特許第6441811号(P6441811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6441811複合体形成用組成物、そこから形成された複合体、及びそれを含む経口摂取用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441811
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】複合体形成用組成物、そこから形成された複合体、及びそれを含む経口摂取用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20181210BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20181210BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20181210BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C08L1/00
   C08K5/13
   C08K5/04
   C08K3/22
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K9/48
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-547849(P2015-547849)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2016-501944(P2016-501944A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】KR2013011375
(87)【国際公開番号】WO2014092419
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0143828
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0149471
(32)【優先日】2013年12月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508130188
【氏名又は名称】ロッテ精密化學株式会社
【氏名又は名称原語表記】LOTTE Fine Chemical Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、チェ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ホン、チュン キ
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ヒョン ホ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−217522(JP,A)
【文献】 特開2007−186833(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/010403(WO,A1)
【文献】 特開2011−136983(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/017494(WO,A1)
【文献】 特開2009−114125(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00
C08K 3/22
C08K 5/04
C08K 5/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系化合物、ポリフェノール系化合物及び溶媒を含み、
前記ポリフェノール系化合物の含量は、前記セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜7.59重量部であり、
前記セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜10重量部の抗酸化剤をさらに含むことを特徴とする複合体形成用組成物。
【請求項2】
前記ポリフェノール系化合物は、緑茶抽出物から得たものであることを特徴とする請求項1に記載の複合体形成用組成物。
【請求項3】
前記セルロース系化合物は、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、その誘導体、またはその混合物であることを特徴とする請求項1に記載の複合体形成用組成物。
【請求項4】
前記溶媒は、水及びエタノールのうち選択された一つ以上を含み、
前記溶媒の含量は、セルロース系化合物及びポリフェノール系化合物の総重量100重量部を基準にして、100〜2,000重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合体形成用組成物。
【請求項5】
前記抗酸化剤は、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、ローズマリーオイル、ジブチルヒドロキシトルエン、ケルセチン、トコフェロール、またはそれらの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合体形成用組成物。
【請求項6】
pH調節剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合体形成用組成物。
【請求項7】
前記pH調節剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、またはそれらの混合物を含むアルカリ剤であることを特徴とする請求項6に記載の複合体形成用組成物。
【請求項8】
セルロース系化合物及びポリフェノール系化合物を含み、
前記ポリフェノール系化合物の含量は、セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜7.59重量部であり、
前記セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜10重量部の抗酸化剤をさらに含むことを特徴とする複合体。
【請求項9】
前記複合体は、pH依存的な溶解度を有することを特徴とする請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
請求項8に記載の複合体を含む経口摂取用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体形成用組成物、そこから形成された複合体、及びそれを含む経口摂取用組成物に係り、さらに詳細には、pH依存的溶解度を有する複合体形成用組成物、そこから形成された複合体、及び該複合体を含む経口摂取用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬または食品の分野では、活性主成分の物理的保護、化学的保護を獲得するために、フィルムコーティングが使用される。医薬分野でのフィルムコーティングは、湿気、酸素、光などの環境から保護し、活性主成分の味、においまたは色を遮蔽し、医薬品の品質を向上させるのに使用される。特に、pH依存的溶解特性を有した化合物のうち、耐酸性を有するpH範囲が、4〜7近辺で形成される化合物を利用したフィルムコーティングは、胃液に対する錠剤の耐性を増進させ、体内腸内環境でのその放出を迅速に改質させる。前述のpH依存的溶解特性を有した化合物を利用したフィルムコーティングを腸溶コーティングという。
【0003】
前記腸溶フィルムコーティングが医薬品素材として利用される場合、ポリメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアクリレートフタレート、セルロース酢酸フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセチルスクシネートのような化合物を使用する。そして、前記腸溶フィルムコーティングが、一部食品素材として利用される場合、アルギネート(alginate)類、シェラック(shellac)などを制限的に使用する。フィルムコーティングは、例えば、錠剤に、前記化合物を含む組成物を塗布し、それを乾燥させた後、保護フィルムを形成する過程によってなされる。
【0004】
ところで、前述のフィルムは、一部食品素材に使用が不可能であり、食品素材に使用可能なアルギネート類やシェラックは、pH依存的溶解特性が十分ではなく、胃だけではなく、腸での溶解速度も迅速ではなく、ユーザが所望する腸溶品質が、満足すべきものではないとのことである。また、前述の医薬品素材も、品質的な側面において、一部は透明度が低く、水分濃度が低い条件においては壊れやすく、べたつく特性のために、可塑剤、タルクなどの追加賦形剤を多く使用しなければならないか、あるいはフタル酸のある素材は、遊離フタル酸解離などの問題点によって、改善の余地が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、複合体形成用組成物、そこから形成された複合体、及び前記複合体を含む経口摂取用組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によって、セルロース系化合物、ポリフェノール系化合物及び溶媒を含み、前記ポリフェノール系化合物の含量は、セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜40重量部である複合体形成用組成物を提供する。
【0007】
本発明の他の側面によって、セルロース系化合物及びポリフェノール系化合物を含み、前記ポリフェノール系化合物の含量は、セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜40重量部を含む複合体を提供する。
【0008】
前記複合体形成用組成物は、前記セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜10重量部の抗酸化剤をさらに含んでもよい。
【0009】
本発明の他の側面によって、前述の複合体を含む経口摂取用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一具現例による複合体は、既存の化学的物質と異なり、毒性が全くなく、分解されても有害な物質が出ず、食品素材として、全産業領域において、自由に使用可能である。また、人体に適用される場合、最終的に、抗酸化などの生理活性機能を提供することができ、緑茶などの抗酸化成分も、フィルム層に存在し、物質の酸化を防ぎ、フィルム内の成分を保護することができる。工程上でも、単純溶解、及び反応後の洗浄などにおいて、化学的エネルギーが追加して必要ではなく、非常に単純であり、親環境的であり、工程コストも低廉である。さらに、天然物であるポリフェノール系化合物とセルロース系化合物との相互作用によって発生しうる長期保管安定性の低下を抑制するために、抗酸化剤を混合することにより、20倍ほどの長期保管安定性の向上効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一具現例による複合体形成用組成物、そこから形成された複合体、その製造方法、及びそれを含む経口摂取用組成物について説明する。
【0012】
前記複合体形成用組成物は、セルロース系化合物、ポリフェノール系化合物及び溶媒を含み、前記ポリフェノール系化合物の含量は、セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜40重量部である。
【0013】
前記溶媒は、水及びエタノールのうち選択された一つ以上を含む。前記溶媒の含量は、セルロース系化合物及びポリフェノール系化合物の総重量100重量部を基準にして、100〜2000重量部である。溶媒の含量が、前記範囲であるとき、前記複合体形成用組成物を構成する成分が等しく混合され、複合体収率にすぐれる。
【0014】
他の側面によって、セルロース系化合物及びポリフェノール系化合物を含み、前記ポリフェノール系化合物の含量は、セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜40重量部である複合体が提供される。
【0015】
前記ポリフェノール系化合物の含量は、例えば、5〜30重量部である。
【0016】
前記ポリフェノール系化合物の含量が1重量部未満であるならば、複合体がpH選択的溶解度を示し難く、40重量部を超えるならば、複合体形成用組成物から形成された複合体を利用した複合体フィルムが壊れやすく、複合体フィルムの成膜性が低下してしまう。
【0017】
ポリフェノール類は、一般的に天然物の地上部などから得ることができ、さまざまな茶類や実類などから得ることができ、前記ポリフェノール系化合物は、例えば、緑茶抽出物から得たものである。
【0018】
本発明に使われた緑茶抽出物は、水分を除いたほとんどの成分が、ポリフェノール類から構成されており、カテキン類(catechin)に代表される没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、没食子酸エピカテキン(ECG)、エピカテキン(EC)、エピガルロカテキン(EGC)である。前述の成分と類似成分とを含むときには、ポリフェノール系化合物において有効である。
【0019】
緑茶抽出物は、当業界において周知の方法によって得られ、例えば、緑茶を、エタノールと水との混合溶媒によって抽出し、そこから溶媒を除去して乾燥させる過程を経て製造可能である。そのような方法によって得られた緑茶抽出物は、例えば、ペースト状態または粉末状態を有することができる。
【0020】
前記ポリフェノール系化合物の例としては、カテキン類が挙げられる。
【0021】
前記セルロース系化合物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、その誘導体、またはそれらの混合物を含む。
【0022】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおいて、メトキシ基の含量は、16.5〜30.0重量%であり、ヒドロキシプロポキシル基の含量は、4〜32重量%であり、望ましくは、メトキシ基の含量は、28〜30重量%であり、ヒドロキシプロポキシル基の含量は、7〜12重量%である。そのような作用基含量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用すれば、疎水性基と親水性基とが適切な均衡を有しており、複合体形成に有利であり、複合体形成後にも、成膜性にすぐれ、腸溶コーティングフィルムの製造時、優秀なフィルム品質を確保することができるという利点がある。
【0023】
前記複合体形成用組成物、及びそこから製造された複合体は、前記セルロース系化合物100重量部を基準にして、1〜10重量部の抗酸化剤をさらに含んでもよい。前記抗酸化剤の含量が、前記範囲以内であるならば、長期保管安定性向上効果にすぐれつつも、腸溶性機能を有するフィルムを提供することができる。
【0024】
前記抗酸化剤は、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ブチルヒドロキシアニソール(butylhydroxyanisole)、エリソルビン酸(erythorbic acid)、没食子酸プロピル(propyl gallate)、ローズマリーオイル(rosemary oil)、ジブチルヒドロキシトルエン(dibutyl hydroxyl toluene)、ケルセチン(quercetin)、トコフェロール(tocopherol)、またはそれらの混合物をさらに含んでもよい。
【0025】
前記複合体は、pH調節剤をさらに含んでもよい。
【0026】
前記pH調節剤は、複合体が目的とするpH溶液に溶解されるように付加し、その量を調節する。
【0027】
前記pH調節剤は、アルカリ剤を含む。
【0028】
前記アルカリ剤は、非制限的な例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、またはそれらの混合物を含む。
【0029】
前記pH調節剤の含量は、セルロース系化合物100重量部を基準にして、10重量部以下、例えば、0.01〜7重量部である。pH調節剤の含量が、前記範囲であるとき、複合体を利用して形成された複合体フィルムの濁度及び強度にすぐれる。
【0030】
本発明の一具現例による複合体は、安全な食品素材のみを使用し、選択的なpH依存溶解度を有し、医薬品用化合物からなる腸溶コーティングフィルム素材と同等な腸溶特性を有することができる。それだけではなく、ポリフェノールが有する酸化防止効果と共に、健康に利する効果を同時に与えることができ、前述の医薬品用素材の劣る特性が克服された形態の品質を具現することができる。
【0031】
本発明の複合体は、前述の一般フィルムコーティング及び腸溶コーティングだけの用途を局限されるものではなく、pH依存的溶解特性が使用される分野であるならば、いずれも適用可能である。例えば、前記複合体が、pH1〜3またはそれ以上で溶解される特性を有する物質であるならば、酸化防止及び機能性が具現された一般コーティング、及び結合剤として使用可能であり、pH4〜7、またはそれ以上で溶解される特性を有する物質であるならば、前述の腸溶コーティングまたは腸溶素材として使用される。そして、前記複合体が、pH7またはそれ以上で溶解される特徴を有するならば、徐放型コーティング基材、徐放型フィラーまたは結合剤として使用可能である。
【0032】
前記複合体は、ポリフェノール系化合物とセルロース系化合物との混合比によって、多様なpH範囲で、水のような溶媒に溶解される特性を有している。そして、一部有機溶媒、例えば、8:2重量比のエタノールと水との混合溶媒に溶解された後で溶媒を除去するとき、成膜性にすぐれ、本来有したpH依存溶解度性質を維持する。従って、複合体を利用すれば、複合体フィルムを容易に製造することができ、前記複合体フィルムは、pH依存的なフィルム特性を要求する医薬、食品などの分野で有用である。
【0033】
前記複合体は、例えば、pH1.0〜9.5の範囲で、溶媒に対する溶解度特性にすぐれる。一具現例によれば、前記複合体の可溶pH範囲は、4.0〜7.0、さらに具体的には、5.0〜5.5である。そのような可溶pH範囲を有する複合体は、腸溶性コーティングやカプセル用基材として使用される。
【0034】
前記用語「可溶pH」は、複合体の溶解度が急激に変わるpH地点をいい、例えば、可溶pHが5であるというのは、pH5未満では溶解されず、pH5またはそれ以上では、溶解されるということを示す。
【0035】
前記複合体が、腸溶性コーティングまたはカプセル用基材として使用される場合、複合体含有組成物は、可塑剤、滑沢剤、色素、遮光剤、溶解補助剤、pH調節剤、ゲル化剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0036】
以下、前記複合体形成用組成物を利用して複合体を製造し、前記複合体を利用して、経口摂取用組成物を製造する方法について詳細に説明する。前記製造方法は、下記段階を含む。
【0037】
最初の段階は、ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤を溶媒に溶解させ、複合体形成用組成物を得る段階である。
【0038】
前記最初の段階は、ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤を溶媒に同時に付加し、ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤を、前記溶媒に一度に溶解させる工程を含んでもよい。または、前記最初の段階は、ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤をそれぞれ溶媒に溶解させ、ポリフェノール系化合物溶液、セルロース系化合物溶液、及び選択的に抗酸化剤溶液を得て、それらを互いに混合する工程を含んでもよい。
【0039】
前記溶媒の非制限的な例としては、水及びエタノールのうち選択された一つ以上を含む。前記溶媒として、例えば、水及びエタノール5:5〜2:8重量比の混合溶媒を使用する。
【0040】
前記溶媒の含量は、セルロース系化合物の分子量によって粘度が異なって可変的であるが、例えば、ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤の総重量100重量部を基準にして、100〜2,000重量部範囲で使用される。溶媒の含量が、前記範囲であるとき、溶媒に、ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤が均一に溶解された複合体形成用組成物を得ることができる。
【0041】
2番目の段階は、前記複合体形成用組成物から溶媒を除去して乾燥させることにより、本発明の一具現例による複合体を得る過程である。
【0042】
前記複合体形成用組成物を乾燥させる過程は、例えば、減圧蒸発、噴霧乾燥または自然乾燥などの方法を使用することができる。
【0043】
前記乾燥は、15〜150℃、例えば、50〜60℃で実施する。乾燥温度が前記範囲であるとき、複合体の変性なしに溶媒が容易に除去される。
【0044】
前記過程によって得た複合体を、複合体不溶性溶媒で洗浄し、未反応物質、不純物などを除去する段階をさらに経ることができる。そのような段階を経れば、高純度の複合体を得ることができる。
【0045】
前記複合体不溶性溶媒は、複合体が溶解されるpH範囲より低いpHを有した溶媒であるならば、いずれも使用可能である。前記複合体不溶性溶媒の非制限的な例としては、pHバッファ能のない水を含む。
【0046】
本発明の他の一具現例によれば、複合体は、下記製造方法によって得ることができる。
【0047】
ポリフェノール系化合物、セルロース系化合物、及び選択的に抗酸化剤それぞれを、別途に溶媒である水に溶解させ、それらをそれぞれ撹拌し、ポリフェノール系化合物水溶液、セルロース系化合物水溶液、及び選択的に抗酸化剤水溶液を得る。
【0048】
前記ポリフェノール系化合物水溶液、セルロース系化合物水溶液、及び選択的に抗酸化剤水溶液を得る段階において、pH調節剤をさらに付加することができる。pH調節剤の含量及び種類は、前述の通りである。
【0049】
次に、前記ポリフェノール系化合物水溶液、セルロース系化合物水溶液、及び選択的に抗酸化剤水溶液を混合及び撹拌すれば、その2つの物質または3つの物質が反応し、複合体を形成する。前記複合体は、水に溶解されない沈殿物状態で得られる。そのように得られた沈殿物を乾燥させれば、複合体を得ることができる。
【0050】
前記乾燥は、例えば、15〜90℃で実施可能である。
【0051】
本発明の他の具現例は、前記複合体を含む経口摂取用組成物を提供する。
【0052】
前記経口摂取用組成物は、錠剤(tablet)、カプセル剤、顆粒、散剤などの固体状態の剤形でもあり、食品、健康機能食品または医薬品でもある。
【0053】
前記経口摂取用組成物のうち、前記複合体の含量は、0.5〜80重量%でもある。前記複合体の含量が、前記範囲以内であるならば、優秀な生理調節活性機能を提供することができる経口摂取用組成物を得ることができる。
【0054】
前記経口摂取用組成物は、pH調節剤をさらに含んでもよい。
【0055】
前記pH調節剤の種類及び含量は、前述の通りである。
【0056】
前記経口摂取用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0057】
前記溶媒は、例えば、水及びエタノールのうち選択された一つ以上を含む。
【0058】
前記溶媒の含量は、特別に制限されるものではないが、経口摂取用組成物を直接的にコーティング用途として使用するときには、経口摂取用組成物の最終粘度が、500cps以下範囲であるとき、コーティング工程が容易である。
【0059】
溶媒は、例えば、複合体の総重量100重量部を基準にして、100〜2,000重量部の量で使用される。前記溶媒は、例えば、エタノールと水との混合物を含む。前記水とエタノールとの重量比は、5:5〜2:8である。
【0060】
本発明の複合体は、構成成分の混合比によって、目的とする可溶pH領域を変化させることができる。従って、それを利用すれば、錠剤の結合剤またはフィラー、カプセル、または錠剤などのコーティング、腸溶性の硬質カプセル基材または軟質カプセル基材の多様な分野に適用可能である。
【0061】
また、前記複合体は、緑茶抽出物のような植物性原料物質を利用し、毒性がなく、安全性が確保され、食品及び医薬品など多様に使用可能であり、製造工程が非常に単純であり、製造コストが低廉であるという利点がある。または、ポリフェノール系化合物を含み、抗酸化作用、体脂肪低減などの生理活性機能性を付与することができ、コーティングコア物質の酸化を防ぐ機能性を付与する。
【実施例】
【0062】
以下、下記実施例を挙げて説明するが、本発明が下記実施例に限定されるということを意味するものではない。
【0063】
下記実施例で使用された緑茶抽出物は、有機溶媒である酒精を利用して抽出した後、それを濃縮乾燥させて得たペーストであり、ポリフェノール系化合物は、緑茶抽出物100重量部を基準にして、約60重量部含有されている。
【0064】
前記ポリフェノール系化合物において、没食子酸エピガロカテキン(EGCG:epigallocatechin gallate)を含んだカテキン類は、ポリフェノール系化合物100重量部を基準にして、約48重量部の含量で含まれる。そして、前記EGCGは、カテキン類100重量部を基準にして、約34重量部が含有されている。
【0065】
下記実施例で使用されたヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)としては、三星精密化学のHPMC2910(AnyCoat−C(登録商標) AN Grade)を使用する。
<実施例1〜7:複合体の製造>
下記表1に示されているように、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び緑茶抽出物に、水とエタノールとの混合溶媒を付加し、複合体形成用組成物を得た。下記表1に記述されているように、実施例1,3,5〜7において、前記複合体形成用組成物に、水酸化ナトリウムをさらに付加した。前記緑茶抽出物は、ポリフェノール系化合物を含み、前記ポリフェノール系化合物の構成比は、重量基準で、EGCG:ECG:EC:EGCが、33.89:11.17:2.31:0.60である。
【0066】
前記複合体形成用組成物において、固形分(HPMC及び緑茶抽出物)の総含量が、複合体形成用組成物100重量部を基準にして、約15重量部になるように、前記混合溶媒の含量を調節した。前記混合溶媒のうちエタノールの含量は、80重量%であり、水の含量は、20重量%である。
【0067】
次に、前記結果物を50〜60℃で、回転蒸発器(rotary evaporator)で溶媒を除去し、HPMCとポリフェノール系化合物との複合体を得た。
【0068】
【表1】
【0069】
<実施例8〜15:複合体の製造>
下記表2に示されているように、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、EGCG及びアスコルビン酸に、水とエタノールとの混合溶媒を付加し、複合体形成用組成物を得た。前記混合溶媒のうちエタノールの含量は、80重量%であり、水の含量は、20重量%である。
【0070】
次に、前記結果物を、50〜60℃で、回転蒸発器(rotary evaporator)で溶媒を除去し、HPMC、EGCG及びアスコルビン酸の複合体を得た。
【0071】
【表2】
【0072】
<実施例16:高純度複合体の製造>
前記実施例7によって得た複合体50gを、複合体不溶性溶媒である精製水500mlに付加し、それを約5分間撹拌した。
【0073】
前記結果物を濾過して固体を得て、その固体を約80℃のオーブンで乾燥させ、不純物及び未反応物質が除去されたHPMCとポリフェノール系化合物とを含む高純度複合体を得た。
【0074】
<実施例17:複合体の製造>
HPMC 2gを蒸溜水18gに溶解させ、10重量%のHPMC水溶液を製造した。該HPMC水溶液20gを、均質器(homogenizer)で、約4,000rpmで強く撹拌し、そこに緑茶抽出物ペースト1.3gを徐々に滴加し、沈殿物を形成させた。
【0075】
前記結果物を濾過し、沈殿物を得て、それを80℃のオーブンで乾燥させ、HPMCとポリフェノール系化合物とを含む複合体を得た。
【0076】
<製作例1〜15:複合体フィルムの製造>
前記実施例1〜15による複合体1gを、80重量%エタノール水溶液5mlに溶解させ、複合体溶液を製造した。該複合体溶液をキャスティングし、それを自然乾燥させ、厚み60μmほどのの複合体フィルムを得た。その場合、製作例n(n=1〜15)の複合体フィルムは、実施例n(n=1〜15)の複合体を使用して製造したものである。本明細書において、「自然乾燥」とは、常温(約25℃)で一晩(overnight)放置して乾燥させるということを意味する。
【0077】
<比較製作例1>
HPMC 10gを80重量%エタノール水溶液100mlに溶解させ、HPMC溶液を製造した。前記HPMC溶液をキャスティングし、それを自然乾燥させ、厚み60μmほどのHPMCフィルムを得た。
【0078】
<評価例1:脆性(brittleness)比較>
前記製作例1〜7によって得た複合体フィルム、及び比較製作例1のHPMCフィルムに、室温条件で、直径6mmほどの円形穿孔10個を物理的に生成し、穿孔されて出てきた円形フィルムが破損される程度によって、次のように脆性を評価した。ここで、「室温条件」とは、フィルムを密閉容器に入れ、温度が25℃であり、相対湿度が50%である恒温恒湿気で保管することを意味する。
◎:フィルムから取れて出てきた10個の円形フィルムが円形を維持する場合
○:フィルムから取れて出てきた10個の円形フィルムのうち、8〜9個が円形を維持する場合
×:フィルムから取れて出てきた10個の円形フィルムのうち3個以上の円形フィルムが損傷される場合
【0079】
前記フィルムの脆性評価結果は、下記表3の通りである。
【0080】
<評価例2:フィルム濁度>
前記製作例1〜7によって得たフィルム、及び比較製作例1のHPMCフィルムの透明度を肉眼観察し、次のようにフィルムの濁度を評価した。
◎:フィルムが透明である場合
○:フィルムの一部領域がぼやけて見える場合
×:フィルムが全体的にぼやけて見える場合
【0081】
前記フィルムの濁度評価結果を下記表3に示した。
【0082】
<評価例3:可溶pH>
前記製作例1〜7によって得た複合体フィルム、及び比較製作例1のHPMCフィルムをブリトン・ロビンソン緩衝液(Britton-Robinson buffer)に入れ、それを37℃ほどで1時間撹拌し、フィルムの可溶pHを調査した。
【0083】
前記ブリトン・ロビンソン緩衝液は、2.5mL氷酢酸(glacial acetic acid)に、2.7mLの99.9重量%のリン酸、及び2.47gのホウ酸を混合して精製水を入れ、1,000mLにした後、2N水酸化ナトリウム溶液を滴加して製造した。
【0084】
前記滴加する2N水酸化ナトリウム溶液の含量を調節し、さまざまなpH範囲を有するブリトン・ロビンソン緩衝液を準備した。
【0085】
前記フィルムの可溶pH範囲を調査し、その結果を下記表3に示した。
【0086】
【表3】
【0087】
前記表3を参照し、実施例1〜7の複合体フィルムは、脆性及び濁度が良好であるか、あるいは優秀であるということが分かった。また、実施例1〜7の複合体フィルムは、比較製作例1のHPMCフィルムと異なり、緑茶抽出物、HPMC及び水酸化ナトリウムの含量によって、可溶pHが多様であるということが分かった。
【0088】
<評価例4:複合体フィルムの長期保管安定性評価>
前記製作例8〜15によって得た複合体フィルム、及び比較製作例1のHPMCフィルムを、室温条件及び加速条件で長期保管した後、EGCG低下率、pH依存性溶解特性及び脆性を評価し、その結果を下記表4及び表5にそれぞれ示した。表4は、前記各複合体フィルムを、室温条件または加速条件で、10週間保管した後で評価した結果であり、表5は、前記各複合体フィルムを、室温条件または加速条件で、18週間保管した後で評価した結果である。本明細書で、「室温条件」とは、複合体フィルムを密閉容器に入れ、温度が25℃であり、相対湿度が50%である恒温恒湿気で保管することを意味し、「加速条件」とは、複合体フィルムを密閉容器に入れ、温度が40℃であり、相対湿度が75%である恒温恒湿気で保管することを意味する。
【0089】
(EGCG低下率の評価)
保管前のフィルム、及び前記室温条件または加速条件で保管中のフィルムを、200mgずつ採取し、それらを60体積%のメタノールと、40体積%の水とが混合された溶液10mlに溶解させた後、0.45μmのシリンジフィルタで前処理し、検液を製造した。その後、前記検液を、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)で定量した。HPLCカラムとしては、内径4.6mm及び長さ250mmのステンレススチール管に、5μmのオクタデシルシリル化されたシリカゲル(octadecylsilanized silica gel)を充填したものを使用した。移動相としては、水:メタノール混合液(95:5、重量比基準)とアセトニトリル:メタノール混合液(95:5、重量比基準)とを使用した。流速は、0.8ml/minであり、紫外/可視光線検出器は、278nmで分析し、検液とカラムとの温度は、25℃であった。検液注入量は、30μlであった。採取された溶液をHPLCで分析し、EGCG含量を測定した。その後、下記数式1によって、EGCG低下率を得た。
【0090】
[数式1]
EGCG低下率(wt%)=(保管前のEGCG含量−保管中のEGCG含量)/(保管前のEGCG含量)×100
【0091】
(pH依存性溶解特性の評価)
前記評価例2の「可溶pH」の測定装置及び測定方法と同一方法で、「pH依存性溶解特性」を評価した。ただし、「pH依存性溶解特性」について、pH1.2では溶解されず、pH6.8では溶解される場合は、○と区分し、そうではない場合は、×と区分した。
【0092】
(フィルム脆性)
前記評価例1と同一方法で、フィルムの脆性を評価した。
【0093】
【表4】
【0094】
前記表4を参照すれば、10週保管時、製作例8〜15で製造された複合体フィルムは、比較製作例1のHPMCフィルムに比べ、pH依存性溶解特性にすぐれるということが分かった。また、製作例8〜15で製造された複合体フィルムは、室温10週保管時、EGCG低下率が14wt%以下であり、加速10週保管時、EGCG低下率が30wt%以下であるということが分かった。また、製作例8〜15で製造された複合体フィルムは、10週保管時、フィルム脆性も良好であるか、あるいは優秀であるということが分かった。
【0095】
【表5】
【0096】
前記表5を参照すれば、18週保管時、製作例8〜15で製造された複合体フィルムは、組成によって、EGCG低下率、pH依存性溶解特性及び脆性が変化するということがわかった。
【0097】
<実施例18〜24:その他抗酸化剤を含むHPMC−EGCG複合体の製造>
アスコルビン酸の代わりに、下記表6に列挙されているようなその他抗酸化剤を使用したことを除いては、前記実施例8と同一方法で複合体を製造した。実施例n(n=18〜24)の複合体を使用して、下記表6の製作例n(n=18〜24)の複合体フィルムを製造した。
【0098】
<実施例25:アスコルビン酸を含むHPMC−EGCG複合体の製造>
前記実施例8と同一方法で複合体を製造した。実施例25の複合体を使用して、記表6の製作例25の複合体フィルムを製造した。
【0099】
<実施例26:抗酸化剤を含まないHPMC−EGCG複合体の製造>
アスコルビン酸を使用しないことを除いては、前記実施例8と同一方法で複合体を製造した。実施例26の複合体を使用して、下記表6の製作例26の複合体フィルムを製造した。
【0100】
<製作例18〜26:複合体フィルムの製造>
前記実施例18〜26による複合体10gを、80重量%エタノール水溶液100mlに溶解させて複合体溶液を製造した。該複合体溶液をキャスティングし、それを自然乾燥させ、厚み60μmほどの複合体フィルムを得た。
【0101】
<評価例4:複合体フィルムの長期保管安定性の評価>
前記製作例18〜26によって得た複合体フィルムを、室温条件及び加速条件で、14週間保管した後、EGCG低下率及びpH依存性溶解特性を、前記評価例3と同一方法で評価し、その結果を下記表6に示した。
【0102】
【表6】
【0103】
前記表6を参照し、製作例18〜26で製造された複合体フィルムのうち、抗酸化剤が添加された製作例18〜25の複合体フィルムは、抗酸化剤が添加されていない製作例26の複合体フィルムに比べ、EGCGの長期保管安定性が大きく増大しているということが分かった。
【0104】
<製作例27:複合体を利用したゼラチンカプセル・コーティング>
エタノール80wt%と水20wt%との混合溶媒150mlに、HPMC 9.5gとEGCG 0.5gとを溶解させ、複合体コーティング溶液を製造した。該複合体溶液をコーティング器(Freund,Hi-coater)に連結し、排気温度45℃、吸気温度35℃、複合体溶液の供給速度3g/min、流入空気流量(in air flow)0.8m/min、ファン負圧(pan static)−20Pa、ファン速度(pan speed)13rpm、スプレー空気圧0.2MPaの条件で、軟質ゼラチンカプセル(鐘根堂健康、ウェルビーングオメガ3 1,000mg軟質カプセル)にコーティングした。コーティング前の軟質ゼラチンカプセル100wt%対比コーティング量が20wt%になるまで、コーティングを実施した。
【0105】
<比較製作例2:HPMCを利用したゼラチンカプセル・コーティング>
エタノール80wt%と水20wt%との混合溶媒150mlに HPMC 10gを溶解させ、コーティング溶液を製造した。該コーティング溶液を、コーティング器(Freund,Hi-coater)に連結し、前記製作例27と同一条件で、軟質ゼラチンカプセル(鐘根堂健康、ウェルビーングオメガ3 1,000mg軟質カプセル)にコーティングした。コーティング前の軟質ゼラチンカプセル100wt%対比コーティング量が20wt%になるまでコーティングを実施した。
【0106】
<評価例5:人工胃液(pH1.2)、人工腸液(pH6.8)での崩壊比較>
前記製作例27及び比較製作例2でコーティングされた軟質ゼラチンカプセルのpHによる崩壊性状を下記のような方法で比較評価した。すなわち、大韓薬典(9改訂)崩壊試験法によって、37℃の温度で溶出試験を実施した。溶出液としては、人工胃液(pH1.2、塩酸塩緩衝溶液)、人工腸液(pH6.8、50mMリン酸塩緩衝溶液)を、それぞれ900mlずつ使用した。pH1.2の人工胃液で崩壊試験開始2時間後に、崩壊器の人工胃液を、pH6.8の人工腸液に変更し、追加して1時間さらに崩壊させ、6個のカプセルが崩壊される時間を測定した。
【0107】
崩壊実験の結果、製作例27の平均崩壊時間は、2時間20分であり、比較製作例2の平均崩壊時間は、40分であった。比較製作例2の場合、pH依存性溶解特性がなく、pH1.2の人工胃液でも容易に崩壊されるが、製作例27は、pH1.2の人工胃液では、2時間崩壊されず、pH6.8の人工腸液に移された後に崩壊されるということを確認することができる。
【0108】
本発明は、実施例を参照して説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決められるものである。