特許第6442041号(P6442041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442041光ファイバブラッググレーティングの製造のためのUV硬化性シルセスキオキサン含有ライトスルー光ファイバコーティング及びそれから製造されたファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442041
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】光ファイバブラッググレーティングの製造のためのUV硬化性シルセスキオキサン含有ライトスルー光ファイバコーティング及びそれから製造されたファイバ
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20181210BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20181210BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20181210BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20181210BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20181210BHJP
   B05D 7/20 20060101ALI20181210BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20181210BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20181210BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20181210BHJP
   C03C 25/40 20060101ALI20181210BHJP
   C08F 30/08 20060101ALI20181210BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20181210BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20181210BHJP
   C08F 299/08 20060101ALI20181210BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C09D183/07
   C09D183/06
   C09D4/00
   B05D7/24 302Y
   B05D7/24 301T
   B05D3/06 102Z
   B05D7/20
   B05D5/06 Z
   G02B6/44 301A
   G02B6/02 416
   G02B6/44 321
   C03C25/40
   C08F30/08
   C08F20/10
   C08F290/14
   C08F299/08
   C08G59/20
【請求項の数】18
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-504405(P2017-504405)
(86)(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公表番号】特表2017-534693(P2017-534693A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015042486
(87)【国際公開番号】WO2016018918
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】62/030,263
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】シモフ,デブラ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】フェダー,ケネス,エス.
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤオウェン
(72)【発明者】
【氏名】ルーベル,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,メイ
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−031806(JP,A)
【文献】 特開2000−147336(JP,A)
【文献】 特開2002−327117(JP,A)
【文献】 特表2013−515276(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/085501(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0256287(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0199603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B05D 1/00−7/26
G02B 6/00−6/54
C03C 25/00−25/70
C08F 2/00−301/00
C08G 59/00−59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
紫外線照射を使用して硬化させることができる1つ以上の反応性官能基を有するシルセスキオキサン成分であって、前記1つ以上の反応性官能基がアクリレート、ビニルエーテル又はエポキシからなる群から選択される、シルセスキオキサン成分、及び
選択的に、紫外線照射を使用して硬化させることができ、フリーラジカル硬化性アクリレート、カチオン硬化性エポキシ及びカチオン硬化性ビニルエーテルからなる群から選択される1つ以上の反応性官能基を有する共反応性非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマーを備え、前記コーティング組成物が光学物品上に配置及び硬化され、前記光学物品が光ファイバ又は光平板導波路のうちの少なくとも一方であり、前記組成物の平均官能性が1より大きい、コーティング組成物。
【請求項2】
前記シルセスキオキサン成分が、多面体かご型構造体、はしご型構造体、ランダム構造体又はそれらの組合せを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アクリレート官能化シルセスキオキサン成分、前記フリーラジカル硬化性アクリレート又は前記アクリレート官能化シルセスキオキサン成分及び前記フリーラジカル硬化性アクリレートの双方のいずれかが、非アクリレート共反応性成分を有し、前記非アクリレート共反応性成分が、メタクリレート、ビニル、ビニルエーテル及びチオールからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
エポキシ官能化シルセスキオキサン成分、前記カチオン硬化性エポキシ又は前記エポキシ官能化シルセスキオキサン成分及び前記カチオン硬化性エポキシの両方のいずれかが、共反応性ヒドロキシル含有成分を更に備える、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記シルセスキオキサンは、式1〜3:
【化1】
に示された構造体又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを有し、
Rが反応性官能基であるか、又は前記組成物中に存在する他の化学種との化学的適合性を容易にする非反応性基であり、各Rが独立して同じであっても異なっていてもよく、前記非反応性基がC〜C24の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル、脂肪族又は脂環式のエーテル又はポリエーテル、脂肪族又は脂環式のエステル又はポリエステル、脂肪族又は脂環式のシロキサン又はポリシロキサン、脂肪族又は脂環式のカーボネート又はポリカーボネート、脂肪族又は脂環式のフルオロカーボン、ハロカーボン、脂肪族又は脂環式のウレタンエーテル、ウレタンエステル又はウレタンカーボネートを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記反応性官能基が、ホモポリマー又はコポリマー上に、骨格の骨格鎖に沿って配置されているか、あるいは前記骨格の外にペンダント基として配置されている、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記シルセスキオキサンが、多面体シルセスキオキサンであり、前記多面体シルセスキオキサンが、アクリロイソブチルシルセスキオキサン、メタクリルイソブチルシルセスキオキサン、メタクリレートシクロヘキシルシルセスキオキサン、メタクリレートイソブチルシルセスキオキサン、メタクリレートエチルシルセスキオキサン、メタクリルエチルシルセスキオキサン、メタクリレートイソオクチルシルセスキオキサン、メタクリルイソオクチルシルセスキオキサン、メタクリルシルセスキオキサンかご型混合物、アクリロシルセスキオキサンかご型混合物、エポキシシクロヘキシルイソブチルシルセスキオキサン、エポキシシクロヘキシルシルセスキオキサン、グリシジルシルセスキオキサン、グリシジルエチルシルセスキオキサン、グリシジルイソブチルシルセスキオキサン、グリシジルイソオクチルシルセスキオキサン、トリグリシジルイソブチルシルセスキオキサン、オクタエポキシシクロヘキシルジメチルシリルシルセスキオキサン、オクタグリシジルジメチルシリルシルセスキオキサン、メルカプトプロピルイソブチルシルセスキオキサン、メルカプトプロピルイソオクチルシルセスキオキサン、二官能性ヘテロかご型又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
25℃で1,000〜40,000センチポイズの粘度を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
フリーラジカル硬化性アクリレート官能化非シルセスキオキサン成分が、ポリウレタンアクリレートである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物が、厚み25マイクロメートル及び波長248nmにおいて10%超のUV透過率、厚み25マイクロメートル及び波長248nmにおいて1未満のUV吸光度又は0.04/μm未満の光学吸光度を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記光学吸光度が、248nmにおいて0.02/μm未満である、請求項10に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
紫外線照射を使用して硬化させることができる1つ以上の反応性官能基を有するシルセスキオキサン成分であって、前記1つ以上の反応性官能基がアクリレート、ビニルエーテル又はエポキシからなる群から選択される、シルセスキオキサン成分、及び
選択的に、紫外線照射を使用して硬化させることができ、フリーラジカル硬化性アクリレート、カチオン硬化性エポキシ及びカチオン硬化性ビニルエーテルからなる群から選択される1つ以上の反応性官能基を有する共反応性非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマーを備えるコーティング組成物の反応生成物を備え、前記コーティング組成物が光学物品上に配置及び硬化され、前記光学物品が光ファイバ又は光平板導波路のうちの少なくとも一方であり、硬化させる前の前記コーティング組成物の平均官能性が1より大きい、コーティング。
【請求項13】
前記コーティングが光ファイバ上に、5〜82.5マイクロメートルの厚みで配置され、前記コーティングが248nmのUV書込み波長において0.04/μm未満の光学吸光度を有し、前記コーティングが1.48〜1.50の屈折率を有する、請求項12に記載のコーティング。
【請求項14】
前記コーティングが、15%超の破断伸び及び300〜1200MPaの23℃での弾性率を示す、請求項12に記載のコーティング。
【請求項15】
紫外線照射を使用して硬化させることができる1つ以上の反応性官能基を有するシルセスキオキサン成分であって、前記1つ以上の反応性官能基がアクリレート、ビニルエーテル又はエポキシからなる群から選択される、シルセスキオキサン成分、及び
選択的に、紫外線照射を使用して硬化させることができ、フリーラジカル硬化性アクリレート、カチオン硬化性エポキシ及びカチオン硬化性ビニルエーテルからなる群から選択される1つ以上の反応性官能基を有する共反応性非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマー
を備える組成物を光ファイバ又は光導波路上に配置する工程であって、前記コーティング組成物が光ファイバ上に配置及び硬化され、硬化させる前の前記シルセスキオキサン成分及び前記共反応性非シルセスキオキサンモノマーの平均官能性が1より大きい、工程、並びに
紫外線照射を使用して前記組成物を硬化させて248nmの紫外線書込み波長において1マイクロメート当たり0.04未満の光学吸光度能を示すコーティングを生成する工程
を備える方法。
【請求項16】
光開始剤を更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
光開始剤を更に含む、請求項12に記載のコーティング。
【請求項18】
前記光ファイバ内又は前記光導波路内にブラッググレーティングをライティングする工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本開示は2014年7月29日に出願された米国仮出願第62/030,263号の利益を主張し、その内容全体が参照によりここに組み込まれる。
光ファイバブラッググレーティングの製造のための紫外線(UV)硬化性シルセスキオキサン含有ライトスルー(write−through)光ファイバコーティング及びそれから製造されたファイバがここに開示される。
【背景技術】
【0002】
ファイバブラッググレーティング(FBG)アレイにおいては、様々なセンシング用途の要求が高まっている。a)(特に、石油探査における温度及び歪みセンシングのための)地探用途などの新たな市場におけるコーティングの耐熱性、及びb)特に、1回注入(シングルレーザパルス)ライティング(writing)技術により製造される形状センサファイバについての改善が必要とされている。「ストリップ/ライト/リコート」プロセスを使用するFBG製造は高容量アレイには効率的でなく、時間がかかり、ストリップされたファイバが破断する可能性も高く、収率及び製造効率が低下する。このようなプロセスでは、ポリマーコーティングはファイバのガラス基材から除去され、続けてガラスコア内にFBGのレーザ書込みがされ、その後にリコーティングされて、保護ポリマー層により付与された機械的堅牢性を回復する。これらの場合に、FBGライティング波長に対するある種の光ファイバコーティングの相対的な不透明性のためにコーティングの除去が必要となる場合がある。ドロータワー製法(ガラスファイバがコーティングされる前に、ファイバの線引き中にFBGをライティングする製法)では、ライティングプロセスをファイバ線引きプロセスからデカップリングさせるのが困難となる。
【0003】
以前に、ファイバコーティングを通過するUVレーザによるサイドライティングにより、グレーティングの書込みを可能にする、ある「ライトスルー」コーティング法が発明された。これは、ライティング波長においてUV透過性が増加するようにコーティングを適合させることにより達成された。しかしながら、今日までのこのようなコーティングは、UV硬化性でないか(溶媒除去又は熱硬化に関する困難性が存在する)又は耐擦り傷性及び熱安定性に対する中程度の堅牢性しか提供できないものかのいずれかであった。
【0004】
あるタイプのFBGの製造は、例えば、ファイバが複数の捻じれたガラスコアを含み、各グレーティングがシングルパルスのみを使用して複数のコア内に同時に書き込まれる形状センサファイバ(SSF)アレイにおけるように、コーティングの表面品質に特に影響を受けやすいことが分かっている。このようなシングルパルスプロセスは、一連のレーザパルス又は一定のUV照射を使用するFBG書込みプロセスとは対照的であり、FBG品質及び強度は、選択的にリアルタイムフィードバックを使用して数秒又は更に数分の時間枠にわたってモニタ及び調節され得る。以前に開発された他のUV硬化性コーティングは、比較的遅い硬化速度に関連する、硬度及び/又は過剰な表面粘着性が制限されるために、引っ掻き、しわに対する感受性、又はコーティング表面上の埃及び環境デブリに対する吸付きを受け易いことを示してきた。改善されたライトスルーコーティングが、これらの性質に対して、特にシングルパルスFBGを製造するのに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
コーティング組成物であって、紫外線照射を使用して硬化させることができる1つ以上の反応性官能基を有するシルセスキオキサン成分であって、1つ以上の反応性官能基はアクリレート、ビニルエーテル又はエポキシからなる群から選択される、シルセスキオキサン成分、並びに紫外線照射を使用して硬化させることができ、フリーラジカル硬化性アクリレート、カチオン硬化性エポキシ及びカチオン硬化性ビニルエーテルからなる群から選択される1つ以上の反応性官能基を有する共反応性非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマーを選択的に備え、コーティング組成物が、光学物品上に配置及び硬化され、光学物品が、光ファイバ又は光平板導波路のうちの少なくとも一方であり、組成物の平均官能性が1より大きい、コーティング組成物がここに開示される。
【0006】
紫外線照射を使用して硬化させることができる1つ以上の反応性官能基を有するシルセスキオキサン成分であって、1つ以上の反応性官能基はアクリレート、ビニルエーテル又はエポキシからなる群から選択される、シルセスキオキサン成分、並びに紫外線照射を使用して硬化させることができ、フリーラジカル硬化性アクリレート、カチオン硬化性エポキシ及びカチオン硬化性ビニルエーテルからなる群から選択される1つ以上の反応性官能基を有する共反応性非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマーを選択的に備えるコーティング組成物の反応生成物を備え、コーティング組成物が、光学物品上に配置及び硬化され、光学物品が、光ファイバ又は光平板導波路のうちの少なくとも一方であり、硬化させる前のコーティング組成物の平均官能性が1より大きい、コーティングもここに開示される。
【0007】
紫外線照射を使用して硬化させることができる1つ以上の反応性官能基を有するシルセスキオキサン成分であって、1つ以上の反応性官能基はアクリレート、ビニルエーテル又はエポキシからなる群から選択されるシルセスキオキサン成分、及び選択的に、紫外線照射を使用して硬化させることができ、フリーラジカル硬化性アクリレート、カチオン硬化性エポキシ及びカチオン硬化性ビニルエーテルからなる群から選択される1つ以上の反応性官能基を有する共反応性非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマーを、備える組成物を光ファイバ又は光導波路上に配置する工程であって、コーティング組成物が光ファイバ上に配置及び硬化され、硬化させる前のシルセスキオキサン成分及び共反応性非シルセスキオキサンモノマーの平均官能性が1より大きい、工程、並びに紫外線照射を使用して組成物を硬化させて248nmの紫外線ライティング波長において1マイクロメート当たり0.04未満の光学吸光度能を示すコーティングを生成する工程を備える方法もここに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、比較としての非シルセスキオキサンライトスルーコーティングであるAHF116のUV吸光度との比較における選択された市販の液状UV硬化性かご型シルセスキオキサン成分のUV吸光度を示し、ここでシルセスキオキサン材料は光開始剤を含有せず、水晶ディスク間に挟み込まれたPTFEスペーサを使用して制御された場合に全てのサンプル厚は名目上25マイクロメートルであった。
図2図2は、30〜40wt%のMA0736アクリロPOSSかご型混合物と、市販の脂肪族ウレタンアクリレート樹脂とのブレンドであるサンプル6C及び6DのUVスペクトルを示し、これらを、248nmにおいて比較可能なUV透過率を示して同様の光開始剤充填及び同じUV線量を利用するAHF116比較非シルセスキオキサンライトスルーコーティングと比較する。
図3図3は、液状及び硬化済みのEP0409グリシジルPOSSシルセスキオキサン配合物のUVスペクトルを2つの光開始剤レベルにおいて示す。
図4図4は、幾つかのPOSSシルセスキオキサン系硬化コーティング(サンプル4G、5I、6B及び7B)、その他硬化させた比較非シルセスキオキサンコーティングAHF116についての温度に対する重量減少を示すグラフである。
図5図5は、幾つかのPOSSシルセスキオキサン系硬化コーティング(サンプル4G及び6B)、その他3つの硬化させた比較非シルセスキオキサン光ファイバコーティング:AHF116ウレタンアクリレート、OF−211シリコーンアクリレート(Shin−Etsu MicroSi)及び熱硬化させたポリイミドについての温度に対する重量減少を示す他のグラフである。
図6図6は、特定のPOSS系コーティング(サンプル6B及び7B)の使用温度及び/又は寿命が非シルセスキオキサンコーティングAHF116のそれらと同等であるか、又はそれらより優れていることを示すライフサイクル挙動を示すグラフである。
図7図7は、a)POSSシルセスキオキサンアクリレート(MA0736)(30wt%)とウレタンアクリレートオリゴマーとの硬化させたブレンドを含有する本発明の組成物サンプル9A、及びb)POSS成分を含まない同じウレタンアクリレートオリゴマーに基づく類似する比較組成物サンプル9Bについての動的機械貯蔵弾性率及びtanδ減衰挙動を示す。
図8図8は、非シルセスキオキサン比較基準サンプル9Bの硬化膜及び2つの光開始剤充填を使用して硬化させたEP0409グリシジルPOSSシルセスキオキサンの膜の動的弾性率を示す。
図9図9は、未硬化液について水晶板間で挟み込まれたサンプル11Cの厚み50マイクロメートルの膜及び1平方センチメートル当たり300〜1200ミリジュールの範囲での連続的なUV露光後の膜についてのUV透過スペクトルを示し、サンプル11Cは骨格型の混合物を含むUV硬化性ポリシルセスキオキサンに基づく。
【発明を実施するための形態】
【0009】
シルセスキオキサン部分を含有する紫外線(UV)硬化性光ファイバコーティング組成物(以下、コーティング組成物)がここに開示される。コーティング組成物はコーティングの架橋後にポリマーコーティングを除去することなくガラス内の1つ以上のコアにライティングされたUV誘引グレーティングを有し得るガラス光ファイバ又は光平板導波路上に配置され、これにより、機械的に堅牢なファイバグレーティングの高速での製造が可能となる。シルセスキオキサン部分は、それらをUV硬化性にするために反応性基によって官能化されている。各コーティング組成物は、UV硬化性シルセスキオキサンに加えて、選択的に更なる非シルセスキオキサンモノマー及びオリゴマーを含んでもよく、これにより組成物が1より大きい、好ましくは2より大きい組み合わせられた平均官能性を有することになり、コーティング組成物は架橋可能となる。オリゴマー及びモノマーは、UV硬化可能な反応性官能基を有する。硬化時には、各コーティング組成物は、芳香族部分及びUV光を吸収する他の共役炭素二重結合を実質的に含まない。
【0010】
組成物は、溶媒処理及び熱硬化を使用するシルセスキオキサン成分を上回る向上を示す点において有利である。コーティングは硬化された後に十分に低い紫外線吸光度を有し、5〜82.5マイクロメートル(μm)、好ましくは30〜40マイクロメートルのコーティング厚においてファイバブラッググレーティングのライトスルー製造が可能となり、このような厚みは248nmのUVライティング波長において0.04/μm未満、好ましくは0.03/μm以下、及び最も好ましくは0.02/μm未満の光学吸光能力を伴って、実質的なレベルの機械的保護をガラスファイバに付与する。コーティングは、シルセスキオキサンを包含していない以前に開示された他のUV硬化性ライトスルーコーティングと比較して、下記領域:より高い硬度、より高い弾性率、より高いUV透過率及び/又はより高い熱安定性のうちの少なくとも1つにおける優れた性能を有することを特徴とする。
【0011】
シルセスキオキサンは、Rが一種以上の置換基、典型的には事実上有機を表わす構造体(RSiO1.5を有する。他の名称は、「T−樹脂」である。T−樹脂は、ケイ素を置換する3つの(三置換)酸素原子が存在することを示す。これらの分子は、構造体及び特性が、シリカガラス(SiO及びシリコーンポリマー(RSiO)の構造体及び特性の中間である、堅く、熱安定性のケイ素−酸素骨組みを有する。コーティング組成物中のシルセスキオキサン部分は、式1〜3で以下に示すように、種々の構造タイプ:多面体かご型、はしご型、ランダム又はそれらの組合せの中から選択され得る。
【0012】
式(1)は、ランダムシルセスキオキサン部分を示す。
【化1】
一方、式(2)は、はしご型シルセスキオキサンを示す。
【化2】
式(3)は、完全及び不完全(部分)多面体かご型シルセスキオキサンを示す。
【化3】
【0013】
シルセスキオキサン部分は、比較的高い硬度及び耐熱性を高いUV透過率と共に付与する一方で、UV反応性官能基の包含によってシルセスキオキサンがUV硬化性となり、光ファイバ製造プロセスが容易となる。コーティング組成物は、10〜100,000センチポイズ(cP)、好ましくは1,000〜40,000、及びより好ましくは2,000〜5,000cPの粘度を有する。コーティングは、コーティングを通過させてファイバ内にFBGをライティングする能力に十分なUV透過率を可能とする限り、低レベルの光開始剤を含有し、選択的に1つ以上の他の有益な添加剤(例えば、シラン接着促進剤、抗酸化剤、流動助剤、滑剤)を含んでいてもよい。
【0014】
上記のように、シルセスキオキサンは、かご型様構造体を有し得る。かご型シルセスキオキサンの構造体は、多くの場合、立方体、多面体プリズム、八面体プリズム、十面体プリズム、十二面体プリズム、又は更に開いたかご型様構造の形態にある。種々のかご型シルセスキオキサンが、Hybrid Plastics社によって商品名POSSで販売されている。それらは、多面体オリゴマーシルセスキオキサンであると説明されており、一般式(RSiO1.5(式中、Rは、典型的には、有機又は無機部分であり、nは、6、8、10、12又はそれ以上である)を有する。全てのシルセスキオキサンと同様に、これらの分子は、堅く、熱安定性のケイ素−酸素骨組みを1:5のケイ素に対する酸素の割合で有し、ほとんどは、例えば、炭化水素(例えば、ビニル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、イソブチル又は他の炭化水素)、その他エステル、ビニル、エポキシ、アクリレート、ヒドロキシル等の官能基、又は他の官能基を備える外層を提供する共有結合した有機(及び場合によっては無機)の官能基を含有する。Si(式中、n=8)POSS構造体を式(4)で以下に示す。
【化4】
ケイ素原子上のR基のバリエーションにより、様々な官能基が、POSS骨組みのコーナーの外に配置され得る。各R基は、重合中にコーティングを硬化させ得る反応性基であってもよく、あるいは、組成物中に存在する他の化学種との化学的適合性を容易にし得る非反応性基であってもよい。重合又は適合を可能にするその役割に加えて、種々のタイプのR基が、他の所望の性質、例えば、可撓性又は剛性、熱安定性、耐薬品性、硬化速度、屈折率等を付与するために選択又は適合され得る。例示的な実施形態では、ケイ素原子上のR基は、UV開始重合を可能とし得る反応性官能基であり、アクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルエーテル、チオール若しくはエポキシド、ヒドロキシル又はそれらの組合せを含む。
【0015】
他の可能性のあるR基は、非反応性基、例えば、C〜C24の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル、脂肪族又は脂環式のエーテル又はポリエーテル、脂肪族又は脂環式のエステル又はポリエステル、脂肪族又は脂環式のシロキサン又はポリシロキサン、脂肪族又は脂環式のカーボネート又はポリカーボネート、脂肪族又は脂環式のフルオロカーボン又は他のハロカーボン、脂肪族又は脂環式のウレタンエーテル、ウレタンエステル又はウレタンカーボネートを含む。
【0016】
他の例示的な実施形態では、R基は、骨格の骨格鎖に沿って配置されているか、あるいは、骨格の外にペンダント基として配置されているかのいずれかである反応性化学種を有する低分子量のホモポリマー又はコポリマーである。このような低分子量オリゴマーの例は、C〜C24の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル、脂肪族又は脂環式のエーテル又はポリエーテル、脂肪族又は脂環式のエステル又はポリエステル、脂肪族又は脂環式のシロキサン又はポリシロキサン、脂肪族又は脂環式のカーボネート又はポリカーボネート、脂肪族又は脂環式のフルオロカーボン又は他のハロカーボン、脂肪族又は脂環式のウレタンエーテル、ウレタンエステル又はウレタンカーボネートである。多面体又は「かご型」オリゴマーシルセスキオキサン中の反応性官能基Rの数は1〜12個、好ましくは1〜8個、2〜6個又は3〜5個で変動し得る。反応性官能基を含有しないR基は、非反応性基である。
【0017】
POSSかご型シルセスキオキサン部分の前述の構造を詳述する他の方法は、一般式Rn−mを含み、RはコーティングのUV誘引重合を可能にし得る反応性官能化学種であり、nは6、8、10、12又はそれ以上であり、mは1〜nであり、TはSiO1.5であり、Yは組成物中に存在する他の化学種との化学的適合性を容易にし得る非反応性化学種を表わす。例示的な実施形態では、シラン上の種々のR基は、同じでも又は異なっていてもよく、重合及び/又は架橋を可能にし得る反応性官能基であり、アクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルエーテル、チオール又はエポキシドを含む。Y基は、非反応性基、例えば、C〜C24の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル、脂肪族又は脂環式のエーテル又はポリエーテル、脂肪族又は脂環式のエステル又はポリエステル、脂肪族又は脂環式のシロキサン又はポリシロキサン、脂肪族又は脂環式のカーボネート又はポリカーボネート、脂肪族又は脂環式のフルオロカーボン又は他のハロカーボン、脂肪族又は脂環式のウレタンエーテル、ウレタンエステル又はウレタンカーボネートを含む。他の例示的な実施形態では、R基は、骨格の骨格鎖に沿って配置されているか、あるいは骨格の外に位置するペンダント基として配置されているかのいずれかである反応性化学種を有する低分子量のホモポリマー又はコポリマーである。
【0018】
他の実施形態では、R基は、2つ以上の反応性官能基、3つ以上の反応性官能基又は4つ以上の反応性官能基を含有する。二アクリル化及び三アクリル化基は、コーティングのUV誘引重合を可能にする反応性官能基の例である。
【0019】
例示的なPOSSシルセスキオキサン部分は、アクリレート及びメタクリレートの機能で機能化されたPOSSシルセスキオキサン(例えば、MA0701−アクリロイソブチルPOSS、MA0702−メタクリルイソブチルPOSS、MA0703−メタクリレートシクロヘキシルPOSS、MA0706−メタクリレートイソブチルPOSS、MA0716−メタクリレートエチルPOSS、MA0717−メタクリルエチルPOSS、MA0718−メタクリレートイソオクチルPOSS、MA0719−メタクリルイソオクチルPOSS、MA0735−メタクリルPOSSかご型混合物、MA0736−アクリロPOSSかご型混合物等又はそれらの組合せ)、エポキシ官能性で官能化されたPOSSシルセスキオキサン(例えば、EP0402−エポキシシクロヘキシルイソブチルPOSS、EP0408−エポキシシクロヘキシルPOSSかご型混合物、EP0409−グリシジルPOSSかご型混合物、EP0417−グリシジルエチルPOSS、EP0418−グリシジルイソブチルPOSS、EP0419−グリシジルイソオクチルPOSS、EP0423−トリグリシジルイソブチルPOSS、EP0430−オクタエポキシシクロヘキシルジメチルシリルPOSS、EP0435−オクタグリシジルジメチルシリルPOSS等又はそれらの組合せ)、チオール官能性で官能化されたPOSSシルセスキオキサン(TH1550−メルカプトプロピルイソブチルPOSS、TH1555−メルカプトプロピルイソオクチルPOSS等又はそれらの組合せ)、イソブチルアクリレート、二官能性ヘテロかご型、イソオクチルアクリレート、二官能性ヘテロかご型又はそれらの組合せである。前述のPOSS部分は全て、Hybrid Plastics社から市販されている。成分が室温で液状であるコーティングの配合物が望ましいが、これは、成分がブレンドしている間に溶融、溶解されることができ、又は光ファイバ上への塗布前に他の方法で液化されることができる限り、要求されない。固体(粉末又はワックス)ではなく、液体又はオイルであるPOSSシルセスキオキサンは、MA0718、MA0719、MA0735、MA0736、EP0408、EP0409、EP0423、EP0435及びTH1555を含む。
【0020】
他の例示的なUV硬化性シルセスキオキサンは、東亜合成社から市販されているSQシリーズのメンバーを含む。これらは、式1〜3におけるように、ランダム、はしご型、かご型及び部分かご型で構成されたシルセスキオキサン骨格構造体を利用している。反応性基に関して、東亜合成社は、ラジカル重合用のアクリロイル基(AC)及びメタクリロイル基(MAC)又はカチオン性重合用のオキセタニル基(OX)を提供している。オキセタニルは、4員の環状エーテルであるエポキシ官能基の部分集合を指す。東亜合成社からの特定のUV硬化性シルセスキオキサンは、アクリロ官能性タイプ(AC−SQ TA−100及びAC−SQ SI−20)、メタクリル官能性タイプ(MAC−SQ TM−100及びMAC−SQ SI−20)及びオキセタニルタイプ(OX−SQ TX−100、OX−SQ SI−20及びOX−SQ ME−20)を含む。SIタイプは、ポリジメチルシロキサン(シリコーン)単位をSQ骨格構造体の一部の中に導入する。
【0021】
かご型ポリシルセスキオキサン(PSQ)を利用する配合物において、コーティング組成物中に存在する個々のPOSS成分は、1〜12個、2〜8個、3〜6個及び4〜5個の反応性官能基を有していてもよい。一実施形態では、異なる数の反応性官能基をそれぞれ有する、1種類以上、好ましくは2種類以上のPOSS成分が、硬化前のコーティング組成物中に存在していてもよい。一実施形態では、コーティング組成物中のPOSS成分は、平均2〜10個の反応性官能基又は3〜6個の反応性官能基を有していてもよい。他の官能基は、所望の機能を実行し、又はコーティングに特定の特徴を付与するのに選択されてもよい。POSS部分は、コーティング組成物中において、コーティング組成物の総重量に基づいて、1〜98wt%、5〜50wt%又は10〜35wt%の量で使用される。
【0022】
上記のように、コーティング組成物は、UV硬化性シルセスキオキサンに加えて、組成物が1より大きい、好ましくは2より大きい、及び好ましくは3より大きい組み合わせられた平均官能性を有し得る更なる非シルセスキオキサンモノマー及び/又はオリゴマーを含んでもよく、これはコーティング組成物を架橋可能とする。モノマー及び/又はオリゴマーはコーティングのUV開始硬化を可能とし、下記化学分類:a)任意の非アクリレート共反応性成分(例えば、チオール、ビニルエーテル又はメタクリレート)を伴うフリーラジカル硬化性アクリレート、b)任意の非エポキシ共反応性部分(例えば、ヒドロキシル)を伴うカチオン硬化性エポキシ、及び/又はc)カチオン硬化性ビニルエーテルの中から選択される反応性官能基を有する。コーティング組成物に使用される例示的な多官能性アクリレートモノマーは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートのうちの1つ以上から選択される。単官能性及び多官能性アクリレートモノマーのブレンドが、必要に応じて使用されてもよい。芳香族基を有するシルセスキオキサン、反応性モノマー及び反応性オリゴマーを使用するのは、これらの基はUV光を著しく吸収するため、避けるのが望ましい。これらの成分の脂肪族、脂環式又はフッ化バージョンを使用するのが好ましい。
【0023】
一実施形態では、多官能性アクリレートモノマーは、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.5〜40wt%、好ましくは5〜25wt%の量で使用されてもよい。
【0024】
他の実施形態では、多官能性非シルセスキオキサンアクリレートオリゴマーは、フリーラジカル硬化性シルセスキオキサンとの組合せで使用される。多官能性非シルセスキオキサンアクリレートオリゴマーは、2以上の官能性を有するアクリレート化ウレタンを含む。例示的な実施形態では、アクリレート化ウレタンは、モノマーに加えて三官能性ウレタンアクリレート脂肪族オリゴマーを含む。これらは、アクリル酸又はメタクリル酸官能性が付与されるために処理されているポリウレタンである。それらは、オリゴマー当たり1〜10個、好ましくは2〜5個、及びより好ましくは3個のアクリレート又はメタクリレート官能性を有していてもよい。このようなアクリレート化ウレタンは、Sartomer社、BASF社、IGM Resins社、Croda社、Rahn社、UCB Radcure社、Allnex社及びUV硬化性材料の他のサプライヤから市販されている。例示的なオリゴマーは、PHOTOMER6210(IGM Resins社から入手)である。他の多官能性オリゴマー、例えば、非シルセスキオキサンエポキシオリゴマー及びビニルエーテルオリゴマーが、必要に応じてカチオン硬化性シルセスキオキサンと共に使用されてもよい。
【0025】
モノマー及びオリゴマーは、硬化させるのを目的とするのを除いて、UV光を著しく吸収しないように選択され、コーティング組成物を10〜100,000、好ましくは2,000〜5,000センチポイズの粘度、厚み25マイクロメートル及び波長248nmにおいて10%以上の硬化後のコーティング組成物のUV光透過率(すなわち、波長248nmにおいて0.04/μm未満のUV光吸光度)にするのに有効な量で添加される。一実施形態では、多官能性アクリレートオリゴマーは、コーティング組成物の総重量に基づいて、2〜98wt%、好ましくは60〜80wt%の量で使用されてもよい。
【0026】
光開始剤が、UV吸光度を最小化しながら、UV硬化性とするのに有効な量で使用されてもよい。光開始剤は、モノマー及びオリゴマーがアクリレート若しくはメタクリレート(フリーラジカル型用)又はエポキシド若しくはビニルエーテル(カチオン型用)であるかどうかに応じて、フリーラジカル型又はカチオン型となり得る。フリーラジカル光開始剤は、芳香族型又は脂肪族型となり得る。芳香族フリーラジカル光開始剤は、好ましくはコーティング組成物の総重量に基づいて、0.01〜0.2wt%で使用される。例示的な芳香族フリーラジカル型光開始剤は、IRGACURE(登録商標)819、IRGACURE TPO、IRGACURE1173、IRGACURE4265及びIRGACURE TPO−L(BASF社から市販されている)である。脂肪族フリーラジカル光開始剤は、好ましくは0.5〜5wt%で使用される。例示的な脂肪族フリーラジカル型光開始剤は、アダマンチルメチルケトン及びピナコロンを含む。カチオン性光開始剤は、好ましくはアルキル置換されているジアリールヨウ化物又はアルキル置換されているトリアリールスルホニウム塩である。芳香族カチオン性光開始剤は、好ましくはビニルエーテルについて0.03〜0.1wt%、及びエポキシについて0.1〜1wt%で使用される。例示的なカチオン性光開始剤は、Irgacure250及びIrgacure270(BASF社から市販されている)である。
【0027】
組成物は、塗布中及び組成物を硬化させてコーティングを形成した後に、コーティング組成物を光ファイバに結合させるのを容易にする任意のシランカップリング剤を更に含んでいてもよい。したがって、シランカップリング剤は、縮合して光ファイバとSi−O−Si結合を形成可能な少なくとも1つのアルコキシシラン基を有するのが望ましい。フリーラジカル硬化性配合物に適したシランの例は、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランである。カチオン性エポキシ硬化性配合物に適したシランの例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等又は前述のシランカップリング剤のうちの少なくとも1つを含む組合せである。フリーラジカル硬化系に好ましいシランカップリング剤は、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。グリシドキシ部分を有するシランは、エポキシ官能化されたシルセスキオキサンモノマーを利用するカチオン性重合に使用される。シラン含有ビニルエーテル反応性基を含有するシランも同様に、カチオン硬化性ビニルエーテルに基づく配合物に適している。
【0028】
シランカップリング剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.5〜3重量パーセント(wt%)の量で使用されてもよい。好ましい実施形態では、シランカップリング剤は、コーティング組成物の総重量に基づいて、1.0〜2.0重量パーセント(wt%)の量で使用されてもよい。
【0029】
組成物は、下記添加剤:開始剤、抗酸化剤、熱安定剤、UV安定剤、表面張力改質添加剤、滑剤又は前述の添加剤のうちの少なくとも1つを含む組合せのうちの1つ以上を更に含んでもよい。好ましい添加剤は、光開始剤及び有効期間安定剤である。
【0030】
組成物は、手動的に若しくは例えばマグネティックスラーラープレート上で単純に混合することによって、又は転倒回転によって、あるいは、例えば、回転攪拌シャフト上のプロペラブレードによって大量にブレンドされてもよい。熱は、必要なことも、必要でないこともある。成分が室温で液状でないか、又は粘度が高すぎる場合には、加熱が必要である。組成物は、典型的には、サイズが1マイクロメートル未満の微粒子を除去するためにろ過され、その後、光ファイバ上に配置され、硬化処理又は架橋処理を受ける。これらのコーティングの大部分は、光ファイバコーティングについての業界において広く知られているように、加圧コーティングアプリケータを使用して容易に塗布され得る。より低い粘度(10〜1000cP)を有するコーティングは、オープンカップアプリケータ又はLindholmの米国特許第6,958,096号で記載されたアプリケータを使用して塗布され得る。また、架橋前の組成物原料はそれぞれ、光ファイバをコーティングしている間に安定した処理を可能にするように、大気圧において比較的低い揮発性を有する。その「引火点」値は、一般的には70℃以上、好ましくは100℃以上である。コーティング組成物は、10〜100,000センチポイズ、好ましくは1,000〜20,000、及びより好ましくは2,000〜5,000センチポイズの、架橋前の粘度を有する。コーティング組成物は、非常に低いレベルの微粒子状物体(例えば、ゲル粒子)を含有し、1マイクロメートル(μm)未満、好ましくは約0.8μm以下のふるいサイズを使用してろ過することができる。コーティング組成物については、6ヶ月以上、好ましくは1年以上の有効期間を有するのが望ましい。
【0031】
コーティング組成物は、厚み25マイクロメートル及び波長248nmにおいて10%超のUV透過率、厚み25マイクロメートル及び波長248nmにおいて1未満のUV吸光度又は0.04/μm未満の光学吸光度を有する。コーティング組成物は、波長248nmにおいて厚み25マイクロメートルでの15%超のUV透過率、厚み25マイクロメートル及び波長248nmにおいて0.8未満のUV吸光度又は0.032/μm未満の光学吸光度を有する。一実施形態では、コーティング組成物は、波長248nmにおいて0.04/μm未満、好ましくは0.02/μm未満、及びより好ましくは0.01/μm未満のUV吸光度を有する。
【0032】
架橋は、一般的には電磁照射を使用して行われる。電磁照射は、紫外線(UV)照射、マイクロ波照射、電子ビーム照射又はそれらの組合せを含む。組成物を架橋させるのに好ましい形態の照射は、100〜400ナノメートル、好ましくは200〜365ナノメートルの波長を有する紫外線照射である。紫外線照射は、紫外線A、紫外線B、紫外線Cの照射の組合せ又は前述の形態の紫外線照射のうちの少なくとも1つを含む組合せでもよい。組成物の架橋は、光ファイバ上に配置された後に、1平方センチメートル当たり0.1〜15ジュール(J/cm)のエネルギー密度を有するUV照射線量を使用して行われてもよい。例示的な実施形態では、コーティング組成物は、10J/cm未満、及び好ましくは1J/cm未満のエネルギー密度を有するUV照射線量を使用して硬化され得る。硬化処理は、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、キセノン又は前述の不活性ガスのうちの少なくとも1つを含む組合せの存在下で行われてもよい。
【0033】
硬化させたコーティングは、光ファイバのガラス基材の屈折率よりも高く又は低くなるように適合され得る屈折率を有する。典型的には、コーティングの屈折率は約1.48であり、シリカの屈折率よりも大幅に高い。これにより、ベンディング中に光ファイバのコアから漏れるおそれがある不規則な光を、コーティングから離れるように導くことができる。コーティングの硬化膜は、光ファイバグレードシリカの破断伸びよりも大きい(5%よりも大きい、好ましくは15%よりも大きい)破断伸びを表わす。1秒当たり1ラジアンの周波数での動的発振引っ張り歪みを使用して測定された場合、(23℃)での弾性率は1〜2.5ギガパスカル(GPa)、好ましくは300〜1200メガパスカル(MPa)である。
【0034】
コーティングは、硬化させた際、約1.48〜約1.50の屈折率を有し、15%大きい破断伸び及び300〜1200MPaの23℃での弾性率を表わす。一実施形態では、コーティングは、100℃で20〜100MPaの弾性率を有するアクリレート系配合物である。他の実施形態では、コーティングは、100℃で70〜1200MPaの弾性率を有するエポキシ系配合物である。
【0035】
一実施形態では、ファイバは、85〜250℃の範囲の温度におけるダウンホール用途に使用されることを可能とする使用温度を有する。コーティングの硬化膜及び光ファイバ上で硬化させたコーティングは、湿気、蒸気及び一般的な溶媒(例えば、アセトン、イソプロパノール、炭化水素)に対して優れた抵抗性を表わす。例示的な場合には、コーティングの硬化膜及び光ファイバ上で硬化させたコーティングは、200〜350℃の範囲の温度(空気中で室温から10℃/分の速度で加熱された場合)において、3wt%未満、好ましくは0.5wt%以下の硬化後の最少アウトガスを表わす。硬化後の組成物の水性抽出物のpHが、7未満、好ましくは5未満となるように、組成物は低いアルカリ性を有するのが望ましい。特定の実施形態、例えば、医療用途についての実施形態では、コーティングされたファイバは、証明試験、例えば、USP Class VI及びISO10993製品分類に関する証明試験によって決定された場合、非毒性であり、生体適合性である。
【0036】
一実施形態では、コーティング組成物が光ファイバ上に配置され、硬化された後に、ファイバは、コーティングの除去を行わずにグレーティングの形成に供される。硬化されたコーティングは、248nmにおいて顕著な光透過率を有し、多くの場合、この波長でライティングされる。他の波長、特にUV範囲でのレーザによるライティングが可能である。UV誘引グレーティングは、ポリマーコーティングされたファイバに、ポリマーを除去することなく、かつコーティングによる著しいUV吸収を何ら伴わずに、サイドライティングされ得る。これは、ファイバグレーティングの高速での製造を可能にする点で有利である。ファイバグレーティングを製造する方法は、Aspell他の米国特許第5,620,495号に開示され、その内容全体は参照によりここに組み込まれる。硬化させたコーティングは非結晶であるため、低い光散乱を表わす。
【0037】
ここに開示されるコーティング組成物は、現在の脂肪族炭化水素系ウレタンアクリレートコーティングと比較して、UV透過率及びUV安定性を増加させ、より強いグレーティングのライティング及びより優れた光学デバイスを可能にする。また、本コーティング組成物は、熱安定性及び熱酸化安定性も増加させ、より高温でのエンドユース用途(例えば、油井におけるダウンホール)での配備を可能とする。本コーティング組成物は、歪みセンサに使用された場合、優れた熱機械安定性について、温度に対する弾性率を増加させる。さらに、本コーティング組成物は、(ここでも、より安定した歪みセンサのために)より小さい熱膨張係数を提供する。コーティングは、過酷又は高温/高湿環境での増加した機械的堅牢性について、増加したコーティング/ガラス接着を表わすように適合され得る。コーティングは、(他の市販のウレタンアクリレート光ファイバコーティングと比較した場合)比較的低いアミン含量及び低いヒドロキシル含量を有し、それにより水分に対して抵抗性となり、シリカに対する腐食性も非常に低くなる。コーティング組成物、コーティング及びそれらから得られたファイバを下記の非限定的な実施例により例示する。
【実施例】
【0038】
実施例1
これらの実施例は、選択された市販のPOSS多面体オリゴマーシルセスキオキサンの重要な光学特性を、UV透過率及び屈折率に関連して証明する。7つのPOSS材料が得られ、ペンダント基は本質的に脂肪族又は脂環式であり、反応性官能基はアクリレート、メタクリレート及びグリシドキシの中から選択された。
【0039】
表1は、本実施例に使用された7種類のポリシルセスキオキサンを示す。
【表1】
【0040】
表1は、8、10及び12個の官能基の混合物を有するシルセスキオキサン並びに1個の官能基を有する他のものを示す。1つの官能基を有するPOSS分子は、架橋されたコーティング組成物を生成しないため、他の多官能性分子を添加することなく、組成物に排他的に使用されることはない。したがって、架橋性混合物を得るために、それらを2つ以上の官能基を含有する他の分子とブレンドするのが望ましい。同様に、非常に高い官能性を有するPOSS分子の排他的な使用は、過度に脆く又は引っ掻きに影響を受けやすい、例えば、高強度シリカファイバ基材の破断伸びより低い破断伸びを有するコーティングをもたらすおそれがある。
【0041】
表1からの幾つかの未硬化POSSサンプル(室温で液状を有するサンプル)の吸光特性が測定された。結果を図1に示す。比較としての非シルセスキオキサンウレタンアクリレート系ライトスルーコーティング(WTC)であるAHF116は、OFS Fitel社により開発されたものであり、比較として使用された。各サンプルは、測定前に、PTFEスペーサを使用する2つの水晶ディスク間に入れられた25マイクロメートルの液体膜として試験された。各測定の前に、バックグラウンドスペクトルが水晶ディスク単独を使用して記録され、このバックグラウンドがサンプルのスペクトルから自動的に減算された。このようにして、測定は、サンプルビームが空気から水晶への界面及び水晶から空気への界面を通過する際に自然に生じる屈折損失について主に補償された。図1から、幾つかのPOSS部分(例えば、アクリレート又はメタクリレート反応性官能基を有するPOSS部分)は比較としてのライトスルーコーティングAHF116により吸収された波長付近の波長においてUVエネルギーを吸収する一方、他のPOSS部分(例えば、エポキシ反応性官能基を有するPOSS部分)は比較としてのライトスルーコーティングAHF116により吸収された波長より短い波長においてUVエネルギーを吸収することが分かる。このような脂肪族系POSS分子についての(特に248nm付近での)UV吸収の強度は、アクリレート官能性のレベルにより主に決定される。単官能性POSSメタクリレートはAHF116よりも低い強度で吸収する一方、より高い官能性POSSアクリレート及びメタクリレートかご型混合物はAHF116よりも高い強度で吸収する。アクリレート基中に存在する共役パイ結合を含まないEP0409エポキシ官能性POSS材料は、最も低いUV吸光度を表わす。
【0042】
屈折率値は30℃及び波長589nmにおいて測定され、これらも表1に含まれる。未硬化の状態では、単官能性メタクリレートはシリカの屈折率値より低い(589nmにおいて1.458よりも低い)か、又はその屈折率値に一致する屈折率値を有した一方で、より高い官能性POSS材料は全て、シリカの屈折率値より高い屈折率を有した。コーティングが光学クラッディングとして機能して光を導波するように設計される用途を除いて、より高い屈折率が、周知の光散乱技術を使用するコーティング/ガラスの同心性をモニタするリアルタイムプロセスを可能とするために、光ファイバ製造中においては好ましい。さらに、形状センサファイバを含めた多くのファイバ用途では、ベンディング中にファイバコアの外に留まるおそれのある不規則な透過光又は反射光を除去するために、硬化させた光ファイバコーティングの屈折率がシリカの屈折率を超えることが望ましい。アクリレート化材料の屈折率は硬化処理に応じて増加する傾向があるため、単官能性POSS成分であっても、硬化後にはシリカよりも高い屈折率を達成し得る。それにも関わらず、より高い屈折率を有するPOSS分子が、多くの場合、この特定の光学特性に関して最も好ましい。
【0043】
実施例2
表1からのPOSSアクリレート及びメタクリレート成分のブレンドが、コーティング配合物の性質、例えば、UV吸光強度、架橋の度合い及び屈折率を適合させる1つのアプローチとして探索された。更に遅い重合速度は望ましくない場合があるため、メタクリレートに対するアクリレートの1より大きいモル比を有するブレンドが、メタクリレートがアクリレートと比較して相対的に遅いホモ重合速度を表わすという一般知識を考慮し、UV吸光度を最小化するために、将来のWTC配合物が低レベルの光開始剤を使用する可能性があることも考慮して優先的に調査された。結果を表2a及び表2bに示す。市販のPOSSアクリレート化成分及びメタクリレート化成分のこれらのブレンドは、予想外に互いに低レベルの相互親和性を表わした。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例3
実施例2における、特定の市販のPOSS成分同士の乏しい相互親和性の発見に従って、一連の混合物が、非シルセスキオキサンアクリレート化モノマーをMA0736アクリロPOSSかご型混合物又は2つの粉末状POSS成分(MA0707、MA0703)のいずれかとブレンドすることにより調製された。イソボルニルアクリレートのIBOA(SR506A、Sartomer)及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレートのTCDDMDA(SR833、Sartomer)が、これらの試験用の希釈モノマーとして選択された。双方とも、低いUV吸光度をもたらすと予測される脂環構造体を含有する。双方とも、室温において高いガラス転移点(T)及び高い弾性率を付与することが知られている。イソボルニルアクリレートホモポリマーのTは94℃であると報告されており、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートホモポリマーのTは約180℃であると報告されている。さらに、1つのブレンドが、MA0736アクリロPOSSかご型混合物と、Alfa Aesar社からB23726として購入されたシラン接着促進剤である(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランとを使用して調製された。組成物及び得られた観察を表3に報告する。
【0046】
サンプル3A及び3Bは、50/50の比(wt/wt)で混合された場合、MA0736アクリロPOSSかご型混合物とIBOA又はTCDDMDA非POSSアクリレート化モノマーのいずれかとの良好な適合性を証明した。さらに、サンプル3Eは、2wt%のメルカプトシラン接着促進剤とブレンドされた場合、MA0736の良好な光学適合性を証明した。
【0047】
サンプル3Cは、IBOAと10/90の比(wt/wt)でブレンドされた場合、MA0701アクリロイソブチルPOSS粉末が可溶性であったことを証明した。混合物は、初期の混合に応じて最初は濁って見えたが、3日以内に光学的に透明になったことにより、及び6ヶ月後に良好な光学的透明性を維持したことにより、良好な適合性を示した。
【0048】
サンプル3Dにおいて、MA0703メタクリレートシクロヘキシルPOSS粉末が、IBOAと28/72の比(wt/wt)でブレンドされた。サンプル3Dは容易に溶解せず、混合物は室温で3日以内に分離したマクロ相であることが見出された。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例4
特定のPOSSアクリレート又はメタクリレート成分と非PSQアクリレートモノマーとをブレンドする実施例3での部分的な成功に従って、一連の混合物が、MA0735又はMA0736(メタ)アクリロPOSSかご型混合物のいずれかと、光ファイバコーティングとして商業的に使用されている2つの非PSQ UV硬化性アクリレート組成物のいずれかをブレンドすることにより調製された。本事例では、より高い粘度を達成することを目的とした。一方の光ファイバコーティングは、脂肪族ウレタンアクリレートに基づいて適切に低濃度の光開始剤を有するOFS社特注のライトスルーコーティングであるAHF116とした。他方の光ファイバコーティングは、信越MicroSi社により製造された市販のシリコーンアクリレート組成物であるOF−211とした。このコーティングは、非常に高いレベルの光開始剤を有すると推定され、比較的速い硬化速度をもたらすように配合されており、必ずしも高いUV透過率でないためである。ブレンドの組成を表4に開示する。
【0051】
サンプル4AはMA0735メタアクリルPOSSかご型混合物とAHF116との5/95(wt/wt)液体ブレンドが適合した(光学的に透明であった)ことを証明した一方で、サンプル4Bは同じ2つの成分の95/5ブレンドも混和性であったが、わずかに濁っていたことを証明した。サンプル4Cは、MA0736アクリロPOSSかご型混合物とAHF116との36/64(wt/wt)ブレンドが光学的に透明であり、混和性であったことを証明した。サンプル4Dは、MA0736とOF−211との5/95ブレンドであり、中程度の適合性を示した。ブレンドは、マクロ相分離しなかったが、幾らか光沢を示し、これは可視波長(400〜770nm)以上のサイズスケールと比例したサイズスケールにおけるマクロ相分離を表わすと解釈される。サンプル4Eは、MA0736とOF−211との32/68ブレンドであり、これも完全な混和性ではないようであった。サンプル4Hは、MA0736とOF−211との95/5ブレンドであり、最初はいくらか混和性でないようであった(光沢)が、時間とともに高い透明度となった。このサンプルは、混合後6ヶ月で観察された時点で光学的に透明であった。サンプル4Hの粘度はOF−211の粘度よりも高かく、初期の混合が妨げられた。
【0052】
簡易な調査が、表4中の配合物のUV硬化膜の可能性に関して行われた。液体が、ガラスプレート上に、Bird filmアプリケータを使用して拡げられ、150〜300マイクロメートルの範囲で制御された均一な膜厚を達成した。個々に、各液体膜は水晶の蓋が取り付けられた囲いに入れられ、各々が穏やかな窒素パージに約3分間曝された。その後、各膜は、囲いの中で、水銀ランプが取り付けられたUVPSベンチトップUV硬化システムを使用して課された1〜14J/cmの範囲で選択されたUV線量を使用して照射された。UV線量は、UV Power Puck(商標)照射計(EIT)を使用してモニタされた。サンプル4A及び4Bは硬化が成功せず、その遅い硬化は、AHF116中の比較的低レベルの光開始剤と、MA0735成分により付与されたメタクリレート基の一般的に遅い硬化速度とを組み合わせた影響によるものであった。サンプル4C(MA0736とAHF116との36/64ブレンド)は、十分に硬化して、べたつきのない膜を形成した。4C膜は、比較的硬く、脆かった。4C膜は、曲げるとAHF116の膜よりも容易に壊れた。サンプル4D(MA0736とOF−211との5/95ブレンド)は、十分に硬化して、比較的柔らかい膜を形成し、主な光ファイバコーティングと感じが似ており、FBG製造用の堅牢な外側コーティング又は単層コーティングとして使用するには十分に硬いとは考えられなかった。サンプル4E(MA0736とOF−211との32/68ブレンド)は、硬化させると「チーズのよう」であり、容易に砕け、小さい伸びを示した。サンプル4F(MA0736とOF−211との40/60ブレンド)は、その乏しい相互親和性のために、UV硬化を受けなかった。サンプル4G(MA0736とOF−211との90/10ブレンド)及びサンプル4H(MA0736とOF−211との95/5ブレンド)のUV硬化膜は双方とも、比較的硬く、脆かった。サンプル4Gの膜は著しく濁っていたが、サンプル4Hの膜は良好な光学的透明性を有していた。
【0053】
【表4】
【0054】
実施例5
この実施例は、二官能性POSSアクリレート成分を使用する配合物の概念及び最初の可能性試験を説明する。実施例2は、市販グレードの脂肪族及び脂環式POSSアクリレート化及びメタクリレート化成分が光学的に透明で、混和性のブレンドを形成する際に互いに普遍的に適合するとは限らないことを教示した。このようなPOSSグレードは、アクリレート官能性バージョンではなく、メタクリレート官能性バージョンにおいて現在まで主に市販されてきており、アクリレートはライトスルーコーティングにより好ましい。低レベルの光開始剤により、十分な硬化速度を達成する必要があるためである。また、市販のPOSSグレードは、現在まで主に単官能性のものであるため、架橋性組成物を配合する基準を満たすために、排他的に使用され得なかった。最初のスクリーニング試験に基づいて、MA0736アクリロPOSSかご型混合物(n=8、10、12)は、排他的に使用された場合、低すぎる伸び又は高すぎるUV吸光度を有する高度に架橋されたコーティングを生成すると予測された。要求に応じて、2つの特注の液状、脂肪族系POSSアクリレート化材料が調製され、Hybrid Plastics社によりOFS社に供給され、特注材料は中程度の官能性(二官能性)を包含するように合成された。一方の特注POSS材料は、IBA−2D、イソブチルアクリレート、二官能性ヘテロかご型と命名された。他方は、IOA−2D、イソオクチルアクリレート、二官能性ヘテロかご型と命名された。それぞれは、POSSかご型当たり約2個のアクリレート基の平均官能性を有するように設計された。POSSかご型の残ったコーナーの非反応性ペンダント基は、製品名によって示すように、イソブチル又はイソオクチルのいずれかであった。2つの材料のうち、IOA−2Dの最初のサンプルは光学的に透明であったが、IBA−2Dの最初のサンプルは相対的により濁っていた。
【0055】
一連の組成物は、表5に詳述したように、IOA−2D及びIBA−2D二官能性POSSアクリレートへテロかご型材料のいずれかを使用して調製された。類似の比較組成物は、MA0736アクリロPOSSかご型混合物を使用して調製された。主な目的は、特定タイプ及びレベルの光開始剤の存在下でホモポリマーとしてUV硬化させた場合における、各POSS成分の重要な特性をスクリーニングすることであった。1つの光開始剤は、Irgacure819、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィン酸化物(BAPOとしても公知)とした。BAPO光開始剤は低濃度において非常に反応性であることが知られており、その組成物のUV吸光度はUV露光に応じて低下する(光退色する)ことが一般的に知られており、WTCにおける使用に魅力的な光開始剤である。BAPOは室温で結晶性の固体であるため、BAPOは、サンプル5A、5D及び5Gに包含させる前に、まずIBOA中に3wt%のレベルで溶解された。使用された第2の光開始剤は、Irgacure1173、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンとした。Irgacure1173は、液体であり、組成物に包含させる際に、溶解を必要としないという利益を与える。更なる利益の中でも、Irgacure1173は、良好な表面硬化をもたらすことが知られるアルファ−ヒドロキシ型ケトンである。使用された第3の光開始剤は、Irgacure4265であった。Irgacure4265は、Irgacure1173とジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸化物(TPOとしても公知)との液体ブレンドである。Irgacure4265は、液状であること及び表面硬化についてのその支援に関するIrgacure1173の利益を提供する一方で、アシルホスフィン酸化物であるTPOの高い反応性及び光退色特性も提供する。
【0056】
IOA−2D二官能性POSSヘテロかご型に基づくサンプル5G、5H及び5Iは、混合後直ちに良好な光学的透明性を示した。同様に、より高い官能性のMA0736アクリロPOSSかご型混合物を使用するサンプル5A、5B及び5Cは、良好な光学的透明性を示した。IBA−2Dに基づくサンプル5D、5E及び5Fは、混和性であるが、わずかに濁っているようであった。サンプル5Jは、IOA−2DとMA0736との50/50ブレンドを含み、濁った外観を示した。サンプルの一部は、液体として4ヶ月間保持され、再度、視覚的外観について試験された。Irgacure819を含有するサンプル5A及び5Gは、静置させると著しく黄色掛かった。サンプル5C及び5Iは、表5の組成物の中でも、最も長い期間の光学的透明性を顕著に示し、最も低く視覚的に黄色掛かっていた。MA0736又はIOA−2D POSSアクリレートのいずれかと共にIrgacure4265を使用したためである。
【0057】
表5中の幾つかの組成物が、実施例4で記載された方法を使用して、膜を硬化させるのに使用された。Irgacure819を0.06重量%で含むサンプル5A、5D及び5Gは、UV硬化後に、比較的硬く、脆くなり、ガラス板から除去するのが幾らか困難であった。これらはそれぞれ、低い光開始剤レベル及び不十分な窒素パージに関連する幾らかの酸素阻害による上面上でのわずかなべたつきを示した。IBA−2D二官能性POSSアクリレートを使用するサンプル5Dは、より高いアクリレート官能性を有するMA0736アクリロPOSSかご型混合物を使用したサンプルAほどは著しく脆くなく、より可撓性であった。1重量%のIrgacure4265を使用するサンプル5F及び5Iも、硬化後に比較的脆いようであったが、表面のべたつきを示さなかった。これらのサンプルは、IBA−2D及びIOA−2D二官能性ヘテロかご型POSS成分をそれぞれ使用して配合した。サンプル5D及び5Gの比較におけるこれらの膜の表面硬化における改善は、酸素阻害を克服するのを補助する光開始剤の種類及び量の差によるものであった。
【0058】
【表5】
【0059】
実施例6
この実施例では、MA0736アクリロPOSSかご型混合物が、ここではUrAcrオリゴマーと呼ばれる市販の脂肪族ウレタントリアクリレートオリゴマーと、種々の(最も低いものでは0.2wt%未満)レベルの光開始剤でブレンドされた。まず、1つの光開始剤Irgacure819(BASF社)が、ブレンド前に、希釈モノマーSR506イソボルニルアクリレート(Sartomer)中に溶解された。他の光開始剤Irgacure4265は、その元々の液状で使用された。サンプル(6A、6B、6C、6D、6E、6F)が、表6に列記されたように調製された。全てのサンプルは、良好な光学的透明性により証明されたように、液状であるそれらの成分の中でも良好な適合性を示した。最初の4つのサンプルはIrgacure819を利用し、混合後に液体が幾らか黄色掛かったが、サンプル6E及び6FはIrgacure4265を利用し、それらの液体は比較的無色のままであった。
【0060】
サンプル6A(MA0736とUrAcrオリゴマーとの18wt/82wtブレンドを使用)及びサンプル6B(MA0736とUrAcrオリゴマーとの30wt/70wtブレンドを使用)は、実施例4で記載されたUV硬化膜を調製し、1平方センチメートル当たり1ジュールのUV線量を使用して照射された厚み6ミルの膜をもたらすのに使用された。6A及び6Bは双方とも、良好な光学的透明性、及びAHF116比較ライトスルーコーティングの同様の膜より高い剛性を有する膜を生成した。サンプル6A及び6Bの双方からの膜は、良好な可撓性を維持し、過度に脆くなく、表面のべたつきを示さなかった。
【0061】
サンプル6C、6D、6E及び6Fは、実施例1で記載したように、水晶ディスク間に厚み25マイクロメートルの膜としてアセンブリされた。光学吸光度値は、190〜1100nmの波長範囲にわたって、未硬化の液体について記録された。その後、膜アセンブリは、UVPSコンベアUV硬化システムを使用して1平方センチメートル当たり1ジュールのUV線量に露光された。再度、吸光スペクトルが記録された。その後に、サンプルの部分集合は、1平方センチメートル当たり7ジュールの総露光を達成するために、UVPSシステムを更に通過させて露光された。再度、吸光スペクトルが記録された。248nmのUV波長での種々のサンプルの光学吸光度についての値を表6にまとめる。表6は、比較基準であるライトスルーコーティングAHF116の膜についてのデータを含む。データは、アクリレート系配合物のUV吸光度がUV露光量により強力に影響され、液体から硬化状態に向かって低下することを証明する。UV吸光度は、光開始剤の種類及び量により更に影響を受ける。
【0062】
幾つかの硬化されたコーティング組成物の吸光スペクトルを図2に示す。図2は、比較組成物であるAHF116並びに(表6で示した)サンプル6C及び6Dについてのデータを含み、248nmでの比較可能なUV透過率を示す。バリエーションは、30wt%及び40wt%のPOSS分子MA0736を含有し、組成物の残りのバルクがUrAcrオリゴマーである混合物を含み、これは3の官能性を有する脂肪族非シルセスキオキサンウレタンアクリレートであり、それ自体がモノマー及びオリゴマーのブレンドである。図2から、比較サンプルAHF116の吸光特性及びPOSS分子MA0736を含有する本発明のサンプルの吸光度特性は低い光開始剤レベルにおいて全く同様であり、POSS分子がライトスルーモードで実際に使用され得る光ファイバをコーティングするのに使用されてもよいことを示すことが分かる。
【0063】
実施例7
この実施例は、エポキシ官能化POSS分子により主に行われた。エポキシ官能化分子は、EP0409グリシジル官能化POSSかご型混合物(n=8、10、12)とする。EP0409グリシジルPOSSかご型混合物は、カチオン性光開始剤Irgacure250(BASF社)と混合された。Irgacure250は、プロピレンカーボネート中に溶解された(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートの75重量%溶液を含む液体である。
【化5】
【0064】
2つの光開始剤レベル(コーティング組成物の重量に基づいてそれぞれ0.25百分率及び1百分率)が使用された。組成物を表7に記載する。サンプル7A(0.25phrのIrgacure250)及びサンプル7B(1phrのIrgacure250)が混合後1日で試験され、それらの液体は光学的に透明であることが観察された。
【0065】
実施例4におけるように、厚み6ミルの膜を、ガラス板上で樹脂を硬化させることにより調製する試みが行われた。しかしながら、硬化されたコーティングは、手では容易に除去され得なかった。その後、厚み6ミルの膜は、ガラス板に貼り付けられたシリコーンコート剥離紙のシート上で、UV硬化された。実施例4とは異なり、膜は硬化前に窒素パージに曝されず、それらは大気中で硬化された。エポキシは、アクリレートと同じ方法において、酸素阻害を受けないことが知られている。ただし、カチオン性硬化メカニズムは、周囲の湿気により影響され得る。サンプル7Aの膜は、1平方センチメートル当たり約1ジュールUV線量に曝露され、剥離紙から除去され得た。膜は柔らかく、比較的低い伸びを示し、その表面はべたついていた。サンプル7Aの他の膜は、1平方センチメートル当たり合計約3ジュールの3通りのUV露光経路で硬化された。より高いUV線量において、サンプル7Aは、比較的低い伸びも示したが、その表面はべたつかなかった。サンプル7Bの膜は、同様の方法で硬化された。1平方センチメートル当たり1ジュールで硬化されたサンプル7Bの得られた膜は、べたつきのない表面を有し、より高い光開始剤レベルの利益を証明する。1平方センチメートル当たり3ジュールで硬化された7Bの膜は剛性が高く、曲げた際に比較的脆いようであったが、膜は指の爪で引っかかれた際に壊れることなく耐えることができた。
【0066】
そして、サンプル7A及び7Bは、実施例6で記載された方法を使用して、水晶ディスク間での厚み25マイクロメートルの膜として試験された。248nmのUV波長でのサンプル7A及び7Bの光学吸光度についての値が、比較基準であるライトスルーコーティングAHF116の膜についてのデータと比較して表7にまとめられる。データは、エポキシ系POSS配合物の、より高いレベルで増加するUV吸光度が光開始剤の量によって影響されることを証明する。UV吸光度はUV露光量によっても影響され、液体から硬化状態への大きさが減少する。ただし、アクリレートコーティング中のC=C及びC=O結合が存在しないため、この影響はアクリレート配合物によるよりも著しくない。表7は、これにより、更により高いUV線量において吸光度が増加するように、UV吸光度がUV線量の量の関数として最小値又は最適値に達し得ることを証明する。この増加は、コーティングの光酸化に関連する黄色掛かり又はある種の非常に吸収性である光開始剤副生成物のいずれかによる。
【0067】
未硬化サンプル及び硬化サンプルの双方についての吸収スペクトルを図3に示す。吸光スペクトルは、硬化処理の前後で測定された。比較コーティングAHF116も参照として測定され、そのスペクトルを図1及び2に示す。硬化処理は、1J/cmのUV線量で行われた。図3から、エポキシ官能化POSS分子を含有するコーティング組成物は、比較サンプルより短い波長で概ね吸収することがわかるであろう。波長248nmにおいて、吸光度は光開始剤の量に強く依存するので、エポキシPOSS組成物は優れた、より低い光学吸光度を提供する能力を有する。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
実施例8
この実施例は、POSS分子を含むコーティング組成物の熱特性を証明するために行われた。そのデータを図4及び5に示す。図4及び5は、硬化膜の熱重量測定分析(例えば、重量減少vs温度)を示すグラフである。全てのサンプルは、熱重量測定分析中に、10℃/分の速度で空気中において加熱された。この試験のために、先の実施例からのUV硬化膜が使用された。図4中のサンプルは、下記を含む。
・サンプル4G(MA0736アクリロPOSSかご型混合物とOF−211シリコーンアクリレートコーティングとの90wt/10wtブレンド)
・サンプル5I(1wt%のIrgacure4265を含むIOA−2D二官能性POSSヘテロかご型)
・サンプル6B(MA0736とUrAcrオリゴマーの30wt/70wtブレンド、1.94phrのイソボルニルアクリレート中に溶解された0.06phrのIrgacure819を含む)
・サンプル7B(1phrのIrgacure250を含むEP0409グリシジルPOSSかご型混合物)
・AHF116非PSQウレタンアクリレート比較基準ライトスルーコーティング
図5中のサンプルは、下記を含む。
・サンプル4G
・サンプル6B
・AHF116
・OF−211シリコーンアクリレート光ファイバコーティング
・PyroCoat(商標)ポリイミド光ファイバコーティング(OFS社により製造された市販グレートのポリイミドコート光ファイバの一部として存在し、膜ではない)
【0071】
図4及び5中の膜は、見かけ上、厚み6ミルであり、1平方センチメートル当たり7ジュールを使用して硬化されたサンプル7Bを除いて、1平方センチメートル当たり1ジュールのUV線量を使用して硬化された。
【0072】
AHF116比較サンプルと比較して、MA0736アクリロPOSSかご型混合物とUrAcrオリゴマーとの30/70ブレンド(サンプル6B)及びEP0409グリシジルPOSSかご型混合物(サンプル7B)は、より高い温度で優れた熱安定性を示す。IOA−2D(イソオクチルジアクリレート)材料(サンプル5I)も、より高い温度で優れた熱安定性を示すが、より低い温度でより大きい減少を示した。MA0736とOF−211シリコーンアクリレートとのブレンド(サンプル4G)は、図4中のコーティングの中でも最も高い安定性を示した。
【0073】
図5は、OF−211シリコーンアクリレート及びPyroCoatポリイミドを含む、熱分解挙動(例えば、重量減少vs温度)を示すグラフである。ポリイミドコーティングの場合には、データはコーティングされた光ファイバを使用して取得され、コーティング重量はガラス重量を除去するのに正規化された。データは、OF−211の熱安定性におけるMA0736の向上効果を示す。
【0074】
熱重量測定分析は、J.Lightwave Technology(Stolov,Simoff)において、OFS社により公表された方法によってコーティング膜の「寿命」を推測するのに使用された。詳細を図6に示す。図6において、寿命は、25%の重量減少のいくらか恣意的な基準を使用して推測された。比較コーティング組成物であるAHF116と比較して、30wt%のMA0736POSSアクリレートを含むサンプル6B配合物は向上した安定性を示す一方で、エポキシPOSS配合物であるサンプル7BはAHF116と同程度の性能を示す。(IOA−2D)ジアクリレートPOSSヘテロかご型配合物であるサンプル5Iは、最も低い安定性を示した。図6から、エポキシ及びアクリレート官能化POSSを含有する幾つかの例示的なPOSSコーティングは、10℃/分の速度で空気中において加熱された場合、100℃超の温度で、さらに約150℃以上の温度でも、さらに約200℃以上の温度でも熱的に安定である。
【0075】
実施例9
この実施例は、特定のPOSS分子を含有する硬化膜の動的弾性率(貯蔵弾性率)を測定するように行った。表8は、試験された3つの本発明の材料の組成物(サンプル9A、9C及び9D)及び1つの比較材料の組成物(サンプル9B)を記載する。図7は、サンプル9A及び9Bの硬化膜の動的弾性率及びtanδ損失スペクトルを示す。POSS含有配合物(サンプル9A)は、平衡弾性率において、UV透過率においてマイナーペナルティーでサンプル9Bを3倍超上回る増加を示す。膜は1J/cmで硬化され、データは1rad/秒の発振周波数で収集された。
【0076】
【表8】
【0077】
図8は、EP0409グリシジルPOSSかご型混合物(エポキシ官能化シルセスキオキサン)に基づいて、本発明のサンプル9C及び9Dの比較における参照サンプル9Bの硬化膜の動的弾性率を示す。サンプル9C及び9Dは、2種類のカチオン性光開始剤充填を使用して配合及び硬化された。ここでも、POSS系配合物は、平衡弾性率の大幅な増加を示した。膜は、1J/cmで硬化され、1rad/秒の発振周波数を使用して試験された。最初に調製されたように、膜は硬化不足であることが見出された。最初のスキャン中の150℃の温度への加熱は硬化の進行を補助し、同じ膜の繰返しのスキャンのデータに示したように弾性率は更に増加した。このような現象は、UV硬化されたエポキシで生じることが知られている。コーティングがドロータワーに適用され、UV露光に応じて直ちに十分硬化されない場合には、硬化プロセスはUV照射露光後に熱硬化工程を含ませることにより有益である場合があることが示唆される。これは、熱オーブン又は無線周波数照射若しくはマイクロ波照射により照射されるオーブンを使用する線引き中にオンラインで行われ得る。
【0078】
実施例10
この実施例は、UV硬化性PSQ系コーティングを使用して製造された光ファイバを証明し、FBG及びFBGアレイがコーティングを使用してライティングされ得ることを証明するのに行われた。表9は、比較サンプル(サンプル10A)、及びコーティングがPSQを含む本発明のサンプル(サンプル10B)を示す。これら2つのコーティングの粘度はそれぞれ、温度制御のための水槽を循環させるTC−501、SC4−13R着脱式チャンバを有する小型のサンプルアダプタ及びSC4−21円筒形スピンドルを備えるBrookfield DV−IIデジタル粘度計を使用して測定された場合、36,000cP及び14,500cPであることが見出された。
【0079】
ファイバは、2種類のコーティングを使用し、下流マルチコア形状センサ用途のモデルとしての単一コアのシングルモードのプレフォームを使用して線引きされた。ファイバ開口数(NA)は0.21であり、見かけ上のファイバ形状は185マイクロメートルのコーティング直径を有する125マイクロメートルのガラスクラッドを含んだ。ファイバは、同じドロータワーにおいて、同一のプロセスレシピ(特に、同じコーティングダイサイズ、UVランプ設定及び線引き速度)を使用して線引きされた。ファイバは、波長248nmでのシングルレーザパルスを使用して、コーティングを通じてファイバコアへのFBGアレイをライティングする能力に関して評価された。グレーティングの強度及び収率は、全長約20メートルとしたFBGアレイについての相及び振幅基準を使用して評価された。コーティングサンプル10Bを有するファイバは、コーティングサンプル10Aを有するファイバと比較して線状欠陥(線状表面欠陥)を生じなかった。サンプル10Aは、同じ条件下で線引きされた場合、多くの重大な欠陥を示した。コーティングサンプル10Bを有するファイバの使用は、比較コーティングサンプル10Aからの収率が84.4%であったのと比較して、本発明のコーティングについては96.4%のFBG収率をもたらした。
【0080】
【表9】
【0081】
他のファイバは、2種類の線引き場所においてサンプル10A及び10B配合物を使用し、他のプレフォーム及び幾らか変更された線引きプロセスレシピ(他のダイサイズ、UVランプ条件及び線引き速度)使用して線引きされた。ある場合では、光開始剤濃度は、0.06〜0.2wt%の範囲内で変更された。FBGライティング試験において、PSQ改質コーティングを使用するグレーティング品質収率は、比較コーティングを用いるのと同等又はそれよりも良好であることが見出された。
【0082】
FBGをライティングするのに連続的なレーザエネルギー法も使用され、レーザの強度は、シングルパルスにおいてではなく、約2分の露光期間の間に適用された。この実施例では、プレフォームは、0.27の開口数(NA)を有した。グレーティングは、最初に相マスクを通してUVビームを通過させ、その後(約0.5マイクロメートルの周期を使用して、約1550ナノメートルの波長での反射性グレーティングを生じさせて)シングルモードのファイバコア中に周期的な屈折率変化を生じさせることにより、コーティングを通してガラスファイバ内にライティングされた。UVエネルギー密度は、コーティングを損傷させないように選択された。ライティング条件は、波長248ナノメートルにおける60ヘルツのレーザパルスを使用し、10ミリメートルの均一なグレーティング長にわたって、ファイバ上に1平方センチメートル当たり約25ミリジュールのレーザエネルギー密度で拡散させた。グレーティングは、このファイバ内に4.7dBの強度を有してライティングされ、これにより、マルチパルスグレーティングがPSQ改質コーティングを通じてライティングされ得たことが確認された。この事例では、グレーティング強度は、比較コーティングであるAHF116を使用する前述の類似のFBGについてのグレーティング強度よりもPSQ改質コーティングについてわずかに低く、これは、わずかに高いUV吸光度による可能性がある。
【0083】
サンプル10A及び10Bをコーティングして線引きされたファイバは、200℃での24時間等温曝露後のコーティング重量減少を測定することによって、耐熱性について試験された。サンプル10Aを有するファイバは、コーティングサンプル10Bを有するファイバがより少ない(26%)重量減少であったのと比較して、そのコーティング重量の44%を失った。
【0084】
ファイバが、EP0409グリシドキシPOSSかご型混合物及び約0.5重量%の光開始剤を利用したサンプル9Eをコーティングして線引きされた。十分に速い線引き速度において、コーティングは流動し、ガラスファイバを十分に(均一に)コーティングしたが、線引き時にわずかにべたついた。コーティングは、UVランプ露光を使用し、続けて穏和な熱オーブン(100〜200℃)を通過させて、部分的に硬化された。UV線量を増大させ、硬化レベルを増加させるために線引き速度が遅くされた場合、コーティングは球状になった。これは、比較的低い粘度によるものであった。処理の困難性は、例えば、i)光開始剤レベルを増加させることによって硬化の速度及び度合いを増加させること、ii)UVランプの数及び強度を増加させること、iii)熱オーブンを使用して、部分的に硬化されたコーティングを更に後処理すること(線引き中にオンラインで、又は線引き後のいずれかで)、及びiv)配合物に対する変化によってコーティングの粘度を増加させることを含む種々の戦略によって克服され得ることが知られている。
【0085】
実施例11
これらの実施例は、ランダム及びはしご型を含むPSQ構造体の混合物を有する選択された市販のポリシルセスキオキサンの重要な光学的及び機械的特徴を証明する。一連のUV硬化性成分は、東亜合成社から入手できると特定された(http://www.toagosei.co.jp/english/products/advanced/novel_material_sq_series.html)。このシリーズは、実質的に溶媒を含まないアクリレート官能基を有するフリーラジカル硬化性グレード(AC−SQ TA−100及びAC−SQ SI−20)を含んだ。このシリーズは、これも実質的に溶媒を含まないオキセタニル官能基に基づくカチオン硬化性グレード(OX−SQ TX−100、OX−SQ SI−20及びOX−SQ ME−20)も含んだ。このグレードの多くは、25℃における3,000〜50,000センチポイズの範囲の粘度及び1.46以上の硬化前屈折率で利用でき、光ファイバコーティングの配合物のための魅力的な候補となる。AC−SQ TA−100及びAC−SQ SI−20のサンプルが取得され、表10におけるように、UV硬化膜を調製するのに使用された。サンプル11A及び11Bは、高い硬度を有する膜を生成した。これらは、高い光開始剤充填のために、UV透過率について試験しなかった。サンプル11Cは、70重量%のAC−SQ TA−100と、低いガラス転移温度(−70℃)を有することが知られており軟化剤として作用し得る30重量%の希釈モノマーであるエトキシエトキシエチルアクリレート(EEEA)と、を使用して配合された。サンプル11Cは、樹脂100部当たり(phr)に0.2部のIrgacure819光開始剤を使用することにより硬化された。サンプル11Cは、表10にまとめるように、この低い光開始剤レベルを使用して容易に硬化し、良好なUV透過率(1平方センチメートル当たり1.2ジュールのUV線量を使用して硬化された厚み25マイクロメートルの膜について、波長248nmにおいて最大35%の透過率)を有する膜を生成した。未硬化の液体及び1平方センチメートル当たり300〜1200ミリジュールの範囲での連続的なUV露光後の膜について、水晶板間に挟まれたサンプル11Cの厚み50マイクロメートルの膜のUV透過スペクトルを図9に示す。
【0086】
【表10】
【0087】
結局、データは、POSS系シルセスキオキサンコーティングによってUV透過率、熱安定性、コーティング硬度及び耐摩耗性等の性能のある組合せに関して改善が可能となること確証する傾向にある。
【0088】
本開示は、例示的な実施形態を説明しているが、開示された実施形態の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ得ること、及び均等物がそれらの構成要素について置換えられ得ることが、当業者により理解されるであろう。加えて、多くの変更が、その本質的な範囲を逸脱することなく、本開示の教示に対して、特定の状況又は材料を適合させるのになされ得る。したがって、本開示は、本開示を実施するのに考慮されるベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されないことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9