特許第6441825号(P6441825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441825
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】フィラーの効能維持用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20181210BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20181210BHJP
   A23L 33/28 20160101ALI20181210BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61K38/39
   A61K38/06
   A23L33/28
   A61L27/20
   A61P17/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-560100(P2015-560100)
(86)(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公表番号】特表2016-510023(P2016-510023A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】KR2014001638
(87)【国際公開番号】WO2014133339
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0022339
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン, ヒョン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ビョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ソ, デ バン
(72)【発明者】
【氏名】イ, サン ジュン
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0164098(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/120290(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/126294(WO,A1)
【文献】 特開平10−265401(JP,A)
【文献】 Journal of Dermatological Science,2012年,Vol.66,pp.136-143
【文献】 Biosci. Biotechnol. Biochem.,2010年,Vol.74(10),pp.2096-2099
【文献】 Nippon Suisan Gakkaishi,2009年,Vol.75(1),pp.86-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/39
A61K 31/728
A61K 38/06
A61P 17/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物であって、
コラーゲンを有効成分として含み、
前記コラーゲンはコラーゲンペプチドを含み、
前記組成物は、前記ヒアルロン酸フィラーが対象に投与された後に、必要とする前記対象に投与される、ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、組成物の全重量に対して0.01〜50重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コラーゲンペプチドは、Gly−X−Yのコラーゲントリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記X及びYは、同一であるか又は互いに異なるアミノ酸である場合を含み、
前記アミノ酸は、グリシン(Glycine、Gly)、アラニン(Alanine、Ala)、バリン(Valine、Val)、ロイシン(Leucine、Leu)、イソロイシン(Isoleucine、Ile)、スレオニン(Threonine、Thr)、セリン(Serine、Ser)、システイン(Cysteine、Cys)、メチオニン(Methionine、Met)、アスパラギン酸(Aspartic acid、Asp)、アスパラギン(Asparagine、Asn)、グルタミン酸(Glutamic acid、Glu)、グルタミン(Glutamine、Gln)、リシン(Lysine、Lys)、アルギニン(Arginine、Arg)、ヒスチジン(Histidine、His)、フェニルアラニン(Phenylalanine、Phe)、チロシン(Tyrosine、Tyr)、トリプトファン(Tryptophan、Trp)、及びプロリン(Proline、Pro)からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Xはプロリンであり、
前記Yはヒドロキシプロリンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、コラーゲンを、組成物の全重量に対して1〜80重量%の範囲で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記コラーゲンまたはコラーゲンペプチドは、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性を抑制する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は薬学組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は食品組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ヒアルロン酸フィラー組成物;
請求項1に記載の組成物;及び
請求項1に記載の組成物は、前記ヒアルロン酸フィラーが対象に投与された後に、必要とする前記対象に投与されることを指示する指示書、を含むフィラー施術用キット。
【請求項11】
前記指示書では、さらに前記ヒアルロン酸は経皮投与し、且つ請求項1に記載の組成物は経口投与することを指示する、請求項10に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンを有効成分として含んでフィラーの効能を長期間維持させる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織内へ埋め込む物質は毒性があってはならず、目的とする機能を果たした後は生体内代謝活動によって分解及び排出されなければならない。近年、皮膚組織内へ特定の物質を埋め込む美容目的の施術が急増してきている。このような施術の際に主に用いられる物質であるヒアルロン酸は、体内へ挿入または埋め込まれると、当該物質の濃度または当該物質を含む組成物の種類に関係なく数日後から当該物質の代謝及び排出が行われると知られている。施術後、目的とする美容効果を長期間維持させるために、ヒアルロン酸の短い体内代謝期間を克服できる方法が求められ、数ヶ月以上の体内維持期間を有するフィラー材料の開発などに関する要望が増えつつある。
【0003】
そこで、本発明者らは、コラーゲンペプチドの経口投与とヒアルロン酸フィラー施術を並行した場合、コラーゲンペプチドが皮膚内に注入されたヒアルロン酸フィラーの生体内維持期間を延長させる可能性があることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ヒアルロン酸フィラーの施術後、その効能を長期間維持させることができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、コラーゲンを有効成分として含むヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物及びコラーゲンを有効成分として含むヒアルロン酸合成促進用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る組成物は、ヒアルロン酸の合成を促進させ且つヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性を抑制することができ、ヒアルロン酸フィラーの効能をより長期間維持させることができて有用である。その結果、フィラーの施術回数を少なくしてもその効果が維持でき、且つ皮膚刺激も軽減するという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コラーゲンペプチドの処理によってヒアルロン酸合成量が増加したことを示したグラフである。
図2】フィラーの注入後、コラーゲンペプチドの処理に伴う実験対象の体積変化を目視で観察した写真である。
図3】フィラーの注入後、コラーゲンペプチドの処理に伴う実験対象の体積変化の程度をグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一観点において、コラーゲンを有効成分として含むヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物に関する。
【0009】
コラーゲンは、硬タンパク質の一種で少量の糖を含む。また結合組織基質の主成分であって哺乳動物の場合は総タンパク質の約30重量%を占める。動物の真皮、軟骨などに線維状に存在し集まって膠原線維になる。線維を構成する基本単位は、分子量約30万、長さ280nm、太さ1.5nmのトロポコラーゲンである。
【0010】
本発明の一観点に係る組成物は、ヒアルロン酸フィラーの注入後、皮膚内でフィラーがより自然に且つより長期間維持されるようにすることができる。
【0011】
本発明は、また他の観点において、コラーゲンを有効成分として含むヒアルロン酸合成促進用組成物に関する。
【0012】
本発明のコラーゲンペプチドは、その投与によってヒアルロン酸の合成を促進することができ、且つヒアルロン酸の合成に係る以前段階の酵素やタンパク質の活性または量を増大することができる。
【0013】
本明細書において、「ヒアルロン酸フィラー」とは、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)を主成分とするフィラーを意味していてよい。前記ヒアルロン酸は、アミノ酸とウロン酸からなる複雑な多糖類の一種であって、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸からなる高分子化合物である。前記フィラー(filler)は、シワやクレーターなどを埋めるために皮膚細胞へ直接注入または挿入する充填材料を意味していてよい。前記フィラーは、皮膚屈曲の緩和や水分感の補充などの様々な目的にて用いられていてよく、特に制限などない。前記フィラーは、身体の全部位にわたって施術されていてよく、具体的に、顔や首などが挙げられる。
【0014】
本明細書において、「フィラーの効能を維持」させるということは、注入されたフィラーがよりゆっくり分解され又は生体内のヒアルロン酸の合成を促進して、フィラーの主成分であるヒアルロン酸の含量を増加させることを含む。
【0015】
本発明に係る組成物は、フィラーによる皮膚屈曲の緩和や水分感の充填などの制限のない効能を長期間持続することができるようにし、有効に用いることができる。具体的に、フィラーの注入周期を遅らせることができ、皮膚刺激を軽減させるのみならず、経済的という長所がある。
【0016】
本発明の一観点に係る組成物は、ヒアルロン酸の合成を促進させることができ、且つヒアルロン酸を製造する前段階(up−stream)の酵素、タンパク質などの活性を促進させ又はその量を増加させることができる。
【0017】
本発明の一観点に係る組成物において、前記コラーゲンは、コラーゲンペプチドを含む。
【0018】
本明細書において、前記コラーゲンペプチドは、分子量が500〜1、000Daの範囲であるペプチドであって、アミノ酸がペプチド結合にて結合されていれば、特に制限されることなく適用することができる。具体的に、前記コラーゲンペプチドは、Gly−X−Yのコラーゲントリペプチドを含んでいてよく、前記X及びYは、通常、天然由来のあらゆる種類のアミノ酸を含んでいてよい。さらに、前記X及びYは、同一であっても又は互いに異なっていてもよい種類のアミノ酸であってよい。
【0019】
本発明の一観点に係る組成物において、前記組成物は、組成物の全重量に対して0.01〜50重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含んでいてよい。前記範囲内で当該組成物は、ヒアルロン酸の合成を促進することでヒアルロン酸フィラーの効能を長期間維持させることができる。前記のような観点における本発明の一観点に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.05〜48重量%、組成物の全重量に対して0.1〜46重量%、組成物の全重量に対して0.5〜44重量%、組成物の全重量に対して1〜42重量%、または組成物の全重量に対して5〜40重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0020】
本発明の一観点に係る組成物において、前記コラーゲンペプチドは、Gly−X−Yのコラーゲントリペプチドを含んでいてよい。
【0021】
本発明の一観点に係る組成物において、前記X及びYは同一であるか又は互いに異なるアミノ酸である場合を含み、前記アミノ酸は、グリシン(Glycine、Gly)、アラニン(Alanine、Ala)、バリン(Valine、Val)、ロイシン(Leucine、Leu)、イソロイシン(Isoleucine、Ile)、スレオニン(Threonine、Thr)、セリン(Serine、Ser)、システイン(Cysteine、Cys)、メチオニン(Methionine、Met)、アスパラギン酸(Aspartic acid、Asp)、アスパラギン(Asparagine、Asn)、グルタミン酸(Glutamic acid、Glu)、グルタミン(Glutamine、Gln)、リシン(Lysine、Lys)、アルギニン(Arginine、Arg)、ヒスチジン(Histidine、His)、フェニルアラニン(Phenylalanine、Phe)、チロシン(Tyrosine、Tyr)、トリプトファン(Tryptophan、Trp)、及びプロリン(Proline、Pro)からなる群から選択されるものであってよい。
【0022】
具体的に、前記コラーゲントリペプチドは、グリシン−プロリン−ヒドロキシプロリンを含んでいてよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0023】
本発明の一観点に係る組成物において、前記組成物は、コラーゲンまたはコラーゲンペプチドを、組成物の全重量に対して1〜80重量%の範囲で含んでいてよい。コラーゲンまたはコラーゲンペプチドの含量が1重量%未満であると所望の効果を得難く、また80重量%を超えると剤形化し難くなる。前記のような観点から、本発明に係る組成物は、組成物の全重量に対して、1〜80重量%、3〜78重量%、5〜76重量%、7〜74重量%、9〜72重量%、11〜70重量%、13〜68重量%、15〜66重量%、17〜64重量%、または19〜62重量%のコラーゲンまたはコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0024】
本発明の一観点に係る組成物において、前記コラーゲンまたはコラーゲンペプチドは、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性を抑制することができる。前記コラーゲンまたはコラーゲンペプチドは、ヒアルロニダーゼの活性を抑制するか又は量を減少させてヒアルロン酸の分解を防止し、その結果、ヒアルロン酸の合成を促進させることができ、且つフィラーの効能を長期間維持させることができる。
【0025】
本発明の一観点に係る組成物において、前記組成物は薬学組成物であってよい。
【0026】
本発明に係る組成物を医薬品に適用する場合には、前記組成物を有効成分とし、常用される無機又は有機の担体を加えて固体、半固体又は液状の形態にして経口投与剤として剤形化することができる。
【0027】
前記経口投与用の製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤等が挙げられる。本発明の有効成分を剤形化するためには、常法に従って実施すれば容易に剤形化することができ、界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他常用される補助剤を適宜用いられていてよい。
【0028】
本発明に係る前記医薬組成物は経口にて投与されていてよい。
【0029】
また、前記活性成分の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重と、治療する特定の疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路、及び処方者の判断によって変わり得るであろう。こうした因子に基づく投与量の決定は、当業者の水準内にある。一般的な投与量は、0.001mg/kg/日〜2000mg/kg/日、より具体的には、0.5mg/kg/日〜1500mg/kg/日である。
【0030】
本発明の一観点に係る組成物において、前記組成物は食品組成物であってよい。
【0031】
本発明の一側面において、前記食品組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、及びドリンク剤などを例に挙げられるが、必ずしもこれらに制限されず、その他様々な形態で剤形化されていてよい。
【0032】
また、前記食品組成物は、必要に応じて、下記の添加剤の1種または2種以上を含んでいてよい。前記添加剤としては、ブドウ、リンゴ、オレンジ、レモン、パイナップル、バナナ、梨等の濃縮果汁、粉末果汁;パルミチン酸レチノール、リボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン(cyanocobalamine)、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビオチン、コレカルシフェロール(cholecalciferol)、重酒石酸コリン、トコフェロール、β−カロチン等の水溶性及び脂溶性ビタミン類;レモンフレーバー、オレンジフレーバー、ストロベリーフレーバー、ブドウフレーバー、バニラエッセンス等の香味剤;グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、イノシン酸等のアミノ酸、核酸、及びそれらの塩類;ポリデキストロース、ペクチン、キサンタンガム、グルコマンナン、アルギン酸等の植物繊維;又は、塩化ナトリウム、硝酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸二カリウム、リン酸一ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、ヨウ化ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜鉛、マンガン、銅、ヨード、またはコバルト等のようなミネラル類を例に挙げられる。
【0033】
本発明はまた他の観点において、ヒアルロン酸フィラー組成物;及び請求項1または請求項2の組成物;を含むフィラー施術用キットであってよい。
【0034】
本発明の一観点に係るキットにおいて、前記キットは指示書をさらに含み、前記指示書では前記ヒアルロン酸は経皮投与し、本発明の他の一観点に係る組成物は経口投与することを開示していてよい。
【0035】
前記フィラーは、皮膚表面に塗布して皮膚内に吸収されるようにすることができ、皮膚内に埋め込むことができる。
【0036】
本発明に係る前記キットは、フィラーの施術時またはフィラーの施術後に経口用として使用され、フィラーの効能持続期間を延長させることができる。
【0037】
本発明は、また他の観点においてヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物を製造するに際して、コラーゲンの用途に関するものであってよい。前記用途は、治療学的または非治療学的用途をいずれも含んでいてよい。
【0038】
本発明は、さらに、ヒアルロン酸合成促進用組成物を製造するに際して、コラーゲンの用途に関するものであってよい。前記用途は、治療学的または非治療学的用途をいずれも含んでいてよい。
【0039】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記コラーゲンはコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0040】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記組成物は、組成物の全重量に対して0.01〜50重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含んでいてよい。前記範囲内において当該組成物は、ヒアルロン酸の合成を促進することでヒアルロン酸フィラーの効能を長期間維持させることができる。前記のような観点から、本発明の一観点に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.05〜48重量%、組成物の全重量に対して0.1〜46重量%、組成物の全重量に対して0.5〜44重量%、組成物の全重量に対して1〜42重量%、または組成物の全重量に対して5〜40重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0041】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記コラーゲンペプチドは、Gly−X−Yのコラーゲントリペプチドを含んでいてよい。
【0042】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記X及びYは、同一であるか又は互いに異なるアミノ酸である場合を含み、前記アミノ酸は、グリシン(Glycine、Gly)、アラニン(Alanine、Ala)、バリン(Valine、Val)、ロイシン(Leucine、Leu)、イソロイシン(Isoleucine、Ile)、スレオニン(Threonine、Thr)、セリン(Serine、Ser)、システイン(Cysteine、Cys)、メチオニン(Methionine、Met)、アスパラギン酸(Aspartic acid、Asp)、アスパラギン(Asparagine、Asn)、グルタミン酸(Glutamic acid、Glu)、グルタミン(Glutamine、Gln)、リシン(Lysine、Lys)、アルギニン(Arginine、Arg)、ヒスチジン(Histidine、His)、フェニルアラニン(Phenylalanine、Phe)、チロシン(Tyrosine、Tyr)、トリプトファン(Tryptophan、Trp)、及びプロリン(Proline、Pro)からなる群から選択されるものであってよい。
【0043】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記Xはプロリンであり、前記Yはヒドロキシプロリンであってよい。
【0044】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記組成物は、コラーゲンまたはコラーゲンペプチドを組成物の全重量に対して1〜80重量%の範囲で含んでいてよい。コラーゲンまたはコラーゲンペプチドの含量が1重量%未満であると所望の効果を得難く、また80重量%を超えると剤形化し難くなる。前記のような観点から、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、1〜80重量%、3〜78重量%、5〜76重量%、7〜74重量%、9〜72重量%、11〜70重量%、13〜68重量%、15〜66重量%、17〜64重量%、または19〜62重量%の範囲のコラーゲンまたはコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0045】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記コラーゲンまたはコラーゲンペプチドは、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性を抑制することができる。
【0046】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能維持用組成物の製造、またはヒアルロン酸合成促進用組成物の製造に関する前記用途において、前記組成物は薬学組成物または健康食品組成物であってよい。
【0047】
本発明は、また他の観点においてコラーゲンを含む組成物を投与対象に投与して当該対象中でのヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法に関するものであってよい。前記対象は、前記組成物の投与と同時にヒアルロン酸フィラーの投与を受けたか、または前記組成物の投与前にヒアルロン酸フィラーの投与を受けた対象をいずれも含む。
【0048】
本発明は、さらに、コラーゲンを含む組成物を投与対象に投与して当該対象のヒアルロン酸合成を促進する方法に関するものであってよい。前記対象は、前記組成物の投与と同時にヒアルロン酸フィラーの投与を受けたか、または前記組成物の投与前にヒアルロン酸フィラーの投与を受けた対象をいずれも含む。
【0049】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記コラーゲンは、コラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0050】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記組成物は、組成物の全重量に対して0.01〜50重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含んでいてよい。前記範囲内において当該組成物は、ヒアルロン酸の合成を促進することでヒアルロン酸フィラーの効能を長期間維持させることができる。前記のような観点から、本発明の一観点に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.05〜48重量%、組成物の全重量に対して0.1〜46重量%、組成物の全重量に対して0.5〜44重量%、組成物の全重量に対して1〜42重量%、または組成物の全重量に対して5〜40重量%の範囲のコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0051】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記コラーゲンペプチドは、Gly−X−Yのコラーゲントリペプチドを含んでいてよい。
【0052】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記X及びYは同一であるか又は互いに異なるアミノ酸である場合を含み、前記アミノ酸は、グリシン(Glycine、Gly)、アラニン(Alanine、Ala)、バリン(Valine、Val)、ロイシン(Leucine、Leu)、イソロイシン(Isoleucine、Ile)、スレオニン(Threonine、Thr)、セリン(Serine、Ser)、システイン(Cysteine、Cys)、メチオニン(Methionine、Met)、アスパラギン酸(Aspartic acid、Asp)、アスパラギン(Asparagine、Asn)、グルタミン酸(Glutamic acid、Glu)、グルタミン(Glutamine、Gln)、リシン(Lysine、Lys)、アルギニン(Arginine、Arg)、ヒスチジン(Histidine、His)、フェニルアラニン(Phenylalanine、Phe)、チロシン(Tyrosine、Tyr)、トリプトファン(Tryptophan、Trp)、及びプロリン(Proline、Pro)からなる群から選択されるものであってよい。
【0053】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記Xはプロリンであり、前記Yはヒドロキシプロリンであってよい。
【0054】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記組成物は、コラーゲンまたはコラーゲンペプチドを組成物の全重量に対して1〜80重量%の範囲で含んでいてよい。コラーゲンまたはコラーゲンペプチドの含量が1重量%未満であると所望の効果を得難く、また80重量%を超えると剤形化し難くなる。前記のような観点から、本発明に係る組成物は、組成物の全重量に対して、1〜80重量%、3〜78重量%、5〜76重量%、7〜74重量%、9〜72重量%、11〜70重量%、13〜68重量%、15〜66重量%、17〜64重量%、または19〜62重量%の範囲のコラーゲンまたはコラーゲンペプチドを含んでいてよい。
【0055】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記コラーゲンまたはコラーゲンペプチドは、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性を抑制することができる。
【0056】
本発明の一観点に係る前記ヒアルロン酸フィラーの効能を維持させる方法、またはヒアルロン酸合成を促進する方法において、前記組成物は、薬学組成物または健康食品組成物であってよい。
【0057】
以下、本発明に係る組成物の剤形例を説明するが、薬学組成物及び健康食品組成物は種々の剤形に応用可能であり、これらは本発明を限定するためのものではなく、単に本発明を具体的に説明するためのものに過ぎない。
【0058】
[製剤例1]軟質カプセル剤
後述する製造例1のコラーゲンペプチド150mg、パーム油2mg、パーム硬化油8mg、黄蝋4mg、及びレシチン6mgを混合し、通常の方法に従い1カプセル当たり400mgずつ充填して、軟質カプセルを製造した。
【0059】
[製剤例2]錠剤
製造例1のコラーゲンペプチド150mg、ブドウ糖100mg、紅参抽出物50mg、澱粉96mg、及びステアリン酸マグネシウム4mgを混合し、これに30%エタノール40mgを添加して顆粒を造粒した後、60℃で乾燥し、打錠機を利用して錠剤として打錠した。
【0060】
[製剤例3]顆粒剤
製造例1のコラーゲンペプチド150mg、ブドウ糖100mg、紅参抽出物50mg、及び澱粉600mgを混合し、30%エタノール100mgを添加して顆粒を造粒した後、60℃で乾燥し、乾燥された顆粒をカプセルに充填して得た。内容物の最終重量は1gにした。
【0061】
[製剤例4]ドリンク剤
製造例1のコラーゲンペプチド150mg、ブドウ糖10g、紅参抽出物50mg、クエン酸2g、及び精製水187.8gを混合し、ビンなどの容器に充填して得た。内容物の最終容量は200mlにした。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明することにする。なお、これらの実施例は単に本発明を例示するためのもの過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは当業界における通常の知識を有する者には自明であろう。
【0063】
[製造例1]コラーゲンペプチドの準備
本発明において活性成分として用いられるコラーゲンペプチドは、ゼルイス株式会社(HATC、Jellice Co., LTD.、JAPAN)から購入したものであって、クリシン−プロリン−ヒドロキシプロリン形態のようなトリペプチド(tripeptide)を15%以上含む複合物である。
【0064】
[実験例1]角質形成細胞におけるヒアルロン酸(HA)合成促進能
ヒト由来の角質形成細胞株であるHaCaT細胞(Dr N.E. Fusenig、Deutsches Krebsforschungszentrum、Heidelberg、ドイツ)を、10% FBSを含むDMEM培地において37℃、5% COの条件下で培養した。96ウェルプレートで細胞を培養して、80%以上満たされたとき、FBSを含まない培地に交換してから24時間培養した。その後、製造例1のコラーゲンペプチドを200倍の濃度でPBSに溶かし、最終濃度がそれぞれ100ppm及び200ppmになるよう処理してから24時間培養した。24時間後に培地を回収してヒアルロン酸アッセイ(HR assay)に利用し、残りの細胞を利用して細胞生存率定量実験(CCK8 assay)を実施した。
【0065】
CCK8アッセイ(Dojindo社製)とヒアルロン酸アッセイ(Echelon社製)は、キット提供メーカのプロトコルに準して実験を実施し、定量したヒアルロン酸値を細胞生存率値で割って補正した。
【0066】
その結果、図1に示すように、コラーゲンペプチドを処理した群は、無処理の対照群に比べて、ヒアルロン酸合成量が30〜44%以上増加することが確認でき、このような合成促進能は、コラーゲンペプチドを処理する濃度に比例することを確認した。よって、コラーゲンペプチドは、皮膚細胞においてヒアルロン酸の合成を促進させ得ることが確認できた。
【0067】
[実験例2]ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性抑制能
フィラーの主要成分であるヒアルロン酸加水分解を抑制するか否かを調べるために、ヒアルロニダーゼの活性抑制能を観察した。
【0068】
0.1Mのヒアルロニダーゼ酵素液(7、900UNIT/mL)50μLにコラーゲンペプチドを、最終濃度が0.2、0.4、0.6、0.8、1.0mg/mLになるように20μLずつ加え、酵素の活性化のために12.5mMのCaCl 200μLを混合した後、37℃の水溶液状で20分間培養した。対照群はコラーゲンペプチドの代わりに蒸留水を入れ、水溶液状で20分間培養した。Ca2+で活性化されたヒアルロニダーゼ酵素溶液に0.1Mのヒアルロン酸液(12mg/5mL)250μLを添加し、さらに水溶液状で40分間培養した。培養後、0.4N NaOH溶液100μLと0.4Mの四ホウ酸カリウム(potassium tetraborate)100μLを反応混合物に添加して、沸いている水槽で3分間培養させてから冷却させた。冷却させた反応物にジメチルアミノベンズアルデヒド溶液(p−dimethylamino−benzaldehyde 4g、100% acetic acid 350mL及び10N HCl 50mL混合液)3.28mLを反応混合物に添加した後、37度の水浴状で20分間培養し、585nmでの吸光度の測定を行った。
【0069】
その結果、表1に見られるように、コラーゲンペプチドは、ヒアルロニダーゼの活性を抑制する効能に優れていることが分かった。さらに、前記効能はコラーゲンペプチドの濃度に依存的であることを確認した。
【0070】
【表1】
【0071】
[実験例3]ヒアルロン酸フィラーの生体組織内の維持能力
市販するヒアルロン酸フィラーであるクライトンII(太平洋製薬、HA 20mg/g)を使用して、無毛ラットの背部位に注入後、体積維持期間を観察した。
【0072】
15〜17週齢の無毛ラットを二つの群に分け、一方の群に対しては正常食餌を維持し(対照群)、もう一方の群に対しては3週間コラーゲンペプチドを500mg/kgの濃度で経口投与した(試験群)。フィラーの注入量に応じて対照群と試験群を下表2のようにさらに群分けして実施した。
【0073】
【表2】
【0074】
フィラーの注入後、対照群及び試験群のいずれもに対して、正常食餌を維持し、試験群だけに昼間コラーゲンペプチドの経口投与を維持した。前記対照群及び試験群の体積変化を4週間観察した。その結果、図2及び図3に見られるように、対照群の背部位に注入したフィラーは時間が経つにつれて減少しており、対照群のほうが試験群よりも早い減り具合で持続的に減少するのに対し、コラーゲンペプチドを経口投与した試験群は、減り具合が遅く、対照群に比べて体積維持効果に優れていることが確認できた。
【0075】
以上、本発明内容の特定の部分を詳しく記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとってかかる具体的技術は単なる好適な実施態様であるに過ぎず、それによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は請求項とそれらの等価物によって定義されると言えよう。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る組成物は、ヒアルロン酸の合成を促進させ且つヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)の活性を抑制することができ、ヒアルロン酸フィラーの効能をより長期間維持させることができて有用である。その結果、フィラーの施術回数を少なくしてもその効果が維持でき、且つ皮膚刺激も軽減するという長所がある。
図1
図2
図3