(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリパックにおいては、制御回路が、バッテリから電源供給を受けて動作することから、外部負荷側での短絡等によって、バッテリからの放電電流が過大となって、バッテリ電圧が急激に低下し、制御回路が動作を停止してしまうことがある。
【0006】
この場合、制御回路は、動作停止前にスイッチング素子を遮断させることができないので、制御回路の動作停止後、スイッチング素子に電流が流れ続けることがある。
なお、これは、スイッチング素子の制御端子(スイッチング素子がFETの場合にはゲート、バイポーラトランジスタの場合にはベース)には、通常、入力電圧を安定化させるためのコンデンサが設けられているためである。
【0007】
つまり、制御回路の動作停止によって制御回路からスイッチング素子の制御端子に駆動電圧が入力されなくなっても、スイッチング素子は制御端子に接続されたコンデンサに蓄積された電荷が放電されるまで、オン状態となり、電流が流れ続けるのである。
【0008】
この場合、スイッチング素子の制御端子の電圧は、前記コンデンサの放電により、緩やかに低下する。そのため、スイッチング素子のオン抵抗が増加するため、スイッチング素子での消費電力が増加し、スイッチング素子が故障することがある。
【0009】
そこで本発明は、バッテリからの放電を制御する制御回路を備えたバッテリパックにおいて、バッテリ電圧の急激な低下によって制御回路が動作を停止しても、放電経路上のスイッチング素子を速やかに遮断させて、スイッチング素子が故障するのを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバッテリパックには、バッテリと、バッテリから外部負荷への放電経路に設けられて、その放電経路を導通・遮断させるスイッチング素子と、制御回路と、保護回路とが備えられている。
【0011】
制御回路は、バッテリから電源供給を受けて動作し、スイッチング素子を導通させることにより、バッテリから外部負荷への放電を許可する。また、制御回路は、バッテリから外部負荷への放電時に、バッテリ又は外部負荷に異常が発生すると、スイッチング素子を遮断させて、バッテリから外部負荷への放電を禁止する。
【0012】
そして、保護回路は、制御回路の動作状態を監視し、制御回路が動作不能になったときに、スイッチング素子を遮断させる。
このため、本発明のバッテリパックによれば、バッテリ電圧が急激に低下して、制御回路が動作不能になったとしても、保護回路がその旨を検知して、スイッチング素子を遮断することになる。
【0013】
このため、スイッチング素子が導通状態にあるときに、バッテリ電圧が急激に低下した際、スイッチング素子に電流が流れ続けるのを防止し、その通電によりスイッチング素子が故障するのを防止することができる。
【0014】
ここで、保護回路を動作させるためには、保護回路駆動用の電源が必要になるが、保護回路は、バッテリ電圧の低下時にも動作させる必要があるため、その電源としては、バッテリ又は制御回路から充電される蓄電部を用いるとよい。
【0015】
そして、この蓄電部には、保護回路がスイッチング素子を遮断するのに要する電力を充電すればよいため、蓄電部には、容量の小さなコンデンサを利用することができ、コスト、サイズを抑えることができる。
【0016】
また、バッテリ又は制御回路から蓄電部への充電経路には、逆流防止用のダイオードを設けるようにしてもよい。
そして、このようにすれば、バッテリ電圧や制御回路の電源電圧が低下したときに、蓄電部に充電された電力がバッテリ又は制御回路へ放電されるのを防止し、保護回路をより確実に動作させることができるようになる。
【0017】
次に、保護回路は、制御回路から周期的に出力されるパルス信号を監視することにより制御回路の動作停止を判定する第1保護回路(所謂ウォッチドッグ回路)として構成してもよく、或いは、制御回路の出力ポートの電位の変化から制御回路の動作停止を判定する第2保護回路として構成してもよい。また、保護回路は、第1保護回路と第2保護回路との組み合わせにて構成してもよい。
【0018】
そして、保護回路を、第1保護回路(所謂ウォッチドッグ回路)として構成する場合には、制御回路を、正常動作時に第1出力ポートから所定周期でパルス信号を出力するよう構成するとよい。
【0019】
つまり、このようにすれば、第1保護回路は、制御回路の第1出力ポートからパルス信号が出力されなくなると、制御回路が動作不能になったと判断して、スイッチング素子を遮断させるように構成すればよい。
【0020】
なお、第1保護回路の電源として蓄電部を設ける場合、その蓄電部には、バッテリからダイオードを介して充電されるように構成するとよい。
つまり、第1保護回路は、制御回路の第1出力ポートからパルス信号が出力されなくなったときに、制御回路が動作不能になったことを判定するため、バッテリ電圧が急激に低下してから第1保護回路がスイッチング素子を遮断できるようになるまでには、所定の遅れ時間を要する。
【0021】
このため、蓄電部には、その遅れ時間の間、第1保護回路を動作させるのに要する電力量を充電しておく必要があり、このためには、蓄電部への充電電圧を高くするとよい。
従って、第1保護回路の電源となる蓄電部への充電には、制御回路の電源電圧を利用するよりも、その電源電圧よりも高いバッテリ電圧を利用するとよい。そして、この構成により、蓄電部の容量を小さくすることができ、コスト、サイズを抑えることができる。
【0022】
一方、保護回路を、第2保護回路として構成する場合には、制御回路が通常動作しているときに、第2出力ポートが所定電位(ハイ又はロー)となり、制御回路が動作を停止すると、第2出力ポートが開放されてフローティング状態となるように、制御回路を構成するとよい。
【0023】
そして、この場合、第2保護回路は、バッテリ電圧の低下に伴い制御回路が動作不能になって、第2出力ポートがフローティング状態になったときに、スイッチング素子を遮断させることができるので、スイッチング素子を速やかに遮断させることができるようになる。
【0024】
なお、第2保護回路の電源として蓄電部を設ける場合、その蓄電部には、制御回路からダイオードを介して充電されるように構成するとよい。
そして、このようにすれば、制御回路が通常動作しているときに、制御回路の電源電圧と蓄電部への充電電圧とを同電圧にすることができ、これら各電圧の電圧差により第2保護回路から第2ポート或いはその逆方向へと電流が流れるのを防止することができる。
【0025】
つまり、第2保護回路の電源となる蓄電部に対し、バッテリ電圧にて充電するようにした場合、第2保護回路の電源電圧が制御回路の電源電圧よりも大きくなるので、その電圧差により、第2保護回路から第2ポート或いはその逆方向(負電源の場合)へと流れることが考えられる。
【0026】
この場合、電圧制限素子を設けて、蓄電部から第2保護回路に供給される電源電圧を制限することで、第2保護回路と第2ポートとの間に電流が流れないようにする必要があるが、蓄電部への充電を制御回路から行うようにすれば、電圧制限素子を不要にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
本実施形態のバッテリパック1は、電動工具に電源供給を行うためのものであり、
図1に示すように、バッテリパック1の外壁には、電動工具や充電器に着脱自在に装着するためのコネクタ部4が設けられている。そして、このコネクタ部4には、電動工具及び充電器と電気的に接続するための電源端子部6及び接続端子部8が設けられている。
【0029】
また、
図2に示すように、バッテリパック1には、電源端子部6に設けられた正極側端子6A及び負極側端子6Bと、充電用正極側端子6Cと、接続端子部8に設けられた接続端子8A〜8Cと、バッテリパック1のケース内に収納されたバッテリ10及び充放電制御用の各種回路と、が備えられている。
【0030】
ここで、正極側端子6A及び負極側端子6Bは、バッテリパック1を電動工具に装着した際、電動工具の正極側端子及び負極側端子に接続されて、バッテリ10から電動工具に電力供給するためのものである。
【0031】
このため、正極側端子6Aには、正極側電源ラインLAを介してバッテリ10の正極端子10Aが接続され、負極側端子6Bには、負極側電源ラインLBを介してバッテリ10の負極端子10Bが接続されている。
【0032】
なお、バッテリ10の負極端子10Bからバッテリパック1の負極側端子6Bに至る負極側電源ラインLBには、負極端子10B側から順に電流検出用の抵抗SR及び遮断スイッチ22が設けられている。また、バッテリ10の負極端子10Bは、バッテリパック1内のグランドラインに接続されている。
【0033】
次に、接続端子8Aは、バッテリパック1を電動工具に装着した際に、バッテリパック1内の制御回路20と電動工具側の制御回路とを通信可能に接続するためのものであり、バッテリパック1内では信号線を介して制御回路20に接続されている。
【0034】
また、接続端子8Bは、バッテリパック1を充電器に装着した際に、制御回路20と充電器側の制御回路とを通信可能に接続するためのものであり、バッテリパック1内では信号線を介して制御回路20に接続されている。
【0035】
また、接続端子8Cは、バッテリパック1を充電器に装着した際に、充電器側の電源ラインに接続されて、バッテリパック1内の充電器検出部16に充電器の電源電圧を入力するためのものである。
【0036】
このため充電器検出部16は、接続端子8Cからの入力電圧によりバッテリパック1が充電器に接続されたことを検出し、その旨を表す検出信号を制御回路20に出力する。
また、充電用正極側端子6Cは、正極側端子6Aと同様、正極側電源ラインLAに接続されており、バッテリパック1を充電器に装着した際、負極側電源ラインLBとの間で、充電器から充電電圧を取り込み、バッテリ10に充電電流を供給するのに用いられる。
【0037】
次に、制御回路20は、バッテリ10への充放電を制御するためのものであり、CPU20a、ROM20b、RAM20cを中心とするマイコンにて構成されている。
そして、制御回路20は、バッテリパック1を電動工具に装着した際、接続端子8Aを介して、電動工具側の制御回路との間で双方向通信ができるようになる。
【0038】
また、制御回路20は、バッテリパック1を電動工具に装着した際、充電器検出部16を介してその旨を検知し、接続端子8Bを介して、充電器側の制御回路との間で双方向通信ができるようになる。
【0039】
また、バッテリ10は、充放電可能な複数のバッテリセルB1、B2、…Bnを、正極端子10Aと負極端子10Bとの間に直列接続することにより構成されており、電動工具を駆動するための直流電圧を発生する。なお、本実施形態では、バッテリ10は、例えば、リチウムイオン電池にて構成される。
【0040】
そして、バッテリ10には、バッテリ状態を検出するためのAFE(アナログ・フロント・エンド)12が接続されている。
AFE12は、制御回路20からの指令に従いバッテリ10を構成するバッテリセルB1、B2、…Bnのセル電圧を検出して、検出結果を制御回路20に出力するよう構成されたアナログ回路である。
【0041】
また、AFE12には、負極側電源ラインLBに設けられた抵抗SRを介してバッテリ10への充電電流やバッテリ10からの放電電流を検出し、その検出結果を制御回路20に出力する電流検出回路(図示せず)も内蔵されている。
【0042】
また、バッテリパック1には、正極側端子6Aからの出力電圧Vpack(換言すればバッテリ電圧)を検出するための電圧検出回路14や、バッテリ10から電力供給を受けて制御回路20の電源電圧(直流定電圧)Vccを生成するレギュレータ18も備えられている。
【0043】
なお、電圧検出回路14は、出力電圧Vpackを分圧する2つの抵抗R11,R12にて構成されており、その分圧電圧を、出力電圧Vpackの検出結果として、制御回路20に入力する。
【0044】
また、レギュレータ18には、接続端子8Cからも電力供給できるようになっている。これは、バッテリ電圧の低下時に、バッテリパック1が充電器に装着された際に、充電器からレギュレータ18に電力供給を行うことで、制御回路20を駆動できるようにするためである。
【0045】
次に、負極側電源ラインLBに設けられた遮断スイッチ22は、FETからなるスイッチング素子Q22と、スイッチング素子Q22のゲート・ソース間に設けられた抵抗R22及びコンデンサC22と、により構成されている。
【0046】
スイッチング素子Q22は、例えば、nチャネルMOSFETにて構成されており、ドレインは、負極側端子6Bに接続され、ソースは、抵抗SRを介してバッテリ10の負極端子10Bに接続されている。
【0047】
また、スイッチング素子Q22のゲートには、制御スイッチSW1、抵抗R1及びダイオードD1を介して、正極側電源ラインLAに接続されている。
制御スイッチSW1は、一端が正極側電源ラインLAに直接接続されており、他端が、抵抗R1及びダイオードD1を介して、スイッチング素子Q22のゲートに接続されている。
【0048】
また、ダイオードD1は、アノードが抵抗R1に接続され、カソードがスイッチング素子Q22のゲートに接続されている。
制御スイッチSW1は、抵抗R1及びダイオードD1と共にスイッチング素子Q22駆動用のバイアス回路を構成しており、制御回路20からの制御信号によりオン・オフされる。
【0049】
そして、制御スイッチSW1がオン状態であるときには、スイッチング素子Q22のゲートに駆動電圧が印加されて、スイッチング素子Q22(延いては遮断スイッチ22)がオン状態となり、バッテリ10に対する充放電が可能となる。なお、この状態では、コンデンサC22が充電される。
【0050】
また、制御スイッチSW1がオン状態からオフ状態に切り替えられると、制御スイッチSW1からスイッチング素子Q22に駆動電圧が供給されなくなるが、切り替え直後には、コンデンサC22からスイッチング素子Q22に駆動電圧が供給される。
【0051】
従って、スイッチング素子Q22(延いては遮断スイッチ22)は、コンデンサC22の放電によりゲート・ソース間電圧が閾値Vth以下になるまでオン状態となり、所定の放電期間経過後、オフ状態となって、バッテリ10への充放電経路を遮断する。
【0052】
なお、この放電期間は、コンデンサC22の容量と抵抗R22の抵抗値とにより決定される時定数により設定される。このように放電期間を設定するのは、ノイズ等でスイッチング素子Q22の駆動電圧が変動した際に、遮断スイッチ22がオフ状態に切り替えられて、バッテリ10への充電又は放電が停止されるのを防止するためである。つまり、コンデンサC22は駆動電圧を安定化するために用いられる。
【0053】
次に、制御回路20は、バッテリパック1が電動工具及び充電器に接続されていないときには、制御スイッチSW1をオフ状態に制御することで、遮断スイッチ22をオフし、バッテリ10への充放電経路を遮断させる。
【0054】
また、制御回路20は、バッテリパック1が電動工具又は充電器に接続されているときには、制御スイッチSW1をオン状態に制御することで、遮断スイッチ22をオンし、バッテリ10への充電経路又は放電経路を導通させる。
【0055】
また、制御回路20は、制御スイッチSW1をオン状態に制御しているときに、AFE12や電圧検出回路14からの検出信号を監視することで、バッテリ10の充放電時の電圧又は電流の異常を検出する。
【0056】
そして、異常検出時には、制御回路20は、出力ポートP1から、遮断スイッチ22を速やかにオフさせるための遮断信号(ハイレベル)を出力する。
つまり、本実施形態では、ダイオードD1から遮断スイッチ22(詳しくはスイッチング素子Q22のゲート)への駆動電圧の入力経路に、この入力経路をグランドラインに接地するためのスイッチング素子Q1が設けられている。
【0057】
そして、制御回路20は、バッテリ10への充放電時にバッテリ電圧や充放電電流等の異常を検出すると、スイッチング素子Q1をオンして、スイッチング素子Q22のゲートをグランド電位にすることで、遮断スイッチ22をオフさせる。
【0058】
このように、異常検出時に、スイッチング素子Q1を介して、遮断スイッチ22をオフさせるのは、遮断スイッチ22のコンデンサC22を速やかに放電させて、バッテリ10への充放電経路を速やかに遮断させるためである。
【0059】
また、このために用いられるスイッチング素子Q1は、ドレインが抵抗R2を介して、スイッチング素子Q22のゲートに接続され、ソースがグランドラインに接地され、ゲート・ソース間に抵抗R3が設けられた、FET(例えばnチャネルMOSFET)にて構成されている。
【0060】
そして、スイッチング素子Q1のゲートには、制御回路20の出力ポートP1から出力される遮断信号(ハイレベル)が、抵抗R5及びダイオードD3を介して入力され、スイッチング素子Q1は、この遮断信号によりオン状態に切り替えられる。
【0061】
なお、ダイオードD3は、逆流防止用のダイオードであり、アノードが抵抗R5を介して、制御回路20の出力ポートP1に接続され、カソードがスイッチング素子Q1のゲートに接続されている。
【0062】
また、抵抗R2の抵抗値は、コンデンサC22を速やかに放電させるために、遮断スイッチ22の抵抗R22よりも小さい値に設定されている。
次に、スイッチング素子Q1のゲートには、制御回路20の動作状態を監視する、所謂ウォッチドッグ回路としての保護回路24と、蓄電部としてのコンデンサC1とが接続されている。
【0063】
コンデンサC1は、一端が、ダイオードD2、抵抗R1及び制御スイッチSW1を介して正極側電源ラインLAに接続されると共に、抵抗R4を介してスイッチング素子Q1のゲートに接続されており、他端がグランドラインに接地されている。
【0064】
ダイオードD2は、アノードが、抵抗R1とダイオードD1との接続点に接続されており、カソードがコンデンサC1の一端に接続されている。
このため、コンデンサC1は、制御スイッチSW1がオン状態であるとき、抵抗R1を介してバッテリ10から直接充電され、その充電電圧が抵抗R4及び抵抗R3にて分圧されて、スイッチング素子Q1のゲートに印加されることになる。
【0065】
また、制御回路20は、正常動作しているときに、出力ポートP2から所定時間間隔で周期的にパルス信号(
図3に示すWatch Dog Pulse )を出力するように構成されている。
そして、保護回路24は、このパルス信号を受けて、スイッチング素子Q1のゲートをグランドラインに接地することで、スイッチング素子Q1をオフ状態に保持する。
【0066】
また、保護回路24は、制御回路20からパルス信号が出力されなくなると、制御回路20が正常動作していないことを検出して、スイッチング素子Q1のゲートとグランドラインとの間を開放する。
【0067】
この結果、スイッチング素子Q1のゲートには、コンデンサC1から、スイッチング素子Q1の閾値電圧Vthよりも高い高電圧が印加されて、スイッチング素子Q1はオン状態となる。
【0068】
このため、遮断スイッチ22は、制御回路20の出力ポートP2からパルス信号が出力されなくなったとき(つまり制御回路20の動作停止時若しくは異常動作時)には、保護回路24の動作によって、速やかに遮断されることになる。
【0069】
なお、保護回路24には、ドレインが、抵抗R31を介してスイッチング素子Q1のゲートに接続され、ソースが、グランドラインに接地され、ゲート・ソース間に抵抗R32が設けられた、FET(例えばnチャネルMOSFET)からなるスイッチング素子Q31が備えられている。
【0070】
また、保護回路24には、一端がスイッチング素子Q31のゲートに接続され、他端がグランドラインに接地されたコンデンサC31も備えられている。
そして、このコンデンサC31は、制御回路20の出力ポートP2から出力されるパルス信号(ハイレベル)により、抵抗R33、コンデンサC32及びダイオードD31を介して充電され、パルス信号の出力停止時に抵抗R32を介して放電される。
【0071】
このように構成された本実施形態の保護回路24においては、
図3に示すように、制御回路20の出力ポートP2からパルス信号(Watch Dog Pulse )が周期的に出力されているときには、スイッチング素子Q31のゲート電圧が閾値電圧Vth以上となる。
【0072】
従って、制御回路20が正常動作しているときには、スイッチング素子Q31はオン状態となり、スイッチング素子Q1をオフさせる。
また、制御回路20の出力ポートP2からのパルス信号(Watch Dog Pulse )の出力が停止すると(時点t1)、コンデンサC31が放電されることにより、スイッチング素子Q31のゲート電圧が徐々に低下する。
【0073】
そして、そのゲート電圧が閾値電圧Vthよりも低くなると(時点t2)、スイッチング素子Q31がオフ状態となり、スイッチング素子Q1をオンさせる。
従って、本実施形態によれば、バッテリ10から電動工具への放電時に、バッテリ電圧の急激な低下によって制御回路20が動作を停止し、出力ポートP1からの遮断信号が出力されない場合には、保護回路24により遮断スイッチ22をオフさせて、放電電流を遮断させることができる。
【0074】
このため、制御回路20が動作を停止した際に、遮断スイッチ22内のコンデンサC22が放電されるまでスイッチング素子Q22がオン状態となって、スイッチング素子Q22に電流が流れ続け、スイッチング素子Q22が故障するのを防止することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、遮断スイッチ22を構成するスイッチング素子Q22が、本発明のスイッチング素子に相当し、制御回路20の出力ポートP2が、本発明の第1出力ポートに相当し、保護回路24が、本発明の第1保護回路に相当する。また、抵抗R1及びダイオードD2を介してバッテリ10から充電されるコンデンサC1が、本発明の蓄電部に相当する。
[第2実施形態]
第2実施形態のバッテリパック2は、基本構成は第1実施形態のバッテリパック1と同じであるため、以下の説明では、第1実施形態のバッテリパック1と異なる点について説明する。
【0076】
図4に示すように、本実施形態のバッテリパック2には、負極側電源ラインLBに、遮断スイッチ22と遮断スイッチ26とが直列に接続されている。
遮断スイッチ26は、遮断スイッチ22と同様、FETからなるスイッチング素子Q26と、スイッチング素子Q26のゲート・ソース間に設けられた抵抗R26及びコンデンサC26と、により構成されている。
【0077】
スイッチング素子Q26のドレインは、負極側端子6Bに接続され、ゲートは、ダイオードD4、抵抗R6及び制御スイッチSW1を介して、正極側電源ラインLAに接続されている。
【0078】
また、ダイオードD4は、アノードが抵抗R6に接続され、カソードがスイッチング素子Q26のゲートに接続されている。
このため、制御スイッチSW1がオン状態であるときには、スイッチング素子Q26のゲートに駆動電圧が印加されて、スイッチング素子Q26(延いては遮断スイッチ26)がオン状態となる。また、制御スイッチSW1がオフ状態であるときには、スイッチング素子Q26(延いては遮断スイッチ26)がオフ状態となる。
【0079】
次に、ダイオードD4から遮断スイッチ26(詳しくはスイッチング素子Q26のゲート)への駆動電圧の入力経路には、この入力経路を、抵抗R7を介してグランドラインに接地するためのスイッチング素子Q2が設けられている。
【0080】
スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1と同様、FET(例えばnチャネルMOSFET)にて構成されており、ドレインが抵抗R7を介してスイッチング素子Q26のゲートに接続され、ソースがグランドラインに接地されている。また、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間には、抵抗R8が設けられている。
【0081】
また、スイッチング素子Q2のゲートには、制御回路20から出力される電源電圧Vddを、ダイオードD41を介して取り込み、蓄電部としてのコンデンサC41を充電する充電回路28が接続されている。
【0082】
そして、充電回路28には、コンデンサC41の充電電圧を抵抗R8との間で分圧して、スイッチング素子Q2のゲートに印加し、スイッチング素子Q2をオンさせる、抵抗R41が設けられている。
【0083】
また、抵抗R41とスイッチング素子Q2のゲートとの接続経路は、制御回路20の出力ポートP3に接続されている。
制御回路20において、この出力ポートP3には、制御回路20がレギュレータ18から電源供給を受けて動作しているときに、オン状態となって、出力ポートP3をグランドラインに接地する出力トランジスタ(図示せず)が接続されている。
【0084】
このため、制御回路20の動作中は、スイッチング素子Q2はオフ状態となり、遮断スイッチ26は、制御スイッチSW1を介して供給される駆動電圧によりオン状態となる。
また、バッテリ電圧の急激な低下によって、制御回路20が動作を停止すると、出力ポートP3はフローティング状態となる。
【0085】
また、制御回路20が動作を停止すると、制御回路20から電源電圧Vddが出力されなくなるが、制御回路20が動作を停止したときには、充電回路28内のコンデンサC41が充電されている。
【0086】
このため、
図5に示すように、バッテリ10から電動工具への放電時に、制御回路20が動作を停止したときには(時点t1)、コンデンサC41からスイッチング素子Q2のゲートに、閾値電圧Vthよりも高い電圧が印加されて、スイッチング素子Q2がオン状態となる。
【0087】
そして、スイッチング素子Q2がオン状態になれば、遮断スイッチ26内のスイッチング素子Q26のゲートが閾値電圧Vthよりも低くなり、スイッチング素子Q26がオフ状態となるため、バッテリ10から電動工具への放電電流が遮断される。
【0088】
従って、本実施形態のバッテリパック2によれば、バッテリ電圧の急激な低下によって制御回路20が動作を停止した際、出力ポートP3からの出力が正常にフローティング状態に切り替えられたときには、第1実施形態のバッテリパック1よりも早く放電経路を遮断させることができる。
【0089】
また、例えば、制御回路20の出力ポートP3に設けられた出力トランジスタの故障等によって、出力ポートP3がフローティング状態に切り替わらないときには、第1実施形態と同様、保護回路24によって放電経路が遮断される。
【0090】
このため、本実施形態のバッテリパック2によれば、バッテリ電圧の急激な低下によって制御回路20が動作を停止した際に、放電経路をより確実に遮断させて、遮断スイッチ22、26内のスイッチング素子Q22、Q26が故障するのを防止できる。
【0091】
なお、本実施形態においては、遮断スイッチ22、26を構成するスイッチング素子Q22、Q26が、本発明のスイッチング素子に相当し、制御回路20の出力ポートP2が、本発明の第1出力ポートに相当し、保護回路24が、本発明の第1保護回路に相当する。
【0092】
また、制御回路20の出力ポートP3は、本発明の第2出力ポートに相当し、スイッチング素子Q2及び抵抗R7、R8が本発明の第2保護回路に相当し、充電回路28内で充電されるコンデンサC41が、本発明の蓄電部に相当する。
[第3実施形態]
第3実施形態のバッテリパック3は、基本構成は第1実施形態のバッテリパック1と同じであるため、以下の説明では、第1実施形態のバッテリパック1と異なる点について説明する。
【0093】
図6に示すように、本実施形態のバッテリパック3においては、制御回路20に、第1実施形態の出力ポートP1に代えて、第2実施形態の出力ポートP3が設けられている。
出力ポートP3は、抵抗R5及びダイオードD5を介して、スイッチング素子Q1のゲートに接続されており、抵抗R5とダイオードD5(詳しくはダイオードD5のアノード)との接続点には、充電回路29が接続されている。
【0094】
この充電回路29は、第1実施形態のダイオードD2、コンデンサC1及び抵抗R4に代えて設けられるものであり、第2実施形態の充電回路28と同様に構成されている。
すなわち、充電回路29は、制御回路20から出力される電源電圧Vddを、ダイオードD42を介して取り込み、蓄電部としてのコンデンサC42を充電し、コンデンサC42の充電電圧を、抵抗R42を介して、抵抗R5とダイオードD5との接続点に印加するように構成されている。
【0095】
なお、ダイオードD5及びD42には、例えば、他のダイオード(PN接合ダイオード)に比べて順方向の電圧効果が低く、スイッチング速度が速い、ショットキーバリアダイオードにて構成されている。
【0096】
また、上記各実施形態と同様、スイッチング素子Q1のゲート(詳しくはスイッチング素子Q1のゲートとダイオードD5のカソードとの接続点)には、保護回路24が接続されるが、保護回路24には、その接続用の素子として、ダイオードD33が設けられている。
【0097】
このダイオードD33は、アノードがスイッチング素子Q31のドレインに接続され、カソードがスイッチング素子Q1のゲートに接続されている。また、スイッチング素子Q31のドレインには、抵抗R31を介して、制御回路20から出力される電源電圧Vddが印加されている。
【0098】
このため、制御回路20が正常動作しているときには、保護回路24のスイッチング素子Q31はオン状態となり、保護回路24からスイッチング素子Q1のゲートに駆動用の高電圧が出力されることはない。
【0099】
これに対し、制御回路20が誤動作して、出力ポートP2からのパルス信号(Watch Dog Pulse )の出力が停止すると、コンデンサC31が放電されることにより、スイッチング素子Q31がオフ状態となる。
【0100】
すると、保護回路24からスイッチング素子Q1のゲートには、ダイオードD33を介して、駆動用の高電圧(電圧値:Vdd−ダイオードD33の順方向電圧(所謂Vf))が出力され、スイッチング素子Q1がオン状態となる。
【0101】
従って、本実施形態において、保護回路24は、一般的なウォッチドッグ回路として動作し、制御回路20を構成するマイコンの暴走時等に、遮断スイッチ22をオフさせて、放電電流を遮断させることができる。
【0102】
一方、バッテリパック3から電動工具への放電中に、バッテリ電圧が低下して、制御回路20が動作を停止した際には、制御回路20から出力される電源電圧Vddも低下しているので、保護回路24は、スイッチング素子Q1をオンさせることができない。
【0103】
しかし、
図7に示すように、電動工具への放電中に制御回路20が動作を停止すると(時点t1)、出力ポートP3がフローティング状態となるため、コンデンサC42からスイッチング素子Q1のゲートに、閾値電圧Vthよりも高い電圧が印加される。なお、この電圧は、コンデンサC42の充電電圧を抵抗R42とR3とで分圧した電圧である。
【0104】
すると、スイッチング素子Q1は、オン状態となるため、遮断スイッチ22内のスイッチング素子Q22のゲートが閾値電圧Vthよりも低くなり、スイッチング素子Q22がオフ状態となって、バッテリ10から電動工具への放電電流が遮断される。
【0105】
従って、本実施形態のバッテリパック3によれば、バッテリ電圧の急激な低下によって制御回路20が動作を停止して、出力ポートP3からの出力が正常にフローティング状態に切り替えられたときには、第2実施形態のバッテリパック2と同様に、速やかに放電経路を遮断させることができる。
【0106】
なお、本実施形態においては、制御回路20の出力ポートP3が、本発明の第2出力ポートに相当し、充電回路29及びダイオードD5が、本発明の第2保護回路に相当し、充電回路29内で充電されるコンデンサC42が、本発明の蓄電部に相当する。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、遮断スイッチ22、26を構成するスイッチング素子Q22、Q26等、バッテリパック1〜3内に設けられるスイッチング素子は、FETであるものとして説明したが、スイッチング素子は、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、バッテリパック1〜3は、電動工具に電源供給を行うものとして説明したが、本発明のバッテリパックは、バッテリを内蔵していて外部負荷に直流電源を供給するものであれば、上記実施形態と同様に適用することができる。