(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係るワイパ装置の車体への搭載状態を説明する説明図を、
図2は
図1のワイパ装置のワイパモータを表側(出力軸側)から見た平面図を、
図3は
図1のワイパ装置のワイパモータを裏側(カバー側)から見た平面図を、
図4は、揺動部材の揺動範囲を説明する部分拡大図をそれぞれ示している。
【0019】
図1に示すように、自動車等の車両を形成する車体10の前方側には、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11が設けられている。フロントガラス11の前端部側(図中下側)で、車体10の車幅方向(図中左右方向)に沿う運転席側部分および助手席側部分には、それぞれDR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30が搭載されている。このように、本実施の形態に係るワイパ装置は、運転席側および助手席側にそれぞれワイパ装置を備えた対向払拭式ワイパ装置を採用している。ここで、DR側は運転席側を、AS側は助手席側をそれぞれ示している。
【0020】
DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30は、それぞれDR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31を備えている。各ワイパモータ21,31は、それぞれDR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32(詳細図示せず)を所定の揺動角度で揺動駆動するようになっている。これにより、各ワイパアーム22,32の先端部にそれぞれ設けた各ワイパブレード(図示せず)が、フロントガラス11上を往復払拭動作し、ひいてはフロントガラス11に付着した雨水等を払拭して良好な視界を確保するようになっている。ここで、各ワイパアーム22,32は、本発明におけるワイパ部材を構成している。
【0021】
車体10の前方側には、当該車体10の骨格を形成するダッシュパネル12が設けられている。このダッシュパネル12は、車体10のDR側とAS側との間を横切るようにして設けられ、ダッシュパネル12の長手方向両側は、車体10の骨格を形成するDR側インサイドパネル13およびAS側インサイドパネル14に、それぞれ溶接等により強固に固定されている。ここで、ダッシュパネル12,DR側インサイドパネル13およびAS側インサイドパネル14は、いずれも高強度部材となっている。
【0022】
ダッシュパネル12には、DR側第1固定部12aおよびAS側第1固定部12bが、溶接等により強固に固定されている。また、DR側インサイドパネル13には、DR側第2固定部13aおよびDR側第3固定部13bが、溶接等により強固に固定されている。さらに、AS側インサイドパネル14には、AS側第2固定部14aおよびAS側第3固定部14bが、溶接等により強固に固定されている。
【0023】
そして、DR側第1固定部12a,DR側第2固定部13aおよびDR側第3固定部13bには、DR側ワイパ装置20が3点支持で固定され、AS側第1固定部12b,AS側第2固定部14aおよびAS側第3固定部14bには、AS側ワイパ装置30が3点支持で固定されている。ここで、
図1の網掛け部分は、DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30が固定される車体10側の固定部(高強度部)を示している。
【0024】
ここで、DR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31は、
図1に示すようにそれぞれ同様に形成され、各ワイパモータ21,31は、それぞれ3つの取付部a,b,cを備えている。DR側ワイパモータ21の各取付部a,b,cは、DR側第1固定部12a,DR側第2固定部13aおよびDR側第3固定部13bに、それぞれ固定ボルト(図示せず)を介して取り付けられている。また、AS側ワイパモータ31の各取付部a,b,cは、AS側第1固定部12b,AS側第2固定部14aおよびAS側第3固定部14bに、それぞれ固定ボルト(図示せず)を介して取り付けられている。
【0025】
各ワイパモータ21,31は、それぞれ同様に形成されるため、以下、DR側ワイパモータ21を代表して、その詳細構造について図面を用いて説明する。
【0026】
図2および
図3に示すように、DR側ワイパモータ21は、所謂リバース式のワイパモータ(リバーシングワイパモータ)となっている。DR側ワイパモータ21の回転方向、つまり正逆回転を所定のタイミングで切り替えることで、フロントガラス11上の所定の払拭範囲で、DR側ワイパアーム22(
図1参照)が揺動駆動される。DR側ワイパモータ21は、モータ本体40と減速機構本体50とを備えている。
【0027】
モータ本体40は、鋼板等の磁性材料をプレス加工(深絞り加工)することにより、有底筒状に形成されたモータケース(ハウジング)41を備えている。モータケース41の内部には、略筒状に形成された固定子42が固定されており、当該固定子42には、U相,V相,W相よりなる3相の各コイル(図示せず)が所定の巻き方で巻装されている。固定子42の内側には、周囲に複数の磁石(図示せず)を備えた回転子43が所定の隙間を介して回転自在に設けられている。そして、当該回転子43の回転中心には、回転軸44が貫通して固定されており、回転軸44は回転子43とともに一体回転するようになっている。このように、本実施の形態に係るモータ本体40は、ブラシレスモータを採用している。ここで、本発明におけるモータ部は、モータケース41に収容される、固定子42,回転子43および回転軸44によって構成されている。
【0028】
そして、後述するカバー54の内側に装着されたコントローラ54bにより、U相,V相,W相の各コイルへの通電タイミングが切り替えられて、これにより所定の回転トルク,回転速度および回転方向で、回転子43(回転軸44)が回転駆動されるようになっている。
【0029】
回転軸44の先端側(
図2中下側)は、モータケース41の内部から突出して減速機構本体50の内部にまで延在されている。回転軸44の先端側には、減速機構部51を形成するウォーム44aが一体に設けられており、当該ウォーム44aは、回転軸44の外周に転造加工等により一体成形されている。
【0030】
減速機構本体50は、内部に減速機構部51を収容する減速機ケース(ハウジング)52を備えている。この減速機ケース52は、溶融したアルミ材料を鋳造成形することにより有底状に形成されたケース本体53と、当該ケース本体53の開口部分と略同様の外郭形状に形成され、ケース本体53の開口部分を閉塞する樹脂製のカバー54とを備えている。ケース本体53とカバー54とは、シール部材(図示せず)を介して互いに密着されており、この状態のもとで、3つの締結ネジS(
図3参照)によって一体化されている。これにより、減速機ケース52の内部への雨水等の進入が防止される。
【0031】
ケース本体53の内部には、減速機構部51を形成するウォームホイール55が回転自在に収容されている。ウォームホイール55はプラスチック等の樹脂材料により略円盤状に形成され、その外周にはウォーム44aと噛み合うギヤ歯55a(詳細図示せず)が一体に設けられている。これにより、ウォームホイール55は、回転軸44の回転に伴って回転するようになっている。
【0032】
ウォームホイール55の回転中心には、鋼棒よりなる出力軸56の基端部が、セレーション嵌合(図示せず)により一体回転可能に固定されており、当該出力軸56は減速機構部51により回転するようになっている。出力軸56には、回転軸44の回転が、ウォーム44aおよびウォームホイール55(減速機構部51)により減速され、かつ高トルク化されて伝達される。
【0033】
出力軸56は、ケース本体53の底壁部53aに回動自在に支持されており、出力軸56の先端部は底壁部53aを介して外部に延出されている。つまり、出力軸56の基端部は、減速機ケース52の内部に収容されている。出力軸56には、プッシュナットとしても機能する後述の揺動部材63が装着されており、これにより、出力軸56が底壁部53aに対して軸方向にがたつくのを抑制している。
【0034】
出力軸56の先端部には、セレーション部および雄ネジ部(何れも図示せず)が一体に設けられている。そして、セレーション部には、DR側ワイパアーム22(
図1参照)の基端部が相対回転不能に取り付けられるようになっている。また、雄ネジ部には、DR側ワイパアーム22をセレーション部に取り付けた状態のもとで締結ナット(図示せず)がネジ結合され、これにより、DR側ワイパアーム22のセレーション部からの抜け止めが行われる。
【0035】
ケース本体53の周囲には、当該ケース本体53を囲うようにして3つの取付部a,b,cが一体に設けられている。そして、各取付部a,b,cの中心部分を通る四角形Tを仮想線で形成すると、当該四角形Tの内部に、DR側ワイパモータ21の殆どの部分が収まるようになっている。このように、各取付部a,b,cにより形成された四角形Tの内側に、DR側ワイパモータ21の殆どを収めるようにしているので、
図1に示すように、車体10のDR側およびAS側で鏡像対称となる狭小スペースに、同じ形状のDR側ワイパモータ21とAS側ワイパモータ31とを、対向配置して3点支持できるようになっている。よって、DR側ワイパモータ21とAS側ワイパモータ31とで作り分けする必要が無く、ひいては低コスト化を実現している。
【0036】
カバー54には、車体10側に設けられる外部コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部54aが一体に設けられている。コネクタ接続部54aには、複数のターミナル(図示せず)がインサート成形されており、複数のターミナルには、駆動電流用や回転検出/位置検出センサ用のターミナルが含まれている。各ターミナルの一端側は、外部コネクタのターミナル(図示せず)にそれぞれ電気的に接続され、各ターミナルの他端側は、カバー54の内側に固定されたコントローラ54b(詳細図示せず)に、それぞれ電気的に接続されている。つまり、コントローラ54bにおいても、減速機ケース52の内部に収容されている。そして、コントローラ54bは、回転軸44の正逆回転を制御することで、出力軸56の正逆回転を制御するようになっている。
【0037】
ここで、コネクタ接続部54aに対する外部コネクタの差し込み方向は、
図3に示すように、取付部b側とは反対側、つまり図中下側に向けられている。このように、コネクタ接続部54aを取付部b側とは反対側に向けることで、
図1に示すように、DR側ワイパモータ21とAS側ワイパモータ31とを車体10に搭載した状態のもとで、コネクタ接続部54aを比較的余裕があるスペース側に向けられるようにしている。したがって、車体メーカ等において、外部コネクタの差し込み作業が容易に行えるようになっている。この点は、DR側ワイパモータ21のメンテナンス性向上にも繋がっている。
【0038】
図2および
図4に示すように、ケース本体53の底壁部53aおよび出力軸56には、規制部材60が設けられている。この規制部材60は、出力軸56が何らかの原因で大きな揺動角度で揺動するような場合において、フェイルセーフ機能を発揮し、ワイパブレード(図示せず)がオーバーランするのを防止するようになっている。なお、
図1においては、説明を分かり易くするために、規制部材60の図示を省略している。
【0039】
規制部材60は、底壁部53aに一体成形された第1規制突起61,第2規制突起62と、出力軸56に一体回転可能に設けられた揺動部材63とから形成されている。ここで、
図2および
図4において、規制部材60の構成を明確にするために、一対の第1,第2規制突起61,62、および揺動部材63に網掛けを施している。
【0040】
一対の第1,第2規制突起(揺動規制部)61,62は、ケース本体53を鋳造成形等する際にケース本体53に一体成形され、出力軸56の軸方向に突出するようにして真っ直ぐに延びる棒状に形成されている。これらの第1,第2規制突起61,62は、出力軸56を挟むようにして出力軸56の周囲に設けられ、第1規制突起61は取付部a側に配置され、第2規制突起62は取付部c側に配置されている。
【0041】
そして、第1規制突起61には、DR側ワイパモータ21が、図中反時計方向に仮にオーバーランをするような不具合が生じた場合において、揺動部材63の第1当接面S1が接触するようになっている。これとは逆に、第2規制突起62には、DR側ワイパモータ21が、図中時計方向に仮にオーバーランをするような不具合が生じた場合において、揺動部材63の第2当接面S2が接触するようになっている。
【0042】
ただし、一対の第1,第2規制突起61,62の断面形状は、図示のような略長方形形状に限らず、円形形状等に形成することもできる。この場合、第1,第2当接面S1,S2を傷付けないようにするために、第1,第2規制突起61,62の第1,第2当接面S1,S2側を、当該第1,第2当接面S1,S2に対して面接触するように平面形状にするのが望ましい。
【0043】
ここで、一対の第1,第2規制突起61,62の出力軸56を中心として設ける間隔は、
図4に示すように、ワイパブレードの揺動角度が払拭許容限界角度(b°)となる間隔に設定されている。つまり、払拭許容限界角度(b°)は、ワイパブレードを上反転位置URP側および下反転位置LRP側に、それぞれ移動させることが可能な限界の角度となっている。これにより、揺動部材63の限界揺動角度(ワイパブレードの限界揺動角度)は、払拭許容限界角度(b°)とされ、この払拭許容限界角度(b°)が、本発明における所定角度となっている。
【0044】
なお、DR側ワイパモータ21が正常動作している場合には、揺動部材63(ワイパブレード)は、通常払拭角度(a°)の範囲において、揺動駆動されるようになっている。これらの通常払拭角度(a°)および払拭許容限界角度(b°)は、それぞれ車体10の仕様、つまりフロントガラス11(
図1参照)の大きさや形状等によって設定される。
【0045】
揺動部材63は、鋼板をプレス加工等することにより板状に形成され、半円形形状に形成された固定部63aと、四角形形状に形成された本体部63bとを備えている。揺動部材63は、減速機ケース52の外部で出力軸56によって揺動駆動されるようになっている。固定部63aには、取付孔63cが一体に設けられ、当該取付孔63cの内径寸法は、出力軸56の外径寸法よりも小さい寸法に設定されている。つまり、固定部63aはプッシュナットとして機能し、出力軸56の先端部分から圧入嵌合させることで強固に固定されるようになっている。
【0046】
固定部63aに一体に設けられた本体部63bには、揺動部材63の揺動方向(
図4中左右側)に対向するようにして、第1当接面S1および第2当接面S2がそれぞれ設けられている。第1当接面S1は、ワイパブレードが上反転位置URP側に向けて払拭許容限界に達した場合に、ケース本体53に設けた第1規制突起61に接触し、第2当接面S2は、ワイパブレードが下反転位置LRP側に向けて払拭許容限界に達した場合に、ケース本体53に設けた第2規制突起62に接触するようになっている。このように、一対の第1,第2規制突起61,62は、揺動部材63の所定角度以上(b°以上)の揺動を規制するようになっている。
【0047】
以上詳述したように、実施の形態1に係るDR側ワイパモータ21によれば、出力軸56に、減速機ケース52の外部で揺動駆動される揺動部材63を一体に設け、減速機ケース52に、揺動部材63と接触して揺動部材63の払拭許容限界角度(b°)以上の揺動を規制する一対の第1,第2規制突起61,62を設け、これらの揺動部材63および一対の第1,第2規制突起61,62により、規制部材60を形成することができる。
【0048】
これにより、従前のワイパ装置における必須部品(固定プレートや当該固定プレートを伝動装置ケーシングに固定するための固定ねじ)を省略することができる。したがって、部品点数を削減して組立作業性の向上および小型軽量化を図り、かつワイパブレードの払拭許容限界角度(b°)以上の揺動を規制する規制部材60を設けることが可能となる。
【0049】
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図5は実施の形態2の揺動部材を示す
図4に対応した図を示している。
【0051】
図5に示すように、実施の形態2に係るDR側ワイパモータ70は、規制部材60を構成する揺動部材71の形状のみが異なっている。具体的には、揺動部材71の本体部71aの揺動方向に沿う幅寸法T1が、実施の形態1(
図4参照)に比して小さい寸法(幅狭)に設定されている。これにより、ワイパブレードの払拭許容限界角度(d°)を、実施の形態1に比して大きくすることができる(d°>b°)。
【0052】
また、実施の形態2においては、払拭許容限界角度(d°)を大きくできるため、これに伴い、通常払拭角度(c°)においても、実施の形態1に比して大きくしている(c°>a°)。なお、通常払拭角度(c°)は、コントローラ54b(
図3参照)をチューニング(調整)することにより設定される。
【0053】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図6は実施の形態3の揺動部材を示す
図4に対応した図を示している。
【0056】
図6に示すように、実施の形態3に係るDR側ワイパモータ80は、規制部材60を構成する揺動部材81の形状のみが異なっている。具体的には、揺動部材81の本体部81aの揺動方向に沿う幅寸法T2が、実施の形態1(
図4参照)に比して大きい寸法(幅広)に設定されている。これにより、ワイパブレードの払拭許容限界角度(e°)を、実施の形態1に比して小さくすることができる(e°<b°)。
【0057】
なお、実施の形態3における通常払拭角度(a°)は、実施の形態1と同じ角度に設定されている。
【0058】
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
次に、本発明の実施の形態4について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図7は実施の形態4の揺動部材を単体で示す図を示している。
【0061】
図7に示すように、実施の形態4においては、揺動部材90の構造のみが異なっている。具体的には、揺動部材90は、第1揺動体91および第2揺動体92を備えている。これらの第1,第2揺動体91,92は、何れも実施の形態1の揺動部材63(
図4参照)と同じ形状に形成されている。
【0062】
第1,第2揺動体91,92は、第1,第2固定部91a,92aと、第1,第2本体部91b,92bをそれぞれ備えている。そして、第1,第2固定部91a,92aには、共通の取付孔93がそれぞれ形成されており、当該取付孔93を中心として、第1,第2揺動体91,92は連結されている。ここで、第1,第2揺動体91,92は、リベット等(図示せず)をカシメ固定することで連結されており、第1,第2揺動体91,92は、矢印Mに示すように、取付孔93を中心として回動自在となっている。ここで、図示の状態においては、第1揺動体91側に第1当接面S1が形成され、第2揺動体92側に第2当接面S2が形成されている。
【0063】
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態4においては、第1,第2揺動体91,92を、第1,第2固定部91a,92aを介して互いに回動自在に連結することで、揺動部材90の幅寸法T3を調整できるようにしている。したがって、
図4に示す「払拭許容限界角度」を、仕様の異なる車体に対応させて調整することができる。ここで、取付孔93は、実施の形態1と同様に出力軸56(
図4参照)に圧入嵌合されるため、出力軸56に固定した後の揺動部材90の幅寸法T3は変化することが無い。
【0064】
次に、本発明の実施の形態5,6について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図8(a),(b)は実施の形態5,6を示す
図4の破線円A部に対応した拡大図を示している。
【0066】
図8(a)に示すように、実施の形態5においては、第1,第2規制突起61,62の周囲に、弾性部材としての弾性ゴムGをそれぞれ設けたことのみが異なっている。この弾性ゴムGは、揺動部材63と第1,第2規制突起61,62との衝突時の衝撃を緩和するものである。なお、図示においては、第2規制突起62側の弾性ゴムGのみを拡大して示している。
【0067】
一方、
図8(b)に示すように、実施の形態6においては、揺動部材63の第1,第2規制突起61,62側のそれぞれに、弾性部材としての弾性ゴムGを設けたことのみが異なっている。この弾性ゴムGは、第1,第2当接面S1,S2を形成しており、揺動部材63と第1,第2規制突起61,62との衝突時の衝撃を緩和するようになっている。なお、図示においては、第2当接面S2を形成する弾性ゴムGのみを拡大して示している。
【0068】
ただし、弾性ゴムGは、揺動部材63および第1,第2規制突起61,62の双方に設けるようにしても良い。
【0069】
以上のように形成した実施の形態5,6においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態5,6においては、弾性ゴムGにより揺動部材63と第1,第2規制突起61,62との衝突時の衝撃を緩和することができる。よって、DR側ワイパモータ21にオーバーランをするような不具合が生じた場合において、揺動部材63および第1,第2規制突起61,62の破損を抑制しつつ、異音の発生を抑えることができる。
【0070】
次に、本発明の実施の形態7について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0071】
図9は実施の形態7のワイパモータを出力軸側から見た斜視図を、
図10は
図9の揺動部材を単体で示す斜視図を、
図11は
図9の第1,第2規制突起を説明する斜視図を、
図12は
図10の揺動部材の揺動範囲を説明する平面図を、
図13は実施の形態7のワイパモータの内部を示す断面図をそれぞれ示している。
【0072】
図9に示すように、実施の形態7に係るDR側ワイパモータ100は、規制部材110の構造が異なっている。また、図中矢印mに示すように、規制部材110を覆うようにして、キャップ部材120を出力軸56に装着した点が異なっている。さらに、DR側ワイパモータ100においては、3つある取付部a,b,cのうちの1つの取付部cについては、車体10(
図1参照)に設けた差し込み孔(図示せず)に差し込まれる取付部となっている。このように、3つある取付部a,b,cのうちの1つの取付部cの構造を異ならせることで、DR側ワイパモータ100の車体10への誤組み付けが防止される。また、固定ボルトが2つで済むため、部品点数の削減と作業性の向上とが実現される。
【0073】
規制部材110の詳細な説明に先立ち、キャップ部材120の構造について説明する。キャップ部材120は、ゴム等の弾性材料により段付きの筒状に形成されている。キャップ部材120は、規制部材110を覆う大径の被覆本体121と、出力軸56に圧入により固定される小径の圧入部122とを有している。そして、圧入部122を出力軸56に固定した状態のもとで、出力軸56の軸方向と直交する方向からDR側ワイパモータ100を見ると、規制部材110は被覆本体121によって完全に隠された状態となる。したがって、キャップ部材120は、規制部材110が被水するのを確実に防止する。なお、キャップ部材120は出力軸56に固定されるため、出力軸56とともに回転する。
【0074】
規制部材110は、鋼板をプレス加工等することにより所定形状に形成された揺動部材111を備えている。揺動部材111は、
図10に示すように、出力軸56に固定される固定筒部112と、一対の本体部113とを備えている。
【0075】
固定筒部112は、
図11に示すように、出力軸56に設けられた第1セレーション部56aにカシメ固定等により固定される。これにより、揺動部材111は出力軸56に対して相対回転不能に強固に固定される。第1セレーション部56aは、出力軸56の軸方向に真っ直ぐに延びている。ここで、出力軸56の第1セレーション部56aよりも先端側(図中上側)には、第2セレーション部56bが設けられ、当該第2セレーション部56bには、DR側ワイパアーム22(
図1参照)の基端部が相対回転不能に固定される。第2セレーション部56bは、出力軸56の軸方向に先細りとなるように延びており、DR側ワイパアーム22を容易に装着できるようにしている。ただし、第2セレーション部56bには、後述する実施の形態8におけるクランクアーム131aの一端(
図14参照)も固定可能となっている。
【0076】
一対の本体部113は、固定筒部112の軸心を挟んで対向するように、固定筒部112に一体に設けられている。
【0077】
各本体部113には、出力軸56の軸心CEを対称点として、点対称となるように配置された一対の第1揺動壁113aが設けられている。また、各本体部113には、出力軸56の軸心CEを対称点として、点対称となるように配置された一対の第2揺動壁113bが設けられている。そして、第2揺動壁113bは、固定筒部112の周方向に対して、本体部113を挟んで第1揺動壁113aと対向されている。つまり、一対の第2揺動壁113bは、一対の第1揺動壁113aから出力軸56の周方向に、それぞれ所定角度離間して設けられている。ここで、軸心CEを中心に本体部113を挟む第1揺動壁113aと第2揺動壁113bとのなす角度は、略80°となっている。
【0078】
図9に示すように、規制部材110は、ケース本体53に一体に設けられた第1規制突起(揺動規制部)114および第2規制突起(揺動規制部)115を備えている。これらの第1,第2規制突起114,115は、
図11に示すように、ケース本体53の底壁部53aに一体に設けられたボス部53bを補強する補強リブ53cの一部により形成されている。ここで、ボス部53bは出力軸56を回動自在に支持するものであって、ボス部53bには出力軸56からの大きな反力が負荷される。そのため、ボス部53bの周囲には、出力軸56を中心に放射状に突出した複数の補強リブ53cを設けている。より具体的には、ボス部53bの外周部分に、等間隔(45°間隔)で8本の補強リブ53cが設けられている。なお、出力軸56は、当該出力軸56に圧入固定されたティースワッシャ56cによって、ボス部53bに対して軸方向にがたつくこと無く回動自在に支持されている。
【0079】
各第1,第2規制突起114,115は、8本ある補強リブ53cのうち、出力軸56を挟んで互いに対向する補強リブ53cで、かつ取付部aおよび取付部c寄りの各補強リブ53cに一体に設けられている(
図9参照)。なお、これらの第1,第2規制突起114,115を分かり易くするために、
図9,
図11,
図12において網掛けを施している。各第1,第2規制突起114,115は、補強リブ53cから、出力軸56の軸方向先端部(図中上側)に向けて突出されている。そして、各第1,第2規制突起114,115は、出力軸56の軸方向と直交する方向からDR側ワイパモータ100を見たときに、揺動部材111と重なるようになっている(
図9参照)。
【0080】
第1規制突起114は、出力軸56の周方向に互いに対向する第1固定壁114aおよび第2固定壁114bを備えている。また、第2規制突起115は、出力軸56の周方向に互いに対向する第1固定壁115aおよび第2固定壁115bを備えている。第1規制突起114の第1固定壁114aおよび第2規制突起115の第1固定壁115aは、出力軸56の軸心CEを対称点として、点対称となるように配置されている。また、第1規制突起114の第2固定壁114bおよび第2規制突起115の第2固定壁115bについても、出力軸56の軸心CEを対称点として、点対称となるように配置されている。
【0081】
そして、
図12に示すように、ワイパブレード(図示せず)が払拭許容限界範囲(f°)の下反転位置LRP側に到達し、それ以上揺動しようとすると、揺動部材111の各第1揺動壁113aが、各第1,第2規制突起114,115の各第1固定壁114a,115aに略同時に接触される。一方、ワイパブレードが払拭許容限界範囲(f°)の上反転位置URP側に到達し、それ以上揺動しようとすると、揺動部材111の各第2揺動壁113bが、各第1,第2規制突起114,115の各第2固定壁114b,115bに略同時に接触される(図中破線参照)。これにより、揺動部材111の所定角度(f°)以上の揺動が規制される。
【0082】
以上のように形成した実施の形態7においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態7においては、出力軸56の軸心CEを対称点として、点対称となるように揺動部材111の各第1揺動壁113aを配置し、かつ各第1,第2規制突起114,115の各第1固定壁114a,115aを配置したので、各第1揺動壁113aを各第1固定壁114a,115aに略同時に接触させることができる。また、出力軸56の軸心CEを対称点として、点対称となるように揺動部材111の各第2揺動壁113bを配置し、かつ各第1,第2規制突起114,115の各第2固定壁114b,115bを配置したので、各第2揺動壁113bも各第2固定壁114b,115bに略同時に接触させることができる。
【0083】
したがって、実施の形態1に比して、出力軸56のボス部53bに対する抉りを防止して、出力軸56の屈曲変形や偏摩耗等を確実に抑制することができる。よって、DR側ワイパモータ100の長寿命化を図ることができるとともに、メンテナンス周期を延ばすことができる。
【0084】
また、出力軸56のボス部53bに対する抉りを防止できるので、
図13に示すように、出力軸56の基端側でかつウォームホイール55の回転中心に配置されたセンサマグネットSMの位置ずれを確実に防止できる。よって、センサマグネットSMの回転検出センサSEに対する位置精度を向上させて、より高精度でDR側ワイパモータ100を制御できる。ここで、
図13に示すように、DR側ワイパモータ100の内部にはコントローラ54bを構成する基板54cが収容されるが、この基板54cには、回転検出センサSEや、モータ本体40を駆動するFETモジュールFM等の電子部品が実装されている。なお、回転検出センサSEとしては、磁気によってスイッチングされるMRセンサ等が用いられる。
【0085】
さらに、第1規制突起114および第2規制突起115は、ボス部53bを補強する補強リブ53cの一部によって形成したので、第1規制突起114および第2規制突起115を、ケース本体53に別途それぞれ設ける必要が無く、ケース本体53を容易に成形することができるとともに、ケース53の見栄えを良くすることができる。
【0086】
また、揺動部材111,第1規制突起114および第2規制突起115からなる規制部材110は、出力軸56に装着されるキャップ部材120によって覆われるので、規制部材110を錆び等から確実に保護することができるとともに、ケース53の見栄えを良くすることができる。
【0087】
次に、本発明の実施の形態8について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1および実施の形態7と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0088】
図14は実施の形態8のワイパ装置を説明する説明図を示している。なお、
図14においては、実施の形態7のDR側ワイパモータ100と同じ構造の1つのワイパモータ100のみを有している。また、
図14では、規制部材110を図示するためにキャップ部材120(
図9参照)の図示を省略している。
【0089】
図14に示すように、実施の形態8に係るワイパ装置130は、1つのワイパモータ100によってDR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32を連動させるようにした、所謂、タンデム式ワイパ装置となっている。ワイパモータ100と、各ワイパアーム22,32との間には、ワイパモータ100の動力を各ワイパアーム22,32に伝達するためのリンク機構131が設けられている。ここで、リンク機構131は、本発明におけるワイパ部材を構成している。
【0090】
リンク機構131は、出力軸56に一端が固定されたワイパ部材としてのクランクアーム131aと、クランクアーム131aの他端に一端が固定された駆動ロッド131bと、駆動ロッド131bの他端に固定されたDR側駆動レバー131cと、DR側駆動レバー131cとAS側駆動レバー131dとの間に設けられた連結ロッド131eとを有している。また、これらの構成部品の連結部分には、それぞれボールジョイント(図示せず)が設けられている。これにより、ワイパモータ100の動力は、各ワイパアーム22,32にスムーズに伝達され、各ワイパアーム22,32が連動して揺動駆動される。
【0091】
以上のように形成した実施の形態8においても、上述した実施の形態7と同様の作用効果を奏することができる。
【0092】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、断面が円形の出力軸56に対して、円形の取付孔63c,93および固定筒部112を圧入嵌合により固定したものを示したが、本発明はこれに限らず、出力軸56の断面形状を非円形形状(例えばDカット形状)とし、これに合わせて取付孔63c,93および固定筒部112も非円形形状としても良い。この場合、圧入嵌合させた後の両者のガタつきを確実に防止することができ、ひいてはDR側ワイパモータ21,100の正常動作時における異音の発生を確実に防止することができる。
【0093】
また、上記実施の形態5,6においては、弾性部材として弾性ゴムGを用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、弾性部材として機能するコイルスプリングを用いることもできる。この場合、コイルスプリングの伸縮方向と揺動部材63の揺動方向とが一致するように、揺動部材63および第1,第2規制突起61,62のうちの少なくともいずれか一方に、コイルスプリングを設けるようにする。また、実施の形態5,6の弾性ゴムGや、その変形例である上述のコイルスプリングを、実施の形態7,8に採用することもできる。
【0094】
さらに、上記各実施の形態においては、モータ本体40として、ブラシレスモータを採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、ブラシ付きのモータを採用することもできる。