【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示されているような排水装置を用いた従来の排水管配管構造においては、以下のような問題があった。
【0006】
既設の排水管配管経路に、ポータブルトイレを含む排水管配管経路を新規に接続した場合、ポータブルトイレから流下した排水は水量が少ないため、排泄物が排水管配管に残りがちとなる。特に、このような排泄物の残留は、既設の排水管配管経路と新規の排水管配管経路とが接続する位置で起こりやすい。ここで、一般的に既設の排水管配管経路には複数の衛生器具、すなわち大小便器、洗面器、浴槽、流し台等が接続されており、該衛生器具からの排水が屋外の公共ますに向かって流下するように構成されている。したがって、排泄物が既設の排水管配管に残った状態で衛生器具を使用した際には、前記排泄物が当該経路を逆流してしまうおそれがあり、前記衛生器具の使用に支障が生じる場合があった。
【0007】
また、建物のレイアウト等によっては、既設の排水管配管経路とポータブルトイレとの距離が、排水装置の排水能力に対して過剰に長くなってしまったり、排水装置の設置位置が限定されてしまい、該排水装置の排水能力が適切に発揮されなかったりすることがある。そうすると、ポータブルトイレと既設の排水管配管経路との間をつなぐ新規の排水管配管経路に、ポータブルトイレから流下した排泄物が堆積しやすくなったり、上述したような排水機能を有するポータブルトイレが設置できなくなったりするなどの問題が生じる。
【0008】
そこで本発明は、ポータブルトイレから流下した排泄物が配管経路途中で堆積することを好適に防止し、既設の衛生器具の使用を妨げることなくポータブルトイレを良好に使用することができる排水管配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、屋内に配設された水洗式大便器と、屋外に配設された排水ます及び公共ますと、上流側端部が該水洗式大便器に接続され該排水ますを経由して下流側端部が該公共ますに接続された配管とを含む既設の配管経路に接続される配管構造であって、屋内に配設されたポータブルトイレと、上流側端部が該ポータブルトイレに接続され下流側端部が既設の配管経路に接続された配管とを含む新規の配管経路と、該新規の配管経路に配置され、該ポータブルトイレに溜まった排泄物を強制的に流下させるための排水装置と、を備え、該新規の配管経路は、該排水装置により排泄物が強制的に流下される強制流下区間と、該強制流下区間から該既設の配管経路に向かって排泄物が自然に流下される自然流下区間と、を有しており、該自然流下区間を構成する配管は、所定の排水勾配を有しており、前記新規の配管経路の下流側端部は、前記既設の配管経路に配設された、排水ます
の蓋に備えられている、貫通穴が形成された受口部に接続されていることを特徴とする配管構造である。また
、参考としての発明は、屋内に配設された水洗式大便器と、屋外に配設された排水ます及び公共ますと、上流側端部が該水洗式大便器に接続され該排水ますを経由して下流側端部が該公共ますに接続された配管とを含む既設の配管経路に接続される配管構造であって、屋内に配設されたポータブルトイレと、上流側端部が該ポータブルトイレに接続され下流側端部が既設の配管経路に接続された配管とを含む新規の配管経路と、該新規の配管経路に配置され、該ポータブルトイレに溜まった排泄物を強制的に流下させるための排水装置と、を備え、該新規の配管経路は、該排水装置により排泄物が強制的に流下される強制流下区間と、該強制流下区間から該既設の配管経路に向かって排泄物が自然に流下される自然流下区間と、を有しており、該自然流下区間を構成する配管は、所定の排水勾配を有しており、前記新規の配管経路の下流側端部は、前記既設の配管経路に配設された、配管に接続されていることを特徴とする配管構造である。
【0010】
かかる構成にあって、水洗式大便器は使用時に流下する水量が多く、使用頻度も比較的多いため、ポータブルトイレから流下した排泄物が仮に
既設の配管経路に堆積していても、該水洗式大便器からの多量の排水が追い水となって該排泄物を公共ますまで円滑に流下させることができる。さらに、前記自然流下区間を構成する配管は、所定の排水勾配を有しているため、自然流下区間の全長を十分に確保したとしても、該自然流下区間内に排泄物が堆積することなく十分な掃流性を確保することができる。このことは、例えば排水装置を
既設の配管経路近傍に設置しなければならない、などといった設計上の制限を排除することが可能となり、排水装置の排水能力に制限がある場合にもポータブルトイレや排水装置の設置位置の自由度が向上する利点がある。なお、上記した本発明の構成には、排水装置がポータブルトイレに内蔵されているものも含まれる。
【0011】
上記
配管構造において、前記強制流下区間は、前記ポータブルトイレと前記排水装置との間に配設された配管によって構成され、前記自然流下区間は、該排水装置と前記
既設の配管経路との間に配設された配管によって構成され、前記排水装置は、該強制流下区間を構成する配管内の排泄物を負圧により吸引する負圧吸引式の装置である構成が提案される。
【0012】
かかる構成とすることにより、前記排水装置を、例えば建物の外周壁の近傍などの所望の位置に適宜配置することができる。
【0013】
また上記
配管構造において、前記排水装置は、前記強制流下区間を構成する配管を介して排泄物を加圧により圧送する圧送式の装置であり、さらに該強制流下区間に対応する
新規の配管経路の下流側端部には、リフトアップ部が設けられ、該リフトアップ部は、排泄物が送られる下流方向に向かうに従い上方へ延設される配管を有し、該リフトアップ部の下流側端部が前記自然流下区間の上流側端部に接続されている構成としてもよい。
【0014】
かかる構成とすることにより、自然流下区間の上流側端部をできる限り上方に配置することが可能となるため、仮に排水装置の排水能力に限界があって強制流下区間の全長を長く設けることができない場合にも、該自然流下区間における配管の排水勾配を適切に設け、該自然流下区間の全長を十分に確保して
新規の配管経路を構築することができる。
【0015】
上記構成において、前記
新規の配管経路の下流側端部は、前記排水ますに接続されていることがある。
【0016】
かかる構成においては、ポータブルトイレから流下した排泄物が正常に流下しているかなどの内部状況を、前記排水ますを介して容易に確認することができる。
【0017】
さらに、前記自然流下区間を構成する配管の勾配は、1/50以上であることが望ましい。
【0018】
このように、自然流下区間において水平方向に5m進むに従い10cm垂直下方へ下るような勾配とすることで、適切な掃流性を確保することができ、該自然流下区間を構成する配管内に排泄物が堆積してしまうことを防止することができる。
【0019】
また、前記自然流下区間を構成する配管の内径は、前記強制流下区間を構成する配管の内径よりも大きいことが望ましい。
【0020】
かかる構成とすることにより、強制流下区間から自然流下区間へ移行する部位において排水を円滑に流下させることができることになり、排泄物の堆積を防止し、他の衛生器具の使用に支障が生じないようにすることができる。
【0021】
さらに、前記自然流下区間を構成する配管の内径は、50mm以上であることが望ましい。
【0022】
かかる構成とすることにより、排水の掃流性をさらに高いものとすることができる。
【0023】
また、前記強制流下区間を構成する配管の内径は、20mm以下であることが望ましい。
【0024】
かかる構成においては、建物内において強制流下区間の管路をコンパクトに配管することができる。さらに、前記排水装置が負圧吸引式であっても圧送式であっても、該強制流下区間を構成する配管の内径が小さいほど装置にかかる負荷が低減できるため、エネルギーコストの小さい構造とすることができることとなる。ただし、前記配管の内径が過剰に小さいと、排泄物流下時の抵抗が増大し、「詰まり」の原因となるため、該強制流下区間を構成する配管の内径は16mm以上であることが望ましい。
【0025】
また、前記リフトアップ部の下流側端部における管底と、前記強制流下区間を構成する配管のうち最下端部における管底との間には、30cm以上の高低差が設けられていることがある。
【0026】
かかる構成とすることにより、該自然流下区間における配管の勾配が1/50以上である構成が容易に設計・施工することができる。例えば、該自然流下区間の上流側端部が、本構成を採用しない構成に比して30cm上昇してなる構成であれば、1/50の勾配として水平に15mの距離を稼ぐことができるようになる。したがって、排水装置と
既設の配管経路との離間距離が相当長くなる設計条件であっても、該自然流下区間における配管の勾配を無理なく設けることが可能となる。
【0027】
さらに、屋内に配設された水洗式大便器と、屋外に配設された排水ます及び公共ますと、上流側端部が該水洗式大便器に接続され該排水ますを経由して下流側端部が該公共ますに接続された配管とを含む既設の配管経路に、屋内に配設されたポータブルトイレと、上流側端部が該ポータブルトイレに接続された配管とを含む新規の配管経路の下流側端部を接続するための排水管配管施工方法であって、該既設の配管経路を構成する配管の屋外となる位置に新規の排水ますを増設する工程Aと、建物の壁部に屋内外を貫通する貫通孔を穿孔する工程Bと、新規の配管経路に該ポータブルトイレに溜まった排泄物を強制的に流下させるための排水装置を配置し、該新規の配管経路を構成する配管を該貫通孔に挿通させ、該排水装置により排泄物が強制的に流下される強制流下区間を構成する配管と、該強制流下区間から該既設の配管経路に向かって排泄物が自然に流下される所定の排水勾配を有した自然流下区間を構成する配管と、を配置する工程Cと、を含むことを特徴とする排水管配管施工方法としてもよい。
【0028】
かかる構成とすることにより、屋外部分を有する既設の配管経路に、屋内に配したポータブルトイレを含む新規の配管経路を好適に接続することが可能となる。また、前記自然流下区間を構成する配管は、所定の排水勾配を有することになるため、該自然流下区間内に排泄物が堆積することなく、十分な掃流性を確保することができる。また、該既設の配管経路と該新規の配管経路との接続箇所に排水ますを設けることで、ポータブルトイレから流下した排泄物が正常に流下しているかなどの内部状況を該排水ますを介して容易に確認することができる。なお、建物の壁部には、天井壁、及び、基礎を含む側壁を含むものとする。