【文献】
Journal of the American Chemical Society,2015年,Vol.137, No.26,pp.8556-8563,DOI: 10.1021/jacs.5b04052
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
方法ステップb)におけるPdを含む前記化合物が、二塩化パラジウム、パラジウム(II)アセチルアセトナート、酢酸パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、二塩化パラジウム(シンナミル)から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態において、本発明によるホスフィン配位子は、以下の式(II)および(III)のうちの一方の化合物である。
【0015】
これらの式において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それぞれ、上記において定義される通りである。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、本発明のホスフィン配位子は、当該基R
1、R
2、R
3、およびR
4が上記において定義される通りである式(II)の化合物である。
【0017】
表現(C
1〜C
12)−アルキルは、1個から12個の炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状アルキル基を包含する。これらは、好ましくは(C
1〜C
8)−アルキル基、より好ましくは(C
1〜C
6)−アルキル、最も好ましくは(C
1〜C
4)−アルキルである。
【0018】
好適な(C
1〜C
12)−アルキル基は、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0019】
表現(C
1〜C
12)−アルキルに関する説明は、特に、−O−(C
1〜C
12)−アルキル、−S−(C
1〜C
12)−アルキル、−COO−(C
1〜C
12)−アルキル、−CONH−(C
1〜C
12)−アルキル、−CO−(C
1〜C
12)−アルキル、および−N−[(C
1〜C
12)−アルキル]
2におけるアルキル基にも当てはまる。
【0020】
表現(C
3〜C
12)−シクロアルキルは、3個から12個の炭素原子を有する、単環式、二環式、または三環式のヒドロカルビル基を包含する。好ましくは、これらの基は、(C
5〜C
12)−シクロアルキルである。
【0021】
当該(C
3〜C
12)−シクロアルキル基は、好ましくは3個から8個、より好ましくは5個または6個の環原子を有する。
【0022】
好適な(C
3〜C
12)−シクロアルキル基は、とりわけ、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、シクロペンタデシル、ノルボニル、アダマンチルである。
【0023】
表現(C
3〜C
12)−シクロアルキルに関する説明は、特に、−O−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−S−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−COO−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−CONH−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−CO−(C
3〜C
12)−シクロアルキルにおけるシクロアルキル基にも当てはまる。
【0024】
表現(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキルは、環炭素原子の1つまたは複数がヘテロ原子で置換されている、3個から12個の炭素原子を有する非芳香族、飽和、または部分的不飽和のシクロ脂肪族基を包含する。当該(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは3個から8個、より好ましくは5個または6個の環原子を有し、任意選択により脂肪族側鎖によって置換されていてもよい。当該ヘテロシクロアルキル基では、シクロアルキル基とは対照的に、環炭素原子の1つまたは複数がヘテロ原子またはヘテロ原子含有基で置換されている。当該ヘテロ原子または当該ヘテロ原子含有基は、好ましくは、O、S、N、N(=O)、C(=O)、S(=O)から選択される。したがって、本発明との関連における(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル基は、酸化エチレンでもある。
【0025】
好適な(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル基は、とりわけ、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、およびジオキサニルである。
【0026】
表現(C
6〜C
20)−アリールは、6個から20個の炭素原子を有する単環式または多環式の芳香族ヒドロカルビル基を包含する。これらは、好ましくは(C
6〜C
14)−アリール、より好ましくは(C
6〜C
10)−アリールである。
【0027】
好適な(C
6〜C
20)−アリール基は、とりわけ、フェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル、コロネニルである。好ましい(C
6〜C
20)−アリール基は、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルである。
【0028】
表現(C
3〜C
20)−ヘテロアリールは、炭素原子の1つまたは複数がヘテロ原子で置換されている、3個から20個の炭素原子を有する単環式または多環式の芳香族ヒドロカルビル基を包含する。好ましいヘテロ原子は、N、O、およびSである。当該(C
3〜C
20)−ヘテロアリールは、3個から20個、好ましくは6個から14個、より好ましくは6個から10個の環原子を有する。
【0029】
好適な(C
3〜C
20)−ヘテロアリール基は、とりわけ、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリルである。
【0030】
表現ハロゲンは、特に、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を包含する。特に好ましいのは、フッ素および塩素である。
【0031】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、または−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、それぞれ独立して、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−O−(C
1〜C
12)−アルキル、−O−(C
1〜C
12)−アルキル−(C
6〜C
20)−アリール、−O−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−S−(C
1〜C
12)−アルキル、−S−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、−(C
6〜C
20)−アリール−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
6〜C
20)−アリール−O−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1〜C
12)−アルキル、−COOH、−SO
3H、−NH
2、ハロゲンから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0032】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、または−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、それぞれ独立して、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−O−(C
1〜C
12)−アルキル、−O−(C
1〜C
12)−アルキル−(C
6〜C
20)−アリール、−O−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、−(C
6〜C
20)−アリール−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
6〜C
20)−アリール−O−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1〜C
12)−アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0033】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、または−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、それぞれ独立して、−(C
1〜C
12)−アルキル、−O−(C
1〜C
12)−アルキル−(C
6〜C
20)−アリール、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール−O−(C
1〜C
12)−アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、または−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、それぞれ独立して、−(C
1〜C
12)−アルキルおよび−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0035】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、(C
3〜C
12)−シクロアルキル、または−(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキルである場合、非置換であり、ならびに、それらが−(C
6〜C
20)−アリールまたは−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、説明されるように置換されていてもよい。
【0036】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、または−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、非置換である。
一実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールから選択され、この場合、当該R
1、R
2、R
3、R
4基のうちの少なくとも1つは、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール基であり、ならびにR
1、R
2、R
3、R
4基は、それらが−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
6〜C
20)−アリール、または−(C
3〜C
20)−ヘテロアリールである場合、それぞれ独立して、上記において説明される置換基の1つまたは複数で置換されていてもよい。
【0037】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、R
4基のうちの少なくとも2つは、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール基である。
【0038】
一実施形態において、当該R
1およびR
3基は、それぞれ、−(C
3〜C
20)−ヘテロアリール基であり、ならびに、それぞれ独立して、上記において説明される置換基の1つまたは複数で置換されていてもよい。好ましくは、R
2およびR
4は、独立して、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、(C
3〜C
12)−ヘテロシクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリールから、より好ましくは−(C
1〜C
12)−アルキル、(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリールから、最も好ましくは−(C
1〜C
12)−アルキルから選択される。R
2およびR
4は、独立して、上記において説明される置換基の1つまたは複数で置換されていてもよい。
【0039】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、−(C
6〜C
20)−ヘテロアリール基であり、ならびに、それぞれ独立して、上記において説明される置換基の1つまたは複数で置換されていてもよい。
【0040】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、それぞれ独立して、5個から10個の環原子、好ましくは5個または6個の環原子を有するヘテロアリール基から選択される。
【0041】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、5個の環原子を有するヘテロアリール基である。
【0042】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、それぞれ独立して、6個から10個の環原子を有するヘテロアリール基から選択される。
【0043】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、6個の環原子を有するヘテロアリール基である。
【0044】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリルから選択され、この場合、言及される当該ヘテロアリール基は、上記において説明したように置換されていてもよい。
【0045】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジル、インドリルから選択され、この場合、言及される当該ヘテロアリール基は、上記において説明したように置換されていてもよい。
【0046】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、2−イミダゾリル、2−ピリジル、2−ピリミジル、2−インドリルから選択され、この場合、言及される当該ヘテロアリール基は、上記において説明したように置換されていてもよい。
【0047】
一実施形態において、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、2−フリル、2−チエニル、N−メチル−2−ピロリル、N−フェニル−2−ピロリル、N−(2−メトキシフェニル)−2−ピロリル、2−ピロリル、N−メチル−2−イミダゾリル、2−イミダゾリル、2−ピリジル、2−ピリミジル、N−フェニル−2−インドリル、2−インドリルから選択され、この場合、言及される当該ヘテロアリール基は、これ以上の置換を有しない。
【0048】
より好ましくは、当該R
1、R
2、R
3、およびR
4基は、それらがヘテロアリール基である場合、ピリジル、とりわけ2−ピリジルである。
【0049】
一実施形態において、R
1およびR
3は、ピリジル基、好ましくは2−ピリジルであり、ならびにR
2およびR
4は、(C
1〜C
12)−アルキルであり、この場合、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれ、上記において説明したように置換されていてもよい。
【0050】
一実施形態において、当該配位子は、式(1)の化合物である。
【0052】
本発明のプロセスにおけるステップa)において反応物質として使用されるエーテルは、3個から30個の炭素原子、好ましくは3個から22個の炭素原子、より好ましくは3個から12個の炭素原子を有する。当該エーテルは、第一級、第二級、または第三級アルコールに由来し得る。当該エーテルは、環状エーテルであってもよい。
【0053】
一実施形態において、当該エーテルは、非環式であり、第一級、第二級、または第三級アルコールに由来する。好ましくは、当該エーテルは、第二級または第三級アルコールに由来する。特に好ましいエーテルは、第三級アルコールに由来するものである。
【0054】
一実施形態において、当該エーテルは、以下の式(IV):
【0056】
[式中、R
5は、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリールから選択され、
R
6およびR
7は、それぞれ独立して、−H、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリールから選択され、
ならびにR
8は、−(C
1〜C
12)−アルキル、−(C
3〜C
12)−シクロアルキル、−(C
6〜C
20)−アリールから選択される]の化合物である。
【0057】
好ましい一実施形態において、R
5およびR
8は、それぞれ、−(C
1〜C
12)−アルキルである。好ましくは、R
5およびR
8は、それぞれ、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチルブタ−2−イル、2−メチルブタ−2−イル、2,2−ジメチルプロピルから選択される。特に好ましくは、R
5およびR
8は、それぞれ、メチルおよびエチルから選択される。最も好ましくは、R
5およびR
8は、それぞれ、メチルである。
【0058】
好ましい一実施形態において、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、−H、−(C
1〜C
12)−アルキル、および−(C
6〜C
20)−アリールから選択される。好ましくは、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、−H、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチルブタ−2−イル、2−メチルブタ−2−イル、2,2−ジメチルプロピル、およびフェニルから選択される。特に好ましくは、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、−H、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびフェニルから選択される。
【0059】
好ましくは、当該基R
6およびR
7のうち、−Hであるのは1つまでである。
【0060】
代替の一実施形態において、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、(C
1〜C
12)−アルキルおよび−(C
6〜C
20)−アリールから選択される。この場合、好ましくは、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチルブタ−2−イル、2−メチルブタ−2−イル、2,2−ジメチルプロピル、およびフェニルから選択される。この場合、特に好ましくは、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびフェニルから選択される。この実施形態において、特に、R
5はメチルであり得、その場合、R
6およびR
7は、それぞれ、メチル、tert−ブチル、およびフェニルから選択される。
【0061】
好ましい実施形態において、当該エーテルは、メチルtert−ブチルエーテルである。
【0062】
本発明によるアルコキシカルボニル化は、Pd錯体によって触媒される。当該Pd錯体は、Pdとホスフィン配位子とを含む事前形成された錯体としてプロセスステップb)において加えてもよく、またはPdを含む化合物と遊離ホスフィン配位子とからインサイチューにおいて形成させてもよい。この文脈において、Pdを含む当該化合物は、触媒前駆体とも呼ばれる。
【0063】
当該事前形成された錯体は、金属原子に配位するさらなる配位子も含んでいてもよい。これらは、例えば、エチレン性不飽和化合物またはアニオンである。好適な追加の配位子は、例えば、スチレン、酢酸アニオン、マレイミド(例えば、N−メチルマレイミド)、1,4−ナフトキノン、トリフルオロ酢酸アニオン、または塩素アニオンである。
【0064】
触媒がインサイチューにおいて形成される場合、当該配位子は、非結合の配位子も当該反応混合物中に存在するように、過剰に加えることができる。
【0065】
錯体が開始時に加えられる場合においては、さらなる配位子を加えることも可能であり、それにより、結合していない配位子も反応混合物中に存在する。
【0066】
一変形例において、Pdを含む当該化合物は、二塩化パラジウム(PdCl
2)、パラジウム(II)アセチルアセトナート[Pd(acac)
2]、酢酸パラジウム(II)[Pd(OAc)
2]、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)[Pd(cod)
2Cl
2]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)
2]、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)[Pd(CH
3CN)
2Cl
2]、二塩化パラジウム(シンナミル)[Pd(シンナミル)Cl
2]から選択される。
【0067】
好ましくは、Pdを含む当該化合物は、PdCl
2、Pd(acac)
2、またはPd(OAc)
2である。Pd(acac)
2は、特に好適である。
【0068】
当該プロセスの一変形例において、溶媒が、当該反応混合物に加えられる。この場合、当該溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、および塩化メチレン(CH
2Cl
2)から選択され得る。好ましくは、溶媒としてトルエンが当該反応混合物に加えられる。
【0069】
COは、ステップc)において、好ましくは、0.1MPaから10MPaの間(1barから100bar)、好ましくは1MPaから8MPaの間(10barから80bar)、より好ましくは2MPaから4MPaの間(20barから40bar)のCO分圧において供給される。
【0070】
当該反応混合物は、本発明によるプロセスのステップd)において、エーテルをエステルへと転化させるために、好ましくは10℃から180℃の間、好ましくは20℃から160℃の間、より好ましくは40℃から120℃の間の温度に加熱される。
【0071】
Pdと、ステップa)において最初に装入されるエーテルとの質量比は、好ましくは0.001重量%から0.5重量%の間、好ましくは0.01重量%から0.1重量%の間、より好ましくは0.01重量%から0.05重量%の間である。
【0072】
ホスフィン配位子とPdとのモル比は、好ましくは0.1:1から400:1の間、好ましくは0.5:1から400:1の間、より好ましくは1:1から100:1の間、最も好ましくは2:1から50:1の間である。
【0073】
好ましくは、当該プロセスは、酸を加えることによって行われる。したがって、一変形例において、当該プロセスは、さらに、ステップb’)当該反応混合物に酸を加えるステップを含む。これは、好ましくは、ブレンステッド酸またはルイス酸であり得る。
【0074】
好適なブレンステッド酸は、好ましくは、pK
a≦5の酸強度、好ましくはpK
a≦3の酸強度を有する。報告する酸強度pK
aは、標準状態(25℃、1.01325bar)下で特定されたpK
aに基づいている。多塩基酸の場合、本発明との関連における酸強度pK
aは、最初のプロトリシスステップのpK
aに関連する。
【0075】
好ましくは、当該酸は、カルボン酸ではない。
【0076】
好適なブレンステッド酸は、例えば、過塩素酸、硫酸、リン酸、メチルホスホン酸、およびスルホン酸である。好ましくは、当該酸は、硫酸またはスルホン酸である。好適なスルホン酸は、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、2−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、およびドデシルスルホン酸である。特に好ましい酸は、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸である。
【0077】
使用されるルイス酸は、例えば、アルミニウムトリフレートであり得る。
【0078】
一実施形態において、ステップb’)において加えられる酸の量は、ステップa)において使用されるエーテルのモル量に対して、0.3mol%から40mol%の、好ましくは0.4mol%から15mol%、より好ましくは0.5mol%から5mol%、最も好ましくは0.6mol%から4mol%である。
【実施例】
【0079】
以下の実施例により本発明を説明する。
基本手順
【0080】
以下の全ての調製は、標準的シュレンク技術を使用して、保護ガス下において実施した。当該溶媒は、使用前に好適な乾燥剤において乾燥させた(Purification of Laboratory Chemicals,W.L.F.Armarego(著者),Christina Chai(著者),Butterworth Heinemann(Elsevier),第6版,Oxford 2009)。
【0081】
三塩化リン(Aldrich)を、使用前にアルゴン下において蒸留した。全ての調製操作は、ベークアウトした容器において行った。生成物は、NMR分光分析により特徴付けした。化学シフト(δ)は、ppmにおいて報告する。
31P−NMRシグナルは、以下のように参照した。SR
31P=SR
1H*(BF
31P/BF
1H)=SR
1H*0.4048。(Robin K.Harris,Edwin D.Becker,Sonia M.Cabral de Menezes,Robin Goodfellow,and Pierre Granger,Pure Appl.Chem.,2001,73,1795−1818、Robin K.Harris,Edwin D.Becker,Sonia M.Cabral de Menezes,Pierre Granger,Roy E.Hoffman and Kurt W.Zilm,Pure Appl.Chem.,2008,80,59−84)。
【0082】
核共鳴スペクトルの記録は、Bruker Avance 300またはBruker Avance 400において行い、ガスクロマトグラフィ分析はAgilent GC 7890Aにおいて行い、元素分析はLeco TruSpec CHNSおよびVarian ICP−OES 715において行い、ならびにESI−TOF質量分光分析はThermo Electron Finnigan MAT 95−XPおよびAgilent 6890 N/5973装置において行った。
【0083】
クロロ−2−ピリジル−tert−ブチルホスフィン(前駆体A)の調製
クロロ−2−ピリジル−t−ブチルホスフィンの合成のためのグリニャール試薬は、塩化イソプロピルマグネシウムにより「Knochel法」によって調製した(Angew.Chem.2004,43,2222−2226)。後処理は、Budzelaarの方法に従って行った(Organometallics 1990,9,1222−1227)。
【0084】
【化7】
【0085】
8.07mlの1.3M塩化イソプロピルマグネシウム溶液(Knochel試薬)を、マグネチックスターラーおよびセプタムを備える50mlの丸底フラスコに導入し、−15℃に冷却した。その後、953.5μl(10mmol)の2−ブロモピリジンを、迅速に滴加する。当該溶液はすぐに黄色に変わる。それを、−10℃まで温める。当該反応の転化率は、以下のように決定した。約100μlの溶液を取り、1mlの飽和塩化アンモニウム溶液に導入する。当該溶液が「泡」を生じた場合、まだ、多くのグリニャール試薬は形成されていない。当該水溶液を、エーテルをピペットで加えて抽出し、当該有機相をNa
2SO
4で乾燥させる。当該エーテル溶液のGCを記録する。2−ブロモピリジンと比べて多量のピリジンが形成されている場合、転化率は高い。−10℃では、転化はほとんどなかった。室温まで温めて、1〜2時間撹拌すると、当該反応溶液は、黄褐色に変わる。GC試験は、完全な転化を示す。ここで、予め−15℃に冷却しておいた10mlのTHF中における1.748g(11mmol)のジクロロ−tert−ブチルホスフィンの溶液に、当該グリニャール溶液をシリンジポンプによってゆっくりと滴加することができる。ジクロロ−tert−ブチルホスフィン溶液を冷却することは重要である。室温では、かなりの量のジピリジル−tert−ブチルホスフィンが得られるだろう。最初に透明な黄色の溶液が形成され、それは、次いで濁る。当該混合物を室温まで放温し、一晩撹拌する。GC−MSにより、多量の生成物が形成されていた。当該溶液を高真空下において除去し、所々茶色の白っぽい固体を得る。当該固体を20mlのヘプタンに懸濁させ、当該固体を超音波洗浄機において細かく粉砕する。当該白色固体を沈降させた後、当該溶液を傾瀉する。当該操作を、その都度10〜20mlのヘプタンによって、2回繰り返す。当該ヘプタン溶液を高真空下において濃縮した後、減圧下において蒸留する。4.6mbar、120℃の油浴、および98℃の蒸留温度において、当該生成物を蒸留することができる。1.08gの無色のオイルを得る。(50%)。
【0086】
分析データ:
1H−NMR(300MHz、C
6D
6):δ8.36(m、1H、Py)、7.67(m、1H、Py)、7.03〜6.93(m、1H、Py)、6.55〜6.46(m、1H、Py)、1.07(d、J=13.3Hz、9H、t−Bu)。
【0087】
13C−NMR(75MHz、C
6D
6):δ162.9、162.6、148.8、135.5、125.8、125.7、122.8、35.3、34.8、25.9、および25.8。
【0088】
31P−NMR(121MHz、C
6D
6):δ97.9。
【0089】
MS(EI)m:z(相対強度)201(M
+,2)、147(32)、145(100)、109(17)、78(8)、57.1(17)。
【0090】
配位子1(α,α’−ビス(2−ピリジル(t−ブチル)ホスフィノ)o−キシレン)の調製
【0091】
【化8】
【0092】
675mg(27.8mmol、4当量)のMg粉末を、グローブボックス内において、窒素タップおよびマグネチックスターラーバーを備える250mlの丸底フラスコに秤量し、当該フラスコをセプタムで密封する。高真空を当該丸底フラスコに適用し(約5×10
−2mbar)、当該フラスコを90℃で45分間加熱する。室温まで冷却した後、2グラムのヨウ素を加え、当該混合物を20mlのTHFに溶解させる。ヨウ素の黄色が消えるまで、当該懸濁液を約10分間撹拌する。マグネシウム粉末が沈殿した後、当該濁ったTHF溶液を傾瀉し、当該活性化されたマグネシウム粉末を1〜2mlのTHFで2回洗浄する。次いで、20mlのさらなる新鮮なTHFを加える。室温において、70mlのTHF中における1.21g(6.9mmol)のα,α’−ジクロロ−o−キシレンの溶液を、シリンジポンプによってゆっくりと滴加する。当該THF溶液は、徐々に、より暗い色へと変わっていく。次の日、当該THF懸濁液をろ過して、未転化のマグネシウム粉末を除去し、グリニャール化合物の含有量を、以下のようにして特定する。
1mlのグリニャール溶液を、NH
4Clの飽和水溶液中においてクエンチし、エーテルで抽出する。Na
2SO
4で乾燥させた後、当該エーテル溶液のGCを記録する。定性的には、排他的にo−キシレンが形成されていることが観察される。
【0093】
グリニャール溶液の含有量の定量測定:
1mlのグリニャール溶液を、2mlの0.1MのHClでクエンチし、過剰な酸を0.1MのNaOHで滴定する。好適な指示薬は、0.04%ブロモクレゾール水溶液である。色は、黄色から青色へと変わる。0.74mlの0.1MのNaOHが消費されていた。2ml−0.74ml=1.26mlであり、0.126mmolのグリニャール化合物に対応する。ジグリニャールが存在するので、当該グリニャール溶液は0.063Mである。これは、90%を超える収率である。
【0094】
冷却還流管およびマグネチックスターラーを備える250mlの三ツ口フラスコにおいて、アルゴン下で、1.8g(8.66mmol)のクロロホスフィン(2−Py(tBu)PCl)を10mlのTHFに溶解させ、60℃に冷却する。次いで、55mlの上記において規定したグリニャール溶液(0.063M、3.46mmol)を、シリンジポンプによってこの温度でゆっくりと滴加する。当該溶液は、最初は透明のままであり、次いで強い黄色に変わる。1.5時間後、当該溶液は濁る。当該混合物を、一晩、室温まで放温し、透明な黄色の溶液を得る。反応を完了させるため、当該混合物を還流下において1時間加熱する。冷却した後、1mlのH
2Oを加えると、当該溶液は色を失って乳白色に変わる。高真空下においてTHFを除去した後、繊維状の淡黄色固体が得られる。10mlの水および10mlのエーテルをそこに加え、2つの均質で透明な相を得て、それは、良好な可分性を有する。当該水相をエーテルで2回抽出する。橙色の相をNa
2SO
4で乾燥させた後、エーテルを高真空下において除去し、繊維状のほとんど無色の固体を得る。後者を、水浴において加熱しながら、5mlのMeOHに溶解させ、セライトを通してろ過する。−28℃において、一晩かけて白色結晶の形態の772mgの生成物を得る。(51%)。濃縮後、母液から別の100mgを単離することができた。収率全体は57.6%である。
【0095】
1H−NMR(300MHz、C
6D
6):δ8.58(m、2H、Py)、7.31〜7.30(m、2H、ベンゼン)、7.30〜7.22(m、2H、Py)、6.85〜6.77(m、2H、Py)、6.73(m、2H、ベンゼン)、6.57〜6.50(m、2H、py)、4.33(dd、J=13.3、および4.3Hz、2H、CH
2)、3.72〜3.62(m、2H、CH
2)、121(d、J=11.8Hz、18H、tBu)
13C−NMR(75MHz、C
6D
6):δ161.3、161.1、149.6、137.8、137.7、134.5、133.3、132.7、131.4、131.3、125.7、122.9、30.7、30.5、28.2、28.0、26.5、26.4、26.2、および26.1
31P−NMR(121MHz、C
6D
6):δ8.8、C
26H
34N
2P
2に対して計算したEA:C、71.54;H、7.85;N、6.56;P,14.35、測定値:C、71.21;H、7.55;N、6.56;P、14.35
【0096】
メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)のカルボニル化による3−メチルブタン酸メチルの調製
【0097】
【化9】
【0098】
4mlのガラス製の反応容器(バイアル瓶)に、アルゴン下において、マグネチックスターラーと共に、Pd(acac)
2(1.52mg、0,25mol%)、PTSA(14.3mg、3.75mol%)、1(8.7mg、1mol%)を装入する。次いで、トルエン(2ml)およびMTBE(0.24ml、2mmol)をアルゴン下において加える。このバイアル瓶を、当該バイアル瓶用に製作した金属プレートに位置し、バイアル瓶を伴う当該プレートを、Parr Instruments製の300mlのオートクレーブに移す。当該オートクレーブをCOで3回パージし、次いで、室温において50barのCOで満たす。当該反応を、120℃において、マグネチックスターラーにより20時間実施する。続いて、当該オートクレーブを室温まで冷却し、注意深く減圧する。内部標準物質としてのイソオクタン(200μl)によるGC分析を使用して、収率を求める(33%の収率の3ーメチルブタン酸メチル)。
【0099】
この実験は、本発明のプロセスによりエーテルをCOと直接反応させることによって、対応するエステルを得ることができることを示している。本発明に従って用いた配位子を使用ことにより、この反応において、かなりの収率が達成される。したがって、本発明は、エステルの調製のための出発材料としてエチレン性不飽和化合物の代わりにエーテルを使用することを可能にする。