特許第6442095号(P6442095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 後閑 始の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6442095
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】リニア水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 1/02 20060101AFI20181210BHJP
   F03B 7/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   F03B1/02
   F03B7/00
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-44764(P2018-44764)
(22)【出願日】2018年3月12日
【審査請求日】2018年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-181769(P2017-181769)
(32)【優先日】2017年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510204219
【氏名又は名称】後閑 始
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】後閑 始
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−151871(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3174549(JP,U)
【文献】 特開2014−070555(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3185257(JP,U)
【文献】 米国特許第4043702(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/02
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配を有して流水が流れる流水路と、
前記流水路内に、当該流水路の延在方向に間隔を置いて配置された複数の水車と、
前記水車によって駆動される発電機と、を有し、
前記水車は、
前記流水路の幅方向に延在する回転軸と、
前記回転軸の周方向に間隔を置いて配置された複数のバケットと、
を有し、
前記流水路の水深は、前記バケットが前記流水に浸水する深さの2倍以上であり、
又は、
前記流水路を通過する水量は、前記バケットの水流妨害抵抗分の水量の2倍以上である、リニア水力発電装置において、
前記水車は、前記バケットの幅方向両側に支持板を更に有し、
前記支持板は、それぞれ、前記バケットの幅方向両側に固定されており、
更に、前記水車は、前記回転軸の周方向に隣接して配置された2つのバケットの間に、一方の前記バケットの径方向内側端部又は前記バケットから前記回転軸に向かって延在するバケット補助板の径方向内側端部と、他方の前記バケットの径方向外側端部との間を延在する流水跳ね返し部を有している、リニア水力発電装置
【請求項2】
前記バケットの受圧面は、前記回転軸の軸方向視で、流体の流れ方向に向かって半円筒形に湾曲した受圧面である、請求項1に記載のリニア水力発電装置。
【請求項3】
前記バケットは、前記回転軸の軸方向視で、当該バケットの先端部に直線形の受圧面を有する、請求項1又は2に記載のリニア水力発電装置。
【請求項4】
前記流水跳ね返し部は、前記一方の前記バケットの前記径方向内側端部と、前記他方の前記バケットの前記径方向外側端部とに連結されており、前記回転軸の周方向に隣接して配置された2つのバケットの間に形成された、当該流水跳ね返し部に対応する隙間を閉じている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリニア水力発電装置。
【請求項5】
前記水車は、前記回転軸の周方向に延在して前記バケットの先端のそれぞれを一体に固定するバケット補強部を更に有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のリニア水力発電装置。
【請求項6】
前記流水路は、流体の流入を遮断する流体流入遮断部を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のリニア水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア水力発電装置に関するものである。リニア水力発電装置は、例えば、河川、用水路等の、横流の水流の水勢力エネルギーを主として活用し、流水路の延在方向に間隔を置いて配置された複数の水車がそれぞれ、各発電機を駆動させるものである。言い換えれば、本発明に係るリニア水力発電装置は、複数の水車発電機を流水路の延在方向に間隔を置いて配置し、各水車発電機の電力を集積して総合電力を生産する、長列の連続水流発電装置である。
【背景技術】
【0002】
安全性(原子力発電等の危険発電を抑止する)、地球温暖化等の問題から、近年、地球環境にやさしい水力発電装置が必要視されてきた。従来の水力発電装置としては、ダム等の貯水エネルギーを利用し、当該貯水の落下により水車を回転させるものであった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−172948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように、従来の水力発電装置は、位置エネルギーによる水力発電機一色であり、流水によって連続的に電力を発生させるために、流水の横流水流エネルギーを活用するものとは全く無関係であった。即ち、従来の水力発電装置は、主として高所からの水勢力の落下エネルギー(位置エネルギー)のみを利用したものである。このため、従来の水力発電装置には、水力発電装置の施設場所が高低差の大きなダム周辺等に制限されるという問題がある。また、こうした従来の水力発電装置の場合、主として高い発電能力を想定している。このため、従来の水力発電装置には、水力発電装置に要する設備が大型化するという問題もある。またこうした従来の水力発電装置は、山岳地域に施設するため、送電経路にも高電圧遠距離送電を必要とするという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、落差の少ない様々な場所の、任意のスペースに対して、所望の大きさの施設が可能な、水力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリニア水力発電装置は、勾配を有して流水が流れる流水路と、前記流水路内に、当該流水路の延在方向に間隔を置いて配置された複数の水車と、前記水車によってそれぞれ駆動される発電機と、を有し、前記水車は、前記流水路の幅方向に延在する回転軸と、前記回転軸の周方向に間隔を置いて配置された複数のバケットと、を有し、前記流水路の水深は、前記バケットが前記流水に浸水する深さの2倍以上確保し、又は、前記流水路を通過する水量は、前記バケットの水流妨害抵抗分の水量の2倍以上を確保することである。
【0007】
本発明に係るリニア水力発電装置は、水流の水勢力と水量とを根源とする、流水の横流水流エネルギーを活用するものである。流水路の延在方向に間隔を置いて配置した複数の水車を、当該間隔で稼動させるために、バケットの下方に、当該バケットが水圧を受ける深さの2倍以上の深さの水量を確保し、当該水量の流水を水車の下方に遊水させることにより得られる水流エネルギーを活用し、又は、前記流水路を通過する水量は、前記バケットの水流妨害抵抗分の水量の2倍以上を確保し、当該バケットの周囲を流れる水流により得られる水流エネルギーを活用する。本発明に係るリニア水力発電装置によれば、水車を回転させることによる、当該水車のバケットの受圧抵抗によって水流全体の水勢力が減少しても、当該水勢力には、水車のバケットが流水に浸水する深さの2倍以上の水深を有する流水路において、水車下方に形成された遊水流勢力と、水車間の流水路と、当該流水路の勾配とにより、これらが合成水流勢力となることで、次々と水車を回転させることによって減少した水勢力は、次の水車に向かって流動する間に再び高まることになる。これにより、流水路に沿って配置された各発電機からは、その流水路、流量に応じた大小の均等な電力を取り出すことができる。
【0008】
また、本発明に係るリニア水力発電装置によれば、バケットを有する、所望数の水車を使用することによって落差の少ない水流の水勢力を効率的に受けることができ、更に、河川、用水路等の「水量」と「水速度」のエネルギー(運動エネルギー)との相乗効果と、複数の発電機からの連続的な電力の集積とが相俟って、発電力を増大させることができる。従って、本発明に係るリニア水力発電装置によれば、落差の少ない様々な場所の、任意のスペースに対して、所望の大きさの施設が可能になる。
【0009】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記バケットの受圧面は、前記回転軸の軸方向視で、流体の流れ方向に向かって半円筒形に湾曲した受圧面であることが好ましい。
【0010】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記バケットは、前記回転軸の軸方向視で、当該バケットの先端部に直線形(平面状)の受圧面を有するものとすることができる。
【0011】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記水車は、前記バケットから前記回転軸に向かって延在するバケット補助板を更に有するものとすることができる。
【0012】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記水車は、前記バケットの幅方向両側に支持板を更に有し、前記支持板は、それぞれ、前記バケットの幅方向両側に固定されているものとすることができる。
【0013】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記水車は、前記回転軸の周方向に隣接して配置された2つの前記バケットの間に、一方の前記バケットの径方向内側端部又はバケット補助板の径方向内側端部と、他方の前記バケットの径方向外側端部との間を延在する流水跳ね返し部を有するものとすることができる。
【0014】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記流水跳ね返し部は、前記一方の前記バケットの前記径方向内側端部と、前記他方の前記バケットの前記径方向外側端部とに連結されており、前記回転軸の周方向に隣接して配置された2つのバケットの間に形成された、当該流水跳ね返し部に対応する隙間を閉じているものとすることができる。
【0015】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記水車は、前記回転軸の周方向に延在して前記バケットの先端のそれぞれを一体に固定するバケット補強部を更に有することが好ましい。
【0016】
本発明に係るリニア水力発電装置において、前記流水路は、流体の流入を遮断する流体流入遮断部を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、落差の少ない様々な場所の、任意のスペースに対して、所望の大きさの施設が可能な、水力発電装置を提供することができる。従って、本発明によれば、大容量の電力供給から小容量の電力供給に至るまで幅広い範囲の設備が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るリニア水力発電装置の平面図である。
図2A図1のA−A断面図である。
図2B図1をB−B断面方向から示す正面図である。
図3A図2BのC−C断面図である。
図3B図3AのD−D断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るリニア水力発電装置の平面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るリニア水力発電装置を、図1のB−B断面相当の断面で示した図である。
図6A】本発明の変形例に係るリニア水力発電装置を、図3AのD−D断面相当の断面で示した図である。
図6B図6AのC−C断面図である。
図7】本発明に係るリニア水力発電装置の水車に適用可能なバケットの形態を、図2BのC−C断面相当の断面で示した図である。
図8A】本発明の他の変形例に係るリニア水力発電装置を、図1のB−B断面に相当する方向から示す正面図である。
図8B図8AのC−C断面図である。
図9A図8Aに係るリニア水力発電装置の変形例であって、当該変形例を、図8AのC−C断面相当の断面で示す断面図である。
図9B図8Aに係るリニア水力発電装置の他の変形例であって、当該変形例を、図8AのC−C断面相当の断面で示す断面図である。
図10図8Aに係るリニア水力発電装置の更なる変形例であって、当該変形例を、図8AのC−C断面相当の断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係るリニア水力発電装置について説明をする。
【0020】
図1には、本発明の第1実施形態に係るリニア水力発電装置100を示す。
【0021】
図1中、符号10は、水(流体)が流れる流水路である。流水路10は、河川からの放流水等の水流の水勢力を取水し、当該水勢力を長距離にわたって保持しつつ、河川等からの水を流動させる。図1中、白抜き矢印は、水流方向を示す。本実施形態では、流水路10は、図1に示す平面視(平面図)で、直線状に延在している。
【0022】
また、本実施形態では、図2Aに示すように、流水路10は、勾配を有した流水路である。ここで、勾配は、水平面に対する傾き(角度)θを意味する。詳細には、流水路10は、後述するように、水流の上流から下流に向かって角度θで下がっていくように施設されている。流水路10の角度θは、例えば、1mmrad(ミリラジアン)〜2mmrad(ミリラジアン)とする。
【0023】
また、本実施形態では、流水路10は、図2Bの正面視で、断面U字(u字)状の流水路である。詳細には、図2Bに示すように、流水路10は、平板状の底壁11と、底壁11の幅方向両端から上向きに起立する2つの側壁12とで区画された、コの字上向きの長方形トラフ型水路である。
【0024】
更に、本実施形態では、流水路10は、プレハブ工法式の流水路である。詳細には、図1に示すように、流水路10は、少なくとも1つの流水路部材(流路部材)として製作され、当該部材を施設現場で組み立てることで形成される。例えば、図1の流水路10は、1つの流水路部材として形成された流水路である。流水路部材は、例えば、金属、コンクリート等の材料で構成することができる。流水路10は、複数の流水路部材として、互いに接続して組み立てられることにより、長距離にわたって延在させることができる。
【0025】
符号20は、流水路10内に配置された水車である。図1等に示すように、流水路10内には、複数の水車20が流水路10の延在方向に間隔を置いて配置されている。本実施形態では、1つの流水路10内に、2つの水車20が配置されている。但し、本発明によれば、大きな電力を取り出すことを目的にする場合、水車20は、より多数であることが好ましい。
【0026】
水車20は、流水路10の幅方向に延在する回転軸21を有している。本実施形態では、回転軸21は、ベアリング22を介して流水路10の側壁12上に回転可能に支持されている。ベアリング22は、側壁12と一体に形成してもよい。水車20は、流水路10の幅方向に延在する幅W20(以下、「水車幅W20」ともいう。)を有している。また、図2A等に示すように、水車20は、直径R20の外径を有している。2つの水車20の間の間隔は、2つの回転軸21の中心間の距離L20(以下、「水車間ピッチ長さL20」ともいう。)である。水車間ピッチ長さL20は、角度θとの関係で設定することができる。例えば、水車間ピッチ長さL20は、一定の流速に回復する長さとすることが望ましい。
【0027】
また、水車20は、複数のバケット23を有している。図2Bに示すように、バケット23は、回転軸21の延在方向に延びるバケット幅W23を有し、後述するように、水を受ける受圧面を有している。図3Aに示すように、本実施形態では、回転軸21の軸方向視で、12個のバケット23が回転軸21の周方向に間隔を置いて配置されている。
【0028】
本実施形態では、バケット23は、それぞれ、図3A等に示すように、軸方向視で、水の流れ方向に向かって湾曲した受圧面24を有している。本実施形態では、湾曲した受圧面24は、回転軸21の軸方向視で、水の流れ方向に向かって半円筒形に湾曲した受圧面である。本実施形態では、湾曲した受圧面24は、曲率半径r24で構成されている。
【0029】
更に、本実施形態では、バケット23は、図3A等に示すように、軸方向視で、バケット23の先端部(バケット23の径方向外側端部)に直線形の受圧面25を有している。詳細には、図3Aに示すように、受圧面25は、軸方向視で、湾曲した受圧面24の先端から水車20の最外径までの間を直線形とすることにより構成されている。直線形の受圧面25は、それぞれ、バケット幅W23にわたって延在する水掻き部として機能することで、流水路10に沿った直進水流の水勢力を、湾曲した受圧面24と共に受けて、水車20の回転力に変換することができる。更に、直線形の受圧面25は、それぞれ、後述のとおり、案内面として機能する。
【0030】
図3Bに示すように、本実施形態では、水車20は、水車20が水を受ける受圧面積S20を有している。水車20の受圧面積S20は、図3Bに示すように、水車20の正面視で、バケット23が最下点に達した時点での受圧面積である。詳細には、水車20の受圧面積S20は、水車20が浸水した状態での水面Fからの水車20の浸水深さD20と、バケット幅W23との積(S20=D20×W23)である。本実施形態では、水車20の浸水深さD20は、バケット23の水車径方向長さL23と等しい。また、本実施形態では、流水路10の流路面積S10は、流水路10の水深D10と、流水路10の幅W10(以下、「流水路幅W10」ともいう。)との積(S10=D10×W10)である。本実施形態では、後述するように、流水路10の水深D10は、水車20のバケット23が流水に浸水する深さ、本実施形態では、水車20の浸水深さD20の2倍以上としている。
【0031】
また、本実施形態では、流水路10の水深D10のうち、水面Fから水車20の浸水深さD20までの領域は、受圧水流層となる。本実施形態では、図3Bの一点鎖線で囲まれた領域で示すように、受圧水流層の流路面積S10−2は、流水路幅W10と水車20の浸水深さD20との積(S10−2=W10×D20)である。更に本実施形態では、水車20の浸水深さD20から流水路10の底面10fまでの領域は、水流の水勢力が水車20の影響を受けない遊水流層となる。本実施形態では、水車20の浸水深さD20から流水路10の底面10fまでの、水深D10に対する残部の深さ(以下、単に「残部深さ」ともいう。)をDfとすると、図3Bの破線で囲まれた領域で示すように、遊水流層の流路面積S10−1は、流水路幅W10と残部深さDfとの積(S10−1=W10×Df)である。即ち、本実施形態では、流水路10の流路面積S10は、受圧水流層の流路面積S10−2と、遊水流層の流路面積S10−1との和である。更に、流水路10を流れる水のうち、遊水流層の流路面積S10−1を通って下流に進む、遊水流層の体積(以下、「遊水流層体積」ともいう。)は、遊水流層の流路面積S10−1と、流水路10の延在方向の長さとの積である。この遊水流層体積分が、遊水流層の流路面積S10−1が下流に進んだときの体積となって、水流勢力を増加させる。なお、流水路10を流れる水のうち、受圧水流層の流路面積S10−2を通って下流に進む、受圧水流層の体積(以下、「受圧水流層体積」ともいう。)は、受圧水流層の流路面積S10−2と、流水路10の延在方向の長さとの積である。なお、図3Bでは、一点差線で囲まれた領域及び破線で囲まれた領域は、他の部分の外形線との重複を避けるため、実際よりも、小さく表記されている。
【0032】
更に、本実施形態では、水車20は、バケット23から回転軸21に向かって延在するバケット補助板27を更に有している。詳細には、バケット補助板27は、図3Aに示すように、軸方向視で、回転軸21に向かって延在する直線形で構成されている。本実施形態では、バケット補助板27は、バケット23と一体に構成されている。図3Aに示すように、バケット補助板27の一方の面(湾曲した受圧面24及び25と同一の面)も、補助的な受圧面26として機能させることができる。なお、本実施形態では、バケット補助板27は、図3Aに示すように、軸方向視で、回転軸21との間に環状の隙間Sを形成している。隙間Sは、水面Fから飛沫を逃がす穴として機能する。また、隙間Sは、水車20の回転中に当該水車20が受ける空気(風)の抵抗を抑えることができる。これにより、隙間Sは、水車20の効率的な回転動作を保証する機能も発揮させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、図3B等に示すように、水車20は、バケット23の幅方向両側に支持板28を更に有している。2つの支持板28は、それぞれ、バケット23の幅方向両側に固定されている。本実施形態では、支持板28は、それぞれ、円盤状の板部材である。本実施形態では、支持板28は、それぞれ、バケット23の幅方向端に溶接されている。また本実施形態では、図3Bに示すように、2つの支持板28は、それぞれ、バケット補助板27の幅方向両側に、バケット23と同様、溶接等の方法により固定されている。なお、本実施形態では、水車20の回転軸21と支持板28との間にベアリング22を介在させているが、当該ベアリング22は省略することができる。
【0034】
加えて、図3A等に示すように、本実施形態では、水車20は、回転軸21の周方向に延在してバケット23の先端のそれぞれを一体に固定するバケット補強部29を更に有している。バケット補強部29としては、例えば、回転軸21の周方向を周回する、ピアノ線又はスチール線が挙げられる。本実施形態では、図2Bに示すように、バケット補強部29は、バケット幅W23の中心の1箇所に設けられている。ただし、バケット補強部29は、バケット幅W23の方向に間隔を置いて複数設けることもできる。なお、本実施形態では、バケット補強部29は、図3Aに示すように、軸方向視で、円形としたが、バケット23の先端を直線的に繋いだ多角形としてもよい。
【0035】
また、図2Bに示すように、リニア水力発電装置100は、水車20によって駆動される発電機30を有している。本実施形態では、発電機30は、動力伝達装置40を介して、水車20の回転軸21に駆動結合されている。動力伝達装置40は、水車20の回転力及び回転速度を発電機30に伝達する。
【0036】
本実施形態では、動力伝達装置40は、ベルト式の動力伝達装置である。詳細には、動力伝達装置40は、水車20の回転軸21に固定された入力プーリ41と、発電機30の入力回転軸に固定された出力プーリ42と、これら入力プーリ41及び出力プーリ42の間に掛け渡されたVベルト43を有している。本実施形態では、入力プーリ41及び出力プーリ42を可変プーリとすることにより、発電機30に入力される回転力及び回転速度を適宜変更できるようにしている。また、本発明によれば、水車20の回転軸21と入力プーリ41との間及び出力プーリ42と発電機30の入力回転軸との間の少なくとも一方に、ロックアップ式のトルクコンバータ等の流体継手を介在させることができる。また、本発明によれば、動力伝達装置40は、ベルト式の動力伝達装置に換えて、チェーン式の動力伝達装置とすることもできる。動力伝達装置40をベルト式に代えてチェーン式とした場合、ベルト式に比べて動力伝達効率が向上する。特に、ギアチェーン式とした場合、ギアを変更することにより、発電機30に入力される回転力及び回転速度を適宜変更できる。
【0037】
図2Aに示すように、本実施形態では、水車20の直径R20を1000mmとした場合、流水路10の取水口10aの水速度Vは、3〜5m/sとしている。また、本実施形態では、流水路10の角度θは、1mmrad(ミリラジアン)〜2mmrad(ミリラジアン)とすることが好ましい。角度θがそれ以上あれば、水の流れを維持することができる。なお、角度θの数値は例示的なものである。本発明によれば、角度θの数値は適宜変更することができ、例えば、角度θは、1°〜2°でもよい。
【0038】
なお、本実施形態において、流水路10の長さ、大きさ、深さ(水深)、傾き等の、具体的な寸法、構造等は、流水路10の「水量」、「水速度」、「発電計画(電力生産計画)」によって決定することができる。
【0039】
また、図3A及び図3Bに示すように、本実施形態において、流水路10の水深D10は、水車20の浸水深さD20に対して2倍以上の水深が必要である。この場合、流水路10の水深D10のうち、水面Fから水車20の浸水深さD20までの領域は、水車20が水勢力を受ける受圧水流層となり、水車20の浸水深さD20から流水路10の底面10fまでの領域は、水流の水勢力が水車20の影響を受けない遊水流層となる。本実施形態では、流水路10の水深D10は、550mm、水車20の浸水深さD20は、250mm、残部深さDfは、300mmである。なお、これらの数値は例示的なものである。本発明によれば、これらの数値は適宜変更することができる。
【0040】
図3Aに示すように、本実施形態では、水車20の直径R20は、1000mmとしている。また、バケット23の湾曲した受圧面24の曲率半径R24は、125mmとしている。また、バケット23の直線形の受圧面25の延在長さL25は、50mmとしている。更に、バケット補助板27の水車径方向長さ(受圧面26の長さ)L27は、50mmとしている。また、図3Bに示すように、本実施形態において、水車幅W20は、1000mmとしている。なお、これらの数値も例示的なものである。本発明によれば、これらの数値も適宜変更することができる。例えば、バケット23は、10個とすることができる。また、バケット幅W23は、1尺(約303mm)以上とすることが好ましい。
【0041】
なお、本実施形態において、水車20の個数、配置間隔等、回転軸の軸方向長さ、大きさ(径)、形状等、バケット23(湾曲した受圧面24,直線形の受圧面25)の数、大きさ(径方向長さ、軸方向幅)、形状等の、具体的な寸法、構造等も、流水路10の「水量」、「水速度」、「発電計画(電力生産計画)」によって決定することができる。
【0042】
また、本実施形態では、発電機30の回転数は、200〜300rpmとしている。また、図1に示すように、本実施形態では、発電機30は、水車20の両側に接続されているが、少なくともいずれか一方の側にのみ、接続させることができる。また、図2Bに示すように、動力伝達装置40において、入力プーリ41及び出力プーリ42のプーリ比は、3〜5としている。なお、これらの数値も例示的なものである。本発明によれば、これらの数値は適宜変更することができる。更に、発電機30は、水車20の回転軸21に対して直結させ、或いは、ロックアップ式のトルクコンバータを介して間接的に連結させることができる。
【0043】
なお、本実施形態において、発電機30の個数、大きさ、出力電力、形状等の、具体的な寸法、構造等も、流水路10の「水量」、「水速度」、「発電計画(電力生産計画)」によって決定することができる。
【0044】
図3Bに示すように、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、流水路10の流路面積S10は、水車20の受圧面積S20の2倍以上としている。この「2倍以上」という数値は、適切な水勢力を得るために、実験的に求められた数値である。この場合、水車20を回転させることによる、当該水車20のバケット23の受水抵抗(受圧抵抗)によって水流全体の水勢力が減少しても、当該水勢力には、次の水車20に向かって流動する間に、流水路10の勾配によって得られる水勢力と、直接水車20の回転に直接関連しない水深部分の流水(遊水流層を通る流水)の水勢力とが合成される。このため、次々と水車20を回転させることによって減少した水勢力は、次の水車20に向かって流動する間に再び高まることになる。これにより、流水路10に沿って配置された各発電機30からは、その河川(流水路)、水量(流量)に応じた大小の均等な電力を取り出すことができる。
【0045】
詳細には、図3Bに示すように、流水路10の水深D10は、水車20が浸水した状態での水面Fからの水車20の浸水深さD20に対して2倍以上の水深である。この場合、水車20の浸水深さD20の2倍以上の水深D10を有する流水路10において、水車20よりも下方の、水車20に直接関連しない水深部分(本実施形態では、残部深さDfの領域の遊水流層)の水流の水勢力と、流水路10に沿って流動中に流水路10の勾配によって得られる水流の水勢力とが合成される。
【0046】
また、本実施形態に係るリニア水力発電装置100によれば、バケット23を有する、所望数の水車20を使用することによって、水流の水勢力を効率的に受けることができ、更に、河川、用水路等の「水量」と「水速度」のエネルギー(運動エネルギー)との相乗効果と、複数の発電機からの連続的な電力の集積とが相俟って、発電力を増大させることができる。従って、本実施形態に係るリニア水力発電装置100によれば、河川、用水路等の「水量」、「水速度」、「発電計画(電力生産計画)」に応じて、例えば、流水路の長さ、大きさ、深さ(水深)、傾き等、水車の個数、配置間隔等、回転軸の軸方向長さ、大きさ(径)、形状等、バケット(受圧面)の数、大きさ(径方向長さ、軸方向幅)、形状等を、適宜、設定することにより、落差の少ない様々な場所の、任意のスペースに対して、所望の大きさの施設が可能になる。従って、本実施形態に係るリニア水力発電装置100によれば、大容量の電力供給から小容量の電力供給に至るまで幅広い範囲の設備が可能となる。
【0047】
特に図3Aに示すように、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、水車周辺水流体積VLは、水車浸水体積(水勢力抵抗体積)VWの5倍以上とすることができる。本実施形態では、図3Aの破線で囲まれた領域で示すように、「水車周辺水流体積VL」とは、「1つの水車の周辺の水流体積のうち、当該水車の直径間における水流体積」をいう。また本実施形態では、図3Aの一点鎖線で囲まれた領域で示すように、「水車浸水体積VW」とは、「流水路内の水に浸水している水車の体積」をいう。即ち、本実施形態では、「水車周辺水流体積VL」における、「流水路10の延在方向の長さ」は、「水車20の直径R20」である。この場合、水車20の水勢力抵抗分に関係なく、次の水車20も連続的に駆動させることができる。本実施形態では、水車20の間隔(水車間ピッチ長さL20)が1mあれば、上流から下流にかけて配置された、複数の水車20はそれぞれ、連続的かつ容易に回転する。なお、図3Aでも、破線で囲まれた領域及び一点差線で囲まれた領域は、他の部分の外形線との重複を避けるため、実際よりも、小さく表記されている。
【0048】
また、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、バケット23の湾曲した受圧面24は、図3Aに示すように、軸方向視で、水の流れ方向に向かって半円筒形に湾曲した受圧面である。この場合、バケット23の湾曲した受圧面24が水流の水勢力をより効率的に受けることから、発電力をより増大させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、バケット23は、図3Aに示すように、軸方向視で、当該バケット23の先端部に直線形の受圧面25を有している。この場合、バケット23の入水直後に、バケット23の直線形の受圧面25が案内面として、バケット23に水を、水流の流れに沿って効率的に導くことができることから、発電力をより増大させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、水車20は、バケット23から水車20の回転軸21に向かって延在するバケット補助板27を更に有している。この場合、バケット補助板27の受圧面26が、後述するように、バケット23と共に水流の水勢力を受けることにより、発電力をより増大させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、図3B等に示すように、水車20は、バケット23の幅方向両側に支持板(支持円板)28を更に有し、2つの支持板28は、それぞれ、バケット23の幅方向両側に固定されている。この場合、水車20全体の剛性が高まることから、水車20の耐久性、ひいては、リニア水力発電装置100全体の耐久性を向上させることができる。また、水車20全体の剛性が高まることから、水車20が構造的に安定する。これにより、水車20がより効率的に回転することから、発電力をより増大させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、図2B及び図3A等に示すように、水車20は、回転軸21の周方向に延在してバケット23の先端のそれぞれに固定されたバケット補強部29を更に有している。この場合、水車20全体の剛性が高まることから、水車20の耐久性、ひいては、リニア水力発電装置100全体の耐久性を向上させることができる。また、水車20全体の剛性が高まることから、水車20が構造的に安定する。これにより、水車20がより効率的に回転することから、発電力をより増大させることができる。
【0053】
また、図1に示すように、本実施形態に係るリニア水力発電装置100では、流水路10は、プレハブ工法式の流水路である。プレハブ工法式の流水路10は、流水路を予め、少なくとも1つの流路部材として製作し、当該部材を施設現場で組み立てることにより形成することができる。この場合、流水路10の組立て及び分解により、流水路10の施設及び撤去が可能となる。特に、後述するように、流水路10の取水口10aに水門等の、水の流入を阻止する流入阻止設備を配置すれば、台風、豪雨、異常気象等の状況下において、施設場所が災害区域に指定された場合、取水口の制御により、当該災害区域から容易かつ迅速に開放できるため、安全性も確保される。
【0054】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係るリニア水力発電装置200について説明をする。なお、以下の説明において、第1実施形態と実質的に同一の部分は同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0055】
本実施形態に係るリニア水力発電装置200は、第1リニア水力発電装置200Aと、第2リニア水力発電装置200Bとの、2つのリニア水力発電装置を有している。また、第1リニア水力発電装置200A及び第2リニア水力発電装置200Bは、それぞれ、第1流水路10Aと第2流水路10Bとの、2つの流水路で構成されている。本実施形態では、第1流水路10A及び第2流水路10Bは、それぞれ、河川からの放流水等の水流の水勢力を取水した用水路である。本実施形態では、第1流水路10A及び第2流水路10Bは、それぞれ、第1実施形態の流水路10と同様、図4に示す平面視で、直線状に延在している。
【0056】
本実施形態では、第1流水路10Aは、流水路幅W10Aが2000mmの用水路である。本実施形態では、第1流水路10Aは、水の流入を遮断する流体流入遮断部15を有する。流体流入遮断部15は、手動により、又は、電気制御等により、水の流入を断続させることができる。流体流入遮断部15は、台風、豪雨、異常気象等の状況下において、施設場所が災害区域に指定された場合、第1流水路10Aを遮断することにより、第1リニア水力発電装置200Aの安全性を確保する。本実施形態では、流体流入遮断部15は、第1流水路10Aの取水口10aに設けられた、開閉可能な水門である。また、本実施形態では、第1流水路10Aの取水口10aには、障害物排除設備16が設けられている。障害物排除設備16は、水車等に異物等を干渉させないための設備である。障害物排除設備16としては、例えば、木材、石等の異物を捕捉する防護ネット等が挙げられる。
【0057】
また、本実施形態では、第1流水路10A内には、同一の水車20Aが第1流水路10Aの延在方向に間隔を置いて複数配置されている。本実施形態では、水車20Aは、第1流水路10Aの延在方向における、水車間ピッチ長さL20は、5000mmとしている。また、本実施形態では、水車20Aは、22個のバケット23を有した水車である。本実施形態では、水車20Aの直径R20は、第1実施形態と同様、1000mmであるが、水車幅W20は、1600mmである。更に、本実施形態では、第1流水路10Aの水深D10Aは、第1実施形態と同様、水車20Aが浸水した状態での水面Fからの水車20の浸水深さD20に対して2倍以上の水深であるが、本実施形態では、第1流水路10Aの水深D10は、800mmである。
【0058】
また、本実施形態では、第2流水路10Bも、流水路幅W10Bが2000mmの用水路である。本実施形態では、第2流水路10Bの取水口10aにも、第1リニア水力発電装置200Aと同様、流体流入遮断部15が設けられている。流体流入遮断部15も、台風、豪雨、異常気象等の状況下において、施設場所が災害区域に指定された場合、第2流水路10Bを遮断することにより、第2リニア水力発電装置200Bの安全性を確保する。また、本実施形態では、第2流水路10Bの取水口10aにも、障害物排除設備16が設けられている。
【0059】
更に、本実施形態では、第2流水路10B内には、異なる水車20A、20B、20C、20D及び20Eが第2流水路10Bの延在方向に間隔を置いて複数配置されている。本実施形態では、水車20B、20C、20D及び20Eは、それぞれ、水車20Aと同様、22個のバケット23を有した水車である。本実施形態では、水車20B、20C、20D及び20Eの直径R20は、第1実施形態と同様、1000mmであるが、水車幅W20は、1200mm、1000mm、600mm及び400mmである。特に、本実施形態では、水車20Eは、間隔WSで配置された2つの水車である。なお、本実施形態では、間隔WSは、1000mmである。水車20Eによれば、第2流水路10Bの流水路幅W10Bの中央の領域を有効に利用することができる。更に、本実施形態では、第2流水路10Bの水深D10Bも、第1実施形態と同様、水車20Aが浸水した状態での水面Fからの水車20Bの浸水深さD20に対して2倍以上の水深であるが、本実施形態では、第2流水路10Bの水深D10も、800mmである。なお、上記の数値は、例えば、各河川で実験した結果に基づく、例示的な数値である。
【0060】
また、本実施形態は、同一流水路幅W10Bの第2流水路10Bに、異なる水車20A、20B、20C、20D及び20Eを配置したものであるが、これらの水車20A、20B、20C、20D及び20Eは、それぞれ、単独で使用することができる。例えば、水車20Cは、中水量の河川用の水車として、1つの中水量河川(流水路)に間隔を置いて配置することができる。また、例えば、水車20Dは、小水量の河川用の水車として、1つの小水量河川(流水路)に間隔を置いて配置することができる。即ち、本実施形態によれば、河川の水量に応じた、用水路に適した水車幅の水力発電装置を提供することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1リニア水力発電装置200Aは、各発電機30に対応する集電盤50を複数有している。第2リニア水力発電装置200Bも、第1リニア水力発電装置200Aと同様、各発電機30に対応する集電盤50を複数有している。本実施形態では、発電機30から取り出された電気はそれぞれ、各発電機30に対応する集電盤50で集電される。本実施形態では、第1リニア水力発電装置200A及び第2リニア水力発電装置200Bで集電された電気は、簡易発電所に送られたのち、当該簡易発電所内の昇圧変圧器等を介して、送電線を通して各所に配電される。
【0062】
また、本実施形態の変形例として、第2流水路10Bは、図4の平面視で、流水路幅W10Bを上流から下流に向かうに従って、流水路幅W10Bが先細る流水路とすることができる。この場合、第2流水路10Bの水速度は、上流から下流に向かって流水路幅W10Bが狭くなるに従って速くなる。このため、流水路幅W10Bが狭くなる場合、図4の第2流水路10Bのように、上流から下流に向かうに従って、水車20A、20B、20C、20D及び20Eを順次配置すれば、第2流水路10Bと同様に、流水路に沿って配置された各発電機30からは、均等に電力を取り出すことができる。
【0063】
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態に係るリニア水力発電装置300について説明をする。なお、以下の説明において、他の実施形態と実質的に同一の部分は同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係るリニア水力発電装置300では、流水路10内に配置される複数の水車として、水車60を使用している。本実施形態では、水車60は、2つの水車20を流水路10の幅方向に並列に配置したものである。本実施形態では、水車60の回転軸61は、2つの水車20の回転軸21を一体に構成した回転軸である。水車60の回転軸61は、流水路10の底壁11から起立する補強支柱17に対してベアリング22を介して回転可能に支持されている。これにより、水車60は、回転軸61の回転によって2つの水車20を同時に一体的に回転させることができる。この場合、1つのバケット幅W23(水車幅)を大きくすることなく、バケット23の受圧面積S23を大きく確保することができる。また、この場合、回転軸61の長さ方向(流水路幅方向)中央部が補強支柱17で支持されるため、回転軸21に生じる撓み等を抑制することができる。なお、本実施形態では、バケット補助板27は、回転軸61とバケット23とを連結している。本実施形態では、バケット補助板27の隙間Sは、バケット補助板27に形成された開口部として構成されている。水車60のような複合式の水車は、例えば、流水路幅W10が2m以上の、水量の大きな流水路で使用することが好適である。
【0065】
次に、図6A及び図6Bを参照して、本発明の変形例に係るリニア水力発電装置400について説明をする。なお、以下の説明において、他の実施形態と実質的に同一の部分は同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0066】
本例に係るリニア水力発電装置400は、流水路10の水深D10が浅く、当該流水路10の水深D10が、水車20の浸水深さD20に対して2倍以上の水深を確保できない場合を想定した例である。この例は、水流が少ない場合、その分だけ、流水路10の横幅(水路幅W10)を拡大して、水流の流水勢力の不足分の流量を補うものとする。
【0067】
図6A等に示すように、本例に係るリニア水力発電装置400では、流水路の水深を大きく確保するのに代えて、流水路10の側壁12と水車70との間の幅方向隙間ΔS70を広く確保している。これにより、水量を増やして水勢力を確保している。流水路10の流路面積S10は、幅方向隙間ΔS70を調整することにより、水車70の受圧面積S70の2倍以上とすることができる。即ち、流水路10を通過する水量は、バケット23の水流妨害抵抗分の水量の2倍以上とすることができる。この場合、流水路10は、例えば、水深の浅い農業用水路に適用させることができる。
【0068】
詳細には、流水路10の底幅W11は、流水路10と水車70との間の幅方向隙間ΔS70を十分確保できる幅となっている。この場合、水車70を回転させることによる、当該水車20のバケット23の受水抵抗によって水流全体の水勢力が減少しても、当該水勢力には、次の水車70に向かって流動する間に、流水路10の勾配によって得られる水勢力と、水車70の両側で直接水車70の回転に寄与しない水流(水車70の受圧面積S70が除かれた流路面積(S10−S70:受圧水流層の幅方向両側に隣接する遊水流層)を通る水流)の水勢力とが合成される。このため、次々と水車70を回転させることによって減少した水勢力は、次の水車70に向かって流動する間に再び高まることになる。これにより、本例に係るリニア水力発電装置400においても、流水路10に沿って配置された各発電機30からは、その河川、水量に応じた大小の均等な電力を取り出すことができる。なお、本例では、水面Fの幅WFとすると、流水路10の流路面積S10は、{(水面Fの幅WF)+(流水路10の底幅W11)}×D10/2である。また、本例では、水車70の受圧面積S70は、バケット23の受圧面積S23とバケット補助板27の受圧面積S27との和(S70=S23+S27)である。
【0069】
具体的には、流水路10の水深D10は、230mmであり、水車70の直径R70は、600mmである。また、水車70の水車幅W70が250mmであるのに対し、流水路10の底幅W11を400mmとしている。これにより、流水路10の側壁12と水車70との間の幅方向隙間ΔS70として、75mmが確保されている。水車70の浸水深さD70は、180mmとしている。またバケット補助板27の水車径方向長さL27は、30mmである。このため、バケット23の水車径方向長さL23は、水車70の浸水深さD70からバケット補助板27の水車径方向長さL27を除算した150mmである。なお、これらの数値は例示的なものである。本発明によれば、これらの数値は適宜変更することができる。
【0070】
また、図6Bに示すように、本例では、水車70のバケット23は、18個である。また、バケット23の湾曲した受圧面24は、それぞれ、図6Bに示すように、回転軸21の軸方向視で、回転軸21の周方向の水の流れ方向に向かって、水車20のバケット23の曲率半径よりも大きな曲率半径R24で湾曲している。本例では、直線形の受圧面25は省略されている。なお、本例で使用される水車は、水車70に限定されるものではない。本例で使用される水車としては、例えば、上述の水車20等を使用することができる。
【0071】
ここで、図7を参照して、本発明に係るリニア水力発電装置の水車に適用可能なバケット23の形態について説明をする。なお、以下の説明において、他の実施形態と実質的に同一の部分は同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0072】
図7は、バケット23の受圧面の2つのバリエーションを1つの図面で示したものである。まず1つ目のバリエーションは、図7の符号24´に示すように、回転軸21の軸方向視で、水車20の回転軸21から放射状に延びる直線に対して、回転軸21の周方向の水の流れ方向に向かって湾曲した受圧面24´である。次いで、2つ目のバリエーションは、図7の符号25´´に示すように、回転軸21の軸方向視で、水車20の回転軸21から放射状に延びる直線に対して、回転軸21の周方向の水の流れ方向に向かって窪んだ台形状の受圧面25´である。本実施形態では、台形状の受圧面25´は、直線で構成されている。このため、台形状の受圧面25´の一部は、直線形の受圧面25として機能する。
【0073】
ところで、上述の各水車では、例えば、既に図3Aを参照して説明したように、バケット補助板27は、軸方向視で、回転軸21との間に環状の隙間Sを形成している。バケット補助板27は、互いの周方向の相互間に開口部A27を形成している。開口部A27がそれぞれ、隙間Sを外界に通じさせている。これにより、隙間Sは、水車20を回転させたときに、水面Fから飛び散る飛沫を逃がす穴として機能する。
【0074】
しかしながら、本願発明者は、試験・研究の結果、水流の水勢力が大きい場合、例えば、水速度Vが6m/s以上の場合、水車20が回転方向に対して逆向きの抵抗を受け、回転速度が上昇しなくなってしまうことを認識するに至った。そして、本願発明者は、更に鋭意試験・研究の結果、水車20の回転速度が上昇しない原因の1つは、当該水車20のバケット23から吐き出される水にあることを確かめた。
【0075】
具体的には、水速度Vが6m/sの場合、水車20の下流側では、バケット23から吐き出される水は多量の飛沫となって飛散する。特にバケット23の浸水深さD20が深い場合、例えば、バケット23が250mm以上の場合、水車20の下流側に飛散する飛沫量は大きい。またバケット23の浸水深さD20が深い場合、多量の飛沫が水車20を一回りして当該水車20の上流側上部に飛散する。このように水車20の上流側上部に飛散した大量の飛沫は、当該水車20の回転速度を抑制し、当該水車20の回転速度が上昇することを妨げる。
【0076】
この結果、水車20の回転によれば、実際に、発電機30の発電定格回転数としては十分な回転数(例えば、90rpm)が得られるものの、理想的には、それ以上の回転数(例えば、150rpm)が得られると考えられる。
【0077】
そこで、本願発明者は、回転軸21の周方向に隣接して配置された2つのバケットの間に、一方のバケット(水車の回転方向に先行するバケット)の径方向内側端部と、他方のバケット(前記水車の回転方向に先行する前記バケットに対して後方のバケット)の径方向外側端部との間を延在する流水跳ね返し部を設けた。
【0078】
図8Aは、本発明の他の変形例に係るリニア水力発電装置500を、図1のB−B断面に相当する方向から示す正面図である。また図8Bは、図8AのC−C断面図である。
【0079】
図8A等に示すように、本実施形態に係るリニア水力発電装置500では、水車80は、水車20と同様、複数の長翼を有する長翼水車である。水車80は、図8A等に示すように、軸方向に間隔を置いて配置された2つの支持板28の間に、回転軸21の周方向に間隔を置いて配置された複数のバケット83と、当該バケット83の間に配置された流水跳ね返し部87とを有している。また本実施形態では、動力伝達装置40は、チェーン式の動力伝達装置である。詳細には、動力伝達装置40は、水車80の回転軸21に固定された入力ギア811と、発電機30の入力回転軸に固定された出力ギア822と、これら入力ギア811及び出力ギア822の間に掛け渡されたギアチェーン833を有している。
【0080】
また図8Bに示すように、本実施形態では、水車80は、8枚の長翼を有している。
【0081】
図3Aの水車20等では、前記長翼は、バケット23及びバケット補助板27からなる。これに対し、本実施形態では、図8Bに示すように、前記長翼は、平板のバケット83からなる。
【0082】
本実施形態では、図8Aに示すように、バケット83は、バケット23と同様、軸方向に延びるバケット幅W83を有している。図8Aに示すように、バケット83の幅方向側端は、それぞれ、バケット23と同様、支持板28に対して溶接等の方法によって固定されている。これにより、本実施形態では、バケット83は、バケット23と同様、2つの支持板28の軸方向間を閉じている。
【0083】
更に本実施形態では、バケット83は、図8Bに示すように、所定の水車径方向長さL83を有している。本実施形態では、バケット83の径方向内側端部83aは、回転軸21に近い位置に配置されている。特に本実施形態では、バケット83の径方向内側端部83aのうち、回転軸21に最も近い部分を、バケット83の径方向内側端83e1とする。また本実施形態では、バケット83の径方向外側端部83bは、水車80の径方向外側の位置に配置されている。特に本実施形態では、バケット83の径方向外側端部83bのうち、最も水車80の径方向外側の部分(先端)を、バケット83の径方向外側端83e2とする。
【0084】
バケット83は、図8Bに示すように、軸方向視で、回転軸21との間に環状の隙間(車内空洞部)Sを形成している。バケット83の径方向内側端83e1は、周方向に互いに隣り合うバケット83の径方向内側端83e1の間に隙間A83を形成する。隙間A83は、水車20の開口部A27に相当する。
【0085】
これに対し、本実施形態では、水車80は、隣接して配置された2つのバケット83の間に、流水跳ね返し部87を有している。本実施形態では、図8Aに示すように、流水跳ね返し部87は、バケット83と同様、軸方向に延びる流水跳ね返し部幅W87を有している。流水跳ね返し部87の幅方向側端は、それぞれ、バケット83と同様、支持板28に対して溶接等の方法によって固定されている。これにより、本実施形態では、流水跳ね返し部87は、バケット83と共に、2つの支持板28の軸方向間を閉じている。
【0086】
また本実施形態では、流水跳ね返し部87は、図8Bに示すように、隣接して配置された2つのバケット83のうち、一方のバケット83の径方向内側端部83aと、他方のバケット83の径方向外側端部83bとの間を延在している。本実施形態では、一方のバケット83の径方向内側端部83aに近い部分が流水跳ね返し部87の径方向内側端部87aであり、他方のバケット83の径方向外側端部83bに近い部分が流水跳ね返し部87の径方向外側端部87bである。
【0087】
本実施形態では、上述のように、流水跳ね返し部87の径方向内側端部87aが一方のバケット83の径方向内側端部83aに向かって延在していると共に、流水跳ね返し部87の径方向外側端部87bが他方のバケット83の径方向外側端部83bに向かって延在している。これにより、流水跳ね返し部87は、図8Bに示す軸方向視で、当該流水跳ね返し部87に対応する隙間A83の、少なくとも一部を閉じることができる。なお、言い換えれば、流水跳ね返し部87は、図8Bに示す軸方向視で、外界に対して車内空洞部Sを部分的に閉じることができる。これにより、流水路10の水が、図8Bに示す軸方向視で、回転軸21の径方向外側から車内空洞部Sに進入することを抑制することができる。
【0088】
本発明によれば、流水跳ね返し部87は、当該流水跳ね返し部87の径方向内側端部87aを、一方のバケット83の径方向内側端部83aに連結することができる。また流水跳ね返し部87は、当該流水跳ね返し部87の径方向外側端部87bを、他方のバケット83の径方向外側端部83bに連結することができる。本実施形態では、流水跳ね返し部87は、一方のバケット83の径方向内側端部83aと、他方のバケット83の径方向外側端部83bとに連結されており、図8Bに示す軸方向視で、回転軸21の周方向に隣接して配置された2つのバケットの間に形成された、当該流水跳ね返し部87に対応する隙間A83を閉じている。これにより、流水路10の水が、図8Bに示す軸方向視で、回転軸21の径方向外側から車内空洞部Sに進入することを阻止することができる。
【0089】
更に流水跳ね返し部87の幅方向側端は、それぞれ、バケット83と同様、支持板28に対して連結されている。これにより、流水跳ね返し部87は、周方向に配置された複数の隙間A83をそれぞれ、図8Bに示す軸方向視で、完全に閉じることができる。言い換えれば、流水跳ね返し部87は、車内空洞部S全体を周方向に閉じられた閉空間とすることができる。これにより、流水路10の水が車内空洞部Sに進入することをほぼ完全に阻止することができる。
【0090】
本実施形態では、動力伝達装置40は、チェーン式の動力伝達装置である。詳細には、動力伝達装置40は、水車80の回転軸21に固定された入力ギア811と、発電機30の入力回転軸に固定された出力ギア822と、これら入力ギア811及び出力ギア822の間に掛け渡されたギアチェーン833を有している。
【0091】
次に、図8B等を参照して、水車80の動作について説明する。図8Bにおいて、図面左側は流水路10の上流側であり、図面右側は流水路10の下流流側である。
【0092】
図8Bにおいて、水車80は、位置Aのバケット83が上流からの水を受ける。このとき、位置Aのバケット83が当該バケット83の受圧面84で受けた水勢力は、水車80を図面に対して反時計回りに回転させる。その一方で、位置Aのバケット83が受けた水の一部は、当該バケット83の受圧面84に沿って車内空洞部Sに向かって案内される。
【0093】
しかしながら、本実施形態では、位置Aのバケット83によって車内空洞部Sに向かって案内された水は、位置Aと位置Hとの間の流水跳ね返し部87によって塞き止められることによって、車内空洞部Sに進入することがない。また位置Aのバケット83よりも下流に位置する位置Bのバケット83との間は、水面Fよりも下の位置にある。しかしながら、位置Aのバケット83と位置Bのバケット83との間の水は、位置Aと位置Bとの間の流水跳ね返し部87によって塞き止められることによって、車内空洞部Sに進入することがない。
【0094】
位置Bのバケット83も同様であり、またバケット83が位置Cにあるときも、位置B及び位置Cの間では、流水跳ね返し部87が車内空洞部Sへの水の進入を阻止しつつ、当該水を下流側に吐き出させる。また、位置C及び位置Dの間では、流水跳ね返し部87が車内空洞部Sへの水の進入を阻止しつつ、当該水を下流側に吐き出させる。特に、位置C及び位置Dの間に移動したバケット83及び流水跳ね返し部87の間に溜まった水は、水車80の回転(いわゆる遠心力)により径方向外側に放水される。
【0095】
更に水車80が回転し、バケット83が位置D、E,F、Hに進む場合も、同様で、残った水は、流水跳ね返し部87によって、車内空洞部Sに進入することがなく、水車80の回転により径方向外側に放水される。
【0096】
本実施形態に係るリニア水力発電装置500は、流水跳ね返し部87を設けた水車80を用いたことにより、次のような効果を奏する。
【0097】
(1)流水路10の水流勢力(水速度V、流水路10の水量)を大きく確保することにより、大電力を得ることができる。
(2)バケット83からの不要水流勢力が車内空洞部Sに進入することによって生じ得る回転抵抗が抑制され、水車80の回転速度の低下を抑えることができる。このため、本実施形態によれば、より大きな電力を得ることができる。
(3)バケット83から吐き出される水の抵抗が抑制される。このため、本実施形態によれば、より大きな電力を得ることができる。
(4)流水跳ね返し部87が水車80に進入する水勢力を跳ね返すことによって得られる反動力によって、水車80の回転速度・回転トルクを上昇させることができる。このため、本実施形態によれば、より大きな電力を得ることができる。
(5)水車80内への水流勢力の浸入を防止しつつ、当該水車80を空洞化させることができる。このため、本実施形態によれば、水車80の軽量化を図ることができる。
(6)バケット83(長翼)の強度を向上させることができる。即ち、流水跳ね返し部87は、バケット83の補強材として機能する。このため、本実施形態によれば、バケット83の強度、ひいては、水車80の強度を向上させることができる。言い換えれば、本実施形態によれば、リニア水力発電装置の耐久性を向上させることができる。
【0098】
本実施形態に係るリニア水力発電装置500によれば、回転軸21の周方向に隣接して配置された2つのバケット83の間に、流水跳ね返し部87を設けた水車80を用いたことにより、ペルトン水車に匹敵する発電効率に優れた発電装置を得ることができる。従って、本実施形態に係るリニア水力発電装置500によれば、ダム等の大きな落差を利用することなく、高低差の小さい用水路等においても、効率良く大きな電力を得ることができる。
【0099】
特に本実施形態では、流水跳ね返し部87は、一方のバケット83の径方向内側端部83aと、他方のバケット83の径方向外側端部83bとに連結されている。この場合、バケット83の強度をより向上させることができる。特に本実施形態では、流水跳ね返し部87は、一方のバケット83の径方向内側端部83aと、他方のバケット83の径方向外側端部83bとに連結されている。この場合、バケット83の径方向内側端部83a及び径方向外側端部83bのいずれにおいても、水勢力によって生じ得る変形が抑制される。
【0100】
また本実施形態では、バケット83の径方向内側端部83aは、図8Bに示すように、それぞれ、軸方向視で、回転軸21に向かって径方向内側に凸の湾曲面である。本実施形態では、バケット83の径方向内側端部83aは、軸方向視で、曲率半径R87で構成されている。この場合、バケット83の径方向内側端部83aと、流水跳ね返し部87の径方向内側端部87aとの間が滑らかに繋がることにより、水の放出をよりスムースに行うことができる。なお、本実施形態では、バケット83及び流水跳ね返し部87は、別体で構成されており、例えば、溶接等の手段を用いて接続されている。但し、本発明によれば、バケット83及び流水跳ね返し部87は、例えば、一枚の板材に対してプレス加工等を行うことによって形成された一体成形物とすることも可能である。
【0101】
なお、図8Aを参照すれば、本実施形態では、流水路10の規格は、次のとおりである。水深D10は500mmである。水車80の浸水深さD80は250mmである。また本実施形態は、水速度Vが2m/s〜5m/s未満の流水路での使用に適している。
【0102】
また本実施形態では、水車80の規格は、次のとおりである。水車80は、8枚の長翼を有している。前記長翼は、平板のバケット83である。水車80の直径R80は、1000mmである。水車幅W80は1000mmである。バケット幅W83は1尺(約303mm)以上とすることが好ましい。また図8Bを参照すれば、バケット83の水車径方向長さL83は、250mmである。更に図8Bを参照すれば、流水跳ね返し部87の長さL87は、軸方向視で350mmである。またバケット83の径方向内側端部83aの曲率半径R87は、軸方向視の曲率半径であり、当該半径は適宜設定することができる。なお、本実施形態では、バケット83と流水跳ね返し部87とのなす角度αは、75度である。
【0103】
また図8Aを参照すれば、本実施形態では、動力伝達装置40の規格は、次のとおりである。入力ギア811のギア数G1は65ピッチである。出力ギア822のギア数G2は13ピッチである。即ち、本実施形態では、入力ギア811と出力ギア822とのギア比は5:1である。本実施形態では、上述した規格の流水路10の下、これらの条件に従って使用することにより、発電機30の回転数として、発電機の定格回転数=200〜300rpmを確保することができる。また本実施形態によれば、図8Aに示す水車80の回転トルクは550×9.8Nm(550kgf)を得ることができる。
【0104】
図9Aは、図8A及び図8Bに係るリニア水力発電装置の変形例であって、当該変形例を、図8AのC−C断面相当の断面で示す断面図である。
【0105】
本実施形態では、流水路10及び水車80の規格は、図8A及び図8Bに示したリニア水力発電装置と同様である。
【0106】
本実施形態では、動力伝達装置40の規格は、次のとおりである。本実施形態では、図8Aの動力伝達装置40において、入力ギア811を小径化している。本実施形態では、入力ギア811のギア数G1は39ピッチであり、出力ギア822のギア数G2は13ピッチである。即ち、本実施形態では、入力ギア811と出力ギア822とのギア比は3:1である。本実施形態では、上述した規格の流水路10の下、これらの条件に従って使用することにより、発電機30の回転数として、150rpm以上を確保することができる。また本実施形態によれば、図9Aに示す水車80の水車80の回転トルクは450×9.8Nm(450kgf)を得ることができる。
【0107】
また本発明に係るリニア水力発電装置によれば、流水路10の水速度Vに応じて、水車80の長翼の翼数を変更することが好ましい。具体例としては、水車80の長翼の翼数は、水速度Vの上昇に従って減少させることが好ましい。
【0108】
図9Bは、図8Aに係るリニア水力発電装置の他の変形例であって、当該変形例を、図8AのC−C断面相当の断面で示す断面図である。
【0109】
本実施形態では、流水路10の規格は、基本的に、図8A等のリニア水力発電装置と同様であるが、本実施形態は、水速度Vが5m/s以上の流水路での使用に適しているである。
【0110】
また本実施形態では、水車80の規格は、次のとおりである。水車80は、6枚の長翼を有している。前記長翼は、図8A等のリニア水力発電装置と同様、平板のバケット83からなる。水車80の直径R80、水車幅W80及びバケット幅W83は図8A等のリニア水力発電装置と同様である。バケット83の水車径方向長さL83は、250mmである。流水跳ね返し部87の長さL87は、軸方向視で430mmである。またバケット83の径方向内側端部83aの曲率半径R87は、軸方向視の曲率半径であり、当該半径は適宜設定することができる。
【0111】
また本実施形態では、動力伝達装置40の規格は、図9Aの動力伝達装置40と同様である。入力ギア811のギア数G1は39ピッチである。出力ギア822のギア数G2は13ピッチである。即ち、本実施形態では、入力ギア811と出力ギア822とのギア比は3:1である。本実施形態では、上述した規格の流水路10の下、これらの条件に従って使用することにより、発電機30の回転数として、発電機の定格回転数=250rpm以上を確保することができる。また本実施形態によれば、図9Bに示す水車80の回転トルクは250×9.8Nm(250kgf)を得ることができる。
【0112】
図10は、図8Aに係るリニア水力発電装置の更なる変形例であって、当該変形例を、図8AのC−C断面相当の断面で示す断面図である。
【0113】
本発明に従えば、流水跳ね返し部87は、図3A等の水車20に適用することができる。図10の実施形態では、流水跳ね返し部87の径方向内側端部87aは、図10に示す軸方向視で、回転軸21の径方向に沿って、バケット23とバケット補助板27との連結部分とバケット補助板27の径方向内側端部27aとの間のいずれかの位置に配置することができる。本実施形態では、流水跳ね返し部87の径方向内側端部87aは、バケット補助板27の径方向内側端部27aに連結されている。特に本実施形態では、流水跳ね返し部87の径方向内側端87e1は、バケット補助板27の径方向内側端と一致している。なお、「バケット23とバケット補助板27との連結部分」は、水車20をバケット23単体で見た場合、当該バケット23の径方向内側端部23aに相当する。また、当該連結部分は、水車20をバケット補助板27単体で見た場合、当該バケット補助板27の径方向外側端部27bに相当する。
【0114】
これに対し、流水跳ね返し部87の他方が連結される、「他方のバケットの径方向外側端部」は、バケット23のうち、直線形の受圧面25を有する部分とすることができる。本実施形態では、流水跳ね返し部87の径方向外側端部87bは、バケット23の径方向外側端部(先端部)23bに連結されている。この場合、流水跳ね返し部87は、図10に示すように軸方向視で、受圧面25を形作る直線と一致するように延在させることが好ましい。また本実施形態では、流水跳ね返し部87の径方向外側端87e2は、バケット23の径方向外側端(先端)と一致している。
【0115】
本実施形態では、バケット23及び流水跳ね返し部87は、例えば、一枚の板材に対してプレス加工等を行うことによって形作られている。即ち、本実施形態では、バケット23及び流水跳ね返し部87は、一体成形物である。
【0116】
上述したところは、本発明の数種の実施形態を開示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、上述の各実施形態において、各流水路は、図1等の平面視で示すように、直線状であることが好ましいが、本発明によれば、各流水路は、曲線状とすることもできる。また上述の各実施形態では、前記水車の長翼は、バケットのみ、又は、バケット及びバケット補助板のいずれか一方で構成することができる。上述した各実施形態に係るリニア水力発電装置の各構成、例えば、水車の長翼及びバケットの各構成、並びに、上述した変形例に係るリニア水力発電装置の各構成、例えば、水車の長翼及びバケットの各構成は、それぞれ、互いに適宜に置き換えて、又は、組み合わせて使用することができる。更に本発明は、上述のとおり、水車の直径は、適宜変更することができる。特に、水車の直径を小さくすれば、水車の回転速度を大きく得ることができる。
【符号の説明】
【0117】
10:流水路, 11:底壁, 12:側壁, 15:水門, 16:障害物排除設備, 17:補強支柱, 20:水車, 20A〜20E:水車, 70:水車, 80:水車, 21:回転軸, 22:ベアリング, 23:バケット, 23a:バケットの径方向内側端部, 23b:バケットの径方向外側端部, 24:受圧面, 24´:受圧面, 25:受圧面, 25´:受圧面, 26:受圧面, 27:バケット補強板, 27a:バケット補強板の径方向内側端部, 27b:バケット補強板の径方向外側端部, 28:支持板, 29:バケット補強部, 30:発電機, 40:動力伝達装置, 50:集電盤, 60:水車, 70:水車, 80:水車, 83:バケット, 83a:バケットの径方向内側端部, 83b:バケットの径方向外側端部, 84:受圧面, 87:流水跳ね返し部, 87a:流水跳ね返し部の径方向内側端部, 87b:流水跳ね返し部の径方向外側端部,100:リニア水力発電装置, 200:リニア水力発電装置, 300:リニア水力発電装置, 400:リニア水力発電装置, 500:リニア水力発電装置, D10:流水路の水深, D20:水車の浸水深さ, D80:水車の浸水深さ, Df:残部深さ, L20:水車間ピッチ長さ(水車の間の間隔), L23:バケットの水車径方向長さ, L83:バケットの水車径方向長さ, L25:直線形の受圧面の延在長さ, L27:バケット補助板の水車径方向長さ, R87:流水跳ね返し部の径方向内側端部の曲率半径, L87:流水跳ね返し部の水車径方向長さ, R24:バケットの曲率半径, S10:流路面積, S10−1:遊水流層の流路面積, S10−2:受圧水流層の流路面積, S20:水車の受圧面積, S23:バケットの受圧面積, S27:バケット補強板の受圧面積, S70:水車の受圧面積, VL:水車周辺水流体積, VW:水車浸水体積, W10:流水路幅, W10A:第1流水路の流水路幅, W10B:第2流水路の流水路幅, W20:水車幅, W23:バケット幅, WF:水面幅
【要約】
【課題】落差の少ない河川の横流水勢力を活用し、任意のスペースに対して所望の大きさの施設が可能な水力発電装置を提供する。
【解決手段】リニア水力発電装置100は、勾配を有した流水路10と、流水路10内に配置された複数の水車20と、水車20によって駆動される発電機30と、を有する。水車20は、回転軸21と、回転軸21の周方向に配置された複数のバケット23と、を有する。流水路10の水深D10は、バケット23が流水に浸水する深さD20の2倍以上である。水深D10を2倍とする意図は、バケット23が稼動所要水量分(流水路を通過する水量)の2倍にして、当該バケット23の水流妨害抵抗分をキャンセルすることにある。水流が少ない場合は、その分、流水路10の横幅を拡大して水流の流水勢力の不足分の流量を補う。
【選択図】図2A
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10