特許第6441940号(P6441940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441940
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】遅延放出製剤処方物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/26 20060101AFI20181210BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61K9/26
   A61P1/00
   A61K47/02
   A61K31/56
   A61K45/00
   A61P29/00
   A61P31/00
   A61P37/02
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-543424(P2016-543424)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公表番号】特表2016-531160(P2016-531160A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2014070128
(87)【国際公開番号】WO2015040212
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】13185334.3
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501279497
【氏名又は名称】ティロッツ・ファルマ・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TILLOTTS PHARMA AG
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】プレスィック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】プチコフ,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュイラー,ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ バルム,フェリペ ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ブラーヴォ ゴンザレス,ロベルト カルロス
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−504577(JP,A)
【文献】 特開平08−277216(JP,A)
【文献】 川端浩二ら、表面改質炭酸カルシウム粉体の性質、岡山県工業技術センター、 平成16年度センター報告(No.31),2004年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/26
A61K 31/56
A61K 45/00
A61K 47/02
A61P 1/00
A61P 29/00
A61P 31/00
A61P 37/02
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体粒子と、前記担体粒子と会合した少なくとも1つの活性剤と、を含む、腸に活性剤を送達するための腸放出製剤処方物であって、前記担体粒子が多孔質粒子であり、結腸標的化のための材料により包まれ、前記担体粒子が機能性炭酸カルシウムを含み、前記担体粒子が、前記少なくとも1つの活性剤の重量を含む前記担体粒子の総重量に対して少なくとも15重量%の前記少なくとも1つの活性剤と会合している、腸放出製剤処方物。
【請求項2】
前記機能性炭酸カルシウムが、天然または合成炭酸カルシウムを二酸化炭素および1以上の酸と反応させることにより得ることができる表面処理炭酸カルシウムであり、前記二酸化炭素が、酸処理によってインサイチュで形成され、および/または外部供給源から供給される、請求項1に記載の腸放出製剤処方物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性剤が、前記担体粒子上に吸着させられている、および/または前記担体粒子に吸収されている、請求項1または2に記載の腸放出製剤処方物。
【請求項4】
前記担体粒子が、前記少なくとも1つの活性剤の重量を含む前記担体粒子の総重量に対して少なくとも20重量%の前記少なくとも1つの活性剤と会合している、請求項1から3の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項5】
前記活性剤が、抗炎症剤、抗感染症薬、免疫調節剤および抗体からなる群から選択される、請求項1から4の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項6】
前記抗炎症剤が、ステロイド、コルチコステロイド、非ステロイド抗炎症剤または生薬抗炎症剤であり、前記抗感染症薬が、抗生物質、ウイルス増殖抑制剤、抗真菌剤、駆虫剤または他の微生物に対する薬剤である、請求項5に記載の腸放出製剤処方物。
【請求項7】
前記担体粒子が、前記結腸標的化のための材料のコーティングにより包まれる、請求項1から6の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項8】
前記担体粒子が、前記結腸標的化のための材料のマトリクス内にある、請求項1から7の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項9】
前記腸標的化のための材料が、5未満のpHで腸液中で不溶性であり、5以上のpHで腸液中で可溶性である化合物を含む、請求項1から8の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項10】
前記結腸標的化のための材料が、結腸細菌により攻撃されやすい化合物を含む、請求項1から9の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項11】
前記担体粒子が、前記担体粒子の表面に対して疎水性または親水性を付与する化合物で少なくとも部分的に被覆される、請求項1から10の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項12】
前記担体粒子が、粘膜接着性化合物および/または持続放出コーティングで少なくとも部分的に被覆される、請求項1から11の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【請求項13】
搭載担体粒子を得るために多孔質担体粒子に少なくとも1つの活性剤を搭載し、結腸標的化のための材料で前記搭載担体粒子を包む段階を含む、請求項1から12の何れかに記載の腸放出製剤処方物を調製する方法。
【請求項14】
消化管障害の処置の方法における使用のための、請求項1から12の何れかに記載の腸放出製剤処方物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤を腸に送達させるための遅延放出製剤処方物、このような処方物を調製する方法および消化管障害の処置におけるこのような処方物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クローン病および潰瘍性大腸炎などの腸疾患の局所処置、または全身投与に対する腸および特に結腸への薬物の標的化は、従来の剤形が上部消化管で薬物を急速に放出するので、非常に困難である。血流に吸収されると、薬物はヒトの全身に分布し、その結果、重篤な副作用の可能性が生じる。さらに、炎症がある結腸などの作用部位での薬物濃度は低く、そのため治療効果が低くなる。これらの制限を克服するために、剤形からの薬物放出は、理想的には胃および小腸で抑制されるが、標的部位に到達したらすぐに放出が開始されるべきである。
【0003】
経口投与時に小腸および/または大腸への部位特異的な薬物送達を可能にするために様々なアプローチが先行技術に記載されている。一般に、薬物リザーバは、フィルムコーティングにより包まれており、このフィルムコーティングは、上部消化管では薬物への浸透性に乏しいが、標的部位に到達したらすぐに浸透性となるものである。さらに、薬物放出は、標的部位に到達した時点で薬物が剤形中に依然として存在することを確実にするのに十分に低い速度で経口投与後すぐに開始され得る。
【0004】
結腸における薬物の放出は一般に小腸での放出とは異なるアプローチを必要とする。結腸は、炎症性疾患、過敏性大腸症候群、便秘、下痢、感染および癌腫を含む多くの疾患状態が起こりやすい。このような状態において、結腸への薬物標的化によって処置の治療的有効性が最大となる。結腸はまた、薬物の全身性循環への移行のための入り口としても利用され得、したがって結腸の外側の疾患の処置において有効であり得る。
【0005】
腸および特に結腸の薬物送達のために、プロドラッグならびに製剤を含め、様々な処方物が開発されており、一旦試験された概念が他の活性剤に適用され得るので製剤がより一般的である。結腸への活性剤の制御放出のための装置および剤形に対する例は、特許文献1〜3(米国特許第4,627,851号、国際公開第83/00435号および同第2007/122374号)で見ることができる。
【0006】
別の問題は、結腸疾患が不十分な水の再吸収および、そのための作用部位での薬物の滞留時間の顕著な短縮を伴うことが多いということである。即時的なウォッシュアウトを防ぐために、結腸に移行した直後の処方物からの薬物の急速放出が必要である。一方で、例えば遅延放出コーティングが損なわれる場合、または早期薬物放出を防ぐために十分でないいくつかの他の理由のために、薬物の急速放出は上部消化管での用量ダンピング(dose dumping)のリスクを伴う。
【0007】
さらに、腸および特に結腸への活性剤の部位特異的な放出は、個体間の変動性に非常に敏感である。放出は、pHまたは腸内フローラのような消化管における個々の環境に依存する。これは、非炎症粘膜と比較して、個々のpHシフトゆえに、小腸での粘膜の炎症の様々な段階にも当てはまる。この問題は、例えば炎症の様々な段階の潰瘍性大腸炎または小腸の様々な区画が影響を受けているクローン病で起こる。これによって、薬物放出が例えば回腸終端部よりも早く起こらないように薬物送達を個別調整するのが困難になっている。
【0008】
制御放出および特に結腸への部位特異的な放出を遂行するための様々な技術的手段が公知であるものの、送達の薬物を個別調整し、新しい要求にそれを適合させるさらなる製剤処方物の必要性が高まっている。特に、小腸および特に結腸の粘膜の炎症の処置に対して、確実に薬物の早期放出を防ぐが、同時にそれが作用部位に滞留している間に薬物放出をもたらすさらなる製剤処方物が必要とされる。さらに、粘膜をさらなる刺激から保護し続けるために、このような処方物中の何れの賦形剤も、低刺激性または無刺激性のものであるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,627,851号明細書
【特許文献2】国際公開第83/00435号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/122374号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、腸および特に結腸への薬物送達を個別調整するためのさらなる手段を提供する問題に関する。同時に、本処方物は、粘膜において低刺激性作用であるべきである。本処方物の全用量が腸および好ましくは結腸を通過中に放出され得るように、本処方物が腸および好ましくは回腸終端部に到達したときすぐに薬物の放出が開始されるべきである。
【0011】
沈降炭酸カルシウムは、製紙業および食品産業において添加物として広く使用されており、可能な製薬学的賦形剤としてかなり評価されている。2000年に、機能性炭酸カルシウムまたは変性炭酸カルシウムと呼ばれる新規の非常に多孔質の構造の炭酸カルシウムが顔料フィラー(pigment filler)またはミネラル(国際公開第00/39222号パンフレット)として記載された。このような機能性(表面処理)炭酸カルシウムを調製するための工程の改良および紙、ティッシュペーパー、プラスチック、塗料における、または制御放出もしくは水処理剤としてのこのような機能性炭酸カルシウムの使用が欧州特許出願公開第2264108号明細書で開示されている。
【0012】
T.Stirnimannらは、2013年4月19日にオンライン公開されたPharm Resで、経口分散錠の調製のための医薬賦形剤としての機能性炭酸カルシウムの使用を記載している。
【0013】
国際公開第2010/037753号パンフレットにおいて、機能性(表面処理)炭酸カルシウムを含む活性剤の制御放出のための担体が開示されている。実施例において、アマランス、ハッカ油およびリモネンなどの天然油が活性剤として使用され、活性剤を含有する担体から調製される錠剤が、バスボム、バスタブレット、練り歯磨きおよびスキンケア処方物として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、機能性炭酸カルシウムなどの多孔質粒子は、活性剤を腸に送達させるために製剤処方物中で優れた特性を有することが今回発見された。多孔質粒子は、大量の活性剤を吸着し、吸収する能力を有し、結果的に薬物搭載量が高くなる。さらに、多孔質粒子から薬物が非常に急速に放出されることが分かった。また、多孔質粒子のサイズが小さいゆえに、多数の小さい個々の粒子が、これらの粒子を含有する製剤処方物から放出され、そしてこれらは活性剤を放出するために腸の大きな範囲にわたり広がり得る。
【0015】
したがって、本発明は、担体粒子および担体粒子と会合した少なくとも1つの活性剤とを含む、活性剤を腸に送達させるための遅延放出製剤処方物であって、この担体粒子が多孔質であり、腸標的化のための材料によって包まれる、遅延放出製剤処方物に関する。
【0016】
遅延放出製剤処方物は、経口投与時からその処方物が少なくとも腸、好ましくは回腸終端部に到達するまで、活性剤の放出を遅延させ、その活性剤が腸で、および好ましくは結腸でのみ実質的に放出されるようになる処方物であるものとして理解される。処方物が少なくとも腸に到達し、活性剤の放出が開始されたら、放出は、即時であるかまたは時間をかけた徐放性であり得る。
【0017】
担体粒子として、医薬的に許容可能である何らかの多孔質粒子を使用し得る。担体粒子は、好ましくは、それらが活性剤と反応しないように選択される。例えば、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムおよび他のセラミクスが担体粒子として使用され得る。
【0018】
担体粒子のサイズは特に制限されず、要件に従い当業者により選択され得る。例えば、活性剤または何らかのコーティング材料なしの担体粒子は、沈殿法により測定して、例えば、1mm未満、より好ましくは0.1mm未満および最も好ましくは0.05mm未満、例えば0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは0.8から20μm、例えば1から10μmの重量メジアン粒径d50を有し得る。したがって、担体粒子は、例えばミクロおよびナノ粒子であり得る。
【0019】
担体粒子の多孔度は、窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して好ましくは5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/gおよび最も好ましくは30m/gから60m/gの範囲である、それらの比表面積と関連する。
【0020】
好ましい実施形態において、担体粒子は、炭酸カルシウム、特に沈降または機能性炭酸カルシウムを含む。好ましくは、担体粒子は機能性炭酸カルシウムからなる。他の粒子を上回る機能性炭酸カルシウム粒子の長所は、それらが無毒性であることおよびそれらが特により低いpHで素早く崩壊または溶解することである。したがって、これらは、腸の粘膜、特に結腸の粘膜において刺激性の影響が全くないかまたは殆どない。
【0021】
機能性炭酸カルシウムは当技術分野で公知である。これは、非常に多孔質の様々な沈降炭酸カルシウムである。その孔径が小さく、表面積が大きくなる結果として、これは「機能性炭酸カルシウム」(FCC)と呼ばれる。現在、粒径、孔径および孔構造が異なる4つの異なるタイプのFCC(S01、S01、S03およびS04)がOmyaから市販されている。
【0022】
FCCは、国際公開第00/39222号パンフレットおよび欧州特許出願公開第2 264 108号明細書に記載のとおり調製され得る。これは、二酸化炭素および酸との天然または合成炭酸カルシウムの表面の反応により調製されるので、FCCは「表面処理炭酸カルシウム」とも呼ばれる。したがって、FCCは、二酸化炭素および1以上の酸と天然または合成炭酸カルシウムを反応させることによって得ることが可能であり、この場合、二酸化炭素はインサイチュで酸処理により形成され、および/または例えば国際公開第2010/037753号パンフレットに記載のように外部供給源から供給される。
【0023】
FCCが調製される天然炭酸カルシウムは、例えば大理石、方解石、白亜および白雲石、石灰石およびそれらの混合物を含む群から選択され得る。FCCが調製され得る合成炭酸カルシウムは、好ましくは、アラゴナイト、バテライトまたは石灰性の鉱物学的結晶形またはそれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムである。FCCの調製で使用される酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、ハイドロサルフェート(hydrosulphate)、リン酸、シュウ酸およびそれらの混合物から選択され得る。
【0024】
FCCは、窒素およびISO9277によるBET法を用いて測定して、好ましくは、5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/gおよび最も好ましくは30m/gから60m/gの比表面積を有する。
【0025】
FCCは、好ましくは、沈殿法により測定して、0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは0.8から20μm、特に1から10μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0026】
FCCは、好ましくは、水銀ポロシメーター測定から計算して、20体積%から99体積%、より好ましくは30体積%から70体積%、さらにより好ましくは40体積%から60体積%、例えば約50体積%の範囲内の、孔体積/単位粒子体積として求められる粒子内多孔度を有する。
【0027】
担体粒子、例えばFCCなどは活性剤を会合可能である。会合は、粒子の外面もしくは内面である粒子の表面上への吸着、または粒子への吸収であり得る。活性剤の吸着および吸収は、基本的に孔径により調節され、これは好ましくは、10から100nmの範囲、より好ましくは20から80nmの間の範囲、特に30から70nm、例えば約50nmである。
【0028】
活性剤の粒子への搭載は、例えば適切な溶媒中の活性剤の溶液に粒子を浸漬し、例えばろ過または遠心により浸漬粒子を溶液から分離し、そのようにして得た浸漬粒子を乾燥させることなどによって、当業者にとって公知の何らかの適切な方法により行い得る。しかし、この方法による粒子の搭載の結果、薬物搭載量が、活性剤の重量を含む担体粒子の総重量に対して最大で僅か約10重量%と低いものとなることが分かった。これは、十分な活性剤を患者に提供するために、大量(および大きな体積)の最終処方物を投与しなければならないという欠点を有する。
【0029】
驚くべきことに、蒸発法を用いて活性剤を粒子により吸着/吸収させる場合、薬物搭載が大きく増加し得ることが分かった。この方法において、無搭載粒子を適切な溶媒中の活性剤の溶液中で分散させるが、この溶液には、粒子上および粒子中に搭載しようとする所望の総量の活性剤が含有される。次いで、懸濁液を蒸発させ、それにより活性剤を粒子上および粒子中に沈着させる。この方法を使用することで、少なくとも1つの活性剤の重量を含む担体粒子の総重量に対して少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、例えば約45重量%の少なくとも1つの活性剤と会合している担体粒子が得られる。
【0030】
蒸発による多孔質粒子上/中の活性剤の吸着/吸収は、通常の蒸発法を用いて、例えば開放容器中で、例えば室温または高温で、室内圧力で、または閉鎖容器中で減圧で、溶媒を蒸発させることなどによって行われ得る。しかし、これらの方法は時間がかかり、したがって工業スケールでは当業者によって公知でもある流動床コーティング技術を用いて多孔質粒子の上/中に活性剤を吸着/吸収させることが有利であり得る。あるいは、活性剤は、公知の噴霧乾燥法によって、例えば懸濁多孔質粒子と一緒に活性剤の溶液を噴霧乾燥させることによって、吸着/吸収され得る。
【0031】
粒子と会合させて使用され得る活性剤は、特に制限されず、必要に応じて当業者によって選択され得る。例えば活性剤は、抗炎症剤、抗感染症薬、免疫調節剤および抗体からなる群から選択され得る。抗炎症剤は、例えばステロイド、コルチコステロイド、非ステロイド抗炎症剤または生薬抗炎症剤であり得る。抗感染症薬は、例えば抗生物質、ウイルス増殖抑制剤、抗真菌剤、駆虫剤または他の微生物(例えば藻類)に対する薬剤であり得る。適切な活性剤の具体例は、5−アミノサリチル酸、プレドニゾロン、ブデソニド、フルチカゾン、アザチオプリン、シクロスポリン、メトロニダゾールおよびメトトレキサートである。活性剤は、その遊離塩基または酸形態で、または何らかの薬理学的に許容可能な誘導体、例えばエステル、および/またはその塩などとして存在し得る。
【0032】
本発明の処方物において、腸、好ましくは結腸標的化のための材料によって担体粒子を包む。「包む」とは、処方物が腸に到達する前、好ましくは回腸終端部に到達する前、最も好ましくは結腸に移行する前に、腸標的化のための材料が活性剤の放出を実質的に防ぎ、好ましくは完全に防ぐように、腸標的化のための材料によって担体粒子が包まれることを意味すると理解される。この目的は、腸標的化のための材料のコーティングによって担体粒子を包むことによって達成され得る。コーティングは、各個々の担体粒子または複数の担体粒子を含むコア、例えば錠剤コアに適用され得る。さらなる実施形態において、コーティングは、担体粒子を含有するカプセル剤、例えば硬ゼラチンカプセル剤などに適用され得る。担体粒子は、より大きい粒子、例えば顆粒剤、ペレット剤またはミニ錠剤などに組み合わせ得ることも予想される。次いで、これらの個々のより大きな粒子は、腸標的化のための材料で被覆され、例えばサシェまたはカプセル剤に充填され得る。したがって、「包まれる」とは、担体粒子が腸標的化のための材料によって必ずしも直接包まれることを意味しないが、この材料は担体粒子と直接接触しないシェルまたはコーティング中に存在し得る。
【0033】
別の実施形態において、担体粒子は、腸、好ましくは結腸標的化のための材料のマトリクス内にある。結腸標的化のための非被覆マルチパーティクルレート(multiparticlulate)マトリクス系は、例えばDrug Development and Industrial Pharmacy,2011,37(10):1150−1159においてS.Krenzlinにより記載されている。
【0034】
腸標的化の材料のコーティングにより包まれる担体粒子を含む製剤処方物は、例えば腸標的化のための材料のコーティングの上または下にあるか、または担体粒子と腸標的化のための材料のマトリクスとの間にある1以上のさらなるコーティングを含み得る。担体粒子を腸標的化のための材料のマトリクス内に最初に埋め込むことも可能であり、次いでこのようにして得られるより大きな粒子を同じまたは異なる腸標的化のための材料のさらなるコーティングで被覆する。
【0035】
本発明の処方物中の担体粒子を包むために使用され得る腸標的化のための材料は当業者にとって周知である。好ましくは、この材料は、5未満のpHで腸液中で不溶性であり、5以上のpHで腸液中で可溶性である化合物を含む。したがって、この材料はpHに依存して溶解する。この材料は、そのpH未満でそれが不溶性であり、そのpH以上でそれが可溶性であるというpH閾値を有する。周囲の媒体のpHが材料の溶解を誘発する。したがって、pH閾値未満では材料は全く(または基本的に全く)溶解しない。周囲の媒体のpHがpH閾値に到達(またはこれを超過)すると、材料は可溶性になる。
【0036】
「不溶性」とは、1gの材料がある一定のpHで溶解するのに必要とされる溶媒(周囲媒体)が10,000mL超であることと理解される。「可溶性」とは、1gの材料がある一定のpHで溶解するのに必要とされる溶媒が、10,000mL未満、好ましくは5,000mL未満、より好ましくは1,000mL未満、さらにより好ましくは100mLまたは10mL未満であることと理解される。「周囲媒体」とは、消化管中の媒体、例えば胃液または腸液などを意味する。あるいは、周囲媒体は、消化管中の媒体のインビトロ同等物であり得る。
【0037】
正常な胃液のpHは通常、1から3の範囲である。腸、好ましくは結腸標的化のための材料は、pH5未満で不溶性であり、pH5以上で可溶性である。したがって、本材料は通常、胃液中で不溶性である。このような材料は、「腸溶性の」材料と呼ばれ得る。腸液のpHは、小腸に沿って約7から8に徐々に上昇する。したがって腸標的化のための材料は、回腸終端部/結腸で可溶性になり、担体粒子から活性剤が放出されるようになる。本材料は、好ましくは、6.5、より好ましくは7のpH閾値を有する。
【0038】
腸標的化のための、および特に担体粒子を包むコーティングの調製のための適切な材料の例は、アクリレートポリマー、セルロースポリマーおよびポリビニルに基づくポリマー、キトサン、その誘導体またはそのポリマーである。適切なセルロースポリマーの例としては、酢酸フタル酸セルロース、トリメリト酸酢酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。適切なポリビニルに基づくポリマーの例としては、ポリビニルアセテートフタレートが挙げられる。
【0039】
ある実施形態において、腸標的化のための材料は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステルのコポリマー、例えばメタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのコポリマーであり得る。このようなコポリマーの適切な例は通常、陰イオン性であり、持続放出性ポリメタクリレートではない。これらのコポリマー中のカルボン酸基とメチルエステル基との比は、コポリマーが可溶性であるpHを決定する。酸:エステル比は、約2:1から約1:3、例えば約1:1または約1:2であり得る。このような陰イオン性コポリマーの分子量は通常、約120,000から150,000、好ましくは約135,000である。
【0040】
公知の陰イオン性ポリ(メチクリル酸(methycrylic acid)/メチルメタクリレート)コポリマーとしては、Eudragit(登録商標)L(pH閾値約6.0)、Eudragit(登録商標)S(pH閾値約7)およびEudragit(登録商標)FS(pH閾値約7)が挙げられる。メタクリル酸およびエチルアセテートのコポリマーであり、約5.5のpH閾値を有するEudragit(登録商標)L100−55も適切である。Eudragit(登録商標)コポリマーはEvonikから入手することができる。
【0041】
腸標的化のための2以上の材料の混合物が必要に応じて使用され得る。
【0042】
場合によっては、フィルム形成のための可塑剤(例えばトリエチルシトレート)および付着防止剤(anti−tacking agent)(モノステアリン酸グリセリンなど)などの従来の賦形剤が、コーティング調製物の総重量の最大30重量%の量で含まれ得る。
【0043】
担体粒子を包むコーティングの厚さは、一般的には約10μmから約150μmである。しかし、具体的なコーティングの厚さは、コーティングの組成および担体の表面積に依存する。
【0044】
pH閾値を有する上記化合物に加えて、またはその代わりに、腸、好ましくは結腸標的化のための材料は、多糖類など、結腸細菌による攻撃を受けやすい化合物を含み得る。適切な多糖類は、例えばデンプン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、コンドロイチン硫酸、シクロデキストリン、デキストラン、プルラン、カラギーナン、スクレログルカン、キチン、カードラン(curdulan)およびレバンである。
【0045】
さらに、ニュートリオース(Nutriose)(登録商標)は、結腸標的化のための、特に担体粒子を包むマトリクスを形成させるための材料として適切である。ニュートリオース(Nutriose)(登録商標)は水溶性であり、小麦デンプンから得られる繊維含量が高い分岐状デキストリンがRoquette Freresから市販されている。この化合物は、例えば微結晶セルロース、ポリビニルピロリドンまたは脂質、例えば硬化ダイズ油、トリステアリン酸グリセリル、サゾールワックス、マイクロワックスHG、マイクロワックスHWなどと組み合わせて使用し得る。
【0046】
本発明の製剤処方物は、当業者にとって公知の薬理学的に許容可能な賦形剤をさらに含有し得る。例えば、担体粒子は、単独で、または通常の充填剤、潤滑剤などと組み合わせての何れかで、錠剤コアに直接圧縮され得、次いで錠剤コアを腸標的化のための材料により包むことができる。別の実施形態において、担体粒子は、錠剤コアに圧縮するかまたは腸標的化のための材料により直接包むかの何れかの前に、単独で、または通常の賦形剤、例えば充填剤または造粒促進剤と組み合わせての何れかで、顆粒剤に造粒することができる。
【0047】
最終製剤処方物は、経口投与を対象とし、例えば錠剤、顆粒剤、ミニ錠剤、ペレット剤またはカプセル剤の形態である、経口剤形である。
【0048】
本発明の製剤処方物は、担体粒子の粒径が全般的に小さいという長所を有する。したがって、本製剤処方物は、腸標的化のための材料の溶解時に処方物が崩壊する際に互いから分離し得る多数の個々の担体粒子を含有する。したがって、多数の担体粒子が放出され、腸の大きな領域に広がり得、それにより結果的に腸内で活性剤が均一に放出されるようになる。
【0049】
さらに、担体粒子からの活性剤の放出は、担体粒子のサイズおよびそれらの孔のサイズならびに活性剤それ自身の物理学的および化学的特性に依存する。したがって、いくつかの場合において、活性剤が担体粒子からすぐに放出され、一方で他の場合において活性剤が長時間にわたり放出され得る。したがって、処置しようとする患者または疾患の具体的な必要に応じて、ある一定の活性剤の放出プロファイルを個別調整するための手段を提供することが所望される。
【0050】
さらに、例えば脂溶性活性剤は、担体粒子上および担体粒子中に搭載することが困難な傾向があることが分かった。したがって、特に脂溶性活性剤に対してより高い薬物搭載を可能にする担体粒子を提供することが所望される。
【0051】
驚くべきことに、担体粒子の表面に疎水性または親水性を付与する化合物で少なくとも部分的に担体粒子を被覆することによって両問題を解決することができることが分かった。これは、例えば担体粒子および特に機能性炭酸カルシウムを疎水性または親水性化合物、例えば脂肪酸など、例えばステアリン酸と反応させることによって遂行することができる。このような化合物が機能性炭酸カルシウムの表面と反応し、それにより例えばステアリン酸分子のフィルムまたはコーティングを形成することが分かった。これらの分子は、担体粒子の表面に例えば疎水性を付与し、それにより疎水性薬物の搭載をより多くすることが可能になる。さらに、例えば疎水性薬物が疎水性に修飾された担体粒子上またはその中に搭載される場合、活性剤の放出が遅延し、活性剤が長時間にわたり腸で利用可能になる。
【0052】
さらなる実施形態において、本発明の製剤処方物中の担体粒子は、少なくとも部分的に粘膜接着性化合物で被覆される。
【0053】
粘膜接着性化合物での粒子の被覆は、活性剤が十分に放出される前に担体粒子が腸からなくなるというリスクなく、長時間にわたっても活性剤が放出され得るように、担体粒子が腸で長時間保持されるという長所を有する。粘膜表面での粒子の保持は、標的領域での滞留時間延長に寄与し得る。
【0054】
適切な粘膜接着性化合物は当業者にとって公知である。合成粘膜接着性ポリマーに対する例は、様々なアクリル酸誘導体、特にポリアクリレート(カーボポール(Carbopols)(登録商標)として市販されているカルボマーとしても知られる。)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルアルコールである。アルギン酸塩、ペクチンおよびグアーガムは、天然粘膜接着性ポリマーとして言及され得る。キトサンおよび多くのセルロース誘導体が半合成粘膜接着性ポリマーとして知られている。
【0055】
本発明による製剤処方物に対する例を図7で概略的に示す。この図は、粘膜接着性化合物で被覆される担体粒子と会合する活性剤を示す。このような被覆粒子は腸標的化のためのコーティングにより包まれるカプセル剤内に含有される。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明の製剤処方物中の担体粒子は、持続放出コーティングで少なくとも部分的に被覆される。持続放出コーティングは、粘膜接着性化合物の代わりに、または粘膜接着性化合物と組み合わせて存在し得る。好ましくは、担体粒子は、粘膜接着性化合物および持続放出コーティングの両方で少なくとも部分的に被覆されるが、それは、この場合、担体粒子が長時間にわたり腸に保持され、同時に活性剤が長時間にわたり放出されるからである。
【0057】
持続放出コーティングを調製するための適切な化合物は当業者にとって公知である。例えば、Eudragit RS、Eudragit RL、Eudragit NM、Eudragit NE、エチルセルロース、Compritol ATO 888、Precirol ATO 5、Geleol MonoおよびジグリセリドNFが使用され得る。
【0058】
持続放出コーティングは、粘膜接着性化合物と同時に、または粘膜接着性化合物の前もしくは後に多孔質粒子上に適用され得る。好ましくは、この粒子は最初に持続放出コーティングで少なくとも部分的に被覆され、その後、粘膜接着性化合物がこのような被覆粒子に適用される。
【0059】
本発明は、上記の遅延放出製剤処方物を調製する方法をさらに提供する。この方法は、搭載担体粒子を得るために、多孔質担体粒子、例えば機能性炭酸カルシウムなどに少なくとも1つの活性剤を搭載し、腸、好ましくは結腸標的化のための材料で搭載担体粒子を包む段階を含む。
【0060】
活性剤を担体粒子に搭載することは、上記のように従来の方法によって行われ得る。ある実施形態において、搭載は、適切な溶媒、例えばアルコール、特にエタノールまたはメタノールなど、何らかの他の有機溶媒、例えばアセトンなど、または水の中の活性剤の溶液中で担体粒子を懸濁することにより行われる。次いで蒸発によって、好ましくは減圧下で溶媒を懸濁物から除去する。あるいは、担体粒子は、流動床コーティング技術によるかまたは噴霧乾燥により、活性剤を搭載し得る。
【0061】
腸標的化のための材料で搭載担体粒子を包むことは、通常の方法、例えばコーティングを得るための噴霧コーティングまたはマトリクスを得るための押出法、例えば溶融押出などによって行い得る。
【0062】
本方法は、単独で、または1以上の賦形剤と組み合わせた、搭載担体粒子の造粒および/または圧縮段階などの他の段階を含み得る。
【0063】
さらに、本発明は、クローン病および潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、便秘、下痢、感染を含む消化管の炎症性障害および癌腫、特に結腸または結直腸癌などの消化管障害の処置の方法での使用のための上記の遅延放出製剤処方物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】添付の図1は、同じ薬物含量の薬物およびFCCの物理的混合物と比較した、安息香酸メトロニダゾール(MBZ)、イブプロフェン(IBU)、ロサルタンカリウム(LK)およびニフェジピン(NP)を搭載したFCCからの溶解プロファイルを示す。
図2A図2Aは、無搭載FCC粒子のSEM像を示す。
図2B図2Bは、20%のMBZ薬物搭載があるFCC粒子のSEM像を示す。
図2C図2Cは、40%のMBZ薬物搭載があるFCC粒子のSEM像を示す。
図2D図2Dは、50%のMBZ薬物搭載があるFCC粒子のSEM像を示す。
図3図3は、実施例2で得られるMBZの40%薬物搭載があるFCC処方物の溶解プロファイルを示す。
図4図4は、薬物搭載が20%であるFCC粒子での実施例2で行われる安定性試験の結果を示す。
図5図5は、薬物搭載が50%であるFCC粒子での実施例2で行われる安定性試験の結果を示す。
図6図6は、変性FCCと未変性FCCとの間の薬物搭載能の相違を示す。
図7図7は、本発明による製剤処方物の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明を次の実施例によってここでさらに説明するが、これら実施例は限定するものとして解釈されるものではない。
【実施例1】
【0066】
様々な薬物対薬物担体比で安息香酸メトロニダゾール(MBZ)、イブプロフェン(IBU)、ロサルタンカリウム(LK)およびニフェジピン(NP)を用いて薬物搭載FCC(dl−FCC)を作製した。一連の異なる薬物搭載(DL)には、25、30、35、40、45および50%(w/w)が含まれた。
【0067】
重量測定した薬物を丸底フラスコに入れ、50mLの有機溶媒中で溶解させた。IBU、MBZおよびNPに対してはアセトンが薬物搭載溶媒となり、一方でLKはメタノール中で溶解させた。バルクFCC(5.0g)を添加し、5分間超音波処理して(Retsch,Switzerland)、粒子を分散させ、溶媒を脱気した。40℃に設定した水浴(Buchi 461またはB−480)を用いてロータリーエバポレータ(Buchi RE 121またはR−114)中で溶媒を蒸発させた。0.5時間ごとに100mbarで20mbarまで圧力を段階的に低下させ、少なくとも1時間保持した。最初の圧力設定は、メタノールの場合は300mbarであり、アセトンの場合は480mbarであった。丸底フラスコからの残留固形物の除去後、生成物を乳鉢および乳棒で穏やかに粉砕し、続いて250μmおよび90μmメッシュスクリーン(Retsch,Switzerland)に通してふるいにかけた。一定の窒素注入下でdl−FCCを室温で24時間真空乾燥させた(KVTS 11,Salvis AG,Switzerland)。
【0068】
USP2溶解装置(SOTAX,Switzerland)を用いてIBU、LK、MBZおよびNPの薬物放出を調べた。リン酸ナトリウムからなる溶解緩衝液(pH6.8、0.05M)は、国際薬局方の基準に従い作製した。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)の添加は、媒体の表面張力を減少させ、薬物搭載および薬物混合処方物の沈降を確実にするために必要であった。溶解媒体を連続的にUV−分光光度計(Amersham Bioscience,Ultrospec 3100 pro)に移し、蠕動ポンプ(IPC,Ismatec,Switzerland)で溶解容器に戻した。HPLC−UV法に記載の波長で吸光度を毎分測定した。試料を2つ組(NP)または3つ組で測定し、沈降条件が全実験において提供された。較正基準の直線状で有効な範囲において吸光度を得るために、セルの路長を調整した(0.2または1.0cm)。
【0069】
図1は、薬物およびFCC(dm−FCC)の物理学的混合物との比較における、薬物搭載FCCの溶解プロットを示す。LKおよびIBU搭載FCCおよび対応する参照処方物(dm−FCC)について、最初の1分以内の即時および完全薬物放出を観察した。対照的に、MBZおよびNP搭載FCCは、薬物混合FCCとの比較においてより速い薬物溶解を示した。3分後、MBZ搭載FCCから80%が放出され、一方で80%のMBZ混合処方物が溶解されるまで6分間が経過した。NP搭載FCCは、最初の80%がNP混合FCCよりも2.5倍速く放出された。まとめると、調べた薬物搭載FCC処方物は即時薬物放出をもたらし、溶解速度の低下を示さなかったが、NPおよびMBZ搭載FCCの場合は放出がより速かった。
【実施例2】
【0070】
2.1 薬物搭載
5または5.5gのFCC S01および様々な量のMBZを用いて薬物搭載を行った。MBZを溶解させ、FCCを分散させるためにアセトンを使用した。溶媒を除去し、FCCの表面上でMBZを再結晶化させた。溶媒蒸発法によって、薬物の得られる質量分率を調節することが可能となった。20%、30%、35%、40%、45%および50%(w/w)の薬物搭載レベルを作製した。
【0071】
重量測定したMBZを丸底フラスコに入れ、50mLアセトン中で溶解させた。必要とされる量のFCCを添加し、5分間超音波処理して、FCCを分散させ、溶媒を脱気した。ロータリーエバポレータ(Buchi RE 121またはR−114)および水浴(Buchi 461またはB−480)を用いて40℃および480mbarでアセトンを蒸発させた。0.5時間の間隔で400、300、100および5mbarに圧力を段階的に低下させた。圧力低下の平均速度はおよそ200mbar/hであった。残留固形物を丸底フラスコから取り出し、ペトリ皿に移し、室温で一晩真空乾燥させた。
【0072】
2.2 SEM特性評価
薬物搭載手順後、形態的な相違を評価するために、走査電子顕微鏡法(SEM)によるFCC粒子の分別特性評価を行った。無搭載FCC粒子を図2Aで示す。FCCの外面は、相互接続したパネルにより構成されており、これはFCCの主要な構造的特徴である。図2Aは、特有の孔構造の典型的な像を示す。
【0073】
20%のMBZ薬物搭載があるFCC粒子のSEM分析から、凝集体のない個々の粒子が示された。目立った細孔充填がないFCC粒子が僅かに見られた。調べた粒子の殆どが、無搭載FCCと比較して可視的な相違を示さなかった。典型例を図2Bで示し、ここで孔径および孔構造は不変のままであった。これらの観察から、より多くの薬物を搭載し得ることが推測された。
【0074】
2バッチの40%DLを調べ、これらは良好な再現性を示した。MBZ結晶(>2μm)は観察されず、両バッチとも同じ普及率および凝集体のサイズ範囲を明らかにした。全粒子で空の孔は数個しかなく、これは、薬物搭載に対する容量限界の到達を示した。図2Cは、完全薬物搭載の単一FCC粒子の典型例である。特徴的なFCCパネルの上端は表面から広がっており、これは、孔が薬物で満たされ;ただ被覆されただけではないことを示す。無搭載FCC粒子と比較して表面はかなり平滑であったが、粗い形態を依然として呈した。
【0075】
50%の薬物搭載の結果、多くの凝集体および大きい個別のMBZ結晶の形成が起こった(図2D)。この観察から、この特定の例におけるFCCの薬物搭載能の限界が40から45%であることが明らかとなった。
【0076】
2.3 溶解
96%薬物搭載FCC(MBZ DL 40%)および4%Ac−Di−Solの混合物を作製し、500mg(円形、d=8mm)の錠剤を10kN(Styl’One,Medelpharm)と比較した。USP2溶解装置(SOTAX)を用いてFCCからのMBZの薬物放出を調べた。錠剤を半分に割り、1Lの脱イオン水中で沈降状態を達成するようにした。MBZの平均質量は、錠剤半分あたり97.7mgであった。特注の自動試料採取装置により、溶解容器から試料を毎分採取し、320nmにて分光光度計で吸光度を測定した(Amersham Bioscience,Ultrospec 3100 pro)。コンピュータソフトウェアにより蠕動ポンプ(Ismatec IPC)およびUV−分光光度計を調節した。
【0077】
110Nの硬度になるように錠剤を調製した。個々のFCC粒子からの薬物放出を測定するために、Ac−Di−Solをスーパー崩壊剤(superdisintegrant)として使用した。錠剤の単粒子への崩壊が最初の1分以内に起こり、薬物搭載サブユニットの分布が結腸での所望の性能を模倣した。図3は、MBZの40%薬物搭載があるFCC処方物の溶解プロファイルを示す。MBZの完全放出が30分以内に起こった。
【0078】
2.4 安定性試験
加速安定性試験によってMBZおよびFCCの適合性を調べた。20および50%薬物含量の薬物搭載FCC粒子を25日間にわたり25℃、40℃および60℃で保管した。数日において、HPLC−UVによってMBZ含量を分析した。
【0079】
活性物質(MBZ)のみが検出され、メトロニダゾール(MTZ)または安息香酸などの加水分解からの分解産物は全く検出されなかった。
【0080】
図4は、総粉末量の%で残留MBZ含量を示す。HPLC−UV定量からの結果により、評価期間中の偏差が示されたが、この結果は20%の理論的薬物搭載と近かった。50%の理論的薬物搭載のFCCに対して、同じパターンを観察することができた(図5)。MBZ含量は安定性試験中変動していたが、平均薬物含量はほぼ一定のままであった。
【実施例3】
【0081】
3.1 表面修飾
方法M1:水溶液中でのステアリニゼーション(Stearinisation)
5gのFCC S03を100mLの脱気水と丸底フラスコ中で混合した。このスラリーを100℃まで加熱した。第二の丸底フラスコにおいて、1gのステアリン酸(例えば200mgステアリン酸/グラムFCC)および20mLの水を100℃に加熱した。可溶性を向上させるために2滴の1モーラーNaOHを添加した。次いで溶液を第一のフラスコに添加した。この混合物をある一定の温度で1時間にわたり維持した。溶媒の蒸発を防ぐために、還流冷却器を適用した。15分後、大量の泡状物質が形成され、フラスコを満たした。これは泡状物質中のFCCが溶液とさらに反応することを明らかに防いだので、フラスコを還流冷却器から取り外し、泡状物質が崩壊するまで徹底的に回転させた。15分ごとにこの手順を反復した。
【0082】
1時間後、液体を慎重に捨てた。湿気の形跡を全く示さない泡状物質を100℃で一晩乾燥させて、捕捉されている可能性がある溶媒を孔から除去した。
【0083】
方法M2:50%エタノール−水中でのステアリニゼーション(Stearinisation)(FCC 200−Mod)
溶媒を50%エタノールおよび50%脱気水の混合物に変えた。手順は、水溶液の場合(M1)と同じであった。反応温度は83℃であったが、これは溶媒混合物の温度プラトーにより決定された。
【0084】
3.2 薬物搭載
この方法において、カルバマゼピンを50mLエタノール中で溶解させ、0.5gのFCC200Modを添加した。次いで混合物を20分間撹拌した。その後、ブフナー漏斗を用いて搭載粒子を溶媒から分離し、40℃で真空乾燥器中で一晩乾燥させた。
【0085】
変性FCCと未変性FCCとの間の薬物搭載能の相違を図6で示す。未変性FCCおよび200−Modにおける薬物搭載の比は20mg/mLで1:3である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7