特許第6441954号(P6441954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6441954
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】配線形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20181210BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20181210BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H05K3/10 C
   H05K3/12 610D
   H05K3/40 B
   H05K3/10 D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-557420(P2016-557420)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2014079540
(87)【国際公開番号】WO2016072011
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅登
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−032535(JP,A)
【文献】 特表2010−529667(JP,A)
【文献】 特開2011−216634(JP,A)
【文献】 特開2006−059942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
H05K 3/12
H05K 3/40
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に配設された第1導電部と第2導電部とを電気的に接続するための配線を形成する配線形成方法において、
前記配線形成方法が、
前記第1導電部に至る第1ホールと前記第2導電部に至る第2ホールとを有する樹脂層を、前記回路基板上に形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層形成工程において前記樹脂層が形成された後に、前記樹脂層の上に、前記第1ホールの縁と前記第2ホールの縁とを繋ぐように、金属微粒子を含有する金属含有液を塗布する第1塗布工程と、
前記第1塗布工程において塗布された金属含有液にレーザを照射することで、配線を形成する第1配線形成工程と、
前記第1配線形成工程において配線が形成された後に、金属含有液の前記第1ホールおよび前記第2ホールの内部への吐出と、金属含有液へのレーザ照射との繰り返しにより、前記第1ホールおよび前記第2ホールの内部から前記樹脂層の表面に露出する金属柱を形成する金属柱形成工程と
前記金属柱形成工程において金属柱が形成された後に、前記第1ホールの内部から前記樹脂層の表面に露出する第1の金属柱と、前記第2ホールの内部から前記樹脂層の表面に露出する第2の金属柱との上に、前記第1配線形成工程において形成された配線と前記第1の金属柱と前記第2の金属柱とを繋ぐように、金属含有液を塗布する第2塗布工程と、
前記第2塗布工程において塗布された金属含有液にレーザを照射することで、配線を形成する第2配線形成工程と
を含み、
記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続するための配線を形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項2】
前記第1導電部と前記第2導電部との少なくとも一方が、
前記回路基板上に配設された電子部品の電極であることを特徴とする請求項1に記載の配線形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子を含有する液体である金属含有液の焼成により、回路基板上に配線を形成する配線形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献に記載されているように、金属微粒子を含有する液体である金属含有液の焼成により、回路基板上に配線を形成する技術が開発されている。詳しくは、例えば、回路基板上に配設された複数の導電部の間に、金属含有液を塗布し、その金属含有液にレーザを照射する。これにより、金属含有液が焼成することで、配線が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開2006−059942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の技術によれば、ある程度、適切に回路基板上に配線を形成することが可能となる。しかしながら、回路基板上には、導電部だけでなく、樹脂等も配設されており、導電部と樹脂とに跨って配線を形成する際に、適切に配線を形成することができない虞がある。具体的には、導電部の熱伝導率は高いため、導電部の上の金属含有液にレーザが照射された際に、レーザによる熱は導電部を伝わって逃げ易い。このため、導電部の上の金属含有液を焼成するために必要な単位面積当たりのレーザ照射量(以下、「導電部用照射量」と記載する場合がある)は、比較的大きい。一方、樹脂の熱伝導率は低いため、樹脂の上の金属含有液にレーザが照射された際に、レーザによる熱は樹脂を伝わって逃げ難い。このため、樹脂の上の金属含有液を焼成するために必要な単位面積当たりのレーザ照射量(以下、樹脂用照射量と記載する場合がある)は、比較的小さい。
【0005】
このため、例えば、導電部および、樹脂の上の金属含有液全体に、導電部用照射量に相当するレーザが照射された場合には、導電部の上の金属含有液は、適切に焼成され、配線が形成される。一方、樹脂の上の金属含有液は、焼成されるが、焼成により形成された配線は、過剰な熱により損傷する虞がある。また、導電部および、樹脂の上の金属含有液全体に、樹脂用照射量に相当するレーザが照射された場合には、樹脂の上の金属含有液は、適切に焼成され、配線が形成される。一方、導電部の上の金属含有液は、焼成されずに、配線が形成されない虞がある。
【0006】
このため、樹脂の上の金属含有液に樹脂用照射量に相当するレーザを照射し、導電部の上の金属含有液に導電部用照射量に相当するレーザを照射することが考えられる。つまり、金属含有液が塗布される基材に応じて、レーザ照射量を変更することが考えられる。しかしながら、例えば、導電部が電子部品の電極等である場合には、電子部品の電極以外の部分の上にも、金属含有液が塗布されるため、その部分においても、レーザ照射量の変更を行う必要があり、レーザ照射量の変更制御が困難となる。また、導電部が電子部品の電極等である場合には、電子部品の電極以外の極めて小さいスペースの上に金属含有液が塗布されるため、レーザ照射量の変更制御が極めて困難となる虞がある。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、回路基板上に容易に配線を形成するための技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に記載の配線形成方法は、回路基板上に配設された第1導電部と第2導電部とを電気的に接続するための配線を形成する配線形成方法において、前記配線形成方法が、前記第1導電部に至る第1ホールと前記第2導電部に至る第2ホールとを有する樹脂層を、前記回路基板上に形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層形成工程において前記樹脂層が形成された後に、前記樹脂層の上に、前記第1ホールの縁と前記第2ホールの縁とを繋ぐように、金属微粒子を含有する金属含有液を塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程において塗布された金属含有液にレーザを照射することで、配線を形成する第1配線形成工程と、前記第1配線形成工程において配線が形成された後に、金属含有液の前記第1ホールおよび前記第2ホールの内部への吐出と、金属含有液へのレーザ照射との繰り返しにより、前記第1ホールおよび前記第2ホールの内部から前記樹脂層の表面に露出する金属柱を形成する金属柱形成工程と、前記金属柱形成工程において金属柱が形成された後に、前記第1ホールの内部から前記樹脂層の表面に露出する第1の金属柱と、前記第2ホールの内部から前記樹脂層の表面に露出する第2の金属柱との上に、前記第1配線形成工程において形成された配線と前記第1の金属柱と前記第2の金属柱とを繋ぐように、金属含有液を塗布する第2塗布工程と、前記第2塗布工程において塗布された金属含有液にレーザを照射することで、配線を形成する第2配線形成工程とを含み、前記第1導電部と前記第2導電部とを電気的に接続するための配線を形成することを特徴とする配線形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に記載の配線形成方法では、第1導電部に至る第1ホールと第2導電部に至る第2ホールとを有する樹脂層が、回路基板上に形成される。そして、第1ホールの内部に配設された第1の金属柱と、第2ホールの内部に配設された第2の金属柱との間に塗布された金属含有液へのレーザ照射により、第1導電部と第2導電部とを電気的に接続するための配線が形成される。つまり、本発明の配線形成方法では、例えば、導電部が電子部品の電極である場合であっても、金属含有液は、樹脂層と金属柱との2種類の基材の上に吐出される。このため、レーザ照射量の変更は、樹脂層の上の金属含有液と金属柱の上の金属含有液との間で行えばよく、比較的容易にレーザ照射量の変更を行うことが可能となる。また、樹脂層および、金属柱は、電子部品の電極以外の部分より大きいため、レーザ照射量の変更を比較的容易に行うことが可能となる。このように、本発明の配線形成方法によれば、レーザ照射量の変更を比較的容易に行うことが可能となり、回路基板上に容易に配線を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】対基板作業装置を示す平面図である。
図2】回路基板を示す側面図である。
図3】従来の手法により配線が形成される際の回路基板を示す側面図である。
図4】従来の手法により配線が形成される際の回路基板を示す側面図である。
図5】樹脂層が形成された回路基板を示す側面図である。
図6】樹脂層の導電体ホールの内部に金属インクが吐出された状態の回路基板を示す側面図である。
図7】樹脂層の導電体ホールの内部の金属インクにレーザが照射された状態の回路基板を示す側面図である。
図8】樹脂層の導電体ホールおよび電極ホールの内部に金属柱が形成された状態の回路基板を示す側面図である。
図9】導電体ホールの金属柱と電極ホールの金属柱との間に金属インクが塗布された状態の回路基板を示す側面図である。
図10】導電体ホールの金属柱と電極ホールの金属柱とを接続する配線が形成された状態の回路基板を示す側面図である。
図11】導電体ホールの縁と電極ホールの縁との間に金属インクが塗布された状態の回路基板を示す側面図である。
図12】導電体ホールの縁と電極ホールの縁とを接続する配線が形成された状態の回路基板を示す側面図である。
図13】樹脂層の導電体ホールおよび電極ホールの内部に金属柱が形成された状態の回路基板を示す側面図である。
図14】金属柱の上に金属インクが塗布された状態の回路基板を示す側面図である。
図15】導電体ホールの金属柱と電極ホールの金属柱とを接続する配線が形成された状態の回路基板を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0011】
<対基板作業装置の構成>
図1に、本発明の実施例の対基板作業装置10を示す。対基板作業装置10は、搬送装置20と、ヘッド移動装置22と、紫外線照射装置24と、レーザ照射装置26と、2台のインクジェットヘッド27,28とを備えている。
【0012】
搬送装置20は、X軸方向に延びる1対のコンベアベルト30と、コンベアベルト30を周回させる電磁モータ(図示省略)とを有している。1対のコンベアベルト30は、回路基板34を支持し、その回路基板34は、電磁モータの駆動により、X軸方向に搬送される。また、搬送装置20は、保持装置(図示省略)を有している。保持装置は、コンベアベルト30によって支持された回路基板34を、所定の位置(図1での回路基板34が図示されている位置)において固定的に保持する。
【0013】
ヘッド移動装置22は、X軸方向スライド機構50とY軸方向スライド機構52とによって構成されている。X軸方向スライド機構50は、X軸方向に移動可能にベース54上に設けられたX軸スライダ56を有している。そのX軸スライダ56は、電磁モータ(図示省略)の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸方向スライド機構52は、Y軸方向に移動可能にX軸スライダ56の側面に設けられたY軸スライダ58を有している。そのY軸スライダ58は、電磁モータ(図示省略)の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。そのY軸スライダ58には、2台のインクジェットヘッド27,28が並んで取り付けられている。このような構造により、インクジェットヘッド27,28は、ヘッド移動装置22によってベース54上の任意の位置に移動する。
【0014】
紫外線照射装置24は、紫外線を照射する装置であり、下方を向いた状態でY軸スライダ58の下面に固定されている。これにより、Y軸スライダ58が、ヘッド移動装置22によって移動させられることで、回路基板34上の任意の位置に紫外線を照射することが可能である。
【0015】
レーザ照射装置26は、レーザを照射する装置であり、下方を向いた状態でY軸スライダ58の下面に固定されている。これにより、Y軸スライダ58が、ヘッド移動装置22によって移動させられることで、回路基板34上の任意の位置にレーザを照射することが可能である。なお、レーザ照射装置26は、照射するレーザの単位面積当たりのレーザ照射量を任意に変更することが可能である。
【0016】
インクジェットヘッド27は、下面側に形成された吐出口(図示省略)を有し、その吐出口から回路基板34の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線照射装置24の紫外線の照射により硬化する樹脂である。
【0017】
インクジェットヘッド28は、下面側に形成された吐出口(図示省略)を有し、その吐出口から回路基板34の上に金属インクを吐出する。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものであり、レーザ照射装置26のレーザの照射により焼成することで、配線となる。
【0018】
<回路基板上での配線の形成>
対基板作業装置10では、上述した構成によって、回路基板34上に配線が形成され、回路基板34上に配設された複数の電極等の導電部が、配線により電気的に接続される。ただし、従来の手法により配線を形成した場合には、配線の下に配設されている基材が異なるため、適切に配線を形成できない虞がある。具体的に、図2に示すように、回路基板34の上に配設された導電体60,62と、電子部品64の電極66,68とを、従来の手法により電気的に接続する配線の形成方法について説明する。
【0019】
導電体60,62と電子部品64の電極66,68とを接続する配線の形成時には、電子部品64の表面と導電体60,62の表面との段差をなくすべく、図3に示すように、電子部品64と導電体60,62との間に、傾斜部70が形成される。傾斜部70は、電子部品64の表面と導電体60,62の表面とに円滑に連続する傾斜面を有しており、インクジェットヘッド27からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への紫外線照射装置24による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。つまり、インクジェットヘッド27が、電子部品64と導電体60,62との間に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出し、紫外線照射装置24が、薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層が形成される。そして、その薄膜状の樹脂層の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返されることで、傾斜部70が形成される。
【0020】
電子部品64と導電体60,62との間に傾斜部70が形成されると、図4に示すように、導電体60と電子部品64の電極66、および、導電体62と電子部品64の電極68とを繋ぐように、導電体60,62と電子部品64と傾斜部70とに跨って、インクジェットヘッド28から金属インク72が吐出される。そして、吐出された金属インク72に、レーザ照射装置26によりレーザが照射されることで、金属インク72が焼成し、金属インク72の焼成により、導電体60,62と電子部品64の電極66,68とを電気的に接続する配線が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。金属インク72が焼成することで、金属製の配線が形成される。
【0021】
ただし、レーザが照射される金属インク72は、導電体60,62と電子部品64と傾斜部70とに跨って吐出されているため、適切に配線が形成されない虞がある。詳しくは、熱伝導率の高い基材、若しくは、熱容量の多い基材、若しくは、体積の大きい基材の上に吐出された金属インク72にレーザが照射された場合に、レーザによる熱は基材に逃げ易い。一方、熱伝導率の低い基材、若しくは、熱容量の少ない基材、若しくは、体積の小さい基材の上に吐出された金属インク72にレーザが照射された場合に、レーザによる熱は基材に逃げ難い。
【0022】
このため、例えば、単位面積当たりのレーザ照射量を比較的高い値に設定した場合には、熱伝導率の高い基材等の上に吐出された金属インク72は、適切に焼成され、配線が形成される。一方、熱伝導率の低い基材等の上に吐出された金属インク72は、焼成されるが、焼成により形成された配線は、過剰な熱により損傷する虞がある。また、例えば、単位面積当たりのレーザ照射量を比較的低い値に設定した場合には、熱伝導率の低い基材等の上に吐出された金属インク72は、適切に焼成され、配線が形成される。一方、熱伝導率の高い基材等の上に吐出された金属インク72は、焼成せずに、配線が形成されない虞がある。このように、熱伝導率等の異なる複数の基材に跨って、金属インク72が吐出されている場合には、金属インク72の焼成による配線を適切に形成できない虞がある。
【0023】
ただし、金属インク72が吐出されている基材の素材に応じて、単位面積当たりのレーザ照射量を変更することで、金属インク72の焼成による配線を適切に形成することが可能となる。詳しくは、例えば、導電体60,62の上に吐出されている金属インク72には、導電体60,62に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射され、傾斜部70の上に吐出されている金属インク72には、傾斜部70に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射され、電子部品64の上に吐出されている金属インク72には、電子部品64に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射される。なお、電子部品64は、電極66,68と本体部76とによって構成されているため、電極66,68の上に吐出されている金属インク72には、電極66,68に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射され、本体部76の上に吐出されている金属インク72には、本体部76に応じた単位面積当たりのレーザ照射量に相当するレーザが照射される。このように、金属インク72が吐出されている基材の素材に応じて、単位面積当たりのレーザ照射量を変更することで、金属インク72の焼成による配線を適切に形成することが可能となる。
【0024】
しかしながら、基材の素材に応じたレーザ照射量の変更は、制御的に困難である。特に、電子部品64が小さい場合には、電子部品64の本体部76の上の金属インク72へのレーザの照射範囲は、極微小となり、レーザ照射量の変更は非常に困難である。
【0025】
このようなことに鑑みて、対基板作業装置10では、金属インク72が吐出される基材の種類を可及的に少なくすることで、適切に配線を形成する手法が採用されている。具体的には、図5に示すように、導電体60,62と電子部品64とが配設された回路基板34の上に、導電体60,62の一部と電子部品64の電極66,68とが露出するように、樹脂層78が形成される。つまり、回路基板34を、導電体60,62の一部と電極66,68とを除く箇所を覆うように、樹脂層78が形成される。これにより、樹脂層78には、導電体60,62に至る導電体ホール80,82と、電極66,68に至る電極ホール84,86とが形成される。なお、樹脂層78は、傾斜部70と同様に、インクジェットヘッド27からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への紫外線照射装置24による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。
【0026】
樹脂層78が形成されると、導電体ホール80,82と電極ホール84,86の内部に、金属インク72の焼結による柱状の金属の塊(以下、「金属柱」と記載する場合がある)(図8参照)88が形成される。詳しくは、例えば、導電体ホール82の内部に金属柱88が形成される際には、図6に示すように、インクジェットヘッド28によって、導電体ホール82の内部に金属インク72が吐出される。そして、その金属インク72に、図7に示すように、レーザ照射装置26によってレーザが照射される。これにより、金属インク72が焼成し、導電体62の上に膜状の金属の塊90が形成される。そして、その膜状の金属の塊90の上への金属インク72の吐出と、レーザ照射とが繰り返されることで、図8に示すように、導電体ホール82の内部に、金属柱88が形成される。なお、金属柱88は、樹脂層78の表面に露出している。また、導電体ホール80および、電極ホール84,86の内部にも金属柱88が形成されるが、導電体ホール80および、電極ホール84,86の内部への金属柱88の形成手法は、導電体ホール82の内部への金属柱88の形成手法と同じであるため、説明を省略する。
【0027】
導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に金属柱88が形成されると、図9に示すように、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88、および、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88とを繋ぐように、インクジェットヘッド28から金属インク72が吐出される。そして、吐出された金属インク72に、レーザ照射装置26によりレーザが照射されるが、金属インク72は、金属柱88と樹脂層78とに跨って吐出されているため、金属柱88の上の金属インク72にレーザが照射される際と、樹脂層78の上の金属インク72にレーザが照射される際とで、単位面積当たりのレーザ照射量が変更される。
【0028】
詳しくは、金属柱88の熱伝導率は高いため、金属柱88の上の金属インク72に照射されたレーザによる熱は、金属柱88を伝わって逃げ易い。このため、金属柱88の上の金属インク72には、比較的大きな値の単位面積当たりのレーザ照射量(以下、「金属用照射量」と記載する場合がある)に相当するレーザが照射される。一方、樹脂層78の熱伝導率は低いため、樹脂層78の上の金属インク72に照射されたレーザによる熱は、樹脂層78を伝わって逃げ難い。このため、樹脂層78の上の金属インク72には、比較的小さな値の単位面積当たりのレーザ照射量(以下、「樹脂用照射量」と記載する場合がある)に相当するレーザが照射される。
【0029】
また、金属柱88の上に吐出された金属インク72と、樹脂層78の上に吐出された金属インク72との境目には、照射量が変更される際に、金属用照射量に相当するレーザと、樹脂用照射量に相当するレーザとの両方が照射される。このため、樹脂層78の上に吐出された金属インク72の金属柱88側の端部(以下、「樹脂上金属インク端部」と記載する場合がある)に、金属用照射量に相当するレーザが照射され、樹脂上金属インク端部が損傷する虞がある。
【0030】
このため、まず、樹脂層78の上に吐出された金属インク72に、樹脂用照射量に相当するレーザが照射される。これにより、樹脂層78の上に吐出された金属インク72が適切に焼成される。なお、金属インク72に照射されるレーザの波長は、500〜1500nmとされている。この波長は、金属インク72に含まれる金属微粒子に吸収されやすい波長であるため、適切に金属インク72が焼成される。
【0031】
そして、樹脂層78の上に吐出された金属インク72が焼成された後に、レーザ照射量が、樹脂用照射量から金属用照射量に変更される。この際、樹脂層78の上に吐出された金属インク72と、金属柱88の上に吐出された金属インク72との境目には、金属用照射量に相当するレーザが照射されるが、樹脂層78の上に吐出された金属インク72は焼成しているため、樹脂上金属インク端部の損傷が防止される。詳しくは、金属インク72に照射されるレーザの波長は、上述したように、500〜1500nmとされており、この波長は、金属微粒子に吸収されやすい波長である。つまり、樹脂上金属インク端部は、金属微粒子の焼成により金属の塊、つまり、配線となり、レーザの吸収性が低くなっている。このため、金属用照射量に相当するレーザが照射されても、樹脂上金属インク端部の損傷が防止される。
【0032】
そして、レーザ照射量が金属用照射量に変更された後に、金属柱88の上に吐出された金属インク72に、レーザが照射されることで、金属柱88の上に吐出された金属インク72が適切に焼成される。このように、レーザ照射量の変更と、焼成の順番を調整することで、樹脂層78および金属柱88の上に吐出された金属インク72が適切に焼成され、図10に示すように、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88、および、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88とを電気的に接続する配線96,98が形成される。これにより、導電体60と電子部品64の電極66とは、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88と配線96とを介して、電気的に接続され、導電体62と電子部品64の電極68とは、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88と配線98とを介して、電気的に接続される。
【0033】
このように、対基板作業装置10では、金属インク72が吐出される基材が、樹脂層78と金属柱88との2種類となっており、レーザ照射量の変更が容易となる。また、従来の配線形成時のように、極微小な電子部品64の本体部76の上の金属インク72へのレーザ照射がないため、レーザ照射量の変更制御が非常に容易となる。
【0034】
なお、導電体60,62は、第1導電部の一例である。電極66,68は、第2導電部および、電極の一例である。樹脂層78は、樹脂層の一例である。導電体ホール80,82は、第1ホールの一例である。電極ホール84,86は、第2ホールの一例である。金属柱88は、金属柱の一例である。
【0035】
また、回路基板34の上に樹脂層78を形成する工程は、樹脂層形成工程の一例である。導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に金属柱88を形成する工程は、金属柱形成工程の一例である。導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88、および、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88とを繋ぐように、インクジェットヘッド28により金属インク72を吐出する工程は、塗布工程の一例である。吐出された金属インク72にレーザ照射装置26によりレーザを照射することで、配線96,98を形成する工程は、配線形成工程の一例である。
【0036】
<変形例>
上述した配線の形成方法と異なる形成方法により、配線を形成することが可能である。具体的には、まず、上記実施例と同様に、図5に示すように、回路基板34の上に樹脂層78を形成する。樹脂層78が形成されると、図11に示すように、導電体ホール80の縁と電極ホール84の縁、および、導電体ホール82の縁と電極ホール86の縁とを繋ぐように、インクジェットヘッド28から金属インク72が吐出される。そして、吐出された金属インク72に、樹脂用照射量に相当するレーザが、レーザ照射装置26によって照射される。これにより、図12に示すように、樹脂層78の上の導電体ホール80の縁と電極ホール84の縁との間および、導電体ホール82の縁と電極ホール86の縁との間に配線100が形成される。
【0037】
次に、上記実施例と同様に、導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部への金属インク72の吐出と、吐出された金属インク72へのレーザ照射が繰り返される。これにより、導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に、図13に示すように、金属柱88が形成される。続いて、図14に示すように、導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の金属柱88の上に、金属インク72が吐出される。この際、金属インク72は、金属柱88と配線100とを繋ぐように、金属柱88の上に吐出される。
【0038】
そして、金属柱88の上に吐出された金属インク72に、金属用照射量に相当するレーザが照射される。これにより、図15に示すように、金属柱88の上に、金属柱88と配線100とを繋ぐ配線102が形成される。これにより、導電体60と電子部品64の電極66とは、導電体ホール80の金属柱88と電極ホール84の金属柱88と配線100,102とを介して、電気的に接続され、導電体62と電子部品64の電極68とは、導電体ホール82の金属柱88と電極ホール86の金属柱88と配線100,102とを介して、電気的に接続される。
【0039】
このように、変形例の配線形成方法においても、実施例の配線形成方法と同様の効果を得ることが可能である。また、変形例の配線形成方法では、樹脂層78の上の配線100と金属柱88の上の配線102とが、別工程で形成されている。これにより、樹脂層78の上の配線100形成時に金属柱の方への熱の逃げを防ぎ、レーザ照射量の変更を容易に行うことが可能となり、レーザ照射装置26等の制御が容易となる。
【0040】
なお、回路基板34の上に樹脂層78を形成する工程は、樹脂層形成工程の一例である。樹脂層78の上に金属インク72を吐出する工程は、第1塗布工程の一例である。樹脂層78の上の金属インク72にレーザ照射し、配線100を形成する工程は、第1配線形成工程の一例である。導電体ホール80,82および、電極ホール84,86の内部に金属柱88を形成する工程は、金属柱形成工程の一例である。金属柱88の上に金属インク72を吐出する工程は、第2塗布工程の一例である。金属柱88の上の金属インク72にレーザ照射し、配線102を形成する工程は、第2配線形成工程の一例である。
【0041】
なお、本発明は、上記実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例および変形例では、樹脂層78および、金属柱88の上に吐出された金属インク72にレーザが照射され、金属インク72が焼成されているが、樹脂層78,金属柱88以外の種々の材質の基材の上に吐出された金属インク72にレーザを照射し、金属インク72を焼成することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
60:導電体(第1導電部) 62:導電体(第1導電部) 66:電極(第2導電部) 68:電極(第2導電部) 78:樹脂層 80:導電体ホール(第1ホール) 82:導電体ホール(第1ホール) 84:電極ホール(第2ホール) 86:電極ホール(第2ホール) 88:金属柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15