(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前処置が、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドから選択される1つまたは複数の薬剤を含む高用量化学療法であり、例えば、30mg/m2/日で2日間または3日間のフルダラビンである、請求項2に記載の医薬。
【発明の概要】
【0005】
ある実施形態において、本発明は、HSCTを受ける患者のGVHDを治療および/または予防する方法であって、
1.患者に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与すること;
2.前記患者を前処置し、それにより実質的に骨髄および免疫系を破壊することであり、前記前処置は、有効量のシクロホスファミドなどの化学療法剤による前記患者の治療および/または前記患者を高用量化学放射線療法により治療することによる治療を含むこと;ならびに
3.ドナーからの造血幹細胞を前記患者に移植すること
を含む方法に関する。
【0006】
上記の方法において、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、
【0007】
【化1】
であり、式中、
R
2は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C
1〜4アルコキシ、C
1〜7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
R
3は、H、ハロゲン、CF
3、OH、C
1〜7アルキル、C
1〜4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC
1〜4アルコキシメチルであり;
R
4およびR
5のそれぞれは、独立してHまたは式(a)
【0008】
【化2】
の残基であり、式中、R
8およびR
9のそれぞれは、独立してH、またはハロゲンによって任意に置換されたC
1〜4アルキルであり;
nは1から4の整数であり;
R
6は、水素、ハロゲン、C
1〜7アルキル、C
1〜4アルコキシまたはトリフルオロメチルである。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、HSCTを受ける患者のGVHDを治療および/または予防する方法であって、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩において、R
3が塩素であり、残りの可変基が、上で定義されたとおりである方法に関する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、HSCTを受ける患者のGVHDを治療および/または予防する方法であって、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩において、R
2がHであり、R
3が塩素であり、R
6が水素であり、残りの可変基が、上で定義されたとおりである方法に関する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、HSCTを受ける患者のGVHDを治療および/または予防する方法であって、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩において、R
2がHであり、R
3が塩素であり、R
6が水素であり、R
4およびR
5のそれぞれが、独立してHまたは式(a)
【0012】
【化3】
の残基であり、式中、R
8およびR
9のそれぞれが、Hであり、残りの可変基が、上で定義されたとおりである方法に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、HSCTを受ける患者のGVHDを治療および/または予防する方法であって、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩が、式(II)
【0014】
【化4】
の化合物または薬学的に許容されるその塩
または下記式(IIa)、(IIb):
【0015】
【化5】
のそのホスフェート誘導体もしくは薬学的に許容されるその塩である方法に関する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、HSCTを受ける患者のGVHDを治療および/または予防する方法であって、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩が、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−プロパン−1,3−ジオールである方法に関する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、最初に上記のとおりの前処置をされ、その後、ドナーからの造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者のGVHDの治療および/または予防に使用する式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−プロパン−1,3−ジオールおよび/またはその塩酸塩はKRP203と称される場合もある。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、1から7個の炭素原子または1から4個の炭素原子を有する完全に飽和した分岐または直鎖炭化水素部分を指す。アルキルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチルおよび同種のものが挙げられる。置換アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシまたはアルコキシ基から選択される1、2または3個など1つまたは複数の置換基を含むアルキル基である。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「アルコキシ」は、アルキル−O−を指し、アルキルは本明細書の上で定義されている。アルコキシの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ−、シクロヘキシルオキシ−および同種のものが挙げられる。一般に、アルコキシ基は、1〜7個または1〜4個の炭素原子を有する。
【0022】
置換アルコキシは、ハロゲン、ヒドロキシまたはアルコキシ基から選択される1、2または3個など1つまたは複数の置換基を含むアルコキシ基である。
【0023】
用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の生物学的有効性および特性を保持し、一般に生物学的またはその他の点で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、本発明の化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれと類似の基の存在によって酸性および/または塩基性塩を形成することができる。
【0024】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸とともに形成され得る、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、塩化物/塩酸塩、クロルテオフィリネート(chlortheophyllonate)、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0025】
塩が誘導され得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸および同種のものが挙げられる。塩が誘導され得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸および同種のものが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基とともに形成され得る。
【0026】
塩が誘導され得る無機塩基としては、例えば、アンモニウム塩および周期表の列IからXIIの金属が挙げられる。特定の実施形態において、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛および銅に由来し;特に適した塩としては、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩が挙げられる。
【0027】
塩が誘導され得る有機塩基としては、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、天然に生じる置換アミンなどの置換アミン、環式アミン、塩基性イオン交換樹脂および同種のものが挙げられる。特定の有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリナート(cholinate)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リシン、メグルミン、ピペラジンおよびトロメタミンが挙げられる。
【0028】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって塩基性または酸性部分から合成されてもよい。一般に、そのような塩は、遊離酸形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基(水酸化、炭酸、炭酸水素Na、Ca、MgもしくはKまたは同種のものなど)と反応させることによってまたは遊離塩基形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な酸と反応させることによって調製されてもよい。そのような反応は、水中もしくは有機溶媒中またはこの2つの混合物中で一般に行われる。一般に、使用可能であればエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒質の使用が望ましい。別の適した塩の一覧は、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences", 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., (1985)および"Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use" by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)に見出すことができる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、HSCTを必要とする患者の前治療の状況において、用語「前処置すること」または「前処置される」とは、適した手順によって実質的に骨髄および免疫系を破壊することを一般に意味し、適した手順とは例えば以下のものである:
強度軽減移植前治療(RIC)(reduced intensity conditioning)または骨髄破壊的前処置、例えば、ミニ強度のシアトル式前処置(Mini-Seattle Conditioning)、例えば、一般に30mg/m2/日で3日間のフルダラビンまたは別の化学療法剤に続く、一般に1×200cGy/日の全身照射(TBI);
または
骨髄破壊的前処置、
例えば、高用量化学療法および全身照射(TBI)は、一般に施設の実務に適合した国のガイドラインに従って行われ、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドの投与を含む。例として以下の投与計画を提供する:
1)フルダラビン、総用量の75mg/m2に対して25mg/m2/日のi.v.×3日(およそ2〜3日間)。
2)ブスルファン、0.8mg/kg/6時間(およそ2から4日間)
3)シクロホスファミド、総用量の120mg/kgに対して60mg/kg/日のi.v.×2日(およそ2日間)。CYCにより引き起こされる出血性膀胱炎のリスクを低減するために、患者は、多量の輸液(fluid flush)およびメスナも投与されることになる。
4)TBIは、およそ8から10日目に行われる(HSCTに対して−8および−1日目)。
推奨されるTBI線量は、総線量の1200cGyに対して1日に2回照射される200cGyである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の概要
実施形態1は、造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者の移植片対宿主病(GVHD)を治療および/または予防する方法であって、
(i)患者に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩の投与すること;
(ii)前記患者を前処置し、それにより実質的にすべての骨髄および免疫系を破壊すること;ならびに
(iii)ドナーからの造血幹細胞を前記患者に移植すること
を含み、式(I)の前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、
【0031】
【化6】
であり、式中、
R
2は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C
1〜4アルコキシ、C
1〜7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
R
3は、H、ハロゲン、CF
3、OH、C
1〜7アルキル、C
1〜4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC
1〜4アルコキシメチルであり;
R
4およびR
5のそれぞれは、独立してHまたは式(a)
【0032】
【化7】
の残基であり、式中、R
8およびR
9のそれぞれは、独立してH、またはハロゲンによって任意に置換されたC
1〜4アルキルであり;
nは1から4の整数であり;
R
6は、水素、ハロゲン、C
1〜7アルキル、C
1〜4アルコキシまたはトリフルオロメチルである、方法について記載している。
【0033】
実施形態2は、式(I)の化合物が、式(II)
【0034】
【化8】
の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩;
または下記式(IIa)、(IIb):
【0035】
【化9】
のそのホスフェート誘導体もしくは薬学的に許容されるその塩である、実施形態1に記載の方法について記載している。
【0036】
実施形態3は、式(I)の化合物が、式(II)
【0037】
【化10】
の化合物または薬学的に許容されるその塩である、実施形態1に記載の方法について記載している。
【0038】
実施形態4は、最初に実施形態1に記載の前処置をされ、その後、ドナーからの造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者のGVHDの治療および/または予防に使用するための実施形態1に記載の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩について記載している。
【0039】
実施形態5は、前記化合物が、実施形態2に記載の式(II)、(IIa)および/または(IIb)の化合物あるいは薬学的に許容されるその塩である、実施形態4に記載の使用するための化合物について記載している。
【0040】
実施形態6は、前記前処置が、例えば、強度軽減移植前治療(RIC)または骨髄破壊的前処置:
RIC:
例えば、一般に30mg/m2/日で3日間のフルダラビンまたは別の化学療法剤に続く、一般に1×200cGy/日の全身照射(TBI)を使用することを特徴とするミニ強度のシアトル式前処置;
または
骨髄破壊的前処置:
一般に、高用量化学療法および全身照射(TBI)は通常、施設の実務に適合した国のガイドラインに従って行われ、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドの投与を含むこと
から選択される、先行する実施形態のいずれか、例えば、実施形態1〜3または4〜5に記載の方法または化合物について記載している。
【0041】
実施形態7は、前記前処置が、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドから選択される1つまたは複数の薬剤を含む高用量化学療法である、先行する実施形態のいずれか、例えば、実施形態1〜3または4〜5に記載の方法または化合物について記載している。
【0042】
実施形態8は、前記前処置が、国のガイドラインに従った全身照射(TBI)である、先行する実施形態のいずれか、例えば、実施形態1〜3または4〜5に記載の方法または化合物について記載している。
【0043】
実施形態9は、造血幹細胞移植(HSCT)が、前処置に引き続いて、例えば、前処置の直後または前処置の0〜1日後または前処置の1〜8日後または1〜10日後に行われる、先行する実施形態のいずれか、例えば、実施形態1〜3または4〜5に記載の方法または化合物について記載している。
【0044】
実施形態10は、実施形態1に記載の式(I)の化合物による患者の治療が、前処置の5日前、特に前処置の3日前およびとりわけ前処置の1日前に開始される、先行する実施形態のいずれか、例えば、実施形態1〜3または4〜5に記載の方法または化合物について記載している。
【0045】
臨床試験−HSCTの手順の説明:
母集団(適格性)
試験対象母集団(n=およそ10)は、スクリーニング評価に合格し、選択/除外基準に適合し、文書同意を提供した以下のものから構成される。男性または女性患者は、ヒト白血球抗原(HLA)が適合した幹細胞ソースが入手可能である場合、標準的な同種HSCTに適していると診断された18歳と65歳を含む18から65歳でなければならない。治験責任医師は、この試験が考慮されている全被験者が必ず以下の適格性基準を満たすようにしなければならない。試験対象母集団がすべての適格な被験者の代表となるよう、治験責任医師はいかなる追加の基準も適用してはならない。被験者の選択は、スクリーニングおよびベースラインにおいてすべての選択/除外基準を調べることによって確立されるべきである。適格性基準の関連する記録(例えば、チェックリスト)は、試験施設に原文書とともに保管されなければならない。
【0046】
いずれの組み入れ基準から逸脱しても、被験者を試験の登録者から除外する。
【0047】
選択基準
この試験に含めるのに適格な被験者は、以下の基準のすべてを満たさなければならない:あらゆる評価が行われる前に、書面によるインフォームドコンセントが得られなければならない。
1.18歳と65歳を含む18から65歳の患者;
2.患者は、標準的な医療行為に従って、骨髄破壊的前処置(短期間の骨髄破壊的な強度軽減移植前治療を含む)に続く同種造血幹細胞移植を必要とする血液悪性腫瘍を有しなければならない。そのような悪性腫瘍としては、これらに限定されるものではないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯および濾胞のリンパ腫、大細胞型リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ならびにその他の高悪性度リンパ腫;マントル細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫;前リンパ球性白血病または多発性骨髄腫が挙げられる。
3.レシピエントは、カルノフスキースコアが60%以上であると定義される、良好な全身の健康状態でなければならない
4.施設の標準に適合するJACIE
*によって定義されるとおりの、移植片ソースとしてT細胞が豊富な末梢血幹細胞(peripheral stem cell)を使用する移植片の選択アルゴリズムに従った、適した幹細胞ソースが入手可能でなければならない。(
*JACIE:the International Society for Cellular Therapy & European Group for Blood and Marrow Transplantationを含むThe Joint Accreditation Committee Europe)
5.ドナーは、分子HLA適合技術(molecular HLA matching techniques)を使用して、レシピエントと9/10または10/10適合していなければならない。
6.女性および男性患者は、そのような試験の標準的な必要条件、例えば、生殖能力、妊娠、性活動および同種のものに関する必要条件を満たさなければならない。
7.患者は、試験の要件を理解し、それに従い、さらに書面によるインフォームドコンセントを理解し、それに署名するために治験責任医師と十分にコミュニケーションをとることができなければならい。
【0048】
除外基準
以下の基準のいずれかにあてはまる被験者は、この試験に含めるには不適格である:
1.妊娠中、妊娠を計画しているおよび/または授乳中の女性あるいは試験期間またはそれに続く除外期間(exclusionary period)内に子供の父親になる計画をしている男性。
2.スクリーニング前の4週間以内または現地の規制によって、さらに現地の規制に基づくその他のあらゆる参加制限のために必要とされる場合には、さらに長い期間内の治験薬を用いたあらゆる介入臨床試験への参加。
3.いくつかの標準的な心血管系状態:
4.いくつかの標準的な肺の状態:
5.黄斑浮腫の診断または病歴
6.治験責任医師に評価された場合のコントロール不良の糖尿病または糖尿病性腎症もしくは網膜症などの臓器合併症を併発した糖尿病。
7.コントロール不良の発作性障害
8.コントロール不良のうつ病または自殺未遂/観念の病歴
9.治験責任医師が活動期であり、臨床的に重大であると考える未治療あるいはコントロール不良の全身性の細菌性、ウイルス性または真菌性感染症(30日以内のアスペルギルスもしくはその他のカビの感染症も含む)
10.それぞれHIV抗体、B型肝炎表面抗原もしくはC型肝炎抗体試験の陽性と定義されるAIDS、B型肝炎またはC型肝炎感染の診断。
11.何らかの理由でウイルス予防処置(骨髄破壊およびHSCTを受ける患者に対する標準的実務)を受けられない、単純ヘルペスウイルス(HSV)および/または水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)免疫グロブリン(Ig)G抗体陽性患者
12.スクリーニングにおいて水痘帯状疱疹ウイルスIgG抗体に対して陰性。
13.重大な肝疾患もしくは肝損傷またはアルコール乱用、慢性肝疾患もしくは胆道疾患の既知の病歴
14.以下の異常な臨床検査値のいずれか:
a.血清クレアチニンが2.0mg/dL(176μmol/L)を超える
b.ASTまたはALTまたはALPが正常の上限の5倍を超える
15.治療が成功した基底細胞癌を除く、5年以内の活動期の非血液腫瘍。
16.試験に参加した場合、不安定であるか、または多少なりとも患者を危険にさらす可能性があると初期治療医(primary treating physician)が評価するようなあらゆる医学的状態。
17.本発明の化合物に適合しないいずれかの薬物を必要とする
18.アレムツズマブ(キャンパス)または抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の3ヶ月以内の事前使用。
19.本発明の化合物による治療を開始する前の2ヶ月以内にいずれかの生ワクチンまたは弱毒化された生ワクチン(水痘帯状疱疹ウイルスまたは麻疹のためのものを含む)を接種した。
20.事前の骨髄破壊的同種移植
21.臍帯血またはハプロタイプ一致移植(haploidentical transplant)のレシピエント。
22.固形臓器移植のレシピエント。
23.試験薬または式(I)の化合物と類似の化学構造をもつ薬物に対する過敏症の病歴。試験対象母集団がすべての適格な患者の代表となることを確実にするために、治験責任医師はいかなる追加の除外も適用してはならない。
【0049】
治療手順
1.GVHDを治療するため薬物
薬物、式(I)の化合物、特に、式(II)の化合物、とりわけ、1、2、3または5mgの2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−プロパン−1,3−ジオールもしくは薬学的に許容されるその塩を含むカプセルを準備する。
【0050】
治療は、一般に以下を含む:
A:スクリーニング期間(−50から−2日目)、ベースライン(−1日目)、
B:(移植から)1日目から111日目の薬物治療期間および最大365日間の追跡期間。この場合、薬物は式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
C:骨髄破壊的前処置は、全身照射(TBI)を伴う化学療法(例えば、フルダラビン、ブスルファン、シクロホスファミド、メトトレキサート)(以下参照)を使用する標準治療に従って2日目から10日目の間に行われる。
D:移植(幹細胞の注入)、すなわちHSCTが11日目に行われる。調査的治療に加えて標準的な行為としては、施設の実務による標準的なGVHD予防、移植前後の支持治療および追跡評価が含まれ得る。
【0051】
2.治療群
患者を以下の治療に割り当てる:
単一群:2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−プロパン−1,3−ジオール、1日に1回3mgを111日間
【0052】
3.治療割り当て
昇順で連続的な順番で被験者番号を適格な被験者に割り当てる(詳細は下記を参照)。
【0053】
4.治療のブラインド化
これはオープンラベル試験であり、全被験者が同じ治療を受けることになる。
【0054】
5.被験者スクリーニング番号付け
スクリーニングした各被験者に固有のスクリーニング番号を割り当てる。
【0055】
6.試験治療の分配
被験者の具体的な分配方法の適切な文書を保持しなければならない。被験者のための試験薬は、試験の治験依頼者によって分配され、供給されることになる。薬剤ラベルは、試験が行われる国の法的要件に従い、現地の言語で印刷される。試験薬の保管条件を薬剤ラベル上に記載する。
【0056】
7.処方および試験治療を行うための指示
入院期間中、試験センター職員がおよそ180〜240mlの水とともに試験薬物を投与する。試験薬物の投薬は注意深く指揮および管理されなければならない。被験者に処方および投薬されたすべての投与量ならびに試験中のすべての用量変更を、投与量投与記録(Dosage Administration Record)CRFに記録しなければならない(CRF=臨床的な読み出し評価(clinical readout assessment)のための会社)。
【0057】
8.用量調節および試験治療の中断の許可
治験責任医師の判断に基づき試験薬の用量調節が許可される場合もあり、さらに薬物中断も認められる。治験責任医師の判断および全般的な臨床的評価に基づく試験薬の中断につながる可能性のある状態/事象としては、以下のものが挙げられる:
・重篤な有害事象の報告
・除外された併用薬剤の使用を伴うか、または伴わない緊急の医学的状態
・臨床的に重大な臨床検査値または異常な試験もしくは調査結果
・患者のノンコンプライアンス
【0058】
患者の安全に対する試験薬の中止および再開による悪影響を避けるために、個々の場合に応じて治験責任医師と治験依頼者の間で話し合いが行われる。これは、中止の理由、時期および期間を考慮して治療を継続するか否かを決定するためである。これはまた、例えば、中断が心モニタリングを行う正当な理由となるだけ十分に長い場合、試験薬を再開するときに追加の安全対策が必要とされるか否かを判断するためでもある。顕著な有害事象がある場合、安全性の懸念がある場合、および/または試験中の薬物動態学的データに基づいて、計画された用量より低い用量、すなわち1日あたり3mgの投与が考慮されてもよい。プロトコール規定の投薬方式に耐えられない患者に対しては、患者に試験薬を続けてもらうために、用量調節および中断が許可される。こうした変更は、投与量投与記録CRFに記録されなければならない。
【0059】
併用治療
試験の開始に先立っておよび試験中の組み入れ基準に定義される期間内に投与されたか、または行われたすべての処方薬剤、市販の薬物および重要な非薬物療法(理学療法および輸血を含む)を、CRFの併用薬剤/重要な非薬物療法のセクションに記録しなければならない。薬剤の登録は、商標名、単一用量および単位、回数および投与経路、開始および中止日ならびに療法の理由を明確にするべきである。現在、前処置の使用、GVHD予防法、HSCTおよび全般的な移植前治療についての一定のプロトコールはなく、そのいずれかまたはすべては、異なる施設間で著しく変化する可能性があり、同じ施設においても患者によって変化する可能性もある。したがって、施設の実務に従ってそのような併用治療が使用されることになる。
【0060】
必要な場合は、以下の併用治療が一般に利用可能である:
例えば、アタザナビル、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、アミオダロン、シメチジン、クラリスロマイシン、シプロフロキサシン、ジルチアゼム、エリスロマイシン、フルボキサミンおよび同種のものから選択される強力なCYP3A4阻害剤。この強力なCYP3A4阻害剤は、標準治療として患者に投与される場合もある。起こりうる治療薬との薬物間相互作用のリスクを低減するために、PKサンプルが継続的に分析されることになる。
【0061】
患者の前処置
強度軽減移植前治療:
例として、フルダラビンを30mg/m2/日で3日間に引き続く、全身照射(TBI)(1×200cGy/日)によるミニシアトル式前処置が使用される
【0062】
骨髄破壊的前処置
高用量化学療法および全身照射(TBI)は、施設の実務と適合した国のガイドラインに従って行われ、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドの使用が含まれることもある。例として以下の投与計画を提供する:
1)フルダラビン、総用量の75mg/m2に対して25mg/m2/日のIV×3日(およそ2〜3日間)。
2)ブスルファン、0.8mg/kg/6時間(およそ2から4日間)
3)シクロホスファミド、総用量の120mg/kgに対して60mg/kg/日のIV×2日(およそ2日間)。CYCにより引き起こされる出血性膀胱炎のリスクを低減するために、患者は、多量の輸液およびメスナも投与されることになる。
4)TBIは、およそ8から10日目に行われる(HSCTに対して−8および−1日目)。推奨されるTBI線量は、総線量の1200cGyに対して1日に2回照射される200cGyである。
【0063】
GVHDの予防
通常、式(I)の化合物は、GVHDを予防するために患者に投与される通常の治療薬に対する追加の治療として投与される。GVHDを予防するための標準治療には、多くの副作用があり、患者のうちの高い割合でGVHDが予防されない。
【0064】
したがって、患者は、施設の実務に従って例えば、シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノラート(mycophenolate)またはメトトレキサートを使用した予防法を受けることになる。例として、患者は、8日目(HSCTに対して−3日目)にCsAを12時間毎に2時間かけて初期用量の2.5mg/kgのIVで開始する。毒性および目標とするトラフレベルの150〜400mg/Lに対するCsAレベルに基づいて用量調節を行ってもよい。患者が経口薬剤に耐えられたら、CsAは、一般に経口の(p.o.)形態に変えられる。初期のp.o.投薬は、1日に2回の投与で現行の静脈内(i.v.)用量であってもよいだろう。CsA投薬は、一般に少なくとも週に1回モニタされ、臨床的に必要に応じて変更されてもよい。
【0065】
メトトレキサートのスケジュールおよび投薬は、施設の内部標準に準じて変えられてもよい(例えば、11日目に10mg/kg、13日目および16日目に6mg/kg)。ミコフェノラート(mycophenolate)は、一般に施設の実務に従って投与されてもよい(ミニシアトル式前処置後に、例えば、1日あたり2×100mg)。臨床的な副作用に基づいて用量調節を行ってもよい。
【0066】
造血幹細胞移植(HSCT)
施設の実務に従って末梢血動員幹細胞が使用される。施設の標準に適合するJACIE
*によって定義されるとおりの、移植片ソースとしてT細胞が豊富な末梢血幹細胞を使用する移植片の選択アルゴリズムに従った、適した幹細胞ソースが入手可能でなければならない。(
*JACIE:the International Society for Cellular Therapy & European Group for Blood and Marrow Transplantationを含むThe Joint Accreditation Committee Europe)。さらに、ドナーは、分子HLA適合技術を使用して、レシピエントと9/10または10/10適合していなければならない。
【0067】
マウスの致死的移植片対宿主病(GvHD)
本発明者らは、Transplantation 11(4)(1971):378-382に記載された以前の報告に従ってマウスの致死的GvHDを行った。
【0068】
日本チャールス・リバー株式会社(CHARLES RIVER JAPAN)から雌のBALB/cAnNCrjマウスおよび雌のCrj:BDF1マウスを購入し、それぞれドナーおよびレシピエントとして10週齢で使用した。
【0069】
ドナーBALB/cマウスから脾臓を採取した。その脾臓をRPMI−1640培地(GIBCO)に入れ、穏やかに2枚のスライドガラスを押して単一の細胞懸濁液を作製した。その単一の細胞懸濁液をセルストレイナー(70um、FALCON)に通した。このろ液を遠心分離して、細胞ペレットを回収した。このペレットをRPMI−1640培地に再懸濁させた。チュルク液を使用した染色によって懸濁液中の有核細胞の数を算出した。この懸濁液を、RPMI−1640培地により適切に希釈して最終的に2×10
8細胞/mLの懸濁液を作製した。この懸濁液は、脾細胞懸濁液の役割を果たした。
【0070】
レシピエントBDF1マウスを、0日目に300mg/kgのシクロホスファミド(SHIONOGI & CO.,LTD.)の用量を用いて腹腔内で処置した。シクロホスファミド処置の1日後、BDF1マウスの静脈内に0.25mL(5×10
7細胞/マウス)のBALB/cマウスの脾細胞懸濁液を注射して致死的GvHDを引き起こした。
【0071】
化合物(対照/CsA/KRP203)による処置
1日目(脾細胞の注射の直後)から20日目まで化合物を1日1回経口投与した。そのマウスを70日目まで観察した。
【0072】
結果を表1に示す。シクロスポリンAは、マウスの致死的GVHDを抑制した。しかしながら、シクロスポリンAの使用中止と同時に致死的GVHDの発症が観察された(20日目に処置中止)。0.03mg/kgのKRP−203のp.o.は、マウスの致死的GVHDを完全に予防した。KRP−203は、(シクロスポリンAとは対照的に)処置の中止後にも効力が持続していた。
【0073】
【表1】
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者の移植片対宿主病(GVHD)を治療および
/または予防する方法であって、
(i)前記患者に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与すること;
(ii)前記患者を前処置し、それにより実質的にすべての骨髄および免疫系を破壊すること;ならびに
(iii)ドナーからの造血幹細胞を前記患者に移植すること
を含み、前記式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩が、
【化11】
であり、式中、
R2は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1〜4アルコキシ、C1〜7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
R3は、H、ハロゲン、CF3、OH、C1〜7アルキル、C1〜4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1〜4アルコキシメチルであり;
R4およびR5のそれぞれは、独立してHまたは式(a)
【化12】
の残基であり、式中、R8およびR9のそれぞれは、独立してH、またはハロゲンによって任意に置換されたC1〜4アルキルであり;
nは1から4の整数であり;
R6は、水素、ハロゲン、C1〜7アルキル、C1〜4アルコキシまたはトリフルオロメチルである、方法。
[2]
式(I)の前記化合物が、式(II)
【化13】
の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩;
または下記式(IIa)、(IIb):
【化14】
のそのホスフェート誘導体もしくは薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
[3]
式(I)の前記化合物が、式(II)
【化15】
の化合物または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
[4]
最初に請求項1に記載の前処置をされ、その後、ドナーからの造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者のGVHDの治療および/または予防に使用するための、請求項1に記載の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩。
[5]
請求項2に記載の式(II)、(IIa)および/もしくは(IIb)の化合物または薬学的に許容されるその塩である、請求項4に記載の使用のための化合物。
[6]
前記前処置が、
強度軽減移植前治療(RIC):
例えば、一般に30mg/m2/日で3日間のフルダラビンまたは別の化学療法剤に続く、一般に1×200cGy/日の全身照射(TBI)によるミニシアトル式前処置;
および
骨髄破壊的前処置、
例えば、高用量化学療法および全身照射(TBI)は、一般に施設の実務に適合した国のガイドラインに従って行われ、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドの投与を含むこと
から選択される、先行請求項のいずれかに記載の方法または化合物。
[7]
前記前処置が、フルダラビン、ブスルファン、メトトレキサート、シクロスポリンAおよびシクロホスファミドから選択される1つまたは複数の薬剤を含む高用量化学療法である、先行請求項のいずれかに記載の方法または化合物。
[8]
前記前処置が、国のガイドラインに従った全身照射(TBI)である、先行請求項のいずれかに記載の方法または化合物。
[9]
造血幹細胞移植(HSCT)が、前処置に引き続いて、例えば、前処置の直後または前処置の0〜1日後または前処置の1〜8日後または1〜10日後に行われる、先行請求項のいずれかに記載の方法または化合物。
[10]
請求項1に記載の式(I)の化合物による前記患者の治療が、前処置の5日前、特に前処置の3日前およびとりわけ前処置の1日前に開始される、先行請求項のいずれかに記載の方法または化合物。