(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0011】
<対基板作業装置の構成>
図1に、本発明の実施例の対基板作業装置10を示す。対基板作業装置10は、搬送装置20と、ヘッド移動装置22と、紫外線照射装置24と、レーザ照射装置26と、2台のインクジェットヘッド27,28とを備えている。
【0012】
搬送装置20は、X軸方向に延びる1対のコンベアベルト30と、コンベアベルト30を周回させる電磁モータ(図示省略)とを有している。1対のコンベアベルト30は、回路基板34を支持し、その回路基板34は、電磁モータの駆動により、X軸方向に搬送される。また、搬送装置20は、保持装置(図示省略)を有している。保持装置は、コンベアベルト30によって支持された回路基板34を、所定の位置(
図1での回路基板34が図示されている位置)において固定的に保持する。
【0013】
ヘッド移動装置22は、X軸方向スライド機構50とY軸方向スライド機構52とによって構成されている。X軸方向スライド機構50は、X軸方向に移動可能にベース54上に設けられたX軸スライダ56を有している。そのX軸スライダ56は、電磁モータ(図示省略)の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸方向スライド機構52は、Y軸方向に移動可能にX軸スライダ56の側面に設けられたY軸スライダ58を有している。そのY軸スライダ58は、電磁モータ(図示省略)の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。そのY軸スライダ58には、2台のインクジェットヘッド27,28が並んで取り付けられている。このような構造により、インクジェットヘッド27,28は、ヘッド移動装置22によってベース54上の任意の位置に移動する。
【0014】
紫外線照射装置24は、紫外線を照射する装置であり、下方を向いた状態でY軸スライダ58の下面に固定されている。これにより、Y軸スライダ58が、ヘッド移動装置22によって移動させられることで、回路基板34上の任意の位置に紫外線を照射することが可能である。
【0015】
レーザ照射装置26は、レーザを照射する装置であり、下方を向いた状態でY軸スライダ58の下面に固定されている。これにより、Y軸スライダ58が、ヘッド移動装置22によって移動させられることで、回路基板34上の任意の位置にレーザを照射することが可能である。なお、レーザ照射装置26は、照射するレーザの単位面積当たりのレーザ照射量を任意に変更することが可能である。
【0016】
インクジェットヘッド27は、下面側に形成された吐出口(図示省略)を有し、その吐出口から回路基板34の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線照射装置24の紫外線の照射により硬化する樹脂である。
【0017】
インクジェットヘッド28は、下面側に形成された吐出口(図示省略)を有し、その吐出口から回路基板34の上に金属インクを吐出する。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものであり、レーザ照射装置26のレーザの照射により焼成することで、配線となる。
【0018】
<回路基板上での配線の形成>
対基板作業装置10では、上述した構成によって、回路基板34上に配線が形成され、回路基板34上に配設された複数の電極等の導電部が、配線により電気的に接続される。ただし、従来の手法により配線を形成した場合には、配線の下に配設されている基材が異なるため、適切に配線を形成できない虞がある。具体的に、
図2に示すように、回路基板34の上に配設された導電体60,62と、電子部品64の電極66,68とを、従来の手法により電気的に接続する配線の形成方法について説明する。
【0019】
導電体60,62と電子部品64の電極66,68とを接続する配線の形成時には、電子部品64の表面と導電体60,62の表面との段差をなくすべく、
図3に示すように、電子部品64と導電体60,62との間に、傾斜部70が形成される。傾斜部70は、電子部品64の表面と導電体60,62の表面とに円滑に連続する傾斜面を有しており、インクジェットヘッド27からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への紫外線照射装置24による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。つまり、インクジェットヘッド27が、電子部品64と導電体60,62との間に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出し、紫外線照射装置24が、薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層が形成される。そして、その薄膜状の樹脂層の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返されることで、傾斜部70が形成される。
【0020】
電子部品64と導電体60,62との間に傾斜部70が形成されると、
図4に示すように、導電体60と電子部品64の電極66、および、導電体62と電子部品64の電極68とを繋ぐように、導電体60,62と電子部品64と傾斜部70とに跨って、インクジェットヘッド28から金属インク72が吐出される。そして、吐出された金属インク72に、レーザ照射装置26によりレーザが照射されることで、金属インク72が焼成し、金属インク72の焼成により、導電体60,62と電子部品64の電極66,68とを電気的に接続する配線が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。金属インク72が焼成することで、金属製の配線が形成される。
【0021】
ただし、レーザが照射される金属インク72は、導電体60,62と電子部品64と傾斜部70とに跨って吐出されているため、適切に配線が形成されない虞がある。詳しくは、熱伝導率の高い基材、若しくは、熱容量の多い基材、若しくは、体積の大きい基材の上に吐出された金属インク72にレーザが照射された場合に、レーザによる熱は基材に逃げ易い。一方、熱伝導率の低い基材、若しくは、熱容量の少ない基材、若しくは、体積の小さい基材の上に吐出された金属インク72にレーザが照射された場合に、レーザによる熱は基材に逃げ難い。
【0022】
このため、例えば、単位面積当たりのレーザ照射量を比較的高い値に設定した場合には、熱伝導率の高い基材等の上に吐出された金属インク72は、適切に焼成され、配線が形成される。一方、熱伝導率の低い基材等の上に吐出された金属インク72は、焼成されるが、焼成により形成された配線は、過剰な熱により損傷する虞がある。また、例えば、単位面積当たりのレーザ照射量を比較的低い値に設定した場合には、熱伝導率の低い基材等の上に吐出された金属インク72は、適切に焼成され、配線が形成される。一方、熱伝導率の高い基材等の上に吐出された金属インク72は、焼成せずに、配線が形成されない虞がある。このように、熱伝導率等の異なる複数の基材に跨って、金属インク72が吐出されている場合には、金属インク72の焼成による配線を適切に形成できない虞がある。
【0023】
ただし、金属インク72が吐出されている基材の素材に応じて、単位面積当たりのレーザ照射量を変更することで、金属インク72の焼成による配線を適切に形成することが可能となる。詳しくは、例えば、導電体60,62の上に吐出されている金属インク72には、導電体60,62に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射され、傾斜部70の上に吐出されている金属インク72には、傾斜部70に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射され、電子部品64の上に吐出されている金属インク72には、電子部品64に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射される。なお、電子部品64は、電極66,68と本体部76とによって構成されているため、電極66,68の上に吐出されている金属インク72には、電極66,68に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射され、本体部76の上に吐出されている金属インク72には、本体部76に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射される。このように、金属インク72が吐出されている基材の素材に応じて、単位面積当たりのレーザ照射量を変更することで、金属インク72の焼成による配線を適切に形成することが可能となる。
【0024】
しかしながら、基材の素材に応じたレーザ照射量の変更は、制御的に困難である。特に、電子部品64が小さい場合には、電子部品64の本体部76の上の金属インク72へのレーザの照射範囲は、極微小となり、レーザ照射量の変更は非常に困難である。
【0025】
このようなことに鑑みて、対基板作業装置10では、金属インク72が吐出される基材の種類を可及的に少なくすることで、適切に配線を形成する手法が採用されている。具体的には、
図5に示すように、導電体60,62と電子部品64とが配設された回路基板34の上に、導電体60,62の一部と電子部品64の電極66,68とが露出するように、樹脂層78が形成される。つまり、回路基板34を、導電体60,62の一部と電極66,68とを除く箇所を覆うように、樹脂層78が形成される。これにより、樹脂層78には、導電体60,62に至る導電体ホール80,82と、電極66,68に至る電極ホール84,86とが形成される。なお、樹脂層78は、傾斜部70と同様に、インクジェットヘッド27からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への紫外線照射装置24による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。
【0026】
樹脂層78が形成されると、導電体ホール80,82と電極ホール84,86の内部に、金属インク72の焼結による柱状の金属の塊(以下、「金属柱」と記載する場合がある)(
図8参照)88が形成される。詳しくは、例えば、導電体ホール82の内部に金属柱88が形成される際には、
図6に示すように、インクジェットヘッド28によって、導電体ホール82の内部に金属インク72が吐出される。そして、その金属インク72に、
図7に示すように、レーザ照射装置26によってレーザが照射される。これにより、金属インク72が焼成し、導電体62の上に膜状の金属の塊90が形成される。そして、その膜状の金属の塊90の上への金属インク72の吐出と、レーザ照射とが繰り返されることで、
図8に示すように、導電体ホール82の内部に、金属柱88が形成される。なお、金属柱88は、樹脂層78の表面に露出している。また、導電体ホール80および、電極ホール84,86の内部にも金属柱88が形成されるが、導電体ホール80および、電極ホール84,86の内部への金属柱88の形成手法は、導電体ホール82の内部への金属柱88の形成手法と同じであるため、説明を省略する。
【0027】
導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に金属柱88が形成されると、
図9に示すように、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88、および、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88とを繋ぐように、インクジェットヘッド28から金属インク72が吐出される。そして、吐出された金属インク72に、レーザ照射装置26によりレーザが照射されるが、金属インク72は、金属柱88と樹脂層78とに跨って吐出されているため、金属柱88の上の金属インク72にレーザが照射される際と、樹脂層78の上の金属インク72にレーザが照射される際とで、単位面積当たりのレーザ照射量が変更される。
【0028】
詳しくは、金属柱88の熱伝導率は高いため、金属柱88の上の金属インク72に照射されたレーザによる熱は、金属柱88を伝わって逃げ易い。このため、金属柱88の上の金属インク72には、比較的大きな値の単位面積当たりのレーザ照射量(以下、「金属用照射量」と記載する場合がある)に相当するレーザが照射される。一方、樹脂層78の熱伝導率は低いため、樹脂層78の上の金属インク72に照射されたレーザによる熱は、樹脂層78を伝わって逃げ難い。このため、樹脂層78の上の金属インク72には、比較的小さな値の単位面積当たりのレーザ照射量(以下、「樹脂用照射量」と記載する場合がある)に相当するレーザが照射される。
【0029】
また、金属柱88の上に吐出された金属インク72と、樹脂層78の上に吐出された金属インク72との境目には、照射量が変更される際に、金属用照射量に相当するレーザと、樹脂用照射量に相当するレーザとの両方が照射される。このため、樹脂層78の上に吐出された金属インク72の金属柱88側の端部(以下、「樹脂上金属インク端部」と記載する場合がある)に、金属用照射量に相当するレーザが照射され、樹脂上金属インク端部が損傷する虞がある。
【0030】
このため、まず、樹脂層78の上に吐出された金属インク72に、樹脂用照射量に相当するレーザが照射される。これにより、樹脂層78の上に吐出された金属インク72が適切に焼成される。なお、金属インク72に照射されるレーザの波長は、500〜1500nmとされている。この波長は、金属インク72に含まれる金属微粒子に吸収されやすい波長であるため、適切に金属インク72が焼成される。
【0031】
そして、樹脂層78の上に吐出された金属インク72が焼成された後に、レーザ照射量が、樹脂用照射量から金属用照射量に変更される。この際、樹脂層78の上に吐出された金属インク72と、金属柱88の上に吐出された金属インク72との境目には、金属用照射量に相当するレーザが照射されるが、樹脂層78の上に吐出された金属インク72は焼成しているため、樹脂上金属インク端部の損傷が防止される。詳しくは、金属インク72に照射されるレーザの波長は、上述したように、500〜1500nmとされており、この波長は、金属微粒子に吸収されやすい波長である。つまり、樹脂上金属インク端部は、金属微粒子の焼成により金属の塊、つまり、配線となり、レーザの吸収性が低くなっている。このため、金属用照射量に相当するレーザが照射されても、樹脂上金属インク端部の損傷が防止される。
【0032】
そして、レーザ照射量が金属用照射量に変更された後に、金属柱88の上に吐出された金属インク72に、レーザが照射されることで、金属柱88の上に吐出された金属インク72が適切に焼成される。このように、レーザ照射量の変更と、焼成の順番を調整することで、樹脂層78および金属柱88の上に吐出された金属インク72が適切に焼成され、
図10に示すように、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88、および、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88とを電気的に接続する配線96,98が形成される。これにより、導電体60と電子部品64の電極66とは、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88と配線96とを介して、電気的に接続され、導電体62と電子部品64の電極68とは、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88と配線98とを介して、電気的に接続される。
【0033】
このように、対基板作業装置10では、金属インク72が吐出される基材が、樹脂層78と金属柱88との2種類となっており、レーザ照射量の変更が容易となる。また、従来の配線形成時のように、極微小な電子部品64の本体部76の上の金属インク72へのレーザ照射がないため、レーザ照射量の変更制御が非常に容易となる。
【0034】
なお、導電体60,62は、第1導電部の一例である。電極66,68は、第2導電部および、電極の一例である。樹脂層78は、樹脂層の一例である。導電体ホール80,82は、第1ホールの一例である。電極ホール84,86は、第2ホールの一例である。金属柱88は、金属柱の一例である。
【0035】
また、回路基板34の上に樹脂層78を形成する工程は、樹脂層形成工程の一例である。導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に金属柱88を形成する工程は、金属柱形成工程の一例である。導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88、および、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88とを繋ぐように、インクジェットヘッド28により金属インク72を吐出する工程は、塗布工程の一例である。吐出された金属インク72にレーザ照射装置26によりレーザを照射することで、配線96,98を形成する工程は、配線形成工程の一例である。
【0036】
<変形例>
上述した配線の形成方法と異なる形成方法により、配線を形成することが可能である。具体的には、まず、上記実施例と同様に、
図5に示すように、回路基板34の上に樹脂層78を形成する。樹脂層78が形成されると、
図11に示すように、導電体ホール80の縁と電極ホール84の縁、および、導電体ホール82の縁と電極ホール86の縁とを繋ぐように、インクジェットヘッド28から金属インク72が吐出される。そして、吐出された金属インク72に、樹脂用照射量に相当するレーザが、レーザ照射装置26によって照射される。これにより、
図12に示すように、樹脂層78の上の導電体ホール80の縁と電極ホール84の縁との間および、導電体ホール82の縁と電極ホール86の縁との間に配線100が形成される。
【0037】
次に、上記実施例と同様に、導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部への金属インク72の吐出と、吐出された金属インク72へのレーザ照射が繰り返される。これにより、導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に、
図13に示すように、金属柱88が形成される。続いて、
図14に示すように、導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の金属柱88の上に、金属インク72が吐出される。この際、金属インク72は、金属柱88と配線100とを繋ぐように、金属柱88の上に吐出される。
【0038】
そして、金属柱88の上に吐出された金属インク72に、金属用照射量に相当するレーザが照射される。これにより、
図15に示すように、金属柱88の上に、金属柱88と配線100とを繋ぐ配線102が形成される。これにより、導電体60と電子部品64の電極66とは、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88と配線100,102とを介して、電気的に接続され、導電体62と電子部品64の電極68とは、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88と配線100,102とを介して、電気的に接続される。
【0039】
このように、変形例の配線形成方法においても、実施例の配線形成方法と同様の効果を得ることが可能である。また、変形例の配線形成方法では、樹脂層78の上の配線100と金属柱88の上の配線102とが、別工程で形成されている。これにより、樹脂層78の上の配線100形成時に金属柱の方への熱の逃げを防ぎ、レーザ照射量の変更を容易に行うことが可能となり、レーザ照射装置26等の制御が容易となる。
【0040】
なお、回路基板34の上に樹脂層78を形成する工程は、樹脂層形成工程の一例である。樹脂層78の上に金属インク72を吐出する工程は、第1塗布工程の一例である。樹脂層78の上の金属インク72にレーザ照射し、配線100を形成する工程は、第1配線形成工程の一例である。導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に金属柱88を形成する工程は、金属柱形成工程の一例である。金属柱88の上に金属インク72を吐出する工程は、第2塗布工程の一例である。金属柱88の上の金属インク72にレーザ照射し、配線102を形成する工程は、第2配線形成工程の一例である。
【0041】
なお、本発明は、上記実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例および変形例では、樹脂層78および、金属柱88の上に吐出された金属インク72にレーザが照射され、金属インク72が焼成されているが、樹脂層78,金属柱88以外の種々の材質の基材の上に吐出された金属インク72にレーザを照射し、金属インク72を焼成することが可能である。