特許第6442235号(P6442235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442235
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ユーザ装置及び基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/08 20090101AFI20181210BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20181210BHJP
【FI】
   H04W72/08
   H04W72/04 111
   H04W72/04 132
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-227552(P2014-227552)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-92699(P2016-92699A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】内野 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ウリ アンダルマワンティ ハプサリ
【審査官】 石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/044436(WO,A1)
【文献】 Qualcomm Incorporated,2UL inter-band CA protection of GNSS [online],3GPP TSG-RAN WG4 #72bis R4-146495,2014年 9月30日,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_72Bis/Docs/R4-146495.zip>
【文献】 TeliaSonera AB,Inter-band CA with 2UL WF [online],3GPP TSG-RAN WG4 #72bis R4-145619,2014年10月13日,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_72Bis/Docs/R4-145619.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 − 99/00
H04B 7/24 − 7/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置であって、
基地局との無線通信を制御する無線通信制御部と、
他のRAT(Radio Access Technology)システムとの無線通信を制御する他RAT無線通信制御部と、
アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージを前記基地局に送信する他RAT通信状態報告部と、
を有し、
前記アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記他RAT通信状態報告部は、前記干渉を生じさせるセカンダリセルについて所定値以下のパワーヘッドルームを前記基地局に報告するユーザ装置。
【請求項2】
アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置であって、
基地局との無線通信を制御する無線通信制御部と、
他のRAT(Radio Access Technology)システムとの無線通信を制御する他RAT無線通信制御部と、
アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージを前記基地局に送信する他RAT通信状態報告部と、
を有し、
前記アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記他RAT通信状態報告部は、前記アップリンクキャリアアグリゲーションのセルの内、前記干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセルとのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことを前記基地局に報告するユーザ装置。
【請求項3】
アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置であって、
基地局との無線通信を制御する無線通信制御部と、
他のRAT(Radio Access Technology)システムとの無線通信を制御する他RAT無線通信制御部と、
アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージを前記基地局に送信する他RAT通信状態報告部と、
を有し、
前記アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記他RAT通信状態報告部は、前記干渉を生じさせるセカンダリセルの品質が劣化したことを前記基地局に報告するユーザ装置。
【請求項4】
前記他RAT通信状態報告部は、前記基地局からの指示によって起動又は停止される、請求項1乃至3何れか一項記載のユーザ装置。
【請求項5】
アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置であって、
基地局との無線通信を制御する無線通信制御部と、
他のRAT(Radio Access Technology)システムとの無線通信を制御する他RAT無線通信制御部と、
アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記無線通信制御部は、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルへの送信を自律的に停止し、
前記アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記無線通信制御部は、前記干渉を生じさせるセカンダリセルへの送信を自律的に停止するアップリンク送信停止イベントを実行し、
前記アップリンク送信停止イベントは、再接続処理を実行すること、前記干渉を生じさせるセカンダリセルに対するタイミングアドバンスタイマを停止若しくは満了させること、又は前記アップリンクキャリアアグリゲーションの内、前記干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセルとのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったと判定することであるユーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(Third Generation Partnership Project)において、LTE(Long Term Evolution)システム及びLTE−Advancedシステムの高機能化が図られている。現在、キャリアアグリゲーション技術をアップリンク通信に適用するアップリンクキャリアアグリゲーション(Uplink Carrier Aggregation:UL CA)の導入が検討されている。アップリンクキャリアアグリゲーションでは、ユーザ装置(User Equipment:UE)が複数のコンポーネントキャリア(Component Carrier:CC)を同時に利用して、基地局(evolved NodeB:eNB)にアップリンク信号を送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 V12.3.0(2014−09)
【非特許文献2】3GPP TS36.306 V12.2.0(2014−09)
【非特許文献3】3GPP TS36.321 V12.3.0(2014−09)
【非特許文献4】3GPP TS36.331 V12.3.0(2014−09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スマートフォンやタブレットなどのユーザ装置は、典型的には、基地局との通信中にGPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)を含む他のRAT(Radio Access Technology)システムと無線通信を行う。アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中にユーザ装置が複数のキャリアで無線信号を同時送信する場合、キャリア周波数の組み合わせにより、アップリンクキャリアアグリゲーションにより生じる相互変調歪み(Inter−Modulation Distortion:IMD)がGNSSなどの他のRATシステムの受信帯域に落ちるケースがある。例えば、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて、800MHz帯域と1.7GHz帯域とが同時使用される場合、5次の相互変調歪み(IMD5)が1535〜1615MHz帯域に発生することが知られている。図1に示されるように、このIMD5の発生領域は各種GNSS信号の受信帯域と重複するため、ユーザ装置内のデバイス間に干渉が生じる。この結果、800MHz帯域と1.7GHz帯域との組み合わせによるアップリンクキャリアアグリゲーションの実行中は、ユーザ装置はGNSS信号を受信することができず、位置情報を取得できなくなる。
【0005】
上述した問題点を鑑み、本発明の課題は、アップリンクキャリアアグリゲーション通信中に他のRATシステムとの無線通信を実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置であって、基地局との無線通信を制御する無線通信制御部と、他のRATシステムとの無線通信を制御する他RAT無線通信制御部と、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージを前記基地局に送信する他RAT通信状態報告部とを有するユーザ装置に関する。
【0007】
本発明の他の態様は、アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有する基地局であって、ユーザ装置との無線通信を制御する無線通信制御部と、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他のRATシステムとの無線通信が起動されたことに応答して前記ユーザ装置から送信されたトリガメッセージを受信するトリガメッセージ受信部とを有する基地局であって、前記無線通信制御部は、前記トリガメッセージの受信に応答して、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止する基地局に関する。
【0008】
本発明の更なる他の態様は、アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置であって、基地局との無線通信を制御する無線通信制御部と、他のRATシステムとの無線通信を制御する他RAT無線通信制御部と、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記他のRATシステムとの無線通信が起動されると、前記無線通信制御部は、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルへの送信を自律的に停止するユーザ装置に関する。
【0009】
本発明の更なる他の態様は、アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有する基地局であって、ユーザ装置との無線通信を制御する無線通信制御部と、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に前記ユーザ装置による他のRATシステムとの無線通信の起動を自律的に検出する他RAT通信状態検出部とを有し、前記他のRATシステムとの無線通信の起動が検出されると、前記無線通信制御部は、前記アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止する基地局に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、アップリンクキャリアアグリゲーション通信中に他のRATシステムとの無線通信を実現するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、GNSSの受信帯域とUL CAの相互変調歪みとの干渉を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施例による無線通信システムを示す概略図である。
図3図3は、本発明の第1実施例によるユーザ装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の第1実施例による基地局の構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の第1実施例によるユーザ装置におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。
図6図6は、本発明の第1実施例による基地局におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。
図7図7は、本発明の第2実施例によるユーザ装置の構成を示すブロック図である。
図8図8は、本発明の第2実施例によるユーザ装置におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。
図9図9は、本発明の第3実施例による基地局の構成を示すブロック図である。
図10図10は、本発明の第3実施例による基地局におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
以下の実施例では、アップリンクキャリアアグリゲーション機能を有するユーザ装置及び基地局が開示される。
【0014】
後述される実施例を概略すると、第1実施例では、ユーザ装置が、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他のRATシステム(測位システムなど)との無線通信を起動することを基地局に報告する。当該報告を受信すると、基地局は、他のRATシステムとの無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルへのリソース割当を停止する。
【0015】
第2実施例では、ユーザ装置が、基地局によるアップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他のRATシステムとの無線通信を起動する際、他のRATシステムとの無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルのアップリンク送信を自律的に停止する。
【0016】
第3実施例では、基地局が、ユーザ装置による他のRATシステムとの無線通信の起動を自律的に検出し、他のRATシステムとの無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルへのリソース割当を自律的に停止する。
【0017】
これらの実施例によると、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて発生する相互変調歪みの発生領域と重複する周波数帯域を利用する他のRATシステムとの無線通信が、相互変調歪みによる干渉を受けることを回避することが可能になる。
【0018】
図2を参照して、本発明の一実施例による無線通信システムを説明する。図2は、本発明の一実施例による無線通信システムを示す概略図である。
【0019】
図2に示されるように、無線通信システム10は、ユーザ装置100,300,500及び基地局200,400,600を有する。説明の便宜上、後述する第1実施例では、ユーザ装置100及び基地局200が使用され、第2実施例では、ユーザ装置300及び基地局400が使用され、第3実施例では、ユーザ装置500及び基地局600が使用されるとする。
【0020】
無線通信システム10は、例えば、アップリンクキャリアアグリゲーションをサポートするLTEシステム又はLTE−Advancedシステムである。すなわち、ユーザ装置100,300,500は、図示されるように、複数のコンポーネントキャリアCC#1,CC#2を同時に用いて基地局200,400,600に無線信号を送信することができる。図示された実施例では、ユーザ装置100,300,500は、1つの基地局200,400,600とアップリンクキャリアアグリゲーション通信を行うことしか示されていないが、本発明は、これに限定されるものでない。例えば、ユーザ装置100,300,500は、複数の基地局200,400,600により提供されるコンポーネントキャリアを同時に利用して、複数の基地局200,400,600と同時にアップリンク送信を行ってもよい(デュアルコネクティビティ)。また、図示された実施例では、1つの基地局200,400,600しか示されていないが、無線通信システム10のサービスエリアをカバーするよう多数の基地局200,400,600が配置される。
【0021】
ユーザ装置100,300,500は、基地局200,400,600により提供される複数のキャリアを同時に利用して、基地局200,400,600に無線信号を送信するアップリンクキャリアアグリゲーション機能を有する。また、ユーザ装置100,300,500は、測位システム(GNSSシステム)などの他RATシステム700と無線通信するための通信機能を有する。
【0022】
典型的には、ユーザ装置100,300,500は、図示されるように、スマートフォン、携帯電話、タブレット、モバイルルータ、ウェアラブル端末などの無線通信機能を備えた何れか適切な情報処理装置であってもよい。ユーザ装置100,300,500は、プロセッサなどのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどのメモリ装置、基地局200,400,600との間で無線信号を送受信するための無線通信装置、他RATシステム700との間で無線信号を送受信するための無線通信装置などから構成される。例えば、後述されるユーザ装置100,300,500の各機能及び処理は、メモリ装置に格納されているデータやプログラムをCPUが処理又は実行することによって実現されてもよい。しかしながら、ユーザ装置100,300,500は、上述したハードウェア構成に限定されず、後述する処理の1以上を実現する回路などにより構成されてもよい。
【0023】
基地局200,400,600は、ユーザ装置100,300,500と無線接続することによって、コアネットワーク(図示せず)上に通信接続された上位局やサーバ800から受信したダウンリンク(DL)パケットをユーザ装置100,300,500に送信すると共に、ユーザ装置100,300,500から受信したアップリンク(UL)パケットをサーバ800に送信する。基地局200,400,600は、複数のキャリアを介しユーザ装置100,300,500から無線信号を同時に受信するアップリンクキャリアアグリゲーション機能を有する。
【0024】
基地局200,400,600は、典型的には、ユーザ装置100,300,500との間で無線信号を送受信するためのアンテナ、隣接する基地局200,400,600と通信するための通信インタフェース(X2インタフェースなど)、コアネットワークと通信するための通信インタフェース(S1インタフェースなど)、ユーザ装置100,300,500との送受信信号を処理するためのプロセッサや回路などのハードウェアリソースにより構成される。後述される基地局200,400,600の各機能及び処理は、メモリ装置に格納されているデータやプログラムをプロセッサが処理又は実行することによって実現されてもよい。しかしながら、基地局200,400,600は、上述したハードウェア構成に限定されず、他の何れか適切なハードウェア構成を有してもよい。
【0025】
他RATシステム700は、各自の周波数帯域において、無線通信システム10と異なるRATによってユーザ装置100,300,500と無線通信を行う。例えば、他RATシステム700は、測位システムであってもよく、具体的には、GPSシステム、Glonassシステム、Galileoシステム、BeidouシステムなどのGNSSシステムであってもよい。この場合、他RATシステム700は、複数の衛星を用いて各自の周波数帯域において測位信号をユーザ装置100,300,500に送信する。図1を参照して上述したように、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて800MHz帯域と1.7GHz帯域との組み合わせが使用される場合、当該組み合わせにより発生する相互変調歪みの発生領域と他RATシステム700からの無線信号の周波数帯域とが重複することが知られ、当該組み合わせによるアップリンクキャリアアグリゲーション実行中、ユーザ装置100,300,500は測位信号を適切に受信することができなくなる。しかしながら、本発明による他RATシステム700は、測位システムに限定されるものでなく、ユーザ装置100,300,500からのアップリンク送信によって干渉を受ける周波数帯域を利用する他の何れかのRATシステムに適用されてもよい。
【0026】
サーバ800は、無線通信システム10に通信接続され、無線通信システム10を介しユーザ装置100,300,500との間で各種データをやりとりする。典型的には、サーバ800は、ユーザ装置100,300,500にインストールされているアプリケーションからのデータ取得要求を無線通信システム10から受信し、要求されたデータを無線通信システム10を介しユーザ装置100,300,500に送信する。
【0027】
次に、図3〜6を参照して、本発明の第1実施例によるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を説明する。第1実施例では、ユーザ装置100が、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信を起動することを基地局200に報告する。当該報告を受信すると、基地局200は、他RATシステム700との無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルへのリソース割当を停止する。
【0028】
図3は、本発明の第1実施例によるユーザ装置の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、ユーザ装置100は、無線通信制御部110、他RAT無線通信制御部120及び他RAT通信状態報告部130を有する。
【0029】
無線通信制御部110は、基地局200との無線通信を制御する。具体的には、無線通信制御部110は、基地局200との間でアップリンク/ダウンリンク制御チャネルやアップリンク/ダウンリンクデータチャネルなどの各種無線チャネルを送受信すると共に、基地局200により提供される複数のキャリアを同時使用して基地局200に無線信号を送信するアップリンクキャリアアグリゲーションを実行する。
【0030】
他RAT無線通信制御部120は、他RATシステム700との無線通信を制御する。ユーザ装置100は、他RATシステム700に割り当てられた所定の周波数帯域において、無線通信システム10と異なるRATによって他RATシステム700と通信可能である。他RATシステム700は、例えば、GNSSシステムなどの測位システムであってもよく、ユーザ装置100は、測位システムから受信した測位信号に基づきユーザ装置100の位置を測定することができる。上述したように、他RATシステム700の周波数帯域が、アップリンクキャリアアグリゲーションによる相互変調歪みの発生領域と重複することがあり、他RATシステム700との無線通信が、アップリンクキャリアアグリゲーション設定中にユーザ装置100によるアップリンク送信によって干渉を受けることがある。
【0031】
他RAT通信状態報告部130は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージを基地局200に送信する。すなわち、他RAT無線通信制御部120が、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信を起動すると、他RAT通信状態報告部130は、当該他RATシステム700の周波数帯域に干渉を生じさせるアップリンクキャリアアグリゲーションの相互変調歪みの発生を防ぐため、干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を基地局200に停止させるためのトリガメッセージを送信する。ここで、他RAT通信状態報告部130は、他RATシステム700の周波数帯に干渉を生じさせる相互変調歪みを発生させるキャリアを予め把握していてもよい。このとき、当該キャリアがアップリンクキャリアアグリゲーションのセカンダリセルに設定された場合、他RAT通信状態報告部130は、他RATシステム700との無線通信が干渉を受けることを認識することができ、干渉を生じさせるセカンダリセルを特定することが可能となる。
【0032】
LTE規格では、ユーザ装置100から通知されるセカンダリセルに関する報告に応じて、当該セカンダリセルに対するリソース割当を基地局200が停止する制御が規定されている。例えば、PHR(Power Headroom Report)においてセカンダリセルのパワーヘッドルームが所定値より小さい値で報告された場合、アップリンクキャリアアグリゲーションのセル間のアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことが報告された場合、あるいは、セカンダリセルの品質が劣化したことが報告された場合、基地局200は、当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止するよう規定されている。本実施例では、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、他RAT通信状態報告部130は、LTE規格に規定された上記制御を援用して、干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージを基地局200に送信する。当該トリガメッセージを受信すると、基地局200は、当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止する。
【0033】
一実施例では、他RAT通信状態報告部130は、基地局200からの指示によって起動又は停止されてもよい。具体的には、基地局200が、ユーザ装置100に他RATシステム700との無線通信の起動及び/又は停止を報告するよう指示し、当該報告指示を受信した場合に限って、他RAT通信状態報告部130は他RATシステム700との無線通信の起動及び/又は停止を基地局200に報告してもよい。これにより、基地局200は、アップリンクキャリアアグリゲーションの実行中に他RATシステム700との無線通信に干渉を生じさせるキャリアをユーザ装置100に設定した場合に限って、他RATシステム700との無線通信の起動及び/又は停止をユーザ装置100に報告させるようにすることが可能になる。換言すると、アップリンクキャリアアグリゲーションの実行中であっても、ユーザ装置100に他RATシステム700との無線通信と干渉を生じさせるキャリアを設定していない場合、基地局200は、他RATシステム700との無線通信の起動及び/又は停止を不要に報告させることを回避できる。また、基地局200は、ユーザ装置100に対するアップリンクキャリアアグリゲーションの設定を削除する場合、ユーザ装置100に他RATシステム700との無線通信の起動及び/又は停止の報告を停止させてもよい。
【0034】
一実施例では、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、他RAT通信状態報告部130は、干渉を生じさせるセカンダリセルについて所定値以下のパワーヘッドルームを基地局200に報告してもよい。LTE規格によると、ユーザ装置100の送信電力が人体に影響を及ぼすことを防ぐため、各セルに対して送信電力を低減するためのパワーバックオフが規定されている。この規定を利用して、他RAT通信状態報告部130は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、干渉を生じさせるセカンダリセルのパワーバックオフが非常に大きな値(例えば、無限大など)になったとみなし、PHRにおいて当該セカンダリセルのパワーヘッドルームを所定の値より小さい値で報告してもよい。例えば、所定の値は0等任意の値でよい。ユーザ装置100から所定値以下のパワーヘッドルームのセカンダリセルが報告されると、基地局200は、当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止することになる。
【0035】
このとき、他RAT通信状態報告部130は、当該PHRにおいてPフィールドを設定してもよい。パワーヘッドルームがマイナス値になる要因として、上述したパワーバックオフが非常に大きな値になったケースと共に、他の要因によってPHRがトリガされることも想定される、例えば、パスロスが発生したケースも想定される。前者のケースであることを明確にするため、パワーバックオフが非常に大きな値になったことを示すインジケータとして定義されるPフィールドが、PHRにおいて設定されてもよい。
【0036】
また、PHRを送信するためのPHRトリガは、P−MPR(Power management−Maximum Power Reduction)変動に基づくものであり、PHRの頻繁な報告によるアップリンクシグナリングの増大を回避するため、PHR−prohibitTimerの制約を受ける。しかしながら、他RATシステム700との無線通信の起動時には可能な限り早期に基地局200にPHRを送信することが必要となる。このため、他RAT通信状態報告部130は、PHR−prohibitTimerの制約を受けることなく、PHRにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルのパワーヘッドルームを所定値以下の値として基地局200に報告してもよい。
【0037】
その後、他RAT通信状態報告部130は、他RATシステム700との無線通信が終了すると、干渉を生じさせるセカンダリセルのパワーバックオフを当初の値に戻し、当該セカンダリセルについて当初の値によるパワーヘッドルームを基地局200に報告してもよい。例えば、他RATシステム700との無線通信が測位システムとの無線通信である場合、ユーザ装置100の測位処理が終了すると、他RAT通信状態報告部130は、干渉を生じさせるセカンダリセルのパワーバックオフを当初の値に戻し、当該当初の値によるPHRを基地局200に送信してもよい。
【0038】
また、干渉を生じさせるセカンダリセルのパワーヘッドルームをマイナス値により基地局200に報告することは、PHRコンフィギュレーションにおいて指定されてもよい。他RAT通信状態報告部130は、基地局200により通知されるPHRコンフィギュレーションにおいて当該報告機能がオンに指定されている場合に、当該報告を実施してもよい。また、パスロスの変動などの他のPHRトリガが同時に満たされている場合、他RATシステム700との無線通信によるPHRトリガが優先されてもよい。
【0039】
また、このような所定値以下のパワーヘッドルームによる報告機能がユーザ装置100にサポートされているか否かは、UE Capabilityにおける既存の"Power Management Indicator in PHR"により通知されてもよい。これにより、基地局200は、ユーザ装置100から受信したUE Capabilityの"Power Management Indicator in PHR"を参照することによって、ユーザ装置100が当該報告機能をサポートしているか判断することができる。
【0040】
一実施例では、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、他RAT通信状態報告部130は、アップリンクキャリアアグリゲーションのセルの内、干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセル(例えば、プライマリセル)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことを基地局200に報告してもよい。LTE規格によると、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいてセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセル(例えば、プライマリセル)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になった場合、ユーザ装置100は、当該セカンダリセルによるアップリンク送信を停止できることが規定されている。この規定を援用して、他RAT通信状態報告部130は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセル(例えば、プライマリセル)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったとみなし、当該アップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことを基地局200に報告してもよい。ユーザ装置100からアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことが報告されると、基地局200は、ユーザ装置100が当該セカンダリセルによるアップリンク送信を停止したと判断し、当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止することになる。
【0041】
その後、他RAT通信状態報告部130は、他RATシステム700との無線通信が終了すると、干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセル(例えば、プライマリセル)とのアップリンク送信タイミング差を当初の値に戻し、当該アップリンク送信タイミング差を基地局200に報告してもよい。例えば、他RATシステム700との無線通信が測位システムとの無線通信である場合、ユーザ装置100の測位処理が終了すると、他RAT通信状態報告部130は、干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセル(例えば、プライマリセル)とのアップリンク送信タイミング差を当初の値に戻し、当該当初の値によるアップリンク送信タイミング差を基地局200に送信してもよい。
【0042】
一実施例では、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、他RAT通信状態報告部130は、干渉を生じさせるセカンダリセルの品質が劣化したことを基地局200に報告してもよい。キャリアアグリゲーションでは、基地局200は、良好な品質のセルをアップリンクキャリアアグリゲーションのセカンダリセルとして設定する。これを援用して、他RAT通信状態報告部130は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、干渉を生じさせるセカンダリセルの品質が劣化したとみなし、当該セカンダリセルの品質劣化を基地局200に報告してもよい。ユーザ装置100から当該品質劣化が報告されると、基地局200は、当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止することになる。
【0043】
具体的には、他RAT通信状態報告部130は、当該セカンダリセルのCQI(Channel Quality Indicator)をアウト・オブ・レンジ(OOR)として報告してもよいし、当該セカンダリセルの品質劣化を示すメジャメントレポートを報告してもよい。また、当該セカンダリセルがデュアルコネクティビティにおけるPSCellである場合、他RAT通信状態報告部130は、当該PSCellに対して無線リンク障害(RLF)を検出したことを基地局200に報告してもよい。なお、PSCellとは、アップリンク制御チャネル(PUCCH)を受信する特別なセカンダリセルを表す。また、当該無線リンク障害の原因(cause)として"他通信開始"が指定されてもよい。
【0044】
その後、他RAT通信状態報告部130は、他RATシステム700との無線通信が終了すると、干渉を生じさせるセカンダリセルの品質を当初の品質に戻し、当該当初の品質を基地局200に報告してもよい。例えば、他RATシステム700との無線通信が測位システムとの無線通信である場合、ユーザ装置100の測位処理が終了すると、他RAT通信状態報告部130は、干渉を生じさせるセカンダリセルの品質を当初の品質に戻し、当該当初の品質を基地局200に送信してもよい。
【0045】
図4は、本発明の第1実施例による基地局の構成を示すブロック図である。図4に示されるように、基地局200は、無線通信制御部210及びトリガメッセージ受信部220を有する。
【0046】
無線通信制御部210は、ユーザ装置100との無線通信を制御する。具体的には、無線通信制御部210は、ユーザ装置100との間で各種制御信号及びデータ信号を送受信すると共に、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中は複数のキャリアによりユーザ装置100から無線信号を受信する。
【0047】
トリガメッセージ受信部220は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されたことに応答してユーザ装置100から送信されたトリガメッセージを受信する。無線通信制御部210は、当該トリガメッセージの受信に応答して、アップリンクキャリアアグリゲーションの干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止する。上述したように、LTE規格によると、干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を基地局200が停止する制御が規定されている。この規定を援用して、当該トリガメッセージは、例えば、PHRにおけるマイナス値などの所定値以下のパワーヘッドルームのセカンダリセルの報告、アップリンクキャリアアグリゲーションのセルの内、セカンダリセルと他のセル(プライマリセルなど)のアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことの報告、あるいは、セカンダリセルの品質が劣化したことの報告であってもよい。アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、ユーザ装置100は、上述したようなトリガメッセージを基地局200に送信する。当該トリガメッセージを受信すると、無線通信制御部210は、当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止する。
【0048】
一実施例では、トリガメッセージの受信に応答して、無線通信制御部210は、干渉を生じさせるセカンダリセルに対するアップリンクスケジューリングと個別リソースの割り当てとの一方又は双方を停止してもよい。具体的には、無線通信制御部210は、当該セカンダリセルに対するアップリンクデータチャネル(PUSCH)の割当を停止したり、SRS(Sounding Reference Signal)などの個別リソースの割当を停止してもよい。なお、個別リソースが既に割当済みである場合、無線通信制御部210は、当該個別リソースの割当を削除してもよい。
【0049】
また、アップリンクスケジューリングを停止したとしても、ユーザ装置100は、ランダムアクセス(RA)手順をトリガすると想定される。無線通信制御部210は、ユーザ装置100によるPRACH(Physical Random Access Channel)送信を抑制するため、PRACHコンフィギュレーションを削除してもよい。具体的には、無線通信制御部210は、ユーザ装置100が報知情報から受信したPRACHコンフィギュレーションを個別シグナリングにより削除するよう指示してもよい。
【0050】
図5は、本発明の第1実施例によるユーザ装置におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。当該アップリンクキャリアアグリゲーション通信処理は、基地局200が、ユーザ装置100にアップリンクキャリアアグリゲーションを設定したことに応答して開始される。
【0051】
図5に示されるように、ステップS101において、他RAT無線通信制御部120は、他RATシステム700との無線通信を開始する。例えば、他RATシステム700が測位システムである場合、他RAT無線通信制御部120は、ユーザが使用しているアプリケーションからの位置情報の取得要求に応答して、無線測位機能を起動する。
【0052】
ステップS102において、他RAT通信状態報告部130は、他RATシステム700との無線通信の起動に応答して、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて当該無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるリソース割当停止イベントが発生したとみなす。例えば、他RAT通信状態報告部130は、当該セカンダリセルのP−MPR又はパワーバックオフが無限大などの非常に大きな値になったとみなしてもよいし、当該セカンダリセルと他のセル(プライマリセルなど)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったとみなしてもよいし、あるいは、当該セカンダリセルの品質が劣化したとみなしてもよい。
【0053】
ステップS103において、他RAT通信状態報告部130は、当該リソース割当停止イベントの発生を示すトリガメッセージを基地局200に送信する。例えば、他RAT通信状態報告部130は、当該セカンダリセルについてマイナス値などの所定値以下のパワーヘッドルームを示すPHRを基地局200に送信してもよいし、当該セカンダリセルとアップリンクキャリアアグリゲーションの他のセル(プライマリセルなど)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上であることを基地局200に通知してもよいし、あるいは、当該セカンダリセルの品質が劣化したことをメジャメントレポートにより報告してもよい。当該トリガメッセージを受信すると、基地局200は、通知されたセカンダリセルに対するリソース割当を停止する。
【0054】
図6は、本発明の第1実施例による基地局におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。当該アップリンクキャリアアグリゲーション通信処理は、基地局200が、ユーザ装置100にアップリンクキャリアアグリゲーションを設定したことに応答して開始される。
【0055】
図6に示されるように、ステップS201において、トリガメッセージ受信部220は、アップリンクキャリアアグリゲーションにおいて干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止させるトリガメッセージをユーザ装置100から受信する。当該トリガメッセージは、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されたことに応答して、ユーザ装置100から送信される。当該トリガメッセージは、例えば、PHRにおけるマイナス値などの所定値以下のパワーヘッドルームのセカンダリセルの報告、アップリンクキャリアアグリゲーションのセルの内、干渉を生じさせるセカンダリセルと当該セカンダリセル以外のセル(プライマリセルなど)のアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったことの報告、あるいは、メジャメントレポートにおいてセカンダリセルの品質が劣化したことの報告であってもよい。
【0056】
ステップS202において、当該トリガメッセージの受信に応答して、無線通信制御部210は、アップリンクキャリアアグリゲーションの当該セカンダリセルに対するリソース割当を停止する。
【0057】
次に、図7〜8を参照して、本発明の第2実施例によるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を説明する。第2実施例では、ユーザ装置300が、基地局400によるアップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信を起動する際、他RATシステム700との無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルのアップリンク送信を自律的に停止する。
【0058】
図7は、本発明の第2実施例によるユーザ装置の構成を示すブロック図である。図7に示されるように、ユーザ装置300は、無線通信制御部310及び他RAT無線通信制御部320を有する。
【0059】
無線通信制御部310は、基地局400との無線通信を制御する。具体的には、無線通信制御部310は、基地局400との間でアップリンク/ダウンリンク制御チャネルやアップリンク/ダウンリンクデータチャネルなどの各種無線チャネルを送受信すると共に、基地局400により提供される複数のキャリアを同時使用して基地局400に無線信号を送信するアップリンクキャリアアグリゲーションを実行する。
【0060】
他RAT無線通信制御部320は、他RATシステム700との無線通信を制御する。例えば、他RATシステム700がGNSSシステムなどの測位システムである場合、ユーザ装置300は、測位システムから受信した測位信号に基づきユーザ装置300の位置を測定することができる。上述したように、他RATシステム700の周波数帯域が、アップリンクキャリアアグリゲーションによる相互変調歪みの発生領域と重複することがあり、他RATシステム700との無線通信が、ユーザ装置300からのアップリンク送信によって干渉を受けることがある。このため、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、無線通信制御部310は、アップリンクキャリアアグリゲーションの干渉を生じさせるセカンダリセルへのアップリンク送信を自律的に停止する。ここで、「自律的な送信停止」とは、基地局400からの明示的な指示を受けることなく、ユーザ装置300がアップリンクキャリアアグリゲーションの干渉を生じさせるセカンダリセルへのアップリンク送信を自ら停止することを意味する。
【0061】
一実施例では、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、無線通信制御部310は、干渉を生じさせるセカンダリセルへの送信を自律的に停止するアップリンク送信停止イベントを実行してもよい。例えば、当該アップリンク送信停止イベントは、再接続処理を実行すること、干渉を生じさせるセカンダリセルに対するタイミングアドバンスタイマを停止若しくは満了させること、又はアップリンクキャリアアグリゲーションのセルの内、干渉を生じさせるセカンダリセルと他のセル(プライマリセルなど)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったと判定することであってもよい。
【0062】
具体的には、無線通信制御部310は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、基地局400との再接続処理を起動し、当該セカンダリセルを自律的に解放してもよい。再接続処理が実行されると、設定されているセカンダリセルは一旦解放され、当該セカンダリセルへのアップリンク送信は停止される。
【0063】
あるいは、無線通信制御部310は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、当該セカンダリセルを含むタイミングアドバンス(TA)グループのTAタイマを停止するか、又は満了したとみなしてもよい。LTE規格によると、TAタイマが満了すると、ユーザ装置300は設定されている個別リソースを解放することが規定されている。当該個別リソースの解放によって、当該セカンダリセルへのアップリンク送信は停止される。また、TAタイマが満了しても、ユーザ装置300は、PRACHを送信することによってRA手順を起動することは可能であるが、無線通信制御部310は、PRACHの送信を一時的に保留してもよい。
【0064】
あるいは、無線通信制御部310は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、当該セカンダリセルと他のセル(プライマリセルなど)とのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったとみなしてもよい。LTE規格によると、アップリンクキャリアアグリゲーションのセル間のアップリンク送信タイミング差(例えば、プライマリセルとセカンダリセルとのアップリンク送信タイミング差など)が所定の閾値以上になった場合、ユーザ装置300が当該セカンダリセルのアップリンク送信を停止することが許容されている。
【0065】
その後、無線通信制御部310は、他RATシステム700との無線通信が終了すると、干渉を生じさせるセカンダリセルへのアップリンク送信を再開してもよい。
【0066】
図8は、本発明の第2実施例によるユーザ装置におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。当該アップリンクキャリアアグリゲーション通信処理は、基地局400が、ユーザ装置300にアップリンクキャリアアグリゲーションを設定したことに応答して開始される。
【0067】
図8に示されるように、ステップS301において、他RAT無線通信制御部320は、他RATシステム700との無線通信を開始する。例えば、他RATシステム700が測位システムである場合、他RAT無線通信制御部320は、ユーザが使用しているアプリケーションからの位置情報の取得要求に応答して、無線測位機能を起動する。
【0068】
ステップS302において、無線通信制御部310は、アップリンクキャリアアグリゲーションの干渉を生じさせるセカンダリセルへの送信を自律的に停止する。例えば、無線通信制御部310は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中に他RATシステム700との無線通信が起動されると、基地局400との再接続処理を起動してもよく、当該セカンダリセルを含むTAグループのTAタイマを停止するか、又は満了したとみなしてもよく、あるいは、当該セカンダリセルとプライマリセルとのアップリンク送信タイミング差が所定の閾値以上になったとみなしてもよい。この結果、LTE規格によると、当該セカンダリセルへのアップリンク送信は停止される。
【0069】
次に、図9〜10を参照して、本発明の第3実施例によるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を説明する。第3実施例では、基地局600が、ユーザ装置500による他RATシステム700との無線通信の起動を自律的に検出し、他RATシステム700との無線通信に干渉を生じさせるセカンダリセルへのリソース割当を自律的に停止する。
【0070】
図9は、本発明の第3実施例による基地局の構成を示すブロック図である。図9に示されるように、基地局600は、無線通信制御部610及び他RAT通信状態検出部620を有する。
【0071】
無線通信制御部610は、ユーザ装置500との無線通信を制御する。具体的には、無線通信制御部610は、ユーザ装置500との間で各種制御信号及びデータ信号を送受信すると共に、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中は複数のキャリアによりユーザ装置500から無線信号を受信する。
【0072】
他RAT通信状態検出部620は、アップリンクキャリアアグリゲーションの設定中にユーザ装置500による他RATシステム700との無線通信の起動を自律的に検出する。ここで、「自律的な検出」とは、ユーザ装置500からの明示的な報告を受けることなく、基地局600がアップリンクキャリアアグリゲーションの設定中にユーザ装置500による他RATシステム700との無線通信の起動を自ら検出することを意味する。
【0073】
具体的には、他RAT通信状態検出部620は、ユーザにより使用されているアプリケーションがサーバ800に送信するデータを傍受し、当該データがユーザ装置500に他RATシステム700との無線通信を要求するサービスに関するものであるか判断してもよい。当該データがユーザ装置500に他RATシステム700との無線通信を要求するサービスに関するものである場合、他RAT通信状態検出部620は、ユーザ装置500によって他RATシステム700との無線通信が起動されると判断してもよい。例えば、他RAT通信状態検出部620は、ユーザ装置500の位置情報を必要とするサービスを提供するサーバ800が登録されているOAM(Operetations Administration and Maintenance)を予め保持する。他RAT通信状態検出部620は、ユーザが使用しているアプリケーションにより送信されるデータのIP(Internet Protocol)アドレスを傍受し、傍受したIPアドレスがOAMに登録されている場合、ユーザ装置500によって他RATシステム700との無線通信が起動されると判断してもよい。
【0074】
このようにして、他RATシステム700との無線通信の起動が検出されると、無線通信制御部610は、アップリンクキャリアアグリゲーションの干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止する。例えば、無線通信制御部610は、当該セカンダリセルに対するアップリンクスケジューリングと個別リソースの割り当てとの一方又は双方を停止してもよい。
【0075】
図10は、本発明の第3実施例による基地局におけるアップリンクキャリアアグリゲーション通信処理を示すフロー図である。当該アップリンクキャリアアグリゲーション通信処理は、基地局600が、ユーザ装置500にアップリンクキャリアアグリゲーションを設定したことに応答して開始される。
【0076】
図10に示されるように、ステップS401において、他RAT通信状態検出部620は、ユーザ装置500による他RATシステム700との無線通信の起動を検出する。
【0077】
ステップS402において、他RATシステム700との無線通信の起動を検出したことに応答して、無線通信制御部610は、アップリンクキャリアアグリゲーションの干渉を生じさせるセカンダリセルに対するリソース割当を停止する。
【0078】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 無線通信システム
100,300,500 ユーザ装置
200,400,600 基地局
700 他RATシステム
800 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10