特許第6442087号(P6442087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442087
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   F02M25/08 311H
   F02M25/08 311J
   F02M25/08 311A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-567496(P2017-567496)
(86)(22)【出願日】2016年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2016067084
(87)【国際公開番号】WO2017212580
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】嶺澤 頌吾
(72)【発明者】
【氏名】岸田 陽介
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−034909(JP,A)
【文献】 特開2009−144684(JP,A)
【文献】 特開2015−063971(JP,A)
【文献】 特開2015−086847(JP,A)
【文献】 特開2013−130084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
B01D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるキャニスタであって、
前記車両の燃料タンクに接続される流入ポートと、
前記車両の内燃機関の吸気流路に接続される流出ポートと、
前記キャニスタの内部と外部とを連通する大気ポートと、
前記大気ポートを開閉する弁と、
前記流入ポートから前記大気ポートへと向かう気体流路の最下流部であって前記弁の上流に配置され、前記燃料タンクからの蒸発燃料を吸着及び脱離可能であり、ハニカム構造を有する、少なくとも1つのハニカム構造体と、
前記弁と前記ハニカム構造体との間に配置され、前記弁と前記ハニカム構造体との距離を所定距離に保持するスペーサと、
を備え
前記スペーサは、外形が円状である正面壁部と、前記正面壁部の外縁に連続する円筒状の側壁部と、を有するキャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記少なくとも1つのハニカム構造体は、直列に配置された複数のハニカム構造体を有し、
互いに隣接する前記複数のハニカム構造体の間に配置され、弾性変形可能なフィルタである中間フィルタを更に備える、キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記スペーサの内部に配置されたフィルタである内フィルタを更に備える、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記スペーサは、前記気体流路の内壁面に密着される密着部を、当該スペーサの周方向に沿って複数有している、キャニスタ。
【請求項5】
請求項4に記載のキャニスタであって、
複数の前記密着部は、前記正面壁部の外縁から、前記側壁部の軸方向に沿った両方向のうち前記スペーサにおける前記正面壁部が設けられていない方の端部から設けられている方の端部へ向かう方向に沿って突出し、前記正面壁部から離れるほど前記スペーサの外側に広がる形状である、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されるキャニスタが開示されている。このキャニスタは、車両の燃料タンクに接続される流入ポートと、車両の内燃機関の吸気流路に接続される流出ポートと、キャニスタの内部と外部とを連通する大気ポートと、を備える。このキャニスタでは、停車時等に燃料タンクにおいて発生した蒸発燃料を含む空気が、流入ポートから大気ポートへと向かう気体流路に流入し、気体流路内に配置された粒状の活性炭等からなる吸着材に蒸発燃料が吸着される。そして、内燃機関の稼働時にキャニスタを通して吸気が行われることにより、大気ポートから導入された空気によってキャニスタ内がパージされ、吸着材に吸着された蒸発燃料が吸着材から脱離されて、流出ポートを介して内燃機関の吸気流路に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−127603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のキャニスタでは、吸着材として、燃料タンクからの蒸発燃料を吸着及び脱離可能である、ハニカム構造を有する、ハニカム構造体が用いられる場合がある。ハニカム構造体は、一般に柱状の形状を有しており、軸方向に沿って複数の貫通孔が形成されている。このハニカム構造体は、上記気体流路の最下流部であって大気ポートを開閉する弁の上流に配置されることが考えられる。
【0005】
しかしながら、このようなキャニスタでは、パージ実行中において空気が弁を通り過ぎる際に空気の流れが乱れる傾向にあり、空気はハニカム構造体の端面に対して偏って流入しやすい。このため、ハニカム構造体の貫通孔によって空気の流入量に偏りが生じやすく、空気の流入量が少ない孔については、蒸発燃料の脱離が充分に行われず、ハニカム構造体に吸着された蒸発燃料の脱離効率が低下してしまう。
【0006】
本開示の一局面は、弁を通り過ぎた空気がハニカム構造体の端面に対してより均等に流入しやすいキャニスタを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両に搭載されるキャニスタであって、流入ポートと、流出ポートと、大気ポートと、弁と、少なくとも1つのハニカム構造体と、スペーサと、を備える。流入ポートは、車両の燃料タンクに接続される。流出ポートは、車両の内燃機関の吸気流路に接続される。大気ポートは、キャニスタの内部と外部とを連通する。弁は、大気ポートを開閉する。ハニカム構造体は、流入ポートから大気ポートへと向かう気体流路の最下流部であって弁の上流に配置され、燃料タンクからの蒸発燃料を吸着及び脱離可能であり、ハニカム構造を有する。スペーサは、弁とハニカム構造体との間に配置され、弁とハニカム構造体との距離を所定距離に保持する。
【0008】
このような構成によれば、弁を通り過ぎてキャニスタ内に流入した空気が、スペーサによって保持された弁とハニカム構造体との間の所定距離の空間を流れる過程で均一に拡散されやすい。したがって、空気がハニカム構造体の端面に対してより均等に流入するようにすることができる。
【0009】
本開示の一態様は、少なくとも1つのハニカム構造体が、直列に配置された複数のハニカム構造体を有し、互いに隣接する複数のハニカム構造体の間に配置され、弾性変形可能なフィルタである中間フィルタを更に備えていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、複数のハニカム構造体全体の大きさのばらつきを抑制することができる。すなわち、個々のハニカム構造体の大きさにはばらつきがあり、複数のハニカム構造体が直列に配置されると、全体としての大きさのばらつきは更に大きくなり得る。この点、上記構成によれば、複数のハニカム構造体の間に配置された中間フィルタの弾性変形により、複数のハニカム構造体の全体としての大きさのばらつきを抑制することができ、スペーサをより無理なく気体流路に組み付けることができる。
【0011】
本開示の一態様は、スペーサの内部に配置されたフィルタである内フィルタを更に備えていてもよい。
このような構成によれば、内フィルタにより、例えば、ハニカム構造体が欠けたときの破片が弁へ流れ込むことを抑制することができる。また、内フィルタはスペーサの内部に配置されているため、ハニカム構造体が内フィルタに直接当接することにより内フィルタが圧縮されてしまうことを抑制することができる。
【0012】
本開示の一態様は、スペーサが、気体流路の内壁面に密着される密着部を、当該スペーサの周方向に沿って複数有していてもよい。
このような構成によれば、スペーサの振動音を抑制することができる。すなわち、気体流路の流通方向に直交する方向へのスペーサの移動が規制されない構成では、車両振動に伴い、スペーサが気体流路の流通方向に直交する方向に振動し、振動音が発生することがある。これに対して、上記構成のようにスペーサが密着部を有する場合、スペーサの気体流路の流通方向に直交する方向への移動が規制される。したがって、スペーサの振動音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のキャニスタの内部構造図である。
図2】スペーサの正面図である。
図3】スペーサの側断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1…キャニスタ、10…容器、11〜13…筒部、14,15…蓋部材、17,18…連通路、21…流入ポート、22…流出ポート、23…大気ポート、24〜28…フィルタ、51,52…吸着材、60…ベントシャット弁、61,62…ハニカム構造体、63…中間フィルタ、64…スペーサ、161〜163…室、651〜653…当接部、654〜656…密着部、657…内フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
[1.構成]
図1に示すように、本実施形態のキャニスタ1は、合成樹脂製の容器10を備える。容器10は、3つの筒部である第1筒部11、第2筒部12及び第3筒部13を備える。第1筒部11、第2筒部12及び第3筒部13は、横一列に並んで配置されている。第2筒部12は、第1筒部11及び第3筒部13の間に位置している。第1筒部11は、第2筒部12及び第3筒部13よりも径が大きい。第1筒部11及び第2筒部12の同じ側の端部は、蓋部材14によって覆われている。第2筒部12及び第3筒部13の同じ側の端部であって蓋部材14と反対側の端部は、蓋部材15によって覆われている。
【0016】
容器10の内部は、複数の室161〜163に区画されている。第1室161は、第1筒部11内に形成されている。第2室162は、第2筒部12内に形成されている。第3室163は、第3筒部13内に形成されている。第1室161は、第2室162及び第3室163よりも容積が大きい。
【0017】
第1室161及び第2室162は、第1連通路17によって連通している。第1連通路17は、容器10内に形成される空間であって、蓋部材14で筒部11,12を覆ったときに、蓋部材14に隣接して形成される空間である。
【0018】
同様に、第2室162及び第3室163は、第2連通路18によって連通している。第2連通路18は、容器10内に形成される空間であって、蓋部材15で第2筒部12及び第3筒部13の端部を覆ったときに、蓋部材15に隣接して形成される空間である。このように構成された本実施形態のキャニスタ1では、第1室161から第1連通路17を介して第2室162、さらに第2連通路18を介して第3室163に至るS字状の流路が容器10内に形成されている。
【0019】
第1筒部11における蓋部材14で覆われていない方の端部は閉じられている。第1筒部11における当該端部を閉じている部分の外側の端面上には、第1筒部11の軸方向に沿って延びる流入ポート21及び流出ポート22が、筒部11〜13の並び方向に沿って並設されている。流入ポート21は、車両の燃料タンクにチェック弁を介して接続されるポートである。流入ポート21は、燃料タンクから流れてくる空気を第1室161内に導入する。燃料タンクから流れてくる空気には、蒸発燃料が含まれている。流出ポート22は、内燃機関の吸気流路にパージ弁を介して接続されるポートである。キャニスタ1では、内燃機関の負圧により車外から流入した空気により、吸着材に吸着した蒸発燃料を脱離するパージが実行される。流出ポート22は、パージ実行中において、第1室161を介して流れてくる空気を吸気流路に流入させる。第1室161を介して流れてくる空気には、後述する吸着材51等から脱離された蒸発燃料が含まれている。
【0020】
一方、第3筒部13における蓋部材15で覆われていない方の端部は閉じられている。第3筒部13の軸方向周りの壁部における当該端部近傍の部分の外側の端面上には、第3筒部13の軸方向に直交する方向に沿って延びる大気ポート23が設けられている。大気ポート23は、キャニスタ1の内部と外部とを連通するポートである。大気ポート23は、第3室163を介して流れてくる空気をキャニスタ1の外部に放出する。吸着材51等に蒸発燃料が吸着されることによって、第3室163を介して流れてくる空気からは蒸発燃料が除去されている。
【0021】
第1室161における流入ポート21及び流出ポート22側の端には、フィルタ24,25が設けられている。第1室161における蓋部材14側の端には、フィルタ26が設けられている。また、第2室162における蓋部材14側の端には、フィルタ27が設けられている。第2室162における第2連通路18側の端には、フィルタ28が設けられている。本実施形態では、フィルタ24〜28はいずれもスポンジである。一方、第3室163には、後述するスペーサ64が設けられている。
【0022】
第1筒部11における蓋部材14側のフィルタ26には、多孔板であるグリッド31が併設されている。グリッド31と蓋部材14との間には、コイルバネ41が設置されている。また、第2筒部12における蓋部材14側のフィルタ27には、多孔板であるグリッド32が併設されている。グリッド32と蓋部材14との間には、コイルバネ42が設置されている。コイルバネ41,42がそれぞれグリッド31,32を押圧するので、第1室161内に吸着材51が保持され、第2室162内に吸着材52が保持される。本実施形態では、吸着材51,52は、活性炭を主成分とする粒状の吸着材である。第1室161及び第2室162は、吸着材51,52でそれぞれ充填されている。
【0023】
第3室163における蓋部材15で覆われていない方の端部側には、ベントシャット弁60が設けられている。ベントシャット弁60は、図示しない電子制御装置によりその作動が制御される電磁弁であり、パージ実行中並びに後述する給油状態及び非給油状態において開弁される。なお、ベントシャット弁60は、燃料系システムに燃料の漏れなどの異常がないかが診断される際、電子制御装置により開閉される。
【0024】
ベントシャット弁60は、大気ポート23に近接して配置されており、大気ポート23を開閉する機能を有している。図1では、ベントシャット弁60については、外形のみが示され、内部構造は示されていない。なお、図1におけるベントシャット弁60に施されたハッチングは断面を表すものではない。
【0025】
第3室163には、燃料タンクからの蒸発燃料を吸着及び脱離可能である、ハニカム構造を有する2つのハニカム構造体61,62が配置されている。換言すれば、流入ポート21から大気ポート23へと向かう気体流路(以下、単に「気体流路」という。)の最下流部であってベントシャット弁60の上流にハニカム構造体61,62が配置されている。ハニカム構造体61,62は、柱状の形状を有しており、軸方向に沿って複数の貫通孔が形成されている。本実施形態では、ハニカム構造体61,62は活性炭を主成分とする。
【0026】
2つのハニカム構造体61,62は、ハニカム構造体61の方が気体流路の下流に位置するように互いに隣接して直列に配置されている。気体流路の上流に位置するハニカム構造体62は、第3室163と第2連通路18との間の壁部にラバー65を介して間接的に当接しており、位置決めされている。
【0027】
ハニカム構造体61,62の間には、中間フィルタ63が気体流路を塞ぐように配置されている。このため、ハニカム構造体61,62の間を流れる気体のすべてが、中間フィルタ63を通過する。中間フィルタ63は、弾性変形可能であり、本実施形態ではスポンジである。中間フィルタ63は、ラバー66を介してハニカム構造体61と間接的に当接し、ラバー67を介してハニカム構造体62と間接的に当接している。
【0028】
ベントシャット弁60とハニカム構造体61との間には、スペーサ64が配置されている。スペーサ64は、ベントシャット弁60とハニカム構造体61との距離を所定距離に保つための剛体の樹脂製の部品である。スペーサ64とハニカム構造体61とは、ラバー68を介して間接的に当接している。スペーサ64とベントシャット弁60とは、他の部材を介さず直接的に当接している。
【0029】
スペーサ64は、図2及び図3に示すように、外形が円状である正面壁部641と、正面壁部641の外縁に連続する円筒状の側壁部642と、を有している。
正面壁部641は、2つの円環状の部位である外側円環部643と内側円環部647とを有している。外側円環部643は、内側円環部647よりも大きな外径を有し、側壁部642に連続している。内側円環部647は、3本のリブ644〜646を介して外側円環部643と接続され、外側円環部643の内側に位置している。
【0030】
スペーサ64は、正面壁部641の外縁部から、側壁部642の軸方向に沿った両方向のうち第1の方向に沿って突出した3つの当接部651〜653及び3つの密着部654〜656を有している。ここでいう第1の方向とは、スペーサ64における正面壁部641が設けられていない方の端部から設けられている方の端部へと向かう方向である。
【0031】
当接部651〜653及び密着部654〜656は、スペーサ64の周方向に沿って交互に形成されている。ここでいうスペーサ64の周方向とは、スペーサ64がキャニスタ1に備えられている状態において気体流路の流通方向を中心とする周方向であり、具体的には、側壁部642の軸方向を中心とする周方向である。密着部654〜656は、当接部651〜653よりも幅が広い。
【0032】
当接部651〜653は、密着部654〜656よりも第1の方向に沿って長く突出している。また、密着部654〜656は、正面壁部641から離れるほどスペーサ64の外側に広がる形状である。
【0033】
スペーサ64は、第3筒部13における蓋部材15で覆われていない方の端部から、スペーサ64における正面壁部641が形成されている方の端部が気体流路の下流となるように、気体流路に挿入される。スペーサ64が気体流路に挿入される際、密着部654〜656が気体流路の内壁面から外力を受けてスペーサ64の内側に傾くように変形する。そして、密着部654〜656が元の形状に戻ろうとする復元力で、気体流路におけるスペーサ64の位置が固定される。換言すれば、スペーサ64は、気体流路に圧入固定されている。このため、密着部654〜656の外面は、気体流路の内壁面に密着している。
【0034】
また、スペーサ64は、当該スペーサ64の内部に配置されたフィルタである内フィルタ657を備える。内フィルタ657は、円盤状のスポンジであり、気体流路を塞ぐように配置されている。具体的には、スペーサ64の側壁部642の内壁面には小突起658が形成されている。内フィルタ657は、正面壁部641と小突起658との間に小突起658に掛止されるように配置されている。この内フィルタ657により、ハニカム構造体61が欠けたときの破片がベントシャット弁60へ流入することが抑制される。
【0035】
以下では、給油状態及び非給油状態におけるキャニスタ1の作用について説明する。
内燃機関が稼働しておらず、給油も行われていない状態では、燃料タンク内では燃料の一部が自然に蒸発する。そして、自然に蒸発した蒸発燃料を含む空気が、燃料タンクからキャニスタ1に流入する。このような状態を、以下「非給油状態」という。
【0036】
一方、内燃機関が稼働しておらず、給油が行われている状態では、給油されている燃料の勢いに押され、蒸発燃料を含む空気が燃料タンクからキャニスタ1に勢いよく流入する。このような状態を、以下「給油状態」という。
【0037】
非給油状態では、蒸発燃料を含む空気が、燃料タンクから流入ポート21を介して第1室161に導入される。第1室161に導入された蒸発燃料を含む空気は、フィルタ24を通り、第1室161内の吸着材51が充填された空間を通過する。通過の際、蒸発燃料が吸着材51に吸着される。
【0038】
第1室161で吸着されなかった蒸発燃料を含む空気は、フィルタ26を通って第1連通路17を通り、フィルタ27を通って第2室162に導入される。第2室162に導入された蒸発燃料を含む空気は、第2室162内の吸着材52が充填された空間を通過する。通過の際、蒸発燃料が吸着材52に吸着される。
【0039】
第2室162で吸着されなかった蒸発燃料を含む空気は、フィルタ28を通って第2連通路18を通り、第3室163に導入される。第3室163に導入された蒸発燃料を含む空気は、第2室162内のハニカム構造体62、中間フィルタ63及びハニカム構造体61をこの順に通過する。通過の際、蒸発燃料がハニカム構造体61,62に吸着される。
【0040】
非給油状態では、ベントシャット弁60は開かれている。このため、蒸発燃料が除去された空気は、ベントシャット弁60を通り過ぎ、大気ポート23からキャニスタ1の外部に放出される。
【0041】
一方、給油状態では、蒸発燃料を含む空気が燃料タンクから流入ポート21を介して第1室161に導入される。導入された空気は、その後、非給油状態と同様に第3室163まで導入される。この際、導入された空気に含まれる蒸発燃料は、吸着材51,52及びハニカム構造体61,62によって吸着される。給油状態では、ベントシャット弁60は電子制御装置によって開かれている。このため、蒸発燃料が除去された空気は、ベントシャット弁60を通り過ぎ、大気ポート23からキャニスタ1の外部に放出される。
【0042】
次に、内燃機関が稼働しているときのキャニスタ1の作用、いわゆるパージについて説明する。
内燃機関の稼働中には、ベントシャット弁60は電子制御装置によって開かれている。そして、内燃機関の負圧により、キャニスタ1の外部の空気が大気ポート23から第3室163に導入される。導入された空気は、ハニカム構造体61から燃料を脱離させた後、中間フィルタ63を通り、ハニカム構造体62から燃料を脱離させる。その後、脱離した燃料を含んだ空気は、第2連通路18を通りフィルタ28を通って、第2室162に導入される。
【0043】
第2室162に導入された燃料を含んだ空気は、第2室162の吸着材52からも燃料を脱離させる。そして、燃料を含んだ空気は、第2室162からフィルタ27、第1連通路17及びフィルタ26をこの順に通って第1室161に導かれる。第1室161内でも同様に、吸着材51から燃料が脱離される。その後、燃料を含んだ空気は、流出ポート22及びパージ弁を介して内燃機関の吸気流路に流入する。
【0044】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、ベントシャット弁60とハニカム構造体61との間にスペーサ64が配置され、ベントシャット弁60とハニカム構造体61との距離が所定距離に保持されている。このため、ベントシャット弁60を通り過ぎてキャニスタ1内に流入した空気が、スペーサ64によって保持されたベントシャット弁60とハニカム構造体61との間の所定距離の空間を流れる過程で均一に拡散されやすい。よって、空気がハニカム構造体61の端面に対してより均等に流入するようにすることができる。その結果、ハニカム構造体61、ひいては後続するハニカム構造体62の貫通孔によって空気の流入量に偏りが生じることを抑制することができる。よって、ハニカム構造体61,62に吸着された蒸発燃料の脱離効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0045】
(2)本実施形態では、2つのハニカム構造体61,62は直列に配置されている。また、互いに隣接するハニカム構造体61,62の間には、弾性変形可能な中間フィルタ63が設けられている。したがって、2つのハニカム構造体61,62全体の大きさのばらつきを抑制することができる。つまり、2つのハニカム構造体61,62の全長(ハニカム構造体62におけるより気体流路の上流に位置する方の端面からハニカム構造体61におけるより気体流路の下流に位置する方の端面までの長さ)のばらつきを抑制することができる。
【0046】
すなわち、個々のハニカム構造体61,62の大きさにはばらつきがあり、ハニカム構造体61,62が直列に配置されると、全体としての大きさのばらつきは更に大きくなり得る。この点、本実施形態では、2つのハニカム構造体61,62の間に配置された中間フィルタ63の弾性変形により、2つのハニカム構造体61,62の全体としての大きさのばらつきを抑制することができ、スペーサ64をより無理なく気体流路に組み付けることができる。
【0047】
(3)本実施形態では、スペーサ64の内部に内フィルタ657が設けられている。したがって、内フィルタ657により、ハニカム構造体61が欠けたときの破片がベントシャット弁60へ流れ込むことを抑制することができる。また、内フィルタ657はスペーサ64の内部に配置されているため、ハニカム構造体61が内フィルタ657に直接当接することにより内フィルタ657が圧縮されてしまうことを抑制することができる。
【0048】
(4)本実施形態では、スペーサ64は、気体流路の内壁面に密着される密着部654〜656を、当該スペーサ64の周方向に沿って複数有している。このため、スペーサ64の気体流路の流通方向に直交する方向への移動、具体的には、スペーサ64の気体流路の径方向への移動が規制される。したがって、スペーサ64が気体流路の流通方向に直交する方向に振動することによる振動音を抑制することができる。
【0049】
[3.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0050】
(1)上記実施形態では、キャニスタ1は2つのハニカム構造体61,62を備えているが、ハニカム構造体の数はこれに限られるものではない。ハニカム構造体の数は1又は3以上であってもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、キャニスタ1は中間フィルタ63及び内フィルタ657を備えているが、中間フィルタ及び内フィルタの設置の有無はこれに限られるものではない。中間フィルタ及び内フィルタのうちの少なくとも一方が、キャニスタに設置されていなくてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、スペーサ64は、ハニカム構造体61とはラバー68を介して間接的に当接し、ベントシャット弁60とは他の部材を介さず直接的に当接しているが、スペーサとハニカム構造体及びベントシャット弁との当接の構造はこれに限られるものではない。スペーサは、例えば、ハニカム構造体とは他の部材を介さず直接的に当接してもよく、また、ベントシャット弁とはラバーなどの他の部材を介して間接的に当接してもよい。
【0053】
同様に、上記実施形態では、中間フィルタ63はラバー66,67を介して間接的にハニカム構造体61,62と当接しているが、中間フィルタとハニカム構造体との当接の構造はこれに限られるものではない。中間フィルタは、例えば、2つのハニカム構造体のうちの少なくとも一方と他の部材を介さず直接的に当接していてもよい。
【0054】
(4)上記実施形態では、フィルタ24〜28、中間フィルタ63及び内フィルタ657はスポンジであるが、フィルタ、中間フィルタ及び内フィルタの素材はこれに限られるものではない。これらのフィルタは、例えば、不織布等であってもよい。
【0055】
(5)上記実施形態では、キャニスタ1は、3つの筒部11〜13を備え、内部にS字状の流路が形成されているが、キャニスタの構成はこれに限られるものではない。キャニスタは、例えば、2つの筒部を備え、内部にU字状の流路が形成されていてもよい。
【0056】
(6)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
図1
図2
図3