(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱伝導器、自動車ホイールリム、家具装飾品、引き抜きレール、自動車用の装飾又は機能要素、医療機器、又は用具及びレール材料から成る群より選択される、請求項16に記載の固形体。
FRP又は他のプラスチックの成形用装置、プレス、成形型、射出成形型、鋳造型、静的シール、接着剤塗布装置のコンポーネント、パン及び他の料理器具、光起電性モジュール及び他の発電要素、包装業界用コンポーネント、塗装及び印刷装置のコンポーネントから成る群より選択される、請求項15に記載の固形体。
【背景技術】
【0002】
産業上の利用ばかりでなく、家庭内分野でも、多くの目的で最適化表面の必要性が絶えずある。当然に、最適化すべき特性は常に最終用途によって決まる。例えば、特定の最終用途は、パラメーター、例えば硬度、伸展性及び/又は表面エネルギーのどの範囲が特に望ましいかを決める。多くの場合、上記パラメーター及び任意でさらなるパラメーターの改善を、最終用途の観点から別の(重要な)パラメーターの如何なる劣化もなく、或いは少なくとも如何なる過度の劣化もなく達成することが特に要求されている。
脱型における繊維強化プラスチックの成形方法については特に上記パラメーターに対しても特に高い要求が存在する。これは本発明の第一態様にとって重要である。
繊維強化プラスチック(FRP)は、層化構造を有し得るマトリックス結合繊維から成る。繊維は配向、非配向又は織り繊維であってよい。さらに、繊維は種々の材料、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、天然繊維又は木材から成り得る。個々の層は異なる材料から成ってよい。例えば、金属素材、フォーム、及び三次元構造プレート、例えばハニカム又は木材は繊維複合材の形成にも適している。マトリックスは典型的に熱可塑性樹脂又は熱硬化され得る反応性樹脂から成る。反応性樹脂は、例えば、ポリエステル、ビニルエステル又はエポキシ樹脂、メラミン又はフェノール-ホルムアルデヒド樹脂である。
【0003】
繊維強化プラスチックの最もよく知られている製造方法は、手動ラミネーション、(真空)注入法、プリプレグ法、繊維ワインディング(winding)、繊維噴霧、射出成形、インジェクション法、例えば樹脂トランスファー成形(RTM)、湿式加圧法、例えばシート成形コンパウンド(SMC)の生成方法又は熱可塑性有機複合板(organosheet)の助けを借りた方法である。
典型的に、FRPコンポーネントは型(金型、モールド)の少なくとも片側に作製される。コンポーネントを製造プロセス後に型から脱離できるためには、製造前に型表面に分離剤を塗布することが現在では優勢である。この製造方法によれば、引き続き型に予備含浸繊維、例えばプリプレグ、乾燥繊維、剥離層(peel ply)、他の補助材(例えば引火防護としての含浸銅グリッド)又はインモールドラッカー(IMC、インモールドコーティング)を適用するのが通例である。乾燥繊維法においては、さらなる工程で、マトリックス樹脂が液体形で供給される。最後に、熱硬化性FRPの場合、よく型の加熱によってマトリックス樹脂が硬化される。熱可塑性FRPの場合、成形を達成するためにポリマーは同様に加熱される。
IMCラッカーの典型的適用は、例えばローラーの助けを借りて手動によるゲルコートの形での適用である。IMCラッカーは典型的にまず最初に部分的に硬化し、次に標準的なFRPビルドアップを受け、マトリックス樹脂の硬化過程においてのみ、IMCラッカーがその最後の硬化を果たす。
【0004】
硬化、又は成形若しくは一次成形後に、前もって塗布した分離剤の助けを借りてワークピースを脱型する。このようにして、例えば、グライダー用部品、風力タービン用ローターブレード、ボート船体、車両部品、パイプ、水泳プール及び他の多くのアイテムを製造することができる。
これらの全てのプロセスでは、ワークピースの無欠陥かつ簡単な脱型を可能にするため最初のゲルコート又は樹脂層と接触する前に分離剤で型の全表面を処理することが非常に重要かつ不可欠である。脱型後、分離剤はプラスチック成形品上にも型表面上にも残る。結果として、面倒な様式で成形品及び型から分離剤残渣を取り除かなければならないことが多い。さらに、成形品は接着剤で連結され、及び/又は塗装される場合もあり、分離剤の効率的、ひいては非常に骨の折れる除去及びシームレス品質の保証を必要とする。
従って何年にもわたって、プラスチックから成形品を製造する際に分離剤を排除する努力が払われてきた。分離剤のない製造は、より効率的、より安価、よりクリーンで、より環境に優しいからである。しかしながら、開発者及び発明者はこの目的の迅速かつ広範な実行を今日まで不可能にしてきた主問題に直面している。これらには、脱型すべき種々のプラスチックがそれらのそれぞれの添加剤、並びにそれらの異なる硬化反応及び加工条件を有することが含まれる。
さらに、この状況は、種々多様の異なる形状のコンポーネントを製造するために多数の全体的に異なる製造方法を使用することによって、また経済的理由で、多くの場合に脱型は製品の完全な硬化に先行すべきであるという事実によっても複雑になる。
【0005】
分離剤は、主に反応性プラスチックからの成形品の製造に用いられる。これらの成形品としては、ポリウレタン(PUR)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン又はさらなる埋め込み用樹脂(potting compounds)製のコンポーネントが挙げられる。さらに、分離剤は、熱可塑性コンポーネント、例えば有機複合板の単離製造方法で利用される。反応性プラスチックとは対照的に、それらは単に物理的相互作用力(例えばファンデルワールス力、水素結合)を減少させるために働く。
使用するプラスチックに関係なく、また分離剤が外部から供給されたか又は内部の分離剤として供給されたかにも関係なく、脱型時に分離剤内に凝集破壊があるであろうことが該方法の特徴である。このことは、分離剤が伴い得る欠点の理由である。
従って、分離剤を脱型層と組み合わせることは実行可能な解決法でない。これは単に型洗浄を容易にするだけである。
【0006】
常に分離剤をなしで済ますための全ての技術的アプローチは、原則的に以下の2つのカテゴリーに分割可能である:
1. フィルム又は射出成形インサートを型内に配置する挿入方法論。
2. 型の直接的な堅く接着するコーティングと分離層が存在する型被覆方法論。
典型的な挿入方法論は以下のとおりである。
−Canonからのフォーム及びフィルム方法論
−FrimoからのPUReライナー(DE 10 2009 054 893 A1をも参照されたい)
−フルオロポリマー(例えばETFE、PTFE)製フィルムインサート
−FhGからのFlex
PLASプラズマポリマー被覆フィルム(DE 10 2012 207 149.0)
典型的な型被覆方法論は以下のとおりである。
−フルオロポリマーコーティング(例えばポリテトラフルオロエチレンPTFE)
−低圧プラズマ方法論(例えばEP 0 841 140 A2又はAcmos/FhG DE 10 034 737 A1又はFhG DE 10 2006 018 491 A1)又は大気圧プラズマ方法論(FhG DE 10 2005 059 706 A1)で被覆されたプラズマポリマーコーティング
−ケイ素(Fraunhofer IST)(DLCコーティング)
−PlascoSAM(JE Plasma Consult GmbH)(DLCコーティング)
有機ケイ素プラズマポリマーコーティングに関しては、さらに多数のさらなる出版物がある。例えば、
−DE 101 31 156 A1 (FhG、プラズマポリマーコーティングを有する物品及びその製造方法)
−DE 10 2009 002 780 A1 (FhG、傷つきにくく、伸展性の防食層を有する金属基材及びその製造方法)
−DE 10 2007 000 611 A1 (FhG、軽量金属基材用の傷つきにくく、伸展性の腐食層)
【0007】
EP 0 841 140 A2は、使用すべき層の如何なるさらに詳細な説明もなく、プラズマポリマー分離層の製造に関する一般的指針のみを与えている。説明図は水接触各角及び全表面エネルギーのために与えられているだけである。さらに、記載されている1.3×1.2×22cmよりずっと大きい寸法を有するプラスチック型を被覆するためには21Lのプラズマ反応器について記載されている被覆手順をどのように変えなければならないかについては何の指針もない。
DE 10 034 737 A1は、型の表面上のプラズマ重合によって永続性脱型層を製造する方法を開示している。この方法では経時的な重合条件の変動によって脱型層内に勾配層構造が生成される。プラズマポリマー分離層の組成又は構造の正確な記述は与えられていない。しかしながら、355Lのプラズマ反応器におけるプラスチック型のコーティングについては図解実行説明が与えられている。さらに、パラメーターの適切な選択及び経時的な変動によって、例えば有機ケイ素化合物の重合の場合、型表面上に直接無機網目構造(ガラス様)の連続適用及び無機網目構造の上に有機網目構造の連続適用を達成できることに言及している。これは、基材への最適な接着及び成形に関して最適な永続性分離効果(例えば表面の高比率のCH
3及び/又はCF
3基のおかげで)を達成する。ガラス様網目構造から分離コーティングへの変化は、酸素の比率を下げることによって達成される。
【0008】
DE 10 2005 059 706 A1は、基材表面上にプラズマポリマー分離層を製造する方法を記載している。この方法では、プラズマポリマーは経時的に一定の重合条件下で大気圧にて基材表面上に形成される。分離層については、XPS解析による化学組成に関して詳細が与えられているが、硬度又は弾性係数等の巨視的特性についての図面がない。
DE 10 2006 018 491 A1及びWO 2007/118905 A1[可撓性プラズマポリマー生成物、対応物品、製造方法及び使用]は、標準的不純物の有無にかかわらず、炭素、ケイ素、酸素及び水素から成るプラズマポリマー生成物を含むか又はそれらから成る物品を開示している。このプラズマポリマー生成物のESCAスペクトルでは、25℃で350mm
2/秒の動粘度及び25℃で0.97g/mLの密度を有するトリメチルシロキシ末端ポリメチルシロキサン(PDMS)と比較して285.00eVでのC1sピークの脂肪族成分に対して較正して、Si2pピークは0.44eV以下だけ高いか又は低い結合エネルギーにシフトした結合エネルギーを有し、O1sピークは0.50eV以下だけ高いか又は低い結合エネルギーにシフトした結合エネルギーを有する。
このプラズマポリマーコーティングの伸展性のため、フィルム(特に伸展性フィルム)等の可撓性製品は、適切な抗接着表面又は洗浄しやすい表面を備え得ると言及されている。さらに、このプラズマポリマーコーティングを型表面上の分離層又は分離層の一部として使用できると言及されている。
このプラズマポリマーコーティングはエラストマーのような機械的特性を有する軟性コーティングである。それはいくつかのポリウレタンフォームに対して非常に良く、持続性の分離効果を示す。
【0009】
典型的に、従来技術によるPUR用の有機ケイ素プラズマポリマー分離層は、通常は下記特性を有する。
ナノ硬度:<0.15GPa
ナノインデンターで測定した弾性係数:<1.25GPa、
DE 10 2006 018 491 A1に従って、DE 10 2005 059 706 A1に従って又はDE 10 034 737 A1に基づいた方法で製造されたコーティングもエポキシベース樹脂CFRPマトリックスに対して良い分離特性を示した。例えば、RTM法では、Hexelからのエポキシベース樹脂HexFlow(登録商標)RTM6を、炭素繊維素材を充填した閉じた型に8バールの圧力で注入し、90分間180℃で硬化させた。その後、内部又は外部の分離剤を使用することなく、硬化したCFRPコンポーネントの問題のない除去が可能だった。しかしながら、これらのコーティングは経済的観点から低過ぎる機械的安定性を示した。30回以下の脱型後に、分離特性は、高費用の力を用いてのみ型の開口が可能である程度まで低下した。研究はコーティングが繊維によって局所的に破壊されたことを示した。
さらに、これらのコーティングの硬度又は弾性係数等の機械的特性をナノインデンテーションの助けを借りて測定した。硬度は0.2GPa以下、弾性係数は2.0GPa以下であることが分かった。
DE 101 31 156 A1は、基材と、基材に全表面にわたって結合している酸素、炭素及びケイ素を含んでなるプラズマポリマーコーティングとを含む物品について記載している。この基材から離れている側のプラズマポリマーコーティング中のモル比は以下のとおりである:
1:1.1<n(O):n(Si)<2.6:1
0.6:1<n(C):n(Si)<2.2:1。
しかしながら、この特許にはプラスチックコンポーネントの脱型用の分離層としてのこれらのコーティングの利用に対しての指針は与えられていない。硬度又は弾性係数等の巨視的特性についての如何なる図面もない。実際には、これらの特性は分離方法のためにさらに最適化されるべきである。
【0010】
DE 10 2007 000 611 A1は、被覆された軽量金属基材について記載している。このコーティングは、
−コーティング中に存在する炭素、ケイ素及び酸素原子の総数に基づいて、5〜20原子%、好ましくは10〜15原子%の、XPSを用いて測定可能な炭素の比率、
−≦3、好ましくは≦2.5の、ASTM D 1925に従って測定された黄色度指数、及び
−2.5〜6GPa、好ましくは3.1〜6GPaの範囲の、ナノインデンテーションを用いて測定可能な硬度
を有する。
この特許でも、プラスチックコンポーネントの脱型用の分離層としてのこれらのコーティングの利用には指針が与えられていない。開示層は、それらの特性の重大なウィンドウについては、型層としての使用に関する改善を未だに必要としている。
DE 10 2009 002 780 A1には同様の層が記載されている。
DE 10 2005 014 617 A1は、表面で囲まれた空洞を有し、この空洞にプラスチックを導入する手段を有し、表面にはコーティングが設けられているプラスチック製キャスティングレンズ用の型において、コーティングが1Ωcm未満の導電率を有することを特徴とする型を開示している。コーティングの例として、C、Si、Oを含有する三級化合物が言及されている。水素含有有機基を有するコーティングに対する指針はない。
US 2010/239783 A1は、プラズマポリマーコーティングを有する加工型の製造方法について記載している。そこに記載の層は、<0.15GPaのナノ硬度、及びナノインデンターで測定された<1.25GPaの弾性係数を有する。
【0011】
PURフォームに良いプラズマポリマー分離層は繊維複合プラスチック(fiber composite plastic)(FRP)に最も適したプラズマポリマー分離層ではないことが分かった。代わりに、PURフォームに関する分離のためよりFRPに対して良い持続性の分離特性のためにはずっと硬い層が必要とされることが分かった。対照的に、プラズマポリマーコーティングの表面近傍領域の化学組成は、良い分離特性を失うことなく、ずっと大きく異なり得る。
分離剤のない製造を可能にする分離層を有する型の直接コーティングは、数メートル以下の広がりを有する小型コンポーネントの製造にとって特に重要である。この文脈では、分離効果の最大の「永続性」のみが所望の経済的利益を可能にするので、分離効果の長命、ひいては高い機械的安定性の問題が主要な役割を果たす。このことは、例えば、型は取り外して低圧プラズマ反応器に移さなければならないので、型の利用能がコーティングのために明確に制限されるときに特に真実である。
PUR成形品の製造とは対照的に、繊維複合成形品、特にCFRP及びGFRPコンポーネントの製造で使用するものは、例えばエポキシ樹脂であり、これは多くの場合高温(120℃〜190℃)で硬化されて硬い剛体を与える。この効果は、反応性樹脂が、PUR製造とは対照的に、分離層への界面の相間領域に非常に良い架橋を有し、固形体の一部になったことである。これが相間を破壊しにくくし、分離層の分離性能への要求をわずかに下げる。
【0012】
しかしながら、他方で、他の特性への要求が顕著になる。これらの特性としては特に、分離層の硬度及び耐久性と、低摩擦及び形成されたコンポーネントからの低い剥離トルク(breakaway torque)の両方を発現させるその能力とが挙げられる。これらの特性は分離操作自体に必要であり、分離効果の長命にとっても必要である。そうでなければ、全域及び/又は局所欠陥(及び低下する分離性能)が予想される。さらに、それらの特性は単純かつ効率的な脱型プロセスにとって重要である。
これに関連して、良い分離効果は、成功する脱型プロセスの基本的な必要条件であるが、十分条件でないことを指摘すべきである。無分離剤脱型のための脱型プロセスは、剥離動作の様式での型又は被覆型及びワークピースの分離可能性を必ず要求する。現在多くの場合に利用されている型蓋を垂直に持ち上げる様式は、持続性効果を有する分離層の観点から脱型に適さない。
分離層の高い機械的安定性は、例えば、硬い乾燥繊維材料を加工するときに求められ、繊維を一緒に加圧する閉じた型がその目的に使用されている。該装置では、繊維、特に起伏(undulations)は、被覆型表面上への高力で局所的に加圧される。DE 10034737によれば、プラズマポリマー分離層に小さい欠陥部位が生じ、これが徐々に三次元に成長し、分離性能を下げる。
これに関連して、社内研究は、PURに対する最高の分離性能に最適化した上記分離層は軟らか過ぎることを示した。それは0.005〜0.015GPaの範囲のナノ硬度及び0.7〜1.25GPaの範囲の弾性係数を有する。
【0013】
DE 10034737(実施例3)の層構造によれば、被覆操作中の酸素の比率を高め、ひいては提案されたガス混合比から逸脱させることによってプラズマポリマー分離層をより硬くするように当業者に示唆されている。残念ながら、これは同時に表面エネルギー、特に分離層の表面エネルギーの極性成分を高め;分離特性が明確かつ急速に低下する。
さらに、実際には特定コンポーネント、例えば円筒リングは脱型面取り面(chamfer)によってのみ脱型できることが分かった。このコンポーネントはマトリックス内の架橋反応及び型の開口後の冷却の結果として内核の方へ収縮する。当該ケースでは、脱離のために、脱型面取り面と耐久性分離層表面が両方とも好ましい摩擦特性を有する必要がある。低い剥離トルクは、コーティングの高い弾性係数を促すので、特に分離操作を容易にする。
従って、一方で従来技術の層よりずっと硬いが、同時に低極性成分及び/又は低摩擦値及び低剥離トルクの非常に低い表面エネルギーを有するプラズマポリマー分離層が望ましい。
従来技術の層に共通することは、プラスチック加工における分離方法、特に繊維複合材に関する分離方法で使用するためには改善が必要なことである。この文脈では、分離可能性(層とコンポーネントとの間の接着破壊)と、加工方法における実用寿命との両特性が重要である。この文脈では、多くの応用分野での良い実用寿命は、硬度、可撓性及び分離性能と組み合わせた特性の適切なプロファイルを通じてのみ達成可能である。
【0014】
本発明の第二態様は腐食防止である。腐食は財産を破壊し、機械休止時間をもたらすので、腐食防止は重要な技術的課題である。従って、表面防食を与える種々多様の異なる方法が存在する。これらには、塗装又は電解法の使用を通じた不動態防食層がある。表面は、例えば、電解酸化(eloxed)、亜鉛メッキ、黒化、着色(chromatized)又はリン酸化される。不動態腐食防止法のみならず、コーティングが防食物質を放出するいくつかの能動的方法も存在する。
防食層への例外的要求、例えば熱伝導器(transferer)(口語的に熱交換器と呼ばれる)の場合の良い熱伝達又は保護すべき表面構造(エッジ、エンボス等)の再生の高精度のため、保護すべき表面を最小度に変え、如何なる重金属をも放出せず、コーティング操作において過剰に表面を熱にさらさない薄い防食層に対する必要性がある。この必要性は、例えば、典型的に10〜5000nmの層厚範囲内で適用されるプラズマポリマー防食層で満たすことができる。さらに、プラズマポリマーコーティング法は原則的に、多くの場合、例えば、熱伝導器に存在するような堅固な構造中に浸透するため、或いはコンポーネントの適合精度を得るために適している。
経済的に好ましい様式でプラズマポリマー防食層を適用できるためには、非常に高い層堆積速度及び/又は同時に多くのコンポーネントを被覆できる手段又は大きいコンポーネント表面のどれかが望ましい。さらに、被覆すべき基材が特殊な前処理を受けなくてよければ非常に有利であろう。
【0015】
DE 19748240 A1 (FhG)は、被覆前にまず基材を平滑化し、プラズマ条件を低減しながら第1プロセス工程を利用するプラズマポリマー防食系の製造方法について記載している。コーティング自体の組成に関しては、それが炭化水素又は有機ケイ素物質から生成されるコーティングであると述べているだけである。被覆中に、酸素、窒素又は希ガスがさらにプラズマに供給される。組成について又はコーティングのさらなる特定の性質に関する詳細はない。
しかしながら、該コーティングは凝縮ボイラーにおける熱伝導器用の防食層として適していると言及されている。
DE 10200700611 A1 (FhG)の目標は、軽量金属用の傷がつきにくく、伸展性の防食層である。このコーティングについては、2.5〜6GPaの範囲のナノ硬度値が報告されている。さらに、コーティングは黄色を有してはならず、XPSによって5%〜20%の炭素含量のみを有し得る。このことは所望の硬度及び引っかき抵抗性を保証する。
該コーティングのため、プロセスは、50〜1000Vの自己バイアスが発生するように行なわれる。これは、その一部については、2〜4μm以上の層厚は引っかき抵抗性層に有利なことから高堆積速度を達成できるという利点を有する。さらに、層は一定のイオン衝撃下で成長し、結果として層が緩和できるように、一定の再配置及び一定のエネルギー入力をもたらす。このことが層の例外的な伸展性を保証する。
該コーティングでは、1:1〜1:6のHMDSO対O
2のガス比が有利と特定されている。しかしながら、自己バイアスの発生は低圧プラズマチャンバーの質量表面積に関して被覆すべき表面によって決まるので、非常に大きい困難によってのみレベルを上げること(upscaling)ができる。これも経済的実行可能性を制限する。さらに、狭小間隙内のコーティングは、電場が弱くなり、高度に歪められ、もはやそこに存在できないので、非常に制限された程度でのみ行なえると想定することができる。これは堆積速度のみならず層品質に悪影響を及ぼす。
【0016】
DE 102009002780 A1 (FhG)の目標は、非軽量金属表面用の傷つきにくく、伸展性の防食層である。この特許では、2.5〜10GPaの範囲のナノ硬度及び>1.5%の微小亀裂発生までの伸び率が請求されている。
さらなるプラズマポリマー防食層は多層構造を使用する。例えば、JP 63235463 Aは、極性基を有するモノマー(例えばペンタフルオロアセトフェノン)の助けを借りた金属基材上のプラズマポリマー防食層を提示し、疎水性フッ素化モノマー(例えばヘキサフルオロベンゼン)で生成された第2コーティング層を追加している。
JP 2154993 Aは、二層構造を用いて同様に耐食性を改善する。この特許では、内層は、親水性プラズマポリマー外膜で覆われた疎水性有機膜から成る。外膜は、例えば、有機アミン生成物(例えばn-ブチルアミン、イソプロピルアミン)から生成される。
【0017】
解決への他のアプローチは、プラズマプロセスを借りた金属表面の酸化を探求する(WO 02059391 A1)。結果として生じる表面はいずれのプラズマポリマー膜をも備えることができる。2層構造のみならず、多層構造も提案されている(WO 02059051 A2)。
多層構造としてはWO 9701656 A1も挙げられるが、これは水膜の形成を促進するために高度に親水性の外層を想定している。
さらに、強アルカリはほとんどのガラスを攻撃するので、ガラス容器内に強アルカリを保持すべきでないことは知られている。代わりに、プラスチック製、例えばポリエチレン製容器が好ましい。従って、強アルカリ用の防食層としてSiO
2様層を使用することは得策でなさそうである。
研究では、良い防食効果を得るためにはプラズマポリマー防食層による基材の良い表面カバー度が必要であるのみならず、DE 19748240 A1における基材の平滑化或いはDE 10 2007 00 611 A1及びDE 10 2009 002 780 A1におけるように2〜5μmの範囲のより大きい層厚によって示唆されているように、表面に作用する薬剤、例えば強酸又は強アルカリに対するコーティングの最適な安定性をも必要であることが分かった。これは、例えば、強酸に関してはSiO
2様コーティングを用いて達成可能である。しかしながら、該層は非常に高い内部応力を有するので、特にそれらが50nmより厚いと、不十分な接着力及び亀裂傾向を有する。従って、技術的な表面粗さを有する金属基材のコーティングの成功は実際には不可能である。さらに、高酸素過剰で働く必要があるので、該層の堆積速度は非常に遅い。最後に、これらの層は強アルカリには使えない。
多くの応用のためには、従来技術を超える防食特性の改善が望ましい。これは特に、匹敵する高硬度及び腐食防止の良い実現可能性と組み合わせた強アルカリ及び強酸への耐性に関するものである。さらに詳細には、防食層は狭小間隙に堆積できるべきでもあり、及び/又は保護すべき表面にいずれの特殊な平滑化プロセスをも必要とすべきでない。さらに、大きい領域にわたって、迅速かつ安価に腐食防止を適用できるのが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
プラズマポリマーは、その製造過程で前駆体の断片化がある点でポリマーと異なる。従って、プラズマポリマーは、通常のポリマーとは対照的に、規則的な反復サブユニットを示さないが、製造プロセスによっては、短範囲秩序が除外されないことがある。
本発明の文脈における弾性係数は、測定例1に記載の方法を用いて決定される。
C/O比は、疑念がある場合は測定例2に従ってXPS(x線光電子分光法)を用いて決定される。XPSは、Si2pピークの最大のシフトにも適用される。
本発明の第一態様に好ましい本発明の特徴のウィンドウの範囲を
図1に非斜線領域(1)として示す。斜線領域(2)は、本発明の第一態様に好ましくないか又は非発明的でさえある特徴の組合せを表す。
本発明の第二態様に好ましい本発明の特徴のウィンドウの範囲を
図4に非斜線領域(1)として示す。斜線領域(2)は、本発明の第二態様に好ましくないか又は非発明的でさえある特徴の組合せを表す。
当業者にだけは即座に本発明の主題の特徴の意味が明らかであろう。従って、さらなる解明をここに与える。
【0024】
驚くべきことに、所与のC/O比で、Si2pピークの位置をさらに考慮する場合に従来技術において今日まで可能だったより高い弾性係数を有する層を作製することができる。C/O比は表面エネルギーに関する表面特性に影響するので、所与のC/O比で、高い弾性係数を得ることが望ましい。例えば、高C/O比は、小極性成分の表面エネルギーをもたらす傾向があり、例えば、層の分離特性及びアルカリに対する耐性を改善するが、
図1及び4に示すように、同時に低い弾性係数をもたらす。しかしながら、機械的耐久性は弾性係数と共に増加するので、本発明の特に第二態様のためには比較的高い弾性係数が望ましい。
Si2pピーク(最大)の位置は次にプラズマポリマー層内のケイ素原子の短範囲結合条件についての情報を与え、これには層内に生成される硬度条件についての情報が含まれる。低いSi2pピーク位置は低酸素Si環境を表す。それが上昇すると、SiO網目構造がさらに発達してきてSiO
2様網目構造になる。第1に、SiO網目構造の形成が促進されて硬度を高め、第2に、炭素含有基がプラズマ化学によって燃焼又は酸化されて最小程度になるほどにプラズマ重合プロセスを行なうときは本発明の精神の範囲内である。高C/O比及び低表面エネルギーで第2の現象が顕在化する。
【0025】
上述したように、当業者は今日まで、層形成中の酸素含量の増加によって弾性係数の増加又は硬度の増加をもたらすために規則的な試みを行なってきた。これは弾性係数及び硬度に対する所望の結果を有したが、酸素の添加は炭化水素基及びC/O比の同時低下をもたらすので、同時に層は悪影響を受けた。最終的には、表面エネルギーの極性成分の明瞭な増加があった。
驚くべきことに、本発明の文脈においては、所与のC/O比でプラズマポリマー層の堆積中の堆積プロセスに高電力をつなげると明らかに弾性係数を改善させることができ、さらにSi2pピークの特徴の所望ウィンドウを得られることが分かった。同時に、表面エネルギーの極性成分を小さく維持することができる。従来技術では今日までこのアプローチへの指針はなく、それに応じて特徴の上記ウィンドウに従う本発明の層を作製することは実際に不可能だった。
言い換えれば、本発明の特徴のプロファイルは、層特性は決して物理的組成にだけ基づくわけではなく、架橋する層の様式によって(ひいてはプラズマ重合条件によって)も有意な程度までもたらされることを示す。しかしながら、プラズマポリマー層の場合のC/O比は分離特性に顕著な影響を及ぼすことも分かった。さらに、C/O比と、並行して、これらの層の場合の表面エネルギーの極性成分とは、表面特性(親水性、疎水性)に顕著な影響を及ぼすが、強アルカリ及び強酸に対する安定性に関するボリューム特性にも顕著な影響を及ぼすことが分かった。
上述したように、プラズマポリマー層の弾性係数及び硬度は層内の酸素対炭素の比及びプラズマプロセスにおける酸素対有機ケイ素前駆体の比によって影響を受ける得ることが当業者には従来技術から既に知られていた。しかしながら、酸素含量の増加は、表面エネルギーの比較的高い極性成分を有する高表面エネルギーにつながる。従って、表面特性、例えば分離特性又は腐食性液体、特にアルカリへの耐性は明らかに悪化した。
【0026】
それに応じて本発明のコーティング(好ましい及び特に好ましいコーティングを含めて)を製造するためには、下記手段の1つ以上が推奨される。
−HF励起(例えば13.56MHz)及び<0.3mbar・L/s、好ましくは<0.1mbar・L/sの漏出率でプラズマ重合系を使用すること。
−後段階で使用すべき条件下で、<10V、好ましくは<1Vの自己バイアスをもたらし、二次プラズマを回避するような電極面積と質量面積の比によって系をデザインすること。
−酸素含有ガスと共に有機ケイ素前駆体;好ましくはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)とO
2;さらに好ましくはO
2と同様の量、例えば2:1〜1:1の比のHMDSOを使用すること(特に本発明の第一態様)又は
−酸素含有ガスと共に有機ケイ素前駆体;好ましくはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)とO
2;さらに好ましくはO
2より過剰、例えば2:1の比のHMDSOを使用すること(特に本発明の第二態様)。
−被覆すべき側がプラズマ重合プロセスと接触できるように、被覆すべき金属成分とHF電極との電気接触を形成すること。
−非導電性サンプル(例えばウエハー、顕微鏡スライド)を使用する場合、プラズマがサンプルの上に実質的に妨げられずに生じ得るためには、サンプルは好ましくは2mmの厚さを超えてはならない。このことは本発明の第一態様に特に当てはまる。
−一連の電力、例えば500〜1500Wを設定し、層特性、特に弾性係数、及び任意でナノ硬度を、表面エネルギー及び/又はその極性成分として決定すること。ここでは、弾性係数及び表面エネルギーは電力の上昇に伴って増加することを考慮すべきである。
−ガスの総量(同一混合比で)を増加/減少させてコーティングの弾性係数及び場合によりナノ硬度を低減/上昇させること。ここでは、弾性係数はガスの総量の減少に伴って上昇することを考慮すべきである。
【0027】
文献で使用された多くのパラメーター、例えば安田パラメーター、ベッカー(Becker)パラメーター又は反応器パラメーターは、被覆プロセスの全ての境界条件を考慮するわけではないので、それらをプラズマ重合プロセスの巨視的説明に引用すべきでない。Vissing [Vissing, K.: Aufskalierung plasmapolymerer Beschichtungsverfahren [Upscaling of Plasma Polymer Coating Processes], Thesis, Culliver, (2008) ISBN 978-3-86727-548-4]は、分離層の例を用いて、新パラメーターVは、使用するプラントサイズ、質量流量及びプラズマ出力を考慮するので、異なる反応器内の層生成の状況をよく反映できることを示した。そこで提示されたプラントは従来技術に即している。
本発明に従って使用する電極配置に適合させるときは、反応器長LAではなく、有効な電極面積(その上にプラズマが形成可能な電極面積)を用いてVを計算する。結果として生じるパラメーターV
*は、本発明のコーティングを説明し、当業者に指針を与えるためにさらに使用可能である。調整パラメーターV
*から、所与のガス流比について、いずれのサイズのプラントを用いても、導入ガスの総量に必要な導入電力の大きさの程度を推測することができる。本発明の固形体の作製(本発明のプロセスにおいて、下記参照)に好ましいV
*の値は以下のとおりである。
1.5
*10
9〜5
*10
9J・s/g・cm
しかしながら、この新パラメーターは、ガス組成及び断片化の程度に起因する架橋状況を直接説明することができない。
【0028】
驚くべきことに、既に示したように、上記境界条件下では、さらに酸素を添加しなくてさえ、従来技術が示唆したより高い弾性係数及びおそらく同時に低下した表面エネルギーを有する分離層及び/又は防食層を作製することができる。
上記によれば、本発明のプラズマポリマー層は、≧90%、好ましくは≧95%、さらに好ましくは≧98%の程度、最も好ましくは全部、元素C、O、Si、H及び任意でフッ素から成るのが好ましい。多くの場合、本発明の層のいずれにもにフッ素が存在しないのが好ましい。原則的に、本発明の層は有機ケイ素前駆体と酸素との併用によって特に効率的に作製可能である。この点に関して、例えば、従来技術を形成する上記引用文書をも参照されたい。
本発明が基礎とする新規知見によれば、所定のC/O比で、従来技術において今日まで記述されたより高い弾性係数を得ることができるので、所与の弾性係数で特に好ましい表面エネルギー条件を得ることもできる。これはどちらも従来技術から予見できなかった。
【0029】
それに応じて、本発明の文脈の好ましい固形プラズマポリマー体又は好ましいプラズマポリマー層は、表面の表面エネルギーの最大極性成分が下記関数(2)又は(2a):
σ(p)=0.28
*E+0.106 (2)又は
σ(p)=1.2 (2a)
(関数(2)と(2a)のどちら大きい方の値、
ここで、
σ(p)=表面エネルギーの極性成分[mN/m]
E=弾性係数[GPa]
E=1.5〜30GPa、好ましくは1.75〜28GPa、さらに好ましくは2.5〜25GPa、特に好ましくは3〜25GPa(これらの弾性値は好ましくは本発明の第一態様に当てはまる)のとき又は
E=1.25〜10GPa、好ましくは1.5〜9GPa、さらに好ましくは2.0〜8GPa、特に好ましくは2.5〜7.5GPa(これらの弾性値は好ましくは本発明の第二態様に当てはまる)のとき)
によって決められ、
並びに/或いは
表面の表面エネルギーが、その上限に関して、下記関数(3):
σ=0.9
*E+21.7 (3)
によって決められ、
表面の表面エネルギーが、その下限に関して、下記関数(4):
σ=0.25
*E+22.25 (4)
(ここで、
σ=表面エネルギー[mN/m]
E=弾性係数[GPa])
によって決まるものである。
【0030】
これらの好ましい弾性係数範囲は一般的に、すなわち、必ずしも表面エネルギーに関係することなく、本発明に当てはまる。好ましくは、関数(2a)は関数(2)とは無関係に、表面エネルギーの最大(極性)成分の上限として適用される。
表面エネルギー及び表面エネルギー極性成分は、測定例3に従って決定される。
図2は、斜線領域(1)として、本発明の第一態様に好ましい方程式(3)及び(4)によって定義される弾性係数対表面エネルギーの特徴のウィンドウを示す。
図5は、本発明の第二態様に好ましい同様のものを示す。範囲(2)はそれぞれ特徴の好ましくない非発明的組み合わせを示す。
図3(本発明の第一態様のため)及び
図6(本発明の第二態様のため)は、斜線領域(1)として、方程式(2)及び(2a)によって定義される弾性係数対表面エネルギーの最大極性成分の特徴の好ましいウィンドウを示す。ここでは、それらの特性のウィンドウに関して、従来技術で示唆された層はそれぞれ方程式(3)及び(4)、並びに(2)及び(2a)によって定められる特徴のウィンドウ外(非斜線領域(2))であることに留意すべきである。
【0031】
ここで、ほとんどのプラスチック用途、特に線維複合材では、最小表面エネルギー、特に最小極性成分の表面エネルギーが望ましいことを指摘すべきである。
上記プロセス様式を通じて、驚くべきことに、弾性係数対表面エネルギーの比又は弾性係数対表面エネルギーの最大極性成分の比に関する特性の特に望ましいウィンドウを有する防食層を作製することができる。特性のこのウィンドウの効果は、所与の硬度に関して、攻撃的化学薬品、特にアルカリに対して特に良い耐性があることである。
驚くべきことに、コーティングが低エネルギーを有し、特に低極性成分の表面エネルギーを有するときには(ここでは好ましくは≦3mN/m、さらに好ましくは≦2mN/m、特に好ましくは≦1.5mN/m)、有機ケイ素プラズマコーティングの分野で特に良い腐食防止を厳密に達成することができ、プラズマポリマーコーティングに用いられる前駆体の激しい断片化が起こり、このようにして、複数の極性基が組み込まれるときには達成できないことが分かった。
プラズマポリマー層中の極性基は通常、プラズマ重合プロセス中の酸素及び/又は水の存在が原因であるが、コーティング直後に真空システムのガス抜き中にも生じる。
コーティング中の極性基が低率であるのみならず、層は良い架橋を有し、特に腐食防止のためにさえすぐに利用できるように十分に硬い。このことは、1.25〜10GPa、好ましくは1.5〜9.0、特に好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.5〜7.5GPaの弾性係数を有する本発明の層のおかげで保証される。
特に腐食防止のために特に良い層品質は、表面エネルギーの低極性成分のみならず、同時に表面エネルギーの高い分散(非極性)成分(≧23mN/m、好ましくは≧25mN/m、さらに好ましくは≧27mN/m)が存在するときに達成される。
【0032】
さらに、本発明によれば、表面が1.4〜1.54、好ましくは1.44〜1.54の550nmでの屈折率を有する固形プラズマポリマー体又はプラズマポリマー層が好ましい。
驚くべきことに、好ましい形態の本発明の層は、所望の最終用途に良い安定性を示す屈折率を有する。同一の表面エネルギーを与えた場合、本発明のコーティング中のSiO
2構造単位の比率ではなく、Si-O-Siの比率が高いほど、弾性係数及び硬度が大きい。さらに、屈折率が上昇する。
本発明によれば、特に分離層及び/又は防食層として使用するためには、層が5nm〜20μm、好ましくは200nm〜10μm、特に好ましくは400nm〜5μmの層厚を有するプラズマポリマー層が好ましい。
これらの層厚を用いれば、特に良い形状保持及び長寿命を有する分離層及び/又は防食層を製造し、技術的な表面粗さをカバーすることができ、結果として特殊な平滑化法をなしで済ますことができる。
ナノインデンテーションを用いて測定した層の硬度が≧0.5GPa、好ましくは≧1GPa、さらに好ましくは≧1.5GPaである、本発明のプラズマポリマー層が好ましい。
本発明の層の硬度は、測定例1に記載するように測定するのが好ましい。
【0033】
本発明の層が、所与のC/O比及び弾性係数で、比較的高い硬度を有するという事実は同様に驚くべきことであり、従来技術から予見できなかった。特に高弾性係数又は高硬度と低表面エネルギー又は低極性成分の表面エネルギーの組み合わせが存在可能であるという事実は、本発明の層は化学的及び物理的に耐久性であることが分かるので、本発明の層を想定される最終用途に特に適したものにする。この点で適切な表面エネルギーの組み合わせをも考慮すれば、特に好ましい異形の本発明の層は従来技術を超える明確な改善を構成する。
上記によれば、XPSを用いて測定した層の表面のモル比が以下のとおりである本発明のプラズマポリマー層が好ましい。
O:Si 1.0〜2.0、好ましくは1.15〜1.7 及び/又は
C:Si 1.1〜2.5、好ましくは1.3〜2.0。
C/O比のみならず、上記のさらなるモル比が特に適していることも分かった。本発明によれば、XPSを用いて測定し層の表面のモル比が、いずれの場合もHを差し引いた層中に存在する原子の総数に基づいて、下記:
O:%で25〜50、好ましくは%で28〜45
Si:%で22〜28、好ましくは%で23〜27
C:%で28〜50、好ましくは%で30〜50、さらに好ましくは%で32〜47
のとおりであるプラズマポリマー層が好ましい。
モル比率のそれぞれの決定は、疑義がある場合は測定例2に記載のようにXPSを用いて達成される。
本発明の層の堆積においては、非接触状態(フリーの浮遊構造)に比べて、堆積速度の明瞭な増加も、被覆すべきコンポーネントにおける深いくぼみに関してコーティングの良い接近性も達成される。
使用者は確実に、少量の酸素源(oxygenous)ガスだけでプラズマ重合プロセスが提供されるようにし;使用者は同様に低漏出率(少なくとも1時間にわたって圧力上昇曲線により決定した場合に≦5sccm)及び真空タンク内の低水負荷を確保するであろう。
【0034】
また、本発明の一部は、型内の分離層として本発明のプラズマポリマー層を使用することである(特に本発明の第一態様に好ましい)。
これに関連して、プラスチック、好ましくは繊維複合材に関して分離を達成するのが好ましい。
本発明によれば、分離が、エラストマー、熱可塑性及び熱硬化性プラスチックから成る群より選択されるプラスチックに関する分離であるように使用を達成するのが最も好ましく、特定のプラスチックは、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、接着剤、シーラント、フォーム又は射出成形プラスチックであってよい。
本発明の使用、特に本発明の好ましい使用では、本発明の層は、それらの特性を特に効率的に示すことができる。
本発明の一部は、水、水性物質、CO
2及び/又は溶媒を用いた固形体の洗浄性を改善するための本発明の層の使用(特に本発明の第一態様に好ましい)でもある。
【0035】
本発明の一部は、表面の腐食防止を改善するための本発明のプラズマポリマー層の使用(特に本発明の第二態様に好ましい)でもある。少なくとも強酸及び強アルカリの作用が非被覆状態に比べて表面の変化を緩徐にするときには腐食防止の改善がある。この目的ではクイック試験として、被覆表面を25%硫酸で65℃にて15〜60分間試験し、それを同ストレスにさらした同一の非被覆表面と比較するのが好ましい。類似して、室温で、好ましくは60℃で好ましくは1モル濃度の水酸化ナトリウム溶液を用いて15〜60分間アルカリ安定性を試験することができる。アルカリ又は酸安定性の試験、好ましくは両試験が表面の緩徐な変化を示すとき、本発明のコーティングのおかげで、好ましくはヒトの裸眼で検出可能な腐食防止の改善がある。
表面が金属又は合金から成るか或いは金属又は合金を含む、本発明の使用が好ましい。
本テキストの目的の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び固体状態であることを条件に、原子番号13、21〜31、39〜50、57〜83及び89〜94を有する元素である。特定環境下では、ゲルマニウム及びアンチモン、並びに遷移金属ホウ素、ケイ素、ヒ素及びテルルも金属に含めてよい。
本発明の層で保護できる好ましい金属は、アルミニウム、鉄、ここでは特に鋼、マグネシウム、銅、銀、亜鉛、ニッケル、チタン及びそれらの合金である。
【0036】
本発明の一部は、基材と、この基材に適用された本発明のコーティングとを含んでなる固形体である。従って、この固形体、少なくとも本発明のコーティングの領域内の固形体は、本発明のコーティングの有利な特性がその表面に付与される。
従って、本発明によれば(特に本発明の第一態様のため)、FRP又は他のプラスチックの成形用装置、プレス、成形型、射出成形型、鋳造型、静的シール、接着剤塗布装置のコンポーネント、パン及び他の料理器具、光起電性モジュール及び発電に役立つ他の要素、包装業界用コンポーネント、例えばコンベヤー又は輸送要素、塗装及び印刷装置のコンポーネント、例えば導管、カバー又はインク容器から成る群より選択される固形体が好ましい。
特に本発明の第二態様の基材がその表面において、金属又は合金から成るか或いは金属又は合金を含み、かつその表面上に、金属又は合金の領域内に、本発明のコーティングがある、本発明の固形体が好ましい。
熱伝導器、自動車ホイールリム、医療機器又は用具、家具装飾品、引き抜きレール、例えば家庭用オーブン、キッチン又は家具用;動力車用の装飾及び機能要素、例えば装飾ストリップ、及びレール材料から成る群より形成された本発明の固形体が好ましい(特に本発明の第二態様において)。
本発明の固形体としてのこれらの日用品は、特に本発明のコーティングで効率的に保護可能である。
好ましい表面特性(上記参照)は、本発明の腐食層と同様に表面の洗浄特性にプラスの影響を与えられるようにするので、本発明の一部は、特に本発明の第二態様で上述したように、いずれの場合も対応層なしで定義される固形体の、溶媒、水性洗剤及び/又はドライアイスによる洗浄性を改善するための本発明の層の使用でもある。
【0037】
本発明の一部は、被覆基材の製造方法であって、下記工程:
a)被覆すべき基材を準備する工程及び
b)本発明のコーティングで基材を被覆する工程
を含む方法でもある。
さらにその表面に腐食防止を有する固形体の製造方法であって、下記工程:
a)その表面に金属又は合金を有する固形体を準備する工程及び
b)その金属又は合金含有表面の少なくとも一部に本発明の層を堆積させる工程
を含む方法が好ましい。
低圧の高周波数プラズマを、好ましくは13.56MHzの周波数で使用するように本発明の(プラズポリマー)被覆方法を行なうのが好ましい。これは好ましくは、被覆すべき金属コンポーネントを電極に伝導的に接続する。電極は、プラズマ重合プロセス中に好ましくは発生するとしても≦50V、好ましくは≦20V、さらに好ましくは≦10Vの非常に小さい自己バイアスのみが発生するように選択される。これが不可能であれば、当業者は、例えば、(好ましい)作業範囲を達成するために、制御された様式で、電極面積対質量面積(チャンバー壁)の比を増やすであろう。
この手順から生じる使用者への2つの本質的利点:被覆すべきコンポーネント表面は非常に、非常に大きく、例えば10〜20m
2より大きくなり得るので、コーティングプロセスのスケールアップ可能性(upscalability)に関して制限がない。これは特に経済的に実行可能な様式でコーティングを実施できるようにする。
さらに、生じるコーティングのあるとしても、超低エネルギーイオン衝撃のみが起こるので、不必要な酸化が起こらない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を詳細に解明する。
測定例
測定例1:弾性係数
ナノインデンテーションは、微細ダイヤモンドチップ(三角錐[Berkovich]、半径100nm未満)を用いて表面コーティングの硬度を測定できる試験法である。巨視的硬度測定(例えばビッカース硬度)とは対照的に、ここで測定するのは標準力で刻印される残留圧入中空ではなく、ナノインデンターの浸透深さ依存性断面積である。この深さ依存性断面積は既知硬度を有する基準サンプル(一般的に溶融石英)によって決定される。
標準力の印加中に、ナノインデンテーションは、標準力が上昇し、再び降下するにつれて、正確に浸透深さを測定できる高感度偏向センサーシステム(容量性プレート)を使用する。これは従来の手順とは非常に異なる。荷重軽減の初期中の標準力-浸透深さ曲線は、サンプルの現場剛性を表す。従って、基準サンプルから分かるナノインデンターの断面積の助けを借りて、サンプルの弾性係数及び硬度を決定することができる。ナノインデンテーションの最大試験力は一般的に15mN未満である。
【0039】
基材によって影響されないコーティングの純粋特性を測定するためには、層厚の10%の経験則を用いる。より深いレベルの浸透曲線には使用基材の影響が含まれる。層厚の10%を超えて浸透深さを上昇させると、測定値は基材の弾性係数に近づき、硬度は徐々に基材の硬度に近づく。この試験法によって記述された評価は、Oliver & Pharr [W.C. Oliver, G.M. Pharr, An improved technique for determining hardness and elastic modulus using load and displacement sensing indentation experiments, J. Material Res. (1992) Vol. 7, No. 6, 1564-1583]に由来する。
【0040】
異なる荷重での浸透深さの容易なバリエーションのためには、複数荷重と荷重軽減法と呼ばれる方法、短縮してマルチインデンテーション法と呼ばれる方法を用いる。この方法では、固定点でセグメント毎に荷重及び荷重軽減操作を受ける。局所的な荷重最大は連続的に増加する。従って、固定点では、弾性係数及び硬度の深さ依存値を決定することができる。さらに、統計目的では、測定分野において、サンプル上の種々の無影響部位に同様に接近して試験する。個々のインデンテーション及びマルチインデンテーション法間の比較によって、シフマン&キュスター(Schiffmann & Kuster)は、2つの方法で確認された値間には非常に小さい偏差しかないことを示した[K. I. Schiffmann, R. L.A. Kuster; Comparison of Hardness and Young’s Modulus by Single Indentation and Multiple Unloading Indentation, in: Zeitschrift fur Metallkunde 95 (2004) 5, 311-316]。補償のため、圧電スキャナーのクリープ効果阻止のための長い保持時間が示唆されている[K. I. Schiffmann, R. L.A. Kuster; Comparison of Hardness and Young’s Modulus by Single Indentation and Multiple Unloading Indentation, in: Zeitschrift fur Metallkunde 95 (2004) 5, 311-316]。
従って、例えば、実施例2のサンプルの場合(表2)、最大0.055mNで部位当たり10回のマルチインデンテーションを行なった。マルチインデンテーションは局所力最大を有し、次に該力の20%に減らした。これらの荷重軽減曲線を98%から40%のタンジェントの形で評価した。10個の測定点を統計学及び均一性について試験した。例えば以前の測定の結果として試験すべき層の塑性変形等の影響を回避するため、測定点間の距離は50μmだった。層厚は1839nmだった。層厚の最大10%という浸透深さの経験則に順守するため、0.055mNの最大力までに示された例のマルチインデンテーションの場合の荷重軽減曲線は評価に認められる。より低い層厚の場合、対応する最大局所力は10%規則を超えないように留意すべきである。
【0041】
実施例のナノインデンテーションでは、CETR(現在Bruker AXS S.A.S.の一部)からのNano-Headナノインデンテーションモジュール(NH2)を備えたUniversal Material Tester(UMT)を熱及び吸音隔離チャンバー内にて適切な振動減衰技術(マイナスk)で使用した。
例として、マルチインデンテーション法によれば、表1の2行目に従って作製したサンプルの場合(実施例、例1)、最大0.055mNで部位毎に10回のマルチインデンテーションを行なった。マルチインデンテーションは局所力最大を有し、次に該力の20%に減らした。これらの荷重軽減曲線を98%から40%のタンジェントの形で評価した。10個の測定点を統計学及び均一性について試験した。例えば以前の測定の結果として試験すべき層の塑性変形等の影響を回避するため、測定点間の距離は50μmだった。層厚は1839nmだった。層厚の最大10%という浸透深さの経験則に順守するため、0.055mNの最大力までに示された例のマルチインデンテーションの場合の荷重軽減曲線は評価に認められる。より低い層厚の場合、対応する最大局所力は10%規則を超えないように留意すべきである。
浸透深さと対応荷重軽減曲線の最大力は、ここで疑義がある場合、≦0.055mNであり、好ましくは≦1000nmの層厚の場合、疑義がある場合、≦0.020mNである。
【0042】
測定例2:XPS測定
本発明の層のモル比の決定のためにはXPS測定を用いた。この目的の手順は以下のとおおりである。
XPS分析はVG 220i-XLシステム(VG Scientaから)で達成した。パラメーター:磁気レンズモード、光電子の取り出し角0°、単色(monochromatized)AlKα励起、一定アナライザーエネルギー(constant analyzer energy)(CAE)モード、通過エネルギー70eV(外観スペクトルで)及び20eV(エネルギー性高解像度ラインスペクトルで)、及び分析面積:0.65mmφ;非導電性サンプルは低エネルギー電子(4eV)で中和する。この方法の検出感度は元素特異的であり、%で約0.1、すなわち約1000ppmである。荷電効果を補償するため、C-C種に割り当てることができるC1s主光電子放出線は評価では285eVに固定し;それに応じてこれはさらなる光線の位置をシフトさせる。
ASTM規格E902-94に準拠してXPS分光計を設定した。分析前及び分析中のサンプルに関してはASTM規格E 1078-90を用いた。得られた測定データの処理のためには、ASTM規格E 996-94及びE995-95を参考にした。証明書類はこれらの規格で引用された参考文献である。
この手順の助けを借りて、表1及び2に示すように、元素組成とSi2pピークシフトが両方とも分かる。
【0043】
測定例3:表面エネルギー
Kruss G2接触角測定機器を用いて2011年11月のDIN 55660-2に従って表面エネルギーを測定する。これは試験流体として高純度を有する水、ジヨードメタン及びエチレングリコールを用いて行なわれる。試験流体は下記特性データを有する。
水 表面エネルギー:72.8mN/m、極性成分:51.0mN/m
ジヨードメタン 表面エネルギー:50.8mN/m、極性成分:0.0mN/m
エチレングリコール 表面エネルギー:47.7mN/m、極性成分:16.8mN/m
使用する試験方法は動的測定(前進接触角)であり、液体供給中にエッジ角を測定する。疑義がある場合、ピーク先端と鏡像との間の中点で水平方向に基線を手で設定する。ニードル距離を約2mmに設定する。測定前に、偽測定のリスクを減らすため、表面を任意にアセトンできれいにする(アセトン及び糸くずの出ない布で1回非常に優しく拭う)。
使用する試験流体の量は、11.76μL/分の投与率で6μLである。実際の測定は、約1μLの供給量に相当する5分後に始まり、液体毎に3滴加える。それぞれの結果を平均する。
接触角と表面エネルギー及び表面エネルギーの極性成分の評価は、KrursからのWindows用液滴形状解析(drop shape analysis)(DSA)ソフトウェア(バージョン1.91.0.2)により達成した。接触角の決定のためには、多項式法2を使用した。30mN/mまでの表面エネルギーの評価はWu[S. Wu, Calculation of interfacial tension in polymer systems, Journal of Polymer Science, Part C: Polymer Symposia (1971), Vol. 34, Issue 1, 19-30]に従って行ない、30mN/mを超える表面エネルギーについてはOwens-Wendt-Rabel-Kaelbleに従った。重みづけ誤差(error weighting)なしで評価を達成した。
表面エネルギー及びその極性成分について表1及び2に報告する値を見い出した。
【0044】
実施例
実施例1
全てのサンプルは、[Vissing, K.: Aufskalierung plasmapolymerer Beschichtungsverfahren, Thesis, Culliver, (2008) ISBN 978-3-86727-548-4]に記載どおりに1m
3のプラズマ重合系を用いて作製した。しかしながら、本ケースでは、HF系のマッチボックスを用いて測定した表1に特定した実施パラメーターの範囲内のこの系の自己バイアスが確実に<10Vになるように、2.9m
2の開口部のある電極系を有する点で異なった。
平らな非導電性サンプル、例えばウエハー又は顕微鏡スライドの場合でさえ何の問題もなくその上にプラズマが生じ得るように、全てのサンプルを電極の上に直接置いた。
前もって圧力上昇法により系の総漏出率が0.3mbar・L/s未満であることを判定した。
サンプルの酸素前処理後、0.016mbar(バタフライ弁を用いて調節)の作動圧力で(参考例と実施例1及び2;表1参照)60sccmのHMDSO及び30sccmのO
2のガス流量を設定した。調節による圧力の設定後に、表中「電力」下に特定した順方向電力を用いて実施例1のプラズマを引き起こした。所望の層厚が得られるまで、この状態を維持した。その後、電力をゼロに設定してプラズマを停止した。引き続き、ガス流量を同様にゼロに減らして、次に通気操作を開始することができた。
このようにして形成されたコーティングは、表1に報告する弾性係数(ナノインデンテーションを用いて測定)を有する。実施例2のコーティング(表1)では、例えば1.22のC/O比及び27.2mN/mの表面エネルギーで7GPaだった。
対応する測定結果及びパラメーターを計算できるように、実施例に用いた全てのプラズマパラメーター(HF電力、ガス流量、圧力)は表1で見つけられる。
被覆中に下記ガス流量:HMDSOが60sccm及びO
2が30sccmを設定し、1500WのHF電力を使用する場合、表1の組成及び特性プロファイルを特徴とするコーティングが堆積される。これは、1.22のC/O比で非常に高い弾性係数を特徴とするコーティングを表す。さらに、高弾性係数にもかかわらず、低表面エネルギー及び低極性成分を有するコーティングが堆積され、これはCFRP加工用分離層として顕著に適している。対照的に、非発明参考例は、ガス流量が実施例1及び2と同様であるにもかかわらず、本発明の特性のウィンドウが得られない。これは、例えば、WO 03/002269の実施例でも真実である。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例2:
例えば、電解酸化アルミニウム(Eloxed aluminum)(Unidal 7090;Eloxal厚=14〜16μm(Eloxal硬度=200〜400HV;圧縮)を加工して医療技術用途の機器担体を与える。この場合、一定の視覚的印象を保証するため、消毒及び滅菌中の強アルカリ及び熱蒸気の作用から表面を保護しなければならない。この場合、視覚的及び経済的理由で、平滑化プロセスは前処理法としての選択肢ではないので、本発明のプラズマポリマー防食層を用いて金属表面を保護することができた。
コーティング条件は以下のとおりだった:
フルエリアHF電極系を有する5m
3のプラズマ重合系の使用[Vissing, K.: Aufskalierung plasmapolymerer Beschichtungsverfahren, Thesis, Culliver, (2008) ISBN 978-3-86727-548-4]。しかしながら、本ケースでは、HF系のマッチボックスを用いて測定した場合にこの系の自己バイアスが確実に<10Vであるように、約8m
2の開口部のある電極系を有する点で異なった。
平らな非導電性サンプル、例えばウエハー又は顕微鏡スライドの場合でさえ何の問題もなくその上にプラズマが生じ得るように、全てのサンプルを電極の上に直接置いた。
前もって圧力上昇法により系の総漏出率が0.3mbar・L/s未満であることを判定した。酸素プラズマによるサンプルの前処理後、バタフライ弁を用いて調節した0.028mbarの作動圧力で、それぞれ200sccmのHMDSO及びO
2を連続的に入れた。プラズマを形成するために、4200Wの順方向電力を4500秒間使用した。その後、電力をゼロに設定してプラズマを停止した。引き続き、ガス流量を同様にゼロに減らしたので、引き続き通気操作を開始することができた。
形成されたプラズマポリマーコーティングは約2μmの厚さを有し、24.7mN/mの表面エネルギーを有し、極性成分が1.1mN/mであった。それに応じて、100°の静的水接触角が測定された。ナノインデンテーションを用いて測定したコーティングの弾性係数は3.05GPaだった。
【0047】
【表2】
【0048】
室温で1時間にわたって1滴のNaOH溶液(1モル濃度)を適用することによって防食層の有効性を試験した。
表面に目に見える変化はなかったが、非被覆又は不十分な被覆面は、ブリスター形成の結果としてしての反応を即座に有し、試験面に明確な変化が観察される。非被覆例では、小さい穴が形成された。
硫酸試験(65℃で25%硫酸中15分)の助けを借りて同様に良い腐食安定性を観察することができた。
表2の反例は、同一系で不適切なプロセス様式の場合に所望の弾性係数を得ることができるが、極性成分はずっと大き過ぎ、ひいてはSi2pピークの位置は望ましくない領域にシフトすることを示す。従って腐食安定性の試験も酸性及び塩基性の両範囲で中程度の腐食防止を示すだけである。
この例の結果及びプロセスパラメーターは表2で見つけられる。
【0049】
実施例3:
漂白される織物に縫い込めるアルミニウム要素を作製するためには、特定の機械的安定性と同様に、高pH範囲で優れた腐食防止が必要である。
該要求の解決法を提供できるように、Al 99.5シートEN AW-1050A (赤/黒) H14 EN 573-3 EN 485-1,2,4のサンプルを従来の溶剤脱脂後、さらに下記で明らかになるようにその次に該コーティングをそのまま続けるため、酸素プラズマの助けを借りてアセトン含浸布で徹底的にきめ細かくきれいにした。
全てのサンプルは、[Vissing, K.: Aufskalierung plasmapolymerer Beschichtungsverfahren, Thesis, Culliver, (2008) ISBN 978-3-86727-548-4]に記載のように1m
3のプラズマ重合系を用いて作製した。しかしながら、本ケースでは、HF系のマッチボックスを用いて測定した場合にこの系の自己バイアスが確実に<10Vであるように、約2.9m
2の開口部のある電極系を有する点で異なった。
平らな非導電性サンプル、例えばウエハー又は顕微鏡スライドの場合でさえ何の問題もなくその上にプラズマが生じ得るように、全てのサンプルを電極の上に直接置いた。
前もって圧力上昇法により系の総漏出率が0.3mbar・L/s未満であることを判定した。
サンプルの酸素前処理後、0.016mbar(バタフライ弁を用いて調節)の実施圧力で60sccmのHMDSO及び30sccmのO
2のガス流量を設定した。調節による圧力の設定後に、1200Wの順方向電力を用いて実施例2(表2)のプラズマを引き起こした。所望の層厚が得られるまで、この状態を維持する。その後、電力をゼロに設定し、ひいてはプラズマを停止する。引き続き、ガス流量を同様にゼロに減らすと、通気操作を開始することができる。
このようにして実施例2から形成されたコーティング(表2参照)は1.34のC/O比及び1.1mN/mの極性成分を有する25.2mN/mの表面エネルギーで5.0GPaの弾性係数(ナノインデンテーションを用いて測定)を有する。
1モル濃度のNaOHを表面に室温で1時間適用するNaOH試験の助けを借りてアルカリ安定性を試験した。裸眼でも光学顕微鏡のどちらでも何の腐食の痕跡(圧痕又は層の弱体化)もないことが明らかだった。それを用いてジッパー要素について機械的安定性を試験した。機械的使用後でさえ、該要素はNaOH試験で如何なる腐食の痕跡をも有しないことが分かった。対照的に、非被覆面は全エリアにわたって即座にひどい作用を呈する。不十分なコーティングを有するサンプルは圧痕を受ける。