特許第6442267号(P6442267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442267開孔部を有する複合シートの製造方法及びその製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442267
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】開孔部を有する複合シートの製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   A61F13/15 353
   A61F13/15 355B
   A61F13/15 311Z
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-255649(P2014-255649)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112340(P2016-112340A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕史
(72)【発明者】
【氏名】田村 尚規
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−078477(JP,A)
【文献】 特表2016−506322(JP,A)
【文献】 特開2008−240205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のシート間に複数本の弾性部材を介在させるために該一対のシートと弾性部材とを互いに接近させ、エンボス凸部と開孔ピンとが円周方向に交互に配された加工部列を有する加工パターンロールの周面に沿わせるように送り出す工程と、
前記加工パターンロールの周面上で、前記一対のシートの前記弾性部材が介在しない部分に、前記開孔ピンを貫通させて開孔部を形成する工程と、
前記開孔ピンを貫通させたまま、前記一対のシートと前記弾性部材との積層体を、前記加工パターンロールの周面上において、該加工パターンロールに対向するアンビルロールが配置されている位置まで搬送する工程と、
前記加工パターンロールと前記アンビルロールとの対向地点において、前記エンボス凸部と前記アンビルロールの周面との圧着により、前記積層体のシート同士の前記開孔部とは前記円周方向において異なる部分で、かつ、前記弾性部材の介在しない部分に接合部を形成する工程とを有する複合シートの製造方法。
【請求項2】
前記加工部列が前記加工パターンロールの軸方向に複数並んで配置されている、請求項1記載の複合シートの製造方法。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記シートの幅方向に互いに間隔をあけて配され、前記加工部列を避けた位置で前記加工パターンロールの周面上を搬送される請求項1又は2に記載の複合シートの製造方法。
【請求項4】
前記一対のシートと弾性部材との接近及び加工パターンロールの周面上への送り出しを、前記加工パターンロールの配置位置よりも上流側に配置された部材送り出し制御ロールによって行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
【請求項5】
前記部材送り出し制御ロールの回転速度は、前記加工パターンロールの回転速度よりも遅い請求項4に記載の複合シートの製造方法。
【請求項6】
前記部材送り出し制御ロールが、一対のニップロールからなり、該ニップロールによって、前記一対のシートと前記弾性部材とを接近させ更に積層体として送り出す請求項4又は5に記載の複合シートの製造方法。
【請求項7】
前記部材送り出し制御ロールが、前記一対のシート及び前記弾性部材のそれぞれに対応させた押さえロールからなり、該押さえロールによって、前記一対のシート及び前記弾性部材をそれぞれ接近させながら前記開孔ピンに接触させるように送り出す請求項4又は5に記載の複合シートの製造方法。
【請求項8】
前記開孔部を形成する工程において、前記一対のシート同士が接合されていない領域に前記開孔ピンが貫通する請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
【請求項9】
一対のシート間に複数本の弾性部材を介在させて、前記一対のシートに開孔部と接合部とを形成する複合シートの製造装置であって、
エンボス凸部と開孔ピンとが円周方向に交互に配された加工部列を有する加工パターンロールと、該加工パターンロールに対向配置されるアンビルロールと、前記加工パターンロールの配置位置よりも上流側の部材送り出し制御ロールとを有し、
前記部材送り出し制御ロールは、前記一対のシート間に前記弾性部材を介在させるようにして該一対のシートと弾性部材とを互いに接近させ前記加工パターンロールの周面に沿わせるように送り出し、
前記加工パターンロールは、前記アンビルロールとの対向地点よりも上流側の周面上で、前記一対のシートの前記弾性部材の介在しない部分に前記開孔ピンを貫通させて開孔部を形成し、該開孔ピンを貫通させたまま前記一対のシートと前記弾性部材との積層体を周面上で搬送して、前記アンビルロールとの対向地点で、前記エンボス凸部と前記アンビルロールの周面とによる圧着により、前記開孔部とは前記円周方向において異なる部分で、かつ、前記弾性部材の介在しない部分に接合部を形成する、複合シートの製造装置。
【請求項10】
前記加工部列が前記加工パターンロールの軸方向に複数並んで配置されている、請求項9記載の複合シートの製造装置。
【請求項11】
前記部材送り出し制御ロールが、一対のニップロールからなり、該ニップロールによって、前記一対のシートと前記弾性部材とを接近させ更に積層体として送り出す請求項9又は10に記載の複合シートの製造装置。
【請求項12】
前記部材送り出し制御ロールが、前記一対のシート及び前記弾性部材のそれぞれに対応させた押さえロールからなり、該押さえロールによって、前記一対のシート及び前記弾性部材をそれぞれ接近させながら前記開孔ピンに接触させるように送り出す請求項9〜11のいずれか1項に記載の複合シートの製造装置。
【請求項13】
前記アンビルロールの周面には、前記開孔ピンが挿入される凹部が配設されている請求項9〜12のいずれか1項に記載の複合シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開孔部を有する複合シートの製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布等のシート材と他の部材とを組み合わせて種々の機能を付与した複合シートがある。吸収性物品などにおいては、体に身に着けるものといて、肌触りの柔らかさや通気性、体へのフィット性などを考慮した複合シートについて提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2には、生理用ナプキン等の表面シートに、肌への接触面積を抑えるために凹凸エンボス加工と開孔処理を施すことが記載されている。いずれの文献も、エンボス処理された部分に開孔する処理工程及びその装置が示されている。
【0004】
また、特許文献3には、2枚のシート材間に複数本の弾性部材を配した複合伸縮部材が記載されている。該複合伸縮部材では、弾性部材がその両端部のみでシート材に接合され、それ以外ではシート材と非接合とされている。この非接合の部分で伸縮部を形成している。また伸縮部では、弾性部材の介在しない部分で、シート材同士の接合部が弾性部材の収縮方向に直交する方向に間欠的に接合されている。これにより、弾性部材が収縮すると、前記接合部がない部分で、前記2枚のシート材が互いに弾性部材から離れるように変形し、該弾性部材の収縮方向に直交する筒状の襞を複数形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−73396号公報
【特許文献2】特開2008−18537号公報
【特許文献3】特開2005−80859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の複合伸縮部材は、筒状襞の内部に空洞を備え、該空洞が通気路となっている。本発明者らは、このような複合伸縮部材ついて、さらに通気性を高めるべく、襞に開孔部を設けることを検討した。前述のとおり、襞は接合部がない部分にあるため、開孔部は、接合部とは重なることなく一定間隔で交互に形成されなければならない。
【0007】
開孔部を形成する方法として、例えば、特許文献1、2に示すようなピンエンボスと凹部との噛み込み方法がある。これを基に、図8(A)のように、エンボス凸部802と開孔ピン801とを有するパターンロール800と凹部901を有するアンビルロール900との噛み込みによる方法を検討した。しかし、この場合、噛み込みの力で部材の配置にズレ等が生じてしまう。また、凹部901に向かって開孔ピン801をシートに押し込むので、シートに1点集中する押し込み応力がかり、部材は開孔周辺に向かってヨレやすくなる(例えば、矢印Q1)。これでは適正な開孔ができないばかりか、接合部との間隔も不規則になりかねない。
【0008】
特に、開孔ピン801を押し込む部分は、前述のとおりシート同士が接合されておらず、部材間の固定性に乏しい。その周辺では弾性部材もシートと接合されていない。そのため前述のような部材のヨレ等は顕著となる。特にシート及び弾性部材を搬送方向(X方向)に伸長させているため、シートが幅方向(Y方向)にヨレやすく、前述した襞を分断するシワが生じてしまう。またこれに伴って、図8(B)のように弾性部材3が幅方向に振れてしまい、弾性部材3の位置を適正に制御することが困難となってしまう。この場合、弾性部材3にたるみが生じて伸縮性が損なわれかねない(例えば、矢印Q1)。さらに、開孔部870や接合部880のパターンがずれて不規則になったり、開孔が不十分であったりする(符号881、882など)。これでは、筒状の襞及び開孔の規則正しい形成が困難となる。この問題について、特許文献1及び2では、弾性部材を含まず、エンボス処理で固定された部分に開孔処理するため、上記問題への示唆はない。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、開孔時のシートのヨレやシワ、弾性部材の振れを抑制して、適正な筒状の襞を有し、通気性に優れる複合シートの製造方法及びその製造装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(A)一対のシート間に複数本の弾性部材を介在させるために該一対のシートと弾性部材とを互いに接近させ、エンボス凸部と開孔ピンとが円周方向に交互に配された加工部列を有する加工パターンロールの周面に沿わせるように送り出す工程と、
(B)前記加工パターンロールの周面上で、前記一対のシートの前記弾性部材が介在しない部分に、前記開孔ピンを貫通させて開孔部を形成する工程と、
(C)前記開孔ピンを貫通させたまま、前記一対のシートと前記弾性部材との積層体を、前記加工パターンロールの周面上において、該加工パターンロールに対向するアンビルロールが配置されている位置まで搬送する工程と、
(D)前記加工パターンロールと前記アンビルロールとの対向地点において、前記エンボス凸部と前記アンビルロールの周面との圧着により、前記積層体のシート同士の前記開孔部とは前記円周方向において異なる部分で、かつ、前記弾性部材の介在しない部分に接合部を形成する工程と
を有する複合シートの製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、一対のシート間に複数本の弾性部材を介在させて、前記一対のシートに開孔部と接合部とを形成する複合シートの製造装置であって、
エンボス凸部と開孔ピンとが円周方向に交互に配された加工部列を有する加工パターンロールと、該加工パターンロールに対向配置されるアンビルロールと、前記加工パターンロールの配置位置よりも上流側の部材送り出し制御ロールとを有し、
前記部材送り出し制御ロールは、前記一対のシート間に前記弾性部材を介在させるために該一対のシートと弾性部材とを互いに接近させ前記加工パターンロールの周面に沿わせるように送り出し、前記加工パターンロールは、前記アンビルロールとの対向位置よりも上流側の周面上で、前記一対のシートの前記弾性部材の介在しない部分に前記開孔ピンを貫通させて開孔部を形成し、該開孔ピンを貫通させたまま前記一対のシートと前記弾性部材との積層体を周面上で搬送して、前記アンビルロールとの対向位置で、前記エンボス凸部と前記アンビルロールの周面とによる圧着により、前記開孔部とは前記円周方向において異なる部分で、かつ、前記弾性部材の介在しない部分に接合部を形成する、複合シートの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合シートの製造方法及びその装置によれば、開孔時のシートのヨレやシワ、弾性部材の振れを抑制して、通気性に優れる複合シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の複合シートの製造方法及びその装置おいて、積層体を加工パターンロールの周面上に沿わせて搬送する状態を示す図である。
図2-1】(A)は本発明の複合シートの製造装置の好ましい一実施形態(第1実施形態)を示す全体構成図であり、(B)は(A)に示す加工パターンロールの平面図であり、(C)は、(A)の製造装置を用いた積層体への開孔部及び接合部の形成工程について、加工パターンロールの下側から示した図である。
図2-2】加工パターンロールの開孔ピンで積層体を貫通する状態を示した図である。
図3】本発明の製造方法により製造された複合シートを一部切欠して模式的に示す部分拡大斜視図である。
図4】本発明の製造方法により製造された複合シートを伸長させた状態を一部破断して示す平面図である。
図5】本発明の製造方法により製造された複合シートの他の態様を示す図4相当の平面図である。
図6】第1実施形態の複合シートの製造装置の変形例を示す図2(A)相当の全体構成図である。
図7】本発明の複合シートの製造装置の他の好ましい一実施形態(第2実施形態)を示す全体構成図である。
図8】(A)は従来技術を用いた開孔方法を示す図であり、(B)は(A)の開孔処理する状態を上方から示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の複合シートの製造方法及びその製造装置においては、一対のシート及び弾性部材からなる積層体を加工パターンロールの周面に沿わせて搬送する。すなわち、図1のように、加工パターンロール20に抱かせるようにしてその回転に伴って搬送する。このとき、シート1,2が複数の開孔ピン12で面状に支えられ固定された状態となる。これにより開孔ピン12の応力は、シート1,2の縦横の平面に分散されて、1点集中の強い押し込み応力とはならず、適度な突き刺し応力となる。そして、強い押し込み力によらずに開孔処理がなされる。よって、シートのヨレ及び弾性部材の振れが回避される。
またこの場合、開孔ピン12が一対のシートを貫通してシート1,2同士を固定(仮固定)するので搬送時の部材間のズレ等が抑制される。このことが、特に、シート1,2同士ないしシート1,2と弾性部材3とを固定していない所定領域での、シートに対する開孔処理及びシート同士の接合処理の精度を高める。具体的には、開孔ピン12でシート1,2同士を固定したまま積層体5を次の接合処理の工程へと送り込むので、開孔部の配列及び接合部の配列を所望のパターンで精度よく形成できる。また、開孔処理と接合処理に時間的差異があっても同一の加工パターンロール上で固定したまま行うため、加工部列のパターンに合わせた精度よい加工が可能となる。
【0015】
以下、本発明の複合シートの製造方法とこれに用いられる製造装置の好ましい実施形態について図面を参照して、より詳細に説明する。図2−1(A)〜(C)は、第1実施形態の複合シートの製造方法に用いられる製造装置の好ましい一実施形態を示す。なお、用いるシートとしては、肌触りの観点から後述のように不織布であることが好ましい。
【0016】
製造装置100は、一対のシート1,2間に複数本の弾性部材3を介在させて、前記一対のシート1,2に開孔部7と接合部8とを形成するものであって、図2−1(A)〜(C)に示すように、エンボス凸部11と開孔ピン12とが円周方向に交互に配された加工部列10を有する加工パターンロール20を有する。さらに、加工パターンロール20に対向配置されるアンビルロール30と、加工パターンロール20の配置位置よりも上流側の部材送り出し制御ロール40とを有する。部材送り出し制御ロール40は、本実施形態では、一対のニップロール41,42からなる。なお、本明細書において、上流側とは、加工対象となる部材の搬送方向を基準にした相対的な位置関係であり、シート1,2や弾性部材3の送り出し元に近い方の側を意味する。すなわち、1対のシート1,2の搬送方向の上流側を指す。
【0017】
加工パターンロール20は、加工部列10によって、搬送されてくる一対のシート1,2及び弾性部材3の積層体5に開孔部7及び接合部8を形成する加工部である。同時に、積層体5の搬送部である。加工部列10は、加工パターンロール20の周面の弾性部材3の搬送位置を避けた位置にある。本実施形態においては、加工部列10が、搬送されてくる弾性部材3の搬送位置を避けるようにして、加工パターンロール20の軸方向に複数並んで配置されている。また、ロール軸方向に隣接する加工部列10間では、エンボス凸部11同士、開孔ピン同士が並ぶようにされ、別々の列を形成している。すなわち、エンボス凸部11と開孔ピン12とがロール軸方向に並ばない配置とされている。
【0018】
加工部列10は、上記の配列により、開孔部7及び接合部8を、弾性部材3の介在しない部分、すなわちシート1,2同士が直接積層された部分に形成する。開孔部7は、加工部列10の開孔ピン12によって形成され、接合部8は、加工部列10のエンボス凸部11とアンビルロール30の周面の圧着で形成される。各加工部列10では、前述のとおり、エンボス凸部11と開孔ピン12との交互配列により、接合部8と開孔部7とをシートの搬送方向(X方向)に沿って交互に一定間隔で形成する。また、本実施形態では、ロール軸方向の複数の加工部列10によって、シートの搬送方向と直交する方向(幅方向、Y方向))にも開孔部7及び接合部8がそれぞれ一定間隔で形成される。幅方向においては、完成する複合シートにおける筒状の襞形成のため、開孔部7の列と接合部8の列とが別々になるように形成される。すなわち、幅方向の同一列上で開孔部7と接合部8とが混在しないように形成される。
【0019】
アンビルロール30は、加工パターンロール20の周面上の地点P2に対向するように配置されており、その周面には、加工パターンロール20の開孔ピン12が挿入される凹部31が複数間欠的にパターン配置されている。凹部31以外の周面32は、前述のとおり、エンボス凸部11に対応している。地点P2において、周面32とエンボス凸部11とで積層体5を圧着して接合することで接合部8を形成する。なお、地点P2は、加工パターンロール20の周面の回転軌道における、アンビルロール30との対向地点P2であり、接合部8を形成する接合地点P2である。
【0020】
部材送り出し制御ロール40としてのニップロール41,42は、一対のシート1,2間に弾性部材3を介在させるために一対のシート1,2と弾性部材3とを互いに接近させる。そして、加工パターンロール20の周面に沿わせるように送り出す。本実施形態では、ニップロール41,42間で、一対のシート1,2と弾性部材3を積層体5としてから加工パターンロール20へと送り出す。より具体的には、シート1、シート2及び弾性部材3を、それぞれ図示しない各原反ロールから連続的に繰り出し、一対のニップロール41,41間の合流地点G1で積層体5とする。この積層体5を、合流地点G1からさらに加工パターンロール20の開孔ピン12との接触地点P1へと送り出す。また部材送り出し制御ロール40として、ニップロール41,42を補助する搬送ロール43A、43B及び43Cを各部材に対応して配していてもよい。これにより各部材のニップロール41,42間への搬送が円滑に行われる。さらにその上流に、後述する弾性部材3の一体化処理を行うものとして、塗工部50を有していてもよい。これら搬送ロール43A、43B及び43C、並びに塗工部50は任意である。なお、接触地点P1とは、工パターンロール20の周面の回転軌道における、一対のシート1,2及び弾性部材3が最初に開孔ピン12と接触する地点である。
【0021】
本実施形態では、ニップロール41,42が、加工パターンロール20よりも低い位置にある。すなわち、一対のニップロール41,41間の合流地点G1が、加工パターンロール20の周面上の対向地点P2を通る接線を基準としてアンビルロール30の反対側(すなわち加工パターンロール20側)に位置する。このように本実施形態では、ニップロール41,41と加工パターンロール20との間に高低差があり、ニップロール41,41により形成された積層体5は、加工パターンロール20の下側から、加工パターンロール20の周面上の、アンビルロール30との対向地点P2よりも上流側に進入して開孔ピン12に接触するようにされている。
このように両ロールに高低差があると、積層体5を加工パターンロール20に抱かせるようにして周面上に沿わせやすくなる。また、この場合、F1方向の回転力が合流地点G1から接触地点P1までの積層体5の引き上げ力となり、積層体5に適度な張力(テンション)を加えることができる。この適度な張力により、積層体5を伸長した状態で、加工パターンロール20の周面上で抱かせるようにして搬送することができる。また、この張力により、開孔ピンの応力が適度な突き刺し応力となって、シート1,2にヨレなく開孔部7を形成することができる。
【0022】
このように、積層体5を加工パターンロール20の周面上で抱かせるようにして搬送することで、対向地点P2においてシート1,2が接合される直前に、開孔ピン12を積層体5に貫通させることができる。対向地点P2直前における開孔ピン12の貫通量は、開孔部明瞭さの観点から次の範囲にあることが好ましい。すなわち、図2−2に示すように、開孔ピン12の高さ(加工パターンロール20の周面から開孔ピン12の先端までの距離)をH、エンボス凸部11の高さ(加工パターンロール20の周面からエンボス凸部11表面までの距離)をS,開孔ピン12の先端から貫通する積層体5までの距離をM1とすると、M1の下限はH/4以上が好ましく、H/3以上がより好ましく、H/2以上が更に好ましい。上限は、エンボス凸部11の高さの関係から、H−Sが好ましい。
【0023】
さらに上記の張力を適正に加えるべく、ニップロール41、42の回転速度を加工パターンロール20の回転速度よりも遅くすることがより好ましい。具体的には、ニップロール41のF2方向の回転速度S2とニップロールのF3方向の回転速度S3とを加工パターンロール20のF1方向の回転速度S1よりも遅くする。このF2及びF3方向の回転速度(S2、S3)の、F1方向の回転速度(S1)に対する速度比(S2/S1、S3/S1)は、上記の張力を適度に加えるため、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。また、この速度比(S2/S1、S3/S1)は、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい。
【0024】
製造装置100が上記のような構成を有することにより、加工パターンロール20は、アンビルロール30との対向地点よりも上流側の周面上で、一対のシート1,2の弾性部材3の介在しない部分に開孔ピン12を貫通させて開孔部7を形成する。加工パターンロール20は、開孔ピン12を貫通させたまま一対のシート1,2と弾性部材3との積層体5を周面上で搬送して、アンビルロール30との対向地点で、エンボス凸部11とアンビルロール30の周面とによる圧着により、開孔部7とは円周方向において異なる部分で、かつ、弾性部材3の介在しない部分に接合部8を形成する。
【0025】
第1実施形態の複合シートの製造方法は、上記の装置100を用いて次のようにして実施される。
まず、図示しない原反ロールそれぞれから長尺帯状のシート1,2、長尺の弾性部材3を繰り出す。その際、シート1,2の間で、複数本の弾性部材3をそれぞれ伸長状態でシート1,2の幅方向に互いに間隔をあけ平行となるようにして配する。このとき弾性部材3は、加工パターンロール20上の加工部列10を避けた位置を通るように間隔をあけて配される。
第1実施形態の複合シートの製造方法は、一対のシート1,2間に複数本の弾性部材3を介在させるために該一対のシート1,2と弾性部材3とを互いに接近させ、エンボス凸部11と開孔ピン12とが円周方向に交互に配された加工部列10を有する加工パターンロール20の周面に沿わせるように送り出す工程を有する。具体的には、繰り出されたシート1,2及び弾性部材3は、一対のニップロール41,42によって互いに接近し合流地点G1で積層体5となる。この積層体5を加工パターンロール20の周面に沿わせるように、開孔ピン12との接触地点P1へと送り出す(以上、工程(A))。積層体5において、弾性部材3は、前述のとおり、シート1,2の幅方向に互いに間隔をあけて配され、加工部列10を避けた位置で加工パターンロール20の周面上を搬送される。本実施形態では、開孔部7及び接合部8を形成することとなる領域は部材間の接合がされず動きやすい状態となっている。
第1実施形態の複合シートの製造方法において、一対のシート1,2と弾性部材3の接近及び加工パターンロール20の周面上への送り出しは、加工パターンロール20の配置位置よりも上流側に配置された部材送り出し制御ロールとしての一対のニップロール41,42によって行われる。
【0026】
送り出された積層体5を加工パターンロール20上で抱かせるように搬送する観点から、合流地点G1と対向地点P2の間に前述のような高低差があることが好ましい。また、この高低差は、適度な張力(テンション)を加える観点からも好ましい。同様に、ニップロール41、42の回転速度を前述のように加工パターンロール20の回転速度よりも遅くすることが好ましい。これにより、搬送時及び開孔処理時において、シートのヨレ及び弾性部材の振れを抑制できる。
【0027】
次いで、第1実施形態の複合シートの製造方法は、加工パターンロール20の周面上で、一対のシート1,2の弾性部材3が介在しない部分に、開孔ピン12を貫通させて開孔部7を形成する工程を有する。具体的には、加工部列10の開孔ピン12のパターン配列に沿って、弾性部材3の介在しない部分で、1対のシート1,2に開孔ピン12を貫通させて開孔部7を形成する(以上、工程(B))。1対のシート1,2の搬送方向(X方向)には、開孔部7を一定間隔で配して、弾性部材3と平行な加工列78を形成する。一方、1対のシート1,2の幅方向(Y方向)には、開孔部7を弾性部材3と重ならないよう一定間隔で配し、開孔部列71を形成する。この開孔部列71は、後述する複合シート9のX方向に延びる筒状襞92の頂部92Aに位置することとなる(図3参照)。これにより開孔部7が、筒状襞92の内部にできる通気路空間95の排気口となる。なお、開孔部7の幅方向(Y方向)における間隔は、本実施形態に限定されることなく適宜設定できる。
【0028】
開孔部7は、積層体5が加工パターンロール20の周面に沿わされた状態で、且つ一対のシート1,2同士が接合されていない領域に開孔ピン12が貫通して形成される。このような開孔処理は、最初の開孔ピン12との接触地点P1からアンビルロール30との対向地点P2までの間であればいずれの地点でなされてもよい。このとき、前述のとおり複数の開孔ピン12で積層体5を固定した状態となる。そのため開孔ピン12の応力は、シートの縦横の平面に分散されて、1点集中の強い押し込み応力とはならず、適度な突き刺し応力となる。さらに加工パターンロール20のF1方向の回転で積層体5に適度な張力(テンション)が加わる。これにより過度な応力が積層体5にかからずに開孔処理がなされる。その結果、強い押し込み圧力によるシートのヨレ及び弾性部材の振れが回避される。特に本実施形態では、シート同士及びシートと弾性部材との間の接合がされていない領域への開孔処理にも拘らず、ズレ等を抑えて、開孔処理を精度よく行うことができる。
【0029】
加工パターンロールの周面上での開孔処理を確実に行うため、接触地点P1から対向地点P2までの周長さを十分にとることが好ましい。この観点から、接触地点P1から対向地点P2までの抱き角(θ)は、10°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、45°以上が更に好ましい。また、シートのたるみ抑制の観点から、抱き角(θ)は、180°以下が好ましく、150°以下がより好ましく、90°以下が更に好ましい。
【0030】
同時に、加工パターンロール20の周面上では、開孔ピン12を貫通させたまま、一対のシート1,2と弾性部材3との積層体5を、加工パターンロールに対向するアンビルロールが配置されている位置(対向地点P2)まで搬送する工程を有する(以上、工程(C))。そして、対向地点P2において、加工パターンロール20のエンボス凸部11とアンビルロール30の周面32との圧着により、積層体5のシート1,2同士の開孔部7とは円周方向において異なる部分で、かつ、弾性部材3の介在しない部分に接合部8を形成する工程を有する(以上、工程(D))。接合は、エンボス凸部11による、熱エンボス又は超音波エンボス等による熱融着などにより行うことができる。なお、アンビルロール30には複数の凹部31を有し、対向地点P2において、開孔ピン12と対応するようにされている。これにより、開孔ピンがアンビルロール30で潰されないようにしている。凹部31に開孔ピン12が挿入される際には、開孔ピン12が一対のシート1,2を既に貫通しているので、さらに押し込み応力が生じることはない。
【0031】
接合部8は、加工部列10のエンボス凸部11のパターン配列に合わせて形成される。搬送方向(X方向)には、接合部8を加工列78上に開孔部7と交互に一定間隔で配する。一方、幅方向(Y方向)には、接合部8を弾性部材3と重ならないよう一定間隔で配し、接合部8のみからなる接合列81を形成する。この接合部列81は、後述する複合シート9のX方向に延びる筒状襞92の間の谷部96に位置することとなる。また、複数の接合部列81の間には、開孔部列71を形成する。この開孔部列71は、後述する複合シート9のX方向に延びる筒状襞92の頂部92Aに位置することとなる。
【0032】
接合部8の形成は、シート1,2が複数の開孔ピン12で面状に支えられ固定された状態でなされる。より具体的には、複数の開孔ピン12がシート1,2を貫通してシート同士を固定(仮固定)した状態で部材間のズレ等無く接合地点P2まで搬送されて接合処理がなされる。これにより、接合部8を、開孔部7との距離を一定に保ったまま、シート1、2同士のズレやヨレ無く、規則正しくパターン形成できる。その結果、接合部8が幅方向(Y方向)に整列して直線的な接合部列81を形成し、複合シート9において、接合部列81に挟まれた部分に、幅方向に沿った筒状襞92が規則正しく形成される。
また、接合部8と開孔7の形成は、接触地点P1から接合地点P2までの間で異なる位置でなされ、両加工処理に時間的差異がある。それでも、同一の加工パターンロール上で固定したまま行うため、加工部列のパターンに合わせた精度よい加工が可能となる。
【0033】
本実施形態の開孔部7は、図4のように、開孔部列71の線上の、弾性部材3の間すべてに配されている。ただし、開孔部7の配列は、この形態に限定されるものではない。例えば、図5のように、開孔部列71上で、弾性部材3の配置されない部分の1つおきに形成してもよい。その際、隣接する開孔部列71、71同士で、開孔部7の配置を幅方向(Y方向)に半ピッチずらした、いわゆる千鳥状配置としてもよい。また、接合部列81の搬送方向(X方向)の配置間隔も任意に設定できる。間隔を変えることにより、筒状襞92の大きさも変わる。
【0034】
また、複合シート9の形成にあたっては、前述の開孔部7及び接合部8の形成のほか、弾性部材3の伸縮基点部31を形成する。伸縮基点部31は、複合シートの伸縮方向(X方向)における弾性部材の両端に形成される。該両端の間隔は、複合シートの大きさにより異なり、適用される物品の大きさや適用範囲に合わせて適宜決められる。
この伸縮基点部31は、弾性部材3をシート1,2に固定する一体化接合処理によりなされる。一体化接合処理は、熱エンボスや超音波エンボス処理、ホットメルト型などの接着剤の塗工により行うことができる。本実施形態では、弾性部材3の伸縮起点部31となる部分に接着剤を塗工して行う。またこれ以外にも、例えば、シート1,2のいずれか一方または両方に接着剤を塗工してもよい。
【0035】
このような工程を経た後、伸縮基点部31で切断処理を行い、一定長さの複合シート9が得られる。この複合シート9では、図3に示すように、伸縮基点部31以外が伸縮部91となる。なお、図3では伸縮基点部31を手前側のみで示し他方を省略して示した。伸縮部91では、弾性部材3が、シート1,2と接合されていないため、シートとは分離した状態で収縮する。このとき、シート1,2には、接合部列81を谷部96とし、その間に幅方向(Y方向)の筒状襞92が生じる。筒状襞92は、シート1の襞93とシート2の襞94が互いに逆方向に突出するようにして形成されており、これにより通気路空間95を有する。さらに、襞93及び94ぞれぞれの対向位置に開孔部7が幅方向(Y方向)に沿って形成されている。これにより、通気路空間95を通って排出される空気や蒸気が、開孔部7を通じて外部へ排出されやすくなり、複合シート9の通気性がさらに向上する。このような筒状襞92は、前述の製造方法による、接合部列81及び開孔部列71の規則的な形成と、弾性部材3の振れの抑制による十分な伸縮力の付与とにより好適に生じる。
【0036】
以上のとおり、第1実施形態においては、ニップロール41,42によってシート1,2及び弾性部材を接近させ更に積層体5として送り出し、加工パターンロール20に抱かせるように周面上に沿わせて搬送する。これにより、開孔時のシートのヨレやシワ、弾性部材の振れを抑制することができる。なお、ニップロール41,42と加工パターンロール20との配置関係は、図2(A)の形態に限定されるものでなく、適宜変更できる。たとえば、図6に示すように、ニップロール41,42を加工パターンロール20よりも高い位置に配し、加工パターンロール20の下部側の周面上に積層体5を沿わせるようにして搬送してもよい。すなわち、一対のニップロール41,41間の合流地点G1が、加工パターンロール20の周面上の対向地点P2を通る接線を基準としてアンビルロール30の反対側(すなわち加工パターンロール20側)に位置する。このとき、積層体5に適度な張力がかかるよう、前述の回転速度比(S2/S1、S3/S1)、抱き角(θ)があることが好ましい。このように、加工パターンロール20がニップロール41,42よりも高い位置にあっても低い位置にあってもよい。前者では、図1(A)のように加工パターンロール20の上部側の周面に抱かせるような搬送となり、後者では、図6のように加工パターンロール20の下部側の周面に抱かせるような搬送となる。ただし、開孔処理時のシート粉の発生を考慮すると、図2(A)のように、加工パターンロール20の上部側の周面に抱かせるような搬送、すなわち、開孔ピン12を貫通させた積層体5の搬送は、加工パターンロール20の上部側の周面上で行われることが好ましい。このときの積層体5の貫通量については、前述した範囲の距離M1であることが好ましい。
【0037】
次に、本発明の複合シートの製造方法とこれに用いられる製造装置の他の好ましい実施形態(第2実施形態)について図面を参照して説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点を説明し、同様な点については説明を省略する。したがって、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第1実施形態と同じ部材については同一符号を用いて示す。
【0038】
第2実施形態では、前記(A)の工程が異なる(以下、工程(A2)という。)。工程(A2)では、部材送り出し制御ロール4として、一対のシート1,2及び弾性部材3のそれぞれに対応させて配置した押さえロール44A、44B、44Cを用いる。したがって、本実施形態の製造装置200では、図7に示すように、加工パターンロール20の上流に、ニップロール41,42に代えて、押さえロール44A、44B、44Cを配置している。
【0039】
押さえロール44A、44B、44Cがシート1,2及び弾性部材3のそれぞれの搬送を制御する。これにより、各部材を互いに接近させながら、加工パターンロール20の最初の開孔ピン12との接触地点P1で接触させるように送り出す。この場合、シート1,2及び弾性部材3の積層体5は、接触地点P1で開孔ピン12に触れると同時に形成される。すなわち、積層と開孔のための加工パターンロール20への抱き合わせとを同時に行うようにしている。
【0040】
これにより、第2実施形態では、接触地点P1までの送り出し距離を短くでき、各部材ごとも位置調整や張力の調整をより精密に行うことができる。
【0041】
この場合の、各押さえロール44A,44B,44Cは、各部材の押え位置G2,G3,G4それぞれが接触地点P1との間に高低差を設けることが好ましい。具体的には、各部材を接近させつつ、加工パターンロールの接触地点P1で合流し抱かせるようにするため、各部材の押え位置G2,G3,G4が、加工パターンロール20の周面上の位置P2を通る接線を基準としてアンビルロール30の反対側に位置することが好ましい。
押え位置G2,G3,G4は、シート1,2及び弾性部材3のそれぞれが、各押さえロール44A,44B,44Cに最初に当接する位置とする。
【0042】
また、各押さえロール44A,44B,44Cの回転速度を加工パターンロール20の回転速度よりも遅くすることがより好ましい。これにより、各部材及び積層体5に適度な張力を付与して加工パターンロール20に抱かせるようにして周面上に沿って搬送できる。具体的には、各押さえロール44A、44B、44CのF4方向の回転速度S4の、加工パターンロール20のF1方向の回転速度S5に対する速度比(S4/S5)は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。また、この速度比(S4/S5)は、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい。また、同様の観点から、第1実施形態で述べた、抱き角(θ)を有することが好ましい。
【0043】
第2実施形態においても、各押さえロール44A,44B,44Cによってシート1,2及び弾性部材をそれぞれ接近させながら開孔ピン12に接触させるように送り出し、加工パターンロール20に抱かせるように周面上に沿わせて搬送する。これにより、開孔時のシートのヨレやシワ、弾性部材の振れを抑制することができる。このときの積層体5の貫通量については、前述した範囲の距離M1であることが好ましい。
第2実施形態においても、押さえロール44A、44B及び44Cと加工パターンロール20との配置関係は、図7の形態に限定されるものでなく、適宜変更できる。たとえば、第1実施形態で示した図6のように、加工パターンロールの下部側の周面に積層体5を抱かせるような搬送を行ってもよい。
【0044】
次に、第1実施形態及び第2実施形態で用いるシート1,2及び弾性部材3の素材について説明する。各部材の素材としては、特に制限されず、この種の物品に通常用いられるもとを適宜採用できる。
【0045】
シートの材料としては、例えば、それぞれ、例えばエアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布、織布、編布、樹脂フィルム等が挙げられる。また、これらを積層一体化させてなるシート材等を用いてもよい。
感触のよい柔軟な襞を規則的に配列させ、装飾的な美観を合わせて付与する観点から、両シート又は一方のシート(特に肌に当接させる用途に用いる場合の肌側の面を形成するシート材)の形成材料は、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等であることが好ましい。
【0046】
シ−トが弾性部材の収縮に対して変形することで襞を成形するため、このシートの剛性をこの複合伸縮部材の稜の成形性・クッション性に適したものとすることが好ましい。剛性はシート材料の座屈強度によって表すことができる。本発明の複合シートに用いられるシートの座屈強度としては100cN以下、特に70cN以下とすることが好ましい。ここで、座屈強度は、下記に示すように、テンシロン万能試験装置(オリエンテック社製)の圧縮試験モードにより測定される。
【0047】
座屈強度試験法(CD):
機械流れ方向(MD)に150mm、機械流れ方向と直交する方向(CD)に30mmの長方形の試験片を取り、直径45mmの円筒を作り、重なり合った部分の上端と下端とをホッチキス等で止め測定サンプルとする。これを、テンシロン万能試験装置の圧縮試験モードにより、測定環境20℃、65%RH、測定条件としては、圧縮速度10mm/min、測定距離20mmで測定を行う。サンプルを20mm圧縮した時の最大強度を各サンプルについて測定し、その平均値を求め、これを座屈強度とする。
前述したように、シート材としては好ましくは不繊布が用いられる。不織布の坪量としては、好ましくは5〜50g/m、特に好ましくは18〜30g/mの不織布が用いられる。そうした坪量の不織布の座屈強度は、好ましくはCD方向で50cN以下、特に好ましくは30cN以下、MD方向で好ましくは70cN以下、特に好ましくは50cN以下である。
【0048】
また、各シートは、熱融着による接合を容易にする観点から、その形成素材(不織布の場合の繊維、樹脂フィルムのフィルム材料等)が熱融着性の樹脂からなることが好ましく、熱融着性の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。不織布等を構成する繊維は、表面のみが熱融着性の樹脂からなる芯鞘型の複合繊維等であってもよい。なお、2枚のシート材のうちの一方のシート材と他方のシート材とでは、形成材料が同一でも異なっていてもよい。
【0049】
なお、シート1,2は、別々のシートかあらなるものでもよく、1枚のシートを幅方向に折り返してなるものでもよい。シート1,2ぞれぞれは1層からなるものでもよく、複数層からなるものでもよい。
【0050】
弾性部材の材料としては、吸収性物品に用いられる通常の弾性材料を用いることができ、例えば素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、或いはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0051】
好ましい弾性部材の一つに、天然ゴム(または合成ゴム)がある。天然ゴム(合成ゴム)としては、厚みが0.05〜1.5mm、幅が0.2〜5mmであって、断面積にもよるが代表的な断面積として0.35mm厚みの0.91mm幅の単糸の100%伸長時の応力が1〜70gf程度、好ましくは1〜40gf程度、特に好ましくは1〜30gf程度の低モジュラスの弾性部材が好ましい。
他の好ましい弾性部材に、ポリウレタンのスパンデックス弾性繊維がある。単糸のサイズが10〜3360デニールのもの、特に好ましくは70〜1120デニールのものが用いられる。デニールは糸の太さを表す単位であり、9000mで1gある糸を1デニールと呼ぶ。このスパンデックス弾性繊維を30〜500%に伸長したものを複数本用いる。
上記に挙げた低モジュラスの弾性部材の単糸を、好ましくは100%以上、特に好ましくは200%以上の高伸長倍率で複数本配置することにより、柔らかく伸縮する美しい襞を有するフルート構造を得ることができる。
【0052】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の複合シートの製造方法及びその製造装置を開示する。
【0053】
本発明1の複合シートの製造方法及び製造装置によって製造される複合シートは、例えば、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の伸縮性を有する部分に用いることができる。例えば、使い捨ておむつの外装材、ギャザー部、ファスインングテープ連結される側縁部などがある。
【0054】
<1>
一対のシート間に複数本の弾性部材を介在させるために該一対のシートと弾性部材とを互いに接近させ、エンボス凸部と開孔ピンとが円周方向に交互に配された加工部列を有する加工パターンロールの周面に沿わせるように送り出す工程と、
前記加工パターンロールの周面上で、前記一対のシートの前記弾性部材が介在しない部分に、前記開孔ピンを貫通させて開孔部を形成する工程と、
前記開孔ピンを貫通させたまま、前記一対のシートと前記弾性部材との積層体を、前記加工パターンロールの周面上において、該加工パターンロールに対向するアンビルロールが配置されている位置まで搬送する工程と、
前記加工パターンロールと前記アンビルロールとの対向地点において、前記エンボス凸部と前記アンビルロールの周面との圧着により、前記積層体のシート同士の前記開孔部とは前記円周方向において異なる部分で、かつ、前記弾性部材の介在しない部分に接合部を形成する工程とを有する複合シートの製造方法。
【0055】
<2>
前記加工部列が前記加工パターンロールの軸方向に複数並んで配置されている、前記<1>に記載の複合シートの製造方法。
<3>
前記弾性部材は、前記シートの幅方向に互いに間隔をあけて配され、前記加工部列を避けた位置で前記加工パターンロールの周面上を搬送される前記<1>又は<2>に記載の複合シートの製造方法。
<4>
前記一対のシートと弾性部材との接近及び加工パターンロールの周面上への送り出しを、前記加工パターンロールの配置位置よりも上流側に配置された部材送り出し制御ロールによって行う前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<5>
前記部材送り出し制御ロールの回転速度は、前記加工パターンロールの回転速度よりも遅い前記<4>に記載の複合シートの製造方法。
<6>
前記部材送り出し制御ロールが、一対のニップロールからなり、該ニップロールによって、前記一対のシートと前記弾性部材とを接近させ更に積層体として送り出す前記<4>又は<5>に記載の複合シートの製造方法。
<7>
前記ニップロールと前記加工パターンロールとの間に高低差があり、該ニップロールにより形成された前記積層体は、前記加工パターンロールの下側から、前記加工パターンロールの周面上の、前記アンビルロールとの対向地点よりも上流側に進入して前記開孔ピンに接触するようにされている前記<6>に記載の複合シートの製造方法。
<8>
前記一対のシートと前記弾性部材とを積層体とする、前記一対のニップロール間の合流地点が、前記加工パターンロールにおける前記アンビルロールとの対向地点を通る接線を基準として、前記アンビルロールの反対側に位置する、前記<6>又は<7>に記載の複合シートの製造方法。
<9>
前記一対のニップロールそれぞれの回転速度の、前記加工パターンロールの回転速度に対する速度比は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい、前記<6>〜<8>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<10>
前記部材送り出し制御ロールが、前記一対のシート及び前記弾性部材のそれぞれに対応させた押さえロールからなり、該押さえロールによって、前記一対のシート及び前記弾性部材をそれぞれ接近させながら前記開孔ピンに接触させるように送り出す前記<4>又は<5>に記載の複合シートの製造方法。
<11>
前記押さえロールの押さえ位置が、前記加工パターンロールにおける前記アンビルロールとの対向地点を通る接線を基準として、前記アンビルロールの反対側に位置する、前記<10>に記載の複合シートの製造方法。
<12>
前記押さえロールの回転速度の、前記加工パターンロールの回転速度に対する速度比は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい、前記<10>又は<11>に記載の複合シートの製造方法。
<13>
前記アンビルロールの周面には、前記開孔ピンが挿入される凹部が配設されている前記<1>〜<12>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<14>
前記開孔部を形成する工程において、前記一対のシート同士が接合されていない領域前記開孔ピンが貫通する前記<1>〜<13>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<15>
前記開孔ピンを貫通させた前記積層体の搬送は、前記加工パターンロールの上部側の周面上で行われる前記<1>〜<14>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<16>
開孔ピンの高さをHとし、前記エンボス凸部の高さをSとし、前記開孔ピンの先端から貫通する前記積層体までの距離をM1としたとき、前記M1は、H/4以上が好ましく、H/3分以上より好ましく、H/2以上が更に好ましく、H−S以下が好ましい、前記<1>〜<15>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
<17>
前記加工パターンロールの周面上において、前記一対のシート及び弾性部材の最初の開孔ピンとの接触地点から前記アンビルロールとの対向地点までの抱き角が、10°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、45°以上が更に好ましく、180°以下が好ましく、150°以下がより好ましく、90°以下が更に好ましい、前記<1>〜<16>のいずれか1に記載の複合シートの製造方法。
【0056】
<18>
一対のシート間に複数本の弾性部材を介在させて、前記一対のシートに開孔部と接合部とを形成する複合シートの製造装置であって、
エンボス凸部と開孔ピンとが円周方向に交互に配された加工部列を有する加工パターンロールと、該加工パターンロールに対向配置されるアンビルロールと、前記加工パターンロールの配置位置よりも上流側の部材送り出し制御ロールとを有し、
前記部材送り出し制御ロールは、前記一対のシート間に前記弾性部材を介在させるために該一対のシートと弾性部材とを互いに接近させ前記加工パターンロールの周面に沿わせるように送り出し、
前記加工パターンロールは、前記アンビルロールとの対向地点よりも上流側の周面上で、前記一対のシートの前記弾性部材の介在しない部分に前記開孔ピンを貫通させて開孔部を形成し、該開孔ピンを貫通させたまま前記一対のシートと前記弾性部材との積層体を周面上で搬送して、前記アンビルロールとの対向地点で、前記エンボス凸部と前記アンビルロールの周面とによる圧着により、前記開孔部とは前記円周方向において異な部分で、かつ、前記弾性部材の介在しない部分に接合部を形成する、複合シートの製造装置。
<19>
前記加工部列が前記加工パターンロールの軸方向に複数並んで配置されている、前記<18>に記載の複合シートの製造装置。
<20>
前記加工部列は、搬送されてくる前記弾性部材を避けて配されている<18>又は<19>に記載の複合シートの製造装置。
<21>
前記部材送り出し制御ロールの回転速度は、前記加工パターンロールの回転速度よりも遅い前記<18>〜<20>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<22>
前記部材送り出し制御ロールが、一対のニップロールからなり、該ニップロールによって、前記一対のシートと前記弾性部材とを接近させ更に積層体として送り出す前記<18>〜<21>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<23>
前記ニップロールと前記加工パターンロールとの間に高低差があり、該ニップロールにより形成された前記積層体は、前記加工パターンロールの下側から、前記加工パターンロールの周面上の、前記アンビルロールとの対向地点よりも上流側に進入して前記開孔ピンに接触するようにされている前記<22>に記載の複合シートの製造装置。
<24>
前記一対のシートと前記弾性部材とを積層体とする、前記一対のニップロール間の合流地点が、前記加工パターンロールにおける前記アンビルロールとの対向地点を通る接線を基準として、前記アンビルロールの反対側に位置する、前記<22>又は<23>に記載の複合シートの製造装置。
<25>
前記一対のニップロールそれぞれの回転速度の、前記加工パターンロールの回転速度に対する速度比は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい、前記<22>〜<24>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<26>
前記部材送り出し制御ロールが、前記一対のシート及び前記弾性部材のそれぞれに対応させた押さえロールからなり、該押さえロールによって、前記一対のシート及び前記弾性部材をそれぞれ接近させながら前記開孔ピンに接触させるように送り出す前記<18>〜<21>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<27>
前記押さえロールの押さえ位置が、前記加工パターンロールにおける前記アンビルロールとの対向地点を通る接線を基準として、前記アンビルロールの反対側に位置する、前記<26>に記載の複合シートの製造装置。
<28>
前記押さえロールの回転速度の、前記加工パターンロールの回転速度に対する速度比は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましい、前記<26>又は<27>に記載の複合シートの製造装置。
<29>
前記アンビルロールの周面には、前記開孔ピンが挿入される凹部が配設されている前記<18>〜<28>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<30>
前記開孔ピンを貫通させた前記積層体の搬送は、前記加工パターンロールの上部側の周面上で行われる前記<18>〜<29>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<31>
開孔ピンの高さをHとし、前記エンボス凸部の高さをSとし、前記開孔ピンの先端から貫通する前記積層体までの距離をM1としたとき、前記M1は、H/4以上が好ましく、H/3分以上より好ましく、H/2以上が更に好ましく、H−S以下が好ましい、前記<18>〜<30>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
<32>
前記加工パターンロールの周面上において、前記一対のシート及び弾性部材の最初の開孔ピンとの接触地点から前記アンビルロールとの対向地点までの抱き角が、10°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、45°以上が更に好ましく、180°以下が好ましく、150°以下がより好ましく、90°以下が更に好ましい、前記<18>〜<31>のいずれか1に記載の複合シートの製造装置。
【符号の説明】
【0057】
1,2 シート
3 弾性部材
5 積層体
7 開孔部
71 開孔部列
78 加工列
8 接合部
81 接合部列
9 複合シート
91 伸縮部
92 筒状襞
93,94 襞
95 通気路空間
10 加工部列
20 加工パターンロール
30 アンビルロール
40 部材送り出し制御ロール
41,42 ニップロール
44A,44B,44C 押さえロール
G1 合流地点
P1 接触地点
P2 対向地点(接合地点)

図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8