【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、機能性炭酸カルシウムなどの多孔質粒子は、活性剤を腸に送達させるために製剤処方物中で優れた特性を有することが今回発見された。多孔質粒子は、大量の活性剤を吸着し、吸収する能力を有し、結果的に薬物搭載量が高くなる。さらに、多孔質粒子から薬物が非常に急速に放出されることが分かった。また、多孔質粒子のサイズが小さいゆえに、多数の小さい個々の粒子が、これらの粒子を含有する製剤処方物から放出され、そしてこれらは活性剤を放出するために腸の大きな範囲にわたり広がり得る。
【0015】
したがって、本発明は、担体粒子および担体粒子と会合した少なくとも1つの活性剤とを含む、活性剤を腸に送達させるための遅延放出製剤処方物であって、この担体粒子が多孔質であり、腸標的化のための材料によって包まれる、遅延放出製剤処方物に関する。
【0016】
遅延放出製剤処方物は、経口投与時からその処方物が少なくとも腸、好ましくは回腸終端部に到達するまで、活性剤の放出を遅延させ、その活性剤が腸で、および好ましくは結腸でのみ実質的に放出されるようになる処方物であるものとして理解される。処方物が少なくとも腸に到達し、活性剤の放出が開始されたら、放出は、即時であるかまたは時間をかけた徐放性であり得る。
【0017】
担体粒子として、医薬的に許容可能である何らかの多孔質粒子を使用し得る。担体粒子は、好ましくは、それらが活性剤と反応しないように選択される。例えば、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムおよび他のセラミクスが担体粒子として使用され得る。
【0018】
担体粒子のサイズは特に制限されず、要件に従い当業者により選択され得る。例えば、活性剤または何らかのコーティング材料なしの担体粒子は、沈殿法により測定して、例えば、1mm未満、より好ましくは0.1mm未満および最も好ましくは0.05mm未満、例えば0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは0.8から20μm、例えば1から10μmの重量メジアン粒径d
50を有し得る。したがって、担体粒子は、例えばミクロおよびナノ粒子であり得る。
【0019】
担体粒子の多孔度は、窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して好ましくは5m
2/gから200m
2/g、より好ましくは20m
2/gから80m
2/gおよび最も好ましくは30m
2/gから60m
2/gの範囲である、それらの比表面積と関連する。
【0020】
好ましい実施形態において、担体粒子は、炭酸カルシウム、特に沈降または機能性炭酸カルシウムを含む。好ましくは、担体粒子は機能性炭酸カルシウムからなる。他の粒子を上回る機能性炭酸カルシウム粒子の長所は、それらが無毒性であることおよびそれらが特により低いpHで素早く崩壊または溶解することである。したがって、これらは、腸の粘膜、特に結腸の粘膜において刺激性の影響が全くないかまたは殆どない。
【0021】
機能性炭酸カルシウムは当技術分野で公知である。これは、非常に多孔質の様々な沈降炭酸カルシウムである。その孔径が小さく、表面積が大きくなる結果として、これは「機能性炭酸カルシウム」(FCC)と呼ばれる。現在、粒径、孔径および孔構造が異なる4つの異なるタイプのFCC(S01、S01、S03およびS04)がOmyaから市販されている。
【0022】
FCCは、国際公開第00/39222号パンフレットおよび欧州特許出願公開第2 264 108号明細書に記載のとおり調製され得る。これは、二酸化炭素および酸との天然または合成炭酸カルシウムの表面の反応により調製されるので、FCCは「表面処理炭酸カルシウム」とも呼ばれる。したがって、FCCは、二酸化炭素および1以上の酸と天然または合成炭酸カルシウムを反応させることによって得ることが可能であり、この場合、二酸化炭素はインサイチュで酸処理により形成され、および/または例えば国際公開第2010/037753号パンフレットに記載のように外部供給源から供給される。
【0023】
FCCが調製される天然炭酸カルシウムは、例えば大理石、方解石、白亜および白雲石、石灰石およびそれらの混合物を含む群から選択され得る。FCCが調製され得る合成炭酸カルシウムは、好ましくは、アラゴナイト、バテライトまたは石灰性の鉱物学的結晶形またはそれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムである。FCCの調製で使用される酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、ハイドロサルフェート(hydrosulphate)、リン酸、シュウ酸およびそれらの混合物から選択され得る。
【0024】
FCCは、窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して、好ましくは、5m
2/gから200m
2/g、より好ましくは20m
2/gから80m
2/gおよび最も好ましくは30m
2/gから60m
2/gの比表面積を有する。
【0025】
FCCは、好ましくは、沈殿法により測定して、0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは0.8から20μm、特に1から10μmの重量メジアン粒径d
50を有する。
【0026】
FCCは、好ましくは、水銀ポロシメーター測定から計算して、20体積%から99体積%、より好ましくは30体積%から70体積%、さらにより好ましくは40体積%から60体積%、例えば約50体積%の範囲内の、孔体積/単位粒子体積として求められる粒子内多孔度を有する。
【0027】
担体粒子、例えばFCCなどは活性剤を会合可能である。会合は、粒子の外面もしくは内面である粒子の表面上への吸着、または粒子への吸収であり得る。活性剤の吸着および吸収は、基本的に孔径により調節され、これは好ましくは、10から100nmの範囲、より好ましくは20から80nmの間の範囲、特に30から70nm、例えば約50nmである。
【0028】
活性剤の粒子への搭載は、例えば適切な溶媒中の活性剤の溶液に粒子を浸漬し、例えばろ過または遠心により浸漬粒子を溶液から分離し、そのようにして得た浸漬粒子を乾燥させることなどによって、当業者にとって公知の何らかの適切な方法により行い得る。しかし、この方法による粒子の搭載の結果、薬物搭載量が、活性剤の重量を含む担体粒子の総重量に対して最大で僅か約10重量%と低いものとなることが分かった。これは、十分な活性剤を患者に提供するために、大量(および大きな体積)の最終処方物を投与しなければならないという欠点を有する。
【0029】
驚くべきことに、蒸発法を用いて活性剤を粒子により吸着/吸収させる場合、薬物搭載が大きく増加し得ることが分かった。この方法において、無搭載粒子を適切な溶媒中の活性剤の溶液中で分散させるが、この溶液には、粒子上および粒子中に搭載しようとする所望の総量の活性剤が含有される。次いで、懸濁液を蒸発させ、それにより活性剤を粒子上および粒子中に沈着させる。この方法を使用することで、少なくとも1つの活性剤の重量を含む担体粒子の総重量に対して少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、例えば約45重量%の少なくとも1つの活性剤と会合している担体粒子が得られる。
【0030】
蒸発による多孔質粒子上/中の活性剤の吸着/吸収は、通常の蒸発法を用いて、例えば開放容器中で、例えば室温または高温で、室内圧力で、または閉鎖容器中で減圧で、溶媒を蒸発させることなどによって行われ得る。しかし、これらの方法は時間がかかり、したがって工業スケールでは当業者によって公知でもある流動床コーティング技術を用いて多孔質粒子の上/中に活性剤を吸着/吸収させることが有利であり得る。あるいは、活性剤は、公知の噴霧乾燥法によって、例えば懸濁多孔質粒子と一緒に活性剤の溶液を噴霧乾燥させることによって、吸着/吸収され得る。
【0031】
粒子と会合させて使用され得る活性剤は、特に制限されず、必要に応じて当業者によって選択され得る。例えば活性剤は、抗炎症剤、抗感染症薬、免疫調節剤および抗体からなる群から選択され得る。抗炎症剤は、例えばステロイド、コルチコステロイド、非ステロイド抗炎症剤または生薬抗炎症剤であり得る。抗感染症薬は、例えば抗生物質、ウイルス増殖抑制剤、抗真菌剤、駆虫剤または他の微生物(例えば藻類)に対する薬剤であり得る。適切な活性剤の具体例は、5−アミノサリチル酸、プレドニゾロン、ブデソニド、フルチカゾン、アザチオプリン、シクロスポリン、メトロニダゾールおよびメトトレキサートである。活性剤は、その遊離塩基または酸形態で、または何らかの薬理学的に許容可能な誘導体、例えばエステル、および/またはその塩などとして存在し得る。
【0032】
本発明の処方物において、腸、好ましくは結腸標的化のための材料によって担体粒子を包む。「包む」とは、処方物が腸に到達する前、好ましくは回腸終端部に到達する前、最も好ましくは結腸に移行する前に、腸標的化のための材料が活性剤の放出を実質的に防ぎ、好ましくは完全に防ぐように、腸標的化のための材料によって担体粒子が包まれることを意味すると理解される。この目的は、腸標的化のための材料のコーティングによって担体粒子を包むことによって達成され得る。コーティングは、各個々の担体粒子または複数の担体粒子を含むコア、例えば錠剤コアに適用され得る。さらなる実施形態において、コーティングは、担体粒子を含有するカプセル剤、例えば硬ゼラチンカプセル剤などに適用され得る。担体粒子は、より大きい粒子、例えば顆粒剤、ペレット剤またはミニ錠剤などに組み合わせ得ることも予想される。次いで、これらの個々のより大きな粒子は、腸標的化のための材料で被覆され、例えばサシェまたはカプセル剤に充填され得る。したがって、「包まれる」とは、担体粒子が腸標的化のための材料によって必ずしも直接包まれることを意味しないが、この材料は担体粒子と直接接触しないシェルまたはコーティング中に存在し得る。
【0033】
別の実施形態において、担体粒子は、腸、好ましくは結腸標的化のための材料のマトリクス内にある。結腸標的化のための非被覆マルチパーティクルレート(multiparticlulate)マトリクス系は、例えばDrug Development and Industrial Pharmacy,2011,37(10):1150−1159においてS.Krenzlinにより記載されている。
【0034】
腸標的化の材料のコーティングにより包まれる担体粒子を含む製剤処方物は、例えば腸標的化のための材料のコーティングの上または下にあるか、または担体粒子と腸標的化のための材料のマトリクスとの間にある1以上のさらなるコーティングを含み得る。担体粒子を腸標的化のための材料のマトリクス内に最初に埋め込むことも可能であり、次いでこのようにして得られるより大きな粒子を同じまたは異なる腸標的化のための材料のさらなるコーティングで被覆する。
【0035】
本発明の処方物中の担体粒子を包むために使用され得る腸標的化のための材料は当業者にとって周知である。好ましくは、この材料は、5未満のpHで腸液中で不溶性であり、5以上のpHで腸液中で可溶性である化合物を含む。したがって、この材料はpHに依存して溶解する。この材料は、そのpH未満でそれが不溶性であり、そのpH以上でそれが可溶性であるというpH閾値を有する。周囲の媒体のpHが材料の溶解を誘発する。したがって、pH閾値未満では材料は全く(または基本的に全く)溶解しない。周囲の媒体のpHがpH閾値に到達(またはこれを超過)すると、材料は可溶性になる。
【0036】
「不溶性」とは、1gの材料がある一定のpHで溶解するのに必要とされる溶媒(周囲媒体)が10,000mL超であることと理解される。「可溶性」とは、1gの材料がある一定のpHで溶解するのに必要とされる溶媒が、10,000mL未満、好ましくは5,000mL未満、より好ましくは1,000mL未満、さらにより好ましくは100mLまたは10mL未満であることと理解される。「周囲媒体」とは、消化管中の媒体、例えば胃液または腸液などを意味する。あるいは、周囲媒体は、消化管中の媒体のインビトロ同等物であり得る。
【0037】
正常な胃液のpHは通常、1から3の範囲である。腸、好ましくは結腸標的化のための材料は、pH5未満で不溶性であり、pH5以上で可溶性である。したがって、本材料は通常、胃液中で不溶性である。このような材料は、「腸溶性の」材料と呼ばれ得る。腸液のpHは、小腸に沿って約7から8に徐々に上昇する。したがって腸標的化のための材料は、回腸終端部/結腸で可溶性になり、担体粒子から活性剤が放出されるようになる。本材料は、好ましくは、6.5、より好ましくは7のpH閾値を有する。
【0038】
腸標的化のための、および特に担体粒子を包むコーティングの調製のための適切な材料の例は、アクリレートポリマー、セルロースポリマーおよびポリビニルに基づくポリマー、キトサン、その誘導体またはそのポリマーである。適切なセルロースポリマーの例としては、酢酸フタル酸セルロース、トリメリト酸酢酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。適切なポリビニルに基づくポリマーの例としては、ポリビニルアセテートフタレートが挙げられる。
【0039】
ある実施形態において、腸標的化のための材料は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸C
1−4アルキルエステルのコポリマー、例えばメタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのコポリマーであり得る。このようなコポリマーの適切な例は通常、陰イオン性であり、持続放出性ポリメタクリレートではない。これらのコポリマー中のカルボン酸基とメチルエステル基との比は、コポリマーが可溶性であるpHを決定する。酸:エステル比は、約2:1から約1:3、例えば約1:1または約1:2であり得る。このような陰イオン性コポリマーの分子量は通常、約120,000から150,000、好ましくは約135,000である。
【0040】
公知の陰イオン性ポリ(メチクリル酸(methycrylic acid)/メチルメタクリレート)コポリマーとしては、Eudragit(登録商標)L(pH閾値約6.0)、Eudragit(登録商標)S(pH閾値約7)およびEudragit(登録商標)FS(pH閾値約7)が挙げられる。メタクリル酸およびエチルアセテートのコポリマーであり、約5.5のpH閾値を有するEudragit(登録商標)L100−55も適切である。Eudragit(登録商標)コポリマーはEvonikから入手することができる。
【0041】
腸標的化のための2以上の材料の混合物が必要に応じて使用され得る。
【0042】
場合によっては、フィルム形成のための可塑剤(例えばトリエチルシトレート)および付着防止剤(anti−tacking agent)(モノステアリン酸グリセリンなど)などの従来の賦形剤が、コーティング調製物の総重量の最大30重量%の量で含まれ得る。
【0043】
担体粒子を包むコーティングの厚さは、一般的には約10μmから約150μmである。しかし、具体的なコーティングの厚さは、コーティングの組成および担体の表面積に依存する。
【0044】
pH閾値を有する上記化合物に加えて、またはその代わりに、腸、好ましくは結腸標的化のための材料は、多糖類など、結腸細菌による攻撃を受けやすい化合物を含み得る。適切な多糖類は、例えばデンプン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、コンドロイチン硫酸、シクロデキストリン、デキストラン、プルラン、カラギーナン、スクレログルカン、キチン、カードラン(curdulan)およびレバンである。
【0045】
さらに、ニュートリオース(Nutriose)(登録商標)は、結腸標的化のための、特に担体粒子を包むマトリクスを形成させるための材料として適切である。ニュートリオース(Nutriose)(登録商標)は水溶性であり、小麦デンプンから得られる繊維含量が高い分岐状デキストリンがRoquette Freresから市販されている。この化合物は、例えば微結晶セルロース、ポリビニルピロリドンまたは脂質、例えば硬化ダイズ油、トリステアリン酸グリセリル、サゾールワックス、マイクロワックスHG、マイクロワックスHWなどと組み合わせて使用し得る。
【0046】
本発明の製剤処方物は、当業者にとって公知の薬理学的に許容可能な賦形剤をさらに含有し得る。例えば、担体粒子は、単独で、または通常の充填剤、潤滑剤などと組み合わせての何れかで、錠剤コアに直接圧縮され得、次いで錠剤コアを腸標的化のための材料により包むことができる。別の実施形態において、担体粒子は、錠剤コアに圧縮するかまたは腸標的化のための材料により直接包むかの何れかの前に、単独で、または通常の賦形剤、例えば充填剤または造粒促進剤と組み合わせての何れかで、顆粒剤に造粒することができる。
【0047】
最終製剤処方物は、経口投与を対象とし、例えば錠剤、顆粒剤、ミニ錠剤、ペレット剤またはカプセル剤の形態である、経口剤形である。
【0048】
本発明の製剤処方物は、担体粒子の粒径が全般的に小さいという長所を有する。したがって、本製剤処方物は、腸標的化のための材料の溶解時に処方物が崩壊する際に互いから分離し得る多数の個々の担体粒子を含有する。したがって、多数の担体粒子が放出され、腸の大きな領域に広がり得、それにより結果的に腸内で活性剤が均一に放出されるようになる。
【0049】
さらに、担体粒子からの活性剤の放出は、担体粒子のサイズおよびそれらの孔のサイズならびに活性剤それ自身の物理学的および化学的特性に依存する。したがって、いくつかの場合において、活性剤が担体粒子からすぐに放出され、一方で他の場合において活性剤が長時間にわたり放出され得る。したがって、処置しようとする患者または疾患の具体的な必要に応じて、ある一定の活性剤の放出プロファイルを個別調整するための手段を提供することが所望される。
【0050】
さらに、例えば脂溶性活性剤は、担体粒子上および担体粒子中に搭載することが困難な傾向があることが分かった。したがって、特に脂溶性活性剤に対してより高い薬物搭載を可能にする担体粒子を提供することが所望される。
【0051】
驚くべきことに、担体粒子の表面に疎水性または親水性を付与する化合物で少なくとも部分的に担体粒子を被覆することによって両問題を解決することができることが分かった。これは、例えば担体粒子および特に機能性炭酸カルシウムを疎水性または親水性化合物、例えば脂肪酸など、例えばステアリン酸と反応させることによって遂行することができる。このような化合物が機能性炭酸カルシウムの表面と反応し、それにより例えばステアリン酸分子のフィルムまたはコーティングを形成することが分かった。これらの分子は、担体粒子の表面に例えば疎水性を付与し、それにより疎水性薬物の搭載をより多くすることが可能になる。さらに、例えば疎水性薬物が疎水性に修飾された担体粒子上またはその中に搭載される場合、活性剤の放出が遅延し、活性剤が長時間にわたり腸で利用可能になる。
【0052】
さらなる実施形態において、本発明の製剤処方物中の担体粒子は、少なくとも部分的に粘膜接着性化合物で被覆される。
【0053】
粘膜接着性化合物での粒子の被覆は、活性剤が十分に放出される前に担体粒子が腸からなくなるというリスクなく、長時間にわたっても活性剤が放出され得るように、担体粒子が腸で長時間保持されるという長所を有する。粘膜表面での粒子の保持は、標的領域での滞留時間延長に寄与し得る。
【0054】
適切な粘膜接着性化合物は当業者にとって公知である。合成粘膜接着性ポリマーに対する例は、様々なアクリル酸誘導体、特にポリアクリレート(カーボポール(Carbopols)(登録商標)として市販されているカルボマーとしても知られる。)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルアルコールである。アルギン酸塩、ペクチンおよびグアーガムは、天然粘膜接着性ポリマーとして言及され得る。キトサンおよび多くのセルロース誘導体が半合成粘膜接着性ポリマーとして知られている。
【0055】
本発明による製剤処方物に対する例を
図7で概略的に示す。この図は、粘膜接着性化合物で被覆される担体粒子と会合する活性剤を示す。このような被覆粒子は腸標的化のためのコーティングにより包まれるカプセル剤内に含有される。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明の製剤処方物中の担体粒子は、持続放出コーティングで少なくとも部分的に被覆される。持続放出コーティングは、粘膜接着性化合物の代わりに、または粘膜接着性化合物と組み合わせて存在し得る。好ましくは、担体粒子は、粘膜接着性化合物および持続放出コーティングの両方で少なくとも部分的に被覆されるが、それは、この場合、担体粒子が長時間にわたり腸に保持され、同時に活性剤が長時間にわたり放出されるからである。
【0057】
持続放出コーティングを調製するための適切な化合物は当業者にとって公知である。例えば、Eudragit RS、Eudragit RL、Eudragit NM、Eudragit NE、エチルセルロース、Compritol ATO 888、Precirol ATO 5、Geleol MonoおよびジグリセリドNFが使用され得る。
【0058】
持続放出コーティングは、粘膜接着性化合物と同時に、または粘膜接着性化合物の前もしくは後に多孔質粒子上に適用され得る。好ましくは、この粒子は最初に持続放出コーティングで少なくとも部分的に被覆され、その後、粘膜接着性化合物がこのような被覆粒子に適用される。
【0059】
本発明は、上記の遅延放出製剤処方物を調製する方法をさらに提供する。この方法は、搭載担体粒子を得るために、多孔質担体粒子、例えば機能性炭酸カルシウムなどに少なくとも1つの活性剤を搭載し、腸、好ましくは結腸標的化のための材料で搭載担体粒子を包む段階を含む。
【0060】
活性剤を担体粒子に搭載することは、上記のように従来の方法によって行われ得る。ある実施形態において、搭載は、適切な溶媒、例えばアルコール、特にエタノールまたはメタノールなど、何らかの他の有機溶媒、例えばアセトンなど、または水の中の活性剤の溶液中で担体粒子を懸濁することにより行われる。次いで蒸発によって、好ましくは減圧下で溶媒を懸濁物から除去する。あるいは、担体粒子は、流動床コーティング技術によるかまたは噴霧乾燥により、活性剤を搭載し得る。
【0061】
腸標的化のための材料で搭載担体粒子を包むことは、通常の方法、例えばコーティングを得るための噴霧コーティングまたはマトリクスを得るための押出法、例えば溶融押出などによって行い得る。
【0062】
本方法は、単独で、または1以上の賦形剤と組み合わせた、搭載担体粒子の造粒および/または圧縮段階などの他の段階を含み得る。
【0063】
さらに、本発明は、クローン病および潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、便秘、下痢、感染を含む消化管の炎症性障害および癌腫、特に結腸または結直腸癌などの消化管障害の処置の方法での使用のための上記の遅延放出製剤処方物に関する。