1H, J = 3.4 Hz), 7.44 (d, 1H, J = 8.6)。13C NMR (100 MHz, MeOD): δ16.1, 16.4, 17.7, 18.1, 19.5, 21.6, 24.0, 24.4, 25.3, 27.9, 28.8, 29.0, 32.0, 34.3, 38.1, 38.3, 39.8, 40.1, 40.2, 40.8, 41.0, 43.3, 49.1, 54.0, 56.7, 62.2, 70.2, 71.3, 75.8, 77.9, 79.7, 81.9, 82.0, 127.3, 139.7, 181.4。
【0167】
実験の実施例
本発明による化合物の一部の抗インフルエンザウイルスの実験結果について、以下のように記載した:
1.Q9は、インフルエンザウイルスの複製を効果的に阻害した。CPE阻害実験とプラーク形成阻害実験は、化合物のQ9がインフルエンザウイルスに対して陽性薬物のリバビリンより強力な、有意な阻害効果を及ぼすことを示した。CPE阻害実験は、陽性薬物のタミフル(リン酸オセルタミビル、OSV−P)のEC50が45.6μMであり、リバビリン(RBV)のEC50が42.7μMであるのに対し、化合物Q9のインフルエンザウイルスに抗するEC50が48.7μMであることを示した(表1に示す)。プラーク形成阻害実験は、インフルエンザウイルスに抗するQ9のIC50が<5μM未満であることを示した(図1に示すように)。A549、MDCK、及び293T細胞におけるQ9のCC50は、100μMより高かった。このことは、Q9がほとんど細胞毒性を有さないことを示した。
【0168】
表1:インフルエンザウイルス(WSN)に抗するQ9の活性とその細胞毒性
【0169】
【表3】
【0170】
細胞変性効果(CPE)阻害実験によって計算されたQ9のEC50は、リバビリンとリン酸オセルタミビルの抗ウイルス活性と同等であり、Q9の抗インフルエンザウイルス効果がリバビリン及びリン酸オセルタミビルのそれと同様であることを示した。
【0171】
表2:プラーク形成阻害実験は、Q9がインフルエンザウイルスに対して有意な阻害効果を提示することを示した。
【0172】
【表4】
【0173】
この結果は、インフルエンザウイルスがMDCK細胞においてウイルスプラークを形成し得て、Q9が半分より多くのプラークを5μMの濃度で阻害する(即ち、IC50<5μM)ことを示した。
【0174】
2.Q9は、インフルエンザウイルスの細胞中への侵入を阻害した。
【0175】
上記の添加時期のアッセイと血球凝集阻害アッセイは、Q9がインフルエンザウイルスの細胞中への侵入段階に作用して、細胞受容体へのウイルスの結合に干渉することを示した(表3と図1に示すように)。
【0176】
表3:添加時期のアッセイは、Q9がウイルス複製の初期段階(0〜2時間)で作用することを示した。
【0177】
【表5】
【0178】
この結果は、NPレベルが0〜10時間と0〜2時間でDMSO対照と比較してそれぞれ約75%と62%低下することを示した。対照的に、残る3つの間隔(2〜5、5〜8、及び8〜10時間)では、抗ウイルス活性を検出しなかった。これらのデータは、Q9がウイルス生活環の初期段階(0〜2時間)で有効であることを示す。残る段階(即ち、ウイルスゲノム複製/翻訳及びビリオン組立て/放出)では阻害効果が観察されなかった。
【0179】
3.偽型ウイルス実験は、Q9がH1N1及びH5N1インフルエンザ株の細胞中への侵入を阻害することを示した。
【0180】
H5N1が高病原性のインフルエンザウイルスであるので、H5N1及びH1N1の偽型ウイルスを使用して、Q9の抗ウイルス活性の広いスペクトラムを測定した。このような偽型ウイルスは、高度の安全性を有しており、P2実験室において操作することができる。濃度が50μMであるとき、Q9は、インフルエンザウイルスのH1N1とH5N1に対する有意な抗ウイルス活性をそれぞれ61.9%と16.8%の阻害率で提示した。阻害率が高いほど、より弱い相対ルシフェラーゼ活性を検出した。
【0181】
表4:偽型ウイルス実験は、Q9がH1N1及びH5N1インフルエンザウイルスの偽型ウイルスを阻害することを示した。
【0182】
【表6】
【0183】
偽型ウイルスは、HIVのコアタンパク質とインフルエンザウイルスのエンベロープタンパク質、HA/NAより構成された。インフルエンザウイルスの2つのサブタイプ、H1N1及びH5N1の偽型ウイルスは、Q9によって阻害され;Q9の濃度は、50μMであった。陰性対照としてのDMSOの阻害率をゼロへ設定した。
【0184】
4.一部の糖修飾トリテルペノイド誘導体の抗インフルエンザウイルス活性
該化合物をこのウイルスと混合してから、その細胞へ加えた。ウイルス誘発性細胞変性効果に対する該化合物の阻害効果を観察した。ウイルスを含まずに化合物だけを含んでなる群を使用して、化合物の細胞毒性を測定した。DMSOを陰性対照として使用した。イヌ腎臓上皮細胞(MDCK)を播種し24時間インキュベートした。試験する化合物をDMEMへ加え、均一に混合して、MDCK細胞へ加えた。48時間後、Celltiter-Glo 検査キットを使用して、細胞生存度を検出した。この結果は、Q9がインフルエンザウイルスに抗する有意な阻害活性を有して、ウイルスの感染性を有意に弱めることを示した。EA、Q1、Q2、Q3、Q11、及びQ12もいくらかの抗インフルエンザウイルス活性を提示したが、他の化合物には、有意な抗インフルエンザウイルス活性は無かった。試験した化合物では、EA、Q4、及びQ6に明白な細胞毒性があって、Q1、Q2、Q3、Q11、及びQ12の抗インフルエンザウイルス活性は、Q9と比較して有意ではなかったが、EAと比較すると、有意に低下した細胞毒性を有した。他の化合物は、(表5と表6に示すように)ごく弱い毒性を提示した。
【0185】
表5:50μMの濃度での各化合物のMDCK細胞に対する毒性
【0186】
【表7】
【0187】
表6:50μMの濃度での化合物の抗インフルエンザウイルス活性。より低いウイルス感染性は、薬物のより良好な阻害効果を表した。検出法は、表5に示した通りである。
【0188】
【表8】
【0189】
DMSOを陰性対照として使用した。イヌ腎臓上皮細胞(MDCK)を24時間継代培養した後で、WSNウイルス(MOI=1)と試験する化合物をDMEMへ加え、均一に混合して、MDCK細胞へ加えた。48時間後、Celltiter-Glo アッセイキットを使用して、細胞生存度を検出した。感染率(感染性)=100%−細胞変性効果に抗する化合物の保護率。細胞変性効果に抗する化合物の保護率=100%×(1−(「試験化合物」−「メジアンウイルス1」)/(「メジアン細胞」−「メジアンウイルス2」))。ここで「試験化合物」は、試験化合物だけを加えて、ウイルスを含まない群の細胞生存度を表し;「メジアンウイルス1」は、試験化合物とウイルスを加えた群の細胞生存度を表し;「メジアン細胞」は、1% DMSOだけを加えた群の細胞生存度を表し;「メジアンウイルス2」は、1% DMSOとウイルスを加えた群の細胞生存度を表す。
【0190】
Q9に対するさらなる構造修飾は、Y1、Y2、Y3、Y5、Y6、Y7、及びY8が有意な抗インフルエンザウイルス活性と弱い細胞毒性を有することを示した。ここでは、(表7と表8に示すように)Y5が最も有意な抗インフルエンザウイルス活性を提示した。
【0191】
表7:50μMの濃度での化合物のMDCK細胞に対する毒性
【0192】
【表9】
【0193】
表8:50μMの濃度での化合物の抗インフルエンザウイルス活性。より低いウイルス感染性は、薬物のより良好な阻害効果を表した。検出法は、表6に示した通りである。
【0194】
【表10】
【0195】
さらなる構造修飾は、Y13とY14がQ9より高い有意な抗インフルエンザウイルス活性と弱い細胞毒性を有することを示した(データ示さず)。他の化合物も、(表9に示すように)良好な抗インフルエンザウイルス活性を示した。
【0196】
表9:50μMの濃度での化合物の抗インフルエンザウイルス活性。検出法は、表6に示した通りである。
【0197】
【表11】
【0198】
5.化合物の抗インフルエンザウイルス効果の実験結果を以下のように示した:
異なるインフルエンザウイルスに対する化合物の阻害効果を、細胞変性効果(CPE)抑制アッセイにより試験した。化合物、Y2、Y5、Y6、及びQ9が様々な程度の阻害効果をA/Puerto Rico/8/34(H1N1);A/LiaoNing−ZhenXing/1109/2010(H1N1);A/JiangXi−DongHu/312/2006(H3N2);A/HuNan−ZhuHui/1222/2010(H3N2);B/ShenZhen/155/2005に対して提示することを見出した。ここでY5のEC50は、2μMより低く、リバビリンと同等であった。上記の株には、タミフル耐性株とアマンタジン耐性株が含まれ;A/LiaoNing−ZhenXing/1109/2010(H1N1)はタミフル耐性株で、A/HuNan−ZhuHui/1222/2010(H3N2)はアマンタジン耐性株である。このことは、本発明者によって発見された化合物がインフルエンザA型ウイルスだけでなくインフルエンザB型ウイルスも阻害する可能性があることを示し、それらが広いスペクトラムの抗ウイルス効果を有することを示唆した。さらに、我々の化合物は、(表10に示すように)タミフル耐性株とアマンタジン耐性株に対して有意な阻害効果を有する。
【0199】
表10:化合物の広いスペクトラムの抗ウイルス活性の分析結果
【0200】
【表12】
【0201】
本発明は、上記の態様に限定されない。上記に記載した態様は、例解的なものにすぎず、制限的なものではない。当業者は、本発明の着想の下で、本発明の精神と本発明の特許請求の範囲において特許請求される保護範囲より逸脱することなく数多くの形態を作製し得て、その諸形態は、いずれも本発明の特許保護範囲に含まれる。
本明細書は以下の発明の開示を包含する:
[1]以下の構造式:
【化11】
[式中、
点線は、単結合又は二重結合のいずれでもよい結合を表し;
R1は、XR1’であり、ここでXは、O又はNHであり、R1’は、水素、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、又はそれらの誘導体、又はビタミンC、シアル酸、アミノ糖(1、2、3個の糖)、タミフルとそのプロドラッグであり{「単糖類、オリゴ糖類、多糖類の誘導体」は、その2、3又は4個のような1個以上のヒドロキシ基が、C1−C6アルカノイルオキシ基、C1−C6アルコキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び/又はベンジルオキシ基、等のような置換基によって置換される可能性があり(例えば、ベンゼン環は、1以上のハロゲン、ニトロ基、アミノ基、及び/又はC1−C6アルキル基で置換され得る);このヒドロキシル基の1つは、水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換される可能性があることに言及する};
R2とR7は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基、アミノ基、NR11’R12’(ここでR11’とR12’は、それぞれ独立して、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基より選択される)からなる群より選択され;
R3、R4、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立して、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R9は、H、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、カルボニル基、オキシム基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基によって置換された)C1−C6アルキル基からなる群より選択され;
R10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、OH、NHR9’(ここでR9’は、H、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基である)、メルカプト基、C1−C6チオアルキル基、(未置換であるか又はヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基からなる群より選択される;
但し、R7がヒドロキシル基である場合、R2とR1’は、水素でない]の化合物、その立体異性体、そのエピマー、その立体配置異性体、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物の、インフルエンザ、特にインフルエンザA型の予防又は治療の必要な患者におけるそのような治療のための医薬品の製造への使用。
[2]R10、R11、R12、R13、及びR14が、それぞれ独立して、H、ヒドロキシ基、アミノ基、未置換C1−C3アルキル基、好ましくはメチル基、又は(ヒドロキシ基、アミノ基、又はカルボキシル基によって置換された)C1−C3アルキル基、好ましくはメチル基からなる群より選択され;好ましくは、R11とR12が、それぞれ独立して、H又はメチル基より選択され、R10がHであり、及び/又はR13とR14が、それぞれ独立して、H、OH又はNHより選択される、[1]に記載の使用。
[3]薬物が、経口、直腸、経鼻、エアロゾル又は微粒子吸入によって投与されるか又は、頬内及び舌下、経皮、膣内、膀胱内、病巣内、及び非経口経路によって局所的に投与され;スプレー剤は、経口又は経鼻のスプレー投与、又は室内又は局所環境の滅菌及び消毒に好ましい、[1]に記載の使用。
[4]単糖が、グルコース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、リボース、又はデオキシリボースからなる群より独立して選択され、オリゴ糖は、マルトース、スクロース、又はラクトースであり、又はここで誘導体は、「単糖類、オリゴ糖類、多糖類」の1、2、3又は4個のヒドロキシ基がC1−C4アルカノイルオキシ基、C1−C4アルコキシ基、ベンゾイルオキシ基、及び/又はベンジルオキシ基によって置換される;又はその1つのヒドロキシ基が、水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換される;好ましくは、「単糖類、オリゴ糖類、多糖類」の1つのヒドロキシ基、又は2、3又は4個のヒドロキシ基が、アセトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシ基、及び/又はベンゾイルオキシ基によって置換される;又は、「単糖類、オリゴ糖類、多糖類」の1つのヒドロキシ基が、水素、アミノ基、又はアセチルアミノ基によって置換されることを意味する、[1]に記載の使用。
[5]前記XがO又はNHであり、前記糖が、単糖又は二糖、又は単糖又は二糖のヒドロキシ基がアセトキシ基によって置換されたアセチル化誘導体である、[1]〜[4]のいずれかに記載の使用。
[6]R2が、H、OH、カルボニル基、SH、又はNH、好ましくは、H、OH、又はカルボニル基からなる群より独立して選択される、[1]〜[5]のいずれかに記載の使用。
[7]R3、R4、R5、R6、及びR8が、それぞれ独立してメチル基より選択される、[1]〜[6]のいずれかに記載の使用。
[8]R7が、H、OH、カルボニル基、NH、又はSH、好ましくは、OH又はカルボニル基からなる群より選択される、[1]〜[7]のいずれかに記載の使用。
[9]前記化合物が:
エキノシスト酸、化合物:Q1〜Q14及びY1〜Y16のいずれか1つ、好ましくはエキノシスト酸、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ(olean)−12−エン(en)−28−酸(oic acid)−28−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−グルコシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−キシロシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(β−D−ラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−O−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−マルトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3,16−ジオン−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
3β−ヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3−カルボニル−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β,16α−ジヒドロキシ−オレアナ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ(urs)−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−ガラクトシド)、
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノシド)、又は
3β−ヒドロキシ−ウルサ−12−エン−28−酸−28−N−(β−D−マンノシド)である、[1]〜[8]のいずれかに記載の使用。
[10][1]〜[9]のいずれかの前記化合物、その立体異性体、そのエピマー、その立体配置異性体、又はその医薬的に許容される塩、又はその水和物[但し、先行技術において既知の化合物(例、エキノシスト酸)は除外される]。
[11][1]〜[9]のいずれか中の化合物を製造するための方法であって、トリテルペン天然植物抽出物のトリテルペノイドアグリコン又はその群の一部の誘導体のヒドロキシル基を保護基で保護する工程、カルボキシル基を活性化する工程(塩化物、エステル、又は無水物を生成する工程のように)、糖又はアミノ糖とカップリングする工程、及び脱保護化してトリテルペノイドサポニン類を生成する工程を含んでなる、前記方法。
図1
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図8