(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441840
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】緩衝材の製造方法及び緩衝材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/113 20060101AFI20181210BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20181210BHJP
B23C 3/00 20060101ALN20181210BHJP
B23C 5/08 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
B65D81/113 110
B65D81/113 130
B24B19/02
!B23C3/00
!B23C5/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-19065(P2016-19065)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-137090(P2017-137090A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年9月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 平成27年10月7日(開催期間10月7日から10月9日) 展示会名 第18回関西機械要素技術展 開催場所 インテックス大阪(大阪市住之江区南港北1−5−102)
(73)【特許権者】
【識別番号】392010094
【氏名又は名称】アイロップ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516036607
【氏名又は名称】姫路木管工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】大下 正人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄平
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−089270(JP,U)
【文献】
特開2015−093721(JP,A)
【文献】
特開平07−165269(JP,A)
【文献】
実開平06−042735(JP,U)
【文献】
特開2005−111617(JP,A)
【文献】
特開平06−155373(JP,A)
【文献】
特開2007−045438(JP,A)
【文献】
特開2012−035864(JP,A)
【文献】
特開2011−105319(JP,A)
【文献】
特開平07−215357(JP,A)
【文献】
特開2000−246529(JP,A)
【文献】
実開昭50−010673(JP,U)
【文献】
実公昭49−038530(JP,Y1)
【文献】
実開昭57−114672(JP,U)
【文献】
特開2000−327077(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3176216(JP,U)
【文献】
米国特許第4883179(US,A)
【文献】
米国特許第6530480(US,B1)
【文献】
韓国公開実用新案第20−2009−0008139(KR,U)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0025404(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/157786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/113
B24B 19/02
B23C 3/00
B23C 5/08
B65D 81/07
B65D 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡部材のみを転削手段で転削する工程を有する緩衝材の製造方法であって、
前記転削手段は、左右に緩衝ブロックを分離形成する溝部形成面転削部と、左右の緩衝ブロックに対向する一対の傾斜面を形成するための傾斜面転削部とを備えており、
前記合成樹脂発泡部材を、ガイド手段で案内し、回転動作する前記転削手段に対して押圧手段で進入させ、当該合成樹脂発泡部材の下面又は上面の何れかに対して、前記溝部形成面の内底面と合成樹脂発泡部材の裏面との間にヒンジ部となる所定の厚みを残して、前記傾斜面及び溝部形成面を形成する工程を備え、
転削手段における前記傾斜面転削部及び溝部形成面転削部は、木材又は、木材に塗布若しくは接着した研磨材のいずれか一つとして、緩衝材の表面を溶融固化した被転削面を形成する特徴とする緩衝材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝材の製造方法における工程の前工程若しくは後工程として、
合成樹脂発泡部材に対して、その上面側に幅方向へ熱線で一又は複数の細溝部を溶融形成する工程を備えたことを特徴とする緩衝材の製造方法。
【請求項3】
合成樹脂発泡部材のみからなる緩衝材であって、合成樹脂発泡部材の上面に開口する被転削面を備え、前記被転削面は、上面に開口して対向する一対の傾斜面と、当該一対の傾斜面の間に、当該一対の傾斜面の下端から下方へ連続して前記傾斜面に沿う溝部形成面とを備え、前記溝部形成面の内底面と裏面との間にヒンジ部を備え、当該ヒンジ部の左右に緩衝ブロックを備え、該緩衝ブロックは表面を溶融固化された被転削面を有することを特徴とする緩衝材。
【請求項4】
前記合成樹脂発泡部材の上面に開口し且つ幅方向に設けられる一又は複数の細溝部を備えたことを特徴とする請求項3記載の緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包の際に保護対象物と梱包容器との間に介在させ、保護対象物への外部からの衝撃を吸収・緩和するための緩衝材と、緩衝材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梱包容器に収納される保護対象物への衝撃を吸収・緩和するために、現在種々の緩衝材が用いられている。特に保護対象物が大型の電化製品等である場合には、種々の形状の緩衝材を適切な箇所へ配置させることが必要となる。
【0003】
このような状況において一の緩衝材の形状を変化させることで、保護対象物の角部、縁部を保護できる緩衝材、及びその製造方法が複数発明されている。
【0004】
上記緩衝材及びその製造方法に関しては、例えば、基面と該基面から膨出した緩衝部とを備えたブロック状の合成樹脂製緩衝体を複数並列状に配置するとともに、少なくとも隣接する緩衝体の基面間に亘り可撓性を有する合成樹脂製基材シートを配置し、前記緩衝体と基材シートの接合面で互いに固着し、隣接する緩衝体間に位置する前記基材シートをヒンジ部として折り曲げ可能となしたことを特徴とする緩衝梱包材が公知である(例えば、特許文献1参照。)。また、同特許文献1には、基材シートがオレフィン系発泡樹脂との接着相性が良い材料で作製し、基材シートと緩衝体とを熱接着加工、溶剤系接着剤加工、ホットメルト加工の何れか一種の接着加工によって固着する製造方法が開示されている。
【0005】
また、他の例としては、L字型に成型されたその内側コーナー部に連通した嵌合用溝が形成されるともに所定の間隔で分割用深溝が配設されてなるL字型部材と、前記L字型部材の嵌合用溝に対応する嵌合用突起が一角に一体に形成され前記L字型部材と嵌合自在な板状部材とからなる包装用緩衝材が公知である(例えば特許文献2参照。)。また同特許文献2には、L字型部材が発泡樹脂を用いて金型成型して形成される製造方法が開示されている。
【0006】
また、本発明者がした発明であって、
図1及び
図2に示す緩衝材が公知である(例えば、非特許文献1参照。)。即ち、非特許文献1に係る発明は、左右対称な一対の緩衝ブロックを対向して可撓性を有するシート上にホットメルト接着剤を挟持し、加熱固着したものであり、一対の緩衝ブロック間にはシートを折曲可能とする所定幅でヒンジ部を備えた構成である。前記各緩衝ブロックは、夫々対向する側面から上面に亘る傾斜面を備え、また各緩衝ブロックは前端側及び後端側に、上方へ開口する切込部を有する。
当該非特許文献に係る発明においても、特許文献1と同様に、複数の緩衝ブロックを対向して可撓性を有するシート上にホットメルト接着剤を用いて固着する製造方法を採用している。
【0007】
尚、本非特許文献1に係る発明は、一対の緩衝ブロック相互は前記シート折曲部を折線として、前記傾斜面相互が当接する位置から夫々の緩衝ブロックに接着されたシートの裏面側相互が当接する位置まで、約270°程度の折曲が可能である。また、各緩衝ブロックは前記切込部を境界として180°の折曲が可能である。このため例えば一対の緩衝ブロックに接着されたシートの裏面相互を概ね90°として、保護対象物の縁部に当接し、緩衝効果を得ることができる。また各緩衝ブロックの一方の対向する前記切込部を開き、180°折り返し、折り返された緩衝ブロックの対向する傾斜面相互を当接することで、保護対象物の角部を被覆するように保護することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−35864号公報
【特許文献2】実公昭62−15166号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】社団法人日本包装技術協会、各種催事、2013日本パッケージングコンテスト、公益財団法人日本生産性本部会長賞、[online]、[平成27年12月8日検索]、インターネット<URL:http://www.ipi.or.jp/saiji/jpc/2013/006.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に係る緩衝梱包材は、従前の特定の緩衝材と比較して材料コストが低減されるものである。しかしながら、当該特許文献1に係る緩衝梱包材は、緩衝体の基面間に亘り可撓性を有する合成樹脂製基材シートを配置し、前記緩衝体と基材シートの接合面で互いに固着する構成であることから、種々の接着などの手段を用いる必要があり、接着面の加熱や、接着剤の使用等、並びにこれらを用いる作業等、依然として製造には材料コストや相当の手間が必要となるものであった。
【0011】
また上記特許文献2に係る包装用緩衝材は、L字型部材を金型成型して構成するものであり、L字型部材は長さをある程度変更できるものであるが、幅方向には対応できず、保護対象物の大きさが合わない場合には、その都度新たな金型が必要となり、コストの低減の観点から依然として問題がある。
【0012】
また本出願人が先にした上記非特許文献1に係る緩衝材は利便性に優れるが、その製造過程においては、側面から上面に亘って傾斜面を形成した左右対称な緩衝ブロックを成形し、これを所定の大きさとした可撓性を有するシート上に、シート折曲部を形成しつつ緩衝ブロックを対向するよう位置合わせを正確に行い、熱接着する必要がある。
このため、上記特許文献1に係る緩衝梱包材と同様に、製造には相当の手間とコストが必要となる点で問題であった。
【0013】
また緩衝材においても使用する商品や使用環境等の関係から外観体裁が良好であればより望ましい。また緩衝材においては使用における耐久性が求められる。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、簡単かつ低廉に製造できる緩衝材の製造方法及び当該緩衝材の提供を、上記発明が解決しようとする課題とする。
【0015】
また本発明は、上記非特許文献1に係る機能を保持した上で、簡単かつ低廉に製造できる緩衝材の製造方法及び緩衝材の提供を、上記発明が解決しようとする課題とする。
【0016】
また本発明は、上記の解決課題に加え、外観品質の良好な緩衝材の製造方法及び当該緩衝材の提供を上記課題が解決しようとする課題とする。
【0017】
また本発明は、上記の解決課題に加え、十分な耐久性を確保できる緩衝材の製造方法及び当該緩衝材の提供を上記課題が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(削除)
【0019】
合成樹脂発泡部材のみを転削手段で転削する工程を有する緩衝材の製造方法であって、前記転削手段は、左右に緩衝ブロックを分離形成する溝部形成面転削部と、左右の緩衝ブロックに対向する一対の傾斜面を形成するための傾斜面転削部とを備えており、前記合成樹脂発泡部材を、ガイド手段で案内し、回転動作する前記転削手段に対して押圧手段で進入させ、当該合成樹脂発泡部材の下面又は上面の何れかに対して、
前記溝部形成面の内底面と合成樹脂発泡部材の裏面との間にヒンジ部となる所定の厚みを残して、前記傾斜面及び溝部形成面を形成する工程を備え、転削手段における前記傾斜面転削部及び溝部形成面転削部は、木材又は、木材に塗布若しくは接着した研磨材のいずれか一
つとして、緩衝材の表面を溶融固化した被転削面を形成することを
特徴とする緩衝材の製造方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【0020】
また本発明は、上記何れかの緩衝材の製造方法の工程に加え、合成樹脂発泡部材に対して、その
上面側に幅方向へ熱線で一又は複数の細溝部を溶融形成する工程を備えたことを特徴とする緩衝材の製造方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【0021】
また本発明は、合成樹脂発泡部材のみからなる緩衝材であって、合成樹脂発泡部材の上面に開口する被転削面を備え、前記被転削面は、上面に開口して対向する一対の傾斜面と、当該一対の傾斜面の間に、当該一対の傾斜面の下端から下方へ連続して前記傾斜面に沿う溝部形成面とを備え、
前記溝部形成面の内底面と裏面との間にヒンジ部を備え
、当該ヒンジ部の左右に緩衝ブロックを備え、該緩衝ブロックは表面を溶融固化された被転削面を有することを特徴とする緩衝材を、上記課題を解決するための手段とする。
【0022】
また本発明は、上記発明の構成に加えて、前記合成樹脂発泡部材の上面に開口し且つ幅方向に設けられる一又は複数の細溝部を備えたことを特徴とする緩衝材を、上記課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、合成樹脂発泡部材のみを転削手段で転削する工程を有する緩衝材の製造方法であって、前記転削手段は、左右に緩衝ブロックを分離形成する溝部形成面転削部と、左右の緩衝ブロックに対向する一対の傾斜面を形成するための傾斜面転削部とを備えており、前記合成樹脂発泡部材を、ガイド手段で案内して、回転動作する前記転削手段に対して押圧手段で進入させ、その下面又は上面の何れかに対して
前記溝部形成面の内底面と合成樹脂発泡部材の裏面との間にヒンジ部となる所定の厚みを残して前記傾斜面及び溝部形成面を形成する工程を備えたことから、単一素材の合成樹脂発泡部材を転削のみで、簡単に溝部で折り返し可能な緩衝ブロックを形成することができるため、製造時の手間とコストを大幅に低減できる。
【0024】
また本発明によれば、上記緩衝材の製造方法の構成を前提として、転削手段における前記傾斜面転削部及び溝部形成面転削部が、木材又は、木材に塗布若しくは接着した研磨材のいずれか一であることを特徴とする緩衝材の製造方法としたことから、上記緩衝材の製造方法の作用効果を奏する上に、形成される溝部形成面及び傾斜面との間に生ずる摩擦熱が補助的に作用する。このため、当該溝部形成面及び傾斜面に予め特段の表面処理を施すことなく、微細なささくれが低減して優れた質感を呈することができ、外観品質の高い緩衝材を提供できる。また、転削とともに摩擦熱が付与されるため、緩衝材の表面が微細なレベルで溶融固化して表面の強度が高くなり、繰り返し使用に対する耐久性能が向上する。
【0025】
また本発明は、上記何れかの緩衝材の製造方法の工程に加え、合成樹脂発泡部材に対して、その幅方向に熱線で一又は複数の細溝部を溶融形成する工程を備えたことから、本発明者らが先に発明し非特許文献1に開示した、種々の作用効果、即ち、一対の緩衝ブロック相互は前記シート折曲部を折線として、前記傾斜面相互が当接する位置から裏面側相互が当接する位置まで約270°程度の折曲を可能とし、各緩衝ブロックは前記切込部を境界として180°の折曲を可能とすることで、例えば一対の緩衝ブロックの裏面相互を概ね90°として、保護対象物の縁部に当接し、緩衝効果を得ることができ、他方で各緩衝ブロックの一方の対向する前記切込部を開き、180°折り返し、折り返された緩衝ブロックの対向する傾斜面相互を当接することで、保護対象物の角部を被覆するように保護することができる。そして上記機能を実現した上で、上記いずれかの緩衝材の製造方法の作用効果、即ち大幅なコスト低減効果を得ることができる。
【0026】
また本発明は、合成樹脂発泡部材のみからなる緩衝材であって、合成樹脂発泡部材の上面に開口する被転削面を備え、前記被転削面は、上面に開口して対向する一対の傾斜面と、当該一対の傾斜面の間に、当該一対の傾斜面の下端から下方へ連続して前記傾斜面に沿う溝部形成面とを備え、
前記溝部形成面の内底面と裏面との間にヒンジ部を備えたことから、非常に簡素且つ軽量な構成で、低廉なものとして、梱包の際に保護対象物と梱包容器との間に介在させ、外部からの保護対象物への衝撃を吸収、緩和できる。
【0027】
また本発明は、上記発明の構成に加えて、前記合成樹脂発泡部材の上面に開口し且つ幅方向に設けられる一又は複数の細溝部を備えた緩衝材としたことによって、非特許文献1に示した機能を全て備えた上で、大幅な製造コストの低減を図ることができる。
即ち、請求項
4に係る発明によれば、一対の緩衝ブロック相互は前記シート折曲部を折線として、前記傾斜面相互が当接する位置から夫々の緩衝ブロックの裏面側相互が当接する位置まで、約270°程度の折曲が可能となり、また、各緩衝ブロックは前記切込部を境界として180°の折曲が可能となる。また、一対の緩衝ブロックの裏面相互のなす角を概ね90°として、保護対象物の縁部に当接し、緩衝効果を得ることができる。更に各緩衝ブロックの一方の対向する前記切込部を開き、180°折り返し、折り返された緩衝ブロックの対向する傾斜面相互を当接することで、保護対象物の角部を被覆するように保護することができ、これを非常に低廉に提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】非特許文献1に係る従来の緩衝材を示す斜視図である。
【
図2】非特許文献1に係る従来の緩衝材の組立図である。
【
図3】(a)本発明の実施例1に係る緩衝材を形成するための合成樹脂発泡部材を示す斜視図、及び(b)本発明の実施例1に係る緩衝材を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る緩衝材の製造方法に用いる(a)載置用治具の斜視図、(b)転削装置の斜視図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る緩衝材の製造方法に用いる転削手段を示す(a)正面図及び(b)右側面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る緩衝材の製造方法により当該緩衝材を転削する直前の状態を示す説明斜視図である。
【
図7】本発明の実施例に係る緩衝材の製造方法により当該緩衝材を転削している状態を示す説明斜視図である。
【
図8】本発明の実施例に係る緩衝材の製造方法に用いる(a)転削手段と載置用治具及び載置台の関係を示す説明断面図、(b)合成樹脂発泡部材の転削処理状態を示す説明断面図である。
【
図9】本発明の実施例1に係る緩衝材の変形状態であり、(a)傾斜面相互を当接した状態、(b)裏面相互を当接した状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る緩衝材を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る緩衝材の変形状態であり、(a)は前端側及び後端側の細溝部を基準として約180°折曲した状態、(b)は(a)の状態からヒンジ部を基準として折曲し傾斜面相互を当接した状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る緩衝材で保護対象物の二箇所の角部及びこれらの間の縁部を被覆保護した状態を示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施例2に係る緩衝材で保護対象物の縁部を保護した状態を示す斜視図である。
【
図14】本発明の他の実施例に係る緩衝材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例に係る緩衝材及びその製造方法について、以下に示す。尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本考案の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変形例、設計変更等を含む。
【実施例1】
【0030】
図3(b)に示す本考案の実施例1に係る緩衝材1は、
図3(a)に示すように長さ約400mm、幅約210mm、高さ約25mm程度の直方体で発泡率60倍程度となる発泡ポリエチレン製の合成樹脂発泡部材10を加工形成してなるものである。
【0031】
本実施例における前記被転削面11は、上面に開口して対向する一対の傾斜面110と、当該一対の傾斜面110の間に、当該一対の傾斜面110の下端から下方へ連続する溝部形成面111とを有する。傾斜面110は上面に対し俯角40°〜45°程度としてある。本実施例における被転削面11における上面の開口幅11aは約55mm程度である。
【0032】
溝部形成面111は内底面111a及び該内底面111aの左右に連続する側面111bを形成する。溝部形成面111が前後方向に連続して形成されることによって、その左右に緩衝ブロック12が形成される。本実施例において、前記内底面111aの幅は約7mm程度である。側面111bはその上部が若干外方へ開いている。本実施例において、内底面111aを基準とする側面高さは約5mm程度である。前記内底面111aと裏面15との間がヒンジ部14となる。
【0033】
本実施例に係る緩衝材1は、上記被転削面11を以下に示す方法によって形成して製造される。尚、本製造方法においては、一般的な木工機の構成の一部を利用して構成した転削装置3を用いることにより行っている。木工機は通常金属製の切断刃を有しているところ、本緩衝材1の転削装置3は金属製の切断刃を備えず、これに代えて後記に詳述する木製の転削手段31を備えた構成である。
【0034】
緩衝材1の転削装置3は、
図4、
図6及び
図7に示すように、動力源Mの駆動軸32に連結されて回転可能となる木製の転削手段31と、開口部30aを有する載置台30と、該載置台30の前記開口部30aに取着される載置用治具2と、当該転削手段31の動作のON/OFFを切り替えるスイッチ(図示せず。)を有する。
ここで前記開口部30aは縁部に段部30bを有する。該段部30bは段部底面30cと段部内側面30dを有する。
【0035】
前記載置用治具2は、
図4(a)に示すように、板状体を有し、前記載置台30から上方に突出した転削手段31を上方へ逃すための逃し穴部20を備えるものである。該逃し穴部20は、溝部形成面転削部313の外形に概ね沿う平面視六角形状輪郭として形成したものである。
【0036】
当該載置用治具2は、
図4(b)から
図8に示すように、その逃し穴部20から前記木製の転削手段31の上部を突出させる状態で、前記段部30bにおける段部底面30cと内部内側面30dに当接した状態で当該開口部30aに嵌合し、当該載置台30と略同一水平面として配置固定される。
【0037】
上記構成によって、載置台30と略同一水平面にある前記逃し穴部20から当該転削手段31の上部が上方へ突出し、載置台30より下方に当該転削手段31の回転軸となる前記駆動源Mの駆動軸32が位置することとなる。
【0038】
木製の転削手段31は、
図5及び
図8に示すように、中央部に形成される軸穴314と、溝部形成面転削部313と、傾斜面転削部310を備える。前記溝部形成面転削部313は、前記内底面111aを転削する内底面転削部311と前記側面111bを転削する側面転削部312を有する。当該溝部形成面転削部313は、溝部形成面111を形成することで左右に緩衝ブロック12を分離形成するものである。
また、傾斜面転削部310は左右の緩衝ブロック12に対向する一対の傾斜面110を形成するためのものである。
前記溝部形成面転削部313及び傾斜面転削部310は、その表面に粒状の研磨剤を接着してある。
本実施例において、転削は研磨剤のみによってなされるものではなく、転削部31の表面の木材部分の摺接によっても行われる。
【0039】
上記木製の転削手段31及びこれに連結される動力源Mは、転削装置3の下部に設けられる昇降用ハンドルと、図示されない動力伝達機構を介して連動する構成としてある。昇降用ハンドルを正転若しくは反転させることで、木製の転削手段31及び動力源Mは、上下いずれかの方向に移動する。
【0040】
本実施例に係る製造工程においては、
図6から
図8に示すように、転削時に合成樹脂発泡部材10を案内するためのガイド手段4を載置台30上に有する。ガイド手段4は、ガイド部40と、該ガイド部40の両端の夫々を載置台30に固定するクランプ部41とからなる。
【0041】
また上記製造方法に係る発明の実施例では、同
図6から
図8に示すように、合成樹脂発泡部材10を前方へ押圧する手段として押圧手段5を備える。押圧手段5は板状の押圧板50の上面に把手部51を設けた構成である。本実施例においては、押圧板50の前後長さ寸法を合成樹脂発泡部材10の前後長さ寸法よりも大きく形成してある。また押圧板50の幅寸法は、転削面11の幅寸法より大きく形成してある。
【0042】
昇降用ハンドルの操作によって転削手段31の位置が調節された状態で、且つ、ガイド手段4を有する載置台30に前記載置用治具2を水平配置した状態で、前記スイッチをONとし、転削手段31を回転させる。直方体の前記発泡ポリエチレン製の合成樹脂発泡部材10を、載置台30上で前記押圧手段5を上方から当接し、前記木製の転削手段31に向けて、合成樹脂発泡部材10の側面を前記ガイド手段4のガイド部40に摺動させながら、載置台30上を移動させる。
【0043】
ここで、押圧板50の前後長さ寸法を合成樹脂発泡部材10の前後長さ寸法よりも大きく形成してあることからガイド部40への摺動を確実に保持し、合成樹脂発泡部材10の移動を安定させることができる。また、圧板50の幅寸法は、転削面11の幅寸法より大きく形成してあることから、形成されつつある転削面11が浮き上がることがなく、合成樹脂発泡部材10の移動を更に安定させることができる。
【0044】
前記転削手段31における溝部形成面転削部313及び傾斜面転削部310は、合成樹脂発泡部材10と接触することで、当該合成樹脂発泡部材10を転削する。この際に生ずる摩擦熱によって、被転削面11の表面の一部が微細なレベルで溶融し、より当該被転削面11が滑らかに仕上がると考えられる。
【0045】
このようにして得られる本実施例に係る緩衝材1は、被転削面11の内底面111aとこれに連続する側面111bが転削によって滑らかに連続し、当該転削面11と裏面15とによってヒンジ部14が形成されるため、非常に簡単な形成方法であるにもかかわらず、良好な外観体裁が得られ、また、例えば
図9(a)から(b)に至るように、左右の傾斜面110相互の当接位置から裏面15側の当接位置までとなる約270°程度の折曲を前提とした繰り返し折曲について耐久性を発揮できる。
【0046】
当該転削工程によって、載置された合成樹脂発泡部材10の底面側に前記被転削部11が形成される。製造段階では製品を反転させた状態となるため、載置台30上での載置時における底面は、緩衝材1の上面となる。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2に係る緩衝材1は、上記実施例1に係る緩衝材1について更に追加処理を加えたものである。このため、共通する構成については、上記実施例1に示した製造方法及び、緩衝材1の同一構成部分についての説明は省略する。
【0048】
本発明の実施例2に係る緩衝材1は、
図10に示すように、上記実施例1の構成に加えて、当該緩衝材1の上面(即ち、被転削面11)側に開口する細溝部13を有する。該細溝部13は、前端側及び後端側の二箇所に幅方向に連続して設けてある。
本実施例における細溝部13は、幅2mm程度、最大深さ22mm程度としてある。
【0049】
本実施例2に係る緩衝材1の製造方法は、実施例1に係る緩衝材1の転削工程を有する製造方法が終了した後に細溝部形成工程を追加したものである。
細溝部形成工程においては、前記被転削部11の形成後、当該合成樹脂発泡部材10の上下を反転させ、その上面に対してニクロム線による熱線を下降させて、細溝部13を溶融形成する。幅方向全体に亘って前記細溝部13を形成するため、左右の緩衝ブロック12の双方に亘って前後に細溝部13を有する構成となる。
【0050】
前記細溝部13を有することにより、幅方向を折目とする折曲が可能となる。例えば
図11(a)(b)に順次示す変形、即ち前後の細溝部13を基準に180°折曲し(a)、その後傾斜面相互を当接させるようにヒンジ部を折曲することにより
図12のように保護対象物Sの二箇所の角部とその間の縁部全体を被覆保護することができる。勿論、細溝部13を利用せずに
図13に示すように長手方向に連続する縁部を広範囲に亘って保持することもできる。
これらに示すように、本発明に係る緩衝材は、非特許文献1に開示した緩衝材9と同等の機能を有する上に、非常に安価且つ簡単に形成できる。
【0051】
上記したように実施例1、2においてはいずれもその製造過程において、木製の転削手段31に研磨剤を接着した構成としているが、本発明においては当該構成を含む製造方法に限定されない。例えば、木製の転削手段31に研磨剤を接着することなく、木を表面素材とした転削手段31とすることもできる。
【0052】
また、本実施例において載置用治具2は、突出する転削手段に沿う位置まで載置台と略水平となる面を形成することで、転削時における緩衝材1の載置及びスライドを安定させることができる。
【0053】
また上記実施例2においては、細溝部13は幅2mm程度として前端側及び後端側の計二箇所に設けたものとしているが、前記細溝部13の位置・本数・幅等は、保護対象物Sの大きさ等によって変更することができる。例えば
図14に示すように、細溝部13の形成本数を増加させることによって、保護対象物Sや梱包容器との関係で生じるサイズの制約に応じて適宜任意の細溝部13を基準として折曲することができる。
【0054】
尚、上記実施例1、2では、緩衝材1の各部、転削装置3の各部、例えば転削面11、細溝部13、転削手段31等において具体的な寸法を示して説明しているが、本発明は特にこれらの形状、大きさ、各部寸法の相対的な比率を限定するものではなく、用途に応じた形状、大きさ、寸法比率を採用することができる。
【0055】
また本発明において、合成樹脂発泡部材10の形状である「直方体状」の用語は厳密な直方体を意図するものではなく、周縁その他一部に傾斜面を有するものや、一部に切込や溝を形成する程度の変形を有するもの、板状のもの等も含むものである。
【0056】
また本発明においては、実施例2において転削工程の後に細溝部形成工程を行うものとしているが、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、例えば転削工程の前工程として細溝部形成工程を行うこともできる。
【0057】
また上記製造方法に係る発明の実施例においては、ガイド手段4を合成樹脂発泡部材10の一側方に当接すべくガイド部40を一本のみを設けている。しかしながら、本発明では当該実施例に限定されるものではなく、当該ガイド部40を合成樹脂発泡部材10の左右両側に用いることもできる。また、本実施例においては、ガイド手段4はガイド部40をクランプ41によって固定しており、合成樹脂発泡部材10の幅寸法等に応じて最適な位置に調節することが可能である。
【0058】
また上記実施例に係る製造方法によれば、押圧手段5を作業者の手作業によって移動させるものとしているが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、例えば、制御機器(油圧機器、空圧機器、電気機器を含む。)を用いたプッシャー等で押圧することもできる。
【0059】
また本発明においては、動力源Mであるモータの駆動軸から直接転削手段31を回動させる構成を示しているが、本発明に係る製造方法は、上記事項に限定されるものではなく、駆動力を伝達する手段を介在させるものでもよく、また減速手段等を介在させるものであってもよい。
【0060】
また本発明において前記合成樹脂発泡部材10は、発泡ポリエチレンからなるものとしているが、本発明は発泡ポリプロピレン等、他の発泡合成樹脂からなるものとすることもできる。しかしながら、ヒンジ部及び細溝部における繰り返し折曲の耐久性の観点からすれば、発泡ポリエチレンが最も好ましい。
【0061】
また上記実施例に示した製造方法においては、一般的な木工機の構成の一部を利用した転削装置3を用いることにより行うものとしているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、載置用治具2を載置台に一体化した構成の転削装置3を用いることにより行う製造方法とすることもできる。
【符号の説明】
【0062】
M 動力源(モータ)
S 保護対象物
1 緩衝材
10 合成樹脂発泡部材
11 転削面
110 傾斜面
111 溝部形成面
111a 内底面
111b 側面
12 緩衝ブロック
13 細溝部
14 ヒンジ部
15 裏面
2 載置用治具
20 逃し穴部
3 転削装置
30 載置台
30a 開口部
30b 段部
30c 段部底面
30d 段部内側面
31 転削手段
310 傾斜面転削部
311 内底面転削部
312 側面転削部
313 溝部形成面転削部
314 軸穴
32 駆動軸
4 ガイド手段
40 ガイド部
41 クランプ部
5 押圧手段
50 押圧板
51 把手部
9 緩衝材(非特許文献1)
90 緩衝ブロック
91 不織布シート
92 ホットメルト接着剤
93 細溝部