特許第6441888号(P6441888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6441888自己免疫性障害の処置におけるレボセチリジン及びモンテルカストの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441888
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】自己免疫性障害の処置におけるレボセチリジン及びモンテルカストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20181210BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61K31/495
   A61K31/47
   A61K31/573
   A61K31/519
   A61K33/34
   A61K31/375
   A61K31/454
   A61K38/00
   A61K31/136
   A61K45/00
   A61P37/06
   A61P43/00 121
【請求項の数】23
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-500849(P2016-500849)
(86)(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公表番号】特表2016-512263(P2016-512263A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014021784
(87)【国際公開番号】WO2014164299
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/780,420
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513277005
【氏名又は名称】インフラマトリー・レスポンス・リサーチ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・チャンドラー・メイ
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/159821(WO,A1)
【文献】 特表2009−520711(JP,A)
【文献】 特表2001−511134(JP,A)
【文献】 特表2009−525952(JP,A)
【文献】 特表2004−536097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0011395(US,A1)
【文献】 特表2012−519207(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102895661(CN,A)
【文献】 Annals of Saudi Medicine,2010年,Vol.30,No.6,pp.478-481
【文献】 International Immunopharmacology,2004年,Vol.4,pp.349-353
【文献】 Allergy,2010年,Vol.65,No.Suppl.92,pp.242-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 33/34
A61K 38/00
A61K 45/00
A61P 37/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者において、特発性血小板減少性紫斑病又は自己免疫性好中球減少症である自己免疫性障害を処置するための、有効量のレボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせを含む、組成物。
【請求項2】
それを必要とする患者において、特発性血小板減少性紫斑病又は自己免疫性好中球減少症である自己免疫性障害の症状を処置するための、有効量のレボセチリジン及びモンテルカストの組合せを含む、組成物。
【請求項3】
前記組合せを、症状の発生時に投与するための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組合せを、逐次的様式で投与するための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組合せを、実質的に同時の様式で投与するための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
更なる活性薬剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記更なる活性薬剤がステロイドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記更なる活性薬剤がグルココルチコイドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記グルココルチコイドがプレドニゾンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記グルココルチコイドがメチルプレドニゾロンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記更なる活性薬剤が免疫抑制薬である、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記免疫抑制薬がメトトレキセートである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記更なる活性薬剤がサプリメントである、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記サプリメントがグルコン酸第一鉄である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記サプリメントがビタミンCである、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記更なる活性薬剤が抗細菌薬である、請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
前記更なる活性薬剤がダプソンである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記更なる活性薬剤がタンパク質である、請求項6に記載の組成物。
【請求項19】
前記タンパク質がフィルグラスチムである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記更なる活性薬剤が免疫調節薬である、請求項6に記載の組成物。
【請求項21】
前記免疫調節薬がレナリドミドである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組合せを、腸内、静脈内、腹腔内、吸入、筋内、皮下及び経口からなる経路のうちの1つ又は複数によって投与するための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項23】
前記レボセチリジン及びモンテルカストを、同じ経路によって投与するための、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2013年3月13日出願の米国仮特許出願第61/780,420号に対する優先権の利益を主張する。上述の出願は、全ての目的で参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
自己免疫は、宿主の身体内の抗原に対する免疫応答として記載される。この定義は、その応答が自然であるか獲得であるかとは関係なく、獲得の場合にはそれが外来抗原又は自己発生抗原のいずれによって誘導されるかとは関係ない。言い換えると、獲得である場合、この応答は、外来抗原、又は癌によって産生されるもの等の、それが起源する身体の一部若しくは場所において見出される抗原によって誘導される。自己免疫は通常、三次元的な複雑な免疫学的アレイでのT細胞及びB細胞の両方の応答を含む。基本的要件は、自己抗原に対する免疫応答である。
【0003】
ヒト疾患に対処する場合、因果関係を確立することは困難である場合が多い。従って、自己免疫性疾患の診断は、直接的証拠、間接的証拠又は情況証拠によって確立され得る。直接的証拠は、通常、患者から健康なレシピエントへの抗体の移行を含む。間接的証拠は、以下のような疾患状態において見出され得る:(a)選択抗原による免疫化を介した、動物における疾患の再現、(b)ヒト対応物と似た、動物において天然に存在する疾患、及び(c)免疫系を操作することによって創出される疾患。最も低いレベルの証拠である情況証拠は、自己抗体の存在を確認することによって示唆される。自己免疫性疾患が、規定された遺伝子感受性形質又は未だ規定されていない遺伝子感受性形質からおそらくはクラスター化する傾向を有するという知見から、別の型の情況証拠が同定される。病理学的観点から、若干の例外はあるものの、全ての自己免疫性疾患が、自己反応性CD4 Tリンパ球の存在を必要とする。
【0004】
自己反応性T細胞の形態での適応免疫の証拠がない、自己免疫性疾患の別のカテゴリー、自己炎症性疾患が存在する。この後者の群は、遺伝性再発性発熱症候群(hereditary recurrent fever syndrome)として公知の6つの障害のコアからなる。
【0005】
臨床的に、医師は、全身性(全身性エリテマトーデスの場合等)又は臓器特異的(I型糖尿病等)として、自己免疫性疾患をカテゴリー化する傾向がある。治療は一般的に、特定の疾患及び関連する提示に対するものであった。4つの治療アプローチが通常使用されるが、自己免疫性障害の2つのカテゴリーの複雑な原因が、新たな治療の開発に対して相当な課題を提示している。更に、現行のモダリティーの多く-例えば、数例挙げると、免疫調節薬、免疫抑制薬、ステロイド及び静脈内ガンマグロブリン-は、基礎疾患よりも悪い副作用を誘起する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kloepfer KMら、Effects of montelukast in patients with asthma after experimental inoculation with human rhinovirus 16. Annals Allergy Asthma Immunology. 2011;106:252〜257
【非特許文献2】Bisgaard, H.ら、Study of montelukast for the treatment of respiratory symptoms of post-respiratory syncitial virus bronchiolitis in children, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 2008; 178:854〜860
【非特許文献3】Proesmans, M.ら、Montelukast does not prevent reactive airway disease in young children hospitalized for RSV bronchiolitis, Acta Paediatr. 2009; 98:1830〜34
【非特許文献4】Sears, M.R.及びJohnston, N.W., Understanding the September asthma epidemic. J. Allergy Clin. Immunol. 2007; 120:526〜29
【非特許文献5】Bacharier, L.B.ら、Episodic use of an inhaled corticosteroid or leukotriene receptor antagonist in preschool children with moderate-to-severe intermittent wheezing. J. Allergy Clin. Immunol. 2008; 122:1127〜35
【非特許文献6】DiLorenzo Gら、Randomized placebo-controlled trial comparing desloratadine and montelukast in combined therapy for chronic idiopathic urticaria. J Allergy Clin Immunol 2004;114-:619〜25
【非特許文献7】Meltzer, EO. Rhinosinusitis: Developing guidance for clinical trials. J Allergy Clin Immunol 2006年11月; S20
【非特許文献8】Fokkens Wら、EAACI position paper on rhinosinusitis and nasal polyps executive summary. Allergy, 2005;60, 583〜601.
【非特許文献9】Fokkens, Wら、European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps group (2007) European position paper on rhinosinusitis and nasal polyps. Rhinology 2007;20,1〜136
【非特許文献10】Casale Mら、Nasal Polyposis: From Pathogenesis to Treatment, an Update. Inflammation & Allergy - Drug Targets 2011, 10, 158〜163
【非特許文献11】Eccles R. Understanding the Symptoms of the Common Cold and Influenza. Lancet Infectious Diseases 2005; 5(11): 718〜725
【非特許文献12】Cines DB, Blanchette VS. Immune Thrombocytopenia Purpura. N Engl J Med 2002; 346: 995〜1008
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
それを必要とする患者において自己免疫性障害を処置する方法が開示される。この方法は、有効量のレボセチリジン及びモンテルカストの組合せを患者に投与する工程を含む。
【0008】
1つのバリエーションでは、それを必要とする患者において自己免疫性障害の症状を処置する方法が開示される。この方法は、有効量のレボセチリジン及びモンテルカストの組合せを患者に投与する工程を含む。
【0009】
一部の実施形態では、この自己免疫性障害は、特発性血小板減少性紫斑病である。一部の実施形態では、この自己免疫性障害は、自己免疫性好中球減少症である。
【0010】
レボセチリジン及びモンテルカストの組合せは、開示された方法のいずれかのために、症状の発生時に投与され得る。
【0011】
レボセチリジン及びモンテルカストの組合せは、開示された方法のいずれかのために、逐次的様式で投与され得る。
【0012】
レボセチリジン及びモンテルカストの組合せは、開示された方法のいずれかのために、実質的に同時の様式で投与され得る。
【0013】
開示された方法の一部の実施形態では、更なる活性薬剤が投与され得る。更なる活性薬剤はステロイドであり得る。
【0014】
一部の実施形態では、グルココルチコイドが投与され得る。このグルココルチコイドは、プレドニゾンであり得る。一部の実施形態では、このグルココルチコイドは、メチルプレドニゾロンであり得る。
【0015】
一部の実施形態では、更なる活性薬剤は、免疫抑制薬であり得る。この免疫抑制薬は、メトトレキセートであり得る。
【0016】
一部の実施形態では、この更なる活性薬剤は、サプリメントであり得る。このサプリメントは、グルコン酸第一鉄であり得る。このサプリメントはまた、ビタミンCであり得る。
【0017】
一部の実施形態では、抗細菌薬が投与され得る。この抗細菌薬は、ダプソンであり得る。
【0018】
一部の実施形態では、この更なる活性薬剤はタンパク質である。このタンパク質は、フィルグラスチム(Neupogen(登録商標))であり得る。
【0019】
一部の実施形態では、免疫調節薬が投与され得る。この免疫調節薬は、レナリドミド(Revlimid(登録商標))であり得る。
【0020】
開示された方法の一部の実施形態では、この組合せは、腸内、静脈内、腹腔内、吸入、筋内、皮下及び経口からなる経路のうちの1つ又は複数によって患者に投与され得る。
【0021】
一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストは、同じ経路によって投与される。
【0022】
一実施形態は、自己免疫性障害を処置するための、方法、製剤及びキットを対象とする。これらの方法及び製剤には、有効濃度のレボセチリジン及びモンテルカストを、必要とする患者に送達するための方法及び製剤が含まれるがこれらに限定されない。これらの方法及び製剤は、患者への薬物送達を提供する、従来の及び/又は改変された放出要素を含み得る。
【0023】
一部の実施形態では、処置方法、製剤及びキットは、毎日の投与のために、例えば、別々の層中にレボセチリジン及びモンテルカストを含む二層錠剤を含み得る。或いは、各薬物療法は、別々に投与され得る(晩に1日当たりレボセチリジンの1つの錠剤及びモンテルカストの1つの錠剤)。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せは、単一製剤又は別々の製剤のいずれかとして、自己免疫性障害の処置のために、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間又はそれ以上の日数にわたって投与され得る。いくつかの実施形態では、この自己免疫性疾患は、特発性血小板減少性紫斑病又は自己免疫性好中球減少症であり得る。これらの二層錠剤又は別々の錠剤は、適応症、投与指示及び使用上の注意を含む指示書と共に、7〜10日の治療過程にわたって供給されるブリスターパック中に包装され得る。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せは、二層錠剤等の単一製剤、又は別々の製剤のいずれかとして、慢性炎症の処置のために、およそ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間又はそれ以上にわたって投与され得る。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、二層錠剤等の単一製剤、又は別々の製剤のいずれかとして、慢性炎症の処置のために、およそ1年間、2年間、3年間又はそれ以上にわたって投与され得る。これらの二層錠剤又は別々の錠剤は、適応症、投与指示及び使用上の注意を含む指示書と共に、30日の治療過程にわたって供給されるブリスターパック中に包装され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ステロイドモデル経路を利用する、レボセチリジン及びモンテルカストの作用の提唱された抗炎症機構の略図を示す図である。
図2A】実施例1に記載した患者の血小板数を示す図である。
図2B】実施例1に記載した患者の血小板数を示す図である。
図2C】実施例1に記載した患者の血小板数を示す図である。
図3】免疫性血小板減少性紫斑病処置アルゴリズムの略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態は、急性、亜急性及び慢性の炎症の処置のための医薬品としてのレボセチリジン及びモンテルカストの組合せに関する。いくつかの実施形態は、非IgE媒介性、IgE媒介性、並びに/又は組み合わさった非IgE媒介性及びIgE媒介性の炎症の処置のための、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せに関する。伝統的なアレルギー性鼻炎は、IgE媒介性疾患である;喘息を有する患者のうち最大70〜80%は、アレルギー性鼻炎(アトピー性喘息)もまた有する。組合せでのレボセチリジン及びモンテルカストの投与は、インフルエンザ、感冒、アレルギー性鼻炎並びに急性、亜急性及び慢性の炎症の処置において、相乗効果及び予期せぬ優れた結果を示す。更に、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せは、多くの既存の処置プロトコールと併せて安全に使用され得る。
【0026】
レボセチリジンは抗ヒスタミン剤であり、モンテルカストは、ロイコトリエン受容体アンタゴニストである。本明細書に記載するように、レボセチリジンとモンテルカストとの間の相乗性は、疾患プロセスの過程を短縮し、それによって罹患率及び死亡率を減少させる。この組み合わせた治療は、症状/副作用/疾患プロセス自体の寛解によって生活の質を改善することもでき、医療のコストを減少させることができる。この相乗効果は、非IgE媒介性炎症並びに組み合わさった非IgE媒介性及びIgE媒介性の炎症を処置するための、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せの使用において観察され得る。特定の理論に束縛されることは望まないが、この非IgE媒介性応答は、レボセチリジン及びモンテルカストの両方が、炎症の顕著な特徴とみなされる白血球、好酸球の遊走に影響を与えるという事実に、少なくとも一部関連し得る。
【0027】
強力なH1-抗ヒスタミン剤レボセチリジンは、アレルギー性鼻炎の中核的症状:くしゃみ、鼻漏、鼻閉、痒い口蓋、並びに痒い充血した目及び涙目を引き起こすヒスタミンのIgE媒介性の放出を遮断するために、肥満細胞及び好塩基球の表面上のH1受容体を下方調節することによって主に作用する。レボセチリジンは、ピーク血漿レベルまでの短い時間0.9時間、定常状態レベルまでの短い時間40時間、低い分布容積0.4L/kg、及び酸性pH(多くの急性炎症性疾患状態は、アシドーシス、低い生理学的pHと関連する)における第1世代メピラミンよりも5×増強された受容体親和性を提供する。レボセチリジンは、約75%の24時間受容体占有率を有し、これは市販の抗ヒスタミン剤の中で最も高い。第2世代抗ヒスタミン剤の受容体占有率は、皮膚の膨疹及び発赤研究における薬力学的活性並びにアレルゲンチャレンジチャンバ研究における効力と相関するようである。レボセチリジンは、年齢6カ月に至るまで、通年性アレルギー性鼻炎及び慢性特発性じんま疹の処置のために、米国において承認されている。
【0028】
レボセチリジンは、ヒスタミン誘導性の膨疹及び発赤のデータによって、5つの現代の世代の抗ヒスタミン剤のうち最も強力であることが客観的に確立されている。例えば、1日当たり5mgのレボセチリジンは、米国における1日当たり180mgの一般に処方される用量のフェキソフェナジンよりも有効である。欧州では、成人用量は1日当たり120mgである。レボセチリジンは、より低い分布容積、炎症状態(低pH)におけるより高いヒスタミン受容体親和性、及びフェキソフェナジンよりも高い、生理学的用量における24時間における受容体占有率を有する。対応する値をTable I(表1)中に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
レボセチリジンは、ヒトライノウイルス力価を、in vitroでlog-2減少させる。特定の理論には束縛されないが、細胞の作用機構は、次にI-CAM-1の低減の原因となる、細胞内タンパク質複合体NF-kB(核因子カッパB)の活性化の提唱された低減である。膜貫通タンパク質I-CAM-1は、ヒトライノウイルスの細胞中への侵入の門戸とみなされている。ライノウイルスは、急性喘息の症例の約50%において見出され得、「感冒」の30〜50%の症例の原因である。ウイルス力価における1logの低減は、改善された症状と相関することが、独立して決定されている。更に、レボセチリジンは、好酸球遊走を減少させ、炎症性メディエーターIL-4、IL-6及びIL-8を減少させることが示されている。シグナル伝達タンパク質IL-6は、以下を一部調節する:発熱、外傷に対する身体の応答、及び急性(即時)期のアレルギー性反応。
【0031】
ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、モンテルカストは、CysLT1受容体に対して高い親和性及び選択性で結合することによって作用して、ロイコトリエンLTD4の生理学的作用を阻害する。ロイコトリエンは、その影響が気道浮腫、平滑筋収縮及び炎症性プロセスと関連する変更された細胞活性を含む、脂肪性シグナル伝達分子である。ロイコトリエンの過剰産生は、喘息及びアレルギー性鼻炎における炎症の主要原因である。システイニルロイコトリエン(LTC4、LTD4、LDE4)は、アラキドン酸代謝の産物である。これらのロイコトリエンは、肥満細胞及び好酸球を含む種々の細胞から放出される。これらは、ヒト気道中の並びに好酸球及び特定の骨髄幹細胞を含む他の炎症促進性細胞上の受容体に結合する。これらのシステイニルロイコトリエンは、喘息及びアレルギー性鼻炎の病態生理と相関している。
【0032】
ロイコトリエンD4は、収縮している気道平滑筋中のシステイニルロイコトリエンのうちで最も強力である。CysLT1等のロイコトリエン受容体は、呼吸樹の細胞(気道平滑筋細胞及び気道マクロファージを含む)並びに身体中の他の炎症促進性細胞、特に好酸球及び特定の骨髄幹細胞の至る所で見出される。ロイコトリエンは、好酸球、樹状細胞及びT細胞の動員を促進するためにも機能する。好酸球浸潤は、数人の権威によって炎症の顕著な特徴とみなされている。
【0033】
モンテルカストは、通年性アレルギー性鼻炎、喘息、季節性アレルギー性鼻炎及び運動誘発性気管支痙攣の処置のために、米国においてFDA承認されている。モンテルカストは、実験的ライノウイルス感染によって引き起こされる喘息制御又は風邪症状スコアを改善するのに無効であることが示されている。Kloepfer KMら、Effects of montelukast in patients with asthma after experimental inoculation with human rhinovirus 16. Annals Allergy Asthma Immunology. 2011;106:252〜257を参照のこと。レボセチリジンとは異なり、モンテルカストで処置したライノウイルス感染個体において、ウイルス排出における減少は観察されず、プラセボ処置個体と比較して、報告された風邪症状スコアにおいて有意な差異は存在しなかった。二次アウトカムの分析は、モンテルカストが、感冒感染によって引き起こされる肺機能における低減及び痰好酸球における増加に対して防御し得ることを示唆している。回復期の間、痰好酸球の百分率は、プラセボ群において上昇したが、モンテルカスト群はベースラインレベルのままであった。更に、ピーク呼気流は、モンテルカスト処置患者において減少しなかった。他の研究により、モンテルカスト処置が、急性呼吸器合胞体ウイルス細気管支炎を有する患者の呼吸器症状に対して影響を有さないことが示されている。Bisgaard, H.ら、Study of montelukast for the treatment of respiratory symptoms of post-respiratory syncitial virus bronchiolitis in children, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 2008; 178:854〜860;及びProesmans, M.ら、Montelukast does not prevent reactive airway disease in young children hospitalized for RSV bronchiolitis, Acta Paediatr. 2009; 98:1830〜34を参照のこと。しかし、一部の研究は、モンテルカストによる処置が、軽度アレルギー性喘息を有する小児において、上気道疾病の最初の徴候時に与えられる場合、悪化した喘息症状を有する日数及び予定外の医師の診察を低減させ、再発性喘鳴を有する小児において症状の控えめな低減を生じたことを示している。Sears, M.R.及びJohnston, N.W., Understanding the September asthma epidemic. J. Allergy Clin. Immunol. 2007; 120:526〜29; Bacharier, L.B.ら、Episodic use of an inhaled corticosteroid or leukotriene receptor antagonist in preschool children with moderate-to-severe intermittent wheezing. J. Allergy Clin. Immunol. 2008; 122:1127〜35を参照のこと。
【0034】
モンテルカストは、第2世代抗ヒスタミン剤レボセチリジンと同様、2日間未満で定常状態レベルに達する。他の現在入手可能なロイコトリエンモジュレーター、ジロートン及びザフィルルカストとは異なり、肝臓機能試験の慣用的なモニタリングは必要とされない。ワルファリン、テオフィリン、ジゴキシン、テルフェナジン、経口避妊薬又はプレドニゾンとの薬物相互作用は存在しない。
【0035】
2種の分子が、安全である、即ち、年齢6カ月に至るまで、アレルギー性障害のために米国においてFDA承認されている。これらは、主に、又はインフルエンザ、急性喘息及び感冒が含まれるがこれらに限定されない炎症の処置のための既存の治療プロトコールの多くと併せて、与えられ得る。両方の薬物療法は、妊娠カテゴリーBである(Table II(表2))。
【0036】
【表2】
【0037】
炎症の既存の処置は、提示の基礎状態及び性質に焦点を当てている。ジフェンヒドラミン(Benadryl(登録商標))、酸素、エピネフリン、ステロイド、ベータ-アゴニスト、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、解熱薬、抗生物質、抗真菌薬及び抗ウイルス薬等の無数の薬剤が、一般に使用される。逆説的に、一般に使用されるNSAIDは、ロイコトリエンの産生を実際に増加させる。
【0038】
炎症を処置するために広く使用されるステロイドは、顕著な短期及び長期の副作用を有する(Table III(表3))。鼻副鼻腔炎と関連する炎症を処置することに関して、経鼻ステロイドは、特に高齢患者、並びに脳卒中及び心臓発作の危険性を低減させるために処方されたアスピリン、クロピドグレル又はワルファリンを受けている患者において、制限を有する。これらの伝統的「抗凝血剤」を摂取していない患者においてさえ、経鼻ステロイドスプレーによる自発的鼻血の危険性は、4〜22%の間である。鼻血の危険性は、薬物療法依存的である。鼻血は、55歳以上の多くの患者において、顕著な考慮事項である。
【0039】
【表3】
【0040】
レボセチリジンの典型的な1日投薬量は、成人について5mgであり、レボセチリジンは、以下の有利な特性を示す:i)ピーク血漿レベルに達するまでの短い時間、0.9時間;ii)定常状態レベルまでの短い時間、40時間;iii)低い分布容積(標的受容体に直接向かう);iv)24時間における高い受容体占有率、約75%;v)炎症組織における増加した受容体親和性(酸性pH;第1世代分子の受容体親和性の最大5×);vi)妊娠カテゴリーB;vii)6カ月に至るまで、他の疾患状態、即ち、通年性アレルギー性鼻炎及び慢性特発性じんま疹のために、FDA承認されている;viii)抗炎症特性;並びにix)抗ウイルス特性。ヒトにおける研究により、最大30mg/日までのレボセチリジンの用量が、安全に投与できることが示されている。
【0041】
ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、モンテルカストは、呼吸樹を保護し、並びに炎症性カスケードにおいてメディエーターを遮断するために、並行して作用する。モンテルカストの典型的な1日投薬量は、成人について10mgであり、モンテルカストは、以下の有利な特性を示す:i)モンテルカストは、選択的受容体アンタゴニストであり、CysLT1受容体においてLTD4の生理学的作用を阻害する;ii)モンテルカストは、いずれのアゴニスト活性も生じることなく、CysLT1受容体に対して高い親和性及び選択性で結合する;iii)モンテルカストは、迅速に吸収される;iv)モンテルカストは、3〜4時間でピーク血漿濃度に達する;v)モンテルカストの経口バイオアベイラビリティ及びCmaxは、標準食によって影響を受けない;vi)モンテルカストは、50mgまで線形の薬物動態を有する;vii)成人における5mgという低い用量が、LTD4誘導性の気管支収縮の実質的な遮断を引き起こす;viii)プラセボ対照クロスオーバー研究では、モンテルカストは、抗原チャレンジに起因する初期気管支収縮を75%阻害した;ix)モンテルカストは、年齢6カ月に至るまで、FDA承認されている;並びにx)モンテルカストは、ワルファリン、テオフィリン、ジゴキシン、テルフェナジン、経口避妊薬又はプレドニゾンとの薬物相互作用を有さない。モンテルカストは、臨床的に重要な有害な経験なしに、22週間にわたって及び短期研究において、成人患者に最大200mg/日の用量で投与され、およそ1週間にわたって患者に最大900mg/日で投与されてきた。
【0042】
従って、レボセチリジン及びモンテルカストの両方が、米国において妊娠カテゴリーBであり、年齢6カ月に至るまで、他の疾患プロセスのために、米国においてFDA承認されている。更に、両方の薬物は、1日1回だけの投薬を有し、血液研究の慣用的なモニタリングは、ほとんどの臨床的状況には必要でない。更に、両方の薬物は、他の薬物療法との、最小限の臨床的に関連する相互作用を示す。本明細書に記載するように、経口投与されるレボセチリジン及びモンテルカストの両方は、2日以内に定常状態レベルに達して、相乗的で相補的な抗炎症効果を迅速に生じる。
【0043】
モンテルカスト及び第2世代抗ヒスタミン剤フェキソフェナジンの投与は、アレルギー性鼻炎の処置において相乗効果を有する。花粉症又は枯草熱としても公知のアレルギー性鼻炎は、花粉又は粉塵等のアレルゲンが、遺伝的に感受性の免疫系を有する個体(集団の20パーセントよりも多いと見積もられる)によって吸引されたときに生じる鼻気道のアレルギー性炎症である。アレルゲンは、抗体産生、血清特異的免疫グロブリンE(IgE)を誘発し、これが次に、ヒスタミンを含む肥満細胞及び好塩基球に結合し得る。原因抗原への再曝露の際に、そう痒、腫脹及び粘液産生を引き起こすヒスタミンが放出され、季節性アレルギーに罹患していることが周知である。モンテルカスト及びフェキソフェナジンの組合せは、フェキソフェナジン単独又はプラセボを伴うフェキソフェナジンと比較して統計的有意性で、患者の日記及びVAS評価を使用して主観的に、並びに鼻腔通気度検査及び身体検査を使用して客観的にの両方で、鼻閉を低減させた。
【0044】
しかし、科学文献は、抗ヒスタミン剤+ロイコトリエンの組合せが、処置のために各々単独を超えた利点を一般に提供するかどうかを、明確に示していない。例えば、1つの慢性炎症性疾患状態、慢性特発性じんま疹では、モンテルカストは、第2世代抗ヒスタミン剤デスロラタジンを超えた利点を提供しないようであった。DiLorenzo Gら、Randomized placebo-controlled trial comparing desloratadine and montelukast in combined therapy for chronic idiopathic urticaria. J Allergy Clin Immunol 2004;114-:619〜25を参照のこと。更に、2008年4月に、FDAは、組み合わせた丸剤から利益を見出さずに、これもまた第2世代抗ヒスタミン剤であるロラタジン及びモンテルカストの組合せを、アレルギー性鼻炎及び喘息の処置のために承認した。
【0045】
本明細書で、本発明者らは、レボセチリジン及びモンテルカストを組み合わせることの、予測できない相乗効果を記載する。特定の理論に束縛されることは望まないが、細胞レベルでのレボセチリジンの薬物動態の詳細な試験は、IgE媒介性のヒスタミン放出を超えて広がる独自の炎症特性を示している。レボセチリジンは、低い分布容積(0.4L/kg)、酸性pHにおけるH1受容体からの延長された溶解時間、セチリジンの純粋な異性体としての増強された受容体親和性、及び任意の現在入手可能な抗ヒスタミン剤の24時間における最も高い受容体占有率を示す。かかるパラメーターは、IL-4、IL-6、IL-8並びに細胞接着分子を下方調節することによって、炎症性効果に影響を与える。後者は、細胞間接着、細胞動員、ホーミング及び治癒に関与する誘導可能な免疫グロブリン、インテグリン及びセレクチンの同質的な群である。更に、レボセチリジンは、ICAM-1、IL-6、IL-8、TLR3発現及びNF-カッパB活性化をin vivoで減少させ、ヒトライノウイルス力価をlog-2減少させることが示されている。多くのライノウイルス血清型は、細胞中への侵入の門戸としてICAM-1を同定する同じ細胞受容体を共有する。レボセチリジンは、気道上皮細胞においてライノウイルス誘導性のICAM-1及びサイトカイン発現並びにウイルス複製を阻害する。ウイルス排出における1logの低減は、HRV感染(ヒトライノウイルス)患者において顕著な臨床的利益を生じる。
【0046】
満たされていない臨床的要求が、2009年にH1N1パンデミックと共に生じた。インフルエンザのための第1選択薬物オセルタミビルは、インフルエンザ関連の下気道合併症を低減させないようであった。ノイラミニダーゼ阻害剤について、半日〜1日分だけの疾病の短縮が存在し、これは、ノイラミニダーゼ阻害剤が、感染を防止しない又は経鼻ウイルス排泄を停止させないこと、従って、パンデミックにおけるウイルス伝播を妨害する最適以下の手段であり得ることを示した。更に、この時間枠の間に、Californiaは、妊娠及び分娩後女性におけるH1N1インフルエンザの重症度に関する憂慮すべきデータを報告した、即ち、2009年4月23日から8月11日までに、妊娠又は分娩後女性の22%が、H1N1の処置のために集中治療を必要とし、8%が死亡した。臨床的に、レボセチリジン+モンテルカストの組合せ(後者は、下気道を保護するために追加される;その両方が妊娠カテゴリーBであった)が、インフルエンザの過程を寛解/短縮するために安全且つ有効に使用され得るということが実証された。
【0047】
特定の理論に束縛されることは望まないが、このステロイドモデルは、レボセチリジンが、NF-kBのレベルにおいて非IgE媒介性の能力で作用し(図1を参照のこと)、一方でモンテルカストが、CysLT1受容体において作用して、LTD4の生理学的作用を阻害することを示唆している。両方の分子が、好酸球の量又は炎症部位へのそれらの遊走を低減させることが公知である。モンテルカストは、更に、樹状細胞及びT細胞の動員を減少させる。
【0048】
レボセチリジン+モンテルカストの作用は、アレルギー性鼻炎及び喘息の処置をはるかに超えて、各々の個々の生理学的機構を上回る。少なくとも一部、これは、核因子kBに対するレボセチリジンの抗ウイルス特性及び抗炎症特性;相乗性を与える、好酸球の量/遊走を阻害するレボセチリジン及びモンテルカストの両方の能力によって強調される、モンテルカストによるLTD4の作用の阻害である。この相乗性は、無数の急性及び慢性の炎症性疾患状態における顕著に改善された臨床的アウトカムによって反映される。
【0049】
本明細書に記載される実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いて、鼻副鼻腔炎として公知の、鼻及び副鼻腔を一部含む呼吸樹全体の炎症を処置する方法に関する。予定表上で考慮される鼻副鼻腔炎は、6週間未満(通常は4〜6週間)の持続時間を有する急性、6〜12週間の持続時間を有する亜急性、又は12週間以上の持続時間を有する慢性であり得る。急性鼻副鼻腔炎は、化学刺激、外傷、アレルギー性鼻炎、又は細菌起源、ウイルス起源、若しくはあまり一般的ではないが真菌起源であり得る初期上気道感染に限定されない複数の因子によって誘起され得る。細菌起源の急性副鼻腔炎の最も一般的な原因因子は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、他の連鎖球菌種、嫌気性細菌、及びあまり一般的ではないがグラム陰性細菌である。細菌性副鼻腔炎は、ウイルス性鼻副鼻腔炎、即ち感冒よりも持続性であり、典型的には7〜10日間持続する傾向がある。
【0050】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、ウイルス感染又は細菌感染によって引き起こされる急性鼻副鼻腔炎の処置に関する。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジンは、ウイルス気道感染が、急性の、しばしば日和見の、二次的細菌性副鼻腔炎、気管支炎及び/又は肺炎にまでエスカレートすることを防止するために、予防的に摂取される。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジンは、病原体(ウイルス、細菌、真菌等)への曝露の直後、1時間後、6時間後、12時間後、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、28日後、29日後及び/又は30日後に、投与される。いくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、インフルエンザの臨床所見を有する患者の処置に関する。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジン処置は、インフルエンザの持続時間を低減させる。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジン処置は、インフルエンザ症状の重症度を低減させる。いくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、感冒の臨床所見を有する患者の処置に関する。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジン処置は、風邪の持続時間を低減させる。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジン処置は、風邪症状の重症度を低減させる。
【0051】
慢性鼻副鼻腔炎は、12週間以上にわたって持続する、鼻及び副鼻腔の炎症性状態/疾患である。症状には、鼻閉、顔面疼痛、頭痛、咳嗽、喘息症状における増加、倦怠感、分泌物、顔面こわばりの感覚、めまい及び/又は歯痛の任意の組合せが一部含まれる。鼻副鼻腔炎は、一般に、4つのカテゴリーにカテゴリー化され得る:(1)急性細菌性鼻副鼻腔炎(ABRS)、(2)鼻ポリープを伴わない慢性鼻副鼻腔炎(CRSsNP)、(3)鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)、及び(4)アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)。Meltzer, EO. Rhinosinusitis: Developing guidance for clinical trials. J Allergy Clin Immunol 2006年11月; S20を参照のこと。鼻ポリープは、鼻の炎症が以下の徴候及び症状のうちの2つ以上と関連する、慢性鼻副鼻腔炎の下位群である:鼻閉塞又は鼻閉、鼻汁、嗅覚減弱又は無嗅覚症、顔面疼痛又は圧力の感覚、道の浮腫又は粘膜閉塞あり又はなしの、ポリープ又は中鼻道からの粘膿性分泌物の内視鏡的証拠、及び中鼻道自然口ルート(osteomeatal complex)又は副鼻腔の粘膜変化を示すCT画像。Fokkens Wら、EAACI position paper on rhinosinusitis and nasal polyps executive summary. Allergy, 2005;60, 583〜601.、Fokkens, Wら、European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps group (2007) European position paper on rhinosinusitis and nasal polyps. Rhinology 2007;20,1〜136を参照のこと。慢性鼻副鼻腔炎に対する従来の処置は、機能的内視鏡的洞手術、抗生物質、全身性及び外用ステロイド、並びにかなり低い程度ではあるが抗ヒスタミン剤若しくはロイコトリエンモジュレーターを含む場合が多い。ポリープのみを有する患者における抗ヒスタミン剤の使用は、大々的には研究されていない。Casale Mら、Nasal Polyposis: From Pathogenesis to Treatment, an Update. Inflammation & Allergy - Drug Targets 2011, 10, 158〜163を参照のこと。フロ酸モメタゾン一水和物、外用経鼻ステロイドスプレーは、鼻ポリープの処置のために米国においてFDA承認された唯一の薬物療法である。推奨される用量は、1日に2回、各外鼻孔に2噴射である。
【0052】
本明細書に記載される実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、慢性鼻副鼻腔炎の処置に関する。本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、鼻ポリープの処置に関する。一部の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジン処置は、ポリープのサイズ及び/又は数を低減させる。一部の実施形態は、ステロイド、抗生物質又は外科的処置の非存在下での、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、慢性鼻副鼻腔炎の処置に関する。他の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジンは、臨床的に適用可能と判断される場合、抗生物質及び/又はステロイド及び/又は外科的処置と併せて投与される。他の処置モダリティーあり又はなしの慢性鼻副鼻腔炎処置プロトコールは、以下の通りである。
【0053】
【表4】
【0054】
患者は、臨床的に適切な場合、鼻/副鼻腔の内視鏡検査で、診療室で少なくとも年に4回、診察され得る。副鼻腔の処置前及び治療の開始後6カ月〜1年の時点の追跡CTスキャンが、既存の医学療法を個別化するための客観的データを提供するために実施され得る。
【0055】
いくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、鼻炎を処置する方法に関する。鼻炎、鼻孔の炎症は、感冒を含むウイルス感染又は細菌感染によって一般に引き起こされ、そのうち後者は、ライノウイルス及びコロナウイルスによって主に引き起こされる。Eccles R. Understanding the Symptoms of the Common Cold and Influenza. Lancet Infectious Diseases 2005; 5(11): 718〜725を参照のこと。鼻炎は、以下のようにカテゴリー化される:(i)感染性鼻炎;(ii)非アレルギー性鼻炎;及び(iii)アレルギー性鼻炎。いくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、感染性鼻炎を処置する方法に関する。一部の実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、非アレルギー性鼻炎を処置する方法に関する。一部の実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、アレルギー性鼻炎を処置する方法に関する。
【0056】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、慢性鼻副鼻腔炎の処置に関する。一部の実施形態は、ステロイド又は抗生物質処置の非存在下での、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、慢性鼻副鼻腔炎の処置に関する。他の実施形態では、モンテルカスト及びレボセチリジンは、抗生物質及び/又はステロイドと併せて投与される。
【0057】
いくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、非IgEベースの炎症を処置する方法に関する。
【0058】
いくつかの実施形態は、モンテルカスト及びレボセチリジンを用いた、組み合わさったIgE及び非IgE媒介性の炎症を処置する方法に関する。
【0059】
以下のTable V(表5)は、アレルギー性障害の処置における投薬量に関する既存の国のガイドラインを示す。
【0060】
【表5】
【0061】
いくつかの実施形態は、細菌感染を処置するための、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せの使用に関する。レボセチリジン及びモンテルカストの組合せによって処置され得る細菌感染の例には、急性細菌性鼻副鼻腔炎(ABRS)が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストは、局所的提示によって決定されるように、抗生物質と共に投与され得る。
【0062】
いくつかの実施形態は、滲出液を伴う中耳炎並びに慢性乳様突起炎及び耳管(eustachian tube)機能不全(耳管(auditory tube)は鼻の後ろから中耳に延びる)等の関連する耳の障害を処置するための、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せの使用に関する。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストは、例えば、化膿性滲出性中耳炎を伴う急性中耳炎を処置するために、抗生物質と共に投与され得る。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストは、慢性滲出性中耳炎、例えば、慢性中耳炎を処置するために、抗生物質なしで投与され得る。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストは、ステロイド及び/又は抗ウイルス剤等であるがこれらに限定されない他の処置モダリティーと共に投与され得る。
【0063】
いくつかの実施形態は、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)を処置するための、レボセチリジン及びモンテルカストの組合せの使用に関する。一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストは、ステロイド及び/又は抗真菌薬等であるがこれらに限定されない他の処置モダリティーと共に投与され得る。
【0064】
レボセチリジン及びモンテルカスト(後者は、米国において現在調査中である)の静脈内治療は、経口薬物療法の投与で現在見られる個々の及び組み合わせた臨床的応答を増強し得る。静脈内モンテルカスト血漿濃度曲線化面積プロフィール7mgは、承認された10mg経口モンテルカスト錠剤と匹敵する。前者は、プラセボと比較した場合、10分の時点において、急性喘息患者においてFEV1(1秒間努力呼気量)を顕著に改善することが示されている。
【0065】
従って、急性炎症のための投薬は、10日の治療過程にわたって両方の薬物療法を含む二重層錠剤として、及び/又はブリスターパックとして、同じ設定で個々に、上に描写したように毎日であり得る。中程度から重症の臨床像について、レボセチリジン成分は、40時間未満で分子の定常状態レベルに達するために、最初の1日24時間の間、ゼロ時間(5mg)、12時間(5mg)及び24時間(5mg)において与えられ得る。レボセチリジンのヒト投薬安全性研究は、最大30mg/日で実施されてきた。鎮静は、より高い用量で経験される主な副作用である。独立した研究により、レボセチリジン単独が、特発性じんま疹の重症症例を処置するために、20mg/日で投薬され得ることが示されている。
【0066】
レボセチリジン及びモンテルカストの組合せのための適用には、以下の症状を処置、寛解又は防止することが含まれるが、これらに限定されない。インフルエンザについて、この組合せは、季節性インフルの過程を短縮し、下気道感染/合併症の発症を防止若しくは最小化するため、及び/又は次のパンデミック、例えば、その関連する50%の死亡率を有するH5N1の前に、インフルエンザに対する改善された安全な世界的プロトコールを確立するために、有用であり得る。ライノウイルスに限定されない上気道感染について、この組合せは、感染自体を制限するため、並びに/又は二次的副鼻腔炎、気管支炎及び肺炎の潜在的な発症を防止若しくは低減させるために、有用であり得る。この組合せは、特に呼吸器病変を有する患者であるがこれらに限定されない患者の、エプスタイン・バーウイルスの処置のために有用であり得る。
【0067】
急性喘息について、ライノウイルス(症例のうちの約50%)によって引き起こされる増悪に限定されないが、既存のプロトコールと併せて、この組合せは、事象の過程を短縮し、入院及び死亡を低減させるために、有用であり得る。この組合せは、抗菌治療を必要とする、1つ又は複数のクラスの抗生物質に対してアレルギー性の患者の事前処置のために有用であり得る。これらの患者は、一般的集団を超えて4〜10×の、引き続くALE(アレルギー性様事象)を発症する危険性がある。二重/三重抗生物質を必要とする中程度から重症の生命を危うくする疾患を有する患者について、この組合せは、一次処置薬物療法からの副作用を生じる可能性を低減させるために有用であり得る。この組合せは、炎症性応答を寛解させるための放射線治療の間及びその後に、有用であり得る。この組合せは、ステロイド誘導性の合併症の発症の危険性が他の方法で増加した、炎症の処置のためにステロイドを必要としている患者にとって、有用であり得る。例には以下が含まれるがこれらに限定されない:i)顔面麻痺等の、感染を伴う重症インスリン依存性糖尿病性、及びii)潜伏結核を有する患者。急性疾患に対する抗ウイルス薬物療法を受けている患者について、この組合せは、薬物療法と関連する合併症並びに疾患プロセス自体と関連する合併症を防止するために使用され得る。この組合せは、ステロイドあり又はなしで、血清病を処置するために使用され得る。免疫療法を受けている患者の事前処置のために、この組合せは、全身性反応の危険性を防止又は寛解させるために使用され得る。生命を危うくする全身性事象を生じる可能性がある高危険性患者の例には、重症喘息患者、並行的な気道感染を有する患者及び全身性反応の以前の病歴を有する患者が含まれるがこれらに限定されない。化学療法を受けている患者の事前処置及び中間処置(intra-treatment)のために、この組合せは、化学療法薬物の投与と関連する副作用を寛解させるために使用され得る。輸血反応を示す患者について、この組合せは、初期反応の間に、及び任意の必要な引き続く輸血のための準備において、副作用/生命を危うくする事象を制限するために使用され得る。
【0068】
当業者に容易に明らかなように、投与されるレボセチリジン及びモンテルカストの有用なin vivo投薬量並びに特定の投与様式は、患者の年齢、体重、医学的状態、処置される状態の重症度、投与の経路、患者の腎機能及び肝機能、並びに処置される哺乳動物種、使用される特定の化合物、並びにこれらの化合物が使用される特定の使用に応じて変動する。所望の結果を達成するために必要な投薬量レベルである有効投薬量レベルの決定は、慣用的な薬理学的方法を使用して、当業者によって達成され得る。典型的には、生成物のヒト臨床適用は、より低い投薬量レベルで開始され、投薬量レベルは、所望の効果が達成されるまで増加される。有利なことに、本発明の実施形態の化合物は、例えば、単一1日用量で投与され得、又は合計1日投薬量が、1日に2回、3回若しくは4回の分割用量で投与され得る。
【0069】
【表6】
【0070】
急性プロセスの重症度に応じて、Table VI(表6)中の用量は、改変され得る。例えば、レボセチリジンについての年齢に応じた用量が、ゼロ時間(提示の時点)に与えられ得、12時間目に更なる年齢に応じた用量が与えられ得る。特に気管支炎/肺炎に直面して、下気道を保護するために、モンテルカストの用量が、ゼロ時間(提示の時点)に与えられ得、12時間目に更なる年齢に応じた用量のモンテルカストが与えられ得る。この様式で、2種の薬物の定常状態レベルは、24時間に近づく。モンテルカストは、レボセチリジンと同様、非常に安全な分子とみなされている。モンテルカストは、臨床的に重要な有害事象なしに、22週間にわたって及び短期研究において、成人患者に最大200mg/日(20×標準的な成人1日用量)の用量で投与され、およそ1週間にわたって患者に最大900mg/日(90×標準的な成人1日用量)で投与されてきた。投薬の持続時間は、そのそれぞれの疾患状態についての一般に受容されたプロトコールと並行であり得る。例えば、急性感染性疾患プロセスに対する従来の治療は、典型的には、5〜14日間にわたって投与される。組み合わせたレボセチリジン1日1回+モンテルカスト1日1回の過程は、同じ持続時間にわたって与えられ得る。慢性炎症性疾患状態の処置のために、各薬物療法の年齢に応じた1日1回の投薬もまた、投与され得る。
【0071】
自己免疫性障害
いくつかの実施形態は、自己免疫性障害の処置のためのレボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせの使用に関する。
【0072】
自己免疫は、宿主の身体内の抗原に対する免疫応答として記載される。この定義は、その応答が自然であるか獲得であるかとは関係なく、獲得の場合にはそれが外来抗原又は自己発生抗原のいずれによって誘導されるかとは関係ない。言い換えると、獲得である場合、この応答は、外来抗原、又は癌によって産生されるもの等の、それが起源する身体の一部若しくは場所において見出される抗原によって誘導される。自己免疫は通常、三次元的な複雑な免疫学的アレイでのT細胞及びB細胞の両方の応答を含む。基本的要件は、自己抗原に対する免疫応答である。
【0073】
ヒト疾患に対処する場合、因果関係を確立することは困難である場合が多い。従って、自己免疫性疾患の診断は、直接的証拠、間接的証拠又は情況証拠によって確立され得る。
【0074】
直接的証拠は、通常、患者から健康なレシピエントへの抗体の移行を含む。例は、新生児の口中への患者血清の注入による疾患天疱瘡の再現、又は疾患、例えばグレーブス病、重症筋無力症及び新生児ループスの経胎盤的移行由来の自己抗体のヒトからヒトへの移行である。
【0075】
間接的証拠は、以下のような疾患状態において見出され得る:(a)選択抗原による免疫化を介した、動物における疾患の再現、(b)ヒト対応物と似た、動物において天然に存在する疾患、及び(c)免疫系を操作することによって創出される疾患。
【0076】
最も低いレベルの証拠である情況証拠は、自己抗体の存在を確認することによって示唆される。自己免疫性疾患が、規定された遺伝子感受性形質又は未だ規定されていない遺伝子感受性形質からおそらくはクラスター化する傾向を有するという知見から、別の型の情況証拠が同定される。
【0077】
病理学的観点から、若干の例外はあるものの、全ての自己免疫性疾患が、自己反応性CD4 Tリンパ球の存在を必要とする(Table VII(表7))。
【0078】
【表7】
【0079】
自己反応性T細胞の形態での適応免疫の証拠がない、自己免疫性疾患の別のカテゴリー、自己炎症性疾患が存在する。この後者の群は、遺伝性再発性発熱症候群として公知の6つの障害のコアからなる。2つの主要なカテゴリー間の主な差異は、Table VIII(表8)中に概説される。
【0080】
【表8】
【0081】
自己炎症性疾患の暫定の分子的/機能的分類を、Table IX(表9)中に概説する。
【0082】
【表9A】
【0083】
【表9B】
【0084】
臨床的に、医師は、全身性(全身性エリテマトーデスの場合等)又は臓器特異的(I型糖尿病等)として、自己免疫性疾患をカテゴリー化する傾向がある。治療は一般的に、特定の疾患及び関連する提示に対するものであった。4つの治療アプローチが通常使用され、これらはTable X(表10)中にまとめられる。
【0085】
【表10】
【0086】
自己免疫性障害の2つのカテゴリーの複雑な原因が、新たな治療の開発に対して相当な課題を提示している。これらの疾患の多くにおいて見られる自己免疫性/炎症性応答を寛解させるレボセチリジン+モンテルカストの組み合わされた相乗性は、既存の又は未だ規定されていないより指向性の治療を損なうことなく、顕著な有望さを提供する。両方の分子は、妊娠カテゴリーB、即ち、最も安全であるとみなされ、新たな問題を誘発することなしに既存の処置レジメンを補完するために使用され得る。臨床的に、現行のモダリティーの多く-例えば、数例挙げると、免疫調節薬、免疫抑制薬、ステロイド及び静脈内ガンマグロブリン-は、基礎疾患よりも悪い副作用を誘起することが、多くの医師、特に腫瘍学者及びリウマチ学者によって考えられている。
【0087】
自己免疫性好中球減少症
好中球減少症は、1500/μL未満の好中球絶対数(ANC)として規定される。この絶対数は、白血球数(WBC)×鑑別分析において見られる多形核細胞+バンド形態の合わせた分率の積と等しい。ANCが低いほど、特に1000/μLを下回る場合、顕著な感染の確率が高くなる。
【0088】
乳児期の自己免疫性好中球減少症、慢性特発性好中球減少症、慢性良性好中球減少症及び好中球減少症の症候群には、それらが好中球減少症の提示の年齢及び持続時間において主に異なるという点で、かなりの重複が存在する。免疫不全と関連する好中球減少症及び同種免疫性新生児好中球減少症は、抗体の供給源が公知であるという点で識別される。後者の疾患では、父親から遺伝した好中球特異的抗原に対するIgG抗体の経胎盤的通過が存在する。
【0089】
抗好中球抗体試験が容易には利用可能でなく、利用可能である場合には顕著な偽陰性率を有するという事実に、困難が更に現れている。更に、管理上の意思決定は、抗好中球抗体試験に基づかない。
【0090】
治療は、通常はステロイドの使用によって、又は実際の若しくは予測される生命を危うくする感染の存在下でNeupogen(登録商標)(フィルグラスチム)の投与によって、1000を上回るANC範囲の合理的レベルで好中球レベルを安定化することを指向している。Neupogen(登録商標)は、顆粒球及びマクロファージの増殖及び分化を刺激することによって作用する;しかし、これは、重篤反応、例えば脾破裂、ARDS、血小板減少症、皮膚血管炎及び出血と関連する。
【0091】
免疫性血小板減少性紫斑病(特発性血小板減少性紫斑病)
免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)は、一般的な後天性出血障害であり、その診断は2つの基準によって満足される:
【0092】
(1)孤立性の血小板減少症が存在する。全血球数のバランスは、鉄欠乏性貧血等の別なふうに同時発生的な異常もまた存在する場合を除き、正常である。
【0093】
(2)臨床的に明らかな関連状態は、初期提示の際には存在しない。関連状態の例は、全身性エリテマトーデス、慢性リンパ性白血病及び抗リン脂質症候群である。これらの状態を有する患者は、二次的免疫性血小板減少症を有すると記載される。キニーネ含有飲料及び植物性生薬を含む薬物もまた、明らかな病因ではない。
【0094】
ITPの実験室診断は、血小板結合抗体を測定するために設計された既存のアッセイの乏しい感度(49〜66%)によって損なわれる。
【0095】
臨床所見は、患者毎に変動し、出血は、点状出血及びあざができやすいから重症の出血素因までの範囲である。成人のうちで、およそ70パーセントが女性であり、これらの女性のうち70パーセントは、年齢が40歳未満である。遺伝的観点から、ITP下位集団におけるHLA-DR4及びDRB1*0410対立遺伝子は、処置の中心であるコルチコステロイドに対する、それぞれ好ましくない応答及び好ましい応答と関連付けられてきた。更に、HLA-DRB1*1501は、別の一般的形態の治療である脾摘出術に対する好ましくない応答と関連付けられてきた。
【0096】
成人は通常、提示の時点でプレドニゾンによる処置を必要とする。50,000/mm3(正常150,000〜450,000/mm3)の血小板数は、通常、偶発的に発見されるが、点状出血又は斑状出血は、数が10,000〜30,000/mm3の間である場合に、自発的に発症する。数が10,000/mm3より下に下がると、内出血の明確な危険性が存在する。別の処置モダリティーは、静脈内ガンマグロブリン(IVGG)の使用を含み、これは、患者の80%において初期応答を生じる。そうは言っても、持続性の緩解は稀であり、治療の費用はかなりのものである。
【0097】
脾摘出術は、プレドニゾン、ダナゾール、ダプソン及びIVGGの試験後に、第2選択の治療として提供される。30,000/mm3以下の血小板数を有する慢性不応性ITPは、ビンカアルカロイド、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、骨髄移植及びトロンボポエチン等の処置選択肢を含む。図3は、免疫性血小板減少性紫斑病処置アルゴリズムの略図を示す(本明細書でその全体が参照により組み込まれるCines DB, Blanchette VS. Immune Thrombocytopenia Purpura. N Engl J Med 2002; 346: 995〜1008)。
【0098】
組み合わせでのレボセチリジン及びモンテルカストの投与は、自己免疫性障害の処置において予想外の優れた結果を示す。レボセチリジン+モンテルカストの組み合わせ使用は、第1選択のプレドニゾンに対する、新規で安全かつ有効な代替法さえも提供する。レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、ステロイド経路内で相乗的に作用し、関連するステロイド副作用を伴わない。更に、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせの投与は、患者に対して持続性の影響もまた有し得る;例えば、患者の白血球数は、少なくとも数カ月間及び潜在的には数年間にわたり、安定化及び維持され得る。
【0099】
レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、長期処置レジメンの一部として使用され得る。更に、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、多くの既存の処置プロトコールと併せて安全に使用され得る。例えば、グルココルチコイド、例えばプレドニゾン又はメチルプレドニゾロンが、レボセチリジン及びモンテルカストと組み合わせて、患者に投与され得る。別の例として、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド及びシクロスポリンが含まれるがこれらに限定されない免疫抑制薬もまた、レボセチリジン及びモンテルカストと組み合わせて、患者に投与され得る。レボセチリジン及びモンテルカストと組み合わされ得る、自己免疫性疾患の処置において使用される他の典型的な治療アプローチには、血小板クリアランスの阻害剤(例えば、静脈内免疫グロブリン;静脈内抗D免疫グロブリン、ビンカアルカロイド及びダナゾール)の使用、実験薬剤(例えば、CD20又はCD154に対する抗体、骨髄移植、及びトロンボポエチン)の使用、並びに脾摘出術が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、サプリメント、例えばグルコン酸第一鉄又はビタミンCが、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせと一緒に、患者に投与され得る。レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、抗細菌剤、例えばダプソン、又は治療的に活性なタンパク質、例えばフィルグラスチムと併せても、使用され得る。更に、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、免疫調節薬レナリドミド(Revlimid(登録商標))と共に使用され得る。
【0100】
一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、より低い投薬量の既存の治療と共に使用され得る。例えば、レボセチリジン及びモンテルカストは、より低い用量のステロイドを受けつつ、安全な臨床的パラメーター、例えば白血球数、血小板数を維持するために、伝統的な治療に対して別なふうに不応性の患者において使用され得る。これらは、敗血症等の重大な臨床的事象によって必要とされる場合、ステロイド漸減を促進するためにも使用され得る。
【0101】
例えば、敗血症が合併した脾摘出術後の免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)を有する患者における使用のための処置プロトコールの非限定的な例は、以下の通りであり得る:50,000/μLを下回る血小板数における低下を生じる感染、例えば、敗血症がある場合には、血小板数を安定化するために、処置レジメンにステロイドを追加する。その後、1〜2カ月間かけてステロイドを漸減させる。ステロイド漸減(60mgのプレドニゾン/日からゼロまで)の持続時間は、1日2回の投薬について、午前中に経口レボセチリジン2.5〜5mg+モンテルカスト5〜10mgを追加することによって、効率的に短縮され得る。数が安定化したところで、患者は、レボセチリジン及びモンテルカストの1日1回の投薬を再開し得る。従って、維持治療は、夜間に経口で5mgのレボセチリジン及び夜間に経口で10mgのモンテルカストからなり得る。
【0102】
従って、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、減少した投薬量のステロイドを患者が使用するのを可能にし(実施例1及び実施例2にも示される)、これは、日和見感染、電解質平衡異常、体重増加、体液貯留、白内障形成、高血圧、糖尿病及び骨粗鬆症を発症する危険性の減少を生じ、無数の潜在的グルココルチコイド副作用のうちのごく僅かだけを反復する。更に、必要とされるプレドニゾンの1日使用を低下させることは、患者のステロイド誘導性糖尿病及び関連する薬物療法の排除ももたらし得る。別の例として、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせの使用は、減少した投薬量の免疫抑制薬を患者が使用するのを可能にする。
【0103】
一部の実施形態では、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、既存の治療なしに使用され得る。かかる実施形態では、レナリドミド(Revlimid(登録商標))等の既存の治療の以前の使用に関連する毒性/副作用が回避され得る。
【0104】
特定の理論には束縛されないが、レボセチリジン及びモンテルカストは、それぞれ、H1受容体及びロイコトリエン受容体を遮断するように作用する。従って、レボセチリジン及びモンテルカストは、ロイコトリエンの放出を阻害することによって、全身性腫脹/浮腫を低減させ、ヒスタミンの放出を有効に遮断することによって、肺機能を改善する。しかし、炎症を低減させるにあたってその前任者よりも科学的により有効である原型抗ヒスタミン剤ジフェンヒドラミンよりもおよそ70年新しいのが、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせである。レボセチリジンは、抗ヒスタミン剤としてだけでなく、その抗炎症特性を介して、傷害に対する急性期応答を遮断し、この特性には、インターロイキン6(IL-6)及びインターロイキン8(IL-8)の抑制が一部含まれる。シグナル伝達タンパク質として、IL-6は、傷害及び発熱に対する急性期反応の最も重要なメディエーターの1つである。
【0105】
更に、レボセチリジンは、標的細胞、主に好中球において走化性を担う、傷害/炎症の部位にそれらの細胞を遊走させるシグナル伝達タンパク質IL-8を遮断する。好中球に加えて、同様にIL-8に応答する、広範な他の細胞、例えば、内皮細胞、肥満細胞、マクロファージ及びケラチノサイトが存在する。
【0106】
モンテルカストは、受容体においてLTD4の作用を遮断する。ロイコトリエンD4は、収縮している気道平滑筋中のシステイニルロイコトリエンのうちで最も強力である。ロイコトリエンD4は、好酸球、樹状細胞(抗原提示細胞)及びT細胞の動員を促進し、これが次に、細胞の動員及び活性化を増加させる。臨床的に、モンテルカストは、投与後数分間〜数時間で、FEV1を15%増加させることが示されている。
【0107】
レボセチリジン及びモンテルカストの両方が、好酸球の量/遊走に影響を与える。好酸球浸潤は、数人の権威によって炎症の顕著な特徴とみなされている。両方の分子が、炎症に対する急性期応答及び後期応答を遮断する。連続的投薬を用いて急性期が遮断されると、この後期は、以前よりも問題にならなくなるが、T細胞記憶は、時間と共に消散する。これらの分子の安全性によって強調される炎症性経路内の複数の作用部位を考慮すると、独自の相乗性が、レボセチリジンとモンテルカストとの間で同定され得る。免疫性血小板減少性紫斑病及び自己免疫性好中球減少症の処置に限定されず、この相乗性は、多数の形態の自己免疫性疾患を処置する際に有効である。
【0108】
当業者に容易に明らかなように、投与されるレボセチリジン及びモンテルカストの有用なin vivo投薬量並びに特定の投与様式は、患者の年齢、体重、医学的状態、処置される状態の重症度、投与の経路、患者の腎機能及び肝機能、並びに処置される哺乳動物種、使用される特定の化合物、並びにこれらの化合物が使用される特定の使用に応じて変動する。所望の結果を達成するために必要な投薬量レベルである有効投薬量レベルの決定は、慣用的な薬理学的方法を使用して、当業者によって達成され得る。典型的には、生成物のヒト臨床適用は、より低い投薬量レベルで開始され、投薬量レベルは、所望の効果が達成されるまで増加される。有利なことに、本発明の実施形態の化合物は、例えば、単一1日用量で投与され得、又は合計1日投薬量が、1日に2回、3回若しくは4回の分割用量で投与され得る。レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせの単一の1日投薬からの合併症は観察されていない。
【0109】
定義
用語「有効量」は、例えば、自己免疫性障害を処置するのに十分な、所望の結果を達成するための、必要な投薬量で及び必要な期間にわたって有効な量を含む。有効量のレボセチリジン及びモンテルカストは、被験体の疾患状態、年齢及び体重、並びにレボセチリジン及びモンテルカストが被験体において所望の応答を惹起する能力等の因子に従って、変動し得る。投薬量レジメンは、最適な治療応答を提供するために調整され得る。有効量は、レボセチリジン及びモンテルカストの任意の毒性又は有害効果(例えば、副作用)を、治療的に有益な効果が上回る量でもある。
【0110】
「寛解する」、「寛解」、「改善」等とは、例えば、例えば少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の、被験体において又は被験体の少なくとも少数派において生じる改善と一致する、検出可能な改善又は検出可能な変化を指す。かかる改善又は変化は、レボセチリジン及びモンテルカストで処置していない被験体と比較して、処置した被験体において観察され得、未処置の被験体は、同じ若しくは類似の疾患、状態、症状等を有している、又はそれらを発症することとなる。疾患、状態、症状又はアッセイパラメーターの寛解は、例えば、被験体による自己評価によって、臨床医の評価によって、或いは例えば、生活の質の評価、疾患若しくは状態の減速した進行、疾患若しくは状態の低減された重症度、又は生体分子、細胞のレベル若しくは活性についての適切なアッセイを含む適切なアッセイ又は測定を実施することによって、被験体における呼吸器若しくは炎症性障害の検出によって、及び/或いは写真、ビデオ、デジタル画像化及び肺機能試験等であるがこれらに限定されないモダリティーによって、主観的に又は客観的に決定され得る。寛解は、一過的、長期若しくは永続的であり得るか、或いは寛解は、レボセチリジン及びモンテルカストが被験体に投与される又は本明細書若しくは引用文献に記載されるアッセイ若しくは他の方法において使用される間又はその後の適切な時点において、例えば、以下に記載される時間枠内に、或いはレボセチリジン及びモンテルカストの投与若しくは使用の約1時間後〜被験体がかかる処置を受けた約28日又は1、3、6、9カ月若しくはそれ以上後において、可変性であり得る。
【0111】
例えば、症状、分子のレベル又は生物学的活性等の「モジュレーション」とは、例えば、検出可能に増加又は減少される症状又は活性等を指す。かかる増加又は減少は、レボセチリジン及びモンテルカストで処置していない被験体と比較して、処置した被験体において観察され得、未処置の被験体は、同じ若しくは類似の疾患、状態、症状等を有している、又はそれらを発症することとなる。かかる増加又は減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%若しくはそれ以上、又はこれらの値の任意の2つの間の任意の範囲内であり得る。モジュレーションは、例えば、被験体の自己評価によって、臨床医の評価によって、又は例えば、生活の質の評価、被験体内の分子、細胞若しくは細胞遊走のレベル若しくは活性についての適切なアッセイを含む適切なアッセイ若しくは測定を実施することによって、及び/或いは写真、ビデオ、デジタル画像化及び肺機能試験等であるがこれらに限定されないモダリティーによって、主観的に又は客観的に決定され得る。モジュレーションは、一過的、長期若しくは永続的であり得るか、或いはモジュレーションは、レボセチリジン及びモンテルカストが被験体に投与される又は本明細書若しくは引用文献に記載されるアッセイ若しくは他の方法において使用される間又はその後の適切な時点において、例えば、以下に記載される時間枠内に、又はレボセチリジン及びモンテルカストの投与若しくは使用の約1時間後〜被験体がレボセチリジン及びモンテルカストを受けた約3、6、9カ月若しくはそれ以上後において、可変性であり得る。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「防止する」、「防止すること」及び「防止」とは、自己免疫性障害の再発、発生又は発症の防止を指す。防止することには、上気道感染及び/又は下気道感染の出現及び重症度に対して防御することが含まれる。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「予防的有効量」とは、自己免疫性障害の発症、再発若しくは発生の防止を生じるのに十分な、又は別の治療の予防効果を増強若しくは改善するのに十分な、治療(例えば、モンテルカスト及びレボセチリジンを含む医薬組成物)の量を指す。
【0114】
本明細書で使用する場合、「被験体」には、自己免疫性障害、又はモンテルカスト及びレボセチリジンの組合せによって処置可能な他の障害に罹患することが可能な生物、或いは本明細書に記載されるようにモンテルカスト及びレボセチリジンの投与から他の方法で利益を得うる生物、例えば、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。好ましいヒト動物には、ヒト被験体が含まれる。用語「非ヒト動物」には、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等が含まれる。
【0115】
以下の実施例は、例示の目的で提示されているのであって、限定と解釈すべきではない。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
症例研究:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
【0117】
【表11】
【0118】
HPI:
元々、長期にわたるITP(特発性血小板減少性紫斑病)に対して二次的な再発性の鼻血のために、2011年に本発明者らの診察室で診察及び処置した、年齢44歳の雌性。鼻血は、顕微鏡及び硝酸銀焼灼術で処置した。
【0119】
過去の診療歴は、プレドニゾン、及び静脈内ガンマグロブリンの周期性の使用で処置した、2000年に診断されたITPについて顕著である。この患者の臨床過程には、連鎖球菌肺炎敗血症が合併し、2004年6月30日から2004年7月3日までの入院を必要とした。この事象は、重症の大動脈不全症の発症によって強調された。その後、YSは、この患者のITPから低い血小板数を安定化し、この患者を心臓手術のために準備する試みにおいて、2005年9月7日に脾摘出術を受けた。この患者は、引き続いて、2005年10月18日に機械大動脈弁を受けた。弁自体は、コンスタントなモニタリングを必要とする抗凝固薬Coumadin(登録商標)(ワルファリン)の毎日の投与を要求する。
【0120】
社会的Hx:結婚している、Santa Barbara在住。
【0121】
宗教:エホバの証人
【0122】
嗜癖:
アルコール-なし
タバコ-なし
コーヒー-1日1杯
炭酸水-なし
コーヒー-1日1杯
茶-なし
【0123】
【表12】
【0124】
【表13】
【0125】
【表14】
【0126】
関連の身体検査:
【0127】
体重:130ポンド 58kg/身長:5'9.5" 176.5cm/BMI 18.9-正常
【0128】
【表15】
【0129】
間欠期の主要な医学的問題:2012年2月20日から2012年3月3日までの入院を必要とした肺炎連鎖球菌(Strep pneumococcal)敗血症
【0130】
退院時バイタルサイン:
【0131】
T 35.9℃/96.7°F 脈拍67拍/分 B/P 105/75 RR 20/分
【0132】
室内空気100%でのO2飽和度
【0133】
【表16】
【0134】
臨床過程:
【0135】
2012年3月18日に、この患者を、68kの低い血小板数及び4.67の上昇したINRに対して二次的な鼻血について、Santa Barbara Cottage Hospital Emergency Roomにおいて診察した。機械大動脈弁に起因して、Coumadin(登録商標)は、凝固による心臓死の恐れなしに完全に中断することはできなかった。この患者に、経口ビタミンKを5mg与え、危険なほど上昇したINRを一部逆転させ、家に送り返した。
【0136】
【表17】
【0137】
更なる治療:2012年3月20日-レボセチリジン及びモンテルカストの開始
【0138】
その後、YSを、適所にある鼻バルーンと共に、2012年3月20日に本発明者らの診察室で診察した。高用量ステロイド、プレドニゾン60mg/日が、敗血症及び入院後に骨髄及び基礎疾患プロセスを安定化するために、この患者の血液学者/腫瘍学者によって維持されていた。
【0139】
【表18】
【0140】
ITP処置プロトコールを補完するために、二重の安全なステロイド節約性の抗炎症剤として、毎日の経口レボセチリジン5mg+毎日の経口モンテルカスト10mgを開始した。グルコン酸第一鉄(鉄)324mg+鉄の吸収を補助するためのビタミンC 500mgもまた、ヘモグロビン及びヘマトクリットを正常レベルまで回復させることが示唆された。
【0141】
顕著に改善された血小板値は、図2A図2Cに示すように、2012年4月中旬から2012年9月初旬まで、50k〜60k/μL(正常150k〜450k/μL)のベースラインから100k/μLを上回って持続した。図2Aは、レボセチリジン及びモンテルカストによる処置の開始の6日後の血小板数を示す。53kの血小板数から、このレベルは、処置を開始して僅か6日後に、183k/μLの、10年間の最高値にまで上昇した。反復するために、ベースライン血小板数は、伝統的には50k〜60k/μLの間であった。2012年3月初旬における数は、敗血症のための入院(2012年2月20日〜2012年3月3日)の間に開始した高用量プレドニゾン60mg/日に対する応答を反映している。プレドニゾンを、2012年6月に15mg/日まで漸減させた。
【0142】
概要:
【0143】
この症例は、ITP(特発性血小板減少性紫斑病)の処置のための2つの非常に安全な妊娠カテゴリーB分子:レボセチリジン+モンテルカスト間の顕著な抗炎症相乗性の臨床例である。
【0144】
上述のように、レボセチリジン及びモンテルカストの組み合わせは、ステロイド節約性である。これらの分子は、以下のために使用され得る:(a)既存の治療を補強するため、又は(b)ステロイド若しくはその多くが非常に毒性である他の免疫調節剤(例えば、レナリドミド(Revlimid(登録商標))の使用に頼ることなしに、特定の症例において一次的に。より低い用量のステロイドが、日和見感染、電解質平衡異常、体重増加、体液貯留、白内障形成、高血圧、糖尿病及び骨粗鬆症を発症する危険性を減少させ、無数の潜在的ステロイド副作用のうちのごく僅かだけを反復する。
【0145】
レボセチリジン+モンテルカストの単一の1日投薬からの合併症は存在しなかった。
【0146】
(実施例2)
症例研究:自己免疫性好中球減少症及びステロイド誘導性糖尿病を有する69歳の雌性
【0147】
【表19】
【0148】
この患者は、2008年の画像化で存在した蝶形骨洞炎の評価のために、2011年に本発明者らの診察室で診察及び評価した69歳の雌性である。鼻副鼻腔炎を、1997年12月に骨髄生検を介して診断された慢性自己免疫性好中球減少症の病歴によって強調した。好中球減少症の発生に数カ月間早く先行して、殺虫剤曝露があった。
【0149】
過去の診療歴には、Coumadin(登録商標)予防を必要とする深部静脈血栓症、重症の関節リウマチ、高血圧及びステロイド誘導性糖尿病が合併している。プレドニゾンなしの場合、この患者は、両手の顕著な関節疼痛及び腫脹を経験する。
【0150】
職業歴:引退したコンピューター科学者
【0151】
主要な医学的問題:
【0152】
自己免疫性好中球減少症
【0153】
重症の関節リウマチ
【0154】
2010年9月に、ループス抗凝固薬に起因する深部静脈血栓症及び肺塞栓症の病歴
【0155】
右脚に影響する脳卒中、2011年3月3日
【0156】
慢性蝶形骨洞炎
【0157】
糖尿病(ステロイド誘導性)
【0158】
重症血管炎
【0159】
脾腫
【0160】
補充を受けている甲状腺機能低下症
【0161】
慢性プレドニゾン使用
【0162】
ステロイド誘導性高血圧、副腎抑制、糖尿病、体重増加、体液貯留及び骨減少症
【0163】
肺動脈高血圧
【0164】
右肋骨横隔膜角腔腫瘤-肺梗塞と一致する3.4cm
【0165】
【表20】
【0166】
【表21】
【0167】
必要に応じて:
【0168】
Coumadin(登録商標)の抗凝固効果を補強するために必要に応じて注射されるLovenox(登録商標)(エノキサパリン)200mg
【0169】
好中球絶対数が1000を下回る場合に白血球数を増加させるためのNeupogen(登録商標)(フィルグラスチム)。Neupogen(登録商標)は、顆粒球及びマクロファージの増殖及び分化を刺激する。
【0170】
【表22】
【0171】
【表23】
【0172】
【表24】
【0173】
関連の身体検査:
【0174】
バイタルサイン:T 96.5°F 35.8℃ B/P 151/81 脈拍 84拍/分 呼吸数14/分
【0175】
体重:204〜218ポンド/92.7〜99kg 身長:5'8"/172.7cm BMI 31.0/肥満クラスI/III
【0176】
【表25】
【0177】
【表26】
【0178】
【表27】
【0179】
【表28】
【0180】
評価:自己免疫性好中球減少症(1997年に診断)、重症の関節リウマチ及びステロイド誘導性糖尿病を有する、69歳の雌性
【0181】
臨床過程/処置レジメン:2011年6月28日:レボセチリジン及びモンテルカストを開始した
【0182】
この患者を、2011年6月28日に経過観察において診察して、この患者の慢性副鼻腔炎に関する記録を検討した。それまでに、この患者は、2011年3月3日に、左下肢に影響する脳卒中を経験した。Coumadin(登録商標)(ワルファリン)を、24時間毎に皮下注射したLovenox(登録商標)(エノキサパリン)130mg+経口Plavix(登録商標)(クロピドグレル)75mg/日によって、引き続いて置き換えた。Medrol(登録商標)(メチルプレドニゾロン)24mgを、プレドニゾン35mg/日及び90mgまで増加させた1週間に1回のメトトレキセートによって置き換えた。
【0183】
潜在的蝶形骨洞手術の危険性の高い性質に起因して、レボセチリジン+モンテルカストの6カ月試験からなる医療的選択肢を議論した。製品、安全性、経路及び科学を、詳細に検討した。この患者に、引き続いて、2011年6月28日に、毎日のレボセチリジン5mg+毎日のモンテルカスト10mgを開始させた。
【0184】
2011年8月24日に、PBを、Sansum Santa Barbara Medical Foundation Clinicにおいて、この患者の腫瘍学者が独立して診察した。医療記録からの引用は以下のとおりである:「奇跡的に思えるのは、この患者が、May医師がレボセチリジン及びモンテルカストを開始して以降、その白血球数が正常化したことである。2011年7月に、この患者の白血球数は、73%好中球で2.8Kであった。2011年8月に、この患者の白血球数は、90%好中球で4.6k/μLであった。この患者のCRP(C反応性タンパク質、炎症の指標、正常<10)は、7.5に下がる。この患者の沈降速度(炎症の別の指標、正常0〜20)は、6である。臨床的に、この患者は「気分がよい」。
【0185】
レボセチリジン+モンテルカストによる持続性の処置の効果
【0186】
この患者は、2011年6月28日以降、レボセチリジン+モンテルカストで維持してきた。この患者の白血球数は、10年間で最も高い平均レベルに安定化していた。彼女の総白血球数は、過去19カ月間の任意の時点において、2.6k/μLを下回ることはなかった。最近の数は、2012年11月5日に5.5K/μL、2012年12月4日に4.5K/μL及び2013年1月22日に4.1K/μLであった。プレドニゾン及びメトトレキセートの両方を、新たな処置プロトコールの開始のおよそ2カ月後の2011年8月23日に、それぞれ20mg/日及び20mg/週に漸減した。2011年12月15日に、プレドニゾンを15mg/日にまで低減し、それによって、この患者の糖尿病及び関連する薬物療法を排除した。
【0187】
概要:
【0188】
この症例は、自己免疫性疾患の一形態、自己免疫性好中球減少症の処置のために、2つの非常に安全な分子:レボセチリジン+モンテルカスト間の顕著な抗炎症性相乗性の臨床例である。組み合わせ治療は、患者の白血球数を安定化し、必要とされるプレドニゾンの1日使用を低下させることによって、生活の質を劇的に改善した。この低減は、この患者のステロイド誘導性糖尿病の排除をもたらした。
図1
図2A
図2B
図2C
図3