特許第6441900号(P6441900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441900
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】金属空気電池用空気極
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20181210BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20181210BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M2/16 M
   H01M4/86 B
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-510251(P2016-510251)
(86)(22)【出願日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2015057679
(87)【国際公開番号】WO2015146671
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-68047(P2014-68047)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】山村 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 達哉
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直美
(72)【発明者】
【氏名】山田 直仁
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/073292(WO,A1)
【文献】 特開2012−043567(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/168810(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/157317(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/035741(WO,A1)
【文献】 特開2013−201139(JP,A)
【文献】 特開2014−011000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/00 − 16/00
H01M 4/86 − 4/98
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータと、
前記セパレータ上に設けられ、空気極触媒、電子伝導性材料、及び水酸化物イオン伝導性材料を含んでなる、あるいは電子伝導性材料としても機能する空気極触媒、及び水酸化物イオン伝導性材料を含んでなる、空気極層と、
を備えてなり、
前記空気極層における前記水酸化物イオン伝導性材料の含有比率が、体積基準で、前記空気極層の外側表面から、前記空気極層と前記セパレータとの界面に向かって、段階的に又は徐々に高くなる、金属空気電池用空気極。
【請求項2】
前記空気極層と前記セパレータとの界面近傍における前記水酸化物イオン伝導性材料の含有比率が、体積基準で、前記空気極層の外側表面近傍における前記水酸化物イオン伝導性材料の含有比率の1.2倍以上である、請求項1に記載の空気極。
【請求項3】
前記空気極層が、前記水酸化物イオン伝導性材料の含有比率が相対的に高い第一空気極層と、前記水酸化物イオン伝導性材料の含有比率が相対的に低い第二空気極層とを含み、前記第一空気極層が前記セパレータと接触され、かつ、前記第二空気極層が外気に露出されてなる、請求項1又は2に記載の空気極。
【請求項4】
前記空気極層が1〜50μmの厚さを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項5】
前記空気極層が5〜50μmの厚さを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項6】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が88%以上の相対密度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項7】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、水熱法によって緻密化された層状複水酸化物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項8】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、一般式:
2+1−x3+(OH)n−x/n・mH
(式中、M2+は少なくとも1種以上の2価の陽イオンであり、M3+は3価の少なくとも1種以上の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)の基本組成を有する層状複水酸化物からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項9】
2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がCO2−を含む、請求項に記載の空気極。
【請求項10】
前記水酸化物イオン伝導性材料が、一般式:
2+1−x3+(OH)n−x/n・mH
(式中、M2+は少なくとも1種以上の2価の陽イオンであり、M3+は3価の少なくとも1種以上の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)の基本組成を有する層状複水酸化物を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項11】
2+がNi2+を含み、M3+がFe3+を含み、An−がNO3−及び/又はCO2−を含む、請求項1に記載の空気極。
【請求項12】
前記水酸化物イオン伝導性材料が、水酸化物イオン伝導性を有する高分子材料を含んでなる、請求項1〜1のいずれか一項に記載の空気極。
【請求項13】
請求項1〜1のいずれか一項に記載の空気極と、金属負極と、電解液とを備えてなり、前記電解液が前記空気極の前記セパレータを介して前記空気極層と隔離されてなる、金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池用空気極に関するものであり、特に亜鉛空気二次電池やリチウム空気二次電池等の金属空気二次電池に適した空気極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
革新電池候補の一つとして金属空気電池が挙げられる。金属空気電池は、正極活物質である酸素が空気中から供給されるため、電池容器内のスペースを負極活物質の充填に最大限利用することができ、それにより原理的に高いエネルギー密度を実現することができる。
【0003】
例えば、亜鉛を負極活物質として用いる亜鉛空気電池においては、電解液として水酸化カリウム等のアルカリ水溶液が用いられ、正負極間の短絡を防止するためにセパレータ(隔壁)が用いられる。放電時には、以下の反応式に示されるように、空気極(正極)側でOが還元されてOHが生成する一方、負極で亜鉛が酸化されてZnOが生成する。
正極: O+2HO+4e→4OH
負極: 2Zn+4OH→2ZnO+2HO+4e
【0004】
この亜鉛空気電池を二次電池として使う試みもなされたが、実際には電解液に可溶のイオン種Zn(OH)2−が生成し、これが充電時に還元されて金属亜鉛が樹枝状に析出してデンドライトを形成し、このデンドライトがセパレータを貫通して正極と短絡を起こしてしまうという問題があった。また、空気極側では、空気中の二酸化炭素が空気極を通り抜けて電解液に溶解し、炭酸イオンが生成して電解液が劣化するという問題もあった。これらの問題に対し、特許文献1(国際公開第2013/073292号)では、亜鉛空気二次電池において、セパレータとして水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体を用い、かつ、無機固体電解質体を空気極の一面側に密着させて設けることが提案されており、そのような無機固体電解質体として、M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHOなる一般式(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンである)で表わされる層状複水酸化物(LDH)の緻密な水熱固化体の使用が提案されている。そして、このような種類のセパレータである無機固体電解質体上に、白金等の触媒粒子及びカーボン等の導電粒子で構成される空気極が形成されている。
【0005】
上記同様の問題はリチウム空気二次電池でも起こりうる。この点、特許文献2(国際公開第2013/161516号)には、リチウム空気二次電池において、陰イオン交換体として水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体を用い、かつ、無機固体電解質体を空気極の一面側に密着させて設けることが開示されており、そのような無機固体電解質体として層状複水酸化物(LDH)の緻密な水熱固化体の使用が提案されている。そして、このような種類の陰イオン交換体である無機固体電解質体上に、白金等の触媒粒子及びカーボン等の導電粒子で構成される空気極が形成されている。
【0006】
一方で、金属空気電池の性能を向上すべく、様々な空気極が提案されている。例えば、特許文献3(特許第5207407号公報)には、高分子膜である陰イオン交換膜と空気極用触媒層とを積層した構造を有する空気極が開示されており、空気極触媒層に陰イオン交換樹脂を混合した構造とすることで、良好な水酸化物イオンの伝導性を維持できることが記載されている。特許文献4(特開2013−201056号公報)には層状複水酸化物と遷移金属元素を有する触媒とを含んでなる空気極触媒層が開示されており、触媒層の電解質側に陰イオン交換体を設けてもよく、そのような陰イオン交換体として層状複水酸化物からなる陰イオン伝導性電解質膜(特に、分散液による塗膜)が使用可能であることが記載されている。特許文献5(特許第5158150号公報)には空気極触媒及び導電性材料を含有する金属空気電池用の空気極であって、空気極触媒が層状複水酸化物を含有する空気極が開示されている。特許文献6(特許第5221626号公報)には空気極触媒、空気極用電解質及び導電性材料を含有する金属空気二次電池用の空気極であって、空気極用電解質が層状複水酸化物を含有し、且つ、空気極触媒及び層状複水酸化物の総質量を100質量%としたときの層状複水酸化物の含有割合が10〜20質量%である、空気極が記載されている。しかしながら、これらの特許文献3〜6に開示される空気極は、特許文献1に開示される層状複水酸化物(LDH)の水熱固化体のような緻密質セラミックスをセパレータとして用いるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/073292号
【特許文献2】国際公開第2013/161516号
【特許文献3】特許第5207407号公報
【特許文献4】特開2013−201056号公報
【特許文献5】特許第5158150号公報
【特許文献6】特許第5221626号公報
【特許文献7】国際公開第2011/108526号
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、今般、緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータ上に、空気極触媒及び電子伝導性材料のみならず、水酸化物イオン伝導性材料をも含有させた空気極層を形成することで、緻密質セラミックスセパレータによる所望の特性を確保しながら、金属空気電池において空気極の反応抵抗を有意に低減できるとの知見を得た。
【0009】
本発明の目的は、緻密質セラミックスセパレータを用いた空気極において、緻密質セラミックスセパレータによる所望の特性を確保しながら、金属空気電池において空気極の反応抵抗を有意に低減することにある。
【0010】
本発明の一態様によれば、緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータと、
前記セパレータ上に設けられ、空気極触媒、電子伝導性材料、及び水酸化物イオン伝導性材料を含んでなる、あるいは電子伝導性材料としても機能する空気極触媒、及び水酸化物イオン伝導性材料を含んでなる、空気極層と、
を備えてなる、金属空気電池用空気極が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、本発明の空気極と、金属負極と、電解液とを備えてなり、前記電解液が前記空気極の前記セパレータを介して前記空気極層と隔離されてなる、金属空気電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の空気極の一例を示す模式断面図である。
図2】本発明の空気極の他の一例を示す模式断面図である。
図3】本発明の空気極の他の一例を示す模式断面図である。
図4】例1〜5で用いた電位降下測定用の電気化学測定系の構成を示す模式図である。
図5】従来における空気極の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
空気極
本発明による空気極は金属空気電池、特に金属空気二次電池に用いられるものである。本発明の空気極が用いられる金属空気電池は、典型的には、水酸化物イオン伝導性セパレータと、このセパレータの一面側に密着して設けられる正極としての空気極層と、セパレータの他面側に設けられる金属負極と、空気極層と負極との間にセパレータを介して収容される電解液とを備えた構成が想定され、この水酸化物イオン伝導性セパレータと空気極層の組合せに相当する部分が本発明の空気極に相当する。その意味で、本発明による空気極は空気極−セパレータ複合体と称してもよいものである。このような構成の金属空気二次電池の好ましい例としては、特許文献1及び2に開示されるような亜鉛空気二次電池やリチウム空気二次電池が挙げられる。
【0014】
図1に本発明の空気極の一例を模式的に示す。図1に示されるように、空気極10は、セパレータ11と、セパレータ11上に設けられる空気極層12とを有する。セパレータ11は、緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる。空気極層12は、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15を含んでなるか、又は電子伝導性材料14としても機能する空気極触媒13、及び水酸化物イオン伝導性材料15を含んでなる。このように、緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータ11上に、従来から使用される空気極触媒13及び電子伝導性材料14のみならず、水酸化物イオン伝導性材料15をも含有させた空気極層12を形成することで、緻密質セラミックスセパレータ11による所望の特性を確保しながら、金属空気電池において空気極の反応抵抗を有意に低減することが可能となる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータを用いることで、その高い緻密性に起因して二酸化炭素の電解液への混入等を防止することができ、その結果、炭酸イオンの生成による電解液の劣化を防止して電池性能の低下を回避することができる。また、その緻密性及び硬さに起因して、亜鉛空気二次電池の充電時における亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡を防止することもできる。その結果、特性劣化しにくく信頼性の高い金属空気電池(特に金属空気二次電池)を構成することが可能となる。しかしながら、図5に示される従来の空気極100のように、水酸化物イオン伝導性を有する緻密質セラミックスセパレータ101を用いて空気極触媒103及び電子伝導性材料104で構成される空気極層102を形成した場合、空気極層102の反応抵抗は十分には低くならない。これは、イオン伝導相(図5ではセパレータ101)と、電子伝導相(図5では電子伝導性材料104)と、気相(空気)とからなる三相界面がセパレータ101と空気極層102の界面のみに存在することになるところ、セパレータ101が緻密質セラミックスであるとその界面の三相界面の表面積が非常に小さくなり、その結果、電池反応に寄与する水酸化物イオンの授受が極めて局所的にしか行われないためではないかと推察される。これに対し、本発明では、図1に示されるように、空気極触媒13及び電子伝導性材料14のみならず、水酸化物イオン伝導性材料15をも空気極層12中に含有させる。こうすることで、上述した三相界面がセパレータ11と空気極層12の界面のみならず空気極層12中にも存在することになり、電池反応に寄与する水酸化物イオンの授受がより広い表面積で効果的に行われることになる結果、金属空気電池において空気極の反応抵抗が有意に低減されるのではないかと考えられる。
【0016】
したがって、空気極層12は、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15を含んでなる。もっとも、電子伝導性材料14としても機能する空気極触媒13を用いる場合には、空気極層12は、そのような電子伝導性材料兼空気極触媒と水酸化物イオン伝導性材料とを含んでなるものであってもよい。
【0017】
空気極触媒13は、金属空気電池における正極として機能するものであれば特に限定されず、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒13の好ましい例としては、黒鉛等の酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料、白金、ニッケル等の酸化還元触媒機能を有する金属、ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等の酸化還元触媒機能を有する無機酸化物が挙げられる。空気極触媒13の形状は特に限定されないが、粒子形状であるのが好ましい。空気極層12における空気極触媒13の含有量は、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15の全体量を100体積%とした場合に、5〜70体積%であるのが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、さらに好ましくは20〜50体積%である。
【0018】
電子伝導性材料14は、導電性を有し、空気極触媒13とセパレータ11との間で電子伝導を可能とするものであれば特に限定されない。電子伝導性材料14の好ましい例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類、ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。電子伝導性材料14の形状は、粒子形状であってもよいし、その他の形状であってもよいが、空気極層12において厚さ方向に連続した相(即ち電子伝導相)をもたらす形態で用いられるのが好ましい。例えば、電子伝導性材料14は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料14は空気極触媒13との混合物ないし複合体の形態(例えば白金担持カーボン)であってもよく、前述したように電子伝導性材料としても機能する空気極触媒(例えば遷移金属を含有するペロブスカイト型化合物)であってもよい。空気極層12における電子伝導性材料14の含有量は、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15の全体量を100体積%とした場合に、10〜80体積%であるのが好ましく、より好ましくは15〜70体積%であり、さらに好ましくは20〜60体積%である。
【0019】
水酸化物イオン伝導性材料15は、水酸化物イオンを透過可能な材料であれば特に限定されず、無機材料及び有機材料を問わず、各種の材質及び形態の材料が使用可能である。水酸化物イオン伝導性材料15は、図1に示されるような粒子形態に限らず、図2に示される空気極層12’において水酸化物イオン伝導性材料15’として示されるように、空気極触媒13及び電子伝導性材料14を部分的に又は概ね全体的に被覆するような塗布膜の形態であってもよい。もっとも、この塗布膜の形態においても、イオン伝導性材料15’は緻密質ではなく、開気孔を有しており、空気極層12’の外側表面からセパレータ11との界面に向かって、OやHOが気孔中を拡散できるように構成されるのが望ましい。空気極層12,12’における水酸化物イオン伝導性材料15の含有量は、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15の全体量を100体積%とした場合に、5〜95体積%であるのが好ましく、より好ましくは5〜85体積%であり、さらに好ましくは10〜80体積%である。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、水酸化物イオン伝導性材料15は、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は少なくとも1種以上の2価の陽イオンであり、M3+は3価の少なくとも1種以上の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)の基本組成を有する層状複水酸化物を含んでなるのが好ましい。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはNi2+、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Cu2+、Zn2+が挙げられ、より好ましくはNi2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはFe3+、Al3+、Co3+,Cr3+、In3+が挙げられ、より好ましくはFe3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはNO3−、CO2−、SO2−、OH、Cl、I、Br、Fが挙げられ、より好ましくはNO3−及び/又はCO2−である。したがって、上記一般式は、M2+がNi2+を含み、M3+がFe3+を含み、An−がNO3−及び/又はCO2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1〜3である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは任意の実数である。より具体的には、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数ないし整数である。本発明の別の好ましい態様によれば、水酸化物イオン伝導性材料15は、NaCo、LaFeSr10、BiSr14Fe2456、NaLaTiO、RbLaNb、及びKLaNbのいずれかを水和させたもの、及びSrCo1.6Ti1.4(OH)・xHOからなる群から選択される少なくとも一種の基本組成を有するものであってもよい。これらの無機固体電解質は、特許文献7(国際公開第2011/108526号)において、燃料電池用の水酸化物イオン伝導性固体電解質として開示されるものであり、焼結により上記基本組成の緻密質焼結体を作製後、還元・加水処理を行って水酸化物イオン伝導性を発現させることにより得ることができる。
【0021】
本発明の別の好ましい態様によれば、水酸化物イオン伝導性材料15は、水酸化物イオン伝導性を有する高分子材料を含んでなるものであってもよく、あるいはそのような高分子材料と上述した層状複水酸化物との混合物又は複合体であってもよい。水酸化物イオン伝導性を有する高分子材料は、水酸化物イオンを透過可能な陰イオン交換基を有する高分子材料を使用するのが好ましい。水酸化物イオン伝導性を有する高分子材料の好ましい例としては、四級アンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等の陰イオン交換基を有する炭化水素系樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリアリーレンエーテル等)、フッ素系樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
【0022】
空気極層12の形成は、最終的にセパレータ11上に空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15を含む層を形成できる限り、あらゆる手法で行われてよく、特に限定されない。例えば、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15をエタノール等の溶媒を用いて湿式混合して乾燥及び解砕した後、バインダーと混合してフィブリル化し、得られたフィブリル状混合物を集電体に圧着して空気極層12を形成し、この空気極層12/集電体の積層シートの空気極層12側をセパレータ11に圧着してもよい。あるいは、空気極触媒13、電子伝導性材料14、及び水酸化物イオン伝導性材料15をエタノール等の溶媒と共に湿式混合してスラリー化し、このスラリーをセパレータに塗布して乾燥させて空気極層12を形成してもよい。
【0023】
したがって、空気極層12はバインダーを含んでいてもよい。バインダーは、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってよく特に限定されないが、好ましい例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロール(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、図3に示されるように、空気極層12における水酸化物イオン伝導性材料15の含有比率が、体積基準で、空気極層12の外側表面から、空気極層12とセパレータ11との界面に向かって、段階的に又は徐々に高くなるようにしてもよい。こうすることで、空気極層12’’の外側においては、比較的少ない水酸化物イオン伝導性材料に起因して空気極触媒13と空気との接触比率を高くして触媒反応を促進できる一方、空気極層12の外側表面からセパレータ11との界面に向かって水酸化物イオンの伝導経路を多く確保することで触媒反応により生成した水酸化物イオンを効率良くセパレータ11に伝導することができる。なお、図3においても、イオン伝導性材料15は粒子及び塗布膜のいずれの形態であってもよく、塗布膜の形態の場合、緻密質ではなく、開気孔を有しており、空気極層12’’の外側表面からセパレータ11との界面に向かって、OやHOが気孔中を拡散できるように構成されるのが望ましい。好ましくは、空気極層12とセパレータ11との界面近傍における水酸化物イオン伝導性材料の含有比率は、体積基準で、空気極層12の外側表面近傍における水酸化物イオン伝導性材料の含有比率の1.2倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、又は3.0倍以上とすればよい。例えば、空気極層12は、水酸化物イオン伝導性材料15の含有比率が相対的に高い第一空気極層12aと、水酸化物イオン伝導性材料15の含有比率が相対的に低い第二空気極層12bとを含み、第一空気極層12aがセパレータ11と接触され、かつ、第二空気極層12bが外気に露出されてなるのが好ましい。この場合、第一空気極層12aにおける水酸化物イオン伝導性材料の含有比率は、体積基準で、第二空気極層12bにおける水酸化物イオン伝導性材料の含有比率の1.2倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、又は3.0倍以上とすればよい。
【0025】
空気極層12は1〜50μmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは5〜40μmであり、特に好ましくは5〜35μm、最も好ましくは5〜30μmである。このような厚さであると、ガス拡散抵抗の増大を抑えながら三相界面の面積を比較的大きく確保することができ、空気極の反応抵抗の低減をより好ましく実現することができる。
【0026】
空気極10は空気極層12のセパレータ11と反対側の面に正極集電体を備えたものであってもよい。この場合、正極集電体は空気極層12に空気が供給されるように通気性を有するのが好ましい。正極集電体の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属板若しくは金属メッシュ、カーボンペーパー、カーボンクロス、及び電子伝導性酸化物等が挙げられ、耐食性及び通気性の点でステンレス金網が特に好ましい。
【0027】
セパレータ11は、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなり、空気極層12で生成した水酸化物イオンを電解液に選択的に通過させることが可能な緻密質セラミックスであればよい。すなわち、セパレータ11は、空気中に含まれる二酸化炭素等の望ましくない物質の電池内への混入を阻止すると同時に、電解液中のアルカリ金属イオンが空気極層12まで移動するのを阻止する。したがって、セパレータ11は二酸化炭素を通さないものであることが望まれる。かかる理由から、セパレータ11は緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質で構成される。特に、セパレータ11は緻密で硬い無機固体電解質で構成されることで、金属デンドライト(例えば亜鉛デンドライト)による正負極間の短絡及び二酸化炭素の混入の両方を防止することができるのが好ましい。このような水酸化物イオン伝導性固体電解質は、アルキメデス法で算出して、88%以上の相対密度を有するのが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは94%以上であるが、空気中に含まれる二酸化炭素等の望ましくない物質の電池内への混入や亜鉛デンドライトの貫通を阻止できるのであればこれに限定されない。水酸化物イオン伝導性無機固体電解質は一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は少なくとも1種以上の2価の陽イオンであり、M3+は3価の少なくとも1種以上の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)の基本組成を有する層状複水酸化物(LDH)であるのが好ましく、より好ましくはM2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がCO2−を含む。このような層状複水酸化物は水熱法によって緻密化されるのが好ましい。したがって、水熱法を経ていない単なる圧粉体は、緻密でなく、溶液中で脆いことから本発明のセパレータ11として好ましくない。また、層状複水酸化物を含む分散液を塗布して形成された塗膜も緻密性に劣ることから本発明のセパレータ11として好ましくない。もっとも、水熱法によらなくても、緻密で硬い水酸化物イオン伝導性固体電解質体が得られるかぎりにおいて、あらゆる固化法が採用可能である。このように、セパレータ11は層状複水酸化物緻密体からなるものが好ましい。好ましい層状複水酸化物緻密体及びその製造方法については後述するものとする。
【0028】
本発明の別の好ましい態様によれば、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、NaCo、LaFeSr10、BiSr14Fe2456、NaLaTiO、RbLaNb、及びKLaNbのいずれかを水和させたもの、及びSrCo1.6Ti1.4(OH)・xHOからなる群から選択される少なくとも一種の基本組成を有するものであってもよい。これらの無機固体電解質は、特許文献7(国際公開第2011/108526号)において、燃料電池用の水酸化物イオン伝導性固体電解質として開示されるものであり、焼結により上記基本組成の緻密質焼結体を作製後、還元・加水処理を行って水酸化物イオン伝導性を発現させることにより得ることができる。
【0029】
セパレータ11の形状は特に限定されず、緻密な板状及び膜状のいずれであってもよいが、板状に形成されてなるのが金属デンドライトの貫通、二酸化炭素の混入及びアルカリ金属イオンの空気極への移動をより一層効果的に阻止できる点で好ましい。もっとも、セパレータ11が、二酸化炭素の混入及びアルカリ金属イオンの空気極への移動を十分に阻止できる程の緻密性を有するのであれば膜状に形成されるのも好ましい。板状の水酸化物イオン伝導性固体電解質体の好ましい厚さは、0.1〜1mmであり、より好ましくは0.1〜0.5mm、さらに好ましくは0.1〜0.2mmである。膜状の水酸化物イオン伝導性固体電解質体の好ましい厚さは、0.001〜0.05mmであり、より好ましくは0.001〜0.01mm、さらに好ましくは0.001〜0.005mmである。また、水酸化物イオン伝導性固体電解質の水酸化物イオン伝導度は高ければ高い方が望ましいが、典型的には1×10−4〜1×10−1S/m(1×10−3〜1mS/cm)、より典型的には1.0×10−4〜1.0×10−2S/m(1.0×10−3〜1.0×10−1mS/cm)の伝導度を有する。
【0030】
セパレータ11は、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質を含んで構成される粒子群と、これら粒子群の緻密化や硬化を助ける補助成分との複合体であってもよい。あるいは、セパレータ11は、基材としての開気孔性の多孔質体と、この多孔質体の孔を埋めるように孔中に析出及び成長させた無機固体電解質(例えば層状複水酸化物)との複合体であってもよい。この多孔質体を構成する物質の例としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスが挙げられる。
【0031】
セパレータ11上により安定に水酸化物イオンを保持するために、セパレータ11の片面又は両面に多孔質基材を設けてもよい。セパレータ11の片面に多孔質基材を設ける場合には、多孔質基材を用意して、この多孔質基材に無機固体電解質を成膜する手法が考えられる。一方、セパレータ11の両面に多孔質基材を設ける場合には、2枚の多孔質基材の間に無機固体電解質の原料粉末を挟んで緻密化を行うことが考えられる。多孔質基材は層状複水酸化物からなるものであってもよいし、水酸化物イオン伝導性を有する高分子からなるものであってもよい。
【0032】
金属空気電池
本発明による空気極を用いて金属空気電池、特に金属空気二次電池を作製することができる。このような金属空気電池は、本発明の空気極10と、金属負極と、電解液とを備えてなり、電解液が空気極のセパレータ11を介して空気極層12と隔離されてなるものであればよい。金属負極は、亜鉛、リチウム、アルミニウム、マグネシウム等の公知の金属又はその合金であってよい。電解液は、使用する負極に適した公知の組成を適宜選択すればよく、例えば亜鉛空気電池の場合、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液等であってよい。金属負極は電解液と直接接していてもよいし、陽イオン(例えばリチウムイオン)を選択的に通過させ、電解液及び水酸化物イオン等を通過させないセパレータを介して電解液と間接的に陽イオンを授受する構成としてもよい。このような金属空気二次電池の好ましい例としては、特許文献1及び2に開示されるような亜鉛空気二次電池やリチウム空気二次電池が挙げられる。
【0033】
層状複水酸化物緻密体及びその製造方法
前述のとおり、本発明の空気極のセパレータとして使用可能な水酸化物イオン伝導性固体電解質体として、層状複水酸化物緻密体を用いるのが好ましい。好ましい層状複水酸化物緻密体は、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の少なくとも一種以上の陽イオン、M3+は少なくとも一種以上の3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)で示される層状複水酸化物を主相として含むものであり、好ましくは上記層状複水酸化物のみから実質的になる(又はのみからなる)。
【0034】
上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO2−が挙げられる。したがって、上記一般式は、少なくともM2+がMg2+を、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは任意の実数である。より具体的には、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数ないし整数である。
【0035】
前述のとおり、層状複水酸化物緻密体は、好ましくは88%以上の相対密度を有し、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは94%以上である。したがって、層状複水酸化物緻密体はクラックを実質的に含まないのが好ましく、より好ましくはクラックを全く含まない。
【0036】
層状複水酸化物緻密体は、層状複水酸化物主相が、示差熱分析において300℃以下に明確な吸熱ピークが観察されない層状複水酸化物粒子から構成されるのが好ましい。すなわち、示差熱分析において主に200℃近辺に観測される明確な吸熱ピークは層間水の脱離によるものと言われており、それに伴って急激に層間距離が変化するなどの大きな構造変化があるとされ、安定な温度領域が狭い可能性が推測されるからである。
【0037】
層状複水酸化物緻密体は、あらゆる方法によって作製されたものであってもよいが、以下に好ましい製造方法の一態様を説明する。この製造方法は、ハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物の原料粉末を成形及び焼成して酸化物焼成体とし、これを層状複水酸化物へ再生した後、余剰の水分を除去することにより行われる。この方法によれば、88%以上の相対密度を有する高品位な層状複水酸化物緻密体を簡便に且つ安定的に提供及び製造することができる。
【0038】
(1)原料粉末の用意
原料粉末として、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは任意の実数である)で表される層状複水酸化物の粉末を用意する。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO2−が挙げられる。したがって、上記一般式は、少なくともM2+がMg2+を、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。このような原料粉末は市販の層状複水酸化物製品であってもよいし、硝酸塩や塩化物を用いた液相合成法等の公知の方法にて作製した原料であってもよい。原料粉末の粒径は、所望の層状複水酸化物緻密体が得られる限り限定されないが、体積基準D50平均粒径が0.1〜1.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3〜0.8μmである。原料粉末の粒径が細かすぎると粉末が凝集しやすく、成形時に気孔が残留する可能性が高く、大きすぎると成形性が悪くなるためである。
【0039】
所望により、原料粉末を仮焼して酸化物粉末としてもよい。この際の仮焼温度は、構成するM2+及びM3+によって多少の差があるが、500℃以下が好ましく、より好ましくは380〜460℃とし、原料粒径が大きく変化しない領域で行う。
【0040】
(2)成形体の作製
原料粉末を成形して成形体を得る。この成形は、成形後且つ焼成前の成形体(以下、成形体という)が、43〜65%、より好ましくは45〜60%であり、さらに好ましくは47%〜58%の相対密度を有するように、例えば加圧成形により行われるのが好ましい。成形体の相対密度は、成形体の寸法及び重量から密度を算出し、理論密度で除して求められるが、成形体の重量は吸着水分の影響を受けるため、一義的な値を得るために、室温、相対湿度20%以下のデシケータ内で24時間以上保管した原料粉末を用いた成形体か、もしくは成形体を前記条件下で保管した後に相対密度を測定するのが好ましい。ただし、原料粉末を仮焼して酸化物粉末とした場合は、成形体の相対密度が26〜40%であるのが好ましく、より好ましくは29〜36%である。なお、酸化物粉末を用いる場合の相対密度は、層状複水酸化物を構成する各金属元素が仮焼により各々酸化物に変化したと仮定し、各酸化物の混合物として求めた換算密度を分母として求めた。一例に挙げた加圧成形は、金型一軸プレスにより行ってもよいし、冷間等方圧加圧(CIP)により行ってもよい。冷間等方圧加圧(CIP)を用いる場合は原料粉末をゴム製容器中に入れて真空封じするか、あるいは予備成形したものを用いるのが好ましい。その他、スリップキャストや押出成形など、公知の方法で成形してもよく、成形方法については特に限定されない。ただし、原料粉末を仮焼して酸化物粉末とした場合は、乾式成形法に限られる。これらの成形体の相対密度は、得られる緻密体の強度だけではなく、通常板状形状を有する層状複水酸化物の配向度への影響もあることから、その用途等を考慮して成形時の相対密度を上記の範囲で適宜設定するのが好ましい。
【0041】
(3)焼成工程
上記工程で得られた成形体を焼成して酸化物焼成体を得る。この焼成は、酸化物焼成体が、成形体の重量の57〜65%の重量となり、且つ/又は、成形体の体積の70〜76%以下の体積となるように行われるのが好ましい。成形体の重量の57%以上であると、後工程の層状複水酸化物への再生時に再生できない異相が生成しにくくなり、65%以下であると焼成が十分に行われて後工程で十分に緻密化する。また、成形体の体積の70%以上であると、後工程の層状複水酸化物への再生時に異相が生成しにくくなるとともに、クラックも生じにくくなり、76%以下であると、焼成が十分に行われて後工程で十分に緻密化する。原料粉末を仮焼して酸化物粉末とした場合は、成形体の重量の85〜95%、及び/又は成形体の体積の90%以上の酸化物焼成体を得るのが好ましい。原料粉末が仮焼されるか否かに関わらず、焼成は、酸化物焼成体が、酸化物換算で20〜40%の相対密度を有するように行われるのが好ましく、より好ましくは20〜35%であり、さらに好ましくは20〜30%である。ここで、酸化物換算での相対密度とは、層状複水酸化物を構成する各金属元素が焼成により各々酸化物に変化したと仮定し、各酸化物の混合物として求めた換算密度を分母として求めた相対密度である。酸化物焼成体を得るための好ましい焼成温度は400〜850℃であり、より好ましくは700〜800℃である。この範囲内の焼成温度で1時間以上保持されるのが好ましく、より好ましい保持時間は3〜10時間である。また、急激な昇温により水分や二酸化炭素が放出されて成形体が割れるのを防ぐため、上記焼成温度に到達させるための昇温は100℃/h以下の速度で行われるのが好ましく、より好ましくは5〜75℃/hであり、さらに好ましくは10〜50℃/hである。したがって、昇温から降温(100℃以下)に至るまでの全焼成時間は20時間以上確保するのが好ましく、より好ましくは30〜70時間、さらに好ましくは35〜65時間である。
【0042】
(4)層状複水酸化物への再生工程
上記工程で得られた酸化物焼成体を上述したn価の陰イオン(An−)を含む水溶液中又はその直上に保持して層状複水酸化物へと再生し、それにより水分に富む層状複水酸化物固化体を得る。すなわち、この製法により得られる層状複水酸化物固化体は必然的に余分な水分を含んでいる。なお、水溶液中に含まれる陰イオンは原料粉末中に含まれる陰イオンと同種の陰イオンとしてよいし、異なる種類の陰イオンとしてもよい。酸化物焼成体の水溶液中又は水溶液直上での保持は密閉容器内で水熱合成の手法により行われるのが好ましく、そのような密閉容器の例としてはテフロン(登録商標)製の密閉容器が挙げられ、より好ましくはその外側にステンレス製等のジャケットを備えた密閉容器である。層状複水酸化物化は、酸化物焼成体を20℃以上200℃未満で、少なくとも酸化物焼成体の一面が水溶液に接する状態に保持することにより行われるのが好ましく、より好ましい温度は50〜180℃であり、さらに好ましい温度は100〜150℃である。このような層状複水酸化物化温度で酸化物焼結体が1時間以上保持されるのが好ましく、より好ましくは2〜50時間であり、さらに好ましくは5〜20時間である。このような保持時間であると十分に層状複水酸化物への再生を進行させて異相が残るのを回避又は低減できる。なお、この保持時間は、長すぎても特に問題はないが、効率性を重視して適時設定すればよい。
【0043】
層状複水酸化物への再生に使用するn価の陰イオンを含む水溶液の陰イオン種として空気中の二酸化炭素(炭酸イオン)を想定する場合は、イオン交換水を用いることが可能である。なお、密閉容器内の水熱処理の際には、酸化物焼成体を水溶液中に水没させてもよいし、治具を用いて少なくとも一面が水溶液に接する状態で処理を行ってもよい。少なくとも一面が水溶液に接する状態で処理した場合、完全水没と比較して余分な水分量が少ないので、その後の工程が短時間で済むことがある。ただし、水溶液が少なすぎるとクラックが発生しやすくなるため、焼成体重量と同等以上の水分を用いるのが好ましい。
【0044】
(5)脱水工程
上記工程で得られた水分に富む層状複水酸化物固化体から余剰の水分を除去する。こうして本発明の層状複水酸化物緻密体が得られる。この余剰の水分を除去する工程は、300℃以下、除去工程の最高温度での推定相対湿度25%以上の環境下で行われるのが好ましい。層状複水酸化物固化体からの急激な水分の蒸発を防ぐため、室温より高い温度で脱水する場合は層状複水酸化物への再生工程で使用した密閉容器中に再び封入して行うことが好ましい。その場合の好ましい温度は50〜250℃であり、さらに好ましくは100〜200℃である。また、脱水時のより好ましい相対湿度は25〜70%であり、さらに好ましくは40〜60%である。脱水を室温で行ってもよく、その場合の相対湿度は通常の室内環境における40〜70%の範囲内であれば問題はない。
【実施例】
【0045】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0046】
例1
(1)空気極層の作製
空気極触媒としてのα−MnO粒子を次のようにして作製した。まず、Mn(SO)・5HO及びKMnOを5:13のモル比で脱イオン水に溶かして混合した。得られた混合液をテフロン(登録商標)が内貼りされたステンレス製密閉容器に入れ、140℃で水熱合成を2時間行った。水熱合成により得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、80℃で6時間乾燥した。こうしてα−MnOの粉末を得た。
【0047】
水酸化物イオン伝導性材料としての層状複水酸化物粒子(以下、LDH粒子という)を次のようにして作製した。まず、Ni(NO・6HO及びFe(NO・9HOを脱イオン水にNi:Fe=3:1のモル比になるように溶かして混合した。得られた混合液を70℃で0.3MのNaCO溶液に撹拌しながら滴下した。この際、2MのNaOH溶液を加えながら混合液のpHを10に調整して、70℃で24時間保持した。混合液中に生成した沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄後、80℃で乾燥してLDHの粉末を得た。
【0048】
先に得られたα−MnO粒子及びLDH粒子、並びに電子伝導性材料としてのカーボンブラック(Cabot社製、品番VXC72)を表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量して、エタノール溶媒の共存下で湿式混合した。得られた混合物を70℃で乾燥した後、解砕した。得られた解砕粉をバインダー(PTFE)及び水と混合してフィブリル化した。こうして得られたフィブリル状混合物を表1に示される厚さとなるように集電体(カーボンクロス(エレクトロケム社製、品番EC−CC1−060T))にシート状に圧着して空気極層/集電体の積層シートを得た。
【0049】
(2)セパレータの作製
原料粉末として、市販の層状複水酸化物であるハイドロタルサイト粉末(DHT−6、協和化学工業株式会社製)粉末を用意した。この原料粉末の組成はMg2+0.75Al3+0.25(OH)CO2−0.25/n・mHOであった。原料粉末を直径16mmの金型に充填して500kgf/cmの成形圧で一軸プレス成形して、相対密度55%、厚さ2mmの成形体を得た。なお、この相対密度の測定は、室温、相対湿度20%以下で24時間保管した成形体について行った。得られた成形体をアルミナ鞘中で焼成した。この焼成は、急激な昇温により水分や二酸化炭素が放出されて成形体が割れるのを防ぐため、100℃/h以下の速度で昇温を行い、750℃の最高温度に達した時点で5時間保持した後、冷却することにより行った。この昇温から降温(100℃以下)に至るまでの全焼成時間は62時間とした。こうして得られた焼成体を、外側にステンレス製ジャケットを備えたテフロン(登録商標)製の密閉容器に大気中でイオン交換水と共に封入し、100℃で水熱処理を5時間施して、試料を得た。室温まで冷めた試料は余分な水分を含んでいるため、ろ紙等で軽く表面の水分を拭き取った。こうして得られた試料を25℃、相対湿度が50%程度の室内で自然脱水(乾燥)した後に研磨して、厚さ0.5mmの板状のセパレータ試料を得た。
【0050】
緻密度を調べるため、得られたセパレータ試料の寸法及び重量から密度を算出し、この密度を理論密度で除することにより相対密度を決定した。なお、理論密度の算出にあたり、Mg/Al=3のハイドロタルサイト理論密度としてJCPDSカードNo.22−0700に記載の2.06g/cmを用いた。その結果、セパレータの相対密度は95%であった。また、X線回折装置(D8 ADVANCE、Bulker AXS社製)により、電圧:40kV、電流値:40mA、測定範囲:5〜70°の測定条件で、セパレータ試料の結晶相を測定し、JCPDSカードNO.35−0965に記載されるハイドロタルサイトの回折ピークを用いて同定した。その結果、ハイドロタルサイトに起因するピークのみが観察された。
【0051】
(3)空気極の作製及び評価
得られた板状のセパレータ試料に、先に作製した空気極層/集電体の積層シートを、空気極層側がセパレータ試料と接着するように圧着して、空気極試料を得た。得られた空気極を空気電池に適用した場合の電位降下特性を調べるために、図4に示されるような電位降下測定用の電気化学測定系を作製した。まず、空気極20(すなわちセパレータ21及び空気極層22の積層体)の上下に多孔質ニッケル集電板23a,23bを圧着した。一方、容器24内に電解液25として1MのKOH溶液を充填し、対極としてのPt黒電極26(インターケミ社製)と、参照極としての可逆水素電極(RHE)27(インターケミ社製)とを配設した。容器24に上から集電板23a/空気極20/集電板23bの積層体を嵌め込み、電解液25が集電板23aを経てセパレータ21に接触するようにした。そして、Pt黒電極26から上側の集電板23bに向けて100mA/cmの電流密度で電流を流し、ポテンショガルバノスタット(solartron社製、型番1287)を用いて可逆水素電極(RHE)27と上側集電板23bの間の電位降下を測定した。セパレータ21とKOHの抵抗を別途測定し、これらによる電位降下を差し引くことで、空気極層22による電位降下(金属空気電池の放電反応時の電位降下)を算出した。次に、電流の向きを逆にし、充電反応時の空気極による電位降下についても同様にして測定した。得られた電位降下を以下の基準に基づいて3段階で評価した。
<100mA/cmでの空気極層による電位降下の評価>
A:電位降下が1.0V未満
B:電位降下が1.0V以上2.0V未満
C:電位降下が2.0V以上
【0052】
例2(比較)
水酸化物イオン伝導粒子を用いずに、α−MnO粒子及びカーボンブラックを表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと、及び空気極層の厚さを表1に示される値にしたこと以外は、例1と同様にして空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0053】
例3
α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと以外は、例1と同様にして第一空気極層用のフィブリル状組成物を得た。一方、α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第二空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと以外は、例1と同様にして第二空気極層用のフィブリル状混合物を得た。第二空気極層用フィブリル状混合物と第一空気極層用フィブリル状混合物とをそれぞれ表1に示される厚さとなるように集電体(カーボンクロス(エレクトロケム社製、品番EC−CC1−060T))に順にシート状に圧着して第一空気極層/第二空気極層/集電体の積層シートを得た。この積層シートを用いたこと以外は例1と同様にして、空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0054】
例4
例1と同様にして作製されたα−MnO粒子、市販される水酸化物イオン伝導性高分子(炭化水素を主鎖とし4級アンモニウム基をイオン交換基として含む高分子、イオン交換量:1mmol/g)、及び電子伝導性材料としてのカーボンブラック(Cabot社製、品番VXC72)を表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量し、エタノール溶媒の共存下で湿式混合してスラリー化した。得られた第一空気極層用スラリーを、例1と同様にして作製された板状のセパレータ試料に塗布して、80℃で乾燥して、セパレータ/第一空気極層の積層体を得た。一方、α−MnO粒子、水酸化物イオン伝導性高分子及びカーボンブラックを表1の「第二空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量し、エタノール溶媒の共存下で湿式混合してスラリー化した。得られた第二空気極層用スラリーを、第一空気極層/セパレータの積層体の第一空気極層上に塗布して、80℃で乾燥させた。こうしてセパレータ/第一空気極層/第二空気極層の積層体からなる空気極試料を得た。この空気極試料を用いて例1と同様にして評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0055】
例5
第一空気極層及び第二空気極層の厚さを表1に示されるように変更したこと以外は、例3と同様にして空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0056】
例6及び7
α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと以外は、例3と同様にして空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0057】
例8
α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと以外は、例1と同様にして第一空気極層用のフィブリル状組成物を得た。一方、α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第二空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと以外は、例1と同様にして第二空気極層用のフィブリル状混合物を得た。さらに、α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第三空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量したこと以外は、例1と同様にして第三空気極層用のフィブリル状混合物を得た。第三空気極層用フィブリル状混合物と第二空気極層用フィブリル状混合物と第一空気極層用フィブリル状混合物とをそれぞれ表1に示される厚さとなるように集電体(カーボンクロス(エレクトロケム社製、品番EC−CC1−060T))に順にシート状に圧着して第一空気極層/第二空気極層/第三空気極層/集電体の積層シートを得た。この積層シートを用いたこと以外は例1と同様にして、空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0058】
例9
(1)空気極層の作製
例1と同様にして作製したα−MnO粒子及びLDH粒子と、カーボンブラック(Cabot社製、品番VXC72)を用意した。α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第三空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量して、メノウ乳鉢で乾式混合した後、CMC(カルボキシメチルセルロース)バインダーを2重量%含有する水溶液を添加してメノウ乳鉢で混合した。得られた混合物を集電体(カーボンクロス(エレクトロケム社製、品番EC−CC1−060T))に厚さが10μmとなるように印刷して、30℃で6時間保持して乾燥させ、第三空気極層/集電体の積層シートを得た。
【0059】
次に、α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第二空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量して、メノウ乳鉢で乾式混合した後、CMC(カルボキシメチルセルロース)バインダーを2重量%含有する水溶液を添加してメノウ乳鉢で混合した。得られたスラリーを積層シートの第三空気極層上に厚さが10μmとなるように塗布して、30℃で6時間保持して乾燥させ(以下、第1乾燥工程という)、第二空気極層/第三空気極層/集電体の積層シートを得た。
【0060】
続いて、α−MnO粒子、LDH粒子及びカーボンブラックを表1の「第一空気極層」の欄に示される配合比となるように秤量して、メノウ乳鉢で乾式混合した後、CMC(カルボキシメチルセルロース)バインダーを2重量%含有する水溶液を添加してメノウ乳鉢で混合した。得られたスラリーを積層シートの第二空気極層上に厚さが10μmとなるように塗布して、30℃で6時間保持して乾燥させ(以下、第2乾燥工程という)、第一空気極層/第二空気極層/第三空気極層/集電体の積層シートを得た。得られた積層シートを30℃で6時間保持して乾燥させた。こうして得られた積層シートを用いたこと以外は例1と同様にして、空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0061】
例10
第二空気極層の印刷直後の第1乾燥工程と第三空気極層の塗布直後の第2乾燥工程とを行わなかったこと以外、例9と同様にして空気極の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0062】
(EDSによる微構造分析)
例9及び10で作製した空気極の膜厚方向の微構造をEDS(エネルギー分散X線分光法)で分析したところ、例9で作製した空気極は水酸化物イオン伝導性材料の含有比率が段階的に変化したのに対し、例10で作製した空気極は水酸化物イオン伝導性材料の含有比率が徐々に変化した。
【0063】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5