(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる二重管50を示す断面図である。二重管50は、空調装置(図示省略)の冷媒(流体)が循環する熱交換器として設けられる。
【0015】
二重管50は、伝熱部材として設けられる螺旋状の螺旋フィン10と、内部に螺旋フィン10が設けられる内管20と、内部に内管20が設けられる外管30と、を備える。螺旋フィン10、内管20、及び外管30は、例えばアルミニウム等の金属を材質とする。
【0016】
螺旋フィン10は、後述するように、帯板状のフィン材11が螺旋状に捩られることで成形される。
【0017】
内管20は、内部に内側流路51を形成する。内管20の両端部(図示省略)には、冷媒を導く配管(図示省略)が接続される。
【0018】
外管30は、内管20との間に外側流路52を形成する。外管30と内管20との間には、環状の流路間隙29が形成される。流路間隙29の両端は、閉塞される。外管30には、外側流路52に冷媒を導く入口58及び出口59が開口する。
【0019】
空調装置の作動時に、外側流路52では、
図1に矢印A、Bで示すように、高温高圧の液状冷媒が入口58及び出口59を通じて流通する。一方、内側流路51では、
図1に矢印C、Dで示すように、低温低圧のガス状冷媒が流通する。こうして、外側流路52及び内側流路51を流通する冷媒どうしが熱交換する。
【0020】
内管20及び螺旋フィン10は、熱交換器の要素としてフィン内蔵管40を構成する。空調装置の作動時に、フィン内蔵管40では、内側流路51を流通する冷媒が螺旋フィン10に沿って螺旋状に旋回しながら流通することで、冷媒が内管20を介して熱交換することが促される。
【0021】
図2は、二重管50の端部53を拡大して示す断面図である。二重管50の両端部53では、外管30、内管20、及びフィン材11が同一位置にてカシメによって固定される。
【0022】
外管30は、円筒状の本体部31と、略円錐状の絞り壁部33と、突起状の外カシメ部32と、略円錐状(漏斗状)の開口端部34と、を有する。
【0023】
外カシメ部32は、本体部31の両端部53をカシメることによって形成される。外カシメ部32は、本体部31から内径側に突出するように形成され、内管20の外周面に圧接される。外カシメ部32は、周方向に一定の間隔をもって複数形成されるとともに、長手方向に一定の間隔をもって複数並ぶように形成される。周方向に並ぶ複数の外カシメ部32は、互いに連なり、外管30の本体部31を全周にわたって縮径させる。長手方向において隣り合う外カシメ部32の間には、後述するろう材を滞留させるための空間として滞留部54が設けられる。
【0024】
なお、「径方向」、「周方向」、「長手方向」は、それぞれ、二重管50の中心線Oを中心とする放射方向、中心線O回りの方向、中心線Oが延在する方向、を意味する。又、「内径側」、「外径側」は、それぞれ、径方向での内方、外方を意味する。
【0025】
絞り壁部33は、各外カシメ部32及び本体部31から連続して湾曲する環状の部位である。絞り壁部33は、外部に対して流路間隙29の一端を閉塞する。
【0026】
開口端部34は、各外カシメ部32から連続して湾曲する環状の部位である。開口端部34は、外部に開口した間隙(空間)28を形成する。
【0027】
内管20は、円筒状の本体部21と、本体部21から全周にわたって縮径する内カシメ部22と、を有する。
【0028】
内カシメ部22は、外管30の本体部31の両端近傍をカシメることによって外カシメ部32とともに形成される。内カシメ部22は、本体部21から内径側に突出するように形成される。内カシメ部22は、外カシメ部32と同様に、周方向に一定の間隔をもって複数形成されるとともに、長手方向に一定の間隔をもって複数並ぶように形成される。周方向に並ぶ複数の内カシメ部22は、互いに連なり、内管20の本体部21を全周にわたって縮径させる。
【0029】
各内カシメ部22の内周は、フィン材11の両側端12に当接し、フィン材11の両側端12をカシメによって固定する。
【0030】
フィン材11は、各内カシメ部22の内周に当接してカシメによって固定されるフィン固定部15を有する。フィン固定部15は、フィン材11の先端13に対して所定距離Lを持つ位置に形成される。螺旋フィン10は、フィン固定部15から先端13にかけて延在する帯板状のフィン端部14を有する。
【0031】
二重管50は、外カシメ部32の内周と内カシメ部22の外周とをろう付けによって接合するシール部45(接合部)を備える。環状のシール部45は、外管30と内管20との間を密封する。
【0032】
次に、二重管50の製造方法について説明する。
【0033】
二重管50の製造時には、一方の端部53におけるカシメ工程と、フィン材11を螺旋状に捩ることで成形する成形工程と、他方の端部53におけるカシメ工程と、外管30の内周を内管20の外周に接合する接合工程と、を順に行う。
【0034】
まず、カシメ工程では、
図3に示すカシメ装置60が用いられる。カシメ装置60は、放射状に配置される複数(ここでは8個)の工具61と、各工具61を半径方向に移動可能に支持する支持機構(図示省略)と、各工具61を互いに同期して駆動する駆動機構(図示省略)と、を備える。
【0035】
カシメ工程では、
図4(A)に示すように、周方向に並ぶ各工具61の内径側にフィン材11及び内管20を内部に介在させた外管30を保持し、各工具61を図中矢印で示すように外管30の外周に同期して打ち込む。
【0036】
図4(B)は、こうして各工具61が外管30に打ち込まれた状態を示している。外管30では、各工具61が打ち込まれる部位が塑性変形することで、外カシメ部32が形成される。
【0037】
周方向に並ぶ各外カシメ部32は、外管30に打ち込まれた各工具61の先端とともに、多角形(ここでは八角形)に沿うように配置される。これにより、外管30の各外カシメ部32に連接する部位は、略円錐状に塑性変形することで、絞り壁部33又は開口端部34が形成される。
【0038】
このとき、外カシメ部32は、内径側に突出することで、その内周が内管20の外周に当接する。つまり、外管30に対して内管20がカシメによって固定される。
【0039】
同時に、内管20では、外カシメ部32が周方向に均等な間隔をもって圧接することにより、内カシメ部22が内管20の全周にわたって縮径するように形成される。内カシメ部22がフィン材11の側端12に当接することで、内管20に対してフィン端部14がカシメによって固定される。
【0040】
内カシメ部22が縮径する過程で、その内周がフィン材11の両側端12に当接すると、フィン材11からの反力によって内カシメ部22がそれ以上に縮径することが抑えられる。これにより、外カシメ部32及び内カシメ部22の変形量にバラツキが生じることが抑えられる。
【0041】
図4(B)に実線で示すように、互いに対向する一対の工具61を結ぶ直線F上にフィン材11が延在するように配置されることで、フィン材11の反力が工具61の移動方向に働く。こうしてフィン材11がストッパの役目をすることにより、工具61の移動量が精度よく規制され、外カシメ部32及び内カシメ部22の変形量のバラツキが小さく抑えられる。そして、内カシメ部22の内周がフィン材11に圧接することで、内管20に対してフィン端部14(
図2参照)が保持される。
【0042】
なお、上記した配置に限らず、
図4(B)に2点鎖線で示すように、直線Fに対してフィン材11が傾斜するように配置されてもよい。即ち、工具61の先端から周方向にずれた位置にフィン材11が配置されてもよい。この場合にも、フィン材11の反力によって工具61の移動量が規制されることで、外カシメ部32及び内カシメ部22の変形量のバラツキが抑えられる。そして、内カシメ部22の内周がフィン材11に圧接することで、内管20に対してフィン端部14(
図2参照)が保持される。
【0043】
又、外カシメ部32及び内カシメ部22の変形量のバラツキが小さく抑えられることで、滞留部54は、その空間が過度に大きくならずに、適正な容積の空間が形成される。これにより、滞留部54に充填されるろう材の量が多くならずに、後述するように接合工程で用いられるろう材B(
図7参照)の使用量が多くならないで済む。
【0044】
こうして、二重管50の一方の端部53では、外管30、内管20、及びフィン材11が同時に同一位置にてカシメによって固定される。
【0045】
図5(A)に示す二重管50は、長手方向に並ぶ複数(3個)の外カシメ部32の隣り合うものどうしが直線上に配置される。これにより、周方向に並ぶ外カシメ部32と内管20の外周との間に形成される間隙が直線上に並ぶ。このため、後述する接合工程において、ろう材(接合材)が間隙を通じて長手方向に導かれ、ろう材が外カシメ部32の奥の滞留部54まで行き渡るようにしてシール部45を形成することができる。
【0046】
なお、上記した構成に限らず、
図5(B)に示すように、二重管50は、長手方向に並ぶ複数(3個)の外カシメ部32の隣り合うものどうしが周方向についてオフセットされる構成としてもよい。この場合には、長手方向について並ぶ外カシメ部32どうしの間隔が大きくなるため、カシメ工程において各外カシメ部32の加工(塑性変形)が互いに干渉することなく行われる。
【0047】
次に、フィン材11等を成形する成形工程が行われる。
【0048】
成形工程では、
図6に示す成形装置70が用いられる。成形装置70は、内管20の内部に挿入する芯金71を備える。円柱状の芯金71は、長手方向に延在して開口するスリット72を有する。
【0049】
成形工程では、まず、チャック(図示省略)が外管30の外周を把持し、芯金71を内管20に挿入する。このとき、芯金71のスリット72にフィン材11が挿入される。
【0050】
続いて、
図6に矢印Hで示すように、チャックに把持された外管30及び内管20を芯金71に対して中心線O方向に移動するとともに、
図6に矢印Eで示すように、芯金71を外管30及び内管20に対して一方向に回転させる。
【0051】
これにより、芯金71のスリット72から出ていくフィン材11がフィン固定部15を支点として捩られることで、内管20の内部で螺旋フィン10が形成される。
【0052】
このときに、芯金71を内管20の中心線O方向に移動させる移動速度と、駆動機構(図示省略)によって芯金71を回転させる回転速度と、を制御する。これにより、フィン材11は、内管20に対して任意の位置で捩られる。フィン内蔵管40は、内管20に対するフィン材11の捩れ位置を任意に設定することができる。
【0053】
なお、外管30及び内管20を中心線O方向に移動する過程で、曲げ加工機(図示省略)を用いて外管30、内管20、及びフィン材11をともに曲げ加工してもよい。
【0054】
次に、二重管50の他方の端部53にて、カシメ工程が行われる。このカシメ工程においても、外管30、内管20、及びフィン材11が同時に同一位置にてカシメによって固定される。
【0055】
次に、シール部45をろう付けによって接合する接合工程が行われる。この接合工程では、接合材としてろう材が用いられる。シール部45は、ろう材が隙間なく環状に充填されることで、外管30と内管20との間を密封する。
【0056】
図7に示すように、接合工程では、開口端部34を上方に向け、ろう材Bを空間28に載置する。そして、トーチ等によりろう材Bを溶融させる。これにより、溶融したろう材Bが周方向に隣り合う外カシメ部32の間の空間を通過し、外管30と内管20との間を外側流路52に向かって流れてゆく。このとき、長手方向において隣り合う外カシメ部32の間には滞留部54が形成されているので、外側流路52に向かって流れるろう材は、滞留部54に滞留する。これにより、溶融したろう材が外側流路52内に到達すること、つまり、溶融したろう材が外側流路52内に侵入することを防止できる。
【0057】
又、二重管50では、
図5(A)に示すように、外カシメ部32が長手方向に直線上に3箇所並ぶように形成されていることで、外側流路52内へのろう材の侵入をより確実に防止できる。
【0058】
なお、二重管50は、上記した構成に限らず、
図5(B)に示すように、外カシメ部32の長手方向に隣り合うものどうしが周方向についてオフセットされていることで、周方向に隣り合う外カシメ部32の間の空間を通過したろう材の流れが、隣の列の外カシメ部32によって阻害されるため、ろう材が外側流路52内に進入することをより一層防止できる。
【0059】
以上のようにして、二重管50が製造される。次に、本実施形態の効果について説明する。
【0060】
本実施形態によれば、二重管50は、外管30の内部に流路間隙29をもって内管20が設けられ、内管20の内部にフィン材11が設けられる。外管30は、内径側に突出する外カシメ部32を有する。内管20は、外カシメ部32と重なる内カシメ部22を有する。外管30と内管20との間には、外管30と内管20との間をシールするシール部45が設けられる。そして、フィン材11は、内カシメ部22に保持される。
【0061】
又、本実施形態によれば、外管30をカシメることによって内管20を変形させて内カシメ部22を形成し、内カシメ部22を形成することによって内カシメ部22にフィン材11を保持させ、外管30と内管20との間に外管30と内管20との間をシールするシール部45を設ける二重管50の製造方法が提供される。
【0062】
これにより、二重管50は、外管30、内管20、及びフィン材11が同時にカシメによって固定されるため、各部材の成形にかかる工数を減らすことができる。よって、二重管50を効率よく生産することができる。
【0063】
そして、外管30と内管20では、カシメによって変形する変形部である外カシメ部32と内カシメ部22とが径方向に並ぶため、外管30と内管20との間に形成される間隙の形状精度を高められる。これにより、外管30と内管20との間に形成されるシール部45の品質を高められる。
【0064】
又、二重管50では、外カシメ部32及び内カシメ部22が、それぞれ長手方向に複数並んで形成される。
【0065】
これにより、複数の内カシメ部22がフィン材11に対して長手方向に並んで当接する。これにより、フィン端部14の固定力が高まり、成形工程にてフィン端部14が内管20に対して動かないようにして、螺旋フィン10を所期の形状に成形することができる。
【0066】
又、二重管50では、外カシメ部32及び内カシメ部22が、それぞれ周方向に複数並んで形成される。
【0067】
これにより、カシメ工程にて、複数の外カシメ部32が内カシメ部22に対して周方向に並んで圧接するため、内カシメ部22が内管20を全周にわたって縮径させる。よって、内カシメ部22は、内管20に対するフィン材11の角度位置によらず、フィン材11を保持することができる。又、接合工程にて、ろう材が周方向に隣り合う外カシメ部32の間の隙間を通って外側流路52側に流れ、外管30と内管20との間の広範囲に広がることができる。これにより、シール性が向上する。
【0068】
又、二重管50では、外カシメ部32及び内カシメ部22が、それぞれ長手方向及び周方向に複数並んで形成される。そして、長手方向において隣り合う外カシメ部32及び内カシメ部22の間には、ろう材を滞留させるための滞留部54が形成される。
【0069】
これにより、外管30と内管20との間に溶融したろう材を滞留部54に滞留させることができるので、ろう材が外側流路52内に侵入することを防止できる。
【0070】
又、二重管50では、周方向に隣り合う外カシメ部32の間に、ろう材が流れる隙間が形成される。
【0071】
これにより、ろう材が周方向に隣り合う外カシメ部32の間の隙間を通って滞留部54に充填される。これにより、シール性が向上する。
【0072】
又、二重管50では、外カシメ部32の長手方向に隣り合うもの同士が、周方向にオフセットされる。
【0073】
これにより、外カシメ部32の長手方向に隣り合うものどうしが周方向についてオフセットされていることで、周方向に隣り合う外カシメ部32の間の空間を通過したろう材の流れが、隣の列の外カシメ部32によって阻害される。これにより、ろう材が外側流路52内に進入することをより一層防止できる。
【0074】
又、二重管50では、外管30は、周方向に並ぶ複数の外カシメ部32から連続して湾曲する環状の絞り壁部33をさらに有する。絞り壁部33は、流路間隙29の一端を閉塞する。
【0075】
これにより、周方向に並ぶ複数の外カシメ部32を形成することによって、流路間隙29の一端を閉塞する絞り壁部33が形成される。よって、二重管50を効率よく生産することができる。
【0076】
又、本実施形態によれば、内管20の内部でフィン材11を捩って螺旋フィン10を成形する二重管50の製造方法が提供される。
【0077】
これにより、二重管50の製造時には、内管20の内部でフィン材11を捩って螺旋フィン10を成形することで、成形後の螺旋フィン10を内管20の内部に挿入する工程が無くなる。よって、二重管50を効率よく生産することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0079】
例えば、上記実施形態の二重管50は、熱交換器を構成する熱交換チューブとして好適であるが、熱交換器以外に使用される機械又は設備にも適用できる。
【0080】
又、二重管50は、螺旋フィン10を備えない構成としても、熱交換器として用いることができる。
【解決手段】二重管50は、外管30の内部に流路間隙29をもって内管20が設けられ、内管20の内部にフィン材11が設けられる。外管30は、内径側に突出する外カシメ部32を有する。内管20は、外カシメ部32と重なる内カシメ部22を有する。外管30と内管20との間には、外管30と内管20との間をシールするシール部45が設けられる。そして、フィン材11は、内カシメ部22に保持される。