(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の鮎釣り用仕掛け具では、ハリス連結部の端部より先の抜止め部が弾性変形するに留まるため、針部の先端部と抜止め部との隙間を大きく拡げることが難しい。このため、針部がおとり鮎の腹部からちぎれ落ちにくいように、針部をおとり鮎の腹部にしっかりと深く引っ掛けようとしたときに、抜止め部が邪魔になりやすい。針部をおとり鮎へ引っ掛けるのに手間取ってしまうと、おとり鮎を素早く交換できなくなるため、おとり鮎を弱らせてしまう虞がある。
【0008】
また、特許文献1の鮎釣り用仕掛け具は、それ自身が小さなものであるので、抜止め部をハリス連結部の端部に取り付けるために、非常に細かな作業が要求される。よって、かかる鮎釣り用仕掛け具を製造するのは難しく、製品化しづらい。
【0009】
そこで、本発明は、おとり鮎から抜け落ちにくい上に、おとり鮎に引っ掛けやすいサカサ鈎を提供することを目的とする。また、本発明は、おとり鮎から抜け落ちにくい上に、製造がしやすいサカサ鈎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係るサカサ鈎は、弾性を有する線材によって鈎本体部とハリス止め部と抜け止め部とが一体に形成される。前記鈎本体部は、湾曲する形状を有し、その先端部が尖る。前記ハリス止め部は、前記鈎本体部の基端部から第1の方向に延びる第1の部位と、前記第1の部位の終端から折り返され前記第1の方向と相対する第2の方向に延びる第2の部位とを含み、掛け鈎から延びるハリスを前記第1の部位と前記第2の部位とで挟持して固定する。前記抜け止め部は、前記第2の部位の終端から前記鈎本体部の先端部に向って延びる。前記抜け止め部が、当該抜け止め部の先端部が前記鈎本体部の先端部から離れる方向へ押されたとき、前記抜け止め部とともに前記第2の部位が弾性変形することが可能である。
【0011】
上記の構成によれば、抜け止め部が押されたときに、抜け止め部を弾性変形させることができるのみならず、抜け止め部とともに第2の部位を弾性変形させることができるため、抜け止め部のみが弾性変形する場合に比べて、抜け止め部の先端部を鈎本体部の先端部から大きく遠ざけることができる。これにより、鈎本体部の先端部と抜け止め部の先端部との間に大きな隙間をあけることができる。
【0012】
また、上記の構成によれば、弾性変形するときの支点部分が抜け止め部でなく第2の部位に設けられることとなるため、支点部分から力点部分(抜け止め部の押される部分)までの距離を長く取ることが可能となる。これにより、抜け止め部の先端部を鈎本体部の先端部から遠ざける際に必要となる抜け止め部を押さえる力を小さくすることができる。
【0013】
このように、上記の構成によれば、小さな力で鈎本体部の先端部と抜け止め部の先端部との間に大きな隙間をあけることが可能となる。これにより、抜け止め部を設けておとり鮎から鈎本体部が抜け落ちにくくなるように構成した場合であっても、鈎本体部をおとり鮎に引っ掛けるときに抜け止め部が邪魔になりにくく、鈎本体部をおとり鮎に引っ掛けやすいサカサ鈎を実現できる。
【0014】
さらに、上記の構成によれば、鈎本体部、ハリス止め部および抜け止め部の三者が一本の線材により一体に形成されるので、抜け止め部を取り付ける作業が不要であり、サカサ鈎の製造が容易となる。
【0015】
本態様に係るサカサ鈎において、前記鈎本体部に、鼻カンへと延びるハリスにおける前記鈎本体部との固定部分が前記鈎本体部の先端部側へ移動するのを止める突起部が形成される構成が採られ得る。
【0016】
上記の構成によれば、掛け鈎に野鮎が掛かってサカサ鈎が引っ張られたときに、鼻カンへと延びるハリスが鈎本体部の先端部側へと移動して先端部から抜けてしまうのを防止できる。
【0017】
本態様に係るサカサ鈎において、前記鈎本体部には、湾曲する部位よりも前記ハリス止め部側に、前記抜け止め部と反対側に張り出し、鼻カンへと延びるハリスが固定される固定部が設けられ得る。
【0018】
上記の構成によれば、掛け鈎から延びるハリスがハリス止め部に装着されるときに邪魔になりにくいように、鼻カンへと延びるハリスをサカサ鈎に固定することができる。
【0019】
上記の構成とされた場合、さらに、前記固定部は、前記線材を一回りさせてなるリング状に形成され得る。
【0020】
このような構成とされると、線材を折り曲げてサカサ鈎の形状とする際、線材を一回りさせることにより、固定部を容易に形成することができる。しかも、固定部のリング状部分に固定されたハリスは、鈎本体部に固定される場合と違って、鈎本体部の先端部側へ移動する虞がない。
【0021】
本態様に係るサカサ鈎において、前記第1の部位または前記第2の部位に、これらの部位の間に前記掛け鈎から延びるハリスを通すための隙間を形成する屈曲部が設けられる構成が採られ得る。
【0022】
上記の構成によれば、屈曲部と抜け止め部との間の部位を利用することで、鼻カンへと延びるハリスを、サカサ鈎からの抜けを懸念することなく、サカサ鈎に固定することが可能となる。
【0023】
本発明の第2の態様に係るサカサ鈎は、弾性を有する線材によって鈎本体部と抜け止め部とが一体に形成され、ハリス止め部がこれら鈎本体部および抜け止め部と別体に形成される。前記鈎本体部は、湾曲する形状を有し、その先端部が尖る。前記抜け止め部は、前記鈎本体部の基端部から折り返されるようにして形成され、前記鈎本体部の先端部に向って延びる。前記ハリス止め部は、掛け鈎から延びるハリスを挟んで固定する挟持部を有し、前記抜け止め部への折り返し部分を避けた前記鈎本体部の基端部側に接合剤によって固定される。
【0024】
上記の構成によれば、接合剤に邪魔されずに、抜け止め部を、折り返し部分を支点として弾性変形させることができ、鈎本体部の先端部と抜け止め部の先端部との間に大きな隙間をあけることができる。これにより、抜け止め部を設けておとり鮎から鈎本体部が抜け落ちにくくなるように構成した場合であっても、鈎本体部をおとり鮎に引っ掛けるときに抜け止め部が邪魔になりにくく、鈎本体部をおとり鮎に引っ掛けやすいサカサ鈎を実現できる。
【0025】
さらに、上記の構成によれば、抜け止め部が、鈎本体部の基端部から鈎本体部と一体に形成されるので、抜け止め部を取り付ける作業が不要であり、サカサ鈎の製造が容易となる。また、鈎本体部には、抜け止め部の取り付しろとなる部位を形成しなくて済むので、サカサ鈎が無駄に大きくならない。
【0026】
第1の態様または第2の態様に係るサカサ鈎において、前記抜け止め部の先端部に、弧を描くように折れ曲がる折曲部と、前記鈎本体部の先端部から離れる方向へ前記折曲部から延びる直線状部とが形成される構成が採られ得る。
【0027】
上記の構成によれば、鈎本体部をおとり鮎の腹部に刺し通す際に、腹部が抜け止め部の先端部に当たっても、折曲部によって腹部を滑らすことができるので、鈎本体部を円滑に腹部に刺し通すことができる。
【0028】
さらに、上記の構成によれば、鈎本体部がおとり鮎の腹部から抜けようとしたとき、直線状部がおとり鮎の腹部に線接触することで、直線状部で腹部をしっかりと押さえることができる。これにより、サカサ鈎が、おとり鮎から、一層、抜け落ちにくくなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、おとり鮎から抜け落ちにくい上に、おとり鮎に引っ掛けやすいサカサ鈎を提供することができる。さらに、本発明によれば、おとり鮎から抜け落ちにくい上に、製造がしやすいサカサ鈎を提供することができる。
【0030】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の態様に係るサカサ鈎の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、サカサ鈎1Aの構成を示す図である。
図1(a)は、サカサ鈎1Aの側面図である。
図1(b)は、抜け止め部30が押されることにより、抜け止め部30と第2の部位22が弾性変形した状態のサカサ鈎1Aの側面図である。
図1(c)は、
図1(b)のA−A´端面図である。なお、
図1(a)には、便宜上、鈎本体部10とハリス止め部20との境界およびハリス止め部20と抜け止め部30との境界が一点鎖線にて示されているとともに、ハリス止め部20と、ハリス止め部20および抜け止め部30に、それぞれ、異なる模様が付されている。
【0034】
サカサ鈎1Aは、鈎本体部10と、ハリス止め部20と、抜け止め部30とを含む。鈎本体部10、ハリス止め部20および抜け止め部30の三者は、弾性を有する断面円形の金属製の線材、たとえば、番手#26〜#28のピアノ線(炭素鋼の線材)によって一体に形成されている。
【0035】
鈎本体部10は、ほぼU字に湾曲する形状を有し、その先端部10a(以下、「鈎先10a」と称する)が尖っている。鈎本体部10には、円弧状部10bから基端部10cへと繋がる直線状部10dに突起部11が形成されている。突起部11は、たとえば、電気溶接により形成することができる。なお、突起部11は、直線状部10dから如何なる向きに突出していてもよい。
【0036】
ハリス止め部20は、鈎本体部10の基端部10cから第1の方向、ここでは、直線状部10dの延長線上となる方向に延びる第1の部位21と、第1の部位21の終端から折り返され第1の方向と相対する第2の方向に延びる第2の部位22とを含む。第1の部位21と第2の部位22は、互いに密着している。なお、後述する掛け鈎側ハリスを抜け落ちないように挟持できれば、第1の部位21と第2の部位22は、必ずしも互いに密着していなくてもよく、互いの間に、掛け鈎側ハリスの径よりも小さな隙間が形成されていてもよい。
【0037】
抜け止め部30は、第2の部位22の終端から鈎先10aに向って延びている。抜け止め部30の先端部30aは、鈎先10aの近傍に位置する。先端部30aは、鈎先10aに接触していてもよいし、
図1(a)に示された位置よりも鈎先10aから遠ざかっていてもよい。しかしながら、先端部30aの位置は、少なくとも、第2の部位22の終端から鈎先10aまでの距離の半分の位置よりも鈎先10aに接近させることが望ましい。
【0038】
抜け止め部30の先端部30aには、孤を描くように折れ曲がる折曲部31と、当該折曲部31に続く直線状部32とが一体に形成されている。
図1(a)に示すように、直線状部32は、鈎先10aから離れる方向へ、折曲部31から真っ直ぐに延び出している。なお、直線状部32は、直線状であれば、多少前後に反ったりしていてもよい。
【0039】
抜け止め部30の基端部30bは、弧を描くように折り曲げられている。これによって、抜け止め部30の基端部30bと鈎本体部10の基端部10cとの間が徐々に狭くなった後に第1の部位21と第2の部位22との間の部分に繋がるようにされている。
【0040】
抜け止め部30と第2の部位22は、一つの線材で一体に形成されており、弾性係数が同じである。よって、
図1(b)に示すように、抜け止め部30の先端部30aが鈎先10aから離れる方向へ抜け止め部30が押されたとき、抜け止め部30を弾性変形させることができるのみならず、抜け止め部30とともに第2の部位22を弾性変形させることができる。
図1(c)に示すように、第1の部位21と第2の部位22は、断面が円形であり、第2の部位22が第1の部位21に押し付けられたときに、第2の部位22は、第1の部位21に対して容易に横にずれて第1の部位21に重なることができる。よって、第2の部位22は、第1の部位21に妨げられずに弾性変形し得る。
【0041】
なお、第2の部位22が弾性変形したときに第2の部位22が第1の部位21に一層重なりやすいよう、サカサ鈎1Aを正面(
図1(c)の方向)から見たときに、第2の部位22の中心が、第1の部位21の中心に対して僅かに左右方向にずらされていてもよい。ただし、この中心のずれは、第1の部位21と第2の部位22とによる掛け鈎側ハリスの固定の妨げにならない程度とされることが望ましい。
【0042】
図2は、サカサ鈎1Aが用いられる、鮎の友釣り用の仕掛け100の一例を示す図である。
図2は、仕掛け100がおとり鮎に固定された状態を示す。
【0043】
仕掛け100は、サカサ鈎1Aの他、鼻カン2および掛け鈎3を含む。鼻カン2から延びる鼻カン側ハリス4と、掛け鈎3から延びる掛け鈎側ハリス5がサカサ鈎1Aに固定される。鼻カン2がおとり鮎の鼻に通され、サカサ鈎1Aがおとり鮎の尻びれ付近の腹部に引っ掛けられる。これにより、おとり鮎が仕掛け100に繋がれた状態となる。掛け鈎3として、たとえば、
図2に示すような、イカリタイプの掛け鈎が用いられ得る。縄張りに進入したおとり鮎を追い払おうとする野鮎が、掛け鈎3に引っ掛かり釣り上げられる。
【0044】
図3は、サカサ鈎1Aへの鼻カン側ハリス4と掛け鈎側ハリス5の固定の仕方について説明するための図である。
【0045】
鼻カン側ハリス4は、サカサ鈎1Aの鈎本体部10に固定される。具体的には、鼻カン側ハリス4は、鈎本体部10の直線状部10dにおける、突起部11よりも基端部10c側に固定される。たとえば、鼻カン側ハリス4は、団子結び、投げ縄結びなどにより結ばれることで、鈎本体部10に固定され得る。鼻カン側ハリス4の鈎本体部10への固定部分(結び目部分)4aが突起部11で止められることによって、固定部分4aの鈎先10a側への移動が防止される。これにより、掛け鈎3に野鮎が掛かってサカサ鈎1Aが引っ張られたときに、鼻カン側ハリス4が鈎先10a側へと移動して鈎先10aから抜けてしまうのを防止できる。
【0046】
掛け鈎側ハリス5は、サカサ鈎1Aのハリス止め部20に固定される。掛け鈎側ハリス5は、鈎本体部10と抜け止め部30で形成されるループ内に通され、抜け止め部30の基端部30bと鈎本体部10の基端部10cとの間を通って、第1の部位21と第2の部位22の間に挿入され、ハリス止め部20の後端部の位置まで移動される。サカサ鈎1Aは、抜け止め部30の基端部30bと鈎本体部10の基端部10cが徐々に狭まる構成であるため、掛け鈎側ハリス5を第1の部位21と第2の部位22の間に挿入しやすい。
【0047】
挿入された掛け鈎側ハリス5の厚みによって、第1の部位21と第2の部位22との間が拡げられる。これにより、第1の部位21と第2の部位22には互いが密着する方向に弾性力が働き、この弾性力によって、掛け鈎側ハリス5が、第1の部位21と第2の部位22の間に挟持され固定される。掛け鈎側ハリス5には結び目5aが形成され、この結び目5aが第1の部位21と第2の部位22とに引っ掛かることで、ハリス止め部20からの掛け鈎側ハリス5の抜けが防止される。
【0048】
図4は、サカサ鈎1Aがおとり鮎の腹部に引っ掛けられる様子を模式的に示す図である。
【0049】
サカサ鈎1Aは、おとり鮎の尻びれ付近の腹部に引っ掛けられる。まず、
図4(a)に示すように、ユーザは、指により、抜け止め部30の先端部30aが鈎先10aから離れる方向へ抜け止め部30を押す。
図1(b)で説明した通り、抜け止め部30およびハリス止め部20の第2の部位22が弾性変形し、鈎先10aと抜け止め部30の先端部30aとの間の隙間が拡がる。
【0050】
このように、抜け止め部30とともに第2の部位22を弾性変形させることができるので、抜け止め部30のみが弾性変形する場合に比べて、抜け止め部30の先端部30aが鈎先10aから遠ざかりやすくなる。これにより、鈎先10aと抜け止め部30の先端部30aとの間に大きな隙間があきやすくなる。
【0051】
また、弾性変形するときの支点部分が抜け止め部30でなく第2の部位22に設けられることとなるため、支点部分から力点部分(抜け止め部30の押される部分)までの距離を長く取ることが可能となる。これにより、抜け止め部30の先端部30aを鈎先10aから遠ざけるために抜け止め部30を押さえ付けておく力を小さくすることができる。
【0052】
次に、
図4(b)、(c)に示すように、ユーザは、鈎本体部10をおとり鮎の腹部に貫通させる。この際、腹部が鈎先10aと抜け止め部30の先端部30aとの隙間を通ることで、抜け止め部30が邪魔になりにくい。また、
図4(b)に示すように、鈎本体部10を腹部に貫通させる途中で、抜け止め部30の先端部30aが腹部に当たるようなことが生じても、弧を描く折曲部31によって腹部を滑らすことができるので、鈎本体部10を円滑に腹部に貫通させることができる。
【0053】
図4(c)に示すように、ユーザは、鈎本体部10をおとり鮎の腹部に貫通させ終えると、指を抜け止め部30から離す。抜け止め部30が、弾性力によって元の位置に復帰する。
【0054】
抜け止め部30が元の位置に復帰した状態において、鈎本体部10がおとり鮎の腹部から抜ける方向にサカサ鈎1Aが動いた場合、
図4(d)に示すように、抜け止め部30がおとり鮎の腹部に当たって移動の妨げとなる。これにより、サカサ鈎1Aがおとり鮎の腹部から抜け落ちることが防止される。特に、抜け止め部30には、折曲部31に続く直線状部32が形成されており、直線状部32がおとり鮎の腹部に線接触することで、直線状部32で腹部をしっかりと押さえることができる。これにより、サカサ鈎1Aが、おとり鮎から、一層、抜け落ちにくくなる。
【0055】
<第1実施形態の効果>
本実施の形態によれば、小さな力で鈎先10aと抜け止め部30の先端部30aとの間に大きな隙間をあけることが可能となる。これにより、抜け止め部30を設けておとり鮎から鈎本体部10が抜け落ちにくくなるように構成した場合であっても、鈎本体部10をおとり鮎に引っ掛けるときに抜け止め部30が邪魔になりにくく、鈎本体部10をおとり鮎に引っ掛けやすいサカサ鈎1Aを実現できる。
【0056】
さらに、本実施の形態によれば、鈎本体部10、ハリス止め部20および抜け止め部30の三者が一本の線材により一体に形成されるので、抜け止め部30を取り付ける作業が不要であり、サカサ鈎1Aの製造が容易となる。
【0057】
<第1実施形態の変更例>
本発明の第1の態様に係るサカサ鈎は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の第1の態様に係るサカサ鈎の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0058】
たとえば、
図5(a)に示すように、サカサ鈎1Aは、抜け止め部30の先端部30aに折曲部31と直線状部32とが形成されない構成とされてもよい。また、
図5(b)に示すように、サカサ鈎1Aは、ハリス止め部20の第2の部位22の途中に、屈曲部22aが形成される構成が採られてもよい。屈曲部22aは、第1の部位21との間に隙間が生じるように、略くの字状を有する。また、第1の部位21に、屈曲部22aに対向する屈曲部が形成されてもよい。さらに、第1の部位21のみに屈曲部が形成されてもよい。
【0059】
さらに、サカサ鈎1Aは、鈎本体部10に突起部11が形成されない構成とされてもよい。特に、上記のように、ハリス止め部20に屈曲部22aが形成される場合には、
図11(a)に示すように、鈎本体部10から突起部11がなくすることができる。この場合は、屈曲部22aと抜け止め部30との間の部位に、鼻カン側ハリス4が投げ縄結びにより結ばれて固定される。鼻カン側ハリス4は、抜け止め部30および屈曲部22aに止められるため、抜け止め部30側からも屈曲部22a側からも抜けることが防止される。掛け鈎側ハリス5は、屈曲部22aによりできた隙間から第1の部位21と第2の部位22の間に挿入され、ハリス止め部20の後端部の位置まで移動される。鼻カン側ハリス4は、投げ縄結びによりサカサ鈎1Aに固定されているので、
図11(b)のように、抜け止め部30の先端部30aが鈎先10aから離れる方向へ抜け止め部30が押され、第2の部位22が弾性変形すると、それに合わせて鼻カン側ハリス4の固定部分(結び目部分)4aが拡がる。よって、第2の部位22の弾性変形が妨げられない。なお、鮎が掛け鈎3に掛かったときには、鼻カン側ハリス4とサカサ鈎1Aとは互いに引っ張られる状態となるため、鼻カン側ハリス4の固定部分4aが締まり、鼻カン側ハリス4がサカサ鈎1Aから抜けるようなことはない。
【0060】
このように、ハリス止め部20に屈曲部22aが形成される場合には、屈曲部22aと抜け止め部30との間の部位を利用することで、鼻カン側ハリス4を、サカサ鈎1Aからの抜けを懸念することなく、サカサ鈎1Aに固定することが可能となる。
【0061】
さらに、
図12(a)に示すように、鈎本体部10に突起部11に替えて、鼻カン側ハリス4が結ばれて固定される固定部12を設けることができる。固定部12は、突起部11と同じように、湾曲する円弧状部10bよりもハリス止め部20側である直線状部10dに設けられ、円形のリング状を有し、抜け止め部30とは反対側に張り出す。
【0062】
固定部12のリング状部分に固定された鼻カン側ハリス4は、
図3のように鈎本体部10の直線状部10dに固定される場合と違って、鈎先10a側に動く虞がない。また、鼻カン側ハリス4が直線状部10dに固定される場合は、その固定部分4aが、掛け鈎側ハリス5を鈎本体部10と抜け止め部30で形成されるループ内から第1の部位21と第2の部位22の間に挿入する際に邪魔になる虞がある。しかしながら、このように、抜け止め部30とは反対側に張り出す固定部12に鼻カン側ハリス4が固定される場合は、その固定部分4aも固定部12自身も、ハリス止め部20に装着されるときの掛け鈎側ハリス5の邪魔になりにくい。
【0063】
固定部12は、金属製の線材を折り曲げてサカサ鈎1Aの形状とする際、線材を小さく一回りさせることにより、容易に形成することができる。
【0064】
なお、固定部12の変形例として、たとえば、
図12(b)のような、閉じていないリング状の固定部12Aや、
図12(c)のような、略V字状の固定部12Bを挙げることができる。
【0065】
この他、本発明の第1の態様に係るサカサ鈎の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0066】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2の態様に係るサカサ鈎の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0067】
図6は、サカサ鈎1Bの構成を示す図である。
図6(a)は、ハリス止め部60が鈎本体部40に固定される前のサカサ鈎1Bの側面図であり、
図6(b)は、ハリス止め部60が鈎本体部40に固定され、完成した状態のサカサ鈎1Bの側面図である。
【0068】
サカサ鈎1Bは、鈎本体部40と、抜け止め部50と、ハリス止め部60とを含む。鈎本体部40および抜け止め部50は、弾性を有する断面円形の金属製の線材、たとえば、番手#26〜#28のピアノ線(炭素鋼の線材)によって一体に形成されている。ハリス止め部60は、弾性を有する断面円形の金属製の線材、たとえば、ステンレスの線材によって鈎本体部40および抜け止め部50とは別体に形成されている。
【0069】
鈎本体部40は、ほぼU字に湾曲する形状を有し、円孤の頂点から先端までの寸法L1よりも円弧の頂点から基端までの寸法L2が長くなるように形成されている。鈎本体部40の先端部40a(以下、「鈎先40a」と称する)は尖っている。
【0070】
抜け止め部50は、鈎本体部40の基端部40bから折り返されるようにして形成され、鈎先40aに向って延びている。抜け止め部50の先端部50aは、鈎先40aの近傍に位置する。先端部50aは、鈎先40aに接触していてもよいし、
図6(a)に示された位置よりも鈎先40aから遠ざかっていてもよい。しかしながら、先端部50aの位置は、少なくとも、抜け止め部50への折り返し部分Pから鈎先40aまでの距離の半分の位置よりも鈎先40aに接近させることが望ましい。
【0071】
抜け止め部50の先端部50aには、弧を描くように折れ曲がる折曲部51と、当該折曲部51に続く直線状部52とが一体に形成されている。
図6(a)に示すように、直線状部52は、鈎先40aから離れる方向へ、折曲部51から真っ直ぐに延び出している。しかしながら、直線状部52は、直線状であれば、多少前後に反ったりしていてもよい。
【0072】
ハリス止め部60は、左左右両側に屈曲部60a、60bを有する一本の線材を屈曲部60a、60b同士が対向するように2つに折り曲げ、向かい合う線材同士をほぼ密着させることにより形成される。ハリス止め部60は、2つの線材の弾性力によって掛け鈎側ハリス5を挟む挟持部61と、屈曲部60a、60bによりループ状に形成され、掛け鈎側ハリス5が通される挿入部62と、鈎本体部40に固定される固定部63とを含む。
【0073】
図6(b)に示すように、ハリス止め部60、即ち、ハリス止め部60の固定部63は、抜け止め部50への折り返し部分Pを避けた鈎本体部40の基端部40b側に接合剤70、たとえば、ハンダによって固定される。
【0074】
図7(a)は、抜け止め部50が押されて弾性変形した状態のサカサ鈎1Bの側面図である。
図7(b)は、抜け止め部50が押されて弾性変形した状態の、比較例となるサカサ鈎1Cの側面図である。
【0075】
図7(a)に示すように、抜け止め部50の先端部50aが鈎先40aから離れる方向へ抜け止め部50が押されたとき、抜け止め部50が弾性変形して鈎先40aと抜け止め部50の先端部50aとの隙間が拡がる。ここで、ハリス止め部60の固定部63は、折り返し部分Pを避けて鈎本体部40の基端部40b側に固定されているので、折り返し部分Pが接合剤70で固められてしまうようなことがない。これにより、抜け止め部50を、折り返し部分Pを支点として弾性変形させることができるので、鈎先40aと抜け止め部50の先端部50aとの間に大きな隙間をあけることができる。
【0076】
これに対し、
図7(b)に示す、比較例となるサカサ鈎1Cのように、鈎本体部40の一番端の部分となる折り返し部分Pに、ハリス止め部60の固定部63が固定される場合が考えられ得る。外観のバランスの良さを考えた場合には、サカサ鈎1Cのような構成が採られやすい。
【0077】
しかしながら、サカサ鈎1Cのように、折り返し部分Pに、ハリス止め部60の固定部63が固定される場合、折り返し部分Pが接合剤70で固められてしまうため、接合剤70に邪魔されて、抜け止め部50を、折り返し部分Pを支点として弾性変形させることができない。これにより、抜け止め部50を弾性変形させにくくなるので、サカサ鈎1Cでは、鈎先40aと抜け止め部50の先端部50aとの間に大きな隙間をあけることが難しい。
【0078】
さて、本実施の形態のサカサ鈎1Bは、第1実施形態のサカサ鈎1Aに替えて、
図2で説明した鮎の友釣り用の仕掛け100に用いられる。
【0079】
図8は、サカサ鈎1Bへの鼻カン側ハリス4と掛け鈎側ハリス5の固定の仕方について説明するための図である。
【0080】
鼻カン側ハリス4は、サカサ鈎1Bのハリス止め部60の固定部63に固定される。たとえば、鼻カン側ハリス4は、団子結び、投げ縄結びなどにより結ばれることで、固定部63に固定され得る。
【0081】
掛け鈎側ハリス5は、サカサ鈎1Bのハリス止め部60の挟持部61に固定される。掛け鈎側ハリス5は、挿入部62に通された後に挟持部61へと挿入され、挟持部61の後端部の位置まで移動される。掛け鈎側ハリス5には結び目5aが形成され、この結び目5aが挟持部61の2つの線材に引っ掛かることで、挟持部61、即ちハリス止め部60からの掛け鈎側ハリス5の抜けが防止される。
【0082】
図9は、サカサ鈎1Bがおとり鮎の腹部に引っ掛けられる様子を模式的に示す図である。
【0083】
サカサ鈎1Bは、おとり鮎の尻びれ付近の腹部に引っ掛けられる。まず、
図9(a)に示すように、ユーザは、指により、抜け止め部50の先端部50aが鈎先40aから離れる方向へ抜け止め部50を押す。
図2(a)で説明した通り、抜け止め部50が弾性変形し、鈎先40aと抜け止め部50の先端部50aとの間の隙間が拡がる。
【0084】
次に、
図9(b)、(c)に示すように、ユーザは、鈎本体部40をおとり鮎の腹部に貫通させる。この際、腹部が鈎先40aと抜け止め部50の先端部50aとの隙間を通ることで、抜け止め部50が邪魔になりにくい。また、
図9(b)に示すように、鈎本体部40を腹部に貫通させる途中で、抜け止め部50の先端部50aが腹部に当たるようなことが生じても、弧を描く折曲部51によって腹部を滑らすことができるので、鈎本体部40を円滑に腹部に貫通させることができる。
【0085】
図9(c)に示すように、ユーザは、鈎本体部40をおとり鮎の腹部に貫通させ終えると、指を抜け止め部50から離す。抜け止め部50が、弾性力によって元の位置に復帰する。
【0086】
抜け止め部50が元の位置に復帰した状態において、鈎本体部40がおとり鮎の腹部から抜ける方向にサカサ鈎1Bが動いた場合、
図9(d)に示すように、抜け止め部50がおとり鮎の腹部に当たって移動の妨げとなる。これにより、サカサ鈎1Bがおとり鮎の腹部から抜け落ちることが防止される。特に、抜け止め部50には、折曲部51に続く直線状部52が形成されており、直線状部52がおとり鮎の腹部に線接触することで、直線状部52で腹部をしっかりと押さえることができる。これにより、サカサ鈎1Bが、おとり鮎から、一層、抜け落ちにくくなる。
【0087】
<第2実施形態の効果>
本実施の形態によれば、ハリス止め部60が、折り返し部分Pを避けて鈎本体部40の基端部40b側に固定されているので、接合剤70に邪魔されずに、抜け止め部50を、折り返し部分Pを支点として弾性変形させることができ、鈎先40aと抜け止め部50の先端部50aとの間に大きな隙間をあけることができる。これにより、抜け止め部50を設けておとり鮎から鈎本体部40が抜け落ちにくくなるように構成した場合であっても、鈎本体部40をおとり鮎に引っ掛けるときに抜け止め部50が邪魔になりにくく、鈎本体部40をおとり鮎に引っ掛けやすいサカサ鈎1Bを実現できる。
【0088】
さらに、本実施の形態によれば、抜け止め部50が、鈎本体部40の基端部40bから鈎本体部40と一体に形成されるので、抜け止め部50を取り付ける作業が不要であり、サカサ鈎1Bの製造が容易となる。また、鈎本体部40には、抜け止め部50の取り付しろとなる部位を形成しなくて済むので、サカサ鈎1Bが無駄に大きくならない。
【0089】
<第2実施形態の変更例>
本発明の第2の態様に係るサカサ鈎は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の第2の態様に係るサカサ鈎の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0090】
たとえば、
図10に示すように、サカサ鈎1Bは、抜け止め部50の先端部50aに折曲部51と直線状部52とが形成されない構成とされてもよい。
【0091】
この他、本発明の第2の態様に係るサカサ鈎の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。