特許第6441809号(P6441809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6441809歯周病の治療における新規な医薬製剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441809
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】歯周病の治療における新規な医薬製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/13 20060101AFI20181210BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20181210BHJP
   C07K 11/02 20060101ALI20181210BHJP
   C07K 7/64 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61K38/13
   A61K9/14
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61P1/02
   C07K11/02
   C07K7/64
【請求項の数】14
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-547146(P2015-547146)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-504314(P2016-504314A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】GB2013053283
(87)【国際公開番号】WO2014091239
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】1222455.6
(32)【優先日】2012年12月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515158685
【氏名又は名称】ペリオシー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】キッセル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マク,チング・ポング
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/154985(WO,A1)
【文献】 特開平05−097697(JP,A)
【文献】 特表2012−507576(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/051194(WO,A1)
【文献】 特表平11−501678(JP,A)
【文献】 米国特許第05583105(US,A)
【文献】 特表2003−504323(JP,A)
【文献】 Pharmaceutics,2011年,Vol.3,No.3,p538−571
【文献】 Investigative Ophthalmology & Visual Science. ARVO Annual Meeting Abstract,2011年,Vol.52,450,URL,http://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2349994
【文献】 International Journal of Current Pharmaceutical Research,2011年,Vol.3,No.2,p80−90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周病の治療における使用のための、シクロフィリン阻害剤のマイクロ又はナノ粒子を含んでなる局所医薬製剤であって、TPGS(トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸)及びポロキサマーを含有し、液体として適用されるが、生理学的条件下でゲルを形成する、in−situゲル形成系の製剤であり、液体はマイクロ粒子又はナノ粒子の懸濁液であり、シクロフィリン阻害剤は懸濁液中に粉末として分散され、該阻害剤は、シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンG、(D)−セリン−8−シクロスポリン、IMM−125、NIM−811、Debio−025、SCY−635、又はSCY−641である、前記製剤。
【請求項2】
前記阻害剤化合物が、歯肉ポケットに適用される、請求項1に記載の使用のための製剤。
【請求項3】
前記組成物が、1%のTPGS及び1%のポロキサマー407を含んでなる、請求項1に記載の使用のための製剤。
【請求項4】
TPGS(トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸)、ポロキサマー及びシクロスポリンAを含んでなる局所医薬組成物であって、前記医薬組成物がシクロスポリンAのマイクロ粒子又はナノ粒子の懸濁液であり、シクロスポリンAが懸濁液中に粉末として分散され、生理学的条件下において懸濁液がin−situでゲルを形成する、前記組成物。
【請求項5】
前記組成物が、1%のTPGS及び1%のポロキサマー407を含んでなる、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記シクロスポリンAが、結晶質である、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記シクロスポリンAが、処方の前に微細化される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記製剤が、50%を超える粒子が、直径1マイクロメートルより小さい粒子からなる、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
更に粘膜付着性物質を含んでなる、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記粘膜付着性物質が、レクチン、カーボポール(ポリアクリル酸)、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
更に抗細菌性保存剤を含んでなる、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、15−20%のポロキサマー407と共に処方される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
歯周病の治療のための医薬の製造における、請求項12のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
前記疾病が、ヒト又はイヌを冒す、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロフィリン阻害剤の適した局所製剤を、歯肉ポケットに投与することによる歯周病の新しい治療法に関する。この方法は、新しいin−situ製剤及び化合物の使用を含む。更に開示されるものは、安定化されたマイクロ又はナノ粒子のマイクロ製剤又はナノ製剤である。新規なナノ粒子は、更に歯周病の治療において使用することもできる。製剤は、液体として適用されるin−situ形成系であることができるが、しかし生理学的条件下ではゲルを形成する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、単純な歯肉の炎症から、歯を取り囲み、そして支持する軟組織及び骨に対する大きな損傷をもたらし、最終的には歯の喪失をもたらす重篤な疾病にわたる。疾病は、歯の表面の細菌のコロニー形成によって、続いて最初、自然免疫系の反応によって、そして歯肉の炎症(歯肉炎)として顕在化することによって起こされる。次いでこの歯肉の炎症は、進行して、歯周炎となり、歯肉は歯から離れ、そして感染が更に発育するポケットを形成する。
【0003】
自然免疫反応は、適応免疫反応によって追従され、抗原提示細胞(主として樹状細胞)が歯肉に蓄積し、そしてT細胞反応を組織化し、これは次にB細胞を活性化して、特異的抗体を産生する。CD4+T細胞は、成人の歯周炎における主要な集団であり、そして破骨細胞の動員及び活性化により、骨の喪失の主要な原因として機能することが示されている。従って、歯周病は、最初、感染によって誘発されるが、本質的に免疫病理であり、これは、組織及び骨の損傷の原因である感染を確実にする免疫反応である。
【0004】
現時点で、歯周病の治療は、主として、主に歯石除去、デブリドマン及びルートプレーニングによるプラークの機械的除去による感染の排除からなっている。機械的治療は、抗細菌的処置、例えば口内洗浄液又はクロルヘキシジンのような消毒剤を含有する局所的に適用されるゲルによって支援することができる。テトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリン)は、更に、局所的に適用される製剤又は錠剤の形態のいずれかの形態で、感染に対抗するためにも使用される。テトラサイクリンは、抗生物質として作用するだけではなく、十分に理解されていないが、更に抗炎症特性を有する。ミノサイクリン及びドキシサイクリンの両方は、各種の細胞から放出されることができる酵素の大きい群であり、そして歯周炎を含む多くの慢性炎症性疾患において組織、軟骨及び骨を分解する主要な原因である、マトリックスメタルプロテアーゼ(MMP)の放出及び活性を阻害することを示している。
【0005】
現時点で、炎症反応の現象、特に慢性の顕在化に、組織及び骨の破壊過程を停止又は逆行するものであるように、包括的に対処する治療法は存在しない。本発明の主題である薬物の組成物は、このような治療法である。
【0006】
炎症過程におけるシクロフィリンの役割
シクロフィリンは、最初、通常細胞内に常住性である免疫抑制剤のシクロスポリンの結合タンパク質として発見された。細胞内ペプチジル−プロリルcis−transイソメラーゼ(PPIアーゼ)としてのシクロフィリンの再発見は、数年後に報告された。炎症性の刺激、例えば細菌の細胞壁成分(例えばリポ多糖、LPS)に対する細胞の暴露は、細胞から細胞外空間にシクロフィリンが分泌されることを誘発し、これは、炎症性白血球に対する走化性因子として作用する。白血球の走化性は、これらの細胞からのMMPの産生及び放出を誘発するその能力のために、CD147又はEMMPRIN(細胞外マトリックスメタロプロテアーゼ誘導物質)と呼ばれる広く発現する膜糖タンパク質によって仲介される。MMPの放出、並びに白血球の走化性の両方は、CD147とシクロフィリン間の相互作用によって誘発され、これは、これも更にシクロスポリン結合部位であるPPIアーゼ触媒部位によって起こる。従って、シクロフィリンのPPIアーゼ触媒活性を阻害するシクロスポリン及び他の化合物は、歯周病の骨及び組織破壊過程に関係する幾つかの重要な現象を遮断する:
(1)これらは、炎症性白血球の浸潤を阻害し、
(2)これらは、歯肉中に常在性の抗体分泌プラズマ細胞の形成を阻害し、
(3)これらは、マトリックスメタルプロテアーゼの産生及び放出を防止する。
従って、シクロフィリン阻害剤は、根底にある歯周病の免疫病理を起こす機構を治療するための新規な様式である。
【0007】
シクロスポリンは、皮下的に投与された場合、新しい歯槽骨の形成に対して正の効果を有する(Toxicologic Pathology,Vol.34(6),2006,(Cetinkaya,Burcu Ozkan et al),“The effect of cyclosporin A on alveolar bone in rats subjected to experimental periodontal disease”,pages 716−722)。シクロスポリンは、皮下注射として投与される。骨の成長に対する効果は、全身性治療を使用してのみ観察することができる。この参考文献は、炎症を起こした歯肉ポケットへの局所適用のための、限局化された抗炎症剤として作用するための製剤を開示していない。
【0008】
歯肉の過成長の誘発が、移植患者における全身性シクロスポリンの主な好ましくない効果であることが知られている(Journal of Periodontology,Vol.82(10),2011,(Becerik,Sema et al),“Gingival crevicular fluid osteocalcin,N−terminal telopeptides,and calprotectin levels in cyclosporin A−induced gingival overgrowth”,pages 1490−1497)。歯肉の過成長の副作用は、シクロスポリンに対して独特ではなく、歯肉の過形成に関係する他の化合物の群は、抗痙攣剤及びカルシウムチャンネル遮断剤であり、これらの何れもは抗炎症活性を有していない。全てのこれらの医薬に関係する歯肉の過形成は、細胞外基質の過剰な蓄積からなり、そして主として細胞からなる生理学的組織とは基本的に異なる(例えば、Kataoka et al.,“Drug−induced gingival overgrowth−−a review”,Biol Pharm Bull.2005 Oct;28(10):1817−21)。
【0009】
全身性治療の好ましくない副作用は、限局性の局所製剤を使用することによって克服することができる。歯周炎において観察されるような進行中の歯肉の炎症は、歯肉の過成長の開始の必須条件である。歯周炎の炎症性過程を阻害する薬剤は、歯肉の過成長を弱めることを期待することができる(Subramani et al.,“The possible potential therapeutic targets for drug induced gingival overgrowth”,Mediators Inflamm.2013)。シクロスポリンによって誘発された歯肉の過成長は、ある一定の閾値のシクロスポリン血液レベルにより修正されることが示されている(Webb et al.,“Correlation between finger−prick and venous cyclosporin levels:association with gingival overgrowth and hypertrichosis”,Pediatr Nephrol.2007 Dec;22(12):2111;Thomas et al.,“Risk factors in the development of cyclosporine−induced gingival overgrowth”,Transplantation.2000 Feb 27;69(4):522−6)。然しながら、本明細書中に記載される局所的治療は、慢性の炎症の病態生理を減速及び/又は停止するものであり、これは、全身性治療によって誘発される副作用を起こさずに、生理学的治癒過程に先行しなければならない。生理学的組織の再生を開始することが生理学的治癒過程の開始であり、そして自然治癒によって形成される組織は、シクロスポリン及び他の薬物群によって誘発される過成長とは基本的に異なる。
【0010】
DE102008062373は、歯周炎における組織の浸蝕によって作られた歯間の間隙を満たすために歯肉の肥大を誘発することが知られた化合物の使用を記載している。この文書中に記述された化合物のいずれかの局所的投与の証拠も、或いは限局化された抗炎症活性の証拠もない。
【0011】
特開平05−97697号は、シクロスポリンAを含有する歯槽骨再生剤の提供を記載している。この文書は、いずれもの抗炎症活性を持たない多くのものを含む可能な化合物の長いリストを記載している。シクロスポリンAの局所的投与の証拠も、或いは限局化されたいずれもの抗炎症活性の証拠もない。
【0012】
WO03/033010は、WO03/033010の化合物で治療することができる炎症性及び自己免疫性疾患の包括的リストの中の一つの症状としての歯周病を記述している。この参考文献は、歯周病がシクロスポリンによって治療することができることの主張を支持するいずれかの証拠も開示していない。活性化T細胞核内因子(NFAT)の阻害に対する証拠は与えられ、これは、免疫抑制及び移植における阻害性化合物の使用に関連する。更に、WO03/033010は、混合リンパ球反応、プラーク形成細胞アッセイ(Mishell−Dutton試験)、又は遅延型過敏症のような試験系における化合物の活性を記載している。全てのこれらの試験系は、T細胞に対する化合物の阻害活性(即ち、免疫抑制活性)を検出する。先に概略記載したように、歯周炎の炎症過程におけるシクロフィリンの役割は、免疫抑制のそれとは基本的に異なっている。
【0013】
免疫抑制性と抗炎症性活性間の差は、公知の化合物FK506(タクロリムス)が、シクロスポリンのそれと同一の機構によって作用する免疫抑制剤であるが、しかし抗炎症性活性を持たないことが知られている事実によって、最もよく例示されている(例えば、Mattila et al.“The actions of cyclosporin A and FK506 suggest a novel step in the activation of T lymphocytes”,EMBO J.1990 Dec;9(13):4425−33;Liu J et al.,“Calcineurin is a common target of cyclophilin−cyclosporin A and FKBP−FK506 complexes”,Cell.1991 Aug 23;66(4):807−15を参照されたい)。
【0014】
WO03/033010Aは、化合物を液体の剤形の形態で非経口注射によって投与するか、固体の剤形の形態で口腔(経口)によって与えるか、或いは肺、眼、又は膣に局所的に投与することができることを教示している。然しながら、この文献は、シクロスポリンAの局所的投与の証拠を含まず、或いは限局化された抗炎症活性のいずれかの証拠もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】DE102008062373;
【特許文献2】特開平05−97697号;
【特許文献3】国際特許出願公開WO03/033010。
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Toxicologic Pathology,Vol.34(6),2006,(Cetinkaya,Burcu Ozkan et al),“The effect of cyclosporin A on alveolar bone in rats subjected to experimental periodontal disease”,pages 716−722;
【非特許文献2】Journal of Periodontology,Vol.82(10),2011,(Becerik,Sema et al),“Gingival crevicular fluid osteocalcin,N−terminal telopeptides,and calprotectin levels in cyclosporin A−induced gingival overgrowth”,pages 1490−1497;
【非特許文献3】Kataoka et al.,“Drug−induced gingival overgrowth−−a review”,Biol Pharm Bull.2005 Oct;28(10):1817−21;
【非特許文献4】Subramani et al.,“The possible potential therapeutic targets for drug induced gingival overgrowth”,Mediators Inflamm.2013;
【非特許文献5】Webb et al.,“Correlation between finger−prick and venous cyclosporin levels:association with gingival overgrowth and hypertrichosis”,Pediatr Nephrol.2007 Dec;22(12):2111;
【非特許文献6】Thomas et al.,“Risk factors in the development of cyclosporine−induced gingival overgrowth”,Transplantation.2000 Feb 27;69(4):522−6;
【非特許文献7】Mattila et al.“The actions of cyclosporin A and FK506 suggest a novel step in the activation of T lymphocytes”,EMBO J.1990 Dec;9(13):4425−33;
【非特許文献8】Liu J et al.,“Calcineurin is a common target of cyclophilin−cyclosporin A and FKBP−FK506 complexes”,Cell.1991 Aug 23;66(4):807−15。
【発明の概要】
【0017】
本発明の一つの側面によれば、シクロフィリン阻害剤は、歯周炎を治療するために使用することができる。もう一つの側面によれば、シクロフィリン阻害剤は、シクロスポリン、サングリフェリン又はシクロウンデカデプシペプチドの化学物質群に属する。もう一つの側面によれば、シクロフィリン阻害剤は、歯肉ポケットに局所的に適用することができる。もう一つの側面によれば、シクロフィリン阻害剤は、マイクロ又はナノ製剤として適用することができる。もう一つの側面によれば、マイクロ又はナノ製剤は、粘膜付着性である。もう一つの側面によれば、マイクロ又はナノ製剤は、シクロフィリン阻害剤が、数日又は数週間にわたって活性を示すことを可能にする。ナノ組成物は、非イオン性界面活性剤、例えば、TPGS及び/又はポロキサマー407と共に処方することができる。組成物は、液体として適用することができ、そしてこれは、in−situでゲルを形成する。In−situ形成系は、シクロスポリンのナノ粒子の懸濁液であることができ、これは、液体として炎症を起こした歯肉ポケットに適用され、そこでこれは、生理学的条件に暴露されて、ゲルを形成する。In−situ形成系は、シクロスポリンの活性が、数日又は数週間にわたって維持されることを可能にする。組成物の長期作用特質は、治療が有効であるために、1回又は2回のみ適用することが必要であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、活性な医薬的成分(API)のシクロスポリン(5%)の、1%のTPGSとの水中の製剤の処方及び安定性を示す。製剤は、2−8℃において8週間後安定であり、そして25℃で僅かな量の凝集のみを示した。
図2図2は、活性な医薬的成分(API)のシクロスポリン(5%)の、1%のTPGS及び1%のポロキサマー407との水中の製剤の処方及び安定性を示す。製剤は、2−8℃において8週間後安定であった。25℃における凝集の量は、ポロキサマーの存在によって減少された。
図3図3は、活性な医薬的成分(API)のシクロスポリン(5%)の、0.8%のグリココール酸ナトリウム及び2%のポロキサマー407との水中の製剤の処方及び安定性を示す。製剤は、2−8℃において8週間後安定であった。25℃における凝集の量は、かなりなものであった。グリココール酸ナトリウムは、TPGSと同じレベルの長期の安定性を与えないように見受けられた。
図4図4は、活性な医薬的成分(API)のシクロスポリン(5%)の、0.02%のキトサン及び1%のポロキサマー407との水中の製剤の処方及び安定性を示す。製剤は、安定ではなく、そして粒子のかなりの凝集が起こった。キトサンは、TPGSと同じレベルの長期の安定性を与えないように見受けられた。
図5図5は、活性な医薬的成分(API)のシクロスポリン(5%)の、1%のTPGSとの水中の製剤の処方及び安定性を示す。結晶のシクロスポリンは処方の前に微細化される。図1との比較は、25℃における改善された長期の安定性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中に記載されるものは、歯周病の治療におけるシクロフィリン阻害剤の使用である。シクロフィリン阻害剤は、シクロスポリン、サングリフェリン又はシクロウンデカデプシペプチドであることができる。本明細書中に記載されるとおりのいずれもの化合物は、歯周病の治療に使用することができ、そしてマイクロ又はナノ製剤に処方することができる。本明細書中に記載されるとおりのいずれもの化合物は、粘膜付着性物質と共に処方することができる。本明細書中に記載されるとおりのいずれもの化合物は、in−situ形成ゲルとして使用するためにマイクロ又はナノ製剤に処方することができる。マイクロ又はナノ製剤は、シクロフィリン阻害剤が、数日又は数週間にわたって活性を示すことを可能にする。ナノ組成物は、非イオン性界面活性剤、例えば、TPGS及び/又はポロキサマー407と共に処方することができる。組成物は、液体として適用することができ、そしてこれは、in−situでゲルを形成する。In−situ形成系は、シクロスポリンのナノ粒子の懸濁液であることができ、これは、液体として炎症を起こした歯肉ポケットに適用され、そこでこれは、生理学的条件に暴露されて、ゲルを形成する。In−situ形成系は、シクロスポリンの活性が、数日又は数週間にわたって維持されることを可能にする。組成物の長期作用特質は、治療が有効であるために、1回又は2回のみ適用することが必要であることを意味する。
【0020】
シクロフィリンの強力な阻害剤であることが確認された第1のシクロウンデカデプシペプチドは、以下の式A:
【0021】
【化1】
【0022】
に示す構造を有する。
【0023】
WO2011/141891によれば、この化合物は、更にシクロ(MeBmt−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)とも記載することができる。この化合物のファミリーは、一般的に以下の式:
【0024】
【化2】
【0025】
として表すことができる。式中、AXXは、N−メチル−(4R)−4−ブタ−2E−エン−1−イル−4−メチル−(L)−トレオニンであり、そしてD−Hivは、(D)−2−ヒドロキシイソバレリアン酸(isovalerianic acid)である。
【0026】
式Aの化合物は、歯周病の治療において使用することができるか、又は本明細書中で先に記載したようにマイクロ又はナノ製剤に処方することができる。
【0027】
更に最近になって、シクロフィリンを結合するその能力は保持するが、しかし有意に減少された免疫抑制特性を伴う新しいシクロウンデカデプシペプチドが開示されている(WO2010/052559A1)。この出願は、ある種のシクロウンデカデプシペプチドの、特にC型肝炎によるウイルス性感染を治療するための化合物としての使用を主張している。この出願は、歯周病の治療における使用或いはマイクロ又はナノ粒子の製剤を記載していない。WO2010052559に記載されているいずれもの化合物は、本明細書中の発明の範囲内である。従って、歯周病の治療において使用するための化合物は、一般的に以下の式:
【0028】
【化3】
【0029】
として表すことができる化合物を含む。
【0030】
上記式中、AXXは、MeBmt、4−フルオロ−MeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmt、O−アセチル−MeBmtであり;
AXXは、Abu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、Nva、5−ヒドロキシ−Nva(Hnv)であり;
AXXは、D−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeSer(OCHCHOH)、D−MeSer(OCHCHNEt)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXは、MeLeu、MeIle、MeMet、MeVal、MeThr、MeThr(OAc)、MeAla、EtVal、EtIle、EtPhe、EtTyr、EtThr(OAc)、MeThr(OAc)、MeTyr、MeTyr(OAc)、MeTyr(OMe)、MePhe、MeMet(Ox)であり、ここにおいて、メチオニンの硫黄原子は、スルホキシド又はスルホンであり;
AXXは、Leu、Val、Ile、Gly、Abuであり;
AXXは、MeAla、Sar、MeLeuであり;
AXXは、Gly、Alaであり;
D−Hivは、(D)−2−ヒドロキシイソバレリアン酸であり;
AXXは、MeLeuであり;
AXX10は、Leuであり;そして
AXX11は、MeValである。
【0031】
本発明によるシクロフィリン阻害剤であって、阻害剤がシクロウンデカデプシペプチドであるものは、以下の式:
【0032】
【化4】
【0033】
として表することができる。
【0034】
上記式中、AXXは、MeBmt、4−フルオロ−MeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmt、O−アセチル−MeBmtであるか、又はAXXは、側鎖に窒素原子を含有する;
AXXは、Abu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)又は別のトレオニンエステル若しくはトレオニン−O−アルキル或いは置換されたO−アルキル分子、Nva、5−ヒドロキシ−Nva(Hnv)又はC(=O)CH型の分子、或いはYがOH、NH若しくはO−であるC(=N−Y)CH、又はN−アルキル或いはその置換されたアルキルバージョンであり;
AXXは、所望により置換されていてもよいアルキレン、D−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeSer(OCHCHOH)、D−MeSer(OCHCHNEt)、D−MeAsp(OMe)又は水素、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、アルキルチオ若しくは置換されたアルキルチオから選択される側鎖を持つD−アミノ酸であり;
AXXは、MeLeu、MeIle、MeMet、MeVal、MeThr、MeThr(OAc)、MeAla、EtVal、EtIle、EtPhe、EtTyr、EtThr(OAc)、MeThr(OAc)、MeTyr、MeTyr(OAc)、MeTyr(OMe)、MePhe、MeMet(Ox)であり、ここにおいて、メチオニンの硫黄原子は、スルホキシド又はスルホンであり;
AXXは、Leu、Val、Ile、Gly、Abuであり;
AXXは、MeAla、Sar、MeLeuであり;
AXXは、Gly、Alaであり;
D−Hivは、(D)−2−ヒドロキシイソバレリアン酸であり;
AXXは、MeLeuであり;
AXX10は、Leuであり;そして
AXX11は、MeValである。
【0035】
AXXが窒素原子を含有する場合、シクロフィリン阻害剤は、以下の式(I):
【0036】
【化5】
【0037】
を有するシクロウンデカデプシペプチド、又は医薬的に受容可能な塩、互変異性体或いはそのN−オキシドであることができ、式中、
Lは、所望により置換されていてもよく、所望により部分的に不飽和であってもよい1−6個の炭素原子の鎖であり、所望により鎖中に更なる異種原子の原子を持ち、そして所望により分枝していることができ、そして所望によりRに連結して、一つ又はそれより多い窒素原子を含有する環構造を形成してもよく、
Qは、第一、第二又は第三共有結合、カルボニル基及び所望によりR1への連結基であり、
R1及びR2は、非存在であるか、又は独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、−COR、−CO、−OR、−NR、CONR、−C(=NR)NR、−C(=NR)ORであることができ、そして所望によりR1及びR2は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これは更に縮合されるか、又は所望により置換されていることができ、
R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、
R4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは更に縮合されるか、又は所望により置換されていることができ、
R6は、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、
Xは、OH、OC(=O)−アルキル、OC(=O)−置換されたアルキル、O−アルキル、O−置換されたアルキル、カルボニル(=O)又はイミン(=N−Y)であり、ここで、Yは、−OR又は−NRであり、
は、水素、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、アルキルチオ、置換されたアルキルチオ又は所望により置換されていてもよいアルキレンであり、そして
は、水素であるか、又は非存在である。
【0038】
L−Q−NR1R2基は、所望により置換されていてもよいアルキルリンカーを経由して接続された第一、第二又は第三アミノ基を含んでなることができる。
【0039】
L−Q−NR1R2基は、所望により置換されていてもよいアルキルリンカーを経由して接続された第一又は第二アミド、尿素、アミジン、グアニジン又はカルバミン酸基を含んでなることができる。Qは、アミドが−C(=O)N、並びに−NC(=O)の配向であることができるようなカルボニル基であることができる。
【0040】
L−Q−NR1R2基は、C=N二重結合分子、例えばC=N−OH、C=N−OR、C=N−NH2、C=N−NHR又はC=N−NRRを含んでなることができる。
【0041】
L−Q−NR1R2基は、窒素含有複素環を含んでなることができる。複素環は、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環であることができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができる。
【0042】
連結分子Lは、1−6個の炭素原子であることができる。Lは、鎖中に一つ又はそれより多い異種原子を含有することができる。Lは、炭素原子間に散在するO、N又はS原子を含有することができる。Lは、分枝点を含有することができる。Lは、Lが部分的に不飽和であることができるように、一つ又はそれより多い二重又は三重結合を含有することができる。Lは、R1又はR2と連結して、一つ又はそれより多い窒素原子を含有する環を形成することができる。
【0043】
分子Qは、共有結合であることができる。Qは、第一(単一)共有結合であることができ、この場合、R1及びR2の両方が存在する。Qは、第二共有(二重)結合であることができ、この場合、一つのR1基のみが存在する。Qは、第三共有(三重)結合であって、シアノ(CN)基を産生することができ、この場合、R1及びR2は非存在である。Qは、Q−NがC(=O)−Nアミド基であるようにカルボニル基であることができる。Qは、R1又はR2と連結して、一つ又はそれより多い窒素原子を含有する環を形成することができる。
【0044】
例示的な化合物は、R1及びR2がこれらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することできるものであることができ、これらは、更に縮合されているか又は所望により置換されていてもよく或いは所望により部分的に不飽和であってもよい。例示的な環は、所望により置換されていてもよいモルホリニル、所望により置換されていてもよいピペラジニル、所望により置換されていてもよいオキサゼピニル、所望により置換されていてもよいピロリジニル、所望により置換されていてもよいピペリジニル、所望により置換されていてもよい縮合されたピロリジニル、所望により置換されていてもよいチオモルホリニル又はこれらのSオキシドを含む。環は、縮合されて、二環系を形成することができる。
【0045】
R1及びR2は、非存在であるか、又は独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、−COR、−CO3、−OR、−NR、CONR、−C(=NR)NR、−C(=NR)ORであることができ、そして所望によりR1及びR2は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができる。
【0046】
R1及び/又はR2は、Hであることができる。R1及び/又はR2は、アルキル又は置換されたアルキルであることができる。R1及び/又はR2は、メチル又はエチルであることができる。R1又はR2は、アミドCORであることができ、ここで、R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。R1又はR2は、カルバミン酸塩COであることができ、ここで、R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。R1又はR2は、オキシム又はヒドロキシルアミンORであることができ、ここで、R4は、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。R1又はR2は、ヒドラゾンNRであることができ、ここで、R4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができる。R1又はR2は、−C(=NR)NR又は−C(=NR)ORであることができ、ここで、R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そしてR4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができ、そしてR6は、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0047】
Xは、OH、OC(=O)−アルキル、OC(=O)−置換されたアルキル、O−アルキル、O−置換されたアルキル、カルボニル(=O)又はイミン(=N−Y)であり、ここでYは、−OR又は−NRである。XがOHである場合、アミノ酸はトレオニンである。トレオニンのヒドロキシル分子は、エステル又はO−アルキル基の形態であることができ、ここで、エステル又はアルキル基は、所望により置換されていてもよい。例えば、アミノ酸は、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)或いは別のトレオニンエステル又はトレオニン−O−アルキル若しくは置換されたO−アルキル分子であることができる。エステルは、OC(=O)−アルキル又はOC(=O)−置換されたアルキルの形態であることができる。Xは、−OCOR又は−OCO型の基であることができ、ここで、R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。Xは、−OR型の基であることができ、ここで、R4は、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。Xは、カルボニル基(=O)として存在することができる。Xは、イミン(=N−Y)として存在することができ、ここで、Yは、OR又は−NRであり、ここで、R4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができる。
【0048】
は、水素、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、アルキルチオ、置換されたアルキルチオ又は所望により置換されていてもよいアルキレンである。Raは、−S−R7、−CH2−S−R7型の置換されたアルキル基並びにこれらのスルホキシド及びスルホン類似体を含み、ここで、R7は、H、アルキル又は置換されたアルキルである。
【0049】
Raに対する例示的な基は:=CH、−CHSH、R4及びR5が、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができ、そしてnが1−4である−CH−S−(CHN−R、nが1−4である−CH−S−(CH−アリール、nが1−4である−CH−S−(CH−ヘテロアリール、−CH−S−CH、−CH−S−シクロアルキル、CH−S−ヘテロシクロアルキル、R4が、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そしてnが1−4である−CH−S−(CHCOOR4、nが1−4である−CH−S−(CH−CH=CH、nが1−4である−CH−S−(CHN−C(=NH)−NHを含む。上記に与えたそれぞれの例において、硫黄はスルホキシド又はスルホンに酸化されていることができ、そして式は、−CH−S(=O)−(CH)−と表すことができ、ここで、mは0−2である。
【0050】
Raのための更なる例示的な基は、特許出願公開US2012/0088734中に見出すことができ、この内容は、本明細書中に援用される。
【0051】
は、水素であるか、又はRaがアルキレンである場合、非存在である。
【0052】
例示的な化合物は、Lが1−6個の炭素原子の鎖であり、Qが第一共有結合又はカルボニル基であり、そしてR1及びR2がこれらが接続している窒素原子と一緒に、更に縮合されているか又は所望により置換されていることができる4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成する、式1の化合物を含むことができる。
【0053】
例示的な化合物は、Lが1−6個の炭素原子の鎖であり、Qが第一共有結合又はカルボニル基であり、そしてR1及びR2がこれらが接続している窒素原子と一緒に、更に縮合されているか又は所望により置換されていることができる5−7員のシクロアルキル又は複素環を形成する、式1の化合物を含むことができる。
【0054】
例示的な化合物は、L−Q−NR1−R2基が、−(CH−NR1R2から選択される式1の化合物を含むことができ、ここで、nは1−4であり、そしてR1及びR2は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキルであるか、又はこれらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成し、これらは、更に縮合されているか又は所望により置換されていることができる。
【0055】
例示的な化合物は、L−Q−NR1−R2基が、−(CH−S−(CH−NR1R2から選択される式1の化合物を含むことができ、ここで、nは1−4であり、mは1−4であり、そしてR1及びR2は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキルであるか、又はこれらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成し、これらは、更に縮合されているか又は所望により置換されていることができる。
【0056】
例示的な化合物は、L−Q−NR1−R2基が、−(CH−CO−NR1R2から選択される式1の化合物を含むことができ、ここで、nは1−4であり、そしてR1及びR2は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキルであるか、又はこれらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成し、これらは、更に縮合されているか又は所望により置換されていることができる。
【0057】
例示的な化合物は、L−Q−NR1−R2基が、−(CH−S−(CH−CO−NR1R2から選択される式1の化合物を含むことができ、ここで、nは1−4であり、mは1−4であり、そしてR1及びR2は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキルであるか、又はこれらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成し、これらは、更に縮合されているか又は所望により置換されていることができる。
【0058】
−NR1R2に対する例示的な構造は、以下の式:
【0059】
【化6】
【0060】
を含む。
【0061】
例示的な化合物は、Lが0−1個の異種原子置換基を持つC1−6アルキル基であり、Qが第一共有結合であり、そしてR1及びR2が独立に、H、アルキル又は置換されたアルキル基である、式1の化合物を含む。
【0062】
例示的な化合物は、L又はQがRに連結されて、一つ又はそれより多い窒素原子を含有する環構造を形成する、式1の化合物を含む。
【0063】
例示的な化合物は、L−Q−NR1−R2基が、−(CH−NR1R2から選択される式1の化合物を含み、ここで、nは1−4であり、R1はH又はアルキルであり、そしてR2は、−COR、−CO3、−CONR、−C(=NR)NR又は−C(=NR)ORであり、ここで、R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、R4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができ、そしてR6は、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0064】
例示的な化合物は、L−Q−NR1−R2基が、−(CH−S−(CH−N R1R2から選択される式1の化合物を含み、ここで、nは1−4であり、mは1−4であり、R1はH又はアルキルであり、そしてR2は、−COR、−CO3、−CONR、−C(=NR)NR、又は−C(=NR)ORであり、ここで、R3は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、R4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール、又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができ、そしてR6は、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0065】
N−COR、−CO3、−CONR、−C(=NR)NR又は−C(=NR)ORに対する例示的構造は、以下の式:
【0066】
【化7】
【0067】
を含み、ここで、矢印は、更に置換されることができる位置を示す。基は、以下の式:
【0068】
【化8】
【0069】
を含むことができる。
【0070】
例示的な化合物は、Qが第二共有結合であり、R1が非存在であり、R2が、−OR又は−NRである、式1の化合物を含み、ここで、R4及びR5は、独立に、H、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール又は所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり、そして所望によりR4及びR5は、これらが接続している窒素原子と一緒に、4−7員のアリール、シクロアルキル又は複素環を形成することができ、これらは、更に縮合されるか又は所望により置換されていることができる。
【0071】
例示的な化合物は、以下に示すものを含む。以下の図:
【0072】
【化9】
【0073】
において、L−Q−NR1−R2基は、環式ペプチド環から描かれている。
【0074】
CONR1R2型の例示的なアミド構造は、以下の式:
【0075】
【化10】
【0076】
を含む。
【0077】
L又はQが、R1に連結されている構造の例は、以下の式:
【0078】
【化11】
【0079】
を含む。
【0080】
ここで、Rは、芳香族環上の一つ又はそれより多い所望による置換基である。
【0081】
別の構造は、以下の式:
【0082】
【化12】
【0083】
である。ここで、Rは、独立に、H、アルキル又は置換されたアルキルである。
【0084】
あるいは、シクロフィリン阻害剤は、サングリフェリン、又はその類似体であることができる。
【0085】
あるいは、シクロフィリン阻害剤は、シクロスポリン、又はシクロスポリン類似体であることができ、これは、以下の式(2):
【0086】
【化13】
【0087】
を有する化合物、又は医薬的に受容可能なその塩として示すことができ、式中、
Aは、−CH=CHR、−CH=CH−CH=CHR又は−CHCHRであり、ここにおいて、Rは、−CH、−CHSH、nが1、2、3、4、5又は6である−CHS−C、mが0又は1であり、そしてRがH又はC−Cアルキルである−(CHCOORであり;
Bは、メチル、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピル又はn−プロピルであり;
Cは、イソブチル、2−ヒドロキシイソブチル、イソプロピル又は1−メチルプロピルであり;
Dは、−CH、−CHOH又は−CHOCHCHOHであり;
は、H或いはX−R又はCR−X−R基であり、ここで、同一又は異なるR及びRは、それぞれ水素又はC−Cアルキルであるか、或いは一緒にC−Cシクロアルキルであり;
は、メチル又はエチルであり;
Xは、結合、硫黄又は−S(O)nであり、ここにおいてnは1又は2であり;
は、水素、直鎖又は分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖又は分枝鎖のC−Cアルケニル、直鎖又は分枝鎖のC−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1−3個の異種原子を有するC−Cヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールであるか、又はRは、カルボキシル、アミノ、アミド基を含有し、そしてここにおいて、Rは、同一又は異なる一つ又はそれより多い、C−Cアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシカルボニル、カルボキシル、シクロアルキル、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1−3個の異種原子を有する飽和又は部分的に不飽和の5−6員のヘテロシクリルの基で所望により置換されていることができ、このヘテロシクリルは、一つ又はそれより多いC−Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミジノ、グアニジン又は尿素の基によって所望により置換されていてもよい。
【0088】
ある種のシクロスポリン類似体は、特許出願US20120088734中に記載されている。その中に記載されているいずれもの化合物の新しい使用、又は新しい製剤は、本発明の範囲内である。
【0089】
本明細書中の開示は、いずれもの医薬的に受容可能な塩を含む。化合物が異性体である場合、全てのキラルな形態及びラセミ体が含まれる。開示は、全ての溶媒和物、水和物及び結晶の形態を含む。
【0090】
シクロスポリンは、シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンG、(D)−セリン−8−シクロスポリン、(D)−[O−ヒドロキシエチルセリン]−シクロスポリン(IMM−125)、MeIle−(4)−シクロスポリン(NIM−811)、アリオスポリビル(Aliosporvir)(Debio−025)、SCY−635、又はSCY−641であることができる。
【0091】
シクロスポリンは、シクロスポリンAであることができる。シクロスポリンAは、以下の式:
【0092】
【化14】
【0093】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、エチルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0094】
シクロスポリンは、シクロスポリンBであることができる。シクロスポリンBは、以下の式:
【0095】
【化15】
【0096】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、メチルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0097】
シクロスポリンは、シクロスポリンCであることができる。シクロスポリンCは、以下の式:
【0098】
【化16】
【0099】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、1−ヒドロキシエチルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0100】
シクロスポリンは、シクロスポリンDであることができる。シクロスポリンDは、以下の式:
【0101】
【化17】
【0102】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、イソプロピルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0103】
シクロスポリンは、シクロスポリンGであることができる。シクロスポリンGは、以下の式:
【0104】
【化18】
【0105】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、n−プロピルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0106】
シクロスポリンは、(D)−セリン−8−シクロスポリンであることができる。(D)−セリン−8−シクロスポリンは、以下の式:
【0107】
【化19】
【0108】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、エチルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHOHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0109】
シクロスポリンは、(D)−[O−ヒドロキシエチルセリン]−シクロスポリン(IMM−125)であることができる。(D)−[O−ヒドロキシエチルセリン]−シクロスポリン(IMM−125)は、以下の式:
【0110】
【化20】
【0111】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、エチルであり;
Cは、イソブチルであり;
Dは、−CHOCHCHOHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0112】
シクロスポリンは、MeIle−(4)−シクロスポリン(NIM−811)であることができる。MeIle−(4)−シクロスポリン(NIM−811)は、以下の式:
【0113】
【化21】
【0114】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、エチルであり;
Cは、1−メチルプロピルであり;
Dは、−CHであり;
は、Hであり;そして
は、メチルである。
【0115】
シクロスポリンは、アリオスポリビル(Debio−025)であることができる。アリオスポリビル(Debio−025)は、以下の式:
【0116】
【化22】
【0117】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、エチルであり;
Cは、イソプロピルであり;
Dは、−CHであり;
は、CR−X−Rであり、ここで、R及びRは、それぞれ水素であり;Xは結合であり、そしてRは水素であり(即ちRはメチルである);そして
は、エチルである。
【0118】
シクロスポリンは、SCY−635又はSCY−641であることができる。SCY−635は、以下の式:
【0119】
【化23】
【0120】
又は医薬的に受容可能なその塩によって表すことができ、式中、
Aは、−CH=CHRであり、ここにおいて、Rは、−CHであり;
Bは、エチルであり;
Cは、2−ヒドロキシイソブチルであり;
Dは、−CHであり;
は、X−Rであり、ここでXは硫黄であり、そしてRはCHCHNMeであり;そして
は、メチルである。
【0121】
本明細書中に記載される化合物のいずれかがキラル中心を有する限り、本発明は、ジアステレオ異性体の混合物であるか又は分離されたジアステレオ異性体の形態であるかに関わらず、このような化合物の全ての異性体に拡張される。本明細書中に記載される発明は、如何なる方法でそのように調製されたとしても、開示される化合物のいずれかの全ての結晶の形態、溶媒和物及び水和物に関する。本明細書中に開示される化合物のいずれかが、酸又は塩基性の中心、例えばカルボン酸又はアミノ基を有する限り、前記の化合物の全ての塩の形態は、本明細書中に含まれる。医薬的使用の場合、塩は、医薬的に受容可能な塩であると見做されなければならない。
【0122】
記述することができる医薬的に受容可能な塩は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。このような塩は、慣用的な手段によって、例えば遊離酸又は遊離塩基の形態の化合物の、1当量又はそれより多い適当な酸或いは塩基との、所望により溶媒中の、又は塩が不溶性である媒体中の反応、それに続く前記溶媒、又は前記媒体の、標準的技術を使用する(例えば、真空中、冷凍乾燥又は濾過による)除去によって形成することができる。塩は、更に塩の形態の化合物の対イオンを、他の対イオンと交換することによって、例えば適したイオン交換樹脂を使用して調製することもできる。
【0123】
医薬的に受容可能な塩の例は、無機酸及び有機酸から誘導される酸付加塩、並びに金属、例えばナトリウム、マグネシウム、又は好ましくは、カリウム及びカルシウム、或いは有機塩基、例えばエタノールアミン、N,N−ジアルキルエタノールアミン、モルホリン、等から誘導される塩を含む。
【0124】
酸付加塩の例は、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、クエン酸、乳酸、マンデリン酸、グリコール酸、アジピン酸、アルギニン酸、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えばL−アスコルビン酸)、L−アスパラギン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)樟脳酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸(例えばD−グルコン酸)、グルクロン酸(例えばD−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)−L−乳酸及び(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば(−)−L−リンゴ酸)、(±)−DL−マンデリン酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸及び吉草酸から形成された酸付加塩を含む。
【0125】
塩の特別な例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸;有機酸、例えば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸;並びに金属、例えばナトリウム、マグネシウム、又は好ましくは、カリウム及びカルシウムから誘導される塩である。
【0126】
更に包含されるものは、化合物及びその塩のいずれもの溶媒和物である。好ましい溶媒和物は、非毒性の医薬的に受容可能な溶媒(以下で溶媒和性溶媒と呼ばれる)の分子の、本発明の化合物の固体状態の構造(例えば結晶構造)への組込みによって形成される溶媒和物である。このような溶媒の例は、水、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール及びブタノール)、及びジメチルスルホキシドを含む。溶媒和物は、本発明の化合物を、溶媒、又は溶媒和性溶媒を含有する溶媒の混合物と共に再結晶化することによって調製することができる。溶媒和物が、いずれもの所定の過程において形成されたか否かは、化合物の結晶を、公知の、そして標準的な技術、例えば熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定(DSC)及びX線結晶学を使用する分析にかけることによって決定することができる。溶媒和物は、化学量論的又は非化学量論的溶媒和物であることができる。特別な溶媒和物は、水和物であり、そして水和物の例は、半水和物、一水和物及び二水和物を含む。
【0127】
溶媒和物及びこれらを製造及び特徴付けするために使用される方法の更に詳細な考察に対して、Bryn et al.,Solid−State Chemistry of Drugs,Second Edition,published by SSCI,Inc of West Lafayette,IN,USA,1999,ISBN 0−967−06710−3を参照されたい。
【0128】
懸濁液の調製
本明細書中に含まれるものは、シクロフィリン阻害剤の新規な製剤である。シクロスポリンのある種のマイクロ製剤の調製は、特許出願US8202540中に開示されている。US8202540は、粘膜付着性物質及びシクロフィリン阻害剤の同時処方を開示していない。更に、US8202540は、シクロスポリンのin situゲル形成系の調製を開示していない。歯周病の治療におけるこれらのシクロフィリン阻害剤の製剤の使用は、本明細書中に開示される。口腔空隙中の生体利用性を延長するために、シクロフィリン阻害剤は、マイクロ粒子又はナノ粒子の懸濁液中に処方することができる。マイクロ粒子は、マイクロメートル尺度の範囲のサイズを有し、そしてナノ粒子は、ナノメートル尺度の範囲のサイズを有する。適した製剤は、概略1μmの粒子サイズを有することができる。例えば、製剤中の粒子の少なくとも50%が、1μmより小さいサイズであることができる。粒子の少なくとも50%は、サイズ200nmないし1μmのサイズであることができる。
【0129】
シクロフィリン阻害剤は、予備懸濁液を調製するために、機械的に撹拌された分散媒体中に撹拌することによって粉末として分散することができる。機械的撹拌のために、例えば、プロペラミキサー、ディスク式溶解機、又はローター−ステーター混合機のような各種のデバイスを使用することができる。分散媒体は、適した界面活性剤を含有する水、又は安定化物質として作用する非水性液体であることができる。別の方法として、分散媒体は、非水性液体であることができる。水を除くすべての液体、例えば、ポリオール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、ポリエチレングリコール、中鎖トリグリセリド、植物油、液体炭化水素、又はアルコールは、分散媒体として使用することができる。水は、分散媒体中に1−20%、好ましくは1−10%の量まで混合することができる。
【0130】
非晶質又は結晶質の形態のシクロフィリン阻害剤は、無発泡予備懸濁液として調製するために、機械的に撹拌された分散媒体に、撹拌することによって粉末として分散することができる。機械的撹拌のために、例えば、プロペラミキサー、ディスク式溶解機、又はローター−ステーターミキサーのような各種のデバイスを使用することができる。分散媒体として、安定剤を含有する水を使用することができる。
【0131】
懸濁液を安定化するために、一つ又はそれより多い安定化物質を加えることができる。安定化物質の例は、ポロキサマー及びポロキサミン(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、ポリソルベート、エトキシル化脂肪族アルコール又は脂肪酸である。特に好ましい安定化物質は、ビタミンE−TPGS(d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸)である。安定化物質は、更にホスファチジルグリセロール、各種の起源のレシチン、リン脂質、スフィンゴ脂質、コール酸、又はアミノ酸;両性イオン性界面活性剤、例えばCHAPSO(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸)、CHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸);又はカチオン性界面活性剤;特に保存剤として使用される物質、例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、又は塩化メチル−ベンゼトニウムのように荷電していることができる。
【0132】
製剤の粘膜付着特性を達成するために、多くの生体付着性ポリマーを使用することができる。生体付着性ポリマーは、多くの親水性基、例えばヒドロキシル、カルボキシル、アミド、リン酸又は硫酸基を有する。これらの親水性基は、ポリマーが水中で膨潤し、そして水素結合、静電気及び疎水性相互作用の組合せによって粘膜表面に付着することを起こす。このようなポリマーの例は、レクチン、カーボポール(ポリアクリル酸)、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0133】
予備懸濁液は、高圧ホモジナイザー、例えばフレンチプレス、ピストンギャップ式ホモジナイザー、ジェット流ホモジナイザー、ビーズミル、ローター−ステーター装置、又は超音波式装置中で更に分散することができる。均質化は、一回、数回又は多数回のサイクルを使用して100ないし2,000バール間の圧力で行うことができる。
【0134】
マイクロ又はナノ粒子は、レーザー回折及び光子相関(PCS)分光法によって粒子サイズに関して特徴づけることができる。1μMのD50%と記述された粒子サイズは、粒子の50%が1μMの直径を有することを意味する。
【0135】
本明細書中に開示されるシクロフィリン阻害剤化合物のいずれもは、マイクロ粒子又はナノ粒子製剤として懸濁することができる。本明細書中に開示されるものは、シクロスポリン及び粘膜付着性物質のマイクロ粒子又はナノ粒子としての製剤である。例示的な化合物は、シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンG、(D)−セリン−8−シクロスポリン、(D)−[O−ヒドロキシエチルセリン]−シクロスポリン(IMM−125)、MeIle−(4)−シクロスポリン(NIM−811)、アリオスポリビル(Debio−025)、SCY−635、又はSCY−641を含むことができる。
【0136】
好ましい活性剤は、シクロスポリンA(CyA)を含む。CyAの適した製剤は、中性の界面活性剤TPGS(トコフェリルポリエチレングリコールコハク酸)を持つものを含む。更なる界面活性剤は、ポロキサマー、例えばポロキサマー407(プルロニックF−127)を含むことができる。組成物は、ポロキサマー407及びTPGSを含むことができる。適した組成物は、CyA(5%)、TPGS(1%)及びポロキサマー407(1%)を含むことができる。使用されるシクロスポリンは、非晶質又は結晶質であることができ、そして懸濁の前に微粒子化することができる。微粒子化された薬剤の使用は、有機溶媒からの薬物の沈殿に対する必要性を回避し、従って最終組成物中の有機溶媒の残留を回避する。結晶質のCyAの使用は、不溶性非晶質に伴ういずれもの問題を回避し、そして制御された薬物の放出速度に導く。
【0137】
マイクロ及びナノ懸濁液を、更に処方することができる。製剤の粘度は、ゲルを形成するために増加することができる。例えば、高濃度(15−20%)のポロキサマーを使用することができる。ゲルは、これが室温では液体であるが、しかし37℃で、又は類似の生理学的条件で固化することができるように、温度感受性であることができる。適したゲルは、15−20%のポロキサマー407を含有することができる。適したゲルは、17%のポロキサマー407を含有することができる。別の方法として、適したゲルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含有することができる。
【0138】
製剤は、保存剤、例えば抗微生物製剤を含有することができる。保存剤は、クロルヘキシジングルコン酸塩であることができる。
【0139】
化学物質の定義
アミノ
アミノは、NH及び置換されたアミノを意味する。置換されたアミノは、NHR又はNRを意味し、ここで、R及びRは、独立の置換基であるか、又はここで、NRは、所望によりO、N及びS並びにこれらの酸化された形態から選択される第2の異種原子の環のメンバーを含有し、所望により置換されていてもよい4ないし7員の非芳香族の複素環を形成する。
【0140】
例示的な置換されたアミノ基は、NMe、NEt、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ、N−シクロヘキシルを含み、ここで、環は、更に置換されていることができる。
【0141】
アルキル
アルキルは、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基は、直鎖又は分枝鎖或いは環式であることができる。“分枝”は、少なくとも一つの炭素分枝点が基中に存在することを意味する。従って、例えば、tert−ブチル及びイソプロピルは両方共分枝基である。アルキル基は、低級アルキル基であることができる。“低級アルキル”は、1ないし約6個の炭素原子、例えば2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。
【0142】
例示的なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、4−ヘプチル、2−メチル−ブタ−1−イル、2−メチル−ブタ−3−イル、2−メチル−ペンタ−1−イル、2−メチル−ペンタ−3−イルを含む。
【0143】
アルキル基は、例えば、以下に例示するように、所望により置換されていることができる。
【0144】
用語アルキルは、更に脂肪族炭化水素、例えばアルケニル、及びアルキリデン並びにシクロアルキル、シクロアルキリデン、ヘテロシクロアルキル及びヘテロシクロアルキリデン基を含み、これらは、更に置換されていることができる。
【0145】
アルケニル
アルケニルは、不飽和の脂肪族炭化水素基を意味する。不飽和は、一つ又はそれより多い二重結合、一つ又はそれより多い三重結合、或いはこれらのいずれもの組合せを含むことができる。アルケニル基は、直鎖又は分枝鎖であることができる。“分枝”は、少なくとも一つの炭素分枝点が基中に存在することを意味する。いずれもの二重結合は、基中のいずれもの他の二重結合とは独立に、(E)又は(Z)配置のいずれかであることができる。
【0146】
アルケニル基は、低級アルケニル基であることができる。“低級アルケニル”は、2ないし6個の炭素原子、例えば2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖のアルケニル基を意味する。
【0147】
例示的なアルケニル基は、エテニル、n−プロペニル、i−プロペニル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−3−エン−1−イル、ペンタ−1−エン−1−イル、ペンタ−2−エン−1−イル、ペンタ−3−エン−1−イル、ペンタ−4−エン−1−イル、ペンタ−1−エン−2−イル、ペンタ−2−エン−2−イル、ペンタ−3−エン−2−イル、ペンタ−4−エン−2−イル、ペンタ−1−エン−3−イル、ペンタ−2−エン−3−イル、ペンタジエン−1−イル、ペンタジエン−2−イル、ペンタジエン−3−イルを含む。別の(E)及び(Z)型が可能である場合、それぞれは、別個に同定されると考えられる。
【0148】
アルケニル基は、例えば以下に例示するように、所望により置換されていることができる。アルケニルは、シアノを含む。
【0149】
アルキリデン
アルキリデンは、二重結合を経由して分子の残りに連結されたいずれものアルキル又はアルケニル基を意味する。アルキル及びアルケニル基に対して本明細書中で提供される定義及び図示は、更にアルキリデン基に対しても適当な変更を伴って適用される。
【0150】
アルキルチオ
アルキルチオは、炭素鎖中に硫黄原子を含有するいずれものアルキル基を意味する。硫黄原子は、チオエーテル(C−S−C)、スルホキシド(C−S(=O)−C)又はスルホン(C−S(=O)−C)の形態であることができる。アルキルチオ基は、更に置換されていることができる。アルキルチオ基は、CH−S−Rを含み、ここで、Rは、更にアルキル、シクロアルキル又は置換されたアルキル基である。
【0151】
シクロアルキル
シクロアルキルは、環式の非芳香族炭化水素基を意味する。シクロアルキル基は、非芳香族の不飽和を含むことができる。シクロアルキル基は、3ないし6個の炭素原子、例えば3、4、5又は6個の炭素原子を有することができる。例示的なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルを含む。
【0152】
シクロアルキル基は、例えば以下に例示するように、以下に定義するように所望により置換されていることができる。例示的な置換されたシクロアルキル基は、モノ−又はポリ−アルキル置換シクロアルキル基、例えば1−メチルシクロプロピル、1−メチルシクロブチル、1−メチルシクロペンチル、1−メチルシヘキシル、2−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロブチル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロヘキシル、1,2−ジメチルシクロヘキシル又は1,3−ジメチルシクロヘキシルを含む。
【0153】
シクロアルキリデン基
シクロアルキリデンは、二重結合を経由して分子の残りに連結されたいずれものシクロアルキル基を意味する。シクロアルキル基に対して本明細書中で提供される定義及び図は、更にシクロアルキリデン基に対しても適当な変更を伴って適用される。
【0154】
ヘテロシクロアルキル
ヘテロシクロアルキル基は、環中に一つ又はそれより多い異種原子を含有する非芳香族の環式基を意味する。ヘテロシクロアルキル基は、O、N又はS原子を含有することができる。ヘテロシクロアルキル基は、完全に飽和又は部分的に不飽和であることができる。ヘテロシクロアルキル基は、典型的には、単環式又は二環式であり、そして更に普通には単環式である。
【0155】
例示的なヘテロシクロアルキル基は、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、ジヒドロフラニル(例えば2,3−ジヒドロフラニル、2,5−ジヒドロフラニル)、4,5−ジヒドロ−1H−マレイミド、ジオキソラニル、2−イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピロリジノニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、スルホラニル、3−スルホレニル、テトラヒドロフラニル、チオモルホリニル、ジヒドロピラニル(例えば3,4−ジヒドロピラニル、3,6−ジヒドロピラニル)、ジオキサニル、ヘキサヒドロピリミジニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、キナクリニル、テトラヒドロピラニル、3,4,5,6−テトラヒドロピリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジニル、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラメチレンスルホキシド、チアゾリジニル、1,3,5−トリアジナニル、1,2,4−トリアジナニル、ヒダントイニル、等を含む。接続の点は、環系のいずれもの原子を経由することができる。
【0156】
ヘテロシクロアルキリデン基
ヘテロシクロアルキリデンは、二重結合を経由して分子の残りに連結されたいずれものヘテロシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクロアルキル基に対して本明細書中で提供される定義及び図は、更にヘテロシクロアルキリデン基に対しても適当な変更を伴って適用される。
【0157】
所望による置換
いずれもの基に適用されるような“所望により置換された”は、前記の基が、所望する場合、同一又は異なることができる一つ若しくはそれより多い置換基で置換されていることができることを意味する。‘所望により置換されたアルキル’は、‘アルキル’及び‘置換されたアルキル’の両方を含む。
【0158】
“置換された”及び“所望により置換された”分子のための適した置換基の例は、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード)、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1−6アルキルアミノ、C2−6アルケニルアミノ、ジ−C1−6アルキルアミノ、C1−6アシルアミノ、ジ−C1−6アシルアミノ、C1−6アリール、C1−6アリールアミノ、C1−6アロイルアミノ、ベンジルアミノ、C1−6アリールアミド、カルボキシ、C1−6アルコキシカルボニル又は(C1−6アリール)(C1−10アルコキシ)カルボニル、カルバモイル、モノ−C1−6カルバモイル。ジ−C1−6カルバモイル、或いはヒドロカルビル分子が、それ自体ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C1−2アルコキシ、アミノ、ニトロ、カルバモイル、カルボキシ又はC1−2アルコキシカルボニルによって置換されている上記のいずれかを含む。ヒドロキシ及びアルコキシのような酸素原子を含有する基において、酸素原子は、硫黄で置換されて、チオ(SH)及びチオ−アルキル(S−アルキル)のような基を産生することができる。従って、所望による置換基は、S−メチルのような基を含む。チオ−アルキル基において、硫黄原子は更に酸化されて、スルホキシド又はスルホンを産生することができ、そして従って、所望による置換基は、従って、S(O)−アルキル及びS(O)−アルキルのような基を含む。
【0159】
置換は、二重結合の形態をとることができ、そして異種原子を含むことができる。従って、CHの代わりにカルボニル(C=O)を持つアルキル基は、置換されたアルキル基と考えることができる。
【0160】
従って、置換された基は、例えばCFH、CFH、CF、CHNH、CHOH、CHCN、CHSCH、CHOCH、OMe、OEt、Me、Et、−OCHO−、COMe、C(O)Me、i−Pr、SCF、SOMe、NMe、CONH、CONMe等を含む。アリール基の場合、置換は、アリール環中の隣接する炭素原子からの環の形態、例えばO−CH−Oのような環式アセタールであることができる。
【0161】
本発明の文脈における用語“医薬組成物”は、活性な薬剤を含んでなり、そして更に一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な担体を含んでなる組成物を意味する。組成物は、更に、投与のモード及び剤形の性質によって、例えば、希釈剤、アジュバント、賦形剤、ベヒクル、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、抗細菌剤、抗真菌剤、潤滑剤及び分散剤から選択される成分を含有することができる。組成物は、例えば、錠剤、糖衣錠、粉末、エリキシル、シロップ、懸濁液を含む液体製剤、噴霧剤、吸入剤、錠剤、ロゼンジ、乳液、溶液、カシェー、顆粒、カプセル及び座薬、並びにリポソーム製剤を含む注射のための液体製剤の形態をとることができる。
【0162】
投与量は、患者の要求、治療される症状の重篤度、及び使用される化合物によって変更することができる。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、当技術の技能の範囲である。一般的に、治療は、化合物の最適な投与量より少ない、より少ない投与量で開始される。その後、投与量は、最適な効果がその状況下で達成されるまで、少量ずつ増加される。便宜上、所望する場合、全日量を分割し、そしてその日内に分割して投与することができる。
【0163】
化合物の有効な投与量の規模は、勿論、治療される症状の重篤度及び特定の化合物、並びにその投与の経路の特質に伴い変化するものである。適当な投与量の選択は、当業者の能力の過度な負担を伴わない範囲である。一般的に、日量の範囲は、ヒト及び非ヒト動物の体重のkg当たり約0.1mgから約100mgまで、好ましくはヒト及び非ヒト動物の体重のkg当たり約1mgから約50mgまで、そして最も好ましくはヒト及び非ヒト動物の体重のkg当たり約3mgから約30mgまでであることができる。
【0164】
生物学的適用
本発明のシクロフィリン阻害剤は、歯周炎を治療するために使用することができる。本明細書中に記載するように、本発明は、シクロスポリン、サングリフェリン又はシクロウンデカデプシペプチドの、治療のため、或いは歯周炎又は歯周病の治療において使用するための医薬の製造のための使用を含む。シクロフィリン阻害剤は、粘膜付着性物質と共に組成物として調製することができる。本明細書中に開示されるものは、粘膜付着性物質及びシクロスポリン、サングリフェリン又はシクロウンデカデプシペプチドから選択される一つ又はそれより多い薬剤を含有する医薬製剤である。
【0165】
シクロフィリン阻害剤又は医薬製剤は、歯肉ポケットに局所的に適用することができる。シクロフィリン阻害剤又は製剤は、マイクロ又はナノ製剤として適用することができる。もう一つの側面によれば、マイクロ又はナノ製剤は、粘膜付着性物質であるか、又はそれを含有する。マイクロ又はナノ製剤は、数日又は数週間の期間にわたりシクロフィリン阻害剤を放出するために最適化することができる。シクロフィリン阻害剤は、他の薬剤と組合せて使用することができる。二つ又はそれより多いシクロフィリン阻害剤を一緒に使用することができ、又は組成物は、シクロフィリン阻害剤、及び抗細菌剤又は免疫抑制剤であることができる更なる薬剤からなることができる。
【0166】
シクロフィリン阻害剤又は医薬製剤は、経口的に又は歯肉への注射によって投与することができる。シクロフィリン阻害剤又は医薬製剤は、活性成分を含有する口腔洗浄剤により投与することができる。シクロフィリン阻害剤又は医薬製剤は、in situでゲルになる液体製剤として投与することができる。
【0167】
シクロフィリン阻害剤又は医薬製剤は、ヒト又は動物用産物中で使用することができる。シクロフィリン阻害剤又は医薬製剤は、イヌの歯周炎炎を治療するために、イヌに使用することができる。
【0168】
本発明の化合物の調製のための方法
工程1: 化合物1;シクロ−(MeBmt−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)の、NRRL−18230株の発酵による産生。
【0169】
【化24】
【0170】
Cylindrotrichum種のNRRL−18230を、米国、米国農務省農業研究部から調達し、そして麦芽酵母寒天(MYA:脱イオン水中の2%麦芽抽出物、0.4%酵母抽出物、2%寒天)上で22℃で培養した。出発物質を、ガラスビーズ(直径2.5−3.5mm、5ml)を含有する滅菌蒸留水(10ml)中の、成熟した寒天プレート培養物の成長端から採取した10個の0.5cmのプラグを懸濁することによって産生し、そして激しく振盪して、均質化を起こした。種培養物を、100mlの麦芽酵母ブロス(MYB:自然のpHにおける脱イオン水中の2%麦芽抽出物及び0.4%酵母抽出物)を含有する三つの250mlのコニカルフラスコのそれぞれに、2mlの出発物質と共に無菌的に播種し、そして22℃及び150rpmで回転振盪機上で培養することによって産生した。11日後、第1播種段階からの菌糸体のペレットを、蒸留水中でガラスビーズと共に解離し、そして第2播種段階を、100mlのMYB培地を含有する15個の250mlコニカルフラスコのそれぞれに、10容量/容量%の解離された物質と共に播種し、そして22℃及び150rpmで培養することによって産生した。更に14日後、産生段階を、2.5LのMYB培地を含有する6個の5Lエルレンマイヤーフラスコのそれぞれに、第2播種段階から産生された菌糸体ペレットから解離された250mlの物質を播種することによって開始した。培養物を、100rpm及び22℃で増殖し、そして試料採取及び逆相HPLCによる分析によって決定されるように、シクロ−(MeBmt−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)の力価が、定常に達した14日後に回収した。回収したバイオマスをBeckman J6B遠心機を使用する3000rpmにおける15分間の遠心によって収集した。得られたペレットを、バイオマスを数回の酢酸エチル(3×2.5L)による均質化によって抽出し、続いて、抽出が起こることを可能にするために数時間にわたって間欠的に撹拌した。この過程をメタノール(2×1.5L)で同様に繰り返した。酢酸エチル及びメタノール抽出物を、回転蒸発によって別個に濃縮した。酢酸エチル抽出物を、アセトニトリル(300ml)中に溶解し、そしてn−ヘキサン(2×300ml)で抽出することによって脱脂した。混合したヘキサン層を、アセトニトリル(300ml)で逆抽出し、そして次いでアセトニトリル層を混合し、そして乾燥して、1.2gのアセトニトリル可溶性物質を得た。メタノール抽出物を、同様に脱脂して、2.7gのアセトニトリル可溶性物質を得た。酢酸エチル及びメタノール抽出物からのアセトニトリル可溶性試料を、1:1のn−ヘキサン:酢酸エチル(10ml)中に溶解し、そして混合し、そしてシリカゲル(35−70μm、カラム:φ8cm×16cm)のカラムクロマトグラフィーによって、最初n−ヘキサン:酢酸エチル(1:1)で、続いて酢酸エチルで、そして次いで酢酸エチル−メタノール(98:2続いて96:4)で溶出して精製し、全ての移動相は0.1%のギ酸を含有していた。蒸発光散乱検出器を持つ逆相HPLCを使用する分析によって決定されるように、興味のある化合物のみを含有することが見いだされた画分を混合し、そして真空中で濃縮して、純粋なシクロ−(MeBmt−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(1.248g)を得た。
【0171】
工程2: 化合物2;シクロ−[(3R,4R,5S)−4−(ヒドロキシ)−3−メチル−5−(メチルアミノ)−1−N−モルホリノ−ヘキサン酸−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal]の調製
【0172】
【化25】
【0173】
工程2a: シクロ−{[(3R,4R,5S)−4−(ヒドロキシ)−3−メチル−5−(メチルアミノ)−1−オキソ−ヘキサン酸−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal]}の調製
工程1で得た産物(0.124g、0.1mmol)を、乾燥ジクロロメタン(16ml)中に溶解し、そしてガラスの注入管(窒素/オゾン添加のため)を備え、2Mのヨウ化カリウム溶液を含有するDreschlerビンに接続された出口を持つ三口フラスコに加えた。反応混合物を、窒素雰囲気下で固体CO/アセトン浴を使用して−78℃に冷却した。反応容器の温度が安定した時点で、オゾンを、反応混合物を通して、これが淡い青色になるまで泡立てた(概略3−5分)。オゾン供給を取外し、そして次いで乾燥窒素ガスを、反応混合物を通して、青色が消えるまで泡立てた。次いで硫化ジメチル(0.038ml)を加え、そして反応混合物を3時間かけて室温まで温まらせた。この時間後、反応混合物を食塩水で洗浄し、次いで乾燥(NaSO)し、濾過し、そして減圧下で蒸発して、粗製の表題化合物を得て、これを単離せずに次の工程で使用した。
ESMS MNa+1257.1、MK+1273.3。
【0174】
工程2b: 化合物2;シクロ−[(3R,4R,5S)−4−(ヒドロキシ)−3−メチル−5−(メチルアミノ)−1−N−モルホリノ−ヘキサン酸−Thre−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal]の調製
工程2aで得られた化合物(0.123g、0.1mmol)の乾燥ジクロロメタン(10ml)中の撹拌された溶液に、モルホリン(0.044ml、0.5mmol)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.089g、0.5mmol)を加え、そして反応混合物を室温で18時間撹拌した。この時間後、更なる量のモルホリン(0.044ml、0.5mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.089g、0.5mmol)を加え、そして反応混合物を40℃で4.5時間撹拌した。この時間後、更なる量のモルホリン(0.025ml、0.28mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.089g、0.5mmol)を加え、そして反応混合物を室温で更に23時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液、食塩水で洗浄し、次いで有機相を乾燥(NaSO)し、濾過し、そして蒸発した。残渣を、SCXクロマトグラフィーによって、100%エタノールからエタノール中の0.21Mトリメチルアミンへの溶媒の勾配を使用し、続いてMPLCによって、100%ジクロロメタンから92%ジクロロメタン/8%エタノールへの溶媒の勾配を使用して精製して、表題化合物を白色の固体として得た。
ESMS MH+1306.6。
【0175】
化合物2は、歯周病の治療において使用することができるか、又は以下に記載するように懸濁液に処方することができる。
【0176】
シクロスポリンの懸濁液の調製のための方法
実施例1
グリセロール中のシクロスポリンの5%懸濁液に、機械的撹拌(ローター−ステーター混合機、Ultra Turrax T25)下で、1%のTPGS、0.01%のクロルヘキシジン、7%のゼラチン、及び10%のヒドロキシプロピルセルロースを加えた。次いで得られた予備分散物を、室温のGaulin Micron Lab40高圧ホモジナイザーを、500バールで3サイクル及び1,500バールで10サイクル使用して均質化した。粒子サイズの分析は、1.8μMのD50%、4.6μMのD75%及び5.6μMのD95%を示した。
【0177】
実施例2
20回の高圧均質化サイクルを使用したことを除く、実施例1と同じ実験プロトコルは、960nMのD95%を持つシクロスポリンナノ粒子を与えた。
【0178】
実施例3
TPGSをポロキサマー407で置換え、そして20回の高圧均質化サイクルを使用したことを除く、実施例2と同じ実験プロトコルは、890nMのD50%及び1.7μMのD95%を持つシクロスポリンナノ粒子を与えた。
【0179】
一般的ナノ微粉化法(パイロット規模)
示された量の精製水を、適したサイズのガラスビーカーに秤量した。その後、記載した量の界面活性剤及び安定化ポリマーを、磁気撹拌下で、成分が完全に溶解するまで加えた。記載された量のシクロスポリンを、撹拌下でゆっくりと加えて、殆ど均質な懸濁液を得た。懸濁液を、微粉化装置(例えばNetzsch,DeltaVita)に移した。微粉化装置は、概略0.2mmの直径の微粉化用ビーズで前もって充填されていた。微粉化を制御された温度条件下(<40℃)で、適した時間(2−5時間)をかけて、適当な微粉加速度(2000−3000rpm)を使用して行った。
【0180】
特徴付け
単離されたナノ懸濁液の粒子サイズ分布(PSD)を、静的レーザー回折法(例えばMalvern Mastersizer)によって測定した。更に、ナノ懸濁液の安定性を、2−8℃及び25℃/60%湿度における保存後に測定した。
【0181】
ナノ懸濁液に対する添加剤
界面活性剤は、中性の界面活性剤TPGS、カチオン系(キトサン)又はアニオン系(グリココール酸ナトリウム)から選択された。異なった界面活性剤を使用したデータを、図1−4に示す。図5は、粒子の安定性のために微細化されたシクロスポリンの利点を示す。
【0182】
更に、ポロキサマー407のようなポリマーも、更に最終ナノ懸濁液に加えて、粒子サイズ分布にいずれもの影響を伴うことなく、図6に示すようにより高い温度におけるゲル形成を増加することができる。製剤の安定性を、以下に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
クロルヘキシジングルコン酸塩のような保存剤を、ナノ懸濁液のナノ粒子にいずれもの影響を伴うことなく加えることができる。これに対するデータを以下に示す:
【0185】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5